提出日:平成 23 年 2 月 15 日
TFA-MOD 法による YGdBCO 線材の緩和特性に対する超伝導層厚の影響
06232037 松下研究室 新 健一
1. はじめに
REBCO線材(RE:希土類)は、高温度、高磁界で 高い臨界電流密度が得られることから超伝導電 力機器への利用が有望視されており、実用化に向 けての臨界電流密度J
cの更なる特性改善が求めら れている。その特性改善の方法の一つとして、人 工ピンの導入がある。従来では、PLD法における 人工ピンの導入が主流であったが、それに比べ、
製造コストがより安価なMOD法による人工ピン の導入が注目されている。最近、YGdBCO超伝導 相にZrを添加することで、超伝導膜内にナノサイ ズのBZO粒子を分散させることに成功している
1)。 本研究では、ナノ粒子の導入によるコート線材に ついて、その超伝導層厚が磁化緩和特性に与える 影響について調べた。
2. 実験
今回実験に用いた試料諸元を、表 1 に示す。試 料は人工ピンとしてBaZrO
3を導入した超伝導層 厚の異なるYGdBCOコート線材である。 SQUID磁 力計を用いた、磁気ヒステリシス測定からJ
c-B特 性を、磁化緩和測定からE-J特性及び緩和のしにく さを表す見かけのピンポテンシャルU
0*を評価し た。
表 1:試料の諸元
試料 厚さ d(μm) T
c(K)
#1 0.76 89.5
#2 1.26 90.2
#3 1.90 90.0
3. 結果及び検討
図 1 に 20 KでのU
0*の磁界依存性を、図 2 に 30 KでのU
0*
の磁界依存性を示す。20 KにおいてU
0*
の値は高磁界になると減少している。30 Kでは 2
T付近から磁界が増加するにしたがってU
0*
の値
が単調に減少している。これは温度が高くなるに つれ磁束リープの影響が大きくなったのが原因 だと考えられる。
20 Kにおいて低磁界領域で超伝導層が薄い試 料ほどU
0*が高いが、高磁界領域では薄い試料#1 の U
0*が大きく減少している。対して、超伝導層 が厚い試料は高磁界領域でもあまりU
0*の値が減 少していない。このような特性になるのは、以下 の理由が考えられる。低磁界領域ではJ
cの寄与が U
0*
に大きく影響しており、 J
cが高い値となる薄い 試料のU
0*が大きくなった。一方、高磁界領域で はピンニング相関距離 L が大きくなるため、薄い 試料では 2 次元ピンニングとなっており、磁束ク
リープの影響を受けやすくU
0*が小さい値となっ た。30 Kでは 1 T以下の低磁界領域では d の薄い 試料の方がU
0*の値が高くなり、 1 T以上の磁界領 域ではU
0*の値は厚い試料のほうが高くなる傾向 が見られた。 2 T以上の磁界領域では d による磁界 依存性の違いが見られず、いずれの試料もU
0*の 値が大きく減少している。これらの実験結果につ いて磁束クリープ・フローモデルを用いて解析し た結果及び詳細な議論は当日行う。
2 4 6
0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
B [T]
U0* [eV]
20 K
#1
#2
#3
図1:20 K における
U
0*の磁界依存性
2 4 6
0.05 0.1 0.15
B [T]
U0* [eV]
30 K
#1
#2
#3
図
2:30 K
におけるU
0*