平成
27
年度 修士学位論文限流器付き縦磁界超伝導直流ケーブルの最適化 に関する研究
木内研究室
14676104
大隈 翔悟平成
28
年2
月9
日九州工業大学 大学院情報工学府 先端情報工学専攻
目次
第1章 序章 ... 8
1.1 はじめに ... 8
1.2 銅酸化物超伝導体 ... 9
1.3 希土類径超伝導体 ... 9
1.4 縦磁界効果 ... 10
1.5 縦磁界効果を用いた超伝導ケーブル ... 11
1.6 超伝導限流器 ... 16
1.6.1 抵抗型限流器 ... 17
1.6.2 誘導型限流器 ... 17
1.7 縦磁界効果を用いた超伝導限流器 ... 19
1.8 本研究の目的 ... 20
第2章 解析モデル ... 21
2.1 解析の概要 ... 21
2.2 限流器付きケーブルの限流動作 ... 21
2.3 銅バイパス層の最適化 ... 25
2.3.1 銅バイパス層の抵抗値 ... 25
第3章 解析結果および考察 ... 28
3.1 𝐸 − 𝐽 超伝導層数と限流効果の関係 ... 28
3.1.1 銅バイパス層の巻き角度𝜃依存性 ... 30
3.2 銅バイパスの𝑅の影響 ... 32
第4章 まとめ ... 38
謝辞 ... 39
参考文献 ... 40
表目次
3.1 超伝導層と磁界依存性の関係 ... 28 3.2 超伝導層の𝐸と対応する𝑅bypass ... 34
図目次
1.1 :超伝導体の臨界面 ... 3
1.2 縦磁界を加えた場合 ... 5
1.3 横磁界を加えた場合 ... 7
1.4 縦磁界効果を利用した超伝導直流電力ケーブル ... 10
1.5 ケーブル展開図 ... 13
1.6 𝐼zが作る磁界𝐵𝜑 ... 14
1.7 𝐼𝜑が作る磁界𝐵𝑧 ... 15
1.8 超伝導層の展開図 ... 16
1.9 𝐵𝑧と𝐵𝜑の関係 ... 16
1.10 過電流通電時のケーブルの𝐸-𝐼特性 ... 17
1.11 抵抗型限流器(平常時) ... 18
1.12 抵抗型限流器(限流動作時) ... 18
1.13 誘導型限流器(平常時) ... 18
1.14 誘導型限流器(限流動作時時) ... 19
1.15 限流機能を付加した縦磁界超伝導直流電力ケーブル ... 20
2.1 ケーブルの限流動作 ... 23
2.2 磁界依存性の直線近似 ... 24
2.3 𝛥𝐼と𝐼′の関係 ... 24
2.4 ケーブル断面図 ... 26
3.1 通電電流𝐼の増加と限流率の関係 ... 20
3.2 1層の場合の限流効果 ... 30
3.3 6層の場合の限流効果 ... 31
3.4 9層の場合の限流効果 ... 31
3.5 12層の場合の限流効果 ... 32
3.6 𝑅と𝑟bypassの関係 ... 33
3.7 𝐸と𝑟bypassの関係 ... 34
3.8 𝑅bypass=2.1 × 10−9Ωのときの分流の様子 ... 35
3.9 𝑅bypass=5.4 × 10−8Ωのときの分流の様子 ... 36
3.10 𝑅bypass=1.1 × 10−7Ωのときの分流の様子 ... 36
3.11 𝑅bypass=2.1 × 10−7Ωのときの分流の様子 ... 37
3.12 𝑅bypass=2.1 × 10−9Ωのときの分流の様子 ... 37
第 1 章 序論
1.1
はじめに1911年にオランダのKamerlingh Onnesは液体ヘリウムを用いて電気抵抗の機構解明 に関する研究を行い、液体ヘリウム沸点の4.2 Kにおいて水銀の抵抗が突然ゼロになる ことを発見した。このような現象を起こす物質は超伝導体と呼ばれ、電気抵抗ゼロの性 質を持つことから様々な機器への応用が期待された。しかし、当初発見された超伝導体 の多くが、わずかな磁界で電気抵抗ゼロの性質を失ってしまい強磁界応用への利用は危 ぶまれた。さらに1933年にW.MeissnerとR.Ochsenfeldによって、超伝導体は完全反磁性 (マイスナー効果)を持つことが発見された。したがって、電気抵抗ゼロとマイスナー効 果の2つを持つ物質が超伝導体と呼ばれる。この超伝導体はFig.1. 1に示すようにある電 流、温度及び磁界の範囲内でその特性を示し、電気抵抗がゼロとなる電流(電流密度)、
磁界、温度をそれぞれ臨界電流𝐼c(臨界電流密度𝐽c)、臨界磁界𝐵c、臨界温度𝑇cと呼ばれ る。その後、超伝導現象の発現機構や性質に関する研究が進められてきたが、大きな進 展や具体的な理論は現れないままであった。
1957年にはJ.BardeenとL.N.CooperおよびJ.R.Shriefferらにより、BCS理論が提唱され超 伝導発現機構における基本的な理解が与えられた。BCS理論によると𝑇cは30Kを超えな いと予想されていたが、1986年にJ.G.Bednorz,K.A. llerらによってLa-Ba-Cu-Oが発見され 30 Kを超える温度で超伝導が発現する可能性が示された。この発表以降、世界各国で高 温超伝導の探索が続けられ1年後には液体窒素の沸点である77.3 Kを超える𝑇cを持つ物 質が発見された。このような高い𝑇cを持つ超伝導体は高温超伝導体と呼ばれ、その中で も銅酸化物であるものを銅酸化物超伝導体と呼ぶ。これらの超伝導体は液体ヘリウムに 比べて安価な液体窒素や冷凍機などで超伝導状態となるため、様々な機器への応用の可 能性や冷却コストの低減などの点から大きな注目を浴びた。しかし、これらの高温超伝 導体も実用化に向けての課題が残っているために今日も研究が続けられている状態で ある。
Fig.1.1 2:超伝導体の臨界面
1.2
銅酸化物超伝導体超伝導体の結晶内にCuO2面を持つものを銅酸化物超伝導体と呼ぶ。銅酸化物超伝導 体の結晶構造は超伝導層のCuO2面とブロック層が交互に積み重なった形となっており、
CuO2面に平行な方向には電流は流れやすいが、CuO2面に垂直な方向には電流が流れに くいという、電流についての異方性を持つ。そのため、優れた特性を得るためにはCuO2 面を配向させる(向きを揃える)必要がある。銅酸化物超伝導体は金属超伝導体に高い𝑇c を持つものが多く、液体ヘリウムに比べ安価な液体窒素を冷媒として用いることができ る。銅酸化物超伝導体の中で、特にBi(ビスマス)系超伝導線材とRE(希土類)系超伝導線 材の応用が期待されている。Bi 系は、結晶が𝑎𝑏 面に劈開しやすく高度な技術を必要 としないという長所を持つ。そのため、銀の管の中にBi 系超伝導体の原料となる粉末 を詰め、圧延と熱処理を何度か繰り返すという方法で製造することができる。しかし、
高磁界領域では𝐼cが大きく下がってしまう。さらに、製造には貴金属である銀が大量に 必要であるという短所もある。
一方、RE 系超伝導線材は、Bi 系超伝導体と異なり機械的な圧延で配向させること ができず、超伝導線材の製造に特殊な技術が必要となる。そのため以前は長尺化、高配 向化が困難であったが、現在は製造技術の向上によって改善されつつある。
1.3
希土類系超伝導体RE系超伝導体において、Y-Ba-Cu-O(YBCO)系超伝導体の実用化が期待されている
𝑇 c
𝐼 c
Superconducting
𝐵 c2
YBCO の𝑇cは約90 Kで、液体窒素を冷媒として用いることができる。YBCOのYを他の 希土類元素に置き換えた物質も超伝導状態を示すことが知られている。一般に、置き換 える希土類元素のイオン半径が大きいほど𝑇cは高くなる。しかし、置き換える元素のイ オン半径が大きいと、超伝導層の製膜過程で別の物質が作られやすくなり、これは制御 困難である。そのため、置き換える元素は、希土類系元素の中で中程度のイオン半径の Gd を用いている。
1.4
縦磁界効果Fig. 1.2に示すように電流𝐼の通電方向に平行に磁界𝐵を加える縦磁界下において、Fig.
1.3に示すように垂直に磁界𝐵を加える横磁界下と比べて電気抵抗ゼロで流せる電流の 上限である臨界電流𝐼cが増加することが確認されている[1]。この現象は、以前は金属超 伝導体において発見されたもので、高配向化が難しい銅酸化物超伝導体においては均一 な電流の流れが得られず、縦磁界下における𝐼c増加は望めなかった。しかし、近年は製 法の最適化により高配向化が実現できるようになったことで、金属超伝導体と同様な𝐼c 増加が確認されている。
Fig. 1.2:縦磁界を加えた場合
𝐵 𝐼
longitudinal field
(𝑩//𝑰)
Fig. 1.3:横磁界を加えた場合
1.5
縦磁界効果を用いた超伝導ケーブル縦磁界効果の応用機器への利用の一つとして、直流超伝導電力ケーブルが提案されて いる[ ] 。このケーブルの模式図をFig. 1.4に示す。ケーブルは中央のformerに超伝導 線材を巻きつけて作製し、inner layerとshield layerがそれぞれ超伝導層である。inner layer には行きの電流が、shield layerには戻りの電流が流れるので、このケーブルの末端を電 力機器に接続することで送電する回路を作ることができる。超伝導層に電流が流れるこ とで、ケーブルの軸方向と方位角方向の自己磁界が発生する。既存の超伝導ケーブルに おいては、全ての成分の磁界を打ち消され、電流が流れても自己磁界が発生しないよう に調整されている。一方で、現在考案されている縦磁界効果を用いるケーブルにおいて は、shield layerが作る自己磁界は軸方向の磁界を強め、inner layerに縦磁界効果を与え るように調整されている。このようにinner layerに縦磁界を与えることで、ケーブルの 電流容量を増やすことができる。
𝐼
𝐵
transverse field
(𝑩 ⊥ 𝑰)
Fig.1.4:縦磁界効果を利用した超伝導直流電力ケーブル
ケーブルに加わる磁界は次のようになる。Fig.1.5 に示すように電流𝐼はケーブルをら せん状に流れており、
超伝導層の巻き角度が𝜃で表されるとき、𝐼zと𝐼𝜑の大きさはそれぞれ次式のようになる。
𝐼z = 𝐼cos𝜃 (𝟏. 𝟏) 𝐼𝜑= 𝐼sin𝜃 (𝟏. 𝟐)
ケーブルの超伝導層を展開した様子をFig.○に示す。
Fig. 1.5:ケーブル展開図
Fig.1.6に示すように𝐼zは円周方向の磁界𝐵𝜑を作り、Fig.1.7に示すように𝐼𝜑は軸方向の磁 界𝐵𝑧を作る。
Fig. 1.6: 𝐼zが作る磁界𝐵𝜑 Fig.1. 7: 𝐼𝜑が作る磁界𝐵𝑧
また、Fig.1.8に示すようにi層を流れる𝐼の軸方向の成分𝐼zが作る磁界𝐵𝜑はi層より外側
に作られ、方位角方向の成分𝐼𝜑が作る磁界𝐵𝑧はi層より内側に作られる。
Fig.1. 8: 𝐵𝑧と𝐵𝜑の関係
ここで、i 層が k 層から受ける方位角方向の磁界𝐵𝜑,𝑖,𝑘を求める。方位角方向の磁界は、
軸方向に流れる電流𝐼z= 𝐼cos𝜃によって作られるので、ビオ・サバールの法則より 𝐵𝜑,𝑖,𝑘=𝜇0𝐼𝑘cos 𝜃𝑘
2𝜋𝑅𝑖 (𝟏. 𝟑) と表される。ただし、i < kである。
次に、i 層が全ての内側層(1 層目から i-1 層目)から受ける方位角方向の磁界𝐵𝜑,𝑖を求め る。𝐵𝜑,𝑖は、式(1.3)の𝐵𝜑,𝑖,0から𝐵𝜑,𝑖,𝑖−1までの和となるので
𝐵𝜑,𝑖 = ∑ 𝜇0𝐼𝑘cos 𝜃𝑘
2𝜋𝑅𝑖 (𝟏. 𝟒)
𝑖−1 𝑘=0
のように表される。
次に、i 層が、k 層から受ける軸方向の磁界𝐵𝑧,𝑖,𝑘を求める。軸方向の磁界は、方位角 方向に流れる電流𝐼𝜑= 𝐼sin𝜃によって作られる。その大きさはソレノイドコイルが作る 磁界の大きさを求める式
𝐵 = 𝜇0𝑛𝐼 (𝟏. 𝟓) によって求めることが出来る。まず、式(1.7)の𝑛を求める。k 層目において、超伝導線 材を角度𝜃kで、フォーマーに1周巻いたときの線材の軸方向の長さ𝐿kは、Fig.1.9に示す ように
𝐿k= 2𝜋𝑅
tan𝜃𝑘 (𝟏. 𝟔) で表される。
Fig.1. 9:超伝導層の展開図
したがって、逆数1/𝐿kは単位長さあたりの巻き数を意味し、これが式(1.5)における𝑛に 対応する。また、この磁界は円周方向に流れる電流𝐼𝜑によって作られるので
𝐵𝑧,𝑖,𝑘 =𝜇0𝐼𝜑
𝐿k (𝟏. 𝟕) となる。これを計算することで、𝐵𝑧,𝑖,𝑘は最終的に
𝐵𝑧,𝑖,𝑘 = 𝜇0𝐼𝑘sin 𝜃𝑘
2𝜋𝑅𝑖cos𝜃𝑘 (𝟏. 𝟖) になる。したがって、i層が全ての外側層(i + 1層目からN層目)から受ける軸方向の磁 界𝐵𝑧,𝑖は、式(1.9)の和となるので
2𝜋𝑅 k
𝐿 k
𝜃 𝜃
𝐵𝑧,𝑖 = ∑ 𝜇0𝐼𝑘sin 𝜃𝑘 2𝜋𝑅𝑖cos𝜃𝑘
𝑁
𝑖+1 (𝟏. 𝟗) が得られる。したがって、ケーブルに加わる磁界の大きさは、方位角方向成分の𝐵𝜑,𝑖と 軸方向成分の𝐵𝑧,𝑖の合成であり、その合成磁界𝐵𝑖は
𝐵𝑖 = √𝐵𝜑,𝑖2 + 𝐵𝑧,𝑖2 (1.10) であり、通電電流𝐼𝑖の方向と𝐵𝑖のなす角𝜑𝑖は
𝜑𝑖 = 𝜃𝑖− tan−1(𝐵𝜑,𝑖
𝐵𝑧,𝑖) (1.11) と表される。以上の式を用いることで、ケーブルに加えられる磁界を求めることができ る。
次に、以上の式によって縦磁界効果を加えられたケーブルの𝐽cを求める。Fig.1.2、
Fig.1.3 のような縦磁界および垂直磁界を加えられたときの𝐽cの磁界𝐵依存性は、それぞ
れ
𝐽c||(𝐵) = ∑ 𝐾||𝑗
𝑗′
𝑗=0
𝐵𝑗 (1.12)
𝐽c⊥(𝐵) = ∑ 𝐾⊥𝑗
𝑗′
𝑗=0
𝐵𝑗 (1.13)
のように多項式として近似することができる。また、𝐽cの角度𝜑依存性は 𝐽c(𝜑) =1
2(𝐽c||+ 𝐽c⊥) +1
2(𝐽c||− 𝐽c⊥) cos 2 𝜑 (1.14) のように近似することができる。式(1.12)、式(1.13)における𝑖は、ケーブルの超伝導層 の𝑖番目の層を表しており、これを式(1.14)へ代入することで各層の𝐽cを求めることがで きる。代入により、式(1.14)は
𝐽c(𝜑𝑖) =1
2(𝐽c||(𝐵𝑖) + 𝐽c⊥(𝐵𝑖)) +1
2(𝐽c||(𝐵𝑖) − 𝐽c⊥(𝐵𝑖)) cos 2 𝜑𝑖 (1.14) と変形できる。これらの方程式群は
𝐽c𝑖 = 𝑓(𝐽c0, 𝐽c1, 𝐽c2, … , 𝐽c𝑁) (1.15) を繰り返し計算することで求めることができる。ここに、初期条件として
𝐽c0{0} = 𝐽c1{0} = 𝐽c2{0} = ⋯ = 𝐽cN{0} = 𝐽c (1.16) のように各層に同じ値の𝐽cを与えると
𝐽c𝑖{1}= 𝑓(𝐽c0{0}, 𝐽c1{0}, 𝐽c2{0}, … , 𝐽c𝑁{0}) (1.17) が求められ、これを𝑘回繰り返すことで
𝐽c𝑖{𝑘}= 𝑓(𝐽c0{𝑘−1}, 𝐽c1{𝑘−1}, 𝐽c2{𝑘−1}, … , 𝐽c𝑁{𝑘−1}) (1.18)
が求められる。最後に、求めた𝐽cを𝐼cへ変換し、全ての層の𝐼cを足し合わせることで電 流容量𝐼eを求めることができる。したがって、電流容量は
𝐼e= ∑ 𝐼c𝑖
𝑁
𝑖=1
(1.19) により求まる。
1.6
超伝導限流器超伝導ケーブルの実現のためには、落雷等の事故で発生した過電流からケーブルを保 護する仕組みが必要になる。Fig. 1.10に、ケーブルに過大電流が通電された際の電界𝐸- 電流𝐼特性を示す。落雷等の事故でケーブルの最大電流容量𝐼eを超える過電流がケーブ ルに通電されると、電界が急激に立ち上がり、最悪の場合ケーブルの焼損や、末端機器 の破損に繋がる可能性がある。したがって、過電流が発生してもケーブルに流れ込まな いようにする必要がある。このような過電流の流れを制限するものが超伝導限流器であ る。
超伝導体を減流器として用いることで、平常時は電気抵抗ゼロで運用できる、限流動 作のオンオフは超伝導体が𝐼eを超えるかどうかで切り替わるので、限流器自身が過電流 を検出できるという利点がある。この超伝導限流器には抵抗型限流器と誘導型限流器が ある。また、これらの超伝導限流器の配置方法として、ケーブルの適所に配置するもの とケーブル自体に付加するものがある。
Fig. 1.10:過電流通電時のケーブルの𝑬-𝑰特性
1.6.1
抵抗型限流器抵抗型限流器とは、Fig. 1.11に示すように超伝導体とバイパスを並列に接続した回路 である。𝐼 < 𝐼cである平常時は、超伝導体の電気抵抗が無いためFig. 1.11のようにすべ ての電流が超伝導体に流れる。一方で、𝐼 > 𝐼cとなる限流動作時において、超伝導体に 電気抵抗が発生するため、Fig.1.12のように電流の一部がバイパスへ分流する。その際、
超伝導体へ流れる電流量は電流容量分で、それを超過した電流はバイパスへ流れる。こ のようにして、過電流が超伝導体へ流れ,ケーブルの焼損を防ぐ。
𝐸
𝐸 c
𝐼
normal current fault current
maximum 𝐼
eFig. 1.11:抵抗型限流器(平常時) Fig. 1.12:抵抗型限流器(限流動作時)
1.6.2
誘導型限流器誘導型限流器とは、Fig. 1.13に示すように、1次コイルと短絡した2次コイル(超伝導 コイル)を変圧器のように配置したものである。この限流器の動作は次のようになる。
𝐼 < 𝐼c(2次コイルのもの)である平常時において、Fig. 1.13に示すように、1次コイルに 電流が流れると、1次コイルに磁界が作られ、その磁界が2次コイルに加わる。すると、
2次コイルは、加えられた磁界を打ち消すように逆方向の磁界を作り、その磁界が1次 コイルの磁界も打ち消す。このとき、2次コイルは超伝導状態であるため、磁界を打ち 消す遮蔽電流は減衰せず、1次コイルが作る磁界は打ち消され続けるため、1 次コイル 側にインダクタンスは発生しない。一方で、𝐼 > 𝐼cである限流時において、Fig. 1.14 に 示すように、2次コイルは1次コイルが作る磁界を打ち消そうとするが、2次コイルで 抵抗が発生しているため、遮蔽電流は減衰し、1次コイルの磁界を打ち消すことができ なくなる。それにより1次コイルでインダクタンスが発生し、電流の流れが制限される。
superconductor
bypass 𝐼 < 𝐼
e𝐼
superconductor
bypass 𝐼 > 𝐼
e𝐼
𝐼 e
𝐼 − 𝐼 e
Fig. 1.13:誘導型限流器(平常時)
Fig. 1.14:誘導型限流器(限流動作時)
1.7
縦磁界効果を用いた超伝導限流器上記の限流器の種類と配置方法から、抵抗型限流器を超伝導ケーブル自体に付加する 事を選択し、限流機能を付加した縦磁界直流超伝導ケーブルが考案されている[4]。こ のケーブルの模式図をFig. 1.15 に示す。Fig.1.4と同様に、フォーマーに超伝導線材が 巻かれているが、inner layerとshield layerの外側に、それぞれ超伝導層とは逆向きに銅 バイパス層を巻きつけており、これが限流器となっている。平常時は全ての電流が超伝 導層を流れるが、限流動作時は銅バイパス層へ電流が流れ、それによる自己磁界が縦磁
𝐼 < 𝐼 e
𝐼
𝐵 𝐵
𝐵
𝐼 > 𝐼 e
𝐵 𝐵
𝐵
𝐼
界を弱めることで限流させることができる。
Fig. 1.15:限流機能を付加した縦磁界超伝導直流電力ケーブル
1.8
本研究の目的限流機能を付加した縦磁界超伝導直流電力ケーブルが考案されているが[4]
① 限流器の有効性および電流容量(層数)と限流効果の関係
② 実際に限流効果が表れるような銅バイパス層の径
③ 限流器となる銅バイパス層の巻き角度と限流効果の関係
が明らかにされていない。したがって、本研究ではより具体的なケーブル構造を明らか にすることを目的とする。
第 2 章 解析モデル
2.1
解析の概要限流器付き縦磁界超伝導ケーブルの構造は提案されているが[4]、その有効性や減流器 の最適化がまだ行われていない。また、第1章で述べたように、構造は縦磁界超伝導ケ ーブルにバイパスとなる銅バイパス層を追加する形だが、銅バイパス層がどの程度必要 かはわかっていない。特に、銅バイパス層が少なすぎる場合、限流効果が小さいために ケーブルが焼損する危険性がある。一方、銅バイパス層が多すぎる場合、限流効果は大 きくなるが、銅バイパス層が大型化する、ケーブルに縦磁界が加えにくくなる等の問題 が発生する。そこで、ケーブル径を抑えつつ限流効果を確保することが出来る部分を探 した。限流器が無い超伝導ケーブルの磁界依存性を仮定し、その依存性に対して限流器 を付加した場合の影響を追加することで、限流効果を調べた。解析はインナー層のみに 着目し、シールド層や銅バイパス層は単に外部として扱い、外部から磁界を加えられて いる状態を仮定している。
解析は、まず超伝導層の層数が変化した場合の限流効果の大きさの変化を解析し、超 伝導層は多いほうが良いのか、少ないほうが良いのかを明らかにした。
次に、平常時はケーブルのみに電流が流れ、過電流発生時に銅バイパス層へ電流が流れ るという限流動作を実現させるためには、銅バイパス層はどの程度必要になるかを解析 した。
最後に、銅バイパス層の巻き角度を調整することで限流効果やケーブル径を変化させ ることが出来るが、どの程度の角度であればこの2つを両立できるのかを解析した。
これらの解析によって、限流器付き縦磁界直流ケーブルの最適な構造を調べた。
2.2
限流器付きケーブルの限流動作ここでは限流器付ケーブルに事故電流が通電された際の限流動作を説明する。Fig. 2.1に 全体のフローチャートを示す。この限流器は、平常時は縦磁界下の𝐼eが最大になっている 状態で運用している(Fig. 2.1中の1)。過電流𝐼が通電された場合、電流容量𝐼eを超えた分 の電流
𝛥𝐼0= 𝐼 − 𝐼e0 (2.1) が銅バイパス層へ流れる(Fig. 2.1中の2, 3)。銅バイパス層は超伝導層と逆向きにコイル 状に巻かれており、銅バイパス層へ電流が流れることで、ケーブルの軸方向で、加えら れている縦磁界と逆方向の自己磁界が作られる。その大きさは
𝐵𝛥𝐼0 = 𝐾dc𝛥𝐼0 (2.2)
で表される。ただし、𝐾dc[T/A]は銅バイパス層の磁界定数である。さらに平常時に加え られている縦磁界を𝐵e0とすると、𝐵𝛥𝐼0は𝐵e0と逆方向で弱めあうことから、ケーブルの 縦磁界は
𝐵e1= 𝐵e0− 𝐵𝛥𝐼0 (2.3) のように減少する(Fig. 2.1中の4)。縦磁界の減少により、縦磁界下で最大だった電流容 量も𝐼e0から𝐼e1まで減少し、電流容量の減少分
𝛥𝐼1= 𝐼e0− 𝐼e1 (2.4) が銅バイパス層へ分流する(Fig. 2.1中の5)。電流容量の減少量はケーブルの縦磁界依存 性で決まることになる。ここで、限流器を付加していないケーブル電流容量の縦磁界依
存性を Fig.2.2 の黒線で表される、電流容量がピークを持つような依存性を仮定する。
更に縦磁界ケーブルにおいては、低磁界領域の縦磁界効果による𝐼eの増加特性を利用す るので、この領域の増加率をパラメータ 𝛼を用いて
𝐼e= 𝐼e(0)(1 + 𝛼𝐵e) (2.5) と仮定する。ただし、𝐼e(0)は自己磁界下での𝐼eである。𝛼が大きいほど縦磁界の増加に 伴う𝐼e増加量が大きくなる。したがって、ケーブルに𝐵e1が加えられているときの電流 容量𝐼e1は
𝐼e1= 𝐼e(0)(1 + 𝛼(𝐵e0− 𝐵𝛥𝐼0)) (2.6) と表されるので、式(2.4)より𝛥𝐼1は、
𝛥𝐼1= 𝐼e0− 𝐼e1= 𝛼𝐼e(0)𝐾dc 𝛥𝐼0= 𝜀 𝛥𝐼0 (2.7) と変形できる。ただし、𝜀は
𝜀 = 𝛼𝐼e(0)𝐾dc (2.8) で、𝜀 < 1である。𝛥𝐼1は縦磁界の減少に伴う電流容量の減少量を表しており、この𝛥𝐼1が さらに銅バイパス層へ分流することになる。再び自己磁界𝐵𝛥𝐼1が作られ、これは
𝐵𝛥𝐼1 = 𝐾dc𝛥𝐼1 (2.9) で表される。𝐵𝛥𝐼1もまたケーブルの縦磁界を減少させ、減少後は
𝐵e2= 𝐵e1− 𝐵𝛥𝐼1 (2.10) となり、電流容量は更に減少し、減少分𝛥𝐼2が発生する。𝛥𝐼2も同様に、
𝛥𝐼2= 𝐼e1− 𝐼e2 (2.11) のように表され、𝐼e2は
𝐼e2=𝐼e(0)(1 + 𝛼(𝐵e1−𝐵𝛥𝐼1)) (2.12) と表される。したがって、式(2.11)、式(2.12)より
𝛥𝐼2=𝛼𝐼e(0)𝐾dc𝛥𝐼1 =𝛥𝐼0(𝛼𝐼e(0)𝐾dc)2 = 𝜀2 𝛥𝐼0 (2.13) となる。その後、𝛥𝐼2が銅バイパス層へ分流して縦磁界を減少させ、さらに電流容量を 下げるというようにFig.2.1中の青い枠で囲まれた部分を何度も繰り返す(Fig.2.1中の6以 降)。これが𝑛回起こったと仮定すると、このとき銅バイパス層へ分流する電流量𝛥𝐼𝑛は、
𝛥𝐼𝑛= 𝜀𝑛 𝛥𝐼0 (2.14)
のように表される。
以上の結果を図としてまとめたものをFig.2.3に示す。上記の式で求めた𝛥𝐼は1回の分流 による𝐼e減少を表しており、最終的に減少する𝐼eは、全ての𝛥𝐼の和である。これを求める と、
𝐼′ = Δ𝐼0(1 + 𝜀 + 𝜀2+ ⋯ + 𝜀𝑛) ≈ 𝛥𝐼0
1 − 𝜀(𝜀 < 1) (2.15) のようになる。したがって、最終的な電流容量𝐼e𝑛は、
𝐼e𝑛 = 𝐼 − 𝐼′≈ 𝐼 − 𝛥𝐼0
1 − 𝜀 (2.16) となる。このようにして、最終的にケーブルの電流容量を大きく減少させることができる。
したがって、このような事故電流が銅バイパス層に分流し、縦磁界を減少させ、最終的 にケーブル全体に大きな限流効果が起こることになる。
Fig. 2.1:ケーブルの限流動作
Fig.2.2:磁界依存性の直線近似
Fig. 2.3: 𝛥𝐼と𝐼′の関係
2.3
銅バイパス層の最適化限流器つき縦磁界超伝導ケーブルは、Fig.1.15で示したようにケーブルに対してバイ パスとなる銅バイパス層を巻きつける。ここで、抵抗値𝑅の大きさは式(2.1)のように表 される。ただし、𝑙は抵抗の長さ、𝑆は抵抗の断面積で、𝜌は抵抗率でケーブル使用環境 は液体窒素温度77.3 Kを想定しているので、𝜌 = 2.5 × 10−9 Ωmで設計する必要がある。
𝑅 = 𝜌𝑙
𝑆 (2.1) このR値は銅バイパス層に過電流をうまく分流させるためには、正しく設定する必要 がある。特に、𝑅が小さすぎる場合は平常時でも銅バイパス層にばかり電流が流れ、ケ ーブルに電流がほとんど流れないということが起こる。逆に𝑅が大きすぎる場合、𝐼eを 超えた過電流がケーブルに流れず、結果的にケーブル自体が焼損する危険な状態になる。
したがって、電流量がケーブルの𝐼eよりも低い平常時は全電流がケーブルに流れ、電流 量がケーブルの𝐼eを上回る事故時に過電流が銅バイパス層へ流れるような抵抗値を求 め、最終的にそれを実現するためのバイパス層の径を求める必要がある。しかし、𝑅は 銅バイパス層の巻き角度𝜃によっても変化するため𝜃についても考慮しなければならず、
さらに𝜃はバイパス層の限流効果の大きさを決めるため、できるだけ限流効果が大きく なるような値にもしなければならない。したがって、バイパス層の最適化が必要となる ためここでは巻き角度𝜃まで考慮した際の銅バイパス層の適切な抵抗値に注目し、それ を実現するために必要な銅バイパス層の径の大きさを調べた。
2.3.1
銅バイパス層の抵抗値銅バイパス層の抵抗値はその径と巻き角度から求められるが、𝜃は限流効果の大きさ を決めるため、バイパス層の最適化が必要となる。銅バイパス層の抵抗値は、銅バイパ ス層の径に依存しており、その径は断面積から求められる。バイパス層の径と断面積の 関係は次式のように表される。
𝜋(𝑟bypass2 − 𝑟cable2 ) = 𝑆 (2.2) ここで、𝑟bypassは銅バイパス層の径、𝑟superはケーブル径、𝑆は式(2.1)で求めた銅バイパ ス層の断面積である。銅バイパス層の巻き角度の増加に伴い長さも増加するため、巻き 角度も抵抗値に依存しており、そのときの長さ𝑙′は次式のように表される。
𝑙′ = 𝑙
cos𝜃 (2.3)
ここで、𝜃は巻き角度、𝑙は巻き角度が無い𝜃 = 0 degreeの場合のバイパス層の長さであ
る。バイパス層の抵抗値はこれら2つに依存しているため、式(2.2)、式(2.3)を用いて式
(2.1)を書き直すと、次式のようになる。
𝑅 = 𝜌 𝑙
𝜋(𝑟bypass2 − 𝑟cable2 )cos𝜃 (2.4)
次に、Fig.2.4に内側層と銅バイパス層の断面図を示す。図で示されているように、ケ
ーブルの内側から、インナー層、内側銅バイパス層、絶縁層、シールド層、外側銅バイ パス層が巻きつけられている。縦磁界で電流容量𝐼eが増加したインナー層のバイパスは 内側銅バイパス層で、事故電流が流れた際には、このバイパス層にスムーズに分流させ るような𝑅を設定する必要がある。
Fig:2.4:ケーブル断面図
銅バイパス層はインナー層と巻方向は逆であるが、超伝導ケーブルと並列に接続さ れる。したがって、ケーブルに電流が通電された場合、どちらの層にどの程度の電流が 流れるのかを見積もる必要があるが、ここでは次のように
𝐼super: 𝐼bypass = 𝑅bypass: 𝑅super (2.3) で表せると仮定する。ここで𝐼super、𝐼bypassはそれぞれ超伝導層、銅バイパス層を流れ る電流、𝑅super、𝑅bypassはそれぞれの抵抗値である。また、全体の電流をIとすると、
𝐼super、𝐼bypassとは関係は
𝐼 = 𝐼super+ 𝐼bypass (2.4) の関係がある。したがって、
𝐼super= 𝑅bypass
𝑅super+ 𝑅bypass𝐼 (2.5) 𝐼bypass= 𝑅super
𝑅super+ 𝑅bypass𝐼 (2.6)
となる。なお、2つの抵抗が並列に接続されている回路において、抵抗値が等しい場合 に2つの抵抗に同じ電流が流れると仮定した。したがって、銅バイパスの径は、運転電 流の最大値で決まることになる。仮に、バイパスの抵抗値を、ケーブルに電流容量の2 倍の電流が通電されたときの抵抗値に設定すると、通電電流が電流容量を超えたときに 限流動作が始まり、ケーブルに電流容量𝐼e以上の電流が流れないように設定することが 出来る。このようにして銅バイパス層の抵抗値𝑅bypassを決定し、𝑅bypassと巻き角度𝜃を 式(2.4)へ代入することで、最終的な銅バイパス層の径𝑟bypassを決定した。
Table3.1:超伝導層と磁界依存性の関係
第 3 章 解析結果および考察
3.1
超伝導層数と限流効果の関係超伝導層の層数が変化した場合の限流効果について解析した。特に、解析を行う上でケ ーブルの縦磁界依存性を与えるパラメータ 𝛼 を与える必要があるが、ここでは、1 層につ いては模擬ケーブルの実験結果[5]の値を、多層に関しては実験結果がないので、限流器が 付加していない縦磁界ケーブルの理論解析を用いて理論解析を行った[5]。各層のパラメー
タ𝛼をTable 3.1に示す。また、2.3.1で述べたように、銅層の巻き角度を変化させると、抵
抗の値Rが変化するので、ここでは、巻き角度を45°と一定として解析を行った。
超伝導層数が異なるケーブルの解析結果をFig.3.1 に示す。ただし、横軸はケーブルの通 電電流𝐼、縦軸はケーブルの𝐼eを表し、それぞれ初期状態の電流容量𝐼e(0)で規格化してい る。参考のために、限流器を付けていない場合を破線で示す。したがって、破線から離れ ているほど𝐼e減少が大きく、より限流効果が大きく、ケーブル保護ができていることを 意味する。Fig.3.1より、限流器を取り付けることで層数にかかわらず通電電流増加に伴い𝐼e が減少し、この限流器が有効であることが確認できる。次に、ケーブルの超伝導層数に 着目する。異なる超伝導層の限流効果を比較すると、層数の増加に伴い限流効果が大き くなっている。1層と6層の場合を比較すると、限流効果は後者の方が大きく電流容量 の2.5倍の過電流が通電されたとき、電流容量を半分以下まで減少させることが出来る。
更に層数が増加すると、限流効果も大きくなり、12層の場合電流容量の1.5倍程度の過 電流によって電流容量を半分まで減少させることができる。このような層数の違いによ る限流効果の差は、ケーブルに加わる縦磁界の大きさによるものである。ケーブル層数 が多くなると、自己磁界も増加し縦磁界効果が強められ、それに伴う𝐼eの増加率も大き くなり、パラメータ𝛼が大きくなる。したがって、縦磁界からのずれによる電流の減少 も大きくなるので、限流効果も大きくなる。
超伝導層数 パラメータ𝛼[1/T]
1 1.5 × 10−3
6 5.0 × 10−3
9 6.5 × 10−3
12 9.0 × 10−3
Fig.3.1:通電電流𝐼の増加と限流率の関係
1 1.5 2 2.5
0 0.5 1
I/I e (0) I en /I e (0 )
without limiter 1 layer
6 laye rs α = 5.0
× 10
−3α = 1.5 × 10
−3T = 77.3 K
9 laye rs α = 6.5
× 10
−312 laye rs α
= 9.0
×
10
−33.1.1
銅バイパスの巻き角度𝜃依存性3.1より、𝜃 = 45 degreeのときの限流器付きケーブルの有効性が確認されたので、次 に銅層の巻き角度𝜃を変化させたときの限流効果について調べた。今回は1層、6層、9 層及び12層のケーブルの巻き角度を𝜃 = 30 degree, 45 degree, 60 degreeと変化させた場 合を調べた。Fig.3.2-Fig.3.5 に解析結果を示す。ただし、2.3.1 で述べたように𝜃の変化に 伴い𝑅が変化するが、ここでは𝜃を変化させた際に𝑅が一定となるようにして解析を行った。
また、Fig.3.5の12層、𝜃 = 60 degreeは、式(2.8)で表される𝜀が1より大きくなり発散す
るためここでは不適とした。
この結果より、𝜃が大きくなるほど限流効果が大きくなることが確認できた。更に、1 層の場合において𝜃による限流効果の変化は小さいが、𝜃の増加に伴い限流効果も大き くなる。このような𝜃による違いの理由としては、𝜃が大きくなるほど単位長さあたり の巻き数が増加し、縦磁界を弱める磁界が大きく増加することになるので、縦磁界下で の高い Ie からの減少率が多くなるために、現象効果は大きくなる。但し、巻き角度を 大きくするとl’が増加することになるので、利用するケーブル容量及びケーブル保護の 観点から設計する必要がある。例えば、ケーブルの層数とするためにバイパス層は密な コイルとなり、バイパス層を流れる電流が作る自己磁界が強くなったためであると考え られる。
Fig.3.2:1層の場合の限流効果
Fig.3.3: 6層の場合の限流効果
Fig.3.4: 9層の場合の限流効果
1 1.5 2 2.5
0 0.5 1
I/I
e(0) I
e/I
e(0 )
without limiter θ=30 degree
θ=45 degr
ee θ
=60 degr
ee
1 1.5 2 2.5
0 0.5 1
I/I
e(0) I
e/I
e(0 )
without limiter θ=30 degree
θ=45 degr
ee θ
=60 degr
ee
Fig.3.5: 12層の場合の限流効果
3.2
銅バイパスのR
の影響以上の結果より、限流効果を大きくするために𝜃はできるだけ大きいことが望ましい が、𝜃の増加によってバイパス層の𝑅もまた大きくなる。そのため、バイパス層の巻き 角度𝜃まで考慮した抵抗値𝑅を求めなければならない。銅バイパス層の抵抗値は、超伝 導層に𝐼eを超える事故電流を通電した際の電圧から抵抗を求め、その値を抵抗値とした。
ただし、実際に送電線などの用途で超伝導体を用いる場合、ケーブル焼損の危険を避け るため、運転電流にケーブルの電流容量に近い電流を用いることはなく、ケーブルに余 裕を持たせるために電流容量よりも低い電流を流す。したがって、ここではケーブルに 対して電流容量よりも低い電流が通電されたときから限流動作をはじめるような抵抗 値の設定を考える。
まず、この銅バイパス層の抵抗値を求めるために、まずは𝜃を変化させた場合の径と 抵抗値の依存性を調べた。Fig. 3.6に、その関係を示す。図より、銅バイパス層の抵抗 値の増加に伴い径を減少させることが出来るが、その減少率は徐々に小さくなる。次に、
超伝導層の𝐸と銅バイパス層の径の関係をFig. 3.3に示す。ただし、𝜃の変化は𝑅bypassに 影響を与えるため、ここでは𝜃 = 45 degreeで一定とした。図より、電界基準として用い られる𝐸 = 10−4 V/mや、一桁大きい𝐸 = 10−3 V/mの時の抵抗値を銅バイパス層で実現 するためには30 mm以上の径が必要となり、これは超伝導ケーブルの径よりも大きなも
1 1.5 2 2.5
0 0.5 1
I/I
e(0) I
e/I
e(0 )
without limiter
θ=30 degree
θ=45 degr
ee
のとなり、銅バイパス層の径により超伝導層へ加える縦磁界も減少する。一方で、径を 数 mm程度まで減らした場合、超伝導層の電界は𝐸 = 10−1 V/mまで上昇する。
Fig.3.6: 𝑅と𝑟bypassの関係
10−9 10−8 10−7 10−6 100
101 102
R[Ω]
r
bypass[m m ]
Fig.3.7: 𝐸と𝑟bypassの関係
次に、銅バイパス層の抵抗値を Fig.3.6、Fig.3.7 で求めた値に設定した場合、超伝導 層と銅バイパス層にどの程度の電流が流れるかを解析した。解析は、超伝導層の𝐸がそ れぞれ10−4、10−3、5.0 × 10−3、10−2 V/mとなるときの抵抗について行った。その場合 の、𝐸と𝑅bypassの対応をTable 3.2に記す。
𝐸[V/m] 𝑅bypass[Ω]
10−4 2.1 × 10−9 10−3 2.1 × 10−8 2.5 × 10−3 5.4 × 10−8 5.0 × 10−3 1.1 × 10−7 10−2 2.1 × 10−7
Table 3.1に記した抵抗値を銅バイパス層の抵抗値として用いて通電した場合の、超伝
導層と銅バイパス層に流れる電流を示した図を、それぞれFig.3.8からFig.3.12に示す。
Fig.3.8 より、銅バイパス層の抵抗値を2.1 × 10−9 Ωに設定した場合、図のように大部分
の電流が銅バイパス層へ流れており、電流容量に達する前からバイパスへの分流が始ま っており、限流器として用いるためには抵抗値をより高くする必要がある。更に、Fig. 3.6 よりこの抵抗を銅バイパス層で実現させるためには、銅バイパス層の径が100 mm以上
10−4 10−3 10−2 10−1
100 101 102
E[V/m]
r
bypass[m m ]
E=10−4 V/m E=10−3 V/m E=5.0×10−3 V/m E=10−2 V/m E=10−1 V/mTable 3.2:超伝導層の𝐸と対応する𝑅bypass
必要になることから、この抵抗値は適さないと考えられる。Fig.3.9より銅バイパス層の 抵抗値を2.1 × 10−8 Ωに設定した場合、超伝導層に流れる電流量は電流容量の8 割程度 で、電流容量に余裕があるときから分流が始まることから適切な抵抗値であると考えら
れるが、Fig.3.9より銅バイパス層の径は30 mm以上となり、縦磁界を加える際に支障を
きたす可能性がある。Fig.3.10より銅バイパス層の抵抗値を5.4 × 10−8 Ωに設定した場合、
超伝導層に流れる電流量は電流容量の9割程度で、過電流発生時でも余裕を持って分流 させることができるが、このときの銅バイパス層の径は20 mm程度である。Fig.3.11 よ り銅バイパス層の抵抗値を1.1 × 10−7 Ωに設定した場合、超伝導層には電流容量に近い 電流が流れ、実際の送電ケーブルに用いるには適さないと考えられるが、径を10 mm程 度まで抑えることが出来る。Fig.3.12より銅バイパス層の抵抗値を2.1 × 10−7 Ωに設定し た場合も、1.1 × 10−7 Ωの場合と同様に電流容量に近い電流が流れる。この場合も実際 の送電ケーブルとして用いるには抵抗値が高いが、径はさらに小さくなり、6 mm程度 まで抑えることが出来る。
この結果より、バイパス層の抵抗値を2.1 × 10−8− 5.4 × 10−8 Ω程度の抵抗値に設定 することで、ケーブルが電流容量に達する前にバイパス層への分流が始まり、ケーブル を保護することが出来ると考えられる。
Fig.3.8: 𝑅bypass=2.1 × 10−9Ωのときの分流の様子
2000 2500
0 1000 2000 3000
I[A]
I
super[A] , I
bypass[A]
I
superI
bypassFig.3.9: 𝑅bypass=2.1 × 10−8Ωのときの分流の様子
Fig.3.10: 𝑅bypass=5.4 × 10−8Ωのときの分流の様子
2000 2500
0 1000 2000 3000
I[A]
I
super[A] , I
bypass[A]
I
superI
bypass2000 2500
0 1000 2000 3000
I[A]
I
super[A] , I
bypass[A]
I
superI
bypassFig.3.11: 𝑅bypass=1.1 × 10−7Ωのときの分流の様子
Fig.3.12: 𝑅bypass=2.1 × 10−7Ωのときの分流の様子
2000 2500
0 1000 2000 3000
I[A]
I
super[A] , I
bypass[A]
I
superI
bypass2000 2500
0 1000 2000 3000
I[A]
I
super[A] , I
bypass[A]
I
superI
bypass第 4 章 まとめ
限流器を付加した縦磁界超伝導電力ケーブルの構造が考案されており、解析によりケ ーブルの有効性や限流器となる銅バイパス層の最適化について調べた。
考案されたケーブルは、過電流の通電により電流容量が減少しており、限流動作が起 こっていることが確認できた。さらに、この限流効果は超伝導層が多層になるほど大き くなることもわかり、多層化はケーブルの電流容量だけでなく限流効果にも効果がある ことが確認出来た。
銅バイパス層の最適化について、まず𝜃を変化させた場合の限流効果の違いについて 調べた。これより、𝜃の増加に伴い限流効果が大きくなり、限流効果の増加量は層数の 増加に伴い大きくなる。
銅バイパス層の抵抗値を変化させた際に、超伝導層とバイパス層のどちらにどの程度 の電流が流れるかを計算により求めた。5.4 × 10−8程度の抵抗に設定することで、超伝 導層の電流容量に余裕がある状態で分留させることができることがわかった。
謝辞
本研究を行うにあたり、研究テーマの選択や研究の方向性、具体的な解析手法、研究 上で困難に陥った際の対処法や結果に対する考察、論文の執筆について様々な助言、ご 指導をいただいた木内勝准教授に深く感謝申し上げます。学生生活や研究における心構 え等の助言、ご指導を頂いた小田部荘司教授に深く感謝申し上げます。
また、公私ともどもお世話になりました小田部・木内研究室の皆様に感謝いたします。
参考文献
[1]Yu. F. Bychkov, V. G. Vereshchagin: JETP Lett. 9(1969)404.
[2]A. Tsuruta, I. Yoshida: Japanese Journal of Applied Physics 53 (2014) 078003
[3]T. Matsushita, et al.: Superconductor Science and Technology,25 (2012) 125009.
[4]T. Matsushita, et al.: IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 25 (2015) 5401704.
[5]T.Matsushita, V. S. Vyatkin, M. Kiuchi and E. S. Otabe; Int. Workshop on Coated Conductors for Applications 2014, (Jeju, Dec. 2014).