バルク超伝導体の保護膜による磁気浮上特性
赤木美崇* 原田寛治**
Magnetic float property for shield film of high Tc supereonductor
Yoshitaka AKAGI and Kanji HARADA
Recent, NIBa2Cu:Py superconductors have made by a combination process of solid state reaction and partial melbing. ln air YBaL,Cu:P, phase diagram shows a peritectic point at about 10100C where Y,,BaCuO,,, a liquid and YBa2Cu:iO, coexist. [1]he Y2BaCuOr, acts as the nucleation site for peritectic reaction. The nureacted Y,,BaCuOs seems to act as a flux pinning center.
We fabricated bulk superconductors to put YBa2Cu30, and Y2BaCuOr, during partial melting. As the result,
we have found that Y2BaCuO,) can penetrate into YBa,?Cu:Py bulk superconductors. This bulk superconductor showed long magnetic float property than no penetrated Y2BaCuOr,.
Ke.v words. Superconductor, part,ial melting, magnetic fioat property,
1.はじめに
高温超伝導体が発見され.て以来,より高い臨界温度
(Tc),より高い臨界電流密度Oc)を求めて,多くの研究
がなされてきた.これら酸化物超伝導体の材料物性や特 性は,従来の金属系および化合物酸化物とは異なって いる.そこで,酸化物超伝導体の中でも,最も一般的な Y−Ba−Cu−0(YBCO)系を用い,加工プロセスを工夫し た.YBCO系超伝導体は,組成比Y:Ba:Cu=1:2:3 で,Y203が高温領域で安定しているので,完全溶融状 態になりにくい.さらに,YBa,aCu30.(Y123相)超伝導相 は,Y2BaCuO5(Y211相)常伝導相と液相との包晶反応
により生成されることが知られている.この包晶反応を積極的に利用し,ピン.止め点を導入することにより,より高 いJcを得る研究がなされているD〜3).そこで本研究では,
Y123バルクをY211バルクで挟む.ことにより,ピン止め 点であるY211相をY123バルク.表面に浸透させた.そ の結果,Y211相の浸透厚を変化させることによって,磁
気浮上特性が変わることがわかったので報告する.原稿受付 平成12年8月31日
*専攻科電子・情報システム工学専攻
**電気工学科
2.試料の作製方法
図1のようにY二Ba:Cuの組成比が1:2:3,2:1:1に
なるようにそれぞれ.均一になるまで混合し,仮焼成を行 ったのち粉砕した.この仮焼成を5回繰り返した.次に,プレス器でバルク状にし本焼成を行い,Y123バルク, Y
211バルクを作製した.さらに,図2のように試料を置き,部分溶融を行い,O。アニールで酸素補給を行った.
雫四季斗の混台一
仮焼成と粉砕 5画繰り返す
粁≠∫戎:+本:暁成
ゴ
吾ド分}容扇虫
02アニー一.pl;一
図1 作製L程
一5一
津山高専紀要第42号 (2000)
皿
Y£11バルク Y1鴉バルク Y211バルク
図2試料の配置
3.試料の評価
師
3器2伍一σ5
︵糾燗①oD︶云握留
0
各試料の組成比(1040。C一定)
十Y/Ba*2
i一餐F・Ba/Ba*2
1+Cu/Ba*2
O 5 10 15 20
各溶融時間[分]
3.1 走査型電子顕微鏡(SEM)写真
図3はY123バルクをY211バルクで挟み溶融した試 料の断面SEM写真である.この写真からわかるように元 はY123相のみの試料が,溶融することによってY211 相がY123バルクに浸透していることがわかる.また, Y2
11相は側面にも浸透していることがわかった.
謙趨鍵撫
H
1360 m
図3試料断面のSEM写真
Y211相
3.2 組成比
図4はY123バルクをY211バルクで挟み,溶融温度を
/040℃で…定にし,溶融時間を変化させた場合の各試 料の組成比である、尚,以後の図にある溶融時間0分の 試料はY211バルクで挟んでいない試料の特性である.
図4よりCuの組成比は2.5付近であまりバラツキが無 いが,Yの組成比はバラツキが大きい.これは測定場所
にもよるが溶融条件(溶融時間)によって組成比のずれ が生じると思われる.35
3%2価105
︵糾欄⑩m︶ヨ怪羅
0
図4溶融温度一定の場合の組成比
各試料の組成比(5分一定)
十Y/Ba*2
一一一
№笈鼈黶@Ba/Ba*2
一一
Vir一 Cu/Ba*2
1020 1030 1040 1050
溶融温度[。C]
図5溶融時間.一定の場合の組成比
図5は溶融時間を5分で一定にし,溶融温度を変化さ せた場合の各試料の組成比である.図5より1040℃を 除いてYの組成比は1,Cuの組成比は3近くになってい
る.
以上のことより,組成比に関しては溶融温度より溶融 時間を一淀にすると組成比が一定になりやすいことがわ
かった.
3.3 浮上時間・浮上高さ・浸透厚
(溶融温度一定の場合)図6は溶融温度を1040℃一一定にした場合の溶融時 間に対する浸透厚・浮1二時間を示したものである.図6よ り溶融時間が長くなるにしたがって浸透厚は厚くなるが,
浮上時間は10分をピークに短くなっている.これはY21 1相がY123バルクに浸透し過ぎ, Y123相が少なくなっ たためである.
一6一
バルク超伝導体の保護膜による磁気浮上特性 赤木・西本・原田
O L..
O 5 10 15 pm
溶iSfi flHFII5)]
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40ト「
20酩 冤
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圏浸透厚:
1+淫ヒ時間
図6溶融時間に対する浸透厚・浮上時間 (溶融温度:/040CC)
図7は溶融時間に対する浮上時間・浮上高さを示した ものである.図7より10分はY211相の厚さが試料の半
分まで浸透していた.また,Y2]1バルクで挟んでないものに比べ約5倍浮上時間は延びたが,浮上高さが低くな
った.これはY211相に保温効果があるためと思われる.以しのことより浸透厚を溶融時間で制御することによっ
て浮上時間・浮一L高さを変化させることが出来ることがわ
かった.3.4 浮上時間・浮上高さ・浸透厚
(溶融時間一定の場合)
図8は溶融時間を5分に一.一定にした場合の溶融温度 に対する浸透厚・浮1二時間を示したものである.図8の
浮し時間の変化は溶融温度を一.・定にした場合の図6と
竃iil≠
pt o.2 1
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09
1Cmo 1030 1040 1050 溶融劉虹「(]
図8溶融温度に対する浸透厚・浮上時問 (溶融時間:5分)
大差はない.しかし,溶融時間を5分…定にすると浸透 厚が薄くなっているのがわかる.
図9は溶融温度に対する浮一L時間・浮上高さを示した
ものである.図9では浮上時間が多少短くなったが,浮
上高さは浸透厚が薄いためにバラツキがなく一一定になっ
ているのがわかる.また表1,表2は溶融温度,溶融時間に対する浮上時
間・浮上高さ・浸透圧・臨界温度である.尚,臨界温度(Tc)はクライオケルビン(小型冷凍機)を用いて測定を
行った.表1,表2よりTcは77K〜86Kと巾がある.その原因
は試料の大きさが大きく,熱容量の問題等のためと思われる.今後の検討課題である.
O 5 10 15 ro 溶融瑚嗣
図7溶融時間に対する浮し時間・浮上高さ (溶融H寺問:1040。C)
60 T0
S30⑳100
﹇の﹈踵酋﹃蹴
8 6津
4鍵1譲饗
2邑
o
lcmo la30 lo40 loso灘(菱
縫9溶融温度に対する浮上時間・浮一L高さ
(溶融時間:5分)一7一
津山高専紀要第42号 (2000)
表1溶融温度を一定にした場合(1040℃)
処理条{牛
浮上時間[S] 浮上高さ[mm]
浸透厚[mm]臨界温度[K]
0分 10.3 6.0 0 86.2
5分 43.0 4.0 0,028 82.9
10分 52.1 3.0 0.09 84.5
15分
30.02.5 0.12 一
20分 9 0 0.47
iすべて) 一
表2溶融時間を一定にした場合(5分)
処理条件 浮上時間[S] 浮上高さ[mm]
浸透厚[mm]臨界温度[K]
10200C 10.4 3.8
薄くて不明77.6
1030。C 33.0 3.5 0,004 一
10400C 43.0 4.0 0,028 82.9
10500C 23.5 3・7 0.12
一
4.結論
SEMによる試料の観察,それぞれの溶融条件で作製 した試料の浮上時間・浮上高さ・浸透厚の測定結果か ら,Y123バルクをY211バルクで挟むことによって,溶
融時間が長くなると浸透厚が増し,浮上時間が著しく延びることがわかった.また,浮上時間が延びることによっ1 て浮上高さが低くなった.これは,Y211相が保温の役 割を果たすためと考えられる.特に溶融温度1040℃,、
溶融時間5分のときに浮上高さが4[mm],浮上時間が 40[S]と,Y211相がないときと比べ,浮上高さは2
[mm]低くなったが,浮上時間が約4倍も葦ぐなった.
上訳のことより・.・Y123バノヒ十寸こY興相の膜が
出来たことにより,磁気浮.ヒ特性が変化することがわかった.
5.参考文献
1)Ghan−Joong KIM, Hai−Woong PARK, KトBaik KIM, Kyu−Won LEE and Gye−WonHONGiJpn.J.Appl.Phys. 34(1995) P.671−674.
2)(財)国際超伝導産業技術研究センター=
超伝導研究・開発ハンドブックP.102−106.
3)中村・雄一・塩原融=高温超伝導体バルク材料研究 の進展=応用物理Vol.61 No.5 P456−463.