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"MassBank for Web Database" 生理・生物活性化合物の質量スぺクトルデータベースの構築と活用 ― 胆汁酸関連ステロイド化合物について ―

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Academic year: 2021

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動によって生じる特異的な分子を網羅的に解析するこ と)をはじめとする生命科学研究において,質量分析で 検出した化合物の同定や推定に広く利用されることが期 待される。現在登録されている化合物のスペクトル数は 39,000を超え,アクセス数も年々顕著に増加している。 著者らの一人(飯田)はMassBank設立当初から本プ ロジェクトに共同参画しており,生理活性ステロイド類 (とくに胆汁酸)のMSデータの集積とデータベースの提 供を担当し,その作業を進行している。現在までに126 種の胆汁酸データ(MSデータ数として335)を一般公開 している。今後,さらなる胆汁酸のMS を測定し,それ らのデータベースを順次公開してゆくことを計画してい る。 生体成分や生態試料は多くの重要な生命情報や地球環 境の変化を強く示唆することから,これらを解析し,系 統的に整理・分類することにより広範な研究分野に有効 1.目的と意義 科学技術振興機構(JST)は 2001 年より JST バイオイ ンフォマティックス推進センター(BIRD)を立ち上げ, 膨大かつ多種多様な生命科学情報を整理統合し,そこか ら有用な知識を見出すことにより,新しい産業の創出, 新しい医療の開拓,新しい農業の構築などへと発展させ ることを可能とする情報生命科学(バイオインフォマ ティクス)の発展と推進及びそれを基盤とした21世紀の 新しい生命科学の創造を目指した。BIRD 及び日本質量 分析学会の支援の下,2010 年に開始された日本発の MassBank (http://www.massbank.jp/index.html)は, 質量分析を用いた化合物同定におけるバイオインフォマ ティクス技術の向上を目的として質量スペクトル(MS) データを集積し,共有するための世界で最初の public database である。膨大な生理活性物質の MSデータは, メタボローム解析(メタボロミクスともいい,細胞の活

三ッ間 貴志

・飯田  隆

For the purpose of widespread utilization for scientific researchers, we herein introduce on the construction and outline of the MassBank for Web (URL = http://www.massbank.jp/), which is comprised of the mass spectral database

for ca. 39,000 bioactive compounds. The construction of the MassBank project was officially supported by the Institute

for Bioinformatics Research and Development under direction of the Development (BIRD) of Japan Science and Technology (JST) Agency and by the Mass Spectrometry Society of Japan. Until now, we have provided 335 variants of the gas chromatographic-mass spectroscopic and liquid chromatographic-mass spectroscopic data for physiologically bioactive steroids (126 species), particularly related to bile acids. A more further study is now in progress in our laboratory, and the data will be added in the MassBank .

Keywords : steroids, bile acid, mass spectrometry, gass chromatography- mass spectrometry (GC- MS)

liquid chromatography- mass spectrometry (LC- MS)

MassBank for Web Database

生理・生物活性化合物の質量スぺクトルデータベースの構築と活用

胆汁酸関連ステロイド化合物について ―

Construction and Application of MassBank for Web Database (Mass Spectral Data for Physiologically

Bioactive Compounds) : On Bioactive Steroids Related to Bile Acids

Takashi MITSUMA

and Takashi IIDA

* (Accepted November 16, 2013)

  * Department of Chemistry, College of Humanities and Sciences, Nihon University, 3-25-40 Sakurajousui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550 * 日本大学文理学部化学科:

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ら繁用されている。しかしながら,膨大な化学物質の MS データ,とりわけ先天性代謝異常症等の疾病の診断 や異常環境変化を計測する上で極めて重要な指標になる ことが期待されているマーカー分子(指標分子)のMS データは,これまで学術論文の執筆者である個人研究者 (あるいはそのグループや研究機関)が所蔵するデータ としてのみ存在し,一般には公開されていないのが現状 である。すなわち,MS データの発表形態としては,学 術論文にMS スペクトル図だけを掲載,ポスターによる MS データの一部のみが報告されるに過ぎない。このた め国公私立大学,試験・研究機関等が所有する膨大な MS データは,知的ストックとして極めて貴重であり, データベース化してネットワークを通じて積極的に世界 に配信し,国内外を問わず広範な研究分野の研究者に有 効活用してもらうことが大いに期待されている。しかし ながら,我が国の研究機関では,このような研究成果の データベース化と外部への流通環境が充分に整備されて いるとは必ずしも言えず,多くの貴重なデータが研究者 個人の手元に退蔵されてしまっているのが現状である。 従って,生命科学分野における生体・生態試料の成分分 析,個々化合物の同定・構造決定等,広汎に利用できる ことを指向した質量分析データベースの構築が社会的 ニーズとして強く求められている。 MassBankの特徴 MassBankの特徴として,以下の項目が挙げられる。 ・ 分散型データベース。 ・ 基礎代謝,植物二次代謝標準物質の高精度精密質量ス ペクトル。 ・ 精密質量に基づくマススペクトル検索エンジン,ブラ ウズ。 ・ 統合スペクトルによる検索。 統合スペクトル(Merged spectrum)は各化合物につ いて衝突誘起解離(CID)の条件が異なるマススペク トルを重ね合わせて合成したスペクトルである。スペ クトルやピーク等の検索に統合スペクトルを対象とし て行うことで,検索の精度と速度を向上させる。 MassBankが提供する機能(ツール) MassBankが提供するツールとして以下の項目が挙げら 2.活用法 ここではMassBankの使い方を簡単に紹介する。 ・ MSnの類似スペクトル検索(Spectrum Search) ユーザーのスペクトルを比較元として,MassBank に 登録されているスペクトルとグラフィカルに比較を行 うことができる。 ・ キ ー ワ ー ド に よ る ス ペ ク ト ル の 簡 易 検 索(Quick Search) 化合物名,組成式,測定機器タイプ,イオン化モード 等を指定してスペクトルを検索できる。 ・ イオン,中性脱離分子,分子式による検索(Peak Search) 指定した m/z や m/z の差が存在するスペクトルの検 索や,m/z の代わりに分子式を指定してスペクトルを 検索できる。 ・ 部分化学構造式での検索(Substructure Search) 構造式の一部を指定して,その構造式を含むスペクト ルを検索できる。 例としてSubstructure Search による胆汁酸,12α- ヒ ドロキシ- 5α-コラン酸,の検索法について概説する。 1. トップページ中段の Substructure Search ボタンを クリックする(Fig. 1)。 2. Edit で検索したい化合物の構造式の一部を書き, Search ボタンをクリックする(Fig. 2)。

Instrument Type, MS Type, Ion Mode のチェックを 入れることで絞り込み検索も可能である。またピー ク検索と組み合わせて検索する場合は,質量電荷比 (m/z)を指定すれば良い。 3. 化合物名横の□+アイコンをクリックすると,個別の ツリーが展開される(Fig. 3, 4)。 4. 見 た い ス ペ ク ト ル に チ ェ ッ ク を 入 れ, Multiple Display ボタンをクリックする(Fig. 5)。 また,上記以外にも以下に示す様々なツールの利用も 可能である。 ・ 代謝物の同定ツール(Metabolite Prediction) 中性脱離分子の分子式の類似性を利用して,MSnスペ

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クトルから未知化合物を同定することができるツール 等。 ・ スペクトル閲覧・比較ツール(Spectral Browser) ユーザーのスペクトルファイルを読み込んで複数のス ペクトルの同時表示。 ・ MSnの 類 似 ス ペ ク ト ル 一 括 検 索 サ ー ビ ス(Batch Service) メールで検索結果が送信されるサービス。 ・ スペクトルのブラウズ(Browse Page) MassBank に登録されている全スペクトルの階層表 示。 ・ スペクトルのカテゴリ別表示(Record Index) MassBank に登録されている全スペクトルのカテゴリ 別に分類した一覧の表示。

・ SOAP を利用した WEB−API による MassBank へのア クセス(WEB−API) スキーマ(WSDL)は以下URL参照。 http://www.massbank.jp/api/services/MassBankAPI?wsdl Fig. 2 検索条件設定画面 Fig. 1 MassBankトップページ

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Fig. 1 MassBank トップページ

Fig. 2 検索条件設定画面

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Fig. 1 MassBank トップページ

Fig. 2 検索条件設定画面

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Fig. 3 検索結果 Fig. 4 個別ツリーの展開 Fig. 5 個別ツリーの選択

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Fig. 3 検索結果

Fig. 4 個別ツリーの展開

Fig. 5 個別ツリーの選択

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Fig. 3 検索結果

Fig. 4 個別ツリーの展開

Fig. 5 個別ツリーの選択

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Fig. 3 検索結果

Fig. 4 個別ツリーの展開

Fig. 5 個別ツリーの選択

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定し,MassBankに順次 MS データを提供し,公開して ゆく予定である。 なおMassBankに関するさらなる詳細はホームページ (http://www.massbank.jp/index.html)を参照されたい。 また本プロジェクトの研究協力グループをFig. 7に付記 した。 謝辞 ステロイド化合物の質量スペクトル測定とデータベース構 築には,日本大学文理学部自然科学研究所の総合研究費(平 成25 ∼ 26 年度)による支援を受けた。ここに記して謝意を 表する。 Fig. 6 MSデータ 3 Fig. 6 MS データ 1000 800 600 400 200 0 1000 800 600 400 200 0 0.0000 100.0000 200.0000 300.0000 400.0000 500.0000 600.0000 700.0000 0.0000 100.0000 200.0000 300.0000 400.0000 500.0000 600.0000 700.0000 3.ステロイド(とくに胆汁酸について) ヒトを含めた脊椎動物の肝臓でコレステロールから異 化代謝される生理活性脂質に属する化合物群で,食物脂 肪の消化吸収を促進する作用を司っている。また,ある 種(ケノデオキシコール酸,ウルソデオキシコール酸) の胆汁酸は利胆作用,胆石溶解作用,肝細胞保護作用な どの優れた薬理効果を発現することから肝疾患治療薬と しても広く用いられている。一方最近の研究で,肝胆道 疾患時において,胆汁酸常成分以外に多種の代謝異常成 分が出現することから,それらと病態との関連,つまり 疾患の特異的マーカー分子(異常胆汁酸代謝産物)に成 り得るものとして大きく注目されている。さらに脊椎動 物の胆汁酸成分と組成は,その属・種に特有・固有であ り,それを基盤とする新たな脊椎動物種の分類体系もな されつつある。現在までに報告された天然及び合成胆汁 酸は極めて多種多岐に亘るものの,それらの化学構造は 何れも分子中にカルボキシル基,水酸基,オキソ基,不 飽和結合などを有する炭素数22−28(特に24が中心)の コラン型ステロイド誘導体である。 著者らは現在までに126 種胆汁酸の 335 種質量スペク トルデータをMassBankに提供してきた。今後さらに当 該研究室が保有する多種の胆汁酸の質量スペクトルを測

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Fig. 7 研究協力グループ

College Humanities Sci, Nihon U

Fig. 7 研究協力グループ

1) H. Horai, T. Iida, T. Nishioka, et al., J. Mass. Spectrom., 45,

703−714 (2010).

2) H. Horai, Y. Nihei, T. Nishioka, J. Computer Aides Chem.,

12, 11−25 (2011).

3) Ed. by R. A. Hill, D. N. Kirk, H. L. Makin, G. M. Murphy, pp.956, Dictionary of Steroids (1991), Chapman & Hall. 引用文献

Fig. 3 検索結果 Fig. 4 個別ツリーの展開 Fig. 5 個別ツリーの選択 2  Fig. 3  検索結果  Fig. 4  個別ツリーの展開 Fig. 5  個別ツリーの選択 2  Fig
Fig. 7  研究協力グループ

参照

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