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博士(歯学)諏訪伸輔 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)諏訪伸輔 学位論文題名

審美性繊維強化プラステイックおよび各種矯正ワイヤーと ブラケット間の懸垂式摩擦試験による摩擦特性評価

学位論文内容の要旨

緒言

筆者らは、歯科矯正治療におけるマルチプラケット装置に用いる審美性に優れ たFRPワイヤーを開発し、これまでに同ワイヤーの機械的特性を明らかにして きた。マルチプラケット装置を用いた歯科矯正治療には、ワイヤーに沿ってプ ラケット滑走させる治療手段も含まれているため、ワイヤーープラケット間の 摩擦特性に関する検討を進める必要がある。

  これまで、ワイヤーとプラケットの摩擦特性に関して多くの報告がなされて きたが、それらの多くはプラケットス口ットにワイヤーが挿入された状態で摩 擦カの計測を行っており、ブラケットスロット内でのワイヤーの歪み、スロッ ト端部における曲げモーメント、結紮/J等により接触関係が多様化するために、

得られる結果に差があるものと考えられる。各素材間の摩擦特性を純粋に抽出 し比較検討するためには各素材間の摩擦特性とワイヤー、ブラケット間の幾何 学的関係の条件を明確に分離する必要がある。この目的のため懸垂式摩擦試験 機と試験用治具を試作し、ブラケット素材の半坦な一晒とワイヤーとの接触関 係という単純化された状況における特性評価を行い、次に矯正ワイヤーがプラ ケットスロット内の二面に接触している状態で摩擦試験を行い、試作FRP審美 矯正ワイヤーおよび市販金属製ワイヤーとブラケットスロット内而との摩擦特 性について比較検討した。

材料と方法

1.FRPおよび金属 ワイヤー

  直 径O018イ ン チ(0.45弧 ) の ス テ ン レ ス 製 矯 正 用 ワ イ ヤ ー 、Ni‑Ti系 矯 正 ワ イヤーCPsA[(25.O%)Cao‐(18.13%)P25(31.4 。)Si02‐(25138%)A1203]ガラスフ ァ イ パ ー と UDMAマ ト リ ッ ク ス か ら な るHや ワ イ ヤ ー ( ガ ラ ス 繊 維 径20m 繊 維 体 積 分 * V瑚 % 、 ガ ラ ス 繊 維 一 方 向 配 向 、 円 形 断 面 、 光 重 合 法 に よ り 作 製 ) を長さ3恤mに切断 し試験片として用いた。

2.プラケット

  O022イ ン チ ス ロ ッ ト の 多 結 晶 ア ル ミ ナ 製 プ ラ ケ ッ ト 、 ポ リ カ ー ポ ネ ー ト プ ラ ケ ッ ト 、 単 結 晶 ア ル ミ ナ 製 プ ラ ケ ッ ト 、 ス テ ン レ ス 製 ス タ ン ダ ー ド プ ラ ケ ッ トを使用した。

(2)

4.摩擦試験

筆者らが試作レた懸垂式摩擦試験機を用い、プラケットのウィング部分を削除 し、プラケットス口ッ卜内の一面を露出させたものと二面を露出させたものを 作製し、前者を用いて行った試験を一面接触摩擦試験、後者を用いたものを二 面接触摩擦試験とする。ワイヤーにプラケットを上方向から圧接し、万能試験 機のクロスヘッドの移動によルプラケットを水平方向に牽引し、摩擦カを測定 した。そしてその最大値を一晒接触試験においては最大静止摩擦力、二面接触 試験においては見かけの最人静止摩擦カとした。一般に最人静止摩擦カと畢直 抗カの間には次式で表される比例関係が成り立つ。

Fロ N  F: 最 大 静 止 摩 擦 力 、 N: 垂 直 抗 力 、 ロ : 静 止 摩 擦 係 数   そこで、垂直抗力−摩擦力散布図において最小二乗法で得られる近似線の傾き を求め、それを一面接触試験においては摩擦係数肛とし、二面接触試験におい ては、みかけの静摩擦係数ロ とした。

結果

  FRPワイヤーでは多結晶プラケットとの摩擦カが非常に大きく、単結晶ブラ ケットおよびSSブラケットとの摩擦カは非常に小さいという特徴的な傾向を 示した。また、NiTiワイヤーおよびSSワイヤーは多結晶ブラケットとの摩擦 カは大きく、それ以外のプラケットとの摩擦カは小さいという傾向は類似して いた。また、二種の金属ワイヤーに共通してみられる特徴は、ボリカーボネー ト プ ラ ケ ッ ト と の 摩 擦 カ が 最 も 小 さ い と い う こ と で あ る 。   FRPワイヤーは多結晶セラミックプラケットとの組み合わせにおいては高い 摩擦カを示すが、その他のプラケッ卜との組み合わせでは金属ワイヤーとほば 同等かそれ以下の値を示す。傘ての組み合わせについて一面接触、二面接触と も、類似した摩擦特性を示した。

考察

ワイヤーが臨床的にブラケットスロッ卜に挿入された状態では、ワイヤーが屈 曲したルス口ット端部において過度に圧接されたりする可能性がある。これら はワイヤーとプラケットの接触関係の幾何学的特異性に起因するものであり、

それ故にワイヤーおよびプラケットの素材間の摩擦特性を明らかにすることは 困難であったと考えられる。懸垂式摩擦試験機においては、垂直抗カを増大さ せてもその方向は計測開始時には常に鉛直下向きで安定し、ワイヤーは水平な 台座の上に固定されているため垂直抗カの増大に伴うワイヤーのたわみが生じ ない。また、二面接触試験において懸念される、スロット端部での過度の圧接 は、プラケットの牽引方向をワイヤーの長軸方向と一致させる事で回避が可能 である。このような構造によってワイヤーとプラケットの副次的な接触関係を 排除し、ブラケットとワイヤー表面の、より単純な条件下での摩擦特性を解明 し得ることが示唆された。

  一面接触摩擦試験は各素材の表面性状のみによって決定される摩擦特性を知 ることを目的とし、二面接触摩擦試験はワイヤーが結紮カによってスロット内 の隅角部に圧接され、他のカが作用しない状態での摩擦特性を知ることを目的 とするものである。これらニつの試験結果がほぽ相似な関係を示したことから、

(3)

ツイ ヤー の歪 み、 矯正 カな どの 要因が作用しなければ、ツイヤーはス口ット内 にお いて も素 材間 の摩 擦特 性の みを反映する可能性が示唆される。過去の多く の研 究に おけ るプ ラケ ット ーワ イヤー間の摩擦特性に関する報告には多様なも のが あり 、相 反す るも のさ えあ ることを鑑みると、臨床的な状況下における摩 擦特 性を 規定 する 要因 は素 材間 の表面摩擦特性だけではなく、ワイヤーとプラ ケッ トの 幾何 学的 関係 やワ イヤ ーに作用する矯正カの方向や大きさ等も影響し てい るこ とが 示唆 され る。

結論

新 しい 懸垂 式摩 擦試 験機 を製 作し、 各種 ワイヤー、プラケット問の摩擦特性に つ いて 一面 接触 、二 面接 触に ついて 調べ た。その結果、ワイヤー、ブラケット 間 の幾 何学 的関 係に 由来 する 影響を 取り 除き、ほぽ純粋に素材間の摩擦特性を 評 価す るこ とがロJ能となった。一面接触、二面接触とも類似した摩擦特性を示 す が、 ワイ ヤー がプ ラケ ット スロッ ト内 の二面に圧接されている状況での摩擦 係数は、一面に圧接されているときの2 /2倍という理論値に近い値を示す傾向が 見られた。

FRPワイ ヤー は多 結晶 セラ ミッ クブ ラケ ット との 組み 合わ せでは 、他 のどの組 み 合わ せよ りも 人き な摩 擦抵 抗を示 すが 、単結晶セラミックブラケット、ポリ カ ーポ ネー トプ ラケ ット 、お よびス テン レスブラケットと組み合わせて用いる と 、一 而接 触の 場合 と同 様に 二而接 触の 場合でも金属ワイヤーと同等あるいは それ以ドの摩擦抵抗を示すロJ能性が示唆された。

臨 床的 な状 況下 にお ける 摩擦 特性は 素材 間の表面摩擦特性だけではなく、ワイ ヤ ーと プラ ケッ トの 幾何 学的 関係や ワイ ヤーに作用する矯正カにも大きく影響 をうけている可能性が示唆された。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

審美性繊維強化プラステイックおよび各種矯正ワイヤーと ブラケット問の懸垂式摩擦試験による摩擦特性評価

  審 査 は 審 査 担 当 者 が 一 同 に 会 し て 約2時 間 か け て 行 っ た 。 ま ず 申 請 者 に 本 論 文 の 概 要 の 説 明 を 求 め 、 そ の 後 に 口 頭 試 問 の 形 式 で 提 出 論 文 の 内 容 及 び 関 連 分 野 に つ い て 試 問 し た 。

  申 請 者 は 論 文 の 概 要 を 以 下 の よ う に 説 明 し た 。

  歯 科 矯 正 治 療 に お い て 屈 曲 さ れ た 矯 正 ワ イ ヤ ー の 弾 性 回 復 カ は ブ ラ ケ ッ ト を 介 し て 歯 に 伝 達 さ れ る 。 こ の と き こ の 弾 性 回 復 カ を 矯 正 カ と し て 効 果 的 に 作 用 さ せ る た め に は ワ イ ヤ ー と ブ ラ ケ ッ ト 問 の 摩 擦 カ が で き る だ け 小 さ い こ と が 望 ま し い 。 近 年 開 発 中 の 審 美 性 繊 維 強 化 プ ラ ス テ ィ ッ ク(FRP)ワ イ ヤ ー に と っ て も そ の 摩 擦 特 性 を 知 る こ と は 重 要 で あ る 。 し か し 、 従 来 の 測 定 法 で は ブ ラ ケ ッ ト ス ロ ッ ト 内 で の ワ イ ヤ ー の ひ ず み 、 ス ロ ッ ト 端 部 に お け る 曲 げ モ ー メ ン 卜 、 結 紮 カ な ど の 幾 何 学 的 特 異 性 に 起 因 す る 影 響 が 混 在 し 、 材 料 本 来 の 摩 擦 特 性 を 求 め る こ と が 困 難 で あ っ た 。 本 研 究 で は ワ イ ヤ ー と ブ ラ ケ ッ ト ス ロ ッ ト 間 の 、 単 純 で か つ 再 現 性 の 高 い 摩 擦 試 験 が 可 能 な 懸 垂 式 摩 擦 試 験 機 を 試 作 す る こ と に よ り 、FRP矯 正 ワ イ ヤ ー お よ び 市 販 矯 正 ワ イ ヤ ー の 摩 擦 特 性 評 価 を 行 っ た 。

【 材 料 と 方 法 】 ス テ ン レ ス 製 、Ni‑Ti系 、 お よ び ガ ラ ス フ ァ イ バ ー とUDMAマ ト リ ッ ク ス か ら な るFRP構 造 の 各 矯 正 用 ワ イ ヤ ー ( 直 径 は い ず れ も0.45 mm)を 、 ま た0.022 イ ン チ ス ロ ッ ト の 多 結 晶 ア ル ミ ナ 製 、 ポ リ カ ー ボ ネ ー ト 製 、 単 結 晶 ア ル ミ ナ 製 、 ス テ ン レ ス 製 の 各 ブ ラ ケ ッ ト を 供 試 体 と し た 。

  試 作 し た 懸 垂 式 摩 擦 試 験 機 に ウ ィ ン グ 部 分 を 削 除 し た ブ ラ ケ ッ ト 材 を 取 り 付 け 、 ブ ラ ケ ッ ト ス ロ ッ ト 内 の 平 面 を 使 用 し て 一 面 接 触 摩 擦 試 験 を 、 直 交 す る ニ 面 を 用 い て ニ 面 接 触 摩 擦 試 験 を 行 っ た 。 懸 垂 式 摩 擦 試 験 機 に お い て は 、 垂 直 抗 カ を 増 大 さ せ て も そ の 方 向 は 計 測 開 始 時 に は 常 に 鉛 直 下 向 き で 安 定 し 、 ワ イ ヤ ー は 水 平 な 台 座 の 上 に 固 定

郎 夫

順 文

田 理

飯 亘

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

されているため垂直抗カの増大に伴うワイヤーのたわみが生じない。また、ニ面接触 試験において懸念される、スロット端部での過度の圧接は、ブラケッ卜の牽引方向を ワイヤーの長軸方向と一致させる事で回避が可能である。

  垂唖抗力・摩擦力図において最小二乗法で得られる近似線の傾きから、一面接触試験 に お け る 摩 擦 係 数u、 ニ 面 接 触 試 験 の み か け の 静 摩 擦 係 数 弘 を 求 め た 。

【結果と考察】全てのワイヤーに対して多結晶ブラケットは摩擦カが大きく、単結晶 ブラケットおよびSSブラケットの摩擦カは小さかった。FRPワイヤーは多結晶セラ ミックブラケット以外のブラケットとの組み合わせでは金属ワイヤーとほぼ同等かそ れ以下の値を示した。二種の金属ワイヤーはポリカーボネートブラケッ卜との摩擦カ が最も小さかった。また、全ての組み合わせについて一面接触、ニ面接触とも、類似 した摩擦特性を示し、ニ面接触における摩擦係数は、一面接触時の厂2倍という理論 値に近い値を示す傾向が見られた。

【結論】試作した懸垂式摩擦試験機により、ワイヤー、ブラケット間の幾何学的関係 に由来する影響を取除き、ほぼ純粋に素材問の摩擦特性を評価することが可能となっ た。FRPワイヤーは多結晶セラミックブラケットに対して大きな摩擦抵抗を示すが、単 結晶セラミック、ポリカーボネート、およびステンレスでは金属ワイヤーと同等以下 であった。一面および、二面接触摩擦試験の結果はほぼ相似な関係を示したことから、

臨床の複雑な幾何学的位置関係やワイヤーの歪み、ワイヤーに作用する矯正カなどの 要因が作用しなければ、ワイヤーはス口ット内においても素材問の摩擦特性を反映す る可能性が示唆された。

  現在、FRPワイヤーが矯正用ワイヤーとして開発されているが、実際の治療に応用 していくためにはワイヤーとブラケット間の摩擦特性が正しく評価されなければなら ない。本研究は、純粋な試料表面性状のみによる摩擦特性を計測する懸垂式摩擦試験 法を新たに開発し、この方法を用いて各種のワイヤーとブラケット間の摩擦特性を計 測している。得られた結果はこの試験法の有効性を示すとともに、FRPワイヤーは多 結晶セラミックブラケットとの間に大きな摩擦抵抗を示すが、単結晶セラミック、ポ リカーポネートおよびステンレスブラケットとの問では金属ワイヤーと同等あるいは それ以下の摩擦抵抗を示すことを明かにした。この結果はFRPワイヤ←を臨床に応 用 し て い く た め に 重 要 な 情 報 を 提 供 し た も の と 、 高 く 評 価 で き る 。   口頭試問において、審査担当者から、

1)本研究の目的

2)本計測方法を開発した経緯

3)多結晶セラ,ミックブラケットで摩擦係数が高い理由 3)潤滑剤の効果

4)今後この研究を進めていく方向性

などの試問が成されたが、いずれに対しても明快な回答が得られた。以上から、申請 者は本研究に直接関係する事項のみならず、関連分野における基礎的、臨床的な広い

(6)

知識を有していると認められた。よって審査担当者は口頭試問の結果に合格の評価を 与え、申請者は博士(歯学)の学位を授与される資格を十分に有するものと認めた。

参照

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