症例から学ぶ理学療法評価のポイント
〜心不全の基礎〜
臼杵市医師会立コスモス病院 理学療法士 心臓リハビリテーション指導士 阿部翔伍循環器編(前半・後半)の目標
心不全患者を担当した時の
初回
の
考え方
・
行動
を理解する
前半・後半の目標
前半:必要なデータの意味を知る
後半:症例を通して急性心不全患者を
安全に離床する
前半の内容
□ カルテから確認する項目
□ ベッドサイドにいって確認する項目
□ 離床基準・リハ禁忌
カルテから得る情報
□ 胸部レントゲン写真
□ 心エコー(収縮能・拡張能)
□ 生化学、血液所見
□ 内服状況
□ 尿量
胸写
から心臓の状態を知る
Point
・心胸郭比(CTR) ・胸水の有無 なし(C-Pアングル) 基準値50%以下心エコーから心臓の状態を知る
収縮力の指標
□左室駆出率
(LVEF)・左室の収縮機能指標
駆出率=左室1回拍出量/左室拡張末期容量
・正常:55%以上
軽度<49% 中等度<39%
重症<29%
□ 左室内径短縮率
(%FS)
・正常:30〜50%
・30%以下で収縮機能障害
左室駆出率(EF)が保たれた心不全も少なくない
心臓が弱い人と固い人がいる → EFだけでは不十分 circulation journal 73 (2009),1893-1900 EFが低下している EFが保たれている 高齢・女性・高血圧心エコーから心臓の状態を知る
拡張能の指標
□LV inflow pattern(左室流入血流速度波形)
波形パターン 重症度 E/A Dct normal 正常 1.0~1.5 160~240 abnormal 軽度 1.0以下 >240 pseudonormal 中等度(偽正常化) 1.0以上 160~200 restrictive 重度 2.0以上 150以上 ・E波:左室急速流入血流速度 (最初に心室が拡張する事で左室流入する血流) ・A波:心房収縮期流入血流速度 (次に心房が収縮する事で左室流入する血流) ・DCT(deceleration time ):E 波の減速時間心エコーから心臓の状態を知る
右心系負荷の指標
□ RV systolic pressure(右室収縮期圧):
30mmHg以下が正常
□ PA diastolic pressure(左室拡張末期圧):
5~12mmが正常
□ IVC(下大静脈):
正常<17mm
左心系負荷の指標
□ LAD(左房径):
40mm以上
はAf・Paf↑
生化学・血液所見
□
BNP
□
NT-proBNP
□
Cr(クレアチニン)
□
BUN
□
eGFR
□ ALB
□ TP
□ GNRI
重症度
腎機能
栄養
血液
から心臓の状態を知る
<重症度>
□BNP
(基準値:20pg/ml以下)・心負荷が増大した際の代償機構
・
500pg/ml以上 重症
(リスク大)
□NT-proBNP
(基準値:125pg/ml以下)・BNPよりも腎機能の影響を受けやすい
・
4000pg/ml以上 重症
(リスク大)
基準値以上・以下ではなく経過の観察が大切
□Cr(クレアチニン) 基準値:男性0.65〜1.09㎎/dl 女性0.46〜0.82㎎/dl ・役割:クレアチンが筋を動かすエネルギーと利用された 後にできる老廃物。腎臓からのみ排出される。 ・心不全との関係:
高値
⇒腎機能低下 □BUN(尿素質素) 基準値:8〜20㎎/dl ・役割:体内でエネルギーとして利用されたたんぱく質の老廃物 ・心不全との関係:高値
⇒腎機能低下 □eGFR(糸球体濾過量) 基準値:90以上 ・役割:腎臓にある糸球体がどれぐらい老廃物を濾過できるかを示す。 ・心不全との関係:低値
⇒腎機能低下心臓
と
腎臓
(心腎連関)
の関係を知る
薬
から病態・治療内容読みとる
□利尿薬(うっ血を改善) ・ラシックス・ハンプ・サムスカ・ダイアート ・アルダクトン □強心薬(弱った心臓にムチを入れる) ・イノバン(ドパミン塩酸塩)・ドブトレックス(ドブタミン塩酸塩) □降圧薬(後負荷の軽減) ACE阻害薬:レニベース・タナトリル ARB:ニューロタン・ディオバン・ミカルディス 硝酸薬:アイトロール・シグマート・ニトロ舌下錠 Ca拮抗薬:ノルバスク・アダラート・ヘルベッサー □β遮断薬(交感神経抑制) ・アーチスト・メインテート、カルベジロール尿について
1日の尿量
多尿 2500ml以上 正常 (平均) 500ml〜2000ml (1000ml〜1500ml) 乏尿 400ml以下 無尿 100ml以下心不全となると尿量減少しプラスバランスへ
利尿薬の効果判定にも
継時的な確認
が必要
血圧
血圧 = 心拍出量 ✖末梢血管抵抗
注意すべき症状
脳虚血:めまい・立ちくらみ
心筋虚血:胸痛・前胸部圧迫感
循環血液量
心拍数
心筋収縮 など
血管の硬さ
血液の粘性
ポイント: 低血圧
患者さんから得る情報
□ Nohria−Stevenson分
□ フォレスター分類
□ NYHA分類
□ 呼吸状況
Nohria 分類 dry-warm A wet-warmB wet-cold C dry-cold L なし あり なし あり 低 灌 流 所 見 の 有 無 うっ血所見の有無 低い脈圧 (30〜50mmhg)四肢冷感
意識レベルの低下 (だるい感じ) 尿量減少 (腎機能悪化) 起座呼吸、浮腫(体重増加)、頸静脈怒張
急性心不全の初期治療はProfile A(dry-warm)の状態に導くことを目標とする患者さんの手足を触ってみましょう
肺うっ血 心 拍 出 量 低 下 肺うっ血 Ⅰ群:死亡率3% 末梢循環不全(-) 肺うっ血(-) <治療> ・経過観察 Ⅱ群:死亡率9% 末梢循環不全(-) 肺うっ血(+) <治療> ・利尿薬 ・血管拡張薬 Ⅲ群:死亡率23% 末梢循環不全(+) 肺うっ血(-) <治療> ・輸血 ・カテコラミン Ⅳ群:死亡率51% 末梢循環不全(+) 肺うっ血(+) <治療> ・利尿薬 ・強心薬 ・血管拡張薬