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高額過料問題と過料の意義 - 完成検査不正に対する過料通知をめぐって - The problem of expensive non-penal fine and the significance of non-penal fine -On notice of non-penal fine for i

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Academic year: 2021

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1 高額過料問題と過料の意義

-完成検査不正に対する過料通知をめぐって-

The problem of expensive non-penal fine and the significance of non-penal fine -On notice of non-penal fine for improper completion inspection-

白石 賢 Ken Shiraishi 要旨: 2018 年、国土交通省は、自動車メーカーに対して、型式指定車の完成検査の不適切事案に対して、道路運送車両法 違反による約8,000 万円超から 2 億円超の高額過料を適用するよう裁判所に通知を行った。過料は届出義務等に対し科 される比較的軽微な制裁だと考えられているが、このようなことが妥当なのか。本論文では、型式指定制度に係る制裁 の変遷、過料と行政刑罰に関する問題点などを踏まえて、この問題について検討を行った。また、型式指定制度に係る 過料の存在意義と新たな過料の役割についても検討を加えた。 Abstract:

In 2018, the Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism will apply a high non-penal fine of approximately over 80 million yen to over 200 million yen to automobile manufacturers for improper completion inspection of type-designated vehicles due to violation of the Road Transport Vehicle Act, and notified the court. Non-penal fines are considered to be relatively minor sanctions imposed on notification obligations, etc. Is it appropriate to apply a large non-penal fine? In this paper, I examined this issue in light of the changes in sanctions related to the type designation system, and issues related to fines and administrative penalties. I also considered the significance of non-penal fines and the role of new non-penal fines in the type designation system.

Keyword:過料(non-penal fines), 行政刑罰(administrative penalties)

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2 はじめに 2018 年 12 月、国土交通省は、日産自動車、スバルに 対して、型式指定車の完成検査の不適切事案に対して、業 務改善指導を行うとともに、道路運送車両法違反(完成検 査の一部未実施)による過料適用をするよう裁判所に通 知を行った。過料通知対象の違反は、日産自動車454 台、 スバル278 台とされ、過料は 1 台(義務違反)当り 30 万円 以下であるため、日産自動車は約1 億 3,600 万円、スバ ルは約8,300 万円の過料に処せられる可能性がある。さ らに、2019 年 6 月、スズキに対しても 665 台、約 2 億円 の過料通知がなされた。 過料は届出義務等に対し制裁として科される行政上の 秩序罰であり1、また、多くの地方自治体の路上喫煙防止 条例に規定されていることから分かるように比較的軽微 な制裁だと考えられている。しかし、本事例では過料が加 算され、その合計額が多大なものとなっている。これは自 動車の大量生産を予定する型式指定制度の中での過料規 定であることに由来する。そこで、本稿では、型式指定制 度における制裁の変遷をたどりながら、過料のあり方に ついて検討を加えることにする。 1. 日産自動車の不適切事案の概要 道路運送車両法における型式指定制度の過料の概要を 理解するため、日産自動車の完成検査に関する不適切事 例を用いて説明する。本事例の概要は以下の通りである。 2017 年 9 月、国土交通省が日産車体、日産自動車等の 4 工場へ立入検査を行った結果、完成検査工程2において完 成検査員以外の者によって完成検査が実施されていたこ と等が判明した。これを受けて国土交通省は、同月、日産 自動車に対して改善指示等を行った3。日産自動車は、同 年10 月に製作期間 2014 年 1 月から 2017 年 9 月の約 116 万台、さらに 2018 年 1 月までに製作期間 2017 年 2 月から2017 年 10 月の 38,664 台のリコール届出を行っ た。また、日産自動車は、その間の2017 年 11 月に、不 適切な完成検査の過去からの運用状況等の事実関係、原 因、再発防止策を盛り込んだ報告書を国土交通省に提出 をした4。同報告書によると、完成検査員に任命されてい ない補助検査員が、貸与された完成検査員の印鑑を完成 検査票に押印する等の方法で完成検査を行っていたこと、 このようなことは多くの工場で 1990 年代には常態化し ており栃木工場では1979 年から実施されていた可能性 があることが明らかにされている。同報告書提出後の 2017 年 12 月、国土交通省による再度の立入検査がなさ れ、栃木工場における車室外乗降支援灯の完成検査の未 実施等が判明した。国土交通省は2018 年 3 月、12 月の 立入検査に関する業務改善指示を行うとともに、車室外 乗降支援灯完成検査未実施の107 台については、2017 年 9 月の改善指示以降に完成検査をしたものであったこと から、過料適用について裁判所に通知を行った。日産自動 車は、2018 年 6 月に、製作期間 2003 年 12 月から 2016 年9 月の 580 台のリコール届出を行った。さらに、日産 自動車は、同年7 月、自主点検により、燃費・排出ガス 抜取検査において測定値を書き換えた事案等が判明した との発表を行った。この発表を受け、同日、国土交通省は 日産自動車に対して調査指示を行い、967 台の測定値の 書き換えがなされたとの報告が同年9 月になされた5。同 年12 月、完成検査工程において合否判定が不明確な自動 車の存在可能性があることがさらに判明したことから、 日産自動車は、製作期間2017 年 11 月 7 日から 2018 年 10 月 25 日の 148,780 台のリコール届出を行った。これ らの状況を踏まえ、同年12 月、国土交通省は、業務改善 指示を行うとともに、「試験条件を逸脱した上にその測定 値を書き換えたこと及び検査結果の作出がなされたもの は、とりわけ重大な完成検査の一部未実施事案である」と の理由から、道路運送車両法75 条 4 項違反として、調査 指示の日から完成検査の成績の記録義務が課されている 期間(乗用車では3 年 9 か月:筆者注)を遡った日まで の事案に関し、過料適用の通知を裁判所に行った6。過料 適用の内訳は、排出ガスの抜取検査における試験条件逸 脱・測定値の書き換え事案(結果作出事案を含む)393台、 その他の抜取検査(騒音等)における結果作出61 台の合 計454 台となっている。道路運送車両法では、型式指定 を受けた者は、「保安基準に適合しているかどうかを検査 し、適合すると認めるときは、完成検査終了証を発行し、 これを譲受人に交付しなければならない。」(75 条 4 項)と 規定する。日産自動車は、適正な保安基準適合検査を行わ なかったために、保安基準に適合すると認められないに もかかわらず完成検終了証を発行し譲受人に交付したこ とになり30 万円以下の過料(112 条 1 項)の通知がなされ たのである。 2. 道路運送車両法に関する不正問題と改正経緯 本事例の過料適用の問題を検討するにあたって、過去 の自動車メーカーの不正問題とそれに伴う道路運送車両

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3 法の改正経緯、特に制裁規定の変遷を以下で見ていくこ ととする。 2-1.リコール隠し問題 改善措置の届出等(リコール)制度は、1969 年 6 月に「自 動車の構造装置に起因する事故の防止について」(通達)に よりリコール届出の受付が開始され、同年9 月に自動車 型式指定規則の改正がなされたときから始まる。1994 年 に自動車の検査及び点検整備制度の見直しを図ること等 を目的とした道路運送車両法改正がなされた際、リコー ル制度も規則から法律に格上げされ、リコール勧告制度 の導入やリコール届出の懈怠・虚偽届出に対して20 万円 以下の過料が定められた (改正 112 条)7 1997 年 11 月、運輸省は富士重工のリコール隠し問題 に対して、道路運送車両法に基づく過料の適用の通知(7 件)を初めて行った8。この事件を踏まえ、1998 年 5 月に 道路運送車両法が改正され、リコール届出の懈怠・虚偽届 出に対する過料が20 万円以下から 100 万円以下へと引 き上げられた(改正 111 条の 2)。しかし、その後もリコー ル隠しは続き、1999 年 3 月のダイハツのリコール隠し9 2000年7月には三菱自動車工業が不具合情報を二重管理 し運輸省に報告していなかった問題が発覚した10。これら の事件を受け、2002 年 7 月に道路運送車両法の改正がな され、リコール勧告に従わない場合の公表制度、正当な理 由なく勧告に係る措置をとらない場合のリコール命令制 度が創設された(改正 63 条の 2)。また、同時にリコール 隠し等の届出義務違反・虚偽報告が100 万円以下の過料 から1 年以下の懲役若しくは 300 万円以下の罰金又はこ れらの併科、法人の場合は2 億円以下の罰金への引き上 げがなされた(改正 106 条の 2)11 2-2. 不正型式指定申請問題 型式指定制度は 1951 年の道路運送車両法の施行と同 時に始まった。型式指定がなされると、その型式について 指定を受けた特定共通構造部の構造、装置、性能、特定装 置について保安基準に適合しているものとみなされるこ とになる(75 条 3 項)。型式指定を受けた自動車の製作者 等は、自ら完成検査を行った上で自動車の譲受人に完成 検査終了証を発行するか電磁的方法で登録情報処理機関 に登録する(75 条)。自動車の使用者は、新規登録の際、完 成検査終了証の提示をすることで現車提示が不要となる (7 条 3 項 2 号)。この一連の、型式指定・完成検査・終了 証発行・現車提示不要の仕組みにより、事実上メーカーの 大量生産が可能となる。これが型式指定制度最大の特徴 でありメリットでもある。 型式指定制度の詳細な内容は、自動車型式指定規則、自 動車型式認証実施要領について(依命通牒)で定められて いる。型式指定の判定は、申請自動車の構造・装置・性能 の保安基準適合性、均一性により判断される(75条3項)。 保安適合性基準(保安基準)(46 条)の詳細は、道路運送車両 法の保安基準やその細目告示で定められる。保安適合審 査試験は、自動車技術総合機構に委託され行われるが(75 条の5)、その試験の詳細は、同機構の審査事務規程で定 められている。ただし、審査試験のすべてを機構が行うわ けではなく、製作者等が試験規程に基づき実施した試験 については、その結果を利用して審査ができるとされて いる(審査事務規程 2-4(4))。このため、製作者等が行った 試験に問題がある場合には保安基準適合性に影響が生じ ることになる。 2016 年 4 月、三菱自動車工業は、型式指定申請の際に 本来の燃費値よりも良い値とするために、燃費・排出ガス 試験において設定する走行抵抗値を法令で定めた試験方 法と異なる不正な方法で算出し、かつ、これを不正に操作 して国土交通省に提出していたとの報告を行った。さら に、三菱自動車工業の報告を受け、国土交通省が他メーカ ー等に同様の不正行為の有無について調査報告を求めた ところ、同年5 月にスズキが不正な方法で走行抵抗を測 定していたとの報告を行った12。このような事態を受け国 土交通省は、2016 年 9 月、自動車型式指定規則の一部改 正を行い、型式指定申請時等に提出する書面について、適 切に実施した試験の結果に基づく記載その他の正確な記 載をしなければならず(虚偽記載の禁止)(改正規則 12 条)、 型式指定を受けた者が虚偽の申請をしたと認める場合に は、期間を定めて指定自動車の型式指定の効力を停止が できることとした(改正規則 4 条の 2)。この型式指定効力 停止が発動されると不正を行ったメーカー等による全容 解明・再発防止策の報告までの間、並行して製作される当 該メーカーの他車種の型式指定審査が一時停止されるこ とになる。また、自動車型式指定規則により申請の虚偽記 載が禁止されたことにより、虚偽申請した場合には、道路 運送車両法に基づき30 万円以下の罰金が科されること となった(110 条 6 項) 13。さらに、2017 年 5 月には道路 運送車両法が改正され、従来は型式指定の取消要件とし て型式指定を受けた自動車の構造等が保安基準に適合し

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4 なくなった場合等に限られていたものを、不正手段によ り型式指定を受けたことを新たに追加した(改正 75 条 7 項3 号)。型式指定取消しにより自動車の製造が実質的に できなくなることから、メーカーにとっては罰金以上の ディスインセンティブが与えられることになる14 15。さ らに、型式指定の取消しに際しては、必要な限度における 報告徴収、立入検査を行うことができるとされ(改正75 条 の6)16、その報告徴収、立入検査等に対する検査忌避・虚 偽報告は、それまでの30 万円以下の罰金が 1 年以下の 懲役若しくは300 万円以下の罰金又はそれらの併科、法 人の場合は2 億円以下の罰金へと引き上げられた(改正 106 条の 4)。この罰金額は前述のリコール命令違反等と 同額である。 なお、三菱自動車工業は、この燃費の型式申請不正に合 わせて販売カタログ等に燃費をより良く表示していたた め、2017 年 1 月、消費者庁は三菱自動車工業に対して景 品表示法の優良誤認表示(5 条第 1 号)により 4 億 8,507 万 円の課徴金の納付命令を行っている17。道路運送車両法に おける罰金に加え課徴金を課すことの必要性について、 改正法案の審議時の参議院国土交通委員会で質疑がなさ れ、国土交通省は、不正防止タスクフォースの「最終とり まとめ」において今後の課題として取り上げられている とのみ回答しているが18、同一事実発生する別法益に対す る制裁の必要性や経済的観点からみた抑止力の問題につ いては後述する。 2-3. 不正完成検査問題 完成検査は、型式指定申請者自らが製作する自動車の 構造、装置、性能が保安基準に適合しているかについて検 査することである(74 条 4 項)。適合性が認められる場合 には、自動車の譲受人に完成検査終了証を発行するか電 磁的方法で登録情報処理機関に登録する(75 条)。不正型 式指定申請問題でも述べた通り、完成検査の基準は型式 指定規則、実施要領で定められており、型式指定申請を行 う際には、完成検査の業務組織や実施要領等も申請し、そ の組織体制・方法に基づき完成検査を行う必要がある(型 式指定規則3 条 2 項 4 号)19。ただ、実際の完成検査の方 法は、その方法が適切なものであれば、国が例示する検査 方法に替えて製作者等の独自の検査方法により行うこと も認められている(「型式指定を受けた車両の完成検査の 運用」(自動車型式認証実施要領 附則 14))。このため、 通常は各メーカーが独自に完成検査員の資格を社内規定 で定める等により完成検査を行っている。 不正完成検査問題は、日産自動車に続き、類似事例がス バルで生じ20、さらには、2018 年 8 月以降にスズキにお いて、四輪車の燃費・排出ガス抜取検査における不正・検 査結果の書換え問題等が発覚した21。これら事案を受けて、 2018 年 10 月、国土交通省は、自動車型式指定規則の改 正を行い、それまで自動車型式認証実施要領(依命通達)に おいて規定されていた完成検査員の選任規定 (第 6(3))22 等を自動車型式指定規則において規定し、型式申請時に 提出する添付書面に記載しなければならないこととした (規則 7 条の 2、7 条の 3、完成検査実施規程 3 条、4 条)。 同時に、完成検査の成績等の記録範囲を明確化し、完成検 査終了証発行後の書き換えを防止する措置も取られた(規 則13 条の 3、規程 6 条)。このような完成検査に係る各種 義務が自動車型式指定規則上規定されたことで、その義 務違反が道路運送車両法76 条(手続き等の国土交通省令 への委任)違反の罰則対象となり 30 万円以下の罰金とな った(110 条 6 項)。さらに、型式指定制度の適正な運用の 確保のため、省令違反、又は完成検査の実施に関し改善が 必要であると認めるときは、是正・改善措置を命じ(改正 規則3 条の 4、改正規則 9 条の 2)、是正・改善措置が講 じられるまでの間は、型式指定の効力停止ができるもの とされた(改正規則 4 条の 2)。この是正・改善命令、型式 指定の効力停止は、2019 年 5 月には、道路運送法車両法 上に位置付けられることとなった(改正 75 条 7 項等)。是 正・改善命令違反は50 万円以下の罰金(109 条)、是正・ 改善命令、型式指定の効力停止・指定取消を発動するため の報告徴収・立入検査(75 条の 6)に対する虚偽報告・検査 忌避は1 年以下の懲役若しくは 300 万円以下の罰金又は それらの併科、法人の場合は2億円以下の罰金となる(106 条の4、111 条) 2-4.型式指定に係る規制と制裁の体系 3 つの不祥事問題を通じた法令等の改正により、現在、 型式指定制度の法体系は概ね以下のようになっている。 ① メーカーが違法な検査方法等を申請すること等で型 式指定を不正に取得しようとした場合は、申請の虚 偽記載禁止(規則 12 条)とされる。申請に虚偽の疑い があれば、まずメーカーによる事実解明・再発防止策 の報告が期待されるが、それまでの間、並行して製作 される当該メーカーの他車種の型式審査の一時停止

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5 を行うため、指定自動車の型式指定の効力停止を行 うことができる(規則 4 条の 2)。型式指定の執行の停 止・型式指定の取消を行うための報告徴収・立入検査 (75 条の 6)における虚偽報告・検査忌避に対しては 1 年以下の懲役若しくは300 万円以下の罰金又はそれ らの併科、法人の場合は2億円以下の罰金となる(106 条の4、111 条)。虚偽申請が実際になされていれば 30 万円以下の罰金が科される(76 条、110 条 6 項)。 また、虚偽申請により当該自動車の型式指定が不正 に取得されていれば型式指定は取消されることにな るため(75 条 7 項 3 号)、改めて申請を行わなければ ならない。 ② 型式指定自動車の完成検査は、型式申請時に届け出 た業務組織及び実施要領(規則 3 条 2 項 5 号)により 行わなければならない。しかし、申請時から時間が経 過すれば、当初申請した実施要領等に変更が必要と なることもある。そのような場合には変更届出を行 わなければならない(規則 6 条 1 項 2 号)。もし、その 届出がなされずに自動車検査がなされれば適合性が 認められず、完成検査終了には至らなくなる。 ③ 届け出た業務組織・実施要領等に形式上基づいて完 成検査がなされていてはいるものの、完成検査で書 換え等の不正がなされ、実質的には適正な完成検査 が行われていない場合は、道路運送車両法上の手続 き等違反となる(76 条)。手続き等違反の疑いがあれ ば、是正・改善措置が命じられる(改正規則 3 条の 4、 改正規則9 条の 2)。是正・改善命令違反は 50 万円 以下の罰金となる(109 条)。そして是正・改善のため に必要な措置が講じられるまでの間、型式指定の効 力停止を行うことができる(75 条 7 項等)。効力停止 がなされれば、是正措置が講じられない限り、メーカ ーは自動車を製作できなくなる。また、型式指定の効 力停止を発動するための報告徴収・立入検査(75 条の 6)における虚偽報告・検査忌避に対しては 1 年以下 の懲役若しくは300 万円以下の罰金又はそれらの併 科、法人の場合は2 億円以下の罰金となる(106 条の 4、111 条)。実際に不正完成検査がなされていた場合 には、道路運送車両法の手続き等の国土交通省令へ の委任規定違反(76 条)となり 30 万円以下の罰金と される(110 条 6 項)。 ④ 正しく申請された型式指定の方法により自動車を製 作・完成検査したにもかかわらず、製作された自動車 に欠陥が発見され安全基準を満たさなくなる可能性 が生じた場合、メーカーは自ら不具合情報を入手・調 査を行う。そして保安基準不適合が認められれば、そ の旨を国土交通大臣に届け出を行い(63 条の 3 第 1 項、2 項)、リコール(改善措置)実施を行う。リコール の実施状況については国土交通大臣に報告を行わな ければならない(63 条の 3 第 4 項)。メーカーが自 主的に適切なリコールを実施しない場合、すなわち 届出懈怠あるいは虚偽届出をした場合には、1 年以下 の懲役若しくは300 万円以下の罰金又はそれらの併 科、法人の場合は2 億円以下の罰金となる(106 条の 4 第 2 号、111 条)。また、国土交通大臣は、メーカ ーに対しリコール勧告を行い(63 条の 2 第 1 項)、勧 告に従わない場合は公表(63 条の 2 第 4 項)、さらに リコール命令を発出できる(63 条の 2 第 5 項)。この 命令違反に対しても1 年以下の懲役若しくは 300 万 円以下の罰金又はそれらの併科、法人の場合は2 億 円以下の罰金となる(106 条の 4 第 1 号、111 条)。メ ーカーがリコールを実施したものの、その実施状況 の報告を懈怠した場合あるいは虚偽報告を行った場 合は30 万円以下の罰金となる(106 条の 4 第 3 号)。 ⑤ また、型式指定制度における一般的な検査拒否・検査 妨害・陳述拒否・虚偽陳述をした場合も30 万円以下 の罰金となる(106 条の 4 第 3 号)。 3. 過料と行政刑罰の関係 上述のように現在の型式指定に係る法人への制裁は、 不正完成検査等に対しては罰金30 万円以下が、リコール 懈怠などに対しては罰金2 億円以下が科される体系とな っている。他方、今回の事例では過料が加算され、日産自 動車、スバル、スズキに対して総額約8000 万円超から 2 億円超が通知されている。このようなことが過料の法的 性格等を踏まえ妥当なのか以下で検討する。 3-1. 過料と行政刑罰の相対化 過料は“軽微”な犯罪に対する行政刑罰の機能不全を背 景として、発動の容易さから行政刑罰の代替として、地方 公共団体の長による処分としての過料や交通反則金・放

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6 置違反金等の行政処分とともに活用されている23。このた め、本来、倫理的に非難され刑罰を科すべき行為に対して 過料が定められ、逆に、単なる手続き違反だと解される行 為に対して社会的非難が強くなると刑罰が定められ、そ の境界があいまいになっている可能性がある。「刑事犯と 行政犯(自然犯と法定犯)の区別は、相対的・流動的であり、 時間の経過や社会の動きにともない変化する」24と言われ ていることはあるが、さらに行政犯と行政処分(制裁)の区 別も相対化しているのである。たとえば、1999 年の外国 人登録法(現出入国管理及び難民認定法)改正では、他の外 国人と同様に科されていた特別永住者の登録証明書の “常時携帯義務違反”の罰則が、特別永住者の歴史的経緯 等への配慮との理由で20 万円以下の罰金から 10 万円以 下の過料に改められ、2017 年外国為替管理法改正では、 大量破壊兵器関連国際レジームにおける第三国での懸念 用途への輸出物利用防止目的のため“許可条件違反輸出” について10 万円の過料から 100 万円以下の罰金に改め られている。これらはいずれも滞在や輸出のための“条件” 違反であり、規制目的の変化により制裁区分が変更され たと考えられるが、規制目的の“何が”罰金と過料の変更 に影響を与えたのかを統一的に説明することは困難なよ うに思われる。 3-2.過料と行政刑罰に関する各種論点 このように過料が行政刑罰との間で相対化しているこ ともあり、過料と行政刑罰に関して種々の問題点が議論 されている。本件事例を議論するため、まず、それら議論 を整理しておく25 3-2-1. 過料の法的性格と裁判手続き 「はじめに」で述べたように、現存する主な過料は届出 義務違反等に対して制裁として科される行政上の秩序罰 であり、それは行政上の秩序維持・義務履行確保手段の一 つとされる。国の過料事件は、非訴事件手続法に基づき裁 判所の裁判により科される(119 条以下)26。非訴事件手 続法には明確な規定はないが、行政庁には裁判の申立権 はなく裁判所の職権により手続きが開始される。つまり 行政庁の通知等は職権発動を促すものでしかない27。裁判 を行うに当たっては、あらかじめ検察官の意見を聴くと ともに、当事者の陳述を聴かなければならないが(120 条 2 項)28、裁判自体は対審構造ではない。これは過料が軽 微な制裁であることと、過料が行政処分であるため刑事 裁判のような対審構造の保証が必要ではないとの理由に よる。行政庁が過料に係る裁判の職権発動を促したとし ても、実際に過料が科されるかどうかは裁判により決定 される29。過料の裁判に対しては、当事者及び検察官に限 り即時抗告を行うことができるが(120 条 2 項)、行政庁 は裁判当事者でないため不服申し立てはできない。 以上のような、過料の軽微な制裁としての行政処分と しての性格、それに伴う刑事裁判と異なる手続きから、過 料と刑罰の併科の問題、適正手続きの問題、刑罰と過料の 区別の問題、区別の問題と関連した比例原則の問題、保護 法益の問題が議論されている。 3-2-2. 過料と刑罰の併科 過料と刑罰とは異なる性質を持つとはいえ、両者とも 制裁である。また、道路運送車両法も含め過料と刑罰とを 併科する規定を持つ法律も存在する。このため憲法39 条 後段の二重処罰の禁止に反しないかが問題とされること がある。この点に関して判例は「刑事訴訟法第160 条は …訴訟手続上の秩序を維持するために秩序違反行為に対 して…科せられる秩序罰としての過料を規定したもので あり…同第 161 条は…刑事司法に協力しない行為に対し て通常の刑事訴訟手続により科せられる刑罰としての罰 金、拘留を規定したものであって、両者は目的、要件及び 実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるも のではなく併科を妨げないと解すべきであ(る)。」とし、 行政刑罰と行政上の秩序罰の併科は憲法31 条および 39 条後段に違反せず可能だと解している30。このような考え 方に対して、「解釈論はさておき、そうした立法政策をと ることの合理性には、疑問が持たれる。住民基本台帳法 51 条のように、刑罰を科された場合には過料を科せない とする方が適切である」と併科に否定的な考え方もある 31。さらに、そもそも行政制裁と刑罰の併科については、 二重処罰の禁止により考えるのではなく罪刑均衡の原則 の中に解消し、制裁効果として十分か過重かどうかで考 えるべきとの主張もなされている32。このように抑止の観 点から見るのであれば、立法論としては刑罰と過料、さら には課徴金も含めて1 つの制裁体系の中で考えることに 合理性があると言える。同様の考え方は2017 年 4 月の 『独占禁止法研究会報告書』において「課徴金が実質的に 刑事罰と同一・同質なものとならず、かつ、刑事罰との併 科が全体として罪刑均衡原則又は比例原則に反すること とならない限り、一定の範囲で公正取引委員会が事案に

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7 応じて個別に課徴金の算定・賦課の内容を決定する裁量 を認めるなど柔軟な制度設計が妨げられるものではない」 33とされていることに示されている。 3-2-3.適正手続 適正手続きの問題に関しては、民法上の登記懈怠(平成 18 年改正前民法 84 条)に対する過料の裁判に対して、憲 法上の適正手続き(31 条)、裁判を受ける権利(32 条)、対 審及び判決の公開(82 条)が争われた事件がある。最高裁 決定34では、憲法32 条、憲法 82 条に関しては、登記懈 怠に対し過料の制裁を科すのは、法人に関する私権関係 の形成の安全化を助長し私法秩序の安定を期すことを目 的とした国家の法人に対するいわゆる後見的民事監督作 用であり、それは実質的には行政処分である。それ故、必 ずしも裁判所が科す必要はなく、純然たる訴訟事件とし ての性質を持つ刑事制裁を科す作用とは異なるので憲法 82 条、32 条の定める公開の法廷における対審及び判決に よって行う必要はないとしている。さらに、憲法31 条に 関しては、過料は、意思に反する不利益処分であり慎重に 決定すべきことから、裁判所が非訟事件手続法により科 すこととされたものであり、さらに、原則として、過料の 裁判前に当事者に対し告知・弁解・防禦の機会が与えられ、 過料の裁判は、理由を付した決定で行われ、不服があれば 即時抗告ができる等、違法・不当に過料に処せられること がないよう十分配慮がなされていることから憲法 31 条 にも反しないとしている。この決定に対して、調査官解説 の「要するに、過料を科するのは「後見的民事監督の作用」 だから一種の行政処分だというのであり、なぜ「後見的民 事監督の作用」なのかといえば、それは法人について登記 義務の励行を目的とする作用だからというのである。… なぜそれが司法作用と性質を異にする行政作用だという ことになるのかについては読む者の解釈にゆだねられて いる」及び田中二郎判事補足説明の「(過料が)一種の財産 的な制裁であつて、その性質上、刑罰にちかいものである という考え方を徹底すると、過料を科する手続そのもの についても、公開・対審の原則を認めなければ、憲法82 条、32 条に違反するとの考え方の出てくる余地がないと はいえないであろう」を引用し、この決定には論拠がない と疑問を呈する考えもある35 また、適正手続に関しては、刑罰と行政制裁の併科とも 関連し、並行手続きにおける証拠収集の問題が議論され ることがある。憲法では、自己に不利益な供述の強要の禁 止 (38 条)、令状主義 (35 条)を定めるが、刑事手続きと 行政手続きを峻別すべきとの考え方、すなわち、別々の手 続きで得られた供述・証拠の相互利用は禁止されるべき だとの考え方がある。たとえば、放置駐車違反金制度(道 交法51 条の 4 第 4 項)では、公安委員会は、放置車両の 使用者に対し、放置違反金の納付(行政処分)を命ずるこ とができるが、他方で、違法駐車行為をした者が出頭した ときには公訴提起をされ刑事責任を追及される可能性が ある。この場合、駐車監視員が行った違反確認作業などが 刑事責任追及のための証拠として使用されることになっ てしまうが、このようなことは禁止されるべきであると の考え方である。このような観点から、道路運送車両法で は行政処分のための「立入検査の権限は、犯罪捜査のため に認められたものと解釈してはならない。」(63 条の 4)と の確認規定が置かれている。この規定の意味については、 資料の利用を一切排除したと解釈されるべきものではな く、調査権が行政目的の範囲内で行われることを改めて 規定しただけだとの考え方もあり36、実務上もそのように 考えられている37 なお、過料は行政処分であるため適正手続きの観点か らは、行政手続法との比較でも問題になりうる38。過料で は、前述のように裁判にあたり弁明の機会が与えられる。 しかし、弁明の機会の付与手続では、弁明書・証拠書類を 役所に提出することが認められるだけである。他方、行政 処分としての不利益処分を行う場合には、原則、聴聞手続 がとられ、口頭での意見陳述権、証拠書類提出権、質問権、 処分の理由となる事実を証明する資料の閲覧請求権等が 認められ、不利益処分の決定に際しては、聴聞調書・報告 書がまとめられ、これらを十分参酌しなければならない とされる。このように、過料賦課の手続的保障が不利益処 分を行う手続と比して弱いことが問題視されている39 3-2-4.比例原則 過料は制裁であるから、人権制約の制限原理である比 例原則に服する必要がある40。過料に関する比例原則適用 の下級審判決としては春日井市下水道料金免脱事件があ る41。本事例は、迂回水道管により違法に水道料金の徴収 を免れたことに対して、徴収を免れた料金の5 倍に相当 する金額以下の過料を科すとする条例の規定に基づいて 賦課された3 倍相当額の過料処分の違法性が争われたも のである。判決では、行政目的を達成するためにどのよう な手段を選択するかは行政庁に裁量権があり、裁量権を

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8 逸脱・濫用し、社会通念上著しく妥当性を欠く侵害処分を 行った場合には当該処分は違法となる。また、裁量権内で 選択された手段としての侵害処分は行政目的を達成する ために必要最小限でなければならず、その意味で比例原 則が妥当する。そして不正免脱額の5 倍相当の金額以下 の過料を定める地方自治法228 条 3 項及びこれを受けた 当該条例25 条の規定42は、適正な徴収確保という同じ行 政目的を有している地方税法の重加算金及び脱税罪の各 規定43と比較すると過料の上限が高く設定されている。そ れ故、重加算金及び脱税罪の上限を超える金額の過料を 科すには、それを正当と認めるに足りる情状の存在を必 要とする。しかし、その情状面の事実関係が明らかにされ ていないこと等から、不正免脱使用料金の3 倍に相当す る額の過料処分は高く2 倍で足りるとした。 この判決例に対しては、比例原則は手段選択として必 要最小限の規制を要請する比例原則(必要性の原則)と処 分事由と処分の釣り合いを要請する狭義の比例原則があ り、本判決例は必要性の原則をあてはめているが、過料処 分に適用される比例原則は狭義の比例原則であり、その 基準について何ら言及されていない。また、3 倍なら違法 で2 倍なら足りるのかについての合理的な説明がない。 さらに、手口が巧妙であれば不正免脱される期間と水量 は多くなるはずであり、行為の悪質性(情状)は必然的に制 裁金額に反映されるのであえて情状を問題とする必要は ないとの批判がある44 なお、過料と同じ金銭罰である課徴金に対しても利益 の均衡(狭義の比例原則)が考えられるべきとの見解も有 力である45。たとえば、虚偽記載によって有価証券を取得 させた者に対して課される課徴金額について、違反者に 実際に経済的利得が生じたかという個別的事情は勘案さ れず「新株予約権の行使に際して払い込むべき金額…を 含む。」(金融商品取引法 172 条の 2 第 1 項)ことを文言通 り認めた裁判例に対して46、合理的な資金調達見込み額を 超える可能性があることから比例原則違反による憲法適 合的解釈の余地があったのではないかとの批判がある47 3-2-5.保護法益 「法益概念が抽象化」48し、「人の尊厳の保持」や「公 衆の感情」が刑罰の保護法益たりうるのかといったこと が問題とされている。このことは保護法益が制裁を科す 基準の一つであることを意味している。行政刑罰と行政 上の秩序罰を科す区別の基準を何に置くべきかについて の第一の考え方はその保護法益を基準とするものである。 「行為が直接的に行政上の目的を侵害し、社会法益に侵 害を加える場合は行政刑罰を、そうではなく、間接的に行 政上の秩序に障害を及ぼす危険があるに過ぎない場合は 行政上の秩序罰を科す」「行政法規がその目的実現のため に維持形成しようとする生活秩序そのものを直接侵害す る場合は行政刑罰を、行政がこのような生活秩序の下で、 その使命を支障なく実現するために要求する義務に対す る違反には、行政上の秩序罰を科す」という考え方である 49。そのような過料に関する保護法益論は、たとえば、取 締役の登記及び選任懈怠に関する会社法罰則(会社法 915 条1 項)においてみられる50。裁判例では51、登記懈怠につ いて本人に過失がなくても帰責事由さえあれば客観的要 件を満たすことになり52、過料が適用されるとしているこ とから、「(過料)罰則の保護する「秩序」が会社外部の取 引社会のそれであることを示し、登記や選任の懈怠は、取 締役を欠いた会社が適正に業務執行できないとか、取引 相手等に混乱を生ずるといった可能性があるために規制 の対象となっている」とし、保護法益を取引社会における 秩序だと理解している53。つまり過料であったとしても、 その保護法益は単に行政上の手続違反といった“軽い”秩 序ではない場合もあることを意味する。そのことから「こ のように強く保護される法秩序であるならば、(過料とい った弱い制裁ではなく:筆者注)より実効的な執行が確保 されるべきではないか...(逆に、保護法益を私的自治とい うような:筆者注)株主の権利保護のための規制(だと解 するのであれば制裁による:筆者注)、積極的な探知・介 入が適切なのか」54という両面からの批判が出てくること になる。これは前述の行政犯と行政処分(制裁)の区別の相 対化、保護法益の抽象化から考えてみると当然の批判・結 果かもしれない。 そこで区別の第二の考え方として「刑罰の本質論から …刑罰は倫理的な非難を課すものであることを前提とし た上で、刑法の謙抑性を根拠に、…刑罰を科すのは、それ に値するだけの高度の違法性、有責性が認められ、かつ、 他の手段によってはその目的が達成できない場合にとど めるべき」というものが出てくることになる55 この考え方に対しては、さらに、次のような考え方も提 示可能である。すなわち、法益の抽象化という現象がある としても、法益関連性を全く欠くような刑罰法規は多く は存在するとは考えられない。それゆえ、法益保護論によ って刑罰法規を直接的に縛ることはあまりないと考えら

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9 れる。しかし、「法益保護主義からの帰結として、刑罰と いう手段が当該法益の保護という目的を達成するのに役 立つこと(適合性ないし有効性)、他の手段ではそれを達成 できないこと(必要性ないし補充性)、当該法益を保護する 利益が国民の自由の制限を含めた当該行為の禁止や処罰 のコストを上回ること(相当性ないし狭義の比例性)が要 請される。この比例原則のテストによるなら、一般に、行 為と法益侵害との間の「距離」が遠くなるほど処罰の必要 性や相当性が減少する。」56というように、保護法益と比 例原則を結びつけるという考え方である。そして、この議 論は刑罰だけでなく行政制裁を含めた議論にまで敷衍で きる。つまり、法益保護原則は比例原則から直接導かれる ものではないとしても、保護法益の“大きさ(法益侵害と の距離)”と制裁の形式(強さ)は比例原則と関連した問題 だと考えれば良いのである。さらに、「責任主義による非 難可能性が処罰を限定するとともに、危険性への対処も 比例原則によって規制されるとする」57との考え方をとれ ば、責任非難の要素も、法益保護・比例原則と一体のもの として制裁形式をも含む“量(大きさ)”の問題に解消され る。 そうであれば、刑罰と行政制裁の区別の考え方の第一 と第二とでは違いはなくなり、責任非難という要素も含 め、単に“量”の違いとされるのであるから、刑罰が回復 を予定している規範の方が、行政制裁が回復を予定する 規範より重要性が高い場合、つまり、国法秩序一般との関 連性が強い場合には刑罰が予定され、国法秩序のうちの 特定の法制度に関連性を有する場合には行政制裁が予定 されるとの主張にもつながる58 4. 行政制裁における保護法益と“非難”の乖離 「国法秩序のうちの特定の法制度に関連性を有する場 合には行政制裁が予定される」といっても、国法秩序のう ちの特定の法制度である個別行政法は、また、全て何らか の公的秩序を形成することを目的としている。それゆえ、 多くの個別行政法で規定されるいわゆる行政行為は、行 政と国民、国民相互間に法律上一定の法効果を発生・変 更・消滅等させるのである。そして、その行政行為には公 定力があり、何らかの瑕疵があった場合にも、行政行為が 取消されるまでは有効として扱われることになる。この ため、たとえば、一見明白ではない虚偽申請がなされると、 それに基づきなされた行政行為により国民に損害等が生 ずる可能性がある。そして、その損害が多大である場合に は、行政行為の形成過程に対して非難が高まり、もともと の行政行為の形成過程において予定されていた(たとえば、 虚偽申請に対する)制裁の量(形式)と損害(被侵害法益)と それに対する非難の量との比例関係に乖離が生ずること もあり得る。 このような事例は 2005 年の耐震強度構造計算書偽装 事件59でみられた。この事案は、建築士が内容虚偽の構造 計算書を作成し、指定確認検査機関の建築確認を受けた ため、耐震性に問題のある建築物が施工されたというも のである。建築確認行為は、建築基準関係規定の適合性を 確認する講学上の確認行為60とされ、確認済証が付与され ると、建築主は建築の自由の一般的禁止を解除されるた め、その付与行為は授益的行政処分だとも言える。さらに、 建築確認を得ていたとしても、建築基準関係規定に違反 している場合には、建築物の除却等が命じられる(建築基 準法9 条)ことからも分かるように、建築確認は建築主 事等が建築物の適法性を“保証”する制度ではない61。こ のため、建築確認が国賠法上違法になる場合についても、 最高裁は「申請書類の記載事項における誤りが明らかで、 当該事項の審査を担当する者として他の記載内容や資料 と符合するか否かを当然に照合すべきであったにもかか わらずその照合がされなかったなど…建築主事が職務上 通常払うべき注意をもって申請書類の記載を確認してい ればその記載から当該計画の建築基準関係規定への不適 合を発見することができたにもかかわらずその注意を怠 って漫然とその不適合を看過した結果当該計画につき建 築確認を行ったと認められる場合」と限定的に解してい る62。建築確認はこのように授権的で安全を保証するよう な行為でないにもかかわらず、本偽装事件を契機として 2006 年に建築基準法等が改正され、耐震基準など重大な 実体規定違反に対しては50 万円以下の罰金が懲役 3 年 又は300 万円以下の罰金、法人の場合には 1 億円以下の 罰金へ(改正建築基準法 98 条関係)、建築士・建築士事務 所の名義貸し、建築士による構造安全性の虚偽証明に対 しては、そもそも罰則がなかったものが懲役1年又は100 万円以下の罰金(改正建築士法 35 条関係)へと改正された のである。 5. 型式指定制度の保護法益は何か 道路運送車両法の型式指定に関する罰則が3 つの不正 問題によって改正されてきたが、型式指定制度に係る罰 則によって保護される法益は何であろうか。型式指定制

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10 度はメーカーの大量生産を実現するシステムであるから、 型式指定制度に係る違反は定型的大量に生ずることが予 測される。定型的違反が大量に発生するものは刑罰から 過料に移すべき63、との意見もあるが、単に定型的違反が 大量発生するのであれば保護法益が小さく過料になると いうわけではないのは明らかである。道路運送車両法の 目的は、登録制度、安全性の確保・公害の防止等(保安基 準、点検整備、検査等)による公共の福祉の増進であり(1 条)、保安基準は型式指定制度が担っている。また、保安 基準が充たされなかった自動車のリコール制度も型式指 定制度と一環のものと考えてよい。そしてこのリコール 制度は、他のわが国のリコール制度を規定する法律の多 くと同様64、消費生活用製品安全法で規定するように、危 害の発生防止を目的としている65。このようなことから考 えると、型式指定制度の保安基準により守られる法益は、 多数製作される自動車の安全性確保による危害の防止、 すなわち多数の人の生命・身体の安全であると考えられ る。そうであれば、安全でない自動車が運行されることを 防止するための措置として、不正申請による型式指定取 得に対してなされる立ち入り検査の虚偽報告等の2 億円 以下の罰金(と型式指定の効力停止・取消)、不正検査に対 してなされる改善措置の虚偽報告の2 億円以下の罰金(と 型式指定の効力停止)、リコールの届出懈怠やリコール命 令違反に対する2 億円以下の罰金は、同一の保護法益に 対して同一の罰金額を定める整合的な制度となっている といえる。他方で、不正申請、不正検査、リコール報告懈 怠は、それぞれ30 万円以下の罰金とされているが、これ らは実際の安全確保措置が、型式指定の効力停止やリコ ール命令という実効性の高い行政処分66 2 億円以下の 高額罰金で担保されているため、単独での高額罰金は不 要だと考えたものと理解される67 ただ日産自動車等の不正完成検査事件以前は、完成検 査部分は制裁として体系化されておらず、行政上の秩序 罰である過料規定しかなかった。つまり、完成検査部分は 型式指定制度の中で保護法益が他とは異にされていたこ とになる。実際、日産自動車事件では、国土交通省は、製 作、完成検査、完成検査終了証の発行、譲受人への交付、 リコールまでを一貫の制度と捉えていたにもかかわらず 68、過料を通告した理由については「完成検査業務の改善 指示を受けたにもかかわらず完成検査業務の適正な実施 がなされていないという点で、今後の道路運送車両法令 の適切な執行に影響を与えかねない重大な違反である」69 とし、“完成検査業務の適正な実施”という本来は自動車 技術総合安全機構が行う行政事務が害されることを理由 としており、保安基準適合性による安全確保には触れて いないのである。 また、このような過料の秩序罰としての扱いは、本事例 以前にも行われている。2005 年と 2006 年に三菱自動車・ 三菱ふそうトラック・バスは、リコール届出義務違反によ り過料が通知されているが、その際、国土交通省は、既に 全ての車両の不具合が解消している等の理由によりリコ ール届出を不要と判断した案件 (リコールに相当する案 件)についても届出義務違反で過料を通知している。つま り、安全性について問題がなくなっておりリコール届出 義務がないもののリコールに相当する案件だとして届出 義務違反を理由に過料を裁判所に通知しているのである 70 6. 型式指定工程での不正行為と営業犯 6-1.工業製品と営業犯 本事例の事件当時は、不正完成検査に係る過料は、国民 の生命・身体の安全を保護法益としたものではなく秩序 違反に対するものであった。そして型式指定制度の中で 定型的秩序違反が大量になされたため、過料が約8000 万 円超から約2 億円超にまで加算されることとなった。 1 つの製造工程や日々繰り返される営業行為の中では、 同一行為が大量になされることは通常みられることであ る。そして、そのような行為が犯罪行為を構成する場合、 すなわち「営利の目的をもって一定の犯罪を反復するこ とを予定する犯罪」を営業犯(集合犯)と言う71。営業犯と なるかどうかは常に法文上明白なわけではないとされる が72、無免許医業罪(医師法 17 条、31 条 1 項 1 号)などが 該当するとされる。営業犯は「数個の行為が別個の犯罪を 構成するものでなく、数個の行為が全体として一罪を構 成」73することになる。また、「構成要件として数種の行 為が規定されているが、それらが一個の構成要件の数種 の態様または現象形式と見られるべき場合」74を狭義の包 括一罪と言う。狭義の包括一罪は、酒税法54 条のように 「製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造し た者は、10 年以下の懲役又は 100 万円以下の罰金」とさ れるものについて、焼酎を造る過程ではもろみを製造す る過程があり、それぞれ単独に処罰することは合理的で はないと考えられるような一連の行為である形態のもの があるとされる75。工業製品のように大量生産を予定する

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11 連続的な工程では、法益保護を徹底するため工程の各段 階で規制がなされることがあるが76、それらは営業犯、あ るいは、狭義の包括一罪となる可能性があり、型式指定制 度の下での製作、完成検査、完成検査終了証の発行、譲受 人への交付の各段階を経る自動車の大量生産もこれらに 該当する可能性がある。 他方、型式指定制度の中で製作された自動車に関して、 保安基準への不適合により侵されるものを“個々(一台一 台)の”自動車に対する安全だと考えるのであれば、接続 された同種行為が繰り返されたとしても「具体的な被害 者、被害法益が異なる場合には包括一罪とはならない」77 との考え方も成り立ち得る78 6-2.安全規制と報告義務 それでは、型式指定制度の下での「製作」「完成検査」 「リコール」といった個別の制度の保護法益を、多数の人 の生命・身体の安全と考えた場合に、それら個別の制度と 秩序違反とされた完成検査終了証の発行業務はどのよう な関係に立つのか。また、不適切な完成検査証の発行に対 する過料の加算は説明可能なのだろうか。 個別の安全規制とそれらの安全規制を行ったことを点 検し証明するような行為、たとえば、監督官庁に報告する 義務を課す等は行政法上多く見られる。 消防法では、非特定防火対象物の場合、消防用設備等の 機器点検を6 か月に 1 回、総合点検を 1 年に 1 回行い、 その結果を3 年に一度消防署長に報告する義務が課され ている(消防法 17 条の 3、施行規則 31 条の 6 等)。もし、 その3 年の間の各点検において、日産自動車の完成検査 のように点検資格(消防設備士等)を持っていない者が点 検を行った場合や機器の一部未設置があった場合には、 その間安全性が確保できない状態が継続していたことに なり、その状態のまま消防署長に報告を行えば虚偽報告 となり30 万円以下の罰金 1 罪が成立する(消防法 44 条 11 項)。他方、立入検査等により各機器の未設置や点検資 格のない者による点検等の義務違反が確知されると、そ れぞれの違反についての複数の措置命令が発出され(17 条の4)、それら命令が履行期限までに履行されなければ 複数の命令違反罪(50 万円以下の罰金、法人 3000 万円以 下の罰金)が成立する(41 条 1 項 5 号、45 条 1 項 3 号。併 合罪)。さらに、命令にもとづく措置が履行されない等、 火災の予防に危険・火災発生時に人命に危険があると認 める場合には、防火対象物の使用禁止、停止等ができる(5 条の2)。このような制度の構造は、自動車の安全性を、 型式指定に基づく「製作」「完成検査」「リコール」といっ た個別の制度で確保し、それらの違反に対しては、基本的 にはメーカーの改善行動が期待されているが、それが期 待できない場合には、高額罰金や型式指定の執行停止・指 定の取消を行うという仕組みと同じである。 つまり、消防法では一棟の建物の安全を複数の防火機 器の設置で確保し、それを包括して点検報告する制度に なっており、型式指定制度では、(一台一台の自動車の安 全を守る)型式指定というシステムを、その申請、製作、 完成検査、リコールという複数の制度で確保し、それらを 申請段階、完成検査修了証の発行事務、リコール届出とい う各段階で報告することになっているとみるべきである。 この対比からは、一台一台の自動車に対する違反は評価 対象には現れない。複数の違反がありうるのは、複数の制 度における違反がなされた場合だと考えるべきである。 このように考えると、当時の過料の秩序違反について 台数で加算すべきではないことになる。さらに言えば、そ の秩序違反の過料が加算され、本来的に想定されている 多数の人の生命・身体の安全という保護法益に対する 2 億円以下の罰金額を超えることも、保護法益・比例原則の “量”との関係から考えておかしな結果である。 7. 過料の存在意義と新たな過料の役割 7-1.リスクに応じた過料と罰則 型式指定制度の申請から製作、完成検査、リコールまで の一連の過程における不正に対しては、型式指定の取消・ 指定の執行停止、それを担保する罰金で統一的に対処す る形ができあがっているため、過料を存置する必要はな くなったとも考えられる。しかし、本件事例とは異なり不 正ではなくミスにより数台完成検査漏れが生じ、その自 動車に検査終了証が発行されたような場合にも型式指定 制度の取消しや高額罰金といった制裁が必要であろうか。 このような場合、通常、メーカーは国土交通大臣に報告を 行い79、ディーラーを通じ直接譲受人に対して通知を行い、 譲受人の自動車を回収し基準適合性の確認検査を行うと 考えられる。ミスによる少数リコールの事例として自動 車技術総合機構岐阜事務所における前照灯試験器の判定 値設定ミスの事例がある80。この事例は、前照灯試験機の 光度判定値が誤って設定されていたため62 台が適合と 誤判定され、さらに、過誤がなかったように偽装が行われ ていたものである。この事例に関して、国土交通省は、過

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12 料通知は行わず業務改善指示を行っている。改善指示書81 では「(平成 29 年 12 月に一度:筆者注)再発防止を指示し たところであるが、…再度同種事案が発生したこと、及び 誤った判定値で検査を実施した事実が無かった様に偽装 が行われたことは、本事案に関する重大さを受け止めて いない…。…改めて再発防止対策を見直すこと及び誤判 定したおそれがある車両の基準の適合性の確認検査を実 施するとともに、これらの実施状況について、四半期毎を 目処に報告されたい。」とされている。 自動車技術総合機構と日産自動車の事例と比べると、 ①以前の再発防止指示後の再発であること、②偽装とい う重大性(悪質性)が見られる点で類似している。他方、③ 自動車技術総合機構の事例はミスであるのに対して、日 産自動車の事例は意図的な不正であり、④自動車技術総 合機構の事例は少数リコールであるのに対して、日産自 動車の事例は大量リコールが生じている点で異なってい る。そして③④の「意図的な不正」により違反を犯せば「大 量リコール」になる可能性が高く、「ミス」により違反を 犯しても「少量リコール」で済む可能性が高いとの予測に 立てば、「意図的な不正」によるか「ミス」によるかとい う責任・非難の量を人の生命・身体の安全の多数・少数と いう保護法益の量(リスク量)に結び付けることが可能と なる。同じ保護法益の内容であっても、その量・リスクの 大小に応じて刑罰と過料を使い分けるという考え方は化 審法でもみられ(化審法 8 条、62 条)82、行政法上馴染みが なくはない。そしてミスによる少数リコールの場合には、 必ずしも型式指定制度による安全システムを喪失したと は言えず、個々の自動車のリスクが高まったとみる方が 妥当であるから、不適正な完成検査終了証の発行という 秩序違反に対する過料が適用されてもよいと考える。ま た、この場合には個々の被害者の特定性が高く(秩序違反 の)法益の個性が顕在化していることから、過料を加算す る方が適切かもしれない。そうしたとしても少数リコー ルなので過料総額は法人の意図的不正に対して科される 罰金のような多額の金額にはならない。 さらに、改善指示書の後段では「誤判定したおそれがあ る車両の基準の適合性の確認検査を実施する」とされて いるが、行政処分としては、履行期日を定めて確認検査を 1 過料には、秩序罰としての過料の他、執行罰としての 過料、懲戒罰としての過料が講学上存在する。執行罰と しての過料は、義務の履行を間接的に促すため科すもの で、現行法上、砂防法36 条にのみ存在する。懲戒罰と 行わせることを求めても良いだろう。そのように考える のであれば過料を強制金制度として構築することも一案 である。強制金制度とは、行政上の義務を将来のある時点 までに履行しなければ一定額の過料を課すことを通知し、 履行がなければ強制徴収するという制度である。この制 度のメリットは、義務違反に対しては繰り返し、また、本 例のような場合であればリコール台数に応じて過料を課 すことができ、確認検査を早期に行うインセンティブを 与えることが可能となる。強制金は履行を確保するため に課されるものであり不利益処分とは解されないため、 ミスを隠ぺいしたような場合の罰金との併科も問題とな らない83 おわりに 本稿では、道路運送車両法の型式指定制度に係る制裁 の変遷の検討を通じ、過料の問題点と新しい見方を示し た。型式指定制度に係る制裁は体系化され問題点は少な くなったように思われるが課題もあると考える。それは 行政処分の裁量の在り方である。型式指定制度の不正行 為に対しては、型式指定の執行停止などメーカーにとっ ては刑罰より実質的に厳しい行政処分が用意された。し かし、その発動は、メーカーの改善措置の履行を前提とし た行政裁量による。2019 年 11 月には誇大広告に対する 課徴金制度が改正薬機法に導入されたが、その課徴金賦 課に関しては、業務改善命令・措置命令・製造販売等の許 可取消し・業務停止命令を行う場合等は裁量的に課徴金 の納付を命じないことが可能との規定がある(改正薬機法 75 条の 5 の 2 第 3 項)。この規定も型式指定の執行停止 等と同じ意味を持っている。金銭的制裁より厳しい業務 停止等の行政処分が企業の業務改善措置に依存し、その 業務改善措置の内容の決定・履行監督が行政庁の裁量的 処分・行為に依存することは、企業・行政の“阿吽の呼吸” で制裁が決まる可能性があるということでもある。より 厳しい制裁である業務停止等の行政処分の裁量的発動と 罰金・課徴金の賦課の今後の運用を見守る必要がある。 (本研究は、科学研究費補助金(基盤 C 18K0131900)の助 成を受けたものである。) しての過料は、行政法上の特別な監督関係に基づいて科 されるもので、裁判員候補者の虚偽記載や不出頭等(裁 判員法111、112 条)、裁判官分限法 2 条、公証人法 80 条の懲戒等がある。

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13 2 道路運送車両法では、自動車を新規登録する場合に は、国土交通大臣に申請書等の提出を行うとともに、自 動車の現物を提示する必要がある(7 条 1 項)。ただ し、同一モデルが大量生産される場合には型式指定制度 がとられており、その場合には、メーカーが保安基準適 合性審査を実施し、自動車の譲受人に完成検査終了証を 発行する(75 条)。自動車の使用者は、完成検査終了証 を提示することで、新規登録時の自動車の現物提示が不 要となる(59 条 4 項、7 条 3 項)。 3 国土交通省「日産自動車(株)の型式指定自動車の完 成検査に係る不適切な取扱いについて」平成29 年 9 月 29 日 プレスリリース 4 日産自動車株式会社・日産車体株式会社宛て「調査報 告書(車両製造工場における不適切な完成検査の実施つい て) 」2017 年(平成 29 年)11 月 17 日 プレスリリース 5 日産自動車「完成検査における不適切な取扱いへの対 応等についてのご報告」2018 年 9 月 26 日 プレスリリ ース 6 国土交通省「型式指定に関する業務改善について」平 成30 年 3 月 26 日 プレスリリース、国土交通省「型式 指定車の完成検査の不適切事案への対応について~ 日 産自動車(株)及び(株)SUBARUへの対応 ~」 平成30 年 12 月 19 日 プレスリリース、日産自動車・ 日産車体「調査報告書」2017 年 11 月 17 日、日産自動 車HP リコール情報 7 他の義務違反に対する 10 万円以下の過料から引き上 げた上での新設。 8 朝日新聞 1997 年 11 月 7 日 夕刊。また、同紙による と、リコール隠しは過去6 件起きているがいずれも文書 による警告処分だとされている。 9 朝日新聞 1999 年 3 月 26 日 夕刊。この件に対して は、運輸省はリコール実施勧告(改善措置勧告)を行って いる。 10 朝日新聞 2000 年 7 月 26 日 夕刊 11 その後 2004 年 7 月には、三菱ふそうトラック・バス (三菱自動車工業の子会社)が、国土交通省への事故原因 報告を改ざん・隠蔽を行った問題が生じている。朝日新 聞2004 年 7 月 13 日 朝刊 12 国土交通省「三菱自動車工業㈱の排出ガス・燃費試験 の不正事案を受けた他の自動車メーカーにおける実態調 査の結果について」平成28 年 5 月 18 日 プレスリリー ス 13 道路運送車両法 110 条 6 項では、76 条の規定に違反 した者を処罰し、76 条は、指定の手続、検査の基準、 その他道路運送車両の検査の実施細目は国土交通省令で 定めるとしていることによる。 14 行政処分の取消しは遡及効を持つため、型式指定を取 消すと既に運行されている自動車についても保安基準の 適合性が確認されるまで運行できなくなってしまう。こ のようなことは一般ユーザーに多大な不利益を与えるた め、指定の取消しを行う場合には取消しの効力を及ぶ範 囲を限定できるとし、取消しの日までに製作された自動 車について効力を及ぼさないようにすることが規定上可 能とされている。 15 燃費値については、2018 年 1 月に道路運送車両法の 保安基準が改正されるまでは、保安基準及びその細目告 示において基準は定められていなかったので、その当時 は、燃費値だけの虚偽申請であれば「保安基準に適合し なくなった場合」とならなかったために、このような改 正がなされたと考えられる。 16 それまでも一般的な報告、検査権は存在した(100 条)。 17 消費者庁「三菱自動車工業株式会社に対する景品表示 法に基づく措置命令及び課徴金納付命令並びに日産自動 車株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令につい て」平成29 年 1 月 27 日 プレスリリース 18 第 193 回 国会参議院国土交通委員会会議録第 15 号 15 頁(平成 29 年 5 月 18 日) 19 それらを変更するためには届出が必要となる(型式指 定規則6 条 1 項 2 号)。 20 スバル株式会社「当社製自動車の完成検査に関わる社 内調査結果について」2017 年 10 月 27 日 プレスリリー ス 21 スズキ株式会社「当社の完成検査における不適切な取 扱いに関する調査結果について」2019 年 4 月 12 日 プ レスリリース 22 「完成検査に従事する員は、当該検査に必要な知識及 び技能を有する者のうちからあらかじめ指名された者で あること。」と規定されている。 23 北村善宣「行政罰・強制金」磯部力=小早川光郎=芝 池義一編『行政法の新構想Ⅱ』148 頁 有斐閣 (2008)。なお、過料事件新受件数は、地裁・簡裁を合わ せると、平成27 年から 29 年まで年間 10 万件を超えて いる(司法統計民事行政事件編)。 24 井田良「近年における刑事立法の活性化とその評価」 井田 良=松原 芳博編『立法学のフロンティア 3』113 頁 ナカニシヤ出版 (2014) 25 過料についての問題点等を簡潔にサーベイしたものと して、今井暢好「軽微な犯罪と行政秩序違反」愛媛法学 会雑誌 第39 巻 3.4 号合併号 199-222 頁(2013)。 26 国の法律により定められた通常の行政上の秩序罰は、 地方裁判所が科すが、住民基本台帳法44 条のように別 段の定めがある場合には簡易裁判所により科される。ま た、路上喫煙防止条例のように、地方公共団体の条例・ 規則により定められた過料については、司法機関を経由 せず長の行政処分により科される。 27 最決平成 17 年 11 月 18 日 集民第 218 号 475 頁 28 相当と認めるときは、当事者の陳述聴かないで裁判を できる(122 条)。 29 最決平成 20 年 3 月 6 日 集民第 227 号 503 頁では、 「原則として,当該行為をした者を過料に処すべきであ るが、違反行為の態様、程度その他諸般の事情を考慮し

参照

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