四
= ‑‑
目 次 はじめに個人データ保護をめぐるわが国の現状
銀行の個人データ提供の法的側面 曰 個 人 デ ー タ の 外 部 提 供 に お け る 問 題 点
~西ドイツデータ保護法によるデータ処理︑
1,
□
データ保護法におけるデータ提供の許容 要件 四 わ が 国 に お け る 個 人 デ ー タ の 外 部 提 供
西ドイツ銀行普通取引約款一〇条︵情報提供︶
の改正の経緯および意義 曰 一 九 六 九 年 改 正
①︱九六九年改正の経緯
②改正AGB‑0
条の意義
一九七六年改正
①一九七六年改正の経緯
②改正AGB‑0
条の意義
一九七七年改正
田一九七七年改正の経緯
(
三) (二)
資料
"
i
資料ー 六 五②改正AGB‑0
条の意義
一九八四年改正
①︱九八四年改正の経緯
②改正AGB‑0
条の意義
一九八六年改正
①︱九八六年改正の経緯
② 改 正
AGB‑0
条の意義
AGB‑0
条の免責と問題点
AGB‑0条と西ドイツ﹁データ保護法﹂
H
銀行の情報提供とデータ保護法上の問題
点
銀行の情報提供の許容要件
一九八六年改正AGB‑0
条と銀行実務
の変更
︹金融機関等における個人データ保護の ための取扱指針︵金融情報システムセン
ター︶︺昭和六二年三月二
0
日︹西ドイツ新SCHUFA条項
︺ 六年七月一日改正
に)(二) (五) (四)
後
藤
西 ド イ ツ 個 人 デ ー タ 保 護 法 と 銀 行 普 通 取 引 約 款 第
0 条︵情報提供︶に
七 紀
九
一九八
ついて
7 ‑3•4 ‑467 (香法'88)
このことは︑銀行の情報提供活動が法律的に常に問題を提供し︑裁判上も多くの争いがあったことを示している︒
もちろんその時々の判例によって当該条項の効力が否定された場合もあるが︑
その改正を全体としてながめてみると︑
化によって取引量が飛躍的に増大したことに対処するために︑銀行業務のエレクトロニクス化を進めねばならなかっ
たこと︑消費者保護の観点から︑
普通取引約款規制法
( G
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z z
u r
R e
g e
l u
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n G
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a f
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,
b e
d i
n g
u n
g e
n 以後
A G B
ーGと略す一九七七年︶が制定され︑
人のプライバシィ保護の観点から︑データ保護法
( B
u n
d e
s d
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s c
h u
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g e
s e
t z
, 正
式名
称は
︑
G e
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M i
, 8
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r a
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e i
t u
n g
︱九七八年︶が制定され︑銀行顧客のプライバシィ保護にも法的
規制が及んだことである︒ これまでの
A G
Bの改正に関しては︑
つぎの点が改正に大きなインパクトを与えている︒ 〇条以外にはないのである︒ の対象になってきた︒多くある条項の中で︑
この
約款
は︑
西ドイツの銀行普通取引約款
( A
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i n
G e
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c h
a f
t s
b e
d i
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u n
g e
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Ba
nk
en
以後
A G
Bと
略す
︶ 七ケ条ある非常に完備されたもので︑すでに一九三
0
年代の後半には︑全国の銀行( p r i
v a t e
B a
n k
e n
)
(1 )
︵2
)
的 に 採 用 さ れ て い た
︒ そ の 後
︑ 七 度 に わ た っ て 改 正 が 行 わ れ た が
︑ 私 が A G
Bの改正をフォローし始め
た一九六九年度改正以後をみるかぎり︑銀行の情報提供活動の方法︑責任関係について定めた第一〇条は︑常に改正
は じ め に
これが銀行取引約款にもかぶさってきたこと︑こ伺
t
ー1さら
一九六九年度以降のすべての改正においてその対象になったものは︑
つまり︑銀行業務の大衆 によって統 は︑全文が四 八〇
7-3•4-468 (香法'88)
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)について(後藤)
個人データ保護をめぐるわが国の現状
討することに意義があると思われる︒ 具体的措置を考えておく必要があると思う︒ 制定されるが︑ 一九六九年度以降毎回改正されてきたが︑
J¥
それでも一九八四年改正 までは法的意義においてはともかく︑基本的文言において大きな変化はなかった︒しかし︑今回の一九八六年改正は︑
その文言においても一変し︑何倍も詳しい条項になっている︒それはデータ保護法の規制をクリアするためであるが︑
西ドイツではこれでもって当分
AGB‑0
条は耐えられるであろうといわれている︒近々わが国にもデータ保護法が これは︑公い機関いデータ処即を規制の対象としている︒
今回の
AGB
の改正;0
条は︑私がみても細かい配慮がなされており︑
しかし︑金融取引の国際化を号えるとこれ でもって事足りるとは思われないし︑個人的にもプライバシィ保護に敏感な諸外国から指摘されない前にしかるべき
よく出来ていると思う︒民間機関のデータ 処理についてもデータ保護を考えるときは︑諸外国の動向を把握しておく必要があり︑
その意味で
AGB‑0
条を検 これまでも個人の生活領域に関するいろいろな情報︵データ︶が各種の機関によって蓄積され利用されてきたが︑
今日の技術革新ことにコンピュータの高度な発展は︑従来と比較にならないほど膨大な量の情報の蓄積を可能にする と同時に遠隔地にいる第三者がいわば瞬時に情報を人手することを可能にした︒このことは︑個人データの商業的利 用を可能にしたが︑反面︑データ主体である個人に対しては︑新しい意味でプライバシィの侵害の危険をもたらした︒
前述のように︑西ドイツの
AGB
第一〇条は︑
7‑3•4 ‑469 (香法'88)
用語がみられることは興味深い
︵資
料
I
参照
︶︒
( F I S C )
が個人の倍用情
一九
八
0
年九月︶がその結果︑個人データの商業的利用に対する国民の不信を増大せしめることになったのである︒
右のような観点から︑個人データを保護するために︑近時先進諸国は︑個人データの蓄積︑利用等に対して︑新し い立法規制を行なっているが︑本稿で取り扱う西ドイツのデータ保護法もその一っである︒
国境を越えて流れ︑情報処理システムも国際間にまたがるため︑個人データ保護も国際的に整合性を図る必要が生じ︑
OECD
理事会勧告︵﹁プライバシィ保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告﹂1九八
0
年九月︶および欧州評議会条約︵﹁個人データの自動処理にかかる個人の保護に関する条約﹂採択されるにいたっている︒
わが国でも︑
報の保護の観点から︑
の機関によって取り扱われ︑
タ処理のみを対象とするか︑
さらに最近では︑情報が その意味で︑個人データ保護の問題は︑国際的関心事になったといえる︒
OECD
理事会勧告を契機として︑すでに昭和五七年七月に行政管理庁の﹁プライバシー保護研究会﹂により︑基本的に右の理事勧告の線に沿った報告書が出されているが︑その後民間企業等の有する個人データの保護 につき検討すべき旨の閣議決定︵昭和六一年︱二月︶がなされ︑政府レベルにおいても︑個人データ保護に対する積 極的態度が見受けられるようになった︒そして︑ごく最近︑金融情報システムセンター
その収集︑利用︑提供等に関するガイド・ラインを発表し︑金融機関においても︑個人データ
(5 )
保護に対して積極的に取り組むことを明らかにしたが︑その表現上︑各所にドイツのデータ保護法で用いられている 個人データ保護は︑基本的には︑憲法の人権保障に由来するが︑個人情報を大鼠に取り扱う金融機関との関係から
もいろいろな問題を生ぜしめる︒個人データは︑銀行のみならず︑他の民間機関たとえば証券会社︑保険会社等各種
さらに国家の各種機関においても取扱われる︒立法規制する場合︑公の機関の個人デー それとも民間機関も含めて規制するかは︑諸外国の立法例をみても︳致しているわけで
八
7 ‑ 3・4 ‑470 (香法'88)
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)について(後藤)
u n
g )
と呼ばれている個人信用情報機関があり︑現在
SCHUFA
は︑西ドイツの一三の主要都市に設置され︑その活
動も西ドイツ全域をカバーしている︒
SCHUFA
に加盟している企業は︑ 西ドイツでは︑すでに約六
0
年の歴史を有する
SCHUFA
日 個 人 デ ー タ の 外 部 提 供 に お け る 問 題 点
(6 )
ないが︑公の機関のみを対象とする立法であっても︑銀行のように︑国民の大部分が何らかの形で取引関係のある機 関のデータ処理に対しても大きな影響を与えることはまちがいないと思われる︒
銀行の個人データ提供の法的側面
八し
銀行がコンピュータシステムを利用してデータを処理する場合︑個人データの保護の観点からはいくつかの法律問 題が生ずる︒西ドイツデータ保護は︑データの蓄積︑提供︑変更︑消去を﹁データ処理﹂と定義し︑それぞれについ て考えられる法規制を行っている︒しかし︑個人データ保護を考える場合最も実際上も法律上も問題になるのはデー
タ提供の局面においてである︒
というのは︑個人データが他の第三者に流されて当該個人の予期せぬ方法で利用され る場合が最もプライバシィが侵害されるおそれがあるからである︒
一般に銀行が個人データを外部に提供するケースとして︑これを大きく二つに分けることができる︒
は︑銀行が個人信用情報センター等信用情報の提供を業務とする機関に提供する場合と︑銀行が他の銀行または自己
の取引先に提供する場合である︒
( S
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,
そこから情報の提供を受けることができ
つま
り︑
︱ っ
7 ‑3•4 ‑471 (香法'88)
きる道を開く可能性を秘めており︑ 義務があると.般に解されており︑ 右に述べた個人倍用情報機関に対するデータ提供と本質的に巽なるが︑
データの外部捉供という点においては同じて この場合の銀行の情報の提供の相手方は︑
信用情報機関のように本来的に第一;.者に情報を流す機関てない点において
るのであるが︑加盟の条件として自らも自己の顧客に関する情報を提供しなければならない︒わが国の個人倍用情報 機関 は︑
ドイツのように一本化されたものでなく︑銀行系の個人信用情報センターの他に︑消費者金融専業系の全国 信用情報センター連合会︑物販系の株式会社伯用情報センター︑業種を問わないクレジットビジネス全般を対象とし たセントラルコミュニケーションビューローが別々に活動しており︑その情報の蓄積︑提供等の手続︑運用において も異なっている︒もっとも最近では︑各機関において︑取扱いに関する協定ができている︒しかし︑
個人信用情報機関の情報収集は︑加盟企業からの情報提供に頼らざるをえず︑
の発展によって︑以前では考えられなかった大量の情報が蓄積され︑
いずれにしても︑
ことに最近のめざましいコンピ上ータ それか加盟企業に流される結果︑加盟企菜によ る情報提供が個人データ保護との関係で重要な法律間題としてのクローズ︑アップしてきたのである︒
銀行が他の銀行または白己の舶客に対して情報提供することもドイツては古くから行なわれてきたし︑
わが国でも 銀行間の信用照会は︑金融機関相互の便宜と不良取引先の排除という自己防衛の見地から慣打的に行なわれている︒
ある︒もともと顧客が銀行と取引関係に人る場合には︑銀打か白己の秘密を他に測らさないとの信頼かあり︑銀行も 顕客の秘密を守ることか重要な営業政策であろから︑法律じの明文はないものの︑銀竹は顧客の秘密を守る法律
Lo
これを学術上銀行秘密と呼んでいる︒銀行が他の銀行または顧客に対してどのよ うな要件で顧客情報を流してよいか︑またその情報を流した場合の責任関係については従来より銀行秘密との関係か ら議論があり判例もあるが︑この点についても︑コンピュータ・システムの発展は︑大愴の情報を瞬時に相在利用て
これまた個人データの保護の観点から︑
そのテータ提供の要件か重要な仏律間粗
八四
7 ‑ 3・4 ‑‑472 (香法'88)
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)について(後藤)
られる
︵同 法/ 条・
↓一 条︶
︒
八五
もともとこの法律がコンピュータによる情報の
となってきたのである︒
西ドイツの銀行は︑データ保護法との関係から︑最近相次いで個人データの外部提供に関する約款の改正に跨切っ
.つは︑銀行の
SCHUFA
に対する情報提供の際に適用される約款︵いわゆる
SCHUFA
条項
︶ の改正であ 西ドイツデータ保護法は︑データ処理の際の濫用から個人データを保護することによって︑データ主体の保護に値
する利益
( s c h i l t z w i l r d i g e
B e
l a
n g
e )
を守ることを目的としているが︑
大鼠処理から個人のプライバシィを保護する必要性から立法されているため︑
その保護の対象は︑自然人たる個人の データでありかつデータファイル
( D
a t
e i
) 内で蓄積︑変更︑抹消されるデータまたはそこから提供されるデータに限 この法律は︑全体で四七条から成っているが︑
西ドイツデータ保護法によるデータ処理
その中心となるのは︑第一章のすべての機関のデータ処理に共通す る一般的規制である総則︑第二章の公的機関によるデータ処理︑第三章の民間機関による自己目的のためのデータ処 理︑第四章の民間機関による他人のための営業上のデータ処理である︒データ保護法の適用対象をどこまでにするか は︱つの問題であるが︑西ドイツでは︑公の機関の他に民間の自然人および法人︑団体およびその他の私法上の人的 結合体がデータ処理を行なう場合も広く規制対象としている︒第三章の民間機関による自己目的のための
( f t i
r e
i g
e n
e
Zw
ec
ke
)データ処理というのは︑たとえば金融機関が自己の営業上の必要から自己の顧客のデータを収集し利用する
本稿は後者について紹介するとともに検討を加える︒
り︑他は銀行が他の銀付または顧客の信用照会に応じて情報を提供する場合に適用される
AGB.O
条の改正である︒前者についてはすでに別稿で論じたいで︑
t
こ ︒7 ‑‑3・4 ‑‑473 (香法'88)
は︑違法性阻却事由である︒ 細かく調べると︑ 意した場合﹂をあげている︒
これらのデータ処理の一般的許容
( f t i
f r
r e
m d
e Z
w e
c k
e )
営業上のデータ処理というのは︑
もっぱらデータの提供等を営業として行なう民間機関の場合を考えており︑
典型的には個人信用情報機関の情報提供 データ保護法にいうデータ処理
( D
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v e
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r b
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t u
n g
とは︑データの﹁蓄積)
( S
p e
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h e
r u
n g
︑)
﹁提
供
( U
b e
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﹂ ︑
﹁変
更 ( V
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d e
r u
n g
) ﹂
︑﹁
消去
( L
o s
c h
u n
g )
﹂をいうのであるが︵同法一条一項︶︑
要件として︑データ保護法は︑総則の三条で︑﹁①この法律もしくはその他の法規定が許可する場合︑②当該個人が同
ータの蓄積が認められ︑ 活動がこれにあたる︒
一号のこの法律が許可した場合とは︑データ保護法自らが定める特別の要件を満たした ときにデータ処理を許可することを意味しており︑後述のように民間機関のデータ処理については︑第三章︑第四章
にその要件が定められている︒
また
︑ その他の法規定が許可する場合とは︑データ保護法以外の法律で︑
またはその提供が強制される場合等を考えており︑
場合を考えており︑第四章の民間機関による他人のための
たとえばデ
典型的には︑国税庁︑検察庁の査察ない し捜査手続等において︑法律上銀行に顧客に関するデータの提出義務︑通知義務が課せられる場合がこれにあたるが︑
このようなデータ提出義務︑通知義務を課している法律は︑非常に多いとされる︒
次に二号により︑当該個人︵
B e
t r
o f
f e
n e
つまりデータ主体自らが自己のデータ処理について同意した場合にもこれ)
が許されるが︑何が同意かについては問題があること後述の通りである︒右に述べたデータ処理の許容要件は︑本来 であれば︑任意に銀行等がデータ処理を行なうことができなかったことを許可するのであるから︑
その法律上の性質 八
六
7 ‑3•4 ‑474 (香法'88)
ヽ''.'''"''''''''""'"''""""""""'"'"""'""""'"'"""'
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)について(後藤)
ないからである︒
したがって︑
八 七
これに対して
前述のように︑データ処理にはデータの畜積︑提供︑変更︑消去が含まれ︑
まず情報提供の一般的許容要件であるデータ主体の同意から検討する︒
データ保護法三条二号は︑﹁当該個人が同意した場合︑同意
( E i n
w i l l
i n g )
とは︑特別な事情により
( w
e g
e n
b e
s o
n d
e r
e r
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s t
a n
d e
) ︑他の方式が適昔である場合を除ぎ︑書面で行なわれることを要する︒同意が他の意思表示
( E
r k
l a
r u
n g
)
と共に書面でなされる場合には︑当該個人にはこれにつき特に指摘しなければならない︒﹂と定めており︑
意の効力を認めていない︒同意を書面にかからしめたのは︑データ主体の意思が明白でないのに他人が個人データを 蓄積︑利用︑提供等をすることを許すと結局個人のプライバシィ保護がなしくずし的に侵害されることをおそれたか
らである︒文言上は︑
れて
おり
︑
やむをえない場合には書面によらなくてもよいとし︑
よいとなっているが︑個人信用情報機関へ個人データを提供する取引は︑当座勘定契約とかローン契約とか数が限ら
それらはすべて書面で行なわれているので︑実際上は書面によらない同意は行なわれていない︒
また︑同意が他の意思表示と一緒になされる場合には︑
顧客の署名をもらっても︑その同意があったとはいえないのである︒
(三)
データ保護法におけるデータ提供の許容要件
それぞれについて問題はあるが︑以下
無条件に同 たとえば電話で同意をとりつけることも
とくにその旨の指摘をしていなければならない︒というの
は︑顧客がよくわからないままの状態で︑自己のデータが他に提供されることを避けるため︑他の意思表示とは区別 して︑顧客によくわかるように文言上も配慮して顧客が納得したうえで同意することができるようにしなければなら
一般的かつ一括的に他の契約条項とともに右の同意条項を入れておき︑
ドイツの判例・学説は︑
その同意条項は︑印刷 技術上も他の芙約条項とは別にきわだってわかるようにし︑かつデータ処理の種類︑範囲がわかるようにしておかね ばならないと解している︒ドイツの銀行実務もこれに従って︑右の同意条項を銀行普通取引約款︑小切手取引約款の
7 ‑3•4 ‑475 (香法'88)
契約の締結までにいたらなかった場合︑
いったんは契約が締結されたが後に解除︑取り消された場合にも︑
同様に朽
関係が生じている︒このような信頼関係は︑
斐約が法律じ成立した場合のみならず︑
芙約締結交渉に人ったが結局は
る場合には︑勝手に第.ご者に漏らされないと信じて提供しているはすである︒ 契約の締結︑契約上の権利の行使または義務の履行等契約関係卜必要だからであって︑相手方が自己の情報を提供ず
その意味では︑斐約当事者間には信頼
契約崎事者が楔約関係に人る場合には︑
互いに相手方を知るために︑相手方いデータを収集する︒
しか
し︑
しよ そォ︵
三者機関にデータを提供してもよいということであるが︑
その表現がかなり抽象的であるため︑
はいろいろ問題が牛ずる︒以ドこれについて簡単に述べる︒
具体的適用の場合に
れない場合に許される﹂と定めている︒
第ご者もしくは公共の
甘な利益を守るために必要であり︑
I E
つまり︑顧客の同意がない場合でも︑右の要件を満たすかぎり︑銀行は︑第
かつそれによって甘該個人の保護に価する利益が侵害ざ
または提供機関︑
欠こ
︑
︑ / ー
iデータ保護法今^四条二唄は︑
れらの契約ができないことを考えると︑同意の任意性に疑間が生じ︑同意文号口の内容によってはその法的効力自体が
﹁個人データの提供は︑当該個人との斐約関係もしくは契約類似の日頼関係
( v
e r
t r
a g
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V e
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v e
r h
a l
t n
i s
s )
の設定目的
(Z
we
ck
be
st
im
mu
ng
)
の範囲内にある場合︑
間題となる︒現在西ドイツの銀行は︑
この同意の取り方にかなり神経を使っている︒
口座
開設
︑
保証
︑
信用供与の中込の場合には︑ トを顧客に交付している︒ 中には人れずに︑
銀行側が褐位に立ち︑
右の同意条項に顧客がサインしなければ︑
口座開設
( K
o n
t o
e r
o f
f n
u n
g )
︑保証
( B i . i r g s c h a f
t ) ︑信用供与の申込
( K
r e
d i
t a
n t
r a
g )
につ
き︑
ぞれ別個に印刷した同意条項を用意し︑これに顧客の署名をもらう方式をとったうえ︑銀行が提供するデータの種類︑
内容およびそれらが客観的データであって価値判断
( W
e r t u r t e i l e ) を含まないことなどを詳しく説明したパンフレッ¥
¥
J J
そ しそォ
7・‑3・4 ‑476 (香法'88)
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)について(後藤)
断できる方がよいが︑データ主体側からすれば︑
データを個人信用情報機関に提供する銀行とデータ︑
E体の間にいかなる契約関係もしくは契約類似の関係がない場
合には︑銀行︵提供機関︶︑第一↓.者もしくは公共の正%な利益
( b e r e c h t i g t e I n t e r e s s e n )
とデ
ータ
︑E
体の保護に値する 利益 ( s c h u t z w U r d i n g e B e l a n g e ) を比較若肌してケース・バイ・ケースにその提供が許されるかどうかを判断しなけ
これが同法.一四条.項後段の意味である︒
ずかしい場合があるが︑少なくともたとえば︑銀行が新聞または第:芸者を通じて︑自己の顧客以外の者が手形詐欺等
このデータを他の銀行または個人信用情報機関に提供することは︑
によって他の者が経済犯罪の被害者になることを防止するとともに︑
この場合のデータ主体は︑
八九
そもそも保護に値し これが許されることに疑問がない︒また︑銀行が割引手形を再割引に出す場合に︑自己の顧客でない手形 振出人の信用情報を提供することも許される︒というのは︑それが手形の再割引取引に必要であり︑手形振出人も自 己の振り出した手形が再割引に出されることがあることを予定しなければならないからである︒
銀行の利益とデータ主体の利益のどちらが優先されるべきか具体的場合によくわからないときには︑データ保護法 の趣旨から︑データ主体の利益を優先しなければならないことに問題ない︒それでは︑その利益考量の際に︑
うな事実を基礎に判断すべきであろうか︒銀行にとっては︑データを他に提供する際に知っている事実に基づいて判
その提供時に存在したすべての事実に基づいて判断する方がより保 護が厚い︒そのいずれによるかによって結論に差がでるのは︑データ主体側の支配領域にある事実であるため︑銀行 がデータ提供時にはこれを知らなかった場合にその事実も考慮に入れて判断すれば︑データ提供が︑許されなかった
どのよ
ない
ので
︑
の経済犯罪を犯したことを知った場合には︑
. ̲
, .
.
' ‑
れ ればならない︒ いがこのようなことを考えている︒ えなければならない︒右条文前段の
一見明瞭でな
どのような場合に右の要件が満たされるのかは︑実際上む
﹁英約類似の信頼関係﹂とか﹁設定日的の範囲内﹂という表現は︑
7 ‑3•4 ‑477 (香法'88)
が許されない︱つの場合として︑ ケースである︒実は︑データ保護法は︑右の問題に備えて︑あらかじめ文言上明確に解決している︒取引関係のない者のデータを蓄積するだけの場合は︑データは︑当該銀行内に留まっていて他に流出しないが︑が他に提供された場合には︑
そこからさらにデータが流されるおそれがあり︑
は︑データ主体が受けるリスクは︑データが銀行内に留まっている場合と比べて格段に大きい︒そこで︑データ保護
二三条一項後段のデータの﹁蓄積﹂の場合には︑﹁蓄積機関の正当な利益を守るために必要であり︑
•••••••••••••••
よって当該個人の保護に値する利益が侵害されることを認めるべきいかなる事由もない場合﹂︵傍点筆者︶に許される と定めているのに対し︑二四条二唄後段の﹁提供﹂の場合には︑﹁提供機関︑第芝者もしくは公共の正当な利益を守る
したとされる︒
かつそれによって当事者の保護に値する利益が侵害されない場合に許される﹂と定めて区別した︒
﹁蓄
積﹂
の場合にはとくに傍点の文言
( k
e i
n
Gr
un
d z
u r
A nn ah me e b
s t
e h
t
d a , 6 ' . . , , . . ̲ ) を付加して︑銀行がデータ蓄積の際に知っている事実に基づいて利益考量すれば足りることをこれで明確に したがって︑銀行が個人信用情報機関にデータ提供後︑新たな事実が判明したため︑
いことがわかった場合には︑以後の提供は許されなくなる︒
条︶︒そして︑すでに提供されたデータは︑それが違法な提供によるものであるから︑個人信用情報機関は︑その蓄積
これを消去
( L
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g )
しなければならないが︑銀行の蓄積自体は︑銀行が蓄積の ときにこの事実を知らなかったかぎり許される︒また︑そのことを知らずにデータを提供した場合には︑罰則の適用
( 1 3 )
はない︒罰則は故意の場合にのみ適用されるからである︒ 両者は︑表現
t
一見同じように読めるが ために必要であり︑ 去よ︑
︑1
,' ,
にもかかわらず提供すると罰則が適用される
︵同
法四
これが許されな
かつそれに
ことに当該データが誤っていた場合に
これ
つまり︑銀行が
九
〇
7 ‑3•4 ‑478 (香法'88)
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)について(後藤)
る
a
︵その全体については資料I
参照
︶︒
取扱指針﹂が発表され︑新聞紙上でも取り上げられたが︑
九
この中の個人データの外部への提供に関する部分を紹介す
わが国における個人データの外部提供
わが国の銀行実務では︑
これを個人信用情報センターに登録する旨の条項︵一一六条︶を1本入れている︵登録条項︶︒これはドイツの
S
CHUFA
条項に相当するものであるが︑後述のようにドイツのものと比べると非常に見劣りがする︒確かにこの登 録条項は︑他の条項から際立つようにゴシックで印刷されているが︑甘座勘定規定の中の︱つの条項であることに変
わりなく︑登録することについて特別の同意を得る形式にはなっていない︒銀行側もさる一二月よりプライバシィ保護
を配慮して︑﹁個人信用情報センターの組織﹂︑﹁登録内容﹂︑﹁登録期間﹂︑﹁問合せ先﹂を書いたパンフレットを用意し
て︑顧客の理解を得るべく努力しているが︑西ドイツのデータ保護法からすれば︑右の場合に顧客の同意があったと 解することには疑問が残る︒銀行以外の民間機関も︑自己が取得したデータを他に提供することも多いであろうが︑
これらについてはどのような手続で行っているのかわからない︒わが国では︑個人信用情報機関が一本化されていな く各自バラバラで運営されていることから考えると︑データ提供手続も統一的に行なわれていないと思われるが︑
れは︑データ保護の観点からすると望ましいことではない︒
とこ
ろで
︑
たとえば当座預金口座の開設に際しては︑当座勘定規定の中に︑
さる三月に金融情報システムセンター
( F I S C )
より︑﹁金融機関等における個人データ保護のための
﹁個人データの外部への提供は︑次の範囲に限るものとする︒
金融機関等の業務上必要であり︑またはデータ受領者の正当な利益を確保するために必要であって︑
夕主体の保護に値する正当な利益が侵害されるおそれがない場合
かつデー
こよ
︑
,'',~
(四)
こ 一定の事由が生じた場合
7-3•4-479 (香法'88)
は ︑
OECD
八原則の るものとしているが︑その文言の随所にドイツのデータ保護法に用いられている用語が使用されていることに気づく︒
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( 3 ) ( 4
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一 デ
ー タ 主 体 が 外 部 へ の 提 供 に つ い て 同 意 し て い る 場 合 法 令 の 規 定 に よ り 提 供 が 求 め ら れ る 場 合 そ の 他 公 共 の 利 益 の た め に 必 要 が あ る 場 合
﹂ 個
人 デ ー タ 保 護 の 趣 旨 が 著 し く 後 退 す る お そ れ が あ る こ と を 指 摘 す る に と ど め る
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改正以後い改正にゾいては︑河本.郎ぶ臼トイヅい新銀り普而面ぶぃ約款い中要改正点﹂令融払務巾情じ几八り
圧パ貞以ド︑
銀 打 普 通 取 引 約 款 0 全 ぶ
払資料編︑
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号︑
河 本
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. 共 訳 ぶ 臼 ト イ ツ 普 通 銀 打 取 り 約 款 V J 仝
よ文
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︵.九じじ打改正︶﹂金融よ務事計八じ
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拙 稿
7.九八四り度両トィッい銀︐汀杵通取州臼
同ぶ門トイツ銀行晋通取引約款の全よ︵.九八四打改正︶ー 詞﹁.几八八り度内トイツい銀行普通取州約款り改
lとそり概佐﹂
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必要である場合には︑
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ー枷込枷替い法理と支払取引し巻木責いち附︒
藤原静雄、叫〗邦テータ保護払ー政府咽案に?いて((」ltj学院広学第ュ.四
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﹁指 針﹂
﹁利用制限の原則﹂
お よ び 行 管 庁 研 究 会 五 原 則 の
﹁利用制限の原則﹂
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九
金 融
に対応ず
7 --~3·4~480 (香法'88)
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)につしごて (後藤)
( 7
)
( 8
)
( 9
)
( 1 0 )
( 1 1 )
( 1 2 )
( 1 3 )
ヽつまり
九
ー嗣・間料のプライバシィ払︒
個 人 デ ー タ 保 護 に 関 し て
︑ ご く 最 近
︑ か な り の 動 き が あ る
︒ 東 京 都 は
︑ 昭 和 パ
. .
年六月
. .
五日付けで︑通産大臣と経済企 画庁長官あてに︑﹁個人情報保護法を制定することしの要惰翡を出しており︑また国民生活審議会消費者政策部会個人情報保護委 員会が、「コンピ1ータ等情報処理技術0発達は急速であり、経済社会い発展に大ぎく寄りしているが、.lJてこうした~ンヒーータ等による個人情報の収集•利用等において、情報がが適正に収集•利用されるケースが今後増大ずるIlJ能性があるため、今後
い情報化い.層い進展を蹟
t
え︑泊費者保護い観点から民間部門における個人情報い適切な保護い土り
ん検叶することを日的ーJ j
として︑来年夏を目さして貝体的検討結果をとりまとめることになったようであり︵同年四月︶︑いずれ払的ルールが必要である との認識が強くなってきてしる(堀部政男、;ノレジットカードと涸人情報L〗::リスト・八九..号.:0頁以F)。
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14 9. S , 1 99 ff
: 塩
田 親 文
1 1長 尾 治 助
1 1大 河 純 夫 糾
・ 個 人 伯 用 惰 報 の法的保護一︱一こ貞以ド︑拙稿﹁西ドイツの個人信用情報機関
(S CH UF A) をめぐる最近の動向について﹂金融法研究第ご号︵海 外金融法の動向︶︳
0
六頁以ド︒西原寛ー・金融法七六貞、田中誠―-•前掲書―こ五頁、並木俊守、「銀行の秘密保持義務とそり限界L(座談会発. .
︱‑
口︶
手形
研究
二︒
九 号 五 九 三 貞
︑ 中 林 哲 太 郎 編
・ 銀 行 業 界 の 諸 問 題
.
1五七頁︑柿崎栄治・金融法務事情六八九号::四貞︑吉原・前掲金融法務事 情︱︱;.一頁︑同﹁信用照会に対する回答銀行の責任﹂ジュリスト銀行取引判例百選︵新版︶:ご:頁︑加藤勝郎・﹁信用照会と回 答 銀 行 の 責 任
﹂ 金 融 法 務 事 情 六 八 九 号 五 八 貞 ほ か
︒ な お
︑ 銀 行 秘 密 に つ き 本 格 的 に 詳 し く 論 じ た も の と し て
︑ 鈴 木 竹 雄 編
・ 手 形 貸付︵座談会︶.
O
八頁以ドおよび河本↓郎・﹁銀行の秘密保持義務﹂銀行取引法講座︵じ︶こ六貞以下︑同・金融法務事情七四 四 号 五 頁 以 下 が あ る
︒ 判 例 と し て
︑ 東 京 地 判 昭 和
:
: 年
.
0
月九日ド民集じ..0
.;八六七︑同・昭和三九年四月ー:日金融
法務事情︱二七ヒ・七゜
拙稿﹁個人信用情報機関へのデータ提供と西ドイツデータ保護﹂手形研究.‑九じ号四頁以ド︒
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7 3・4 ‑‑481 (香法'88)
ー
各銀行が一九世紀の終りにバラバラではあるが普通取引約款を使用し始めてから︑
銀行協会は︑自己および顧客の利便も考えて約款を全国的に統一することを決めた︒
成し︑現在の
AGB
の原型となり︑以来今日まで銀行と顧客の取引関係の基礎となってきたわけである︒
そこ
で︑
ら ︑
AGB
は︑一方その時々の実際上の要請を考慮しつつ他方一定の継続性が保たれて始めてその役割が発揮される︒
一九五五年までは継続性の観点から︑判例および実務上の変更に応じて一九四二年と一九五五年にわずかの
改正が行なわれたにすぎなかったし︑この一九五五年改正がつぎの一九六九年改正まで使用されたので︑実に二二年
間も大きな改正のないまま
AGB
の効力が維持されたことになる︒しかし︑六九年改正にいたる一
0
年間
に︑
け現金によらない支払取引
( b a r g e l d l o s e n Z a h l u n g s v e r k e h r )
の拡大︑取引量の大量化︑データ処理技術の発展にと
もない︑銀行業務に急激な変化がもたらされ︑個々の条項をもう一度始めから洗い直す心要にせまられてきたのであ
る︒これに加えて︑銀行と顧客の取引関係に直接影脚を及ぼす多くの法律︑その他の規定の改正もこの間に生じた︒
このような経済的︑法律的事情と並んで︑実際上の
AGB
の通用に際して︑円滑な取引関係の維持の観点から︑解釈
上不明瞭な部分の改正も必要となっていた︒そこで︑当時のドイツ銀行協会の関係委員会は︑根本的に改正を必要と
一九六九年改正の経緯 一九六九年改正
四
西ドイツ銀行普通取引約款第
1 0
条 ︵
情 報
提 供
︶
改正の経緯および意義
の
そして︑これが一九三七年に完
しかしなが
とりわ
一 九 ︱ ︱
年代に入ってドイツの
‑ 0
九四7 ‑3•4 ‑482 (香法'88)
西ドイツ個人データ保護法と銀行普通取引約款第10条(情報提供)について(後藤)
する事項を検討し︑顧客の利益およびすべての関係者の利益とリスクを正当に考慮したうえ一九六九年一月一日に改
正
AGB
を公
表し
た︒
つぎの三つに大きく分けられる︒
項︑②銀行業務の技術的発展に対処するための条項︑③解釈上の不明確な問題点を解消するための条項である︒以下︑
改正
AGB‑0
条の意義
AGB‑0
条に関してのみ︑改正意義および内容を検討する︒ヽ
2
,IしAGB‑0
条の政正の意義については︑︹新
条項
︺
九 五
つまり︑①新しい法律ないし他の法規の改正に対処するための条
その理解をよくするために︑以後旧条項と新条項の文言を並置した上解説
﹁銀行は︑誠意をもって顧客に対して銀行にふさわしいあらゆる情報および助言を提供する︒しかし︑情報および助
言の多様性にかんがみて︑これらは︑すべての責任を排除してのみ︑また法律上許されるかぎり︑民法二七八条によ
る責任も排除して与えることができる︒口頭で与えられた情報が信用状態または支払能力に及ぶ場合は︑書面による
確認を条件として効力を有する︒﹂
﹁銀行は︑誠意をもって顧客に対して銀行にふさわしいあらゆる情報および助言を提供する︒口頭で与えられた情報
が信用状態または支払能力に及ぶ場合は︑書面による確認を条件として効力を有する︒しかし︑情報および助言の多
様性にかんがみて︑これらは︑すべての責任を排除してのみ︑また法律上許されるかぎり︑民法二七八条による責任
も排除して与えることができる︒さらに︑銀行は︑情報および助言を与えなかったことから生ずべきいかなる責任も ︹
旧条
項︺
する
︒ 改正の内容は︑
7 ‑3•4 ‑483 (香法'88)
るわけにはいかないので︑ 旧条項第二文にある免責文言の効力の及ぶ範囲について︑
その文章構成上︑銀行が顧客に情報提供する旨定めた第
1文の次に右の免責文言が来てその次に信用状態︑支払能力に関する情報提供は︑書面による確認がなければ効力が
生じない旨の第三文が来ているので︑免責文言が右の書面によって確認された場合にも及ぶのかどうか明碓でなかっ
た︒そこが︑新条項は︑従来の第ミ文を第二文にくり上げて︑
払能力に関する情報提供につき︑あとで書面によって確認した場合でも︑免責が及ぶことにしたのである︒銀行が書 面によって確認しても免責されるというのは不都合のようにもみえるが︑誤った情報提供によるリスクがどの程度に なるのか予測がつかないことおよびもともと情報提供が銀行の義務として行っているのでなくサービスで行っている
ことから許されるものと解しているのではないかと思われる︒
一九六九年度改正では︑新たに第四文が追加された︒これは︑
つまり︑西ドイツ連邦裁判所
( B G H )
限解釈の原則からすれば︑義務に反して情報を提供しなかった場合にはその適用がないと解すべき旨の判決をしたの
であるが(‑九六四年四月︶︑このように解すると︑銀行は︑情報を提供しなかった場合には︑
用できなくなるし︑
に︑その後 1
九六七年に右の判決を引用して︑銀行が義務に反して助言をしなかった場合には︑責任を負う旨判旨し
た
BGH
の判決が出た︶︑しかし︑銀行としてはたとえば預金契約を結べば︑粁然このような情報提供義務を負わされ
この
改正
は︑
負わ
ない
︒﹂
一言でいうと︑第二文と第三文が入れかわり︑第四文が追加されたことである︒
また
︑
︵ 現
1 0
条の免責条項を適
その後に免責文言を置くことによって︑信用状態︑支
つぎに述べるように判例の影粋を受けたものである︒
は ︑
AGB‑0
条は助言および情報の提供の場合にだけ適用され︑約款の制 この判決によれば︑銀行は情報提供すべき義務があるようにも解されるおそれもある
これに対処すべく約款を改正する必要にせまられたわけである︒銀行取引の多様性を芸え
九六
7 ‑‑3・4 ‑484 (香法'88)