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佐藤博樹/佐藤厚/大木栄一/木村琢磨著『団塊世代のライフデザイン―決して一律でない就業志向と、夫婦間の思惑の差』(PDF:441KB)

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Academic year: 2021

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●BOOK REVIEWS

この本は, 来年 (2007 年) から 60 歳を迎える団 塊の世代について, 大規模な意識調査を基にこれか らの動向を探求しているものである。 団塊の世代に 関しては, これまでにも種々の研究が存在するが, それらは個々人に焦点を当て包括的に分析したもの が多い。 それに対して, 本書では, 世帯" という 視点を強く取り込んでいることが大きな特徴となっ ている。 そして, 各章において, 研究者が各々の問 題意識に基づいてユニークな分析を展開している。 そこで, 簡単に各章について紹介していこう。 第 1 章では, 夫婦の現在の就労類型別に, 60 歳 代に希望するライフスタイルを分析している。 60 歳代について, 妻が夫に対し希望する働き方は, 夫 自身の希望とほぼ同じ正社員が多いが, 妻のほうが 期待する割合がやや高い。 他方, 夫が妻に期待する 働き方は, 妻本人の希望とほぼ対応はしている。 し かし, 専業主婦の場合, 夫はそのままの状態を望ん でいるのに対し, 妻はパートタイムや嘱託, ボラン ティア就労などの社会参加を希望している人も多く, 双方の意向に乖離があった。 このように, 夫婦の考 え方には, 共通点と共に微妙なずれも存在している ことが明らかになっている。 第 2 章では, 現在正社員の女性が, 高齢期にいか なる働き方とライフスタイルを考えているのかにつ いて検討を行っている。 高齢期の就業に関する研究 は, これまで男性を中心に検討されたものが多いの に対し, 女性に焦点を当てていることが特徴的であ る。 そして, 女性の就業意識には, 世帯収入の違い が大きく影響しており, 収入の高い者ほど引退志向 が強いという特性があった。 第 3 章では, 男性正社員について, 彼らの持つ就 労観によって 5 タイプに分類を行い, 特徴を明らか にしている。 一般に, 団塊の世代は 「会社人間」 や 「仕事人間」 として捉えられることが多いが, ここ では, そのほかに専門職志向タイプや仕事以外に生 きがいを持っているタイプなども存在していること が明示されており, 高齢期の就業のあり方を考える にあたっては, 年齢要因のみではなく, 生活や就業 に関する意識を考慮することが必要であると述べら れている。 第 4 章では, 就業先 (民間企業に正社員として勤 務する男性, 女性, 公務員等) によって異なる高齢 期の就労希望の特徴を分析し, 政策的提言を行って いる。 労働者の高齢期の就労ニーズは, 「今の勤め 先における雇用の見通し」 によって大きく影響を受 けるが, 「見通しが分からない」 者が約半数もいた。 また, そのうちの 45%程度がフルタイム就労を希 望している。 将来ビジョンを立てるためには, 高齢 期の雇用見通しが早期に提示されることは重要であ り, 就業希望人数や希望内容を踏まえた人事管理, ならびに雇用政策が求められていることなどが指摘 されている。 第 5 章では, 老後の生活不安を解消する条件につ いて究明されている。 60 歳代前半の雇用には, 企 業は多様就業型ワークシェアリングの導入など, 人 事管理全体の見直しや業務のあり方の工夫が必要で あり, 労働者には年齢にとらわれない就業意識が求 日本労働研究雑誌 89

読書ノート

佐藤博樹/佐藤厚/大木栄一/木村琢磨 著

団塊世代のライフデザイン

決して一律でない就業志向と, 夫婦間

の思惑の差

戎野 淑子 (嘉悦大学経営経済学部助教授) ● さ と う ・ ひ ろ き 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 教 授 。 ● さ と う ・ あ つ し 同 志 社 大 学 大 学 院 総 合 政 策 科 学 研 究 科 教 授 。 ● お お き ・ え い い ち 職 業 能 力 開 発 総 合 大 学 校 能 力 開 発 専 門 学 科 助 教 授 。 ● き む ら ・ た く ま 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 ・ 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 。 ●中央法規出版 2005 年 12 月刊 A5 判・138 頁・ 1890 円 (税込)

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められていること等が記されている。 本書を読み終えると, 団塊の世代のライフスタイ ルの解明に留まらず, 「家族は今後どうあるべきな のか」 という問題も, 我々に投げかけていることに 気づく。 社会における基本的単位である世帯 (家族) をもって, 生活・就業のあり方を認識していくこと は, 今後の動向を探る上で極めて現実的であり, 現 在抱える課題を分析する上でも非常に有効であると 思われる。 今日の日本社会において, 家族像の中長期的なビ ジョンの構築は緊要な課題であり, 本書はそのよう な視点を含めた分析が進められた希少な研究である。 つまり, 団塊の世代のこれからの夫婦の暮らしにつ いて検討されていることは, 高齢期における一つの 家族像が示唆されていることでもあろう。 今日薄れ がちな 世帯" という視点からの分析が, 今後とも 進展することが期待される。 No. 552/July 2006 90

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