日本農村医学会雑誌
日本農村医学会 日農医誌 J.J.R.MSEP/2020
Vol.69 No.3
ISSN 0468-2513 9 日本農村医学会雑誌 第69巻 第3号◆2020年 月25日印刷 2020年9月30日発行 東京都千代田区大手町1-3-1JAビル(〒100-6827) ◆編集・発行 一般社団法人 日本農村医学会◆電話03(3212)8005日本農村医学会雑誌
誌
雑
会
学
医
村
農
本
日
◆ 第 69 巻 第 3 号 ◆ 年 9 月 203 2 0 2 0「効能・効果」、「用法・用量」、「警告・禁忌を含む使用上の注意」等は、製品添付文書をご参照ください。
2020 年5月作成 IBN72K001A
第69回日本農村医学会学術総会
抄 録 集
会 期:令和 2 年(2020年)10月15日(木)∼11月14日(土)
会 場:Web 開催(http://www.congre.co.jp/nouson69/)
学会長:川口 鎮(JA 愛知厚生連豊田厚生病院 院長)
一般社団法人
日本農村医学会
2 0 2 0
ISSN 1880-1749豊田厚生病院
この度,第69回日本農村医学会学術総会を Web 開催させていただくことになりました。本来で
したら令和 2 年10月15日(木),16日(金)の両日,名古屋国際会議場にて開催する予定であり,愛
知県において本学術総会開催の機会を得たことを大変光栄に感じておりました。
新型コロナウイルス感染症非常事態宣言に伴う自粛によって 5 月の中頃過ぎには感染者も減少
し,非常事態宣言も解除されましたが,解除後は再び東京を中心に徐々に感染者が急速に増大して
いる状況です。予定通りに名古屋国際会議場にて開催できることを目指し検討を重ねてまいりまし
たが,現状では10月の感染状況が予測つかないと判断しました。コロナウィルス禍の推移が予想で
きない中,感染対策の重要性はますます大きくなり,多くの人が集まることを避けるため会場使用
の制限,県をまたいでの移動の問題など,学会の開催が無事に実現できるかとの不安が解消できま
せん。現地開催もぎりぎりまで検討いたしましたが,諸般の事情を勘案するに苦渋の選択ではあり
ますが,学会の延期・中止を回避するためには Web 開催しか方法がないとの結論に到りました。
昨今,第 2 波の感染拡大を疑わせるような感染の拡大が報告され,多くの方に実際に参加していた
だくことは不可能に近いと思われます。実際に名古屋に来ていただけないのは非常に残念ですが,
無事に開催ができることに感謝しております。
会場でのご参加,ご発表を予定された皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが,学術集会とし
てかつて経験したことのない事態であることをご理解いただき,Web 開催へのご支援とご協力を
お願い申し上げます。予定していたような大会運営には及びませんが,次年度につながる大会とし
たいと考えております。多くの先生方,医療関係者の参加を期待しております。
また,本邦においては 4 月に東京を中心とした大都市に非常事態宣言が出される事態となりまし
た。本学会の演題締め切り前の 5 月の連休は,正に非常事態宣言の中で新たな感染者をいかに封じ
込めて地域の医療崩壊を防ぐかの天王山ともいえる時期にあたりました。例年には及ばないもの
の,コロナ対応で忙しい中,全国より多くの演題をいただき大変に感謝をいたしております。
既にいくつかの学会が Web 開催となっており,いろいろな技術の提案がなされてきているよう
ですが,経験がないことでもあり手探りの準備となります。他の学会の運営を参考にしながら,オ
ンラインによるセミナーなど,できる限り情報を提供できるように努力をしてまいります。また,
開催日のみではなく約 1 か月間の閲覧を可能とし,発表に対する質問も Web 上で可能としていき
たいと考えております。 1 人でも多くの方の参加を期待しておりますのでよろしくご協力をお願い
いたします。
これからの少子高齢化を見据えた未来への展望を持ち,地域医療の在り方を見直さなければなら
ないという課題については全国共通であると確信しております。全国の厚生連病院が所在する地域
の多くでは既に少子高齢化がある程度進んでいることと認識しておりますが,愛知県では今後10年
学会長あいさつ
第69回日本農村医学会学術総会
学会長
川口 鎮
(JA 愛知厚生連豊田厚生病院 院長)
学術総会は例年どおりに特別講演,教育講演,メインシンポジウム,文化講演,共催セミナー,
一般演題等で構成されております。
新型コロナウィルス感染拡大のため,様々な活動が制限される中,この Web 開催が日本農村医
学会の理念を再確認するために少しでも貢献できることを心から願っております。
開催概要
学術総会テーマ
未来の地域医療を求めて
会 期
2020年10月15日(木)∼11月14日(土)
会 場 Web 開催(http://www.congre.co.jp/nouson69/)
学 会 長
川口 鎮(JA 愛知厚生連豊田厚生病院 院長)
後 援
農林水産省
総 会 事 務 局 JA 愛知厚生連豊田厚生病院内
〒470 0396 愛知県豊田市浄水町伊保原500 1
TEL:0565 43 5000(内線6969)
FAX:0565 43 5100(代表)
運 営 事 務 局
株式会社コングレ中部支社
〒460 0004 愛知県名古屋市中区新栄町2 13 栄第一生命ビルディング
TEL:052 950 3369
FAX:052 950 3370
E-mail:[email protected]
学術総会ホームページ http://www.congre.co.jp/nouson69/
学術総会参加者へのご案内
Ⅰ.参加手続き
1 .開催期間(Web 視聴期間)
2020年10月15日(木) 9 :00 ∼ 11月14日(土) 17:00
Web 視聴用には ID とパスワードが必要です。参加登録をいただいた方にはメールでお知らせ
いたします。
2 .学術総会参加
第69回日本農村医学会学術総会では,Web 視聴登録をオンラインにて行ないますので,ぜひ
ご利用ください。登録後,決済が完了されますと,Web 視聴用の ID とパスワードをお知らせい
たします。
銀行振込およびクレジット決済が可能です。
オンライン登録:2020年 9 月14日(月)~11月14日(土)
参加登録費 ※ Web 開催のため,特例で金額変更しております。
参加種別
Web 視聴参加費
参加登録費
会員
医師
5,000円
医師以外
3,000円
非会員
医師
5,000円
医師以外
3,000円
3 .領収書の発行について
Web 視聴登録し,参加費等の入金が確認された方は参加登録ページから領収書が印刷できま
す。団体登録の場合は,お申込みの連絡代表者宛へ領収書を10月上旬頃に郵送いたします。再発
行はいたしませんので,大切に保管ください。
4 .Web 視聴時のご注意
Web 視聴時の撮影(スクリーンショットを含む),コピー,ダウンロード等は禁止です。
5 .コメント機能について
Web 開催期間中,オンライン上のコメント投稿機能により,発表者へコメントができるよう
になっています。Web 上でも活発な討議となりますよう,積極的なご質問をお願いいたします。
なお,質問者名は開示されます。また,必ずしも回答が得られる訳では無いことをご了承くださ
い。
Ⅱ.学術発表について
●発表者の皆様へ
学会期間中でのリアルタイムでの役割はございません。
オンライン上でのコメント投稿機能により,閲覧者から演者へコメントができるようになって
います。質問があった際は,コメント欄よりご回答ください。ただし,ご回答の有無は演者に一
任とさせていただきますので,強制ではありません。なお,ご質問およびご回答の内容について
は,すべての参加者が閲覧可能となります。
●司会・座長の方へ
学会期間中でのリアルタイムでの役割はございません。
※優秀演題選出については,本年は中止になりました。
Ⅲ.共催セミナーのご案内
共催セミナーは,ライブ配信またはオンデマンド配信で実施します。
ライブ配信は「Zoom」を利用して, 1 回限りのリアルタイムでご視聴いただく方法です。配信
日に,Web 閲覧サイトにログイン後,各セミナーの視聴ボタンをクリックしてください。ライブ
配信開始時間の15分前からアクセス可能となります。
予約不要で視聴セミナー数の制限はありません。ぜひ多くの共催セミナーをライブでご視聴くだ
さい。
● Zoom のご利用上の注意点
・ 事前に Zoom アプリを必ずインストールし、アカウントを登録してください。無料で利用できま
す。
・参加者のビデオ(Web カメラ)とマイクは利用不可の設定になっています。
・ Zoom を使った録画は利用不可の設定になっています。録画・写真撮影・録音を一切禁止としま
す。
ライブ
配信日時
セミナー名
タイトル
10月16日(金)
18:00∼19:00
(共催:株式会社ツムラ)
共催セミナー 1
漢方診療のいろは
─女性の不調に漢方を用いる─
10月27日(火)
18:00∼19:00
(共催:第一三共株式会社)
共催セミナー 2
HER 2 陽性乳がん治療のパラダイムシフト
11月10日(火)
18:00∼19:00
(共催:田辺三菱製薬株式会社)
共催セミナー 3
腎性貧血治療の進化
オンデマンド
配信日時
セミナー名
タイトル
10月15日(木)
9 :00∼
11月14日(土)
17:00
共催セミナー 4
(共催:アッヴィ合同会社)
関節リウマチの最新治療戦略
共催セミナー 5
(共催:サマンサジャパン株式会社)
人材採用・人材育成の悩みを削減し,患者
様への満足度とリピート率を向上させる業
務請負サービス
共催セミナー 6
(共催:株式会社グッドケア)
専門医の不整脈治療
共催セミナー 7
(共催:富士通株式会社)
これからの地域医療における地域医療ネッ
トワーク
共催セミナー 8
(共催:株式会社ホギメディカル)
オペラマスター導入による手術室運営改革
の取り組み
─コロナ禍に負けない手術室を目指して─
学会長講演
豊田から考える,これからの地域医療と病院経営
座長:菊池 英明(帯広厚生病院 院長)
演者:川口 鎮(豊田厚生病院 院長)
特別講演 1
地域医療の今とこれから
座長:羽田 明(公益財団法人ちば県民保健予防財団 調査研究センター長)
演者:早川 富博(足助病院 名誉院長)
特別講演 2
地域医療の発展と 5 G 応用
座長:新谷 周三(JA とりで総合医療センター 名誉院長)
演者:上野 雅巳(和歌山県立医科大学 地域医療支援センター 教授)
教育講演 1
災害に備えよう
座長:高野 靖悟(JA 神奈川厚生連 代表理事理事長,相模原協同病院 名誉院長)
演者:森野 一真(山形県立中央病院 副院長,NPO 法人災害医療 ACT 研究所 理事長)
教育講演 2
“共創未来”─協働意思決定にむけて
座長:伊澤 敏(佐久総合病院 臨床顧問)
演者:中西 淑美(国立大学法人山形大学医学部 総合医学教育センター 准教授)
文化講演
尾張名古屋は城でもつ
座長:鏡味 良豊( 豊田厚生病院 副院長,第 5 診療部長,通院治療センター長,
化学療法内科代表部長)
演者:吉川 美穂(公益財団法人徳川黎明会 徳川美術館 学芸員)
指定演題プログラム
金井賞受賞講演
地域の女性を中心とした,「食と農」を次世代に伝える取り組み
座長:川口 鎮(豊田厚生病院 院長)
演者:加藤 和奈(JA あいち海部 女性部 部長)
メインシンポジウム
医療現場の働き方改革
座長:山本 直人(海南病院 名誉院長)
座長:十川 康弘(上都賀総合病院 院長)
シンポジスト: 医療を未来に繋げるために,医療現場の働き方改革を!
─No Change, No Future─
安里賀奈子(厚生労働省労働基準局 労働条件政策課 医療労働企画官)
シンポジスト:働き方改革と地域医療
森本智恵子( 愛知県医療勤務環境改善支援センター 医療労務管理アドバイザー/
社会保険労務士法人 felicia 社会保険労務士)
シンポジスト: 医療現場の働き方改革
─アフターコロナのメディカルデジタルトランスフォーメーション─
石川 賀代(社会医療法人石川記念会 HITO 病院 理事長)
共催セミナー 1
ライブ配信 10月16日(金)18:00~19:00
共催:株式会社ツムラ
漢方診療のいろは
─女性の不調に漢方を用いる─
座長:針山 由美(豊田厚生病院産婦人科 代表部長)
演者:中山 毅(浜松医科大学産婦人科)
共催セミナー 2
ライブ配信 10月27日(火)18:00~19:00
共催:第一三共株式会社
HER 2 陽性乳がん治療のパラダイムシフト
座長:久留宮康浩(豊田厚生病院,外科 代表部長)
演者:遠山 竜也(名古屋市立大学大学院医学研究科 乳腺外科学分野 教授)
共催セミナー 3
ライブ配信 11月10日(火)18:00~19:00
共催:田辺三菱製薬株式会社
腎性貧血治療の進化
座長:三宅 芳男(豊田厚生病院 薬剤部長)
演者: 濱野 高行(名古屋市立大学大学院医学研究科腎臓内科学分野 教授)
共催セミナー 4
オンデマンド配信
共催:アッヴィ合同会社
関節リウマチの最新治療戦略
座長:小口 武( 安城更生病院 整形外科・リウマチ科,地域連携部長,整形外科代表部長,
リウマチ科部長,院長補佐)
演者:金山 康秀(豊田厚生病院 整形外科代表部長 リウマチ科部長)
共催セミナー 5
オンデマンド配信
共催:サマンサジャパン株式会社
人材採用・人材育成の悩みを削減し,患者様への満足度とリピート率を向上させる業務請負サービス
演者:野坂 泰行(サマンサジャパン株式会社)
共催セミナー 6
オンデマンド配信
共催:株式会社グッドケア
専門医の不整脈治療
演者:金子 鎮二(豊田厚生病院 循環器センター長)
共催セミナー 7
オンデマンド配信
共催:富士通株式会社
これからの地域医療における地域医療ネットワーク
演者:岩津 聖二(富士通株式会社)
共催セミナープログラム
共催セミナー 8
オンデマンド配信
共催:株式会社ホギメディカル
オペラマスター導入による手術室運営改革の取り組み
─コロナ禍に負けない手術室を目指して─
演者:菅原 元(豊田厚生病院 中央手術科代表部長,消化器外科部長)
杉山 和美(豊田厚生病院 中央手術看護課長)
共催セミナー 9
オンデマンド配信
共催:GE ヘルスケア・ジャパン株式会社
Post COVID-19の病院経営
─自立・自律的な内部成長を目指して─
演者:成徳 亮太(GE ヘルスケア・ジャパン株式会社 エジソン・ソリューション本部 コンサルタント)
学会長講演
豊田から考える,これからの地域医療と病院経営
座 長:菊池 英明(帯広厚生病院 院長) 演 者:川口 鎮
(豊田厚生病院 院長)JA 愛知厚生連は 8 病院で構成され,それぞれ 4 つの大規模病院と 4 つの中規模病院に分かれている。
大規模病院の属する医療圏の人口推計は,いずれの医療圏でも現時点ではあまり減少傾向は強くなく,
2040年においても安城更生病院が属する西三河南部西医療圏と豊田厚生病院が属する西三河北部医療圏
ではほぼ横ばいの状況が続くと予想されている。
当院の所在する豊田市はみよし市と合わせ愛知県の西三河北部医療圏を構成し(人口48万人),名古屋市
の東部に位置している。この地域は平成の大合併により豊田市北東部の広大な中山間地域をその一部と
して取り込み,従来の市街地を含め愛知県で最も広い医療圏となっている。近い将来に老齢化率が急速
に増加する地域であり,2040年に向けての医療需要は20%程度に増加(推定14万人)することが予想さ
れている。したがって都市部も含めた急激な高齢化に加え,人口減少が著しい広大な山間地域における
医療体制の維持に如何に対応していくかが課題になる。
当院は1947年に加茂病院として開院し,2008年に現在地に移転後病院名を豊田厚生病院と改めている。
移転以来,医業収入は順調に増加しているが,当期純利益は移転当初は大きくマイナスにぶれている。
純利益はプラスへと持ち返したものの利益率はなかなか上がらず,病院長就任年は1.5%に過ぎなかった。
豊田市の北西のはずれに移転したこともあり,市中心部・南部からの患者の減少が影響していた。病院
の経営状況を判断するには利益率の推移が 1 つの目安となる。地域医療構想に則るべく病院経営の変化
を進め,隣接した医療圏からの患者の増加を促し,紹介率を上げるとともに逆紹介を進め外来診療機能
を効率化している。外来患者数を適正化することにより,入院治療に人的資源を振り分け入院収入の増
加をはかろうとしてきた。利益率は移転当初のマイナスから回復したものの,院長就任時は1.5%と低値
であったが,上記の取り組みにより令和元年度までの 5 年間で 8 %を超えるまでになった。
経営的な体力をつけた後に更なる医療の質向上に向けての改革を目指していたが,コロナ禍の影響は
計り知れなく,コロナ禍の対応に手いっぱいとなっている。また,コロナ禍が病院経営に与える影響に
ついては 4 月以降かなり大きなものがあり,診療収入の低下を補う手立てをとるまでに至っていない。
コロナ禍の終焉が予測できない中,病院自体の行動変容が必要となってきている。地域で発生するコロ
ナ患者への対応と同時に,診療継続のための収入の確保が重要課題となる。病院の存続がなければ地域
医療を守れないと考える。
演者プロフィール 昭和56年 名古屋大学医学部卒業 昭和61年 国立循環器病センター 心臓外科レジデント 平成 3 年 米国ペンシルバニア州立大学 心臓外科研究員 平成 5 年 国立循環器病センター研究所 室員 平成 7 年 豪州ロイヤル・ノースショア病院 心臓外科医員 平成11年 名古屋大学胸部外科 医員 平成13年 愛知医科大学胸部外科 講師 平成15年 愛知医科大学胸部外科 助教授 平成18年 加茂病院(現豊田厚生病院) 心臓血管外科部長 平成22年 豊田厚生病院 副院長 平成27年 豊田厚生病院 院長特別講演 1
地域医療の今とこれから
座 長:羽田 明(公益財団法人ちば県民保健予防財団 調査研究センター長) 演 者:早川 富博
(足助病院 名誉院長)地域医療の定義は曖昧である。地域という言葉の曖昧さに起因するが,ふつうは各県下で定められた
医療圏と考えられている。この行政区単位で区分けられた医療圏は医療提供体制を決定する基本になっ
ているが,実態に合わないことが多い。その人口数も大きく異なり,市場経済の状況下では,医療サー
ビスの機会平等性は失われている。とくに市街地(人口密度が高い)と田舎(人口密度が低い)との差
は大きくなる一方である。過疎と高齢・少子の先進地区にある足助病院の過去から現在に至る取り組み
を紹介し,これからの地域医療の方向性を考察する。
・過去
昭和36年以降国民健康保険法の施行から,医療はいつでも,どこでも,同じサービスが受けられるこ
とを目標に発展してきた。その背景には,人口増,経済の右肩上がりがあり,医療報酬を増やすことで,
医療機関の地方への進展と先端医療の発展があった。しかし,老人医療・乳幼児医療無料化,高度医療
制度によって医療費は増大し,高齢化問題が予想され始めた昭和54年ごろから,現在に至るこの30年間,
医療費の抑制策が始まった。
いつでも,どこでも,同じサービスが受けられるという平等性は欠落し始め,いわゆる僻地・郡部に
おける医療の終わりが始まった。
・現在の課題と解決法
課題は地域によって異なるので,その解決方策も同一ではない。地域の課題をとらえるには,人口と
年齢構成,疾患罹患率,死亡診断書の解析,要介護者数,医療・福祉・介護の提供サービス量などが必
要であり,行政との連携が必須である。医療は,目の前の疾患治療が主たる仕事であるが,長期的に見
れば健康維持・健康寿命の延伸が目的である。個々の健康づくりと地域の健康づくりがリンクすること
が望ましい。しかし,現在の医療・介護診療報酬体系では,地域の人々が健康になれば,病院の経営は
困難となる。コロナ禍での患者数減少が医療サービス機関の赤字を表出させたことは,現診療体系の経
済的脆弱性を明らかにした。疾病治療重視の医療から予防医療重視への転換が始まらなければならない。
病院規模によってその役割は区別される。研修指定病院のような地域中核病院は高度急性期と急性期
の患者さんを中心の診療。地域の中規模病院は急性期,慢性期,介護保険領域を含むいわゆるケアミッ
クス型となる。地域医療構想である。この中に医師研修制度も同期することが重要で,地域のいわゆる
マグネットホスピタルと地域の中小病院・診療所間での医師の人事交流が医師研修に必須である。
一方,世帯の変化─すなわち核家族化の傾向は持続するので,在宅医療を支える体制はより脆弱とな
るであろう。個々の家族によるケアより,地域で看取るという考え方が必要になるであろう。すなわち
地域包括ケアの形である。
・近未来
人口減少と高齢社会に拍車がかかる。いわゆる田舎といわれる地域の消滅が顕在化するであろう。ICT
と AI の進歩と医療人の働き方改革も進むと考えられる。医療従事者の仕事の変容─いわゆる生活習慣病
の診察は on line 診療で,年 1 ∼ 3 回の採血,年 1 回のがん検診となる可能性が高い。内服薬の宅配はド
ローンに代わり,タグから服薬指導がスマホで読み取れるようになるのに時間はかからない。コロナ禍
での経済低迷が,医療費の抑制に影響して,このような流れはより早くなる可能性が高い。感染症やが
んの診断は AI,治療は指針で行なわれることになり,google 検索が必須になるであろう。
医師の役割は,治療における医療技術,AI による診断と治療方針を患者さんに如何に解りやすく説明
する,ことになるであろう。
・遠未来
地域の消滅と残った地域再構築が起こる。その時に病院だけが存続することはない。病院の存在する
意味は地域が持続可能であることである。医療・福祉の目指すところは地域住民の健康寿命の延伸であ
り,予防医療を前面に押し出した,地域づくり・街づくりへの積極的な参加が重要となるであろう。
演者プロフィール 昭和50年 名古屋市立大学医学部卒業 名古屋市立大学医学部第一内科入局 昭和51年 愛知県厚生連足助病院内科 昭和54年 名古屋市厚生院内科 昭和59年 名古屋市立大学医学部第一内科 助手 昭和62年 米国 Yale 大学留学 平成 8 年 愛知県厚生連足助病院 内科部長演者プロフィール 昭和60年 3 月 和歌山県立医科大学卒業 昭和63年 和歌山労災病院脳神経外科 平成 2 年 南イリノイ大学(Research Fellow)留学( 2 年間) 平成10年 川崎医科大学救急医学講座 講師 平成12年 和歌山県立医科大学救急・集中治療部 講師 平成16年 和歌山県立医科大学卒後臨床研修センター センター長 平成23年 和歌山県地域医療支援センター センター長兼任 平成25年 和歌山県立医科大学地域医療支援センター 教授 平成30年 和歌山県立医科大学地域国際貢献本部 部長