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ス ミス 価 値 論 にお け る社 会 認 識 の構 造(下)
野 沢 敏 治
問 題 に む か っ て'1
「未 開 社 会 」 と は な に か
2
市民的交換関係の支配論的性格3
価値形成労働 と価値所持労働一不変な価値尺度の探究4 資本家的商品の価値規定 と価値性格5
ス ミス三位一体範式6 A労tw‑一 賃 金
B資 本一利潤(B途 中 よ り本 号)
C土 地一地代 補論 価値=価 格
7主 体形成 にむか う社会 認識
B資 本 一 利 潤
前 払 い と しての利 潤,費 用 と して の利潤,こ の利 潤規 定 は ケ ネ ーの利潤 規 定 とま った く同 じで あ る。第4篇 学説 批 判篇 で,ス ミスは ケネ ーの利 潤 規 定を 紹 介 して言 う。
「人 々の普通 の理 解 で は,工 匠 と製造 業 者 の勤 労 はそ れ だ け 土地 の粗 生産 物 の価値 を増 加 させ るが,こ の 〔ケネ ーの〕体 系 で は,か れ らは ま った く不 妊 的で不 生 産 的 な人 々4)一 階 級 と して説 明 され てい る。 かれ らの労働 は,か
れ らを使 用す る資 財 をそ の通 常 の利 潤 とと もに 回 収す るだ け で あ る と言 わ れ る。 そ の資 財 はかれ らの使 用 者 に よってか れ らに前 払 い された 原料 と道具 と 賃 金 に あ り,そ れ は かれ らの使 用 と維 持 に予 定 され た基 金 で あ る。そ れ の利
り
潤 は かれ らの使 用 老 の維 持 に予 定 された 基 金 で あ る。 かれ らの使 用 者 は,か
原稿受領1978年10月31日
れ らの使 用 に 必要 な 原料 を 道 具 と賃 金 の資財 を かれ らに前 払 いす る よ うに,
使 用 者 は 自分 自身 の維 持 に必 要 な ものを 自分 自身 に前 払 いす る。 そ して彼 は, 一 般 に ,こ の維 持 費 を かれ らの製 作 物 の価 格 に よ って獲 得 す る ことを 期待 す.
・ る利 潤 に比例 させ る 。 も しもそ れ の価 格 が,彼 が彼 の職 人 に 前払 いす る原料
の コ
と道 具 と賃 金 のほ か に,彼 が 自分 自身 に前 払 いす る生 計 費 を彼 に払 戻 さな い
の く ユ
な らば,そ れ は 明 らか に,彼 がそ れ に 投下す る全 費 用 を彼 に払 戻 さない。」
利 潤 は資 本 家 の生 計 費 と して資 本家 の個 人 的 消 費 に全 額 支 出 され るか ら,こ こで は,単 純 再 生産 が 想 定 され て い る。単 純 再 生 産 で はあ って も,前 払 貨 幣が
コ
利 潤 を と もな って資 本 家 の手 に 回収 され る こ とは,資 本 家的 生 産 が再 生 産過 程
の の
と して 円 滑に 継続 す る 内部 で は,あ た りまえに な る。 一 定貨 幣 額Gが そ れ 以上 の貨 幣 額G'と な るの は 自然 であ る。 そ して,再 生産 過程 に生 きつづ け る資 本 家 に とって は,生 産 過程 の結 果 であ る利 潤 は最 初 か ら投 下資 本 に 含 まれ る もの と意 識 され る よ うに な る。継続 的 生産 のな か で生 き る資 本 家 の 頭 脳 に お い て は,実 際 に は生 産過 程 の結 果 で あ る ものが,生 産過 程 に は い る まえ か ら前提 さ れ る。 利潤 は資 本家 に よる投下 費用 の一 部 とな り,労 働 者 に 前払 い され る原料
・道 具 ・賃 金 とな らぶ 一 費用 に な る。 つ ま りG('一G'で あ る。G(t)は 資 本 家 の行 為 目的 のな か に あ る可能 的増 加価値 で あ り,G'は 現 実 とな った増 加 価値 で あ る。利 潤 は資 本 家 が 投下 した 費用 であ るか ら,そ の費 用 が資 本 家 に払 戻 さ れ るの は 当然 で あ る。r前 払一 回収 」,G('一G'の 生 活 常識 は市 民社 会 の もので あ り,等 価 交i換的 な正 義 で あ る。 だ か ら,利 潤 は 「真に 彼 に要 した とま った く 適 切 に 言わ れ うる もの」 とな る。 前払 費 用 と して の利潤 は,再 生 産 過程 に 生活 す る資 本 家に 意識 され る利潤 規 定 で あ る。 この主 観 的利 潤 規 定 は,資 本家社 会 の 内面 的 運動 であ る再 生 産過 程 か らに じみ で て くる もので あ り,そ こか ら逆 に
(1)Aninquryintothenatureandca〃sesofthewealthofnatiens,Vo1.2,
ClarendonPress,Oxford,1976,pp.666‑667.(以 下VVNと 略 す が,第2巻 か ら 引 用 さ れ る 場 合 に の みVVN,Vol.2と 記 す)邦 訳 頁 は 次 の も の で 表 示 す る 。 大 内 兵 衛
・松 川 七 郎 訳r諸 国 民 の 富 』 皿,岩 波 書 店,1969年,981頁 。(第2巻 か ら 引 用 さ れ る 場 合 に の み,巻 番 号 皿 を 付 す)な お,訳 文 と,引 用 文 中 の 傍 点 お よ び 〔 〕 は 私 の も の で あ る 。
ス ミス価値論におけ る社会認識の構造(下) 89
内的認 識 にむ か うことがで き る外 的表 徴 ・信 号 で あ る。 ス ミスに おい て は,資 本 家社 会 は,内 的 運 動 との関連 で主 観 的 に も認 識 されね ば な らな い対 象 と して
ご カ
あ る。
い ままで利 潤 と利 子 との関 連 を 考 察 して重 農 主義 的利 潤 規 定 の 意味 を と りだ して きた。 で は,地 代 と利 潤 との 関連 は ど うな るか,ま た は,地 代 は年 々に農 業 生 産 をす る借地 資 本 家 の眼 に ど う映 るか 。
分 析 的 に みれ ば,地 代 は剰 余 価値 の一分 解 部分 で あ り,利 潤 か らのい わ ば派 生 的収 入で あ る。 だ が,地 代 は資 本 家 ・地 主 の契約 関係 に お いて は異 な る規 定 を うけ る。 借地 資 本 家 は借地 契 約 に よって地 主に 地 代 を支払 う。 そ の 支払 い が 生 産 の まえに な されね ば な らな い ときに は,借 地 資 本 家 は地代 を 生 産 に 必要 な 経 費 とみ な し,彼 はそ の経 費 を払 戻 させ る よ うに経 営 努 力を お こな うだ ろ う。
他 方 で,地 代 支 払 い が生産 後 に獲 得 され た利 潤 のな かか らな され るば あ いで も, 地 主 と相 対 して再 生 産 過程 に生 き る借 地資 本 家 に と っては,地 代 は 前払 費用 の
な かに組 み こ まれ た もの と観 念 され るだ ろ う。地 代 は,第 一 次 的 に剰 余価 値 を
の
領 有す る借 地 資 本 家 の眼 か らみ て,前 払 い され た もので あ る。
前 払 い され た利 潤 を潜 ませ て い る もの,利 潤 を もた らす ことを 期 待 させ る も の,そ れ が資 本 家に とって の資 本 で あ る。 資 本 は,そ れ が生 産 的 に消 費 され て 価 値 増 加 す る ときに本 来 の資 本 で あ る。 と ころが,本 来 の資 本 で は な くて も,
し
あ る ものがそ の所 有者 に とにか くも収 入的富 を もた らす な らば,そ れ はそ の所 、
有 者 に は資 本 と見 え る よ うに な る。社 会 的 に は資 本 で な くて も,所 有者 の個 人
(2)主 観 的 な 利 潤 規 定 は;社 会 を 客 体 的 に の み で な く人 間 行 為 に 即 し て 認 識 し よ う と す る ス ミス の 方 法 で あ っ て,彼 の 理 論 体 系 か ら切 りす て られ る べ き不 純 物 で は な い 。 羽 鳥 氏 は ス ミス に よ る 内 的 科 学 的 な 認 識 の 側 面 を 強 固 に お しだ し て い る が,こ の こ
と は,経 験 的 認 識 が 社 会 把 握 に た い し て も つ 意 義 を 積 極 的 に 承 認 す る こ と に つ な が る べ き で は な い だ ろ うか 。 ま た,前 払 利 潤 規 定 を ス ミス に お け る 重 農 主 義 的 観 念 の 残 津 だ とか た づ け て し ま う こ と は で き な い 。 参 照,羽 鳥 卓 也 『古 典 派 経 済 学 の 基 本 問 題 』 未 来 社,1972年,62‑67頁 。L一
な お,ス ミス に お け る 重 農 主 義 的 利 潤 把 握 の 意 味 に つ い て は,私 見 と は 若 干 視 角 ・ を 異 に す る が,次 の もの が 参 照 さ れ るべ き で あ る 。 富 塚 良 三r蓄 積 論 研 究 』 未 来 社,
1965年,と くに 前 編 第 一 章 「ス ミス 蓄 積 論 の 基 本 構 成 」 の 第 三 節 。 (3)Cf。,WN,P.68.邦 訳,136頁 。
的 意識 の なか で は資 本 と映 るばあ い が あ る。 家 主 に と っての賃 貸 家屋 と労働 者 に とって の労働 力能 が,そ れ であ る。
借 家人 に賃 貸 しされ る家 屋 は,借 家人 に よって個 人 的 に消 費 され るか ぎ り, 富 を積極 的 に生 み だす もので はな い。 家賃 は借 家 人 の他 の収 入源 泉 か ら支払 わ れね ば な らな い。 だ が,家 賃 は家 主 の収 入な の だか ら,・ 家賃 を もた らす 家屋 は
家 主 に と って資 本 機能 を は たす 。
富 を積 極 的 に生 まな い家 屋 が家 屋 所 有者 に よ って資 本 だ と擬制 的に 意識 され る。 同様 に して,資 本 家 的所 有意 識 に と らわ れ る労働 者 に と って は,賃 金 は彼 の 「労働 」 か ら もた らされ る もの で あ り,「労 働 」 は賃 金 収 入 を もた らす 労働 者 の資 本 だ と,お もい こ まれ る。 ス ミス は資 本分 類 の 固定 資 本 の項 目に労働 力 能 を あ げ て言 う。 第 二篇 資 本論 か らの 引用 で あ るが ・価値 論 に 関係 す る内容 で
あ る。
「第 四 に,[固 定 資 本 は]そ の社 会 のす べて の住 民 また は成 員 の修得 され た 有用 な能 力 か らな る。 そ の よ うな才 能 の修 得 に は,修 得 者 の教 育 ・研究 ・徒 弟 奉 公 の あい だ彼 を維 持す る こ とに よって,常 に実 際 の費 用 が かか るの で あ り,そ の費用 は,い わ ば彼 の 身体 に固 定 され 実現 され た固 定 資 本 で あ る。 そ
れ らの才 能 は,彼 の財 産 の一 部 を なす よ うに,お な じ く,彼 が 属す る社 会 の
財 産 の一 部 を なす 。 職 人 の改 良 され た 技巧 は,営 業 の機 械 また は道 具,つ ま
り労働 を容 易 に して短縮 し,そ して あ る程 度 の費 用 が かか るけ れ ど も利 潤 を
の じぶ
と もな ってそ の費 用 を 払戻 す もの と同一視 され うるだ ろ う。」
普 通 の非 熟練 労 働 者 の 収 入が賃 金 な らば,優 秀 な熟練 労 働 者 の収 入 は資本 価 値 プ ラス利 潤,つ ま り前者 の賃 金 収 入 を超 え る利 潤 収 入 に等 しい。 熟練 労働 者 は非 熟 練 労働 者 に た い して,優 越 的 に,自 己 を資 本 の位置 にお く。 熟練 労働 者 は非 熟練 労働 者 を 肉体 労働 老 とみ な し,自 己を 労働 短 縮 のた め の 機 械 と み な す 。 機械 で あ るか ぎ り,熟 練 労働 者 に は固定 資 本 と しての耐 用 年 数が あ る。 彼 は一 定 の耐 用年 数 の あ いだ で のみ,普 通 の労 働 者 にた い す る 自己 の優 越 的 な生
(4)cr.,VVN,p.281.邦 訳,451‑452頁 。
(5)VVN,p.282.邦 訳,453頁 。
卜
ス ミス価 値論 におけ る社会認 識の構造(下)91
命 感 を享 受 す る。
再 生 産 過程 に 生 き る資 本 家 の主観 的 意識 に お い て は重 農 主 義 的利 潤規 定 は消 え なか った。そ れ ば か りで は な く,重 商 主義 的利 潤規 定 も資 本 家 の頭 に残 存 し, 彼 の頭 を 占領す る。 重 商 主 義 の利 潤 規 定 は譲 渡利 潤 であ り,購 買価 値 額 以上 の 価値 で販 売 す る こ とか ら生 ず る利 潤,流 通 に そ の源 泉 を お く利潤 で あ る。 この
利 潤規 定 は ス ミスに よって批 判 され るが,、交 換関 係 のなか の産業 資 本 家 の実 践
ロ
的意 識 に あ って は,譲 渡利 潤 規 定 が や は り支配 的 で あ る。 理 論 の発展 史で は葬 む られ た利 潤規 定 が,資 本家 の表 象 に再 生産 され る。 一 定 貨幣 額 を も?て 生 産
要 素 を購 入 し完成 生 産 物 を販 売 す る機 能 を お こな う産業 資 本 家に と って,利 潤 が 販売 か ら生ず る と意識 され るの は 自然 で あ る。 譲 渡利 潤 は商 人 的産 業資 本 家 の意 識 を 占め る。 この ことは,利 潤 源泉 を本 質分 析 的に 剰余 労 働 に帰 着 させ た 箇所 です でに示 され て いた。
「資 財 が特 定 の人 々の手 中 に蓄 積 され て しま うや い な や,か れ らの うち の あ る ものは,自 然 とそ れを,勤 勉 な人 々に 仕 事 を させ るの に 使 用 す る だ ろ
う。 か れ らはそ の人 々に原 料 と生 活 資料 を供給 して,そ の人 々の製 作 物 の販
売 に よ っ て,ま た は,そ の 人 々 の 労 働 が 原 料 の 価 値 に 追 加 す る と こ ろ の もの
つ
に よ っ て,利 潤 を 得 よ う と も くろ む だ ろ う。 … … も し も彼 〔 一 企 業 者 〕 が,
コ
彼 の資 財 を 回収 す るの に十 分 で あ る ところ よ りも多 くの ものを,か れ ら 〔 一
勤勉 な人 々〕 の製作 物 の販 売 か ら期 待 す るので な い な らば,彼 はかれ らを使
ぱの
用 す るの にな ん の興 味 も もてな い だ ろ う。 」
G‑W‑Gt,資 本生 活 の この範 式 が 自分 自身で 流 通機 能 を担 当す る産 業 資 本 家 の心 を 占め る。
「亜 麻 繊維 仕 上 工 の使 用 老 は,彼 の亜 麻 繊 維 を売 る ときに,彼 が 彼 の職 人
り
た ちに 前払 い した 原料 と賃 金 の全 価値 に 加 えて 追加 的 な5パ ーセ ソ トを 要 求
す るだ ろ う。 紡 績 工 の使 用 者 は,亜 麻繊 維 の前 払価 格 と紡 績 工 の賃 金 との双 方 に加 え て追 加 的 な5パ ーセ ソ トを要 求 す るだ ろ う。 そ して,織 布 工 の使 用
(6)Cf・,VVN,pp.118‑119.邦 訳,213‑214頁 。
(7)WN.pp.65‑66.邦 訳,132頁 。
者 は亜 麻 糸 め前払 価 格 と織 布 工 の賃 金 との双 方 に 加 え て 同様 な5パ ーセ ン ト
ゆ
を 要 求 す る だ ろ う。」
C土 地 一 地 代
資 本 家的 地 代 の 内的 源 泉 は労働 で あ り,地 代 は 生産 関係 視 点か らみ て地 主 の 不 労 所 得 で あ った。 地 代 は追 加 価値 ので 部 で あ り,、 追 加価 値 創造 の視 点 か らは, 地 代 は農業 資 本 中 の農 業労 働 者雇 傭 のた め の賃 金資 本 と関 連 づけ られ てい た。
そ して,地 主 と借 地 資 本 家 は農業 労 働 者 に たい して共 同の 搾取 者 で あ った。 で
コ コ
は,地 代 は,地 主 と借 地資 本 家 との借 地契 約 関係 ・分 配 関係 に おい て どの よう に現 象 し,な に と関 連 づ け られ るか。
地 代 の不 労 所得 性,こ れ は借 地資 本 家 の眼か らみ て も明 白で あ る。 貸 付 資 本 家 は社 会 の産 物 で あ る貨 幣 を所 有 して いた が,地 主 は お よそ 人 間 労働 とは無 縁 な 自然 の大 地 を 所有 す る。 これ に た い して ス ミスの借 地 資 本家 は 自己 の勤労 と 倹約 に よって最 初 の資 本 を形 成 す るか ら,彼 は資 本 を 自己労 働 の産 物 で あ る と み なす。 誰 の 目か らみ て も地 主 の土 地 が 自然 の賜物 で あ る こ とは歴 然 と してお り,借 地資 本 家 か ら見 て土地 所 有 の略 奪 性 は 明 白で あ る。 地 主 ・借 地 資 本 家 関 係 に あ って は,地 代 は独 占的に 所 有 され た ‡地 か ら生 ず る よ うに み え る。
ス ミスは地 代 と利 潤 を 区別 して次 の よ うに言 う。
「土地 の地 代 は,地 主 に よ って土 地 改 良に 投下 され た資 財 の妥 当 な利 潤 ま た は利子 にす ぎな い こ とが しば しば であ る と,考 え られ るか も しれ ない。 疑 い もな く,こ の こ とは,い くつか の場合 に は部分 的 に 事実 で あ ろ う。 とい う の は,そ れ が 部分 的 な事実 以 上 の もの であ る こ とはほ とん どあ りえ な いか ら で あ る。 地 主 に未改 良 の 土地 に た い してす ら地代 を要 求 す る。 そ して,改 良 の 費用 に た いす る想 像 上 の利 子 また は利 潤 は,一 般 に,こ の本 源 的地 代 に た いす る追 加 であ る。 そ の うえ,そ れ らの改 良 は常 に地 主 の資 財 に よってな さ
(8)WN・pp.114‑115.邦 訳,208頁 。
「譲 渡 利 潤 こそ,ブ ル ジ ョ ア 的 利 潤 概 念 の 最 古 の 形 態 で あ り,ま た,最 も普 及 し て い る形 態 で あ る 。」(平 田 清 明 「物 象 化 と三 位 一 体 範 式 」 ㈲,『 思 想 』576号,1972 年6月,125頁)
ス ミス価値 論に おけ る社会 認識 の構 造(下)93
ゆ
れ るの で はな く,と きに は借 地 人 のそ れ に よってな され る。」
本源 的地 代 に おい て,所 有 の力 の表 現 で あ り所 有 の果 実 と して の地代 性 格 が 鮮 明に な る。借 地 資 本 家 は,機 能 資 本 家 と して,農 業 利 潤 を 自己 の経営 労 働 に た いす る報 酬 で あ る とみ な し,地 代 を 不労 所 得 とみ なす だ ろ う。 地 代 は 「土 地
ご
の使 用 に たい して支 払わ れ る価 格 」 であ り,.土 地 使用 許 可 料,使 用 され るべ き 土 地 と交 換 に地 主 に与 え られ るべ き もの で あ る。 地 主 の頭 の なか で は,土 地 が 地 代 を 生む 。そ して,土 地一 地 代 の この生 活 信 条 は,有 利 な土壌 と位 置 を も っ た 土地 の所 有者 に は,よ り自然 で あ る。 そ の土地 は他 の土 地 に た い して競 争 上 優 越 す るか ら,地 主 が そ の土 地 か ら獲 得す る特 別 の 高地代 は土 地 が もつ 自然 的 特 性 そ の ものか ら生 ず る よ うに,地 主 に は思 わ れ るだ ろ う。
くユゆ
「ま った く土 地 だ け か ら生ず る収 入 は,地 代 と よばれ,地 主 に属す る。」
補論 価値一価 格
意識 の発露 は人 間 の生 を 証す る。 人 間 のそ の意 識 を ス ミスは社 会 的交 通 関係 の なか で と らえた。 生 産 は,生 産 す る こ との個 体 的 な喜 びや 仲 間意識 の享 受 を ゐ た らさず,む しろ苦 役 で あ り私 的 で あ る。社 会 意識 を直 接 に 育成 す る場 は生 産 で はな くて交 通 一 貸 借 ・契約 ・売 買 ・分 配 等 一 で あ るげ この社 会 意 識 を 社 会 の代表 的階級 の 日常 生活 に おい て経 済 的 に表 現 した もの が,い ま まで み て
きた ス ミス の三 位 一 体範 式 であ る。
労 働 者 ・資 本 家 ・地 主 の三 階 級 が,私 的所 有 者 と してひ らの商 人 と して相互 に交 際す るか ぎ り,そ れ ぞれ の階 級 の収 入 で あ る賃 金 ・利 潤 ・地 代 は労 働 者 の 労 働 に 源 泉 を もたず,自 己所 有 の商 品 ・財 産 であ る労 働 ・資 本 ・土地 に そ の源 泉 を もつ。 地 主 と資 本 家 が,資 本 家 と労働 者 が,そ れ ぞれ 取 引す る と きに は,
「これ は私 の もの で あ り,そ れ は お まえ の ものだ。 私 はそ れ と交 換 に喜 んで こ
ぐ の
れ を あ げ よ う」 と相互 に 申 しで る。 分 配 関 係 に おけ る人 々の意識 を 常 に直 接 的
(9)WN,p.160.邦 訳,279‑‑2so頁 。
⑩WN,p.160.邦 訳,279頁 。
⑪VVN,p.70.邦 訳,140頁 。
(iex13確N,p.26.邦 訳,82頁 。
に 規定 す るのが,こ の市民 的 交 換 関係 であ る。 「私 の欲 す るそ れ を私 に くれ,
ぜ ユの
そ うす れ ば私 は お まえ の欲 す る これ を お まえに あ げ よ う」。 地 主 は地 代 と交 換 に 土地 使 用 権 を資 本 家 に与 え,労 働 者 は賃 金 と交 換 に労 働 力消 費権 を資 本 家 に 与 え る。 交 換 関係 を基 礎 と して,ス ミス的 な 三位 一 一体範 式 が跳 梁 し自立化 し,『
擬 制 的 で超 歴 史 的 な意識 が展 開す る。 賃 金 ・利 潤 ・地代 は資 本 家 時代 に特 有 な 歴 史理 論 的範 疇 で あ るが,労 働 ・資財 ・土地 とい う生 産 の三 要 素 との関 連 で は, 歴 史性 は消 え る。
資 本 家社 会 の 内面 を 掘 りさげれ ば,商 品価 値 を規 定す る ものは労 働 で あ り, あ らゆ る富 の本 源 的統 一 者 は労働 で あ る。 だ が,社 会 の基 底 に あ る労働 は批 判 的 知性 が 認識 し うる もの で あ り,労 働 はそ の ま まの姿 を社 会 の表 面 に現わ す こ
とは ない。 価 値 法 則 は,三 位 一 体 範 式 の 自然 的 意識 の世 界 にお い て生 き られ,
そ して,賃 金+利 潤+地 代=自 然 価格 の構 成価 格 と して現 象 す る。 資 本家 社会
ぼ ゆ
に お い て も投下 労働 価 値 論 が 妥 当す る とい うことの深 い意 味 は こ こに あ る。
構 成価 格論 は資本 家 の立場 か らの 価値認 識 で あ り,そ こに は重 商 主義 的 独 占 にた いす る批 判 的時 論 意識 が こめ られ てい る・ 自然価 格 は賃 金 と利潤 と地代 の そ れ ぞれ の 自然 率 を も って構 成 され る。 自然率 は,労 働 力 ・資 本 ・土地 の 自由 移 動 と 自由競 争 のなか で社 会 的 平均 と して生 まれ て くる もの で あ り,資 本 家 に と って は所与 で あ り前提 され た 存 在 で あ る。 これ に たい して,実 際 の価 格 はそ の時 々の需 要 と供給 の 関係 で 決定 され る市場 価 格 で あ る。 自然 価 格 は需 要 と供 給 が一 致 した ときの市 場 価格 に等 しいか ら,市 場 価格 は,中 心 価 格 で あ る 自然 価 格 の上下 を変 動す る外 在 的価 値 で あ る。 自由競 争場 で の資 本 家に と って は, 商 品 の価値 は,商 品 に 内在 的 な価 値 は,自 然 価 格,費 用価 格,平 均 利 潤+賃 金
の生 産 費,ま た は 市場 価値,と して現 象す る。
「あ る商 品 の価 格 が,そ れ を 産 出 し調 製 し市 場へ もた らす の に 使 用 さ れ た,土 地 の地 代 と労 働 の賃 金 と資財 の利 潤 を支 払 うのに 十分 で あ る と ころ よ
りも,多 くも少 く もない場 合 に は,そ の商 品 はそ れ の 自然価 格 と よばれ て よ
⑭ 参照,内 田義彦 「 発端 ・市民 社会 の経 済学的措定 」(内 田他共著r経 済 学史 』筑
摩書房,1970年,104頁)
、
ス ミス価値論におけ る社会認識の構造(下)
95い も の で 売 ら れ る 。
...≧.
「そ の と き に,そ の 商 品 は 正 確 に そ の 値 う ち で,ま た は,そ れ を 市 場 に も
た らす 人 に実 際 に か か るだ け に売 られ る。 なぜ な らば,日 常 用 語 で は,あ る
へ
商 品 の 原価 とよば れ る ものはそ れ を再 び売 るはず の人 の利 潤 を 含 まな いけ れ ど も,し か し,も しも彼 が 彼 の近 隣 で の利 潤 の通 常率 を彼 に与 えな い価 格 で そ れ を売 れ ば,彼 は明 らか にそ の取 引 で損 失者 に な るか らで あ り,そ れ とい
。 うの も,彼 は 彼 の資財 を あ る他 の方法 で使 用 す る ことに よってそ の利 潤 を獲 得 した か も しれ ない か らであ る。 そ の うえ,彼 の利潤 は彼 の収 入で あ り,彼 の生 計 費 の適 切 な資 源 で あ る。 彼が財 貨 を調 製 し市場 に もた らす あいだ に, 職 人 た ちに か れ らの賃 金を前 払 いす る よ うに,同 様 に,彼 は彼 自身 の生 計 費 を 自分 に前払 いす る ので あ り,そ の生 計費 は,一 般 に,彼 が 自分 の財 貨 の販 売 か ら期待 して も妥 当 な利潤 に相 当す る。 そ れ ゆ え,も し もそ の財 貨 が彼 に この利 潤 を 与 え ない な らば,そ れ が 彼 に実 際 にか か った と まこ とに 適切 に言
ごユリ
わ れ うる もの を,そ れ は彼 に払 戻 さな い。」
価 値 は資 本 家 の頭 脳 で は 自然価 格 で あ り,利 潤 は回 収 され るべ き もの と して 費 用 のな かに 含 め られ る。 価値 の結 果 で あ る賃 金 ・利潤 ・地 代 が,逆 に価 値 の 原 因 とな る。価 値 は,自 由競 争場 で は,重 農 主 義 的利潤 表 象 を と もな った構 成 価 格 と して現 象 し,主 観 的構 成価 格 論 の次 元 で重 商 主義 的独 占価 格 が 批 判 され
て い く。
ス ミスの生活 意識 の叙述 はそ れ じた い が重 商 主義 にた いす る批 判意 識 の あ ら わ れ で あ り,自 然 価 格 の成 立 条件 じた い が重 商 主i義批 判 とな ってい る。成 立 条 件 は資 本 と労働 の 自由移動 であ り,そ の も とで,平 均 利 潤 を保 障 して長 期 にわ た り再 生産 の 可能 な価 格 が,自 由競 争価 格 が,成 立 す る。 この価 格 は消 費者 を 社 会 暴 力 的に 搾取 す る もの で はな い。 これ にた い して,自 然 価 格 の成 立 を阻 害 す る もの が,重 商 主義 的統 制 とそ の も とで の独 占価 格 の成 立 で あ る。 独 占価 格 は,特 権 を与 え られ た特 定 産 業 が 市場 を 不 断 に供給 不 足 に させ てお くこ とに よ って,消 費者 か らそ の限度 まで しぼ りとる。 ス ミス は価 値 の支 配 労働 性 を,独
'
⑮WN,pp.72‑73.邦 訳,143‑144頁 。
ねゆ
占に よ る搾取 のば あ い に限 って ジ不 正 だ とみ なす 。
7主 体 形 成 にむ か う社 会 認 識
ス ミスに よる生活 意 識 の叙 述 はた ん な る常 識 の記述 で はな い。 それ は これ か ら作 られ て いか ね ば な らな い生活 原理 であ り,旧 社 会 の人 間類 型 に はみ られ な い 主体 的な生 活 倫理 で あ る。 市 民 的交 換 の 完成 のた めに は古 い慣 行 はす べて打 破 され る。 三位 一 体 範 式 の表 象 的意 識 を 生 きる ことに よ り,結 果 と して,生 産 に おけ る労働 の剰余 価値 生産 性 は増 大 し,社 会 は豊 か に な る。 以 上 の こ とを, 労働一 賃 金 の範 式 に生 きる労 働 者 を 中心 に み てみ る。 そ の うえ で,ス ミスの主 体 に は 知性 を も って社 会 に働 きか け る重 要 な側 面 が あ る こ とを 確 認 し て み た
いo
賃 金 は資 本家 と労働 者 との個 々の契 約 に おい て決 定 され る。 この契 約 に おい て,労 働 者 が労 働 力商 品 の所有 者 と してそ れ の価値 ど う りの販 売 を 主張 し うる た め に は,資 本 家に た い して 労働 力 供給 を コソ トロール で き る労 働組 合 の結 成 が許 され な けれ ば な らない。 争 議 の さいの労 働 者 の 団結 も法 律 上 自由 でな けれ ば な らない。 経 済 的 に は労働 者 は資 本 家 に く らべて 弱い立 場 に あ るか ら。 だ が ス ミスの当時 の重 商 主 義政 策 は,賃 金 圧下 と団 結 禁止 法 を もって労働 者 に対 処 して いた 。だ か ら,労 働 力の価値 彦 う りの販 売 を も とめて賃 上 げを 主張 し よ う とす れば,労 働 者 はみず か らす す んで組 合 を 結成 しなけれ ば な らない 。 「労 働 の価 格」 の 自由 で公正 な実現 を め ざ し,労 働 者が資 本 家 との個 別 契約 に おい て 交 換 本能 を発 揮 し うるた め に は,労 働 者 は団結 の モ ラルを もたね ば な らない。
「労 働 の普通 の賃 金 がな ん で あ るか は,ど こに お い て も,利 害 がけ っ して 同一 でな いそ れ ら二人 の当事 者 の あ いだ で通 常 な され る契 約 に,依 存 す る。
職 人た ちは で き るか ぎ り多 く得 よ うと欲 し,親 方 た ち はで き るか ぎ り少 く与 え よ うと欲 す る。前 者 は労働 の賃 金 を引 上 げ るた め に 団結 す る性 向が あ り,
⑯Cf.,VVN,pp.78‑79.邦 訳,152‑153頁 。
ス ミス が 資 本 と 労 働 と の 不 等 労 働 量 交 換 を 不 正 だ と み な す 他 の 一 例 は,資 本 ・賃 労 働 関 係 の 視 角 か ら と らえ られ た 中 世 の 都 市 と 機 村 と の 関 係 で あ る 。Cf.,WN,p.
142.邦 訳,250頁 。
ス ミス価値論におけ る社会認識の構造(下)97 1m 後 者 はそ れ を 引下 げ るた めに 団結 す る性 向が あ る。」
ら労 働 者 は資 本 家 との交換 関係 に おい て
,自 分 自身を 所 有権 の主 体 とみ なす の み な らず,他 人 であ る資 本 家 の所 有権 を も認 め る。 相互 に 所 有権 を 確認 す る正 義 の範 囲 内で,労 働 者 は 自分 の所 有物 を 自由意志 で処 分 す る能 力を もつ。 労働 者 の所 有 物 は,彼 の意志 を 無視 しては,誰 も犯 す ことの許 され な い神聖 な もの で あ る。 、
「あ らゆ る人 が 自分 自身 の労 働 とい うか た ち で もつ財 産 は,そ れ が他 の全 財 産 の根 源 的 な基 礎 で あ る よ うに,そ れ は,ま た,最 も神 聖 で不 可侵 な もの で あ る。 貧者 の相続 財 産 は彼 の腕 の 力 と技 巧 に あ り,こ の力 と技 巧 を,彼 が 彼 の隣 人 を侵 害 す る ことな く自分 で適 切 だ とお も う方 法 で使 用 す るの を 妨 げ
ロゆ
る ことは,こ の最 も神 聖 な財 産 に た いす る明 白 な冒濱 で あ る。」
労働 者 の一市 民 と して の誇 りが1美 意識 が,こ こに あ る。 徒 弟 条例 ・定住 法
・重 商 主義 的な 労働 移 動 の制 限 ,こ れ らの実 定 法 が取 りは らわ れ て労 働 者 が所 有 権 の主体 と して確 立す る ときに,賃 金 は,少 くと も生存 費 的賃 金 は確 保 され
る。
労 働 者 が生 存 費 的賃 金 以上 の高賃 金 をえ て幸 福 に なれ るの は,ま た幸 福 に な りた い と望む こ とが で きるの は,資 本蓄 積 が進 行す る社 会 に お いて で あ る。交 換 関係 を そ の うちに 含む資 本 蓄 積 が 軌道 に の った ときに,労 働 者 の独立 自由の
意識 は固 め られ て い く。 そ して,逆 に,労 働 者 が個 人的 な 自由 と幸 福 を 自覚 し 、 て い くこ とが客観 的 に資 本蓄 積 を お しすす め る要 因 とな る。 以下,価 値 法 則 を 現 象 させ る主観 的 意識 を第一 篇 次 元 で の資 本蓄 積 論 に お い て具体 的 に つか んで
み よ う。
資本 家 的 生産 のは じめ には資 本 が 必要 で あ り,蓄 積=追 加 資 本 の形成 の まえ
(iOVVN,p。83.邦 訳,160頁 。
注 意 す べ き こ と だ が,ス ミス は,第 一 篇 第 八 章 の 前 半 で は 資 本 家 と労 働 者 と の あ い だ の 不 等 労 働 量 交 換 を 説 き,後 半 で は 労 働 一 賃 金 の 等 価 交 換 的 表 象 を 展 開 す る 。 第 八 章 賃 金 論 の こ の 構 成 が 事 実 上 意 味 して い る こ とは,搾 取 は 交 換 の 完 成 に よ っ て 貫 徹 され る と い う こ と で あ る。
㈱VVN・P・138.邦 訳,245頁 。
98
商 学 討 究 第29巻 第3号
に とにか くも最 初 の資 本が 形成 され な けれ ば な らない。 ス ミスは,資 本 家 的 生 産 に先 行 す る蓄 積 を,独 立 職 人か ら資 本 家へ の 自然 的 移行 と して説 明す る。
「 織 布 工や 靴 屋 の よう な独 立職 人が,彼 自身 の製 作 物 の原料 を購 買 し,彼 がそ れ を売 却 し うる まで 自分 自身 を維 持す るのに 十分 で あ る ところ よ りも多
くの資財 を得 た ときに,彼 は,そ の余 剰 で も って,自 然 に一 人 また はそ れ 以 上 の雇 職 人を使 用 し,か れ らの製作 物 に よって利潤 を得 よ うとす る。 この余
ごユの
剰 を増 加せ よ,そ うす れ ば 彼 は 自然 に 彼 の雇職 人 の数 を増 加 させ るだ ろ う。」
本源 的 資 本を 形成 す る もの は,独 立 職 人 の営 々た る勤 労,本 源 的 労 働 で あ る。 余 剰資 財 の形 成 は 自己労 働 の所 産 にた いす る私 的所 有 権 を 前提 と し,余 剰 資 財 を,「 一 人 また はそ れ 以上 の雇職 人を使 用 し,か れ らの製作 物 に よって利 潤 を得 よ うとす る」 た め の もので あ る資 本 に転 化 す る こ とは,労 働 移動 の 自由 を前 提 とす る。.
富 は,収 入 的富 を 生 みだ す 資本 的 富 は,労 働 力 と生産 手 段 の購 入 に配 分 され る。 労 働 力購 入 に あ て られ る富 が,他 人労 働 を よ り多 く購 買 ・支 配す る可変 的 価 値 で あ る。 ス ミスは,価 値 の支 配労 働 性 を,賃 金 と労 働 との交 換 のなか で 確 認 して いた。 最 初 に 投下 され た賃 金価 値 は,生 産 の結 果,よ り多 くの価値 とな らて資 本 家 の手 に回収 され る。 資 本 家 の 目的 は不 断 の価 値 増 加 で あ るか ら,そ のた め に は,剰 余 価 値 の一 部 を節 約 して追 加 資 本 を形成 しなけ れ ば な らな い。
追 加資 本 は以前 よ りも多 くの追加 的 労働 者 と追 加的 生 産 手段 の購 入 に あて られ る。 自由 な労働 にた いす る需 要 が増 大す る と,賃 金 は上昇 し,不 断 の需 要 増 大 の も とで は高賃 金 とな る。 追 加 的生 産 手段 を購 入す る こ とに よって,よ り優 秀 な機 械 が導 入 され,よ り多量 の原 料 を生 産 的 に 消 費す るた め に作業 場 内で の労 働 配分 が 合理 的 にな され る。 そ の結 果,労 働 生 産 力 は増 大 し,生 産物 一単 位 あ た りに 必要 な労 働 量 が 減 少す る。 ここで商 品価 格 は低下 す る。 商 品価 格 の低 下 は,資 本家 に とって は高賃 金 の経 費 負担 を償 うもので あ り,労 働 者 に とって は 実質 賃 金 の増 大 を もた らす もの で あ る。 労 働 者 は実 質 的 な 高賃 金 に ょって生 活 水 準 を上 昇 させ,家 族扶 養 能 力 を高 め て人 口を増 大 させ る。
⑲WN.p.86.邦 訳,165頁 。
ス ミス価値論 におけ る社会認 識の構造(下)
99「労働 の賃 金 の増 大 は,多 くの商 品 の価 格 を,そ の うち の賃 金 に分解 す る 部 分 を増 大 させ る こ とに よって,必 然 的 に増 大 させ,そ の程度 まで 国 内 と国 外 の双方 に おけ るそ れ らの消 費 を減 少 させ る傾 向 が あ る。 しか しなが ら,労 働 の賃 金 を上 昇 させ るの と同一 の原因,つ ま り資 財 の増大 は,そ れ の生 産 力 を増 大 させ,よ り少量 の労働 で よ り多量 の製 作 物 を生 産 させ る傾 向 が あ る。
多数 の労働 者 を使 用 す る資財 の所 有者 は,自 分 自身 の利益 の ため に,か れ ら が 可能 な か ぎ り最 大 量 の製作 物 を生 産 し うる よ うに,仕 事 の適 切 な分 割 と配 分 を しよ うと必 然 的 に努 力す る。 同一 の理 由か ら,彼 はか れ らに,彼 または か れ らが考 えだ しうる最 良 の機 械 類 を供 給 しよ う と努 力す る。 … …そ れ ゆ え,
これ らの改善 の結 果,以 前 よ りず っ と少 い労働 で 生 産 され る よ うにな る多 く の商 品 が 出現 し,そ れ 〔 一 労働 〕 の価格 の増 大 はそ れ の量 の減 少 に よ って償
ご ル
わ れ て あ ま りが あ る ほ ど に な る 。 」
上 の引用掌中 の経済 の論理 のなかに,重 商主義的低賃金論 に た いす る批 判 と,新 社会 に おけ る生 活 倫理 の提示 とが,こ め られ てい る。 高賃 金 は,ス ミス 的 な資 本 蓄 積論 か らは,経 済合 理 的 で あ り,労 働 者 の勤 勉 にた いす る刺 激 剤 で あ る。 近 代 的賃 労 働 者 は,伝 統 的精 神 の持 主 とは こ とな り,自 己 の個体 的必 要 を満 たす こ とだ け に停 滞す るのでは な く,賃 金 の金 銭 的 高 さを も とめ て労 働 す る6彼 は,一 週 間分 の生 計費 を四 日間 で稼 ぐこ とがで きた ば あい で も,従 来 の 労働 者 の よ うに 他 の三 日間 は怠 け てす ごす ので はな く,よ り多 くの賃 金 を も と め て毎 日働 こ うとす る。
「労働 の豊 か な報 酬 は,そ れ が増 殖 を刺 激 す る よ うに,普 通 の人 々の勤 勉 を増 大 させ る。 労働 の賃 金 ぽ勤 勉 の刺 激剤 で あ り,勤 勉 は,他 の どの人 間 的 特 質 とおな じ く,そ れ が 受け る刺激 に比例 して増 進す る。 豊 か な生 計 費 は労 働 者 の 肉体 的 力 を増 大 させ,彼 の境 遇を改 善 させ て安楽 と豊 富 の うちに 彼 の 生 涯 を終 え させ る とい う快 い希 望 は,彼 を活 気 づか せ てそ の力 を極度 に まで 発 揮 させ る。 … …実 際 に は,職 人 のな か に は,そ の週 を 通 じてか れ らを維 持 す る ものを四 日間で稼 ぐこ とが で きる ときに は,他 の三 日間を 怠 け る者 が い
㈲WN・p.104.邦 訳,190頁 。
る だ ろ う。 しか し,こ の こ と は け っ して大 部 分 に は あ て は ま らな い 。 反 対 に,
、 職 人 た ち は,出 来 高 で 気 前 よ く支 払 わ れ る と き に は,働 き す ぎ て,数 年 で 健
ご ゆ
康 と体 質 を破 壊 して しまい が ち な こ とが非常 に よ くあ る。 」
9
・ 一時 的 な利 益 のた め に過重 労 働 す る こ とは ,労 働 者 に とって も資 本 家 に と っ て も損 失 で あ る。 した が って,両 者 は,長 期 的 な利 益 を得 る よ うな労 働 投下 を す る よ うに教 え られ る。 生 産 の継 続 的運 行 が,再 生 産 が,資 本 家 に は 「理 性 と 人 類愛 」 を,労 働 者 に は慎 慮 の 徳 を訓 育す るので あ る。
「も しも親 方 た ちが常 に理 性 と人 類愛 の指令 に耳 を か たむ け るな らば,か れ らは しば しば,か れ らの職 人 た ちの 多 くの もの の勤 勉 を活 気 づ け る よ りも, む しろ緩 和 させ る必 要 が あ る。私 は信 じるが,あ らゆ る種 類 の職業 に おい て 次 の こ とが見 い だ され るだ ろ う。 一 定 して働 き うる よ うに適 度 に働 く者 は, 彼 の健康 を最 も長 く維 持 す るだ け で な く,そ の年 を つ うじて最 大 量 の製 品を
ご ゆ
作 りあげ る。」
労 働 者 は交換 関 係 に お い て一 人 の 自立 市 民 で あ った よ うに,消 費生 活 に お い て も 自由 な 自立 市 民 であ る。 労働 者 は,時 に は 召使 を雇 った り観 劇 に 出か け る ほ どの消 費生活 に お い て 自由 を実感 す るだ ろ うし,賃 金 を 自分 自身 の責 任 に お い て支 出す る とい う自律 性 を実 感す るだ ろ う。奴 隷 はそ の生 計 を主 人 の好 意 に 依 存 させ るが,労 働 者 はそ の生 活 にお い て賃 金 を どの よ うに使 用 す るか の生 活 設 計 を し うる 自由人 で あ る。
「奴 隷 の摩 損 は彼 の主 人 の経 費 負担 であ るが,し か し,自 由 な使 用 人 のそ れ は彼 自身 の経 費 負担 であ る と,言 わ れ て きた。 しか しな が ら,実 際 に は, 後 者 の摩 損 は前 者 のそ れ と同 じ程度 に彼 の親方 の経 費 負担 で あ る。 …… しか
し,自 由な使 用 人 の摩損 は おな じ く彼 の親 方 の経 費 負担 で あ るけれ ど も,そ れ は一 般 に彼 に は奴 隷 の摩 損 よ りもず っ と安 くつ く。 も しもそ う言 って よい な らば,奴 隷 の摩 損 を補 填 した り修理 した りす るた め に予 定 された基 金 は, 通 常,怠 慢 な主 人 また は不 注 意 な監 督 者 に よって管理 され る。 自由人 に か ん
⑳WN.pp.99‑一 一100.邦 訳,183頁 。
22)VVN・p.100.邦 訳,184頁 。
'
ス ミス価値 論 におけ る社会認識 の構 造(下)
101して おな じ任 務 を はたす よ うに予定 され た基 金 は,自 由人 自身に よって管理 され る。 富 者 の経 済 に お い て一 般 に広 が ってい る無 秩 序 は,当 然 に前 者 の管 理 に取 りい れ られ る。 貧 者 の厳 格 な節 約 とつ ま しい注 意 とは,同 様 に して 当
く が ヤ
然 に,後 者 の管理 の なか に確 立 され る。」
労 働 者 は慎 慮 と勤勉 の徳 を 身 に つけ,物 質 的 に も精 神 的 に も幸 福 な感情 を享 受 す る。 市民 社 会 に お け る資本 蓄 積 の進 展 は,重 商 主義 的低 賃 金政 策 の も とで
じ ゆ
勃発 して いた 労働 争 議 を不 必 要 に させ,社 会 不 安 を な くす だ ろ う。
以 上 に み て きた よ うに,ス ミスの労 働 者 は,そ の意識 に おい て は 自由人 で あ り,独 立 商 品生 産 者 的 で あ る。 け れ ど も,労 働 者 の足 は生 産関 係 に 立 って お り,そ のか ぎ りで は彼 は賃 金奴 隷 で あ る。 だ が 彼 の頭 と胸 は交換 関係 のな か に あ り,そ のか ぎ りで は彼 は 自由賃 労 働 者 で あ る。 資 本 蓄 積 の進 展 が もた らす 高 賃 金 は,労 働 者 に は,自 分 の労 働 生 産物 にた いす る全 部 的 な 支配 へ の前 進 だ と
み え るだ ろ う。 そ して,資 本家 的賃 金 が 自然 的賃 金 にみ えて くれ ば くるほ ど, 労 働 者 の 自立 的感 情 は増 幅 され,よ り一層 勤 勉 に働 こ うとす るだ ろ う。 独 立生
ぱ ゆ
産者 の魂 を も った労 働 者。
最 後 に,ス ミスに は,知 性 を もって 目的 意識 的 に生 き よ う とす る 主 体 が あ る。 知 的活 動 を も って政 治的活 動 と結 合 し よ うとす る主体 が あ る。 そ の主体 は, 自分 がそ こに おい て生 き よ うとす る資 本 家社 会 の仕 組 を歴 史的 に認 識 し,そ の 認 識 を もって眼前 の重 商主 義 を批 判 し,そ して政 策 に参 加 しよ うとす る。 知 が 力 に な る こと,そ の こ とを 実践 し よ うと試 み た のが ス ミス のr国 富論 』で あ る
㈱r「N.p.98.邦 訳,182頁 。
⑳ だか ら,ス ミスにあ っては,次 の よ うな独立生産者称讃 的 な発言 が生 まれ て くる。
「 一 般に人 間は,他 人 のために働 くときよ りも,自 分 自身 のた めに働 くときの ほ
うが働かな いな どと想像す る ことほ ど,ば か げた ことはあ りえ ない。貧 しい独立 の
職 人は,一 般 に,出 来高で働 く雇職 人に くらべて さえ も,よ り勤勉 だろ う。前者は
彼 自身 の勤 労 の 全 生 産 物 を享 受 し,後 者 は そ れ を彼 の親 方 と分 配 す る。 前 者 は,分
離独立 の状態 にあ って,悪 い仲 間の誘 惑に あ うこ とが少 く,そ の誘 惑は大 製造工場
で峠非輸 こしば しば後者 の品性 を破滅 させ るので ある。月 ぎめまたは年 ぎめ で雇わ
れ,多 く仕事 を しよ うが少 く仕事 を しよ うが賃金 と手当がお な じであ る使 用人 にた
いす る独立 の職 人の優 越性は,さ らに大 きい ようで あ る。」(VVN・p.101.邦 訳,
186頁)
とい え よ う。
ス ミスは,第 一篇次 元 で,科 学 的分 析 方 法 と現 象 叙述 方 法 とを もっ て,資 本 家社 会 の仕 組 を剰 余価 値 の生産 関係 と三 位 一体 範 式 との二重 構造 と して把 握 し た。 そ の構造 的把 握 を最 も抽 象 的 な理 論 次 元 で お こな った のが,労 働 価値 論 で あ り,投 下 労働 と支配 労 働 との関係 を 考 察 した 価値 論 で あ る。 ス ミスは,支 配 労 働 とい う商 品 の価値 性 格 を 確 定す るた め に,支 配 労働=投 下 労働 の価値 論 か ら出発 して,資 本 と労 働 との直 接的 交換 ・不 等 量交 換 の事 態 のな か には い って ゆ き,資 本 と労働 との継続 的 交換 → 資 本 蓄積 論 で の具体 的展 開 を 展望 した。 こ の こ とは,論 理次 元 の混 同 では な く,彼 の価 値論 の問 題設 定 の仕方 と価値 論 の 構成 とが,価 値 の性 格規 定 を 剰余 価値 論 と資 本 蓄積 論 で遂 行 す る ことを要 請 し
てい るの で あ る。 価値 は,さ らに,構 成 価 格 論 と収 入源 泉論 で 主観 的 に把 握 さ れ る。 この こと.も論理 次 元 の混 同 では な く,そ れは,ス ミスの価 値 把 握 が め ざ
してい る実 践 を示 唆 す る もの であ る。
資 本 家 的生 産様 式 が支 配 的 な社 会 の富 は商 品 であ り,そ の富 の本 質は 支 配労 働 性 に あ り,富 の 原 因は 生 産過 程 で労 働 者 が 投下 す る労働 で あ る。 ス ミスに お い て は,労 働 を文 字 ど う りに 支配す る ものは資 本 で あ り,貨 幣 また は商 品の形 態 を とった 資金 資 本 で あ る。 この賃 金資 本 が そ れに 含 まれ る価 値 量 よ りも大 き
な価 値 量 を支配 して価 値 増 加す る。 だ か ら賃 金資 本 は,特 定 個人 にのみ 利 得 を もた ら して他 の人 々に は損 失 を もた らす よ うな重 商 主 義 的富 で は な く,そ の社 会 全体 に とって絶 対 的 な 富 であ る。資 本 は富 のなか の富,国 富,で あ る。 資 本 的 富 の 支配 労働 性 が 具体 的に確 認 され て い くの は,追 加資 本 が形 成 され て年 々 に拡 大再 生産 が進 行す る場 合 で あ った。 追 加 資 本 の形成,つ ま り資 本蓄 積 は, 年 々に生 産 され る労働 生 産 物 を増 大 させ る。 年 々の 労働 生 産 物 は ス ミスに あ っ
ては年 々の価値 生 産 物 で あ るか ら,資 本蓄積 は賃 金 ・利 潤 ・地代 の価値 諸 部 分
を増 大 させ る。 資 本蓄 積 は社 会 の三 大階 級 の収 入を量 的 に増大 させ る。 した が
って,資 本 家社 会 の一 般 的 利益 は 資 本 的富 の増 大 に あ り,交 換 価 値 の性 格 が 高
次 の論 理 次 元 で全 面 的 に発 揮 され る資 本蓄 積 に あ る。 社 会 を構 成 す る三 階 級 の
特 殊 利益 は そ れ ぞれ の収 入の増 大 に あ るか ら,三 階 級 の特殊 利 益 は 資本 蓄積 が
ス ミス価値論におけ る社会認識の構造(下)
103進展 す る社会 の一 般 的利 益 と調 和 す る。 一方 の利益 に な る ことは 他方 の利益 に な る。 ス ミスの資 本 家社会 はそ の よ うな 階級 調 和 的社 会 を有 機 的に構 成 す る。
各 階級 は社 会 の一 部 で あ るが,そ れ ぞれ の階 級 利 害 に生 き る ことに よって,ま た,三 位 一体 範 式 的 な生活 を生 きる ことに よ って,客 観 的 に社 会 の一 般 的利益
の
と結 合す る。 した が って,資 本的 富 に一 一般 的利益 の 実現 を科 学 的 に見 いだす ご
の
とな く,そ して,社 会 の なか の人 間 は 自己 の利 害 と主観 に生 き る とい う人 間理
解 を堅 固 に もつ ことな く,公 共 的利 益 の名 目を もって政 治活 動 を お こな う階級 は,必 ず,一 般 的利 益 を破 壊 す る私 的利 害 を 内に秘 め てい る。重 商 主義 階 級が それ だ と,ス ミスは言 う。 彼 は重 商主 義 の諸 規 制 に,全 体 利 害 の名 で個 別利 害 を圧 殺 す る法 意 識 をみ い だ し,社 会 の有機 的再 生 産構造 を腐 蝕 させ る もの をみ' いだ す の で あ る。
ス ミスは,資 本 蓄積 論 を媒 介 と した価値 論 と収 入論 に おい て,資 本家社 会 の 構 造 を 知 り,そ のな か で行 為す る人 間 の主観 を叙 述 してや まなか った。 彼 は,
ば
社 会 の 内面 と外 面 を,解 剖 的 知性 と共感 的感 性 とを も って と らえ よ うと した。
彼 に よって示 され て い る この知 性 と感 性,こ の理解 力は,し か しなが ら,い ま だ彼 の眼前 の地 主階 級 の もので も労 働 者階 級 の もので もない。そ して,若 い産 業 資 本 家階 級 の もので もない。 彼は,そ の うえ,イ ギ リス のな か に,ア メ リカ 植 民地 と ヨー ロ ッパ諸列 強 と国際 的 に 対立 して い る イギ リスの なか に い る。 彼 は,旧 帝 国主義 戦争 の七 年 戦争 と民 族解 放 の ア メ リカ独立 戦争 との あい だ にい る。 ス コ ッ トラソ ド人 ス ミスは,ブ リテ ソの一 員 と して,イ ギ リスの危 機 のな か で,自 己 の認 識 方法 とそ れ に よって獲 得 され た経 済理 論 が 国民 の もの に な る こ とを望 んだ で あ ろ ぢ。r国 富 論』 第 一 篇最 後 の叙述 が,そ の ことをわ れ わ れ に 語 りだす 。
「あ らゆ る国 の土地 と労 働 の年 々の全生 産 物 は,ま た は お な じ ことに な る が,そ の年 生 産 物 の全 価格 は,す で に述 べ た よ うに,当 然 に三 つ の部 分 に, 土地 の地代 と労働 の賃 金 と資財 の利 潤 に分 解 し,そ して,地 代 で生 活 す る人
々,賃 金 で生活 す る人 々,利 潤 で生 活 す る人 々 とい う三 つ の異 な る階 級 の 人
々に とって の収 入 を構 成 す る。 … …。
「そ れ ら三 大 階級 の うち の第一 の もの の利益 は,た ったい ま述 べ られ た こ とか ら明 らか な よ うに,社 会 の一 般 的利 益 と厳密 不 可分 に結 び つい て い る。
一 方 を促 進 また は 妨害す る もの は な んで も,必 ず 他方 を促 進 ま た は 妨 害 す る。公 共 が 商業 また は治 安 に か んす るあ る規 制 につ い て審 議す る とき,土 地 の所 有者 た ちは,か れ ら自身 の特殊 階 級 の利 益 を促進 す る 目的 で,少 くとも
じ り
か れ らが そ の利 益 に つい て あ るか な りの知識 を もってい るな らば,そ れ を誤 ま り導 くことは け っ してあ りえな い。 実 際に は,か れ らは あ ま りに も しば し ば こめ一 一応 の知 識 に欠 け て い る。 かれ らは,三 つ の階 級 の なか で,そ の収 入 が かれ らに労 働 も配 慮 も要 費 させ な い唯 一 の階 級 で あ り,そ の 収 入は,い わ ば ひ と りでに,か れ ら自身 のい か な る計 画や 企 画 か らも無 関 係 に,か れ らの も とに や って くる。 か れ らの境 遇が 安楽 で安全 で あ る ことの当然 の結 果 で あ るそ の怠 惰が,か れ らを あ ま りに も しば しば,無 知に させ るば か りで な く,
の ロ
あ る公 的規 則 の諸 結果 を予 測 し理 解 す るた めに 必要 な精 神集 中 を もで きな く させ る。
「第 二 の階 級 の利 益,つ ま り賃 金 で生 活 す る人 々のそ れ は,第 一 の階 級 の 利 益 とお な じ く厳 密 に社 会 の利益 と結 びつい て い る。労 働 者 の賃 金 は,す で に示 された よ うに,労 働 に た いす る需 要 が不 断 に増 大 してい る と きほ ど,あ るいは使 用 され るそ の量が 毎年 か な り増大 して い る ときほ ど,高 い ことは け っ して な い。 社 会 の この真 の 富が 停 滞 的 に な る と,彼 の賃 金 は,す ぐに,彼 が 家族 を養 い うるのに や っ とた りうる ところま で,つ ま り労働 者 の種 族 を維 持 す るの にや っ とた りる と ころ まで,引 き さげ られ る。社 会 が 衰退 す る とき
には,賃 金 は これ 以下 にす ら下 落す る。 ……。 しか し,労 働 者 の利益 は社 会
のそ れ と厳 密 に結 びつ い てい るけれ ども,彼 はそ の 〔 社 会 の〕 利益 を悟 る こ
の コ コ の
とが で きない し,そ れ と彼 自身 の との結 びつ きを理解 す る こ ともで きな い。
彼 の境遇 で は 必要 な情 報を 受 け るた め の 時間 が 残 らない し,そ れ に,彼 の教
育 と習慣 は ジ か ρに 彼 が十 分 な情 報 を 得 た と して も,彼 が 判 断す るの を不 適
任 に させ る よ うな もの で あ る こ とが 通常 で あ る。 そ れ ゆ え,公 共 の審 議 に お
い ては,彼 の意 見 は,あ る特殊 なば あ いを除 けば,ほ とん ど聞 きいれ られ な
ス ミス価値論 におけ る社会認識 の講造(下)
105い し,尊 重 され る こ とは さ らに ない。 そ の特 殊 な ば あい とは,彼 の 叫 びが, 彼 の使 用 者 た ちに よって,彼 のた め では な くか れ ら 〔 使 用 者 た ち〕 自身 の特 殊 な 目的 のた め に,鼓 舞 され 煽 動 され支 持 され るば あ いで あ る。
「彼 の使用 者 た ちは第 三 の階 級 を,利 潤 で生 活 す る人 々 の 階 級 を 構 成 す る。 … …。 しか し,利 潤 の率 は,地 代 と賃 金 の よ うに,社 会 の繁 栄 と ともに 上 昇 した り,社 会 の衰退 とともに下 落 した りは しない。 反 対 に,そ れ は,当 然 に,富 国で は 低 く,貧 国で は 高 い。そ して,そ れ は,最 も急速 に滅 亡 に進
んで い る国で は常 に最 高で あ るdそ れ ゆ え,こ の第 三 の階 級 の利 益 は,他 の 二 つ の階 級 のそれ と同 じ結 びつ きを社 会 の一般 的利益 に た い して もた な い。
商人 と親方 製造 業 者 は,こ の階級 の なか で,通 常 は 最大 の資 本 を使用 し,そ してか れ らの富 に よ って公 共 の尊 敬 の最大 の分 け まえを 自分 た ちに 引 きつ け
、
る二 つの部 類 の人 々であ る。 そ の全 生 涯 の あ いだ か れ らは計 画 と企 画 に従 事
して い るの で,か れ らは,農 村 の郷士 の大 部分 よ りも,し ば しば鋭 い理解 力 を もってい る。 しか しなが ら,か れ らの思考 は,遮 常 は,社 会 の利 益 につ い て よ りも,む しろか れ ら自身 の特殊 部 門 の事業 の利益 に つい て働 か せ られ て い るので,か れ らの判 断は,か りに それ が 最大 の公平 さを もって下 され る と して も(そ れ は い ま まで あ らゆ るば あ いに つ いてそ うで は なか った),そ れ ら二 つ の 目的 の うちで,前 者 に か ん して よ りも後者 に か ん して のほ うが,ず っ と信 頼で き る。 農村 の郷 士 に た いす るかれ らの優 越 性 は,公 共 の利益 に つ い て のかれ らの知識 に あ る とい う よ りも,郷 士 が 彼 自身 の利益 に つ い て もつ
知識 よ りも もっ と十 分 な知識 を かれ らが 自分 自身 の利益 に つい て もつ とい う こ とに あ る。 か れ らは しば しば 彼 〔 郷 士〕 の寛 大 さにつ け こみ,彼 を 説得 し て彼 自身 の利 益 と公 共 の利 益 の双 方 を放棄 させ,そ れ も,彼 の利 益 で は な く か れ らの利益 が公 共 の利益 で あ る とい う非 常 に単純 だが正 直 な確 信 か らそ う させ た ので あ るが,そ の こ とは,か れ ら自身 の利益 に つい て の このす く ・ れ た 知 識 に よってで あ や。 しか しなが ら,ど の特殊 部 門 の商業 や製造 業 に おけ る 商 人 の利 益 も,常 に,公 共 の利 益 とは い くつ か の点 で異 な る し,対 立 す らす る。 市場 を拡 大 し,競 争 を狭 め る こ とは,常 に,商 人 の利益 で あ る。 市 場 を
"・ 酬
拡 大 す る こ とは,し ば しば,公 共 の利 益 に 十分 適合 しうる。 だが,競 争 を狭 め る こ とは,常 にそ れ に 反す るに ちが い な い し,そ の こ とは,商 人 た ちが, か れ らの利 潤 を 自然 に な るで あ ろ うよ りも高 く上 昇 させ る こ とに よ って,か れ ら自身 の利 得 のた め に他 の同胞 市 民 の うえ に不 合 理 な税 を 課 す こ とが で き
る よ うに,役 立 ち うるだけ で あ る。 商業 につ い て のな ん らか の新 しい法 律 ま た は 規制 で,こ の階 級 か ら出 て くる提 案 は,常 に大 きな警 戒 を もって聴 かれ
るべ きで あ り,最 も細 心 の注 意 を も って のみ な らず,最 も疑 い深 い 注意 を も って,長 く慎 重 に調 べ てか らで なけ れ ば,け っ して採用 さ れ る べ き で は な い。 そ の提 案は 次 の よ うな階 級 の人 々か ら出 て くるので あ り,か れ らの利益 は公 共 の利 益 とは け っ して厳 密に は 同一 で ない し,か れ らは一 般 に公 共 を だ ま して抑 圧す る こ とに利 益 を もち,し た が ってかれ らは,多 くの場 合 に,公
ご さ
共 をだ ま して抑 圧 す るそ の双方 の こ とをや って きた ので あ る。」
り リ ヨ リ
主体 形 成 を うなが す ス ミス社 会 認 識。 公 共 的 実践 に うけ いれ られ る こ とを要 求 す るス ミス社 会 認 識 。 彼 の社 会 認 識 は 新社 会 を構 成 す る三 つ の階 級 に主 体 形 成 を うな がす。 価 値 論 は そ の社 会認 識 のた め の原理 的核 で あ る。
伽WN・pP・265‑267.邦 訳,432‑435頁 。