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ス ミ ス価 値 論 に お け る 社 会 認 識 の ・ 構 造(上)

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ス ミ ス価 値 論 に お け る 社 会 認 識 の ・ 構 造(上)

野"沢 敏 治

1問 題にむ か って

2「 未開社 会」 とは なにか 3市 民的交 換関係 の支配 論的性格

4価 値形成 労働 と価値所持 労働一不変 な価値 尺度 の探究

1.問 題 に む か っ て

『国富 論 』 は,本 来 的重 商 主義 国家 主 導 に よ る資 本 家社 会形 成 を 揚 棄 しよ う と した。 そ して,そ れ は,現 実 に そ の姿 を現 わ しつ つ あ った市 民 社 会 と して の 資本 家社 会 を 主体 的に形 成 しよ うと した 書 で あ り,主 体形 成 のた め の客 観的 条 件 を 科 学 的 に解 明す る こ とを つ う じて,社 会 の総 体 的 自己 認 識へ の道 を 用意 し た 古典 で あ る。

ス ミス は,市 民 的人 間 関係 と資本 家的 生 産様 式 が 旧来 の人 間 と生 産 のあ りか たに優 越 す る と判 断 した。 彼 は,前 老 が ヨー ロッパ 諸 国 の平和 的 な経 済 建 設 を 実 現 させ る うえで歴 史的 な進 歩性 を もつ と確 信 し,列 強 間に お け る商業 戦争 の 元 凶 とな った 前 期 的商業 資 本 と重 商 主義 的 産業 資 本を 批判 す る。 そ の批 判 を, ス ミスは,資 本 家社 会 の内面 的構 造 を生理 学 的 に解 剖 す るなか で お こな う。 前 期的 資本 に た いす る資本一 般 の価 値 的優 越 を,経 済 法則 の科 学 的 認 識に お い て 証 明 しよ うとす るの で あ る。 彼 の 『国富 論 』 は ブル ジ ョアジ ー解 放 のた め の実 践 的処 方 箋 で あ る と ともに 市 民社 会 の科 学 的 認識 の書 と して,実 践 と理論 の二 つ の有 効 性 を もつ 。 ところで,世 界 へ実 践 的 に かか わ る こ とに よって 資本 家社 会 にた い す る一 定 の表 象 が 生 じ,そ の表 象 が対 象 の科 学的 分 析 に お い て も理 論 的 に再 生 産 され る。 で は,表 象 的 認識 は社 会 を 客 観 的に 認識 す るのに余 計 で あ

り,科 学 的 認識 に くらべ て劣 った もの であ ろ うか 。

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第28巻 第3号

ス ミスは 資本 家社 会 を 歴 史的 に,そ して科学 的 につ か ま えた 。 しか し,そ の なか で生 き る人 間は 経 済 法則 とは 異 な る現 象界 で生 活 す る。 人は,ま ず,科 的法 則 とは 直 接 には 無 縁 な意 識 と感 情 を もって生 活 す る。 そ の うえ,社 会 に生

、き る人 間 の意 識 はそ の人 の社 会 的 ・階 級 的 立場 に よ って完 全 に規 定 され て しま うもの では な く,ま た,社 会 の 内面 的構 造 の一契 機 と して 閉 じこめ られ る もの で もな い。 資本 家社 会 を の りこえなけ れ ば な らな い歴 史 的 時代 に あ っては,そ の社会 の利 害 当事 者 の個別 的意 識 は,そ の社 会 に たい す る内的 科 学 的認 識 か ら み て虚 偽 意識 で あ る。 しか し,そ の よ うに断 定 す る こ とは ス ミスに与 え られ た 課 題 で は ない。 ス ミスは 産業 革 命 の開 始 期 に あ って重 商 主義 批 判 者 と して登場 す るので あ る。 各人 が み な 自己 の私 的利 害 を追 求 して ば らば らに活 動す るか ぎ

り,資 本 家 的生 産 の過 程 は人 目に 見え ない ところ で進 行 す る。 そ の過 程 に お け る経 済 的 な支 配 ・被 支 配 の関 係 は本 質 分 析 的に の み とらえ られ,そ の過 程 内 で 生 活 す る人 々が経 験 的 に感 じとる こ とは あ って も,そ の経 験 は 孤 立 的 ・偶 然 的 で あ る。 しか も,人 に意 識 を直 接生 じさせ る場 は 同等 な 資格 と権 利 を も った 人 間 ど うしの取 引 と契 約 に お い てで あ る。 この取 引 や契 約 は,奴 隷 や農 奴 とは こ とな って 自由な意 志 を もっ主 体相 互 間に お け る市民 的交 換 関係 で あ る。 この交 換 関係 で意識 され る近 代 的な 自由 ・平等 ・正 義 は,本 質 分析 的に把 握 され た 資 本 家 的生 産 関 係 の支 配 ・被支配 性 を おお い 隠す一 つ の虚 偽意 識 で あ るが,ス スを歴 史 のな か で理 解 す れ ば,そ れ らの社 会意 識 は 新 しい生 活意 識 で あ り,人

々の常 識 とな る まで これ か ら普 遍化 されね ばな らない 生活 信条 で あ る。 ス ミス の社 会意 識 は 利害 当事者 に のみ映 ず る仮 象 で あ り,そ の当事 者 の立 場 に た てば 同感 し うる現 象 的事 実 で あ るが,そ れ は,近 代市 民 社 会 を生 き よ う とす る人 間 でな けれ ば 見 え て こな い仮 象 で あ り現 象 で あ る。 古 い 生活 原理 に生 きる人 間に

とっては お よそ 共 感 しがた い行 為 を,ス ミスは物 語 る。 彼 の現 象叙 述 は,富=

貨 幣 とい う既成 の常 識 に対 立 してお り,重 商主 義 の実定 法 的諸 規制 とを りは ら

った ところで純 粋 に現 象 して くる世 界 の描 写 で あ る。重 商 主 義 的独 占が な く, 資本 と労 働 の移 動 が 自由 な社会 の も とで な らば 当然 に生 ず るで あ ろ うと想 定 さ れた 現 象 的事 実,そ の事 実 を ス ミス は 隈 な く見届 け よ うとす る。 彼 の 「事 情 精

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ス ミス価値 論に おけ る社会 認識 の構造(上)

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通 」 性 とは,既 成 の常 識 に埋 もれ た世 間知 的博 識 を示 す もの では ない。 そ れ は, 人間 が 「事 物 の 自然 的 コース」 の なか で生 き ると きに 獲 得 され る新 しい 歴史 的 社 会意 識 の叙述 で あ る。 自由 ・平等 ・正 義 の意 識 は現 実 の重 商 主 義 体制 下 に あ っては 必ず しも自明 な もめ では な く,こ れか ら確 固 と作 られ てい かね ば な らな

い 主 体 的意 識 で あ る。 しか も,重 商 主 義体制 下 で は,所 有 権 の安全 とい う法 意 識 の確 立 を前 提に した 自由貿 易 は,一 つ の ユ ー トピアで さえ あ る。

個 人 の主 観 や動 機 の み を もって,そ れ らが織 りなす 客 観 的結 果 を 説 明す る こ とは で きない。 この こ とは 言 うまで もない 。 だ が,主 観 的認 識 は経 済 学 以 前 の もの で,科 学 の対 象 に あ たい しない とか たづ け られ る もの だ ろ うか。 お もい お もい に行 為 しあ う当事 者 の意 志 ・欲 望 ・価 値 と美 の意 識 そ れ らは,資 本 家 的 生 産 の 内面 的 関係 か らあ る時 に は最 も近 く,あ る時に は最 も隔 た った距 離 で現 象す る独立 的世 界 で あ って,歴 史 法則 を生 きるた めに歴 史 の舞 台 で演 じる歴 史

的人 格 の世 界 であ る。 市 民 的生 活意 識 を生 き る こ とに よって,他 の いか な る歴 史 社 会 に も見 られ なか った 高 い生 産 力 と富裕 を保 障 す る資本 家 的 生産 過 程 が,

内面 的 に構 造 化 され てい く。作 用 原 因 と しての人 間は意 図せず して 目的 原因 の 社 会 を作 りあ げ て しまい,作 用 原 因 の経 験 世 界 を つ うじて眼 に 見え ない歴 史 法 則 は 現 象す る。 しか も,社 会 形 成 の主 体 とな る人 間の主 観 は た ん な る本能 的 利

己心 や 恣意 では な く,分 別 と目的意 識 を もつ。 そ れ は,全 体利 害 の名 目を前面 に 出 した重 商 主 義的 法意 識 に と らわれ る こ とな く,自 己 自身 の利 害 の所 在 を 明 確 に 自覚 す る 自由 な意 識 で あ る。 資 本 と労 働 とを 自由に競 争 させ る こ とに 自己 の利害 を 見い だ した者 に と っては,重 商 主 義 の法 規 制 は政 治 的 圧制 よ りも もっ と抑圧 的だ と感 ず るほ どの もの で あ る。 重 商 主義 の法 規制 か らみ て反 社 会 的 な 自由競 争 は,し か しなが ら,新 しい社 会 の一 般 利 害 につ なが る。 市 場 に た いす る供 給 独 占か ら消 費者 を解 放 して,安 価 で豊富 な生 産物 を消 費 者 に供給 す る こ とに生 産 の 目的 を お く生 産老 の 自由 は,社 会 にた い して厳 しい責 任 と義務 を と もな う。 この意 味 で,自 由は 個 人 利害 と社 会利 害 との関連 を常 に 自己 に 問 う社

会 的 な意 識 で あ る。 この意 味 で の 自由だ か ら こそ,ス ミスに お い て,個 人を 社 会 的 に統 治 す る道 徳 的 力 の問題 が,そ の社 会 的 陶 冶 を現 実 の ものに させ る制 度

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第28巻 第3号

の問題 と と もに提 起 され るので あ る。 主体 的変 革へ の意 識 が あ って制 度 も制 度 と して問 題 に な り うる。

現 実は,経 験 的 に認識 され る生 活 意 識 と科 学 的 に 認識 され る客 観 的秩 序,こ

の両面 を もつ。 ス ミスに とっては,現 象叙 述 は,形 成す べ き社 会 の全 的理解 の た め に,本 質 把 握 と等 価 値 に お かれ る。 資本 家 社会 は そ の なか で生 き る人 々の 意 識 に おい ては 自由 ・平 等 ・正 義 の市 民社 会 と して形 成 され る。 市民 社 会 と し

ての 資本 家 社会 とい う現 実 を生 きた ス ミスは,そ れ ゆ え,対 象 認識 に おい て科 学 的分 析 方 法 と現 象 叙述 方 法 とを採 用 せ ざ るを え なか った。 彼 は そ の現 実 を忠 実 に頭 脳 に反映 さ津 る。 この歴史 的現 実 に忠 実 で あ った が た め に,ス ミスに は い わ ゆ る 「学説 の矛 盾」 が 存在 す るので あ る。 後世 か ら現象 記 述 的 とされ た支 配 労働 説 ・価 格構 成 論 ・収入 源 泉論 が,本 質 把 握 とされ た投 下 労 働 説 ・価 値 分 解 論 ・剰 余価 値 源 泉 論 とな らんで叙 述 され るの も,そ のた め で あ る。 ス ミスに お け る学 説 の 矛盾 と範 疇 の両 義性 は 彼 の頭 脳 の非論 理 性 を示 す ものでは ない。

われ わ れ は,む しろ,論 理 の外 見的 な混 乱 と矛 盾 とに,現 実 にた いす るス ミス

の驚 くほ ど柔 軟 な思考 を 見 るべ きで あ り,歴 史=社 会 形 成 の魂 と学 問 的誠 実 さ を感 じとるべ き であ る。 問題 は,ス ミスの学 説 と範 疇 規 定 の矛 盾 を突 くこ とで は な く,ま た,相 反す る論理 の一 方 を とって他 方 をす て る こ とで もない 。相 反 ナ る論理 を並 存 させ うるス ミス の社 会 認識 上 の視 座 と構 造 を 再構 成す る こ と, そ して,こ の再 構 成 のな か で在 会形 成 のパ トス とモ ラル を ス ミスか ら積 極 的に 発 掘 す る こ と,こ れ が課 題 で あ る。 ス ミスを 内在 的 に理 解 す る こ とに お い て, わ れ われ は彼 が 認 識 対象 と した現 実 そ の もの を知 るで あ ろ う。

課 題 に 答 え るた め に,私 は,『 国 富論 』 第1篇 全 体 を一 つ の独 立 的世 界 とみ な し,そ の うち の労 働価 値 論 に 検討 の 中心 を お く。 そ して,価 値 論 とそ の論理 的 前提 で あ る分業 ・貨 幣(→ 実 は 商 品)論 との 関連,価 値 論 とそ の具 体 的現 象 で あ る価 格 構 成 ・収 入論 との関連 を視 野 に いれ る。 そ の うえで,私 は,第1篇 最終 第11章 地代 論 の結 論 にお い て,資 本 家社 会 を 市 民社 会 と して形 成す る階 級 的個 人 の社会 的 自己意 識 を問 題 とす る。 価値 論 を検討 の 中心 に据 え るのは,資 本 家社 会 に お け る経 済 法則 の最 も抽 象 的 な論 理 次 元 で具 体 的 な人 間が叙 述 され

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ス ミス価値論 におけ る社会認識 の構 造(上)

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るほ か ない か らで あ る。 ス ミスに おい ては人 間が生 きい き と躍 動 してい る と言

われ るが,そ の こ とは,経 済 学 的範 疇 を鋳 込 む理 論 的作 業 の なか では じめ て感

ご り

得 さ れ う る も の で あ る。 以 下,私 は,紙 幅 の 許 す か ぎ りで 以 上 の こ とを 展 開 す る。

2.「 未 開 社 会 」 と は な に か

ス ミス労働 価 値 論 の性 格 を知 るた め には,価 値 論 が 妥 当す る とされた 未 開社 会 の性 格 を知 らね ば な らな い。 未 開社 会 を文 明社 会 に先 行 させ る こ とは どの よ

うに して 可能 か。 この こ との解 明は,資 本 家 社会 分 析 の 出発 点 で あ る商 品 の価 値 が ス ミスに とって本 来 な んで あ ったか を 理解 す るた めに,ま た,価 値 論 と剰 余 価 値 論 との内面 的 関係 を つか む た め に,必 要 で あ る。

ス ミスは,未 開 社会 の共 同体 的性 格 を,文 明社 会 と歴 史 的 に対 比 す るな か で 経 験 的に 知 って い る。 狩猟 ・漁 労 の未 開社会 では 種 族 成 員は 種 族全 体 のた め に

 ラ

使 用価 値 を生 産 す る 「有用 労働 ・J者で あ る。 したが って,こ の未 開社会 には商 品交 換 に も とつ く社会 的分業 が存 在 しない。 だが,ス ミスが理 論 的視 野 に取 込 ん だ ものは,̀歴 史 的 に 実在 した 未 開社 会 では な い。 ス ミスに とって,個 別 的労 働 を社 会 的労 働 に させ て生 産 力を 増大 させ る唯 一 の経 済体 制 は,商 品交 換 に も とつ く社 会 的分 業 で あ るか ら,共 同体 の共 同労 働 は,個 々人 が 孤立 的 に 自然 に

働 きか け て 自給 自足 的活 動 を お こな うもの とみ な され る。

原 稿 受 領1977年11月4日

(1)私 が 批 判 的 に 摂 取 した ス ミ ス研 究 は わ が 国 の も の,高 島 善 哉,内 田 義 彦,久 留 間 鮫 造,羽 鳥 卓 也 の 諸 氏 の 仕 事 で あ る。 な お,古 典 経 済 学 の 意 義 に つ い て は 平 田 清 明

「物 象 化 と 三 位 一 体 範 式 ㈲ 」(r思 想 』576号,1972年6月)を,ス ミス 価 値 論 の 論 点 整 理 に つ い て は 和 田 重 司 「「ス ミス 価 値 論 」 の 謎 と市 民 社 会 の 思 想 体 質 」(『 経 済' 学 論 纂 』 第17巻 第1・2・3合 併 号,1976年5月)を 参 照 さ れ た い 。

(2)Aninquiryintothenatureandcausesofthewealthofnations,VoL

1,ClarendonPress,Oxford,1976,(以 下WNと 略 す)p.10.邦 訳 頁 は 次 の も の で 表 示 す る 。 大 内 兵 衛 ・松 川 七 郎 訳 『諸 国 民 の 富 』1,岩 波 書 店,1969年,62頁 な お,訳 文 と,引 用 文 中 の 傍 点 お よ び 〔 〕 は 私 の も の で あ る 。

r国 富 論 』 は 理 論 的 に み て 第1版,第2版,第3版 の あ い だ で 注 目す べ き 異 同 が あ る 。 さ しあ た り,羽 鳥 卓 也 「ス ミス に お け る 「価 値 の 源 泉 」‑r国 富 論 』 第 二 版 の 改 訂 個 所 を め ぐ っ て 一 」(『三 田 学 会 雑 誌 』67巻6号)が 問 題 提 起 を し て い る の で 参 照 さ れ た い 。

(3)cf.,WIV,p.276.邦 訳,445頁 。同 じ論 法 で ス ミス は 群 を な す 動 物 を 独 立 個 体 に 分 解 す る 。 第1篇 第2章 の 交 換 本 能 論 を 参 照 。

o

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第28巻 第3号

未 開社 会 の この個 人 は す で に歴 史 的実 在 物 では ない 。 しか もス ミスは 未 開 の 個 人 に分 業 的生 産 者 と商 品交 換 者 を み い だす。 萌 芽 的に。 未 開 の個 人は 最 初 は 偶然 的 に 「自己 労働 の生 産物 の うちで 自己 消 費 を こえ る余 剰 部 分」 を生 産 し, そ の 余剰 労 働生 産物 を商 品 と して他 の余 剰 労働 生 産 物 と交 換 す るこ とに 自己利 害 を意 識 す るよ うに な り,し だ い に商 品生 産老 へ 成 長 して い く。 ス ミスは,共 同体 成 員 の共 同労働 生 産 物 に 「交 換力 能確 実 性 」 とい う商 品性 格 を植 え こん で

い るので あ る。歴 史 の産 物 で あ る個人 と商 品 が歴 史 の端 初 に もち こ まれ る。 彼 の未 開社 会 は,商 品生 産発 展 の芽 を は じめか らふ くんだ非 歴 史 的 社会 であ る。

ス ミスが想 定 した未 開 社会 は 非 実在 的 な商 品生 産社 会 で あ った。 この こ との 確 認 と ともに注 意 せ ね ば な らな い ことは,彼 の未 開社会 は 資本 ・賃 労働 関 係 に よ って潤 色 され て い るこ とで あ る。 リカー ドウの よ うに未 開 社会 に 資本 と資 本 家 を み い だす こ とは な いが,資 本 蓄 積以 後 の社 会 で妥 当 す る行 為 が ス ミスに よ って発 見 され る。第 一 に,い わゆ る単 純 商 品 生 産 の論理 次 元 で な され るべ き複 雑 労 働 の単 純 労 働 へ の還 元 を,ス ミスは,資 本 家 社会 で の賃 労 働 にた い してな さ

れ る賃 金評 価 と 「同種 の あ るもの」 とみ なす 。第 二 に,彼 は,人 間 と 自然 との 物 質 代 謝過 程 を 資本 ・賃 労 働 関係 に擬制 させ る。 自然 に働 きかけ て生活 に必 要 な ものを 獲得 す る人 間労 働 は,賃 労働 者的 な 「労 苦 と煩 労」 で あ り,自 然 に対 立 す るた ん な る労働 と しては生 産 の客体 的条 件 か ら分 離 され た 裸 の労 働 であ る。

そ して,自 然 か ら獲 得 す る労働 生 産物 は,賃 労働 者 と して の人 間 にた い して 彼 の苦 役 労 働 と交 換 に 資本 家 と して の 自然 か ら支 払 われ る賃 金 で あ る。 と ころぐ し

で,自 然 との物 質 代 謝過 程 に おけ る人 間 は,未 開の商 品生 産 社会 に あ ってほ, 自己 の労働 生 産 物 を全 額 所 有 す る 「労 働 者」 ド つ ま り独 立 的商 品生 産者 で あ る。 したが ・)て,第 三 に,こ の独 立 商 品生 産 者 の性 格 が分 析 されね ば な らな い。

ス ミスは先 資本制社会を 資本制社会か ら区別 す る決定的指標 を 「労働 の全生

(4)cf.,VVN.pp.27‑28.邦 訳,83‑84頁 。, (5)cf.,vprN.p.65。 邦 訳,131頁 。

(6)cf.,VVN.PP.47‑48.邦 訳,105‑106頁 。 久 留 間 氏 は マ ル ク ス 『剰 余 価 値 学 説

史 』 を 基 礎 に し た う え で,ス ミ ス を 内 在 的 に と ら え か え し て い る 。 玉 野 井 芳 郎 氏 と

の 共 著r経 済 学 史 』(岩 波 書 店,1954年)第3章 が 卓 抜 で あ る 。

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ス ミス価値 論た おけ る社会 認識 の構 造(上)53

産 物 が労 働 老 に属 す る」 こ とに お き,こ の有様 を 「事 態 の本 源 的状 態」 と名 づ け た。 この状 態 の も とでは,労 働 者 自身 が 資本 と土 地 を分 散 的に所 有 す る独 立 的生 産者 で あ って,労 働 と所 有 は 結 合 してい る。 資本 と賃 労 働 が 未分 化 で,労

シ ン グ ル

働=所 有 の本 源 的社 会,こ れ は ス ミス に とって の近 代 化 の起 点で あ る。 「単 独 の独 立職 人は,彼 の仕 事 の 原 料を購 買 し,か つ そ れ 〔仕事 〕 が完 成 され る まで

マ ス タ ド ワ   ク マ ン

彼 自身 を扶 養 す るの に十 分 な 資 財 を所 有す る」 。 「彼は 親 方 で あ り,か つ 職 人 で あ って,彼 自身 の労 働 の全生 産物,す なわ ちそ れ 〔労 働〕 が 費 され る原料 に そ れ 〔労働 〕 が付 加 え る全価 値 を享 受 す る。そ れ 〔労働 の全 生 産 物,ま た は全 価 値 生 産 物〕 は,通 常 は二 つ の 異な る収 入で,二 人 の 異 な る人 物 に属 す る もの,

 り

す なわ ち 資 財 の 利潤 と労 働 の賃 金 を含 む 。」 歴 史を超 え て歴 史の始 源 に も

ち こ まれ た もの は,本 源的 蓄 積 の過 程 で消 滅 して い く歴 史的 実在 た る独 立生 産 老 で あ る。上述 の ス ミスの文 言 は,労 働 と所 有 がす でに分 離 して い る資本 家社 会 を 前提 と した 分析 で あ る。 収入 諸範 疇 がす でに分 離 独立 して存在 す る資本 家 社 会 の眼 を も って未 開社 会 の労働 生 産 物 を 観察 す れ ば,そ れ は,す べて労 働者 の

ご  き

もの だ か ら,す べ て労働 の賃 金 一 「自然 的賃 金」 か ら成 る。 だ か ら,未 開 社 会 の商 品 の価 値 は 資 本 ・賃 労 働 関係 を 内 包 させ てい る。 同様 に,未 開社 会 の商

品生 産 者 は 資本 家 と して の 自己 が賃 労 働者 と して の 自己 に対 す る関 係 を お のれ 一 身 に もつ二 重 人 格 者 で あ る。 この意 味 で ,ス ミスに おけ る未 開 の独 立個 人 は

あ る条 件 さえ整 えば 外 的 に階級 分裂 す る こ とを秘 めた 論理 的個 人 で あ り,ま た, 未 開 の単 純 商 品生 産 社会 は労 働 と所 有 が 外 的 に分 裂 す る可能 性 を 潜 ませ た 論 理 的 社会 で あ る。 ス ミスが面 とむ か った対 象 は,も ち ろん,収 入 と人 格 が階 級 的 に 分 裂 して い る資本家 社 会 で あ る。 だ が ス ミスは,未 開 社会 に,資 本 家社 会 へ と

自己 実現 しなけ 治 ばや まな い 自己 の本源 を 認 知 した ので あ る。 この 資本 家 社 会

を認 識 対 象 と して明確 に照 ら しだす た めに設 定 され た のが,歴 史 の始 源 に まで 遠 ざけ られ た潜 勢 的 資 本家 社会,つ ま り独立 商 品 生 産者 社 会 であ る。 始 め に す

(7)VVN,p.82.邦 訳,157頁 。

(8)(9)VVN,p.83.邦 訳,159‑160頁 。 「単 独 の 」singleは,階 級 的 展 開 を 内 包 し た 単 一 で あ る 。

O◎WN,p+82.邦 訳,157頁 。

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64商 討.究 第28巻 第3号

べ て あ り。 こ の 論 理 的 操 作 を ス ミス の 頭 脳 の な か で お こ な わ せ る も の,そ れ こ

く  ラ

そ が,市 民 社 会 と して 資本家 社 会 を形 成 させ る現 実そ の もの で あ る。

3.市 民 的交 換 関係 の支 配 論 的性 格

労働 価 値 論 が 妥 当す る とされ た未 開 社会 は,資 本家 社 会 を 把i握す るた め に仮 構 され た商 品生 産社 会 で あ った。 そ れ で は,こ の論理 的 始 源 に おか れ た社 会 の 内 的 関係 は いか な る ものか。 商 品 は 孤立 しては 存在 で きな い。 そ れ は交 換 可 能 性 を も った 商 品 と して,他 商 品 との交 換 関係 に あ る社会 的 存在 であ る。 ス ミス 価値 嵩剰 余 価 値 論 の構 造 的 把握 をお こな うま えに,彼 に お け る交 換 関係 の独 自 な性 格 が 明 らか に されね ば な らない。 交 換 関 係 は支 配 ・被 支 配 関 係 とは お よそ 無 縁 だ ろ うか,こ れ が 問題 で あ る。論理 的始 源 の社 会 成 員 は全 員 が商 品生 産 者 で あ り,商 品 の所 有 権 者 と して平 等 の 資格 で相対 す る商 品 交 換 主体 であ る。 ス ミ

スは この独 立 市 民 的 主体 を 「商 人 」 と言 い,商 品 交 換を媒 介 と した 社会 的分 業

ご  ひ

の社 会 を 「商業 社会 」 と定義 す る。 「商業 社会 」 は階 級 社会 では ないか ら階 級 的支 配 は存 在 しない。 しか し,支 配 そ の ものは 存 在 しない の で は な く,支 配 の あ りよ うを変 えてそ れ は 存在 す る。 資 本家 的支 配 ・被 支 配 へ と自己 顕現 させ ね ば な らな い商 人 的 ・市 民 的 な支 配 関 係 が存 在 す る。 ス ミスは 自由 ・平等 ・.所有 の市 民 的楽 園に 他 人支 配 の最 も抽 象 的 な基 礎 を お く。 この 基礎 づ けを,彼 は, 市 民 的 「商 業 社 会」 に おけ る根 本範 疇 一一 交 換価 値,所 有,労 働 の概 念 把握 に

おい てお こな う。

労 働 と所 有 の結 合 してい る 「本源 的 社会 」 では,交 換 は 直 接 には 商 品 と商 品

⑪ ス ミス 歴 史 把 握 の こ の 自然 的 性 格 に つ い て は,内 田 義 彦r経 済 学 の 生 誕 』(未 来 社,1962年)の 後 編 一 ・二 が 古 典 的 解 釈 で あ る 。 第2章 「分 業 を ひ き お こ す 原 理 に つ い て 」 は,言 語 論 と の 関 連 で 注 目す べ き と こ ろ で あ る 。 な お,ス ミ ス 未 開 社 会 を 資 本 家 社 会 分 析 の た め の 論 理 的 端 初 で あ る と 内 在 的 に 理 解 して い る の は,羽 鳥 氏 で あ る 。 「ス ミス の 価 値 論 と 「初 期 未 開 の 状 態 」 」(r三 田 学 会 雑 誌 』67巻10号,19 74年10月)

ス ミ スは 未 開 を 文 明 よ り も劣 っ た 野 蛮 と み て い る の で は な い 。 む し ろ,彼 は 「未 開 」3avage,rudeに 文 明 の 始 源 を,文 明 と して の 自 己 を 発 見 して い る 。

⑫cf.,WN,P.37.邦 訳,93頁 。'

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ス ミス価値論におけ る社会認識の構造(上)

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との 交 換 で あ り,資 本 に よる労 働 力商 品 の直 接 的購 買 と,資 本 に よる労 働 力支 出の直接 的支 配 とを示 す 資本 と労 働 との交 換 は,労 働 と所 有 が分 離 す る資本 蓄 積 以降 で の事 態 で あ る。 ス ミスに とって,あ る商 品 は他 の商 品 をわ が ものに す るた め の手 段で あ り,あ る商 品 と他 商 品 との交 換 は,交 換対 象 とな る他 商 品 を 購 買 す る こ とに よ って そ の他商 品 の生産 に 投 下 され た 他人 労働 を支 配 す る こ と

であ る。 自己労 働 の産 物 で あ る自己商 品を 他 人商 品 と交 換 す る こ とに よ って, 他 人商 品 の背後 にあ る他人 労 働 を 間接 的 にわ が もの とす る。 だ か ら,商 品 を商 品 た ら しめ る交 換価 値 は 商 品所 有 者 に もた らす ところ の他 商 品 お よび 他 人 労働

ご ゆ

に た いす る経 済 的支 配 力 で あ る。 そ して,自 己 労働 に も とつ く労 働生 産 物 の所 有 は,そ の労 働 生 産 物 の譲 渡 を 媒 介 と して,他 人 労働 の領 有 に等 し くな る。平 等 な 私 的所 有権 老 間 で お こなわ れ る公 正 な等 価 交 換,こ れ が市 民 社会 に おい て

ご ね

他人を 自分の意志に服従 させ る唯一 の方法 であ る。市民社会 の表面 では商人は

相 互 に相手 を一個 の契 約 主 体 と して認 め あ う。 他 方 で,市 民 社 会 の 内面 では労

働 に よ る労 働 の支 配 が進 行 す る。等 価 交 換 め主体 が お こな う労 働 は,も はや, 自然 に た い して孤 立 的 にふ る ま う行 為 では な く,自 己 と他 人 に た い して 私 的 で

排 他 的 な行 為 とな る。 そ れ は正 常 な生 命活 動 では な く,資 本家 と して の 自己 が

ご  り

賃 労 働 者 と して の 「自己 の肉 体 を労 苦 させ る」 苦役 労 働 で あ る。 同時 に,自 己 自身 に た いす る この苦 役 労働 は,他 人 にた い す る強 制 労働 で あ る。 い ま,A商 晶 とB商 品 とが交換 され るとす る。A商 品生産者は 自分 ではB商 品を生産す る

ご  り

必要 が な い か ら,A商 品生産 に投 下 した労 働 と等 量 の労働 を 自分 で は 「節約 」

ご の

で き,そ れ と等 量 の労 働 をB商 品生産 者 に 「賦 課」 し うる。 自己 消 費以 上 の余 剰 生産 物 の所 有 は,他 人 の余 剰生 産 物 との交 換 を つ う じて,他 人 に 対 す る苦 役 労 働 の強制 に結 果 す る。

⑬ 第1篇 第4章 に お け る交 換 価 値 の 定 義(本 稿 注 鋤 に あ た る 引 用 文),第5章 冒 頭 に お け る価 値(本 稿 注 ⑳)の 定 義 を み よ 。 ・

⑭ ス ミ ス は,正 当 に も,所 有 権 を 前 提 と した 近 代 的 契 約 を,人 が 「か れ ら 〔同 胞 〕 を 自分 の 意 向 に あ わ せ て 行 為 さ せ る 」 支 配 と み る 。 言 葉 も,商 業 社 会 で は,人 間 的 必 要 か ら発 せ られ る も の で は な く,他 人 の 利 己 心 に 訴 え か け る も の に 変 質 し て い る。

cf.,WN.pp.25‑27.邦 訳,81‑83頁 。 、

⑯ ⑯ ⑰VVN,p.47.邦 訳,105頁 。

(10)

56」

第28巻 第3号

市 民社 会 に お け る労働 と所有 は,商 品生 産 者 が 相互 に他 を一 方 的 に支 配 し よ うとす る力学 的 関係 で あ る。 この市 民 的 な支 配 ・被支 配 の関係 を 経 済生 活 の最 抽 象 に お い て表現 す るもの,そ れ が商 品の 「価 値」 で あ る。 「いか な る商 品で も,そ れ を所 有 し,そ れ を みず か ら使 用 または 消 費 す るつ も りが な く1そ れ を 他 の諸 商 品 と交 換 す るつ も りの人 に とっては,そ の商 品 の価 値 は,そ れ が 彼 に

ご  ラ

購 買 また は支 配 させ うる労働 量 に等 しい。」 それ ゆ え,ス ミス価 値 論 の次元 で注 意 す べ き こ とは,商 品所 有 者 の商 品 は,他 人労 働 を 間接 的に 購 買 し うる も

の と しては 「労 働」 を直 接購 買す る資 本 に変 貌 し うる性 格 を源 初 的 に も ってい る こ とで あ る。 また,購 買 対 象 とな る商 品 の背 後 に あ る観 念 的 な労 働 は,客 体

的生 産 条 件 か ら引 き離 された 主 体 的労 働 力能 ・労 働 力 商 品 とな って は じめ て人 自淀境豪}る 受働 とな ることであ る。市民的交 換関係の内面 において括握 され た価 値 め支配 労 働 性,そ れ は 資 本家 社 会 に おけ るそ れ の具 体 的現 象 を みず か ら 必要 とす るで あ ろ う。

未 開 の独立 小 生 産 者社 会 は,文 明 の資 本家 社会 を 自己解 剖す るた めの非 歴 史 的 ・論 理 的 社会 であ った 。 そ して,未 開 の市 民 的交 換 関係 は 間接 的 な支 配 ・被 支 配 の関 係 で あ った。 では,価 値 の支 配 労働 性 の根 拠 は ど こに あ り,そ の根拠 は いか な る表 現 を と らざ るを え ない か。 価 値 論 に お い て ス ミスが みず か らに課

した 問題 は これ であ る。

価 値 論 は剰 余 価 値 論 と論理 次 元 を異 にす る。 しか しな が ら,論 理 的区 別 の本 来 的意 義 を つ かむ た め には,両 者 を分 け た うえ で両 者 の連 関 を積 極 的 に と りだ す こ とが重 要 であ る。r国 富 論 』 の価 値論章 が剰 余価 値 論章 へ 展 開 す る契 機 を みつ け,後 者 に お い て保 持 され る前老 を お さえ る こ とが,こ の 古典 の体 系 構 成 と社会 認識 を理解 す るポ イソ トとな る。 ス ミス の市 民 社会 認 識 は 価値 論 章 第5 章 で の不 変 な価 値尺 度 論 で集 約 的に 表現 され て お り,彼 の 資本 家 社会 認識 は 剰 余 価 値 論章 第6章 での価 格 構 成 論 で特徴 的に 表 現 され てい る。 まず 第5章 そ の ものに 内在 して み よ う。 自由 ・平 等 ・所 有権 とい う交 換 関 係 的範 疇 に お い て支

⑱VVN,p.47.邦 訳,105頁 。

(11)

ス ミス価値 論に おけ る社会 認識 の構造(上)

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配性 が発 見 され て お り,こ の発 見的 認識 が あ って,資 本 蓄 積 と土 地所 有 以降 の 資本 家 的生 産 の も とでは 商 品 と商 品 との等 価 交 換 は いか な る現 わ れか た を す る か とい う第6章 の課題 設 定 そ の もの が可能 だ か らであ る。

4.価 値 形 成 労 働 と価 値所 持 労 働一 不 変 な価 値 尺 度 の探 究

ス ミス 自身 が言 明 した価 値 論 の課題 とそ れ の解 決 方 法 は な にか 。'価値 の 本質 が 問わ れ る段 階 まで にお い て,彼 は,商 品を購 買す る力能 を 貨 幣 に のみ 認 め た 重 商 主義 を 批 判 し,商 品 それ じた い に直 接 的 交 換 可能 性 とい う貨 幣性 格 が伏 在

じ  ヤ

す る こ とを 認 め てい た。 商 品を商 品た ら しめ る ものは使 用 価値 で は な く,「 あ

  ヤ

る特 定 の 物 の所 有 が もた らす ところ の,他 の諸 財 貨 を購 買 す る力」、 つ ま り交 換価 値 で あ った 。購 買 力能 を もつ 商 品が社 会 認識 のた め の分 析 的 出発 点 で あ り,

ス ミス が究 明 のね らい と した こ とは,鋳 貨制 度 の もとで商 品 が全面 的に 交 換 さ

れ うる文 明社会(→ そ の極 北 は 資本 家社 会)で の商 品交 換 を 規制 す る法 則 で あ った 。 第4章 貨 幣 論 の 末段 で彼 は言 う。 「す べ ての文 明国 民 にお い て貨 幣 が商 業 の普 遍 的用 具 に な った のは この よ うに してで あ り,そ れ の媒 介に よって あ ら・

で  ひ

ゆ る種類 の財 貨 は売 買 され,ま た 相互 に交 換 され る。」 続 け て彼 は 言 う。 「 人 々が 財 貨 を貨 幣 とあ るい は相 互 に交 換 す るば あい に,自 然 に守 る規 則 は な に

か とい うことを,わ た しは これ か ら続 け て調 べ よ う。 これ らの規 則は,財 貨 の

ご  り

相対 価 値 また は交 換価 値 とよば れ うるものを 決定 す る。 」 商 品 と商 品 との偶 然 的 な交 換 比 率 を 内 的に 規制 す る ものは なに か,こ の問題 を彼 は 三 つ の方 向か ら順 序 をた てて解 明 しよ うとす る。 第一,交 換 価 値 の真 実 の尺 度 は なに か一 (第5章)。 第 二,価 値 を構 成す る諸部 分 は なに か一(第6章)◎ 第 三,商

紙 幅 に制 限 が あ るた め こ こで は 展 開 で き な いが,分 業 論 と価 値 論 に は さ まれ て 従

来 か ら閑却 され てい る第4章 貨 幣論には,再 検 討 され るべ き論点が多 い。 ス ミス貨 幣論は第4篇 の重商主 義的富t貨 幣観批 判 とかかわ らせて読 まれ るべ きで あ り,労 働生産物 の商品性格 を理解 す るのに豊 かな素材 を提供 してい る。

⑳WN,p.44.邦 訳,102頁

②1舩VVN,P.44.邦 訳,102頁

(12)

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第28巻 第3号 の市 場 価格 と 自然価 格 との関 係 は ど うな るか 一(第7章)。

ス ミスは 商 品生 産 の発 展 が近 代 的 な 資本 家 的生 産 を もた らす こ とを 事 実 上知 って いた 。 だ か ら,資 本家 的 生 産 関係 を分 析 す る第6章 の前 に市 民 的生 産 関係 を分 析 す る第5章 が 配置 され る。 この第5章 で,彼 は 交 換価 値 の実体 を労働 に 発 見す るので あ るが,そ れ じた い では 価値 を もた ない価 値 創造 労 働 を価 値を も つ 労働 と して把 握す る。 これ が 本 質 と現 象 を一 体 的 につ か む ス ミスの眼 で あ る。

交 換価 値 の源 泉 ・内在 的尺 度 を経験 的 な外在 的尺 度 にお い て と らえ よ うとす る か ら,必 然 的 に 彼は 不変 な価 値尺 度探 究 の混 迷 に踏 みい る。 彼 を して迷 わ せ た もの,そ れ は,価 値 形 成労 働 と,資 本 ・賃 労働 の交 換 関係 では じめ てそ の意味 を もっ価 値 所 持労 働 とを分 裂 させ て,後 者 の交 換 的現 象 にお い て前 者 の生 産 的

実体 を 人 の頭 脳 に 意識 させ るよ うな社 会 そ の もの で あ る。 第6章 の資 本家 社会 にお け る商 品 の価 値 規定 が投 下 労 働 一 本槍 でな くな るのは,す でに,第5章 いわ ゆ る単 純 商 品生 産社会 にお い て,生 産 にお け る投 下 労働(価 値)が 交 換に お け る支 配 労 働(交 換 価 値)と して意 識 され てい た か らで あ る。 ス ミス価 値 論 は,さ らに第6章 価 格 構 成 論 と第7章 自然価 格 論 にお い て も究 明 され る。 この 章 別 編成 は,資 本 家社 会 の構 造 認識 と資 本 家社 会 での社 会 的生 活 意識 の展 開 と

を もつて,彼 の価 値 論 が ひ とまず 完 結 す る こ とを 意 味す る。 ス ミスに とっては 共 感 あ るいは 反感 の対象 とな る経 験 的 意識 が社会 認 識 に とって不 可欠 の素 材 な の であ る。 科学 的 認識 と表 象 的 認識 とを抽 象 的 に 分離 して,前 者 のみ を社 会 認 識 に とっ て正 しい 方法 だ と断 定 す る こ とは,ス ミス理 解 と しては一 面 的 で あ り, 資本 家 社会 が市 民 社会 と して形 成 され てい く歴 史を十 分 に と らえ る こ と もで き ない だ ろ う。 た とえ ば,前 述 した よ うに,支 配 労働 論は市 民 的 平 等 の支配 論 的

まゆ

性 格 を把 え るの に有 効 で あ った。 そ してそれ は,後 段 で展 開 す るが,資 本 家社

参照 。 「支配 労働 とい う概念 自体,も ともとは,資 本主義 に固有 の資 本 とく 労働〉

との交 換 とい う事 態 を 前 提 に しては じめ て成 立 す る概 念 で あ る。 と ころが,ス ミス はそ の概念 を密輸 入 して未開社会 の商品価値 を説 明 しよ うと してい るわけであ る。」

(羽鳥卓也r古 典派経済学 の基本 問題』未来社,1972年,54頁),藤 塚知 義 「『国富 論』 におけ る労働価値 論の成 立」(r国 富論』 の成 立,1976年,岩 波書店所 収。179 頁 お よび182頁 の注(6)を参照)こ の正 しい指摘 は,ス ミスが 分析 しよ うと した未 開 社会(→ 市民社会)の 性格 そ の ものを明 らか にす る作業 におい て,生 か されね ばな

らないだ ろ う。

(13)

ス ミス価値論 におけ る社会認識 の構 造(上)

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会 にお け る階級 的 搾取 を事 実 確 認 して,支 配 ・被 支 配 の 資本 ・賃 労働 関 係 が市 民 的正 義 の社会 と して妥 当 し形 成 され て い くこ とを 自己 認識 す るのに不 可欠 な 媒 介環 とな るだ ろ う。

ス ミス価 値=剰 余 価 値 論 を理 解 す るにあ た って と くに注 意 す べ き こ とは,

労 働 」 ・ 「労働 生 産 物」 範 疇 の意 味 内容 で あ る。 以下 そ の ことに留 意 しなが ら,ス ミス価 値 論 の世 界 を再 構 成 す る。

歴 史 の論理 的本 源 で あ る未 開社 会 で は,全 成 員は 生 産手 段 を分 散 的 に所 有 す る労 働 者,つ ま り単 独 の独 立生 産者 で あ る。 労働 者=所 有 老 と して の彼 が,彼 'の労働 と交 換 に 自然 か ら獲 得 す る報 酬 は す べ て彼 の もので あ る。 「労 働 の生 産

ごヨの

物 は,労 働 の 自然 的 報酬 また は賃 金 を構 成す る。」 「土地 の領 有 と資財 の蓄 積

の双 方 に先 だ つ事 物 のか の本 源 的状 態 にお い ては,労 働 の全生 産 物 は労 働 者 に

  ラ

属 す る。 彼 は 彼 と分 か ち あ う地 主 も親 方 ももた ない。 」 この 自然 的賃 金 は 生 活 資料 と しては現 物 形 態 を と るが,自 分 自身 が 資本 家か つ 地主 で あ る労 働 者 の 三 重 性 格か ら反 省 してみれ ば,彼 の 「労働 生 産 物」 は彼 の 「労 働 」 が生 産 過 程 で新 た に作 りだ した価 値 生 産 物 で あ る。 資本 家 ・地 主 ・賃労 働 者 の収入 であ る 利 潤 ・地 代 ・賃 金 に分解 す べ き価 値 生 産物 で あ る。 資本 ・賃 労 働 関 係 の も とに

お い て価 値 生 産物 とな りうる この労 働 生 産物 は,本 源 的社会 では 労働 者 の全 部 的所有 に な る。

と ころ で本 源 的社 会 は 自給 自足 社会 では な い。 独立 生 産 者 が 自然 か ら獲得 す る労働 生 産物 は,資 本 家 的生 産 関係 の眼 を もって分 析 すれ ば,賃 労 働 者 の 自己 消 費 部分 であ る賃 金価 値 以 上 の利 潤 と地 代 を合 計 した価値 の剰 余生 産 物,つ

り,独 立 生 産者 に とって 自由処 分 可 能 な譲 渡 対 象,商 品 で あ る。 だ か ら先 資 本 制 社会 は,社 会 的分業 の一 員 であ る独立 生 産 者 が 自己 の労 働 生 産 物 を譲 渡 す る こ とに よって 自己 の生活 資料 を 獲 得す る社 会,「 商 業 社会 」 で あ る。 「 〔分業 の結果 〕 どの職人 も,自 分 自身 で 必要 とす る以 」三に,自 由に処 分 し うるみず か らの所 産を 大 量 に所 有 す る。 そ して他 の どの職 人 も ま った く同 じ境 遇 に あ るか

⑳ ㈲WN,p.82.邦 訳,157頁 。

(14)

60

第28巻 第3号

ら,彼 は,自 分 自身 の 大 量 の 財 貨 を 彼 ら の大 量 の 財 貨 と,あ る い は,同 じ こ と

  コ

に な るが,彼 らの大 量 の 財貨 の価 格 と交 換す る こ とが で き る。 」 こ こで,商 品 と商 品 との交 換比 率 を規 制 す る ものへ の科 学 的解 明が始 ま る。

「資財 の蓄 積 と土 地 の領 有 の双 方 に先 だっ 社 会 の か の源 初未 開状 態 にお い て は,さ まざ まの 物 を獲 得す るのに 必要 な労働 量 の あい だ の比 率 が,そ れ らを 相

 の

互 に交 換す るに さい して あ る規 則 を与 え うる唯 一 の事 情 で あ る とお もわ れ る。」

商 品の交 換価値 の 源泉 は そ の商 品を生 産す るの に必 要 な投 下労 働 で あ り,交 換 価 値 の大 小 は投 下 労 働 量 の大 小 に 比例 して絶 対 的に 定 ま る。 あ る商 品に他 商 品 を購 買 しうる貨 幣性 格 が あ るのほ,そ の商 品 に社 会 的 分業 の一 環 と しての私 的 労働 が投 下 され て い るか らで あ る。 そ して,投 下 労働 が交 換価 値 を創造 す る労 働 とな るのは,そ れ が他 人労働 を購 買 す るか ぎ りにお い て であ るか ら,商 品 と

商品 との交 換は個 々の私 的労 働 と私 的労 働 との交 換 に等 しい 。 そ こで,交 換 さ れ あ う労 働 の質 が 問 題 とな る。 ス ミス は 言 う。 「狩 猟 老 の 国 民 に お い て,た え ば,も し も,一 頭 の ビ ー ヴ ァを 捕 殺 す る の に 一 頭 の鹿 を 捕 殺 す る に 要 す るニ

倍 の労働 が通 常 か か る とす れ ば,当 然 に,一 頭 の ビーヴ ァは 二 頭 の鹿 と交 換 さ

  き

れ る,つ ま りそ れ だ け の値 うちが あ るはず であ る。 」 交 換 価 値 の本質 は 社会 的 に必 要 とされ た 平 均労 働 時 間 で あ り,ど んな使 用 価 値 を生 産 す るか とい うこ

とには 無 関心 な抽 象 的人 間 労働,商 品 を生 産す るか ぎ り同質 で量 的 に のみ差 別 で き る人 間労 働 であ る。 具体 的労働 の量 的 抽象 化 が 実 際 には どん な に 困難 で,

日常 生 活 では便 宜 的に の み な され る と して も,そ れ は 現 実 の商 品交 換 が社会 的

ぐ  コ

強制 と して客 観 的 にお こな う抽 象化 であ る。 商 品 は社 会 的 に必 要 な平均 労働 時 間 を体 化 してお り,そ の投 下労 働 時 間 が商 品 の交 換 価値 を規 制 す る。 交 換 価値 の大 き さ ・支 配 労 働 量 は投 下労 働 量 に 等 しい。 支 配 労働 量 を投 下 労働 量 に等置 させ る始 源 社会,こ れ は 資本 家 社会 の卵 を抱 いた未 開社 会 で あ り,資 本 ・賃 労

;薯働 関係 を未 分化 に ふ くむ単 一商 品生 産 者 が構 成 す る本源 的社 会 で あ る。 こ こで

⑳ ㈲ 囲 ⑳

V「N,p.22.邦 訳,78頁 。

WN,p.65.邦 訳,131頁

WN,p.65.邦 訳,131頁 。

cf.,17VN,pp.48‑49,p.65.邦 訳,107頁,131頁 。

(15)

ス ミス価値 論に おけ る社 会認識 の構造(上)

61

,は労働 者 は,自 己 労働 を根拠 と して,条 件 しだ い で価値 生 産 物 とな りつる労働 生 産 物 を全 額所 有 す る。 以 上 の こ とを結 論 的に 明示 す る文 章 を引 用 しよ う。 資 本 蓄 積 と土 地領 有 に先 行す る 「事 物 の この状 態 に お い ては,労 働 の全 生 産 物 は 労働 者 に属 し,あ る商 品を 獲 得 また は生 産 す るのに通常 つ い や され る労働 量 が,そ の商 品が通 常購 買,支 配 し,ま た は交 換 され る べ き労働 量 を規制 し うる

  ラ

唯 一 の事 情 であ る。」

と ころで,本 源 的社 会 にお い て分 業 に よる労働 生 産 力 が発 展 す れ ば,そ の結 果 は 自然 的賃 金 の増 大 とな って労 働 者 に有 利 であ る。 以前 と同 じ労 働時 間 で以 前 よ りも多 くの労 働 生 産物 が 生 産 で きれ ば,労 働 者 の受取 り分(=実 質賃 金!) は そ の増 加 分 だ け増 え るだ ろ う。 また,分 業 に よる労働 生 産 力 の発 展 が社 会 の 全 商 品 にお よぶ 場合 に は,以 前 と同量 の労 働 生 産 物 を生産 す るのに必 要 な労働 時 間 が 減 少 して,生 産 物一 単 位 あ た りの価 値 は 減 少す る。 全 商 品 は 安価 とな る。

そ の結 果 労働 者 の生活 資料価 格 も安価 とな り,彼 の所 有 す る商 品 の 交 換 価 値 (=実 質賃 金!)は 増大 す るだ ろ う。

ス ミスは 商 品 の交 換 関係 か らそ の生 産関 係 に までわ け い って,科 学 的 認識 の 最 も深 い と ころで,交 換価 値 の本質 を労廓 と して?か んだ 。そ の科 学 者 ス ミス が,歴 史に 生 きる主体 と して,労 働 を どの よ うに意 識 に と りこん で表 象 的に 再 把握 せ ざ るを え なか った か,こ の こ とが問 わ れ て くる。

商業 社 会 にお け る商 人 の富 は,使 用価値 的 に享 受 しうる人 間生 活 の必需 品 ・ 便 益 品 ・娯楽 品 には な く,商 品 とい う存在 規 定 を うけ た労 働 生 産物 の 交 換価 値, つ ま り購 買 ・支 配 しうる他 人労 働 の量 に あ る。 商 品は,他 人 に と って の使 用価 値 で あ り,自 己 に とっ ては交 換 価値 と してだ け役 立つ 。 また,商 品 と商 品 の交 換 の背 後 で労働 と労働 とが交 換 され るか ら,社 会 的富 の内 実 は,知 的 に の み確 認 され る抽 象の 次 元 で,労 働 が労働 を支配 す る関係 で あ る。 ス ミスは,こ の こ

とを,交 換価 値 の実体 的本 質 をマ 般 的社会 的 な労働 に 求め るなか で認 め た。 そ して,支 配 労働=投 下労 働 の本源 的社会 では,購 買対 象 とな る労 働 じ しんが商 品価 値 を形 成す るのだ か ら,ス ミス が支配 労 働 を商 品価 値 の評 価 主体 とみ なす

(3・O)WIV,p.65.邦 訳,132頁 。

r

(16)

62

商 学 第28巻 第3号

のほ 自然 で あ る。 ス ミスは,回 り道 を して交 換 価 値 の 内在 的尺 度 とな るべ き も のを支 配 労働 にお い た ので あ る。 だ が 彼は,価 値 を形 成す る投 下 労 働 時 間 を,

日常 生活 にお け る外在 的価 値 尺 度 であ る貨 幣(一 これ じたい は対 象 化 された 労 働 と して価 値 を もつ)と 同様 に,商 品 の交 換関 係 に お け る等価 物 の位置 にた 立 せ て価 値尺 度 た ら しめた 。 同 じ価 値尺 度で あ る労働 と貨 幣 との区 別 ・関連 が問 われ る こ とな く,価 値 形 成労 働 は 交 換 にお い て眼 に 見え て くる価 値 所 持労 働 と 一体 化 され る。 価 値 把 握 を価 値 尺 度 論 の視角 に しぼ って,価 値 規定 にお い て の

ほユり

ち に支 配 労働 説 を 前面 に た たせ る契 機 が,す で に この点 にあ る。

前節3で 解 析 した よ うに,ス ミスが 抽象 の野 で 見た風 景は,労 働 が労働 を支 配 す る排 他 的関 係 であ った 。 自己 と他 人 にた い して強制 的 な関 係 を 意味 す る労 働 を 内に ふ くんだ もの,そ れ が商 品 で あ る。 そ して,労 働=所 有 の本源 的 社会

では,賃 労 働 的 な投 下 労働 が商 品 の全 価値(→ 自然 的賃 金)を 構 成 す るのだ か ら

ぜおか

商 品 は 「一 定量 の労 働 の価 値 を ふ くむ」 と表 現 して もまち がい では ない ♂ 労働 は,賃 労 働 なの で あ り,労 働 者 の全 収 益=自 然 的賃 金 と交 換 され る労 働 は価 値 形 成 労働 な ので あ る。 資本 家 とい う経 済 的人 格 を に な った 独 立生 産 者 に と って は, 彼 自身 の 「労働 」 は,賃 労働 者 とい う経 済 的人 格,価 値 を もつ 労働,「 労 働 力」

商 品 であ る。本 源 的 社 会 にお け る生 産過 程 で の労 働 は,は じめか ら流通 過 程 で の労 働 規定 を ふ くむ6商 品が 価 値形 成 労働 にた い して潜 勢 的 に もつ支 配 力, これが外 目に 見え て直 接 的 とな るのは,資 本 の私 的 所有 にお い て で あ る。 「財 産 の所 有 が,た だ ち に,直 接 に,彼 〔一財 産所 有 者〕 に もた らす 力は,購 買 力, のす なわ ちそ の時市 場 に あ るす べ て の労働 また は労 働 の生 産 物 に た いす る一定

Bl)第5章 冒頭 のパ ラグラフを吟味 されたい。 「各人は,人 間生 活 の必需 品,便 宜品, 娯楽 を享受 し うる程度 に応 じて,富裕 また は貧乏であ る。 しか し。分業 が い った ん完 全に お こなわれ る よ うにな ったあ とで は,一 人 の人間 の 自己労働が 彼に供給 しうる 部 分は,そ れ らの うちの非常 に小 さい部分に す ぎない。それ らの圧倒的大部 分を彼 は他の人 々の労働か らひきだ さなければ な らず,彼 が支配 し うる,ま た は彼が購 買 し うるそ の 労働 量 に応 じて,彼 は富 裕 また は 貧 乏 で あ る に ちが い ない 。 そ れ ゆ え, い かな る商品 で も,そ れを所有 し,そ れをみず か ら使 用 また は消費す るつ も りがな

く,そ れを 他の諸 商品 と交換 す るつ も りの人 に とっては,そ の商品 の価値 は,そ れ が彼 に購買 また は支 配 させ うる労働量に等 しい。そ れゆ え,労 働は,す べ ての商 品

の交 換価値 の真実 の尺 度であ る。」(WN,p.47.邦 訳,105頁 。) 舩WIV,p.47.邦 訳,106頁

'

(17)

'

ス ミス価値論 におけ る社会認識 の構 造(上)

63

ぐおきり

の支 配 で あ る。 」

ス ミス が労働 力商 品 の存 在 を事 実 上 知 って いた ことは 明 白で あ る。 そ れ のみ では 労働 の実質 を満 た しえ ない た ん な る労 働,そ の 労働 と資 本 とり交 換 が問題 とな る資 本家 社会 では,商 品 と して の労働 にた い す る購 買 は直 接 的 で あ る。 ス

ミスは価 値形 成労 働 を賃 労働 的 に把 握 してい た か ら,現 実 に 資本 家 社会 が問題 にな る と,逆 転 的に,資 本 と交 換 され る労働 力能 は価値 形 成 労働 と してつ か ま え られ る。労 働 力 の交 換価 値 に お い てそれ の使 用価 値 が 把握 され るの で あ る。

だ か ら,資 本蓄 積 以降 では,支 配 「労働 」 量 が投 下 「労働 力」 量 に よっては規 制 され ない とい う事態 に な るので あ る6

資 本 の 「労 働 」 に たい す る直 接 的支 配 を,階 級 関係 を捨 象 して反映 させ た も のが,本 源 的社 会 で の 間接 的支 配 で あ る。 自己 労働(投 下 労 働)に も とつ く所 有 は,労 働 生 産 物 の譲 渡 を つ う じて,他 人 労働 を領 有 す る(支 配 労働)。 等価 交 換 の前提 で あ る法的正 義 は経 済 的支 配権 に 等 しい。 本源 的社 会 にお け る価 値 量 の決定 は 価 値 量 の支 配 と同 じこ とで あ り,独 立 市 民 の投 下 労働 量 が 彼 の収入

・支 配 労働 量 を規 制 す る。彼 の収 入 は,資 本 家社 会 の も とで な らば外 的 に分 割 す る諸 階級 収入 を 未分 化 の ま まに ふ くむ 自然 的賃 金 で あ る。 そ れ ゆ え,次 の こ ・ とが 了解 で き るだ ろ う。 ス ミス価 値論 は収 入論 と一体 的構 成 を な して お り,価 値 論 の 前提 で あ る分業 論 が収 入論 的構 成 をす で に も ってい る。 分業 論 と収 入 論 価 値 論 と収 入 論 そ れぞ れ の両 者 をつ な ぐス ミス社 会 認 識上 の視 座 は,市 民

的労働 を資 本 家社 会 で 主 観的 に表 象 され る賃 労 働 と してつ か み,生 産 内部 で 検 出 し うる価値 形 成 労 働 を交 換 関 係 で表 象 し うる価 値 所 持 労 働 と して把 握 した 点 に あ る。 彼 は,投 下 労働=支 配 労働 の本 源的 社 会 に,地 主 ・資本 家 ・賃 労働 者

の階 級 社会 と して構 造 化 され る資本 家 社会 を 組 み いれ るので あ る。 そ して,本 源 的社 会 ⇒ 資 本家 社会 認識 を価 値 論 次 元 で集 約 的 に示 した ものが,不 変 な価 値 尺 度 論 な ので あ る。

⑬VVN,p.48.邦 訳,106頁 。 こ の 文 章 は 第3版 で 追 加 さ れ た も の だ が,同 じ文 言

は す で に 初 版 に あ る 。 第1篇 第7章 第19パ ラ グ ラ フみ を よ 。 こ こ で ス ミ ス は ・ 普 通

の 商 品 を 「す で に な さ れ た 仕 事 」workdone,労 働 力 商 品 を 「こ れ か ら な さ れ るべ

き 仕 事 」worktobedoneと,お さ え て い る 。cf.,VVN,p.76.邦 訳,149頁 。

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