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ュー・ケンブリッジと呼ばれるスクールである(彼ら自身はCambridge I 序

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(1)

ニュー・ケンブリッジ学派による 政策提言とそ理論的基礎

青木浩治

I 序

近年,世界的リセッションを背景として,保護主義が台頭しつつある。こ うした潮流にあって,とくにイギリスにおいては, 70年代以降,マクロ経折 政策オプションとしての輸入規制の妥当性如何が一つの大きな政策論争点と なってきた。この輸入規制をアカデミックな立場から主張しているのが,ニ

ュー・ケンブリッジと呼ばれるスクールである(彼ら自身はCambridge Economic Policy Groupと呼んでいる)。

しかし,彼らの主張は,主として大型のマクロ計量モデルに依拠して行わ れるため,その理論的根拠についての一般の理解は著しく妨げられているよ うに思われる。本稿の目的は,このニュー・ケンブリッジ学派(以下NCと 略称)による政策提言の理論的基礎を明らかにすることである。

1)

このNCの政策的命題とはつぎの二点に要約されると考えられる。

(I)民間経済は,そのビへイヴィア自体が,経済の自律的な景気変動をひきおこし ているのではないという意味で,相対的に安定的である。したがって,経済への国 家介入合理化の根拠を民間経済の不安定性に置く「微調整」 (fine‑tuning)は誤 った考え方であり.マクロ経済政策の立案は,民間経済の自律的調整がほぼ完了す る中期的視野から行われるべきである。

(I)民間経済が相対的に安定的であるとしても,失業,国際収支不均衡という問題 が解決される必然性は全くない。この場合,対内均衡(完全雇用)の達成はネット の輸出創出に依存しており,これは(関税ないしクォータによる)輸入規制に依る べきである。他方,対外均衡(経常収支バランス)を達成するためには,対外諸条 件および貿易政策を所与とすると.生産・雇用動向とは無関係に(税率操作によ り)財政収支をバランスさせることが必要である。

(1) Cambridge Economic Policy Group [4], K.Cuthbertson [13] Chap. 3

(2)

以下, この二つの命題がどのような恨拠から導かれる

ω

かを検討する

c

()~

!r

J

において, まず,

NC

体系をできうる限り単純化して示し, その基本的ア プローチを説明するく

I I‑1)

。その後半は命題()の説明に充てられて いる

o I I  ‑ 2

では安定性命題が, また II-3 では政策変史~~~の即時効果およ び定常効果がそれぞれ検討されるであろう O 続いて E 節では命題 (II) が I;~~

切される。

ill‑l

では定常均衡における財政収支と経常収支の関係およびそ の政策的合;立が, また

ill‑2

では為替切下げおよび輸入規

i j i

!Jというこつの代

;民的政策手段の

NCによる評価が示され, ill‑3

でその長期政策がえ

s

べら れる。町節では結論と若干の成された問題点が言及される

O

本論に先立ち,予め本稿で用いられる記号を以下のように定義しておこ

O

なお,ストック変数は全て期末値であり, また変数の j~Jr(値(ないし l泊

j

W J

末値)については (‑1) という添字を付すこととする。

Y:

実質問民所得

Y r

完全雇用所得

G:

実質政府支出

XP:名目民間総支!'I¥

YD: 名目

j羽田可処分所得

D:

民 間 金 融 資 金 保 有 残 高

X:

実質輸出

M :

実 質 輸 入

F :  1  +関税率

R:

邦貸住外貨昨日j

JS :  : f s

l'i:ill純資本流

I U T: 税 収

W: 名目白金率

h

机引後要求マークアッ

プ率

W :

税引後要求実質賃金本

D g 

:公的部門の金融資 n 正常労働投入係数

j 主(公債・

fr幣〉供給残高

T 税率 a

輸入原材料投入係数

μ  輸入性向

ε:

輸出の相対価格弾力↑

t

P:

自国生産物価格

m

輸入の相対価格郎力tt

e

1 5 建為苔レート B e 邦 l

'i

l l 経常収支

ニ ュ ー ・ ケ ン ブ リ ッ ジ の 「微調整」批判

II‑l .  

ニュー・ケンブリッジのアプローチ

はじめに ,N Cの理論構造を最もシンフ。ルな形で示し, そのアプローチの エッセンスを説明しておくのが使立であろう

G

なお, 当面の問諸価格は一定

(3)

と仮定し,したがって名目値と実質値を特に区別する必要はない。

まず,財 i l T 場の需給バランス式および民間部門の可処分所得定義から (2 ‑ 1)  (G‑T) +Bc=YD‑XP 

と い う 関 係 が 導 か れ る の は 周 知 の と こ ろ で あ る O これを「資金循環式」

( f l o w  o f  funds 

identity) と言うが,通常は,さらに民間消!~・投資等 ω

個別需要項目が特定化され, (2‑1) 式を財市場の需給ノ

f

ランスという制 点から眺めることによって所得決定ないし釆数分析へと発展してゆくわけで ある O

ところで,見方‑を変え, (2‑1) 式 を そ の 背 後 に あ る 金 融 的 側 面 か ら 眺 め る と ど う な る で あ ろ う か 。 そ の た め に , 部 門 を 氏 間 部 門 , 公 的 部 門 お よ び 海外部門の三つに区分して考案しよう。そうすると,各部門について,

(2 ‑2) 

.d

D 三 YD‑XP (2 ー 3)

.d

Dg‑

.d

R 三 G‑T (2 ‑ 4) 

.d

R+

.d

S = . = B c  

という関係が成立する。もちろん,乙れらが志味するのは各部門の予算出 l 約 で あ る 。 す な わ ち , 民 間 部 門 の 総 支 出 を 上 回 る 可 処 分 所 得 は 金 融 資 産 の 純 取

4) 

得 と し て 処 分 さ れ ((2‑2)式),公的部門の支出超過=財政赤字は,外 1 5

準 備 の 苔 f l l に伴う国内通貨供給増分を控除した貨幣ないし公 h l の 追 加 的 発 行 によって補填されなければならない ((2‑3)式)口また,海外部門の n

j;

1 i

.サーヴィスの純受取は外貨ないし自国に対する純債務の増加によって相殺 される ((2‑4)式)。そうすると, (2‑2), (2‑3), (2‑4)式 か ら , (2‑1) 式 は

(2 ‑ 5) 

.d

Dg

L1

S

L1

(2) 単位を適当に選んで全ての価格を 1 としておく。なお,本稿のモデルの fl\i~ にあた

り主として M. F e t h e r s t o n  and W. Godley [ 1 4 J ,  W. Godley and R .   May  口

5J

を参考とした。

( 3 )   ここで,金融資産とは公的部門および海外部門に対する民間部門のネットの資

tr

残 日と定義されており,民間部門内部の金融的取引は相殺されてこれに合まれていな

'1

0

( 4 )   以下では適切な移転文払が行われているとして,利払いの問題を明示的に取扱わな

いこととする口

(4)

と変形できる。したがって,資金循環式は金融資産全体としてのフロー需給 バランス式をな味するものとなり,このように解釈すれば,国民所得は金融 資産全体としての需給バランス点で決定されると言っても何ら支障はないは ずである口いま,税収 T および,経常収支 Bc を ,

(2‑6)  T  =TY  O < T < l  

(2‑7)  Bc=X ー μ Y μ>0

と恕定し,また以下では G , X , T , μ を所与と考えておこう O そうすると,資 金循環式は

(2 ‑ 8)  (G‑TY)  +  (X ー μ Y) =  財政赤字 経常収支

AD 

1 1  

民間金融資産純取得

と吉:き改められるから(左辺は金融資産のフロー供給と解釈されている),

このようなアプローチを完結させるためには,さらに民間部門の金融資産純 取 得 . d

D

を特定化すればよい。

ところで, NC は,経験的観察から,民間部門全体としての金融資産保有 残高とその各自可処分所得の間に,

(2‑‑9)  D=k(l ー の Y ;  O<k<  1 

で表わされるような安定的関係の存在することを発見した。したがって,も しこのような関係が安定的であるとすれば, (2‑8) 式は,さらに,

(2‑10)  (G‑TY)+(X ー μ Y)=

(1

ー の

Y‑D̲

1

となり,今期首の金融資産残高 D ̲ I は 所 与 で あ る か ら , 今 期 の 国 民 所 得 Y は金融資産のフロー需給の均衡する点で決定されると考えることができる。

このように, N C の基本的アプローチとは, (2‑9) 式で示されるよう な安定的金融資産需要関数の経験的発見から出発して,国民所得の決定メカ

( 5 ) 財市場の超過需要は金融資産のフロー超過供給を,また前者の超過供給は後者の超 過需要をそれぞれ意味するものと考えておけばよい。

( 6 )   (2 ‑ 2) ,  (2 ‑ 9  )式より,民間部門の名目総支出関数は,

xp=( 

‑k)YD+kYD̲

となる。乙のとき,今期可処分所得からの支出性向 1 ‑kは E と考えてよいから

l>k である。また (2‑9) 式は,民間部門の金融資産保有残高が単位期間でそ

の望ましい水準に調整されることを暗黙裡に想定している。

(5)

ニズムを主として金融資産の需給関係から捉えようとする P o r t f o l i oB a l a n c e   Approach であると考えられる o

ll‑2 

安定性

NC 体系の最もエッセンシヤ j レな部分が (2‑8) , (2‑9) の二式に集 約されることが明らかになったところで,以下での問題とは , N C の「微調 整」批判(命題

1

)の理論的収拠を明らかにすることである O

周知のように,伝統的な「微調整」は,民間経済とりわけ企業の実施する 投資の不安定性にその基礎を置いており,その不安定性を国家の経済介入に よって緩和ないし除去しようという考え方に立脚したものである o しかし,

NC のような経済変動のメカニズムを主として金融資産の需給関係から説明 しようとする観点に立てば,このような関係は全く逆転し,不安定性の主要 因はむしろ公的部門(および海外部門)の行動に帰せられてしまうのであ る D そこで,まず, NC の「微調整」批判の最大の論拠と考えられる民間経 済の安定性命題から検討してゆくこととしよう o

乙の問題は, (2‑8) ,  (2‑9) 式で記述される体系のスタビリティを 調べることによって答えることができる O 実際, (2‑8) ,  (2‑9) 式を 変形すれば,

(  2  ‑11)  C  +  .,~+μ )Dt=Dt_l+(G+X)

(1‑7)  であり,また,

dDt 長( 1  ‑7)  /  (2 ‑12)  0 

<一一一一‑‑̲̲̲̲;̲‑‑‑‑‑c:‑‑

dDt̲l  7+ μ+(  ‑7)

ということから,安定的な金融資産需要関数が前提される限りにおいて,体 系は大局的に安定的であることがわかる o

乙の背後にあるメカニズムは,つぎのように説明されるであろう o w l

において,縦軸に今期末の民間金融資産保有残高 Dt ,横柏にその J U ] 首保有

{7) 

金融資産を椛成する伺々の資産の需給不均衡は主として利子率の変動によってクリ

アーされると想定されている。また以下では金融政策は特に明示的には取扱われな

い。これは,民間金融資産残高が対外債務ないし債権をも合めて定~~されているこ

と,そして NC の対外均衡目採が主として経常収支/‑{ランスにあることによって

いる。

(6)

Dt 

k(I‑r)

(C+X) 

て +μ+

k(I‑τ) 

Do  D l  

第 1

D o '   Dt‑l 

残 高 DLl をそれぞれ測る o A 線は金融資産フローの市給バランスを意味す

る (2‑11) 式を図に表わしたものであり,他方 4 5 度線は Dt=DL l を怠味

している o 仮りに,当初民間部門の金融資産保有残高が図の

D

。であったと

し,これはその望ましい水準に一致していたとしよう口ところで,このよう

な状況では,経常収支を相殺して余りあるほどの財‑政赤字が存在しているか

ら,乙のインバランスは金融資産の追加的供給によって補填されなければな

らず,金融資産についてフローの超過供給が発生する O そうすると,国民所

得が増加し,これは一方で税収および輸入を,また他方で民間部門の可処分

所得したがってその金融資産需要をそれぞれ増加させるから,当初の不均衡

(7)

はこのような所得の増加によってクリアーされるわけである

O

このとき,民 間部門は図のム

DJ

に相当する金融資産を蓄積する

O

次期首において,民間 部門の金融資産保有残高(図の DJ) は再びその望ましい水準に調~されて いるが,財政赤字に経常収支を加えた総体としてのフローのインバランス は,税収および輸入の増加によって以前よりも縮少しているとはいえ,必ず しもゼロとなっているわけではない。しかし,そうであっても次期に同様の メカニズムが作用するから,体系は究極的には均衡点

Q

へ収束するであろ う口また,民間部門の初期金融資産保有残高が図の

Do'

である状況から出 発しても,事態はこれまでと同様である

O

かくして,経済変動の主要因は政策スタンスの変更ないし外国貿易の変動 である

D

したがって,つぎにこれらの変化が経済にどのような影怨を及ぼす かを検討しておこう。

II  ‑3.  即時効果と定常効果

まず,政府支出ないし税率の変更が国民所得および経常収支に及ぼす即時 効果から始めよう

O

これは,

(2‑8)

, 

(2‑9)

式より,後述する税率変 更の価格に及ぼす効果をひとまず無祝すれば,

(  dY  1 ¥ n  

dG  T+μ +k(l‑T) /

(2‑13)¥ 

dBc μ 

│一一‑‑‑‑‑‑‑‑'‑‑‑‑‑, < 0  

¥dG  T+μ +k(  1  ‑T)  ( 1   dY  1 ‑k 

I~r- ・一一一一

< 0  

J  Y  dT  T+μ +k(l‑T)  (2‑14)¥ 

I  1  dBc μ(  1  ‑k ) ¥ n  

~

dT  T+μ 十ん( 1  ‑T)  " ‑

である

O

同肢にして外国貿易に関わる諸要因の変動は,即時的には,

dY 

dY 

1 ¥

) dX 

d μ T + μ +

ん(1 

‑T)

〆 V

(  2  ‑15) ¥ 

dBc  1  dBc  T+k(  1  ‑T) 

│一一一=一一一一・一一一=一一一一一一一一一 >0

(  dX  Y  d μ  T+μ 十た( 1  ‑T) 

という効果を持つ。このうち,増税(ないし減税)の効果だけを説明し,他

(8)

の結果の解釈については読者の推論に委ねることとしよう。

増税(減税)は,一方で税収を増加(減少)させるから,金融資産の追加 的供給をそれだけ減少(増加)させるであろう

O

しかし,他方でそれは民間 部門の可処分所得したがってその金融資産需要を減少(増加)させるため,

増税(減少)の即時効果は,これら両者の大少関係に依存することとなる

o

ところが,幸いなことに,後者は前者に及ばない

C1‑k>0)

ため,増税 (減税)は金融資産フローの超過お要(超過供給)状態を創出し,国民所得 を減少(増加)させると結論できるのである

O

そうすると輸入が減少(増 加)するから,その経常収支に及ぼす効果はただちに推論されうる

O

これに対して,定常効果はどのようであろうか。調整が完了した長期で は,民間部門の金融資産純取得はゼロとなるため,資金循環式は

(2‑16)  (G‑TY*)+(X ー μ Y*)= 0 

となる

O

ここでか〉は定常値を表わす記号である

O

そうすると,各外生変数 変更の定常効果は,

(2 ‑16)

式より,以下のようである

O

I  ,l V *  

│ー竺土一‑一一 > 0

} alr 

T 十 μ

(2 ‑17) ¥ 

~二ー

1  aDc'" μ . /   ~

"  dG  T

f ‑ L

¥ V

( 1   dY* 

│一一一・一一=一一一一一 <0

J  y*  dT  T+μ  (2 ‑18) ¥ 

1  dBc* μ 

│ 一 一 ・ 一 一 = 一 ー ケ <0 

"y*  dT  T

μ

(  dY*  1  dY*  1 ¥ A  

dX  y*  d μ T + μ " "  

~

(2‑19)( 

d  B c *   1  dBc* 

│  し = 一 一 一 一 ・ 一 ニ 一 一 一 > 0

~

dX  y*  d μ T + μ  

これらの結果については,金融資産残高変動の効果がいわばトランジットな ものでしかなく,長期的には消滅すべき性格のものであることを考慮すれ ば,容易に理解されるであろう。

さて,このような各効果の「符号」そのものについては,アプローチの仕 方が若干異なるとはいえ,通常のケインジアン・タイプのモデ

j

レから辺かれ

(9)

る結論と何ら変るところがなし

) 0

しかし,乙乙では「符号」そのものよりも むしろ各即時効果と定常効果の「大きさ」の相違に注目すべきである。比較 を有意味とするため,当初定常均衡が成立していたとしよう。そうすると

(2‑13)

, 

(2‑14)

, 

(2‑15)

式と

(2‑17)

,(2‑18), 

(2‑19)

式の各

々を較べてみれば容易に判断されるように,輸出ないし輸入性向変化のJ径常 収支に及ぼす効果を除いて,フイスカノレ・ポリシ一変更等の定常効果の絶対 的大いさは,その即時効果のそれに較べて一般に大きいことがわかる。もち ろん,このような差異が生じるのは民間部門の金融資産純取得=ネットの貯 蓄という有効需要のリークが長期的にはゼロとなるからに他ならない。

それにしても,とりわけ政策スタンス変更の短期効果と長期効果の相違と いうことの政策的合意はきわめて深刻である

O

というのも,主として短期的 視野から民間部門の経済変動を国家の裁量的介入によって緩和ないし除去し ようとする伝統的な「微調整」は,その政策効果が時間の経過に伴って大き く増幅され,当初の怠図に反して,その実,経済における最大の不安定化要 因となりうるからである

O

かくして ,

N C

体系が現実の経済運行を正しく捉 えているとすれば,

( a )

国家の裁量的経済介入は経済を大きくスウィングさせ る可能性があること,したがって

( b )

裁量的政策変更は,短期的観点ではな しむしろその将来的帰結を考慮した長期的視野から行われなければならな いことは明らかであり,乙の論点が命題(

)の意味するところであると考 えられる。

そうすると,つぎなる問題とは,その長期的観点からの裁量政策体系であ り,乙の検討は次節で行うこととしよう

O

ニ ュ ー ・ ケ ン ブ リ ッ ジ の 政 策 提 言 ill

l .  

定常均衡ーその政策的合志

m j

節で詳論されたように,

(2‑8)

, 

(2‑9)式で表わされる体系は大

局的に安定的であって,他の事情にして等しい限り,民間部門の金融資産純 取得は,長期的にはゼロとなる

o

そうすると,資金循環式は,長期では

(10)

(  2  ‑16) 

(G‑TY*) 

+  (X ー μ

Y*)=

0  財政赤字 経常収支

であり,定常均衡では財政収支の動向は, 1 0 0 パーセント,経常収支に反映 されることとなる O したがって , NC  によってしばしば主張されているよう に,財政収支をノてランスさせない限り経常収支のインバランスも是正され ず,逆は逆である。もちろん,この命題は因果関係を説明するものではな く,定常均衡において,経常収支のインバランスがそれと同額の財政収支イ ンバランスと整合的でありうる乙とを示しているにすぎない(このインバラ ンスは公的部門の資産構成の変化によって維持されている)。しかし,この ことの政策的インプリケーションは,す乙ぷる重要である D なぜなら,対外 均衡を達成するためには政策変数は,同時に,財政収支のバランスを保証す

るものでなければならないからである。

ここで,対外政策は所与と考えておこう O また , NC にあっては,政府支

出G

は内外均衡の同時達成という問題とは別の観点から決定されるべき政策 変数である。そうすると,経常収支の目標値達成という制約条件を認すこと によってその自由度が失われる政策変数とは税率 T であり,それは,長期的 には,財政収支をバランスさせるように,すなわち,

(3 ‑1) 

G‑TY*= 

を保証するように設定されなければならない(仮りにこれを財政 j レールと 1 1

んでおく)。

と乙ろで,完全雇用下の経常収支を (3‑2) 

BC(Yf)=X

μYf

と定義すれば,このような財政 j レールのもとでは,現実の所得は,長期では

( 3  ‑3) 

Y*=Yj 

+

Bc(Y f) 

( 8 )   ストック調整が完了した定常均衡では経常収支は公的決済収支に一致する。 NCが 対外均街目標として経常収支バランスを想定する理由の一つもこのような事情によ

っていると考えられる。

( 9 )   同様の主張については, R .   I .   Mckinnon [ 2 1]を参照のこと。

( 1 0 )   F .   Cripps and M. Fetherston  [ l 1 J 。

(11)

である O しかし,現在の英国の貿易パーフォーマンス状況を所与とすると,

完全雇用下の経常収支は確実に逆調 ( B c(Y  j)< 0) であり,したがって,

このような財政 j レールを遵守する限り,対外均衡の達成は犠牲にならざるを 得ないのである (y*<y f ) 。かくして,英国経済の対内均衡の回復・維持は ひとえにその貿易パーフォーマンスの改善にかかっており,この改善方策と しての為替切下げないし輸入規制の選択がつぎなる中心的問題となるわけで ある O 次項では,乙の二つの代替的政策のうちいずれが選択されるべきかが 検討される O

m  ‑2.  D e v a l u a t i o n  v e r s u s  I m p o r t  R e s t r i c t i o n  

この問題を考察するためには,これまで捨象してきた価格の変動を陽表的 に取扱う必要がある o この点を考慮した単純化された NC モ デ ル と は つ ぎ のようである D

(3‑4)  P ・ (G‑rY)

Bc=

ムD

(3 ‑ 5) 

(3 ‑ 6)  ( 3  ‑1)  (3 ‑ 8) 

D=k( 1  ‑r)PY 

Bc=P.X(

一一

)‑e ・ μ( 一一一 eF  )Y;X'> 0

, 

〆 <0 P 

P=(  1  +~) ( W . n + e . a )  

‑ r  

(1  ‑r)W= 日んP‑ 1

ここで , (3‑4) ,  (3‑5) 式は,既に説明されたように,それぞれ資金循

環式および、民間部門の金融資産需要関数である O なお,ここでは単純化のた

め税率は価格変動に対して中立的であると想定されており,また,関税収入

は適切な方法により民間部門へトランスファーされているとしてこれを陽表

化していない。 (3‑6) 式は邦貨建て経常収支決定式であり,外国生産物

価格は,単位を適当に選んで 1と置く乙とができるから,明示的

l

こ表わして

( 1 1 )   N C は暗黙のうちに英国の現状にそぐわない同定為替レート制を想定している。乙

れは,おそらく,為替レート減価(これがどのような操作によって可能かは不同に

して)を一つのオーノレターナティヴな戦略として評価するための便宜的方法である

と考えられる。

(12)

いない。他方,

(3‑7)

式 は 「 正 常 価 格

(normalp r i c e )

仮 説 」 と 呼 ばれるもので,企業は,操業度の変動に伴う経常コストの変動を正常化

(normalize)

し,それに需給動向に左右されない税引後の一定マージン

12) 

率を上乗せして価格設定を行うことを志味している

o

なお,原材料輸入につ いては関税が認されない,ないし払戻しがなされると仮定されている。これ

NC

の輸入規制案において,原材料(および食料)輸入は対象外とされ る乙とによっている。最後に

(3‑8)式は,労働者が一期前の国内価格を

基準として,その税引後の要求実質賃金率を維持するように名目賃金率を設 定することを示す行動式である。このモデノレの特徴とは, II節で説明された

14) 

点に加えて,国内価格および賃金率が需給動向とは独立に設定されるとと

i

そして国内価格は,そのコスト条件に影響しない限り,内外競争関係とは無 関係であるという点にある

O

モデルの内生変数は

D

Y

, 

Bc

, 

P

, 

W

5 個

であるのに対し,方程式も

5

本で,体系は一応閉じられている

o

さて,以下で行う事柄は,もっぱら比較静学分析であるが,乙れが有志味 であるためには体系の安定性が保証されていなければならない。そこで,こ の問題から分析を始めることとしよう。

定常均衡では,

(3‑9)  P*(G‑TY*)+Bc *=  0  (3 ‑10)  D*=

(1 

‑T)P*Y* 

(3 ‑11)  Bc*=P*

X*‑e μ *.y* 

士 h

(  3  ‑12)  p* 

= ( 

1

十 一 一 一

)(W* ・ n+e.a) 1  ‑ T  

(  3 

‑l3) 

1  ‑ T )   W*  =  W  • p* 

が成立する。乙こで(*)は定常値を意味する記号である乙とは以前と同総

ω

詳細については w.

Nordhaus and W. Godley  [ 2 4 J

, 

K.  J .   C o u t t s

, 

W. 

Godley and W. Nordhaus  [ 7 J

を参照の乙と。

(13)  法人前率と賃金に対する説率とがここでは等しいと仮定しているが,その区別を設 けても基本的論点に修正を加えるものではない。

ω 

したがって,英国のインフレーションの説明において.

NCは Moneydoes n o t  

m a t t e r "の立場にある。 C .E .   P .   G .   [5J. 

(13)

である

O

こ の (

3  ‑ 9) 

~

(3 ‑13)

式から,定常解として

(  3  ‑14)  Y*=~士主三一 r+(

e / P*) μ* 

/r

,  / ,  

h  、 日 / ー 『 (  3  ‑15)  P*  =  (  1

十一一一)

. e . a  / [  1  ‑(  1 

+一一一)一一‑. 

n l  

‑ T   '  /  ‑ 1  ‑ T  /  1  ‑ T 

が導かれる。したがって,経済学的に有意味な定常解が存在するための条件

(3 ‑16)  1  > (  

+一一一ー)一一一・

1‑T/1‑T 

h  "  W 

n H

である

O

この

(3‑16)

式の意味とは,税引後要求実質賃金率

(W)

,税引 後要求マークアップ率

( h )

お よ び 税 率

( T )

の三者が,生産性

(l/n)

範囲内で整合的でなければならないということであり,以下ではこの条件を 前提して議論を進める。

ところで,

(3 ‑ 4 

)~(

3  ‑ 8)

式で記述される体系は非線形であるため,

離散型での分析は困難である。そこで,以下ではモデルを線形近似すること によって分析を進めることとしよう

o

そのため,記号を新たに,

(3 ‑17)  X t 三 Yt‑Y* , Z t 三 Pt‑P*

と定義する

O

また,輸出入関数を線形化し,

(3 ‑18)  Xt‑X*= ー ε p v*  * (Pt

一戸)

}¥A* 

(3 ‑19)  (μt ー μ *)Y*=m

*(Pt‑P*)

と仮定しよう。そうすると,単位を適当に選んで

P*=e=1

と す る こ と が できるから,体系はつぎの二本の述立定差方程式に還元される〉

(回線形近似すると

PtYt‑P*.Y 牢 与 P 申 (Yt Y 本 )+(Pt‑P 牢 )y*

PtXt‑P

X 本 当 P 牢 (Xt‑X 勺+(Pt‑P 勺 ・ X 本

μ t Y t

μ *.Y* μ 牢 (Yt‑Y 勺 +(μt

μ *)Y*

Dt‑D

事と弓是(

1  ‑r)[P 牢 (Yt‑Y*)+(Pt‑P 勺Y勺

である。そうすると,

(3‑4)式から( 3‑9)式を引いてやれば,

(Pt‑P*)G

τ

(PtYt‑P*Y 勺 +(PtXt‑P*.X 勺 ‑e( μ t Y t ρ Y*)

=(Dt‑D 勺ー (Dt

‑ D 勺

と変形できるから,

(3 ‑17)

, 

(3

ー1

8 )

,(3 ‑19)式および

P*=e= 1

を考b

J I

(14)

(3 ー 2 0 ) [T+ μ *+k( 1 ー の Jxt‑k(1 ー の Xt̲J=r.Zt

k (1  ‑T)Y*.Zt̲J  (3 ‑21)  Zt=HZt̲l 

ここで

r=(G‑TY*)‑[( ε‑ 1  )X*+mM*J ‑k(  1  ‑T)Y* 

と定義されている

O

したがって,

(3‑20)

, 

(3‑21)式を解けば,

(3 ‑22)  (3 ‑23) 

であり,

Zt=A[k(1  ‑T‑ )  

‑,‑

Jt+B.Ht  (A  .B=const)  ( t

0)

T+μ *+k(  1  ‑T)  zt=zoHt 

(1‑T) 

< . 

'~",\

. l . "  ~

,  <  1 ,  0  <  H  <  1 

T+μ *+k(  1  ‑T) 

ということから,線形近似された体系は安定的であることがわかる。

以上の準備のもとに,為替切下げおよび輸入規制という二つの代替的政策 の効果分析が可能となる。まず,前者から始めよう

O

そのため,当初経済は定常状態にあり,また初期経常収支はバランスして いたとしよう。そして,第一期首に為替切下げが行われたとし,その切下げ 幅を L1

e=

日‑eo

0

と定義する。なお ,e

o

は初期レートげは新レート であるO そうすると,このような政策変更に伴う国内価格水準の旧定常値か

らの事離

Z t 三 Pt‑Po( t

1

)と為替切下げ幅 .d

eとの問には, (3‑7)

, 

(3 ‑ 8)式等より,

(3‑24)  zt=8e t  ・

.d

e ; 8e t=  1  ‑Ht  ( t

1) 

ると (3‑20) 式が得られる。他方, (3‑12) ,  (3‑13) 式から,

h  "  W  ‑ P*=( 

二子

)(τ

;‑nP*+ea) であり,また (3‑7) , (3‑8) 式から,

h  "  W

一 、

Pt=(  1  +工二子 ) ( τ 二 τ n P t ̲ J+ e a )  

ということから, (3‑21) 式は後式から前式を引いてやれば直接導くことができ

(15)

という関係があることがわかる o

ところで,輸出入関数は,線形近似して,一般に (  3  ‑25) 

Xt-Xo= ε Xo(~一一一子7-)

*‑eo  Pt‑Po 

(3 ‑26)  *‑eo  "F*‑Fo  Pt‑Po  、

(μt ー μ 。 )Yo=‑mM o(

一一ァー+‑=r;)

(;0  . L "   0 

と考える乙とができる。ここで記号 (0) は初期(定常)値, (*)は新しい 定常値を表わすものとする。そうすると,初期経常収支(したがって財政収 支)がバランスしていたと想定していること,および Po=eo= 1 というこ

とに注意すれば,適当な操作を加えることにより,

(3 ‑27)  Xt=

一一主.ll

二土 L

一一

t ̲ . r+ μ 。 +k( 1  ‑r)

(1 ‑8 e t )  ( ε +m‑1  )Mo ( 8e t‑8e t ̲ , ) k (1  ‑r)Y o

e

‑ r+ μ 。 +k( 1  ‑r)  (3 ‑28)  B~.t= ー μok( ‑r) 

r+ μ 。 +k( 1  ‑r)  XL , 

+1r+k

(l

‑ r ) J  

(l

‑8e t )  ( ε +m‑

l)

M o+ μ 0 ( 8e t  ‑8e t ̲ , )k(1‑r)YoJe  r+

μ

。 +k

(l

‑r)

(

1

6)  PO を初期価格の(定~~~)値 , P牢をその新定常値と定義すれば,

p*=(l+tF)tE  Po=(l+

τ

〉告告

であるから,

P‑Po=(1+tF)

三万(日

‑eo) =

J e となる。他方, (3‑7) ,  (3 ー 8 ) 式と P キの決定式から

Pt=HPL

+( 

-H)P本 (t~三 1

)  が導かれ,乙れを解くと

Pt‑P 牢 = 一 (P 本 ‑Po)Ht ( t 二 三

1) 

である。ところが,

zt‑=Pt‑Po=(Pt‑P 勺 +(P 宇 一 PO)

であり,単位を適 1 2 に選んで Po=eo=1とすることができるから,これまでの結 果を用いると

z t  

= ( 

1  ‑Ht)Je  ( t ミ 1)

が導かれる。

(16)

が導かれる。ここで Xt 三 Yt‑Yoである D したがって,為替切下け

e

の国内価 格,実質国民所得および経常収支に及ぼす効果は (3‑24) ,  (3 ‑27) 式お よ び (3‑28) 式によってみることができるわけである O

まず,即時効果について検討しよう。なお以下において,マーシヤノレ・ラ ーナ一条件,

ε+m‑l>O 

は常に満たされていると仮定する。これは NC の 為 替 切 下 げ に 関 す る 議 論 がいわゆる弾力性悲観論によるものではないことを明確にするためである o

このような前提のもとに,為替切下げの即時効果は, (3 ‑2 7 ) ,  (3 ‑2 8 )   式 で

t‑=

1 と泣き ,xo=()eo=  0 ということに留意すれば,

(3 ‑29)  (  3 ー 3 0 )

X , =   ( 1 ( ) e 1 ) ( ε +m‑l)Mo‑()e1k

(l

‑r)Y 。 1 ̲ 

r+ μ 。 +k

(l

‑r)

[r+k

(l

‑r)J

(l一内

) ( ε +m‑l)Mo+

μ

o ( ) e , k

(l

‑r)Y 一一一一一←一一 ~Ae>O r+ μ 。 +k(1  ‑r) 

となる O なお, 0 

( ) e   1 

1  ‑

1 である D

為替切下げは,一方で外国生産物価格に比しての自国生産物相対価格を低 下させるから,いわゆる需要転換効果により(( 1  ̲ ( ) c , ) (

ε

+ m ‑1  )Mo>  0)  実質国民所得を高め,同時に経常収支を改善する方向に作用する。しかし,

間 当 初,Bc , o=PoXo‑eoMo= 0  (Mo=

μ

o Y o )であるから Bc ,  t  =  Bc  ,  t  ‑Bc  ,  0 ' = .  

Po(X  t‑Xo)+(Pt‑Po) Xo ー [eo(Mt‑Mo)+(e*‑eo)MoJであり, (3‑25). 

(  3 ー 2 6 )式で F*‑Fo=0 とおき,

Mt‑Mo 土 弓

μ

(Yt Yo)+(

μ

t‑

μ

)Yo

という関係を考慮すると,

Bc , t= 一 μ o Xt  +  (  1  ‑ e  e  t )  ( ε+m‑l  )MoJe  となる。他方.Po(G‑rYo)= 0 を考慮すると,

Pt(G‑rY  t)=PtG‑PoG‑r(PtY 

t-PoYo)~-rxt

JDt=(Dt-Do) ー (DLI-Do)~k(

1

τ ) ( 乞 t‑XL1)‑k( 1 ー T)YO(zt‑zt̲l)

=k(  1  ‑r)( 乞

t一τ

1 ‑ , ) ー ( ( } et ‑ ( } e  t → ) k (  1  ‑T)YoJe 

となる。したがって,乙れらを資金循環式へ代入して整理すると( 3‑27) 式が n

られ,さらにこの( 3‑27) 式を

Bc , t=

一 μ

oxt+( 1  ̲ ( } e t ) (  e  +m‑l  )MoJe  へ代入すれば( 3  ‑28) 式が導かれる。

側 実際,英国の場合,短期的にはともかく,長期では満たされていると考えてよい。

(17)

他方でそれは国内価格の絶対水準をも高めるから,民間部門の実質金融資産 残高を減少させることとなる

o

この実質金融資産残高の減少に対し,民間部 門はその支出を抑制してこの減少分を補おうとするであろうから,為替切下 げは他方でデフレ効果を持っと言える

(‑Oe1k( 1‑T)Yo <  0)

。したがっ て,為替切下げの実質国民所得に及ぼす即時効果は,一方で正の需要転換効 果と他方で負の実質残高効果の合成されたものであり,必ずしも確定的なこ

とは言えないのである

O

これに対し,需要転換・実質残高効果は双方ともに 経常収支に対して正の方向に作用するから,為替切下げは,即時的には経常 収支を改善すると結論される。

(3‑29)

, 

(3

ー3

0 )式の経済的怠味とはこ

のようなものである。

つぎに,その定常効果は

Xt=Xt̲ 1 = X

∞,

8e t  = 8e t ̲ l  =8e

∞とおくことによ ってみることができる。これは

(3‑27)

, 

(3 ‑28)

式から

(3 ‑31)  (3 ‑32) 

Z ∞ =J1  ‑8 e ∞ ) ( ε +m‑1  )M~ L1 e

T

μ3

.00=T(1‑8e

) ( ε +m‑ 1  )Mo  . J e 

c.oo

T+μ 。

である

o

すなわち,実質残高効果はトランジットなものでしかなく,金融資 産のストック均衡が確立された後には消滅すべき性格のものであるから,為 替切下げが永続的効果を持つとしたら,それは需要転換効果を通じてでし かない。

(3‑31)

, 

(3 ‑32)式はこのことを示している o

そうすると,為 替切下げの有効性は全く

8e

∞の値に依存しており,それが永続的効果を持 つためには

8 e

< 1

であることが必要である

o

ところが,

(3 ‑24)

式から明らかなように,このモデ

j

レにおいては

8 e

=1

であり,したがって為替切下げは,長期的には,実質国民所得お よび経常収支には何らの効果をも斉らさないと結論される

D

これは,為替切 下げによる主として輸入原材料コストの上昇を通じた国内価格上昇を発端と して,賃金・物価のスパイラノレにより,当初低下した国内生産物相対価絡が

U 9 l  

ただし,乙の結論は,いわゆるJカーヴ効果を無視している。

四)

なお,この論点は,価格が需給動向に依存するか否かということに左右されない。

(18)

元の水準に復帰させられてしまうことによっている O かくして,乙れまでの 分析から導かれる結論とは,為替切下げは,短期的には有効でありうるとし ても,ここで想定されているような賃金・価格の設定行動が支配的である限 り,長期的にはその期待される永続的効果は無に帰してしまうのであって,

さしずめ残るのはその切下げ率に等しいだけの国内価格の上昇にすぎないと いうことである O

為替切下げの有効性が現在の英国においてきわめて限られたものでしかな いとしたら,そのオー j レターナティヴとしての輸入規制の有効性はどうであ ろうか。

乙の輸入規制の効果は,関税率引上げのそれとしてみることができる口そ こで,先の場合と同様に,当初定常均衡が支配しており,初期経常収支はバ ランスしていたとして,第一期首に関税率が引上げられたとしよう O そし て,この関税率の引上げ幅をム F=F*‑Fo > 0 と定義し,これと国内価給 増 分 Z t 三 Pt‑Po との聞には

(  3  ‑33)  Z t  =OFulF  ( t 二 三 1) 

という関係があるものとしておく O そうすると, (3 ‑25) ,  (3 ‑26) 式で e*‑eo 

0 とおき,さらに Po=eo=1 という乙とに注意すれば,以前と 同様の手続きを踏むことにより,

(3 ‑34) 

(3 ‑35) 

= 一 五2

二 立

‑ ‑ X L .

r+ μ 。 + ん (1‑r) 

+~Mo ー [OF t ( ε +m-

1  )Mo+(()Ft‑()FLJk(  1  ‑r)YoLAF 

7

μ 。 +k(1  ‑r)  Br.t= ー μ o k (1  ‑r) 

ー マ r+

μ

+k( 1  ‑r)  X L l  

ω 8 e ∞ < 1 を保証する政策としては,他に所得政策が考えられる。しかし N C は長 期ベースでの所得政策の有効性については懐疑的である。 C .E .   P .   G .   [ 4   J .   K .   Cuthbertson  [ 1 3 ]   c h a p . 3 .  

伺輸入数量制限も,特別の場合を除いて,関税と同等の機能を有しているから. ( た だし内外価格差のプレミアム帰属先は別とする〉数量制限の効果分析も関税のそれ

に ! J 貝じる。

(19)

+  ‑ = ‑ ‑ r [   ̲ + ̲ k ‑ ‑ . : C ,‑‑ l ̲ ‑ ̲ r . . : . . . . : : )   J = ‑ ‑ = [ ' ‑ ‑ m ̲ ‑ ̲ ( ) ̲ F ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ = ‑ t C   ε +m‑l)JMo+ μ 。 C ( ) F t ‑ ( } F t ̲ , )k

(l

‑r)Y r+ μ 。 +k

(l

‑r)

9...d が導かれる。そうすると,関税率引上げの即時効果は,

C  3

ー3

4 )

C  3

ー3

5 )

式に

t= 1

, 

Xo=()Fo=  0

を代入して

C  3  ‑36)  X

,= 

mMo‑()F f1 H Y . l . O‑V‑ , , [ L¥  C ε C;  + m ‑1  , 1 1 > ‑ ~ J~ Y.l. O' I<.\ ~ )Mo+kC  1  ‑r)YoJ 

 

J . L   OJ

.d

r+ μ 。 +kC 1  ‑r) 

C  3  ‑37) 

[r+kC  1  ‑r)J  [m‑()F , C

ε

+ m ‑ 1  )JMo+ μ o e F , kC  1  ‑r)Y  BC I l   =  L'  , IG¥  ~

 

JJ  L"~-V-

,¥ 

c : ;   ,,,~- ~ JJH . L O'!‑'OV‑

1<.¥ 

~

 

J . L   o

.d

7

+ μ 。 +kC ‑r) 

である。これらの式の意味はつぎのように考えるとよい。輸入規制は,それ が関税によるものであれまた数量制限によるものであれ,第ーに輸入を削減 する効果を持つ

(mMo

L1

F > 0)

。これは実質国民所得を増加させ,同時に 経常収支を改善させるように作用するであろう

O

しかし,第二に,それは国 内価格を騰貴させるかもしれない。仮りにそうであるとすれば,輸入規制に 伴うこの付随的効果は,一方でネットの輸出を減少させ

C‑()F 1 C ε + m ‑1)  Mo

.d

F <   0)

,実質国民所得の低下,経常収支の悪化となって現われる。ま た,他方でこれは実質残高減少に伴う民間総支出の削減

(‑(}F

k( 1  ‑r)Yo 

.d

F <   0)

したがって実質国民所得の減少と経常収支の改善という効果を持 っている。したがって,輸入規制の即時効果とは,その輸入削減効果と,国 内価格上昇を通じた付随的効果の合成されたものである

O

これに対して,輸入規制の定常効果は,

(3‑34)

, 

(3 ー 3 5 )

式で ,

Xt= 

Xt̲

= X

∞, 

( ) F t = e F t ̲

=eF

∞とおくことによってみることができる

O

すな わち,

(3 ‑38) 

(3 ‑39) 

Z

.c

m‑eF

(ε

+ m ‑ 1  )JM~JF r+ μ 。

r[m‑8F ( ε + m ‑ 1  JM  B c .

' L ' I>

‑ U ‑

00¥  c : ;   ,f1~- ~ J~ Y.l. O

JF 

r+ μ

である

o

乙の二式を見れば明らかなように,実質残高効果はそのストック均 衡が回復された後には消滅するという怠味でトランジットにしか作用しな いから,輸入規制の定常効果はその輸入削減効果と国内価格上昇を通じた需

(20)

要転換効果の両者の相対的大いさによって規定される

O

したがって,即時効 果にしろまた定常効果にしろ,輸入規制の有効性はその輸入削減効果が国内 価格勝負を通じる付随的効果によってどの程度相殺されるかに全く依存する と言ってよい。

しかしながら,

(3‑7)

, 

(3‑8)

式を見れば容易に判断されるように,

( a )

輸入原材料は輸入規制の対象から除かれていること,

( b )

企業は内外競争関 係とは全く独立に価格設定を行うこと,

( c )

労働者は国内価格に基づいて名目 賃金率の要求を行うという「想定」のもとにおいては,輸入規制は国内価栴 に何らの影響を及ぼさない ((jF

t =  0 

)乙とになるのである

O

もしそうだと すれば輸入規制の即時効果は

(3 ‑40)  x

,=  m

M K 山 一

U

一 +

μ 

(  3  ‑41) 

ニ 一 一 一 一 一 一 一 一

[T+k(  ‑T)JmM  " : ' < 0

.d

F>  0  T+μ 。+ん( 1  ‑T) 

であり,またその定常効果は

(3 ‑42) 

M

n u  

HH

一 づ

一 .

一 T

一 一

(3 ‑43)  Bc ,

∞ = 工 生 色.d

F>O

T 十 μ 。

であるから,輸入規制は,時間の長短を問わず,確実に実質凶民所得を増加 させ,また経常収支を改苔すると結論できる

O

このように,為替切下げと輸入規制というこつの代替的政策の評価におい て,か∞=1, (}F∞= 0という各政策の国内価格に及ぼす効果の非対抗i が「恕定」される限りにおいて,選択されるべき政策とは明らかに後者の輸 入規制であり,

N C

が対外政策としてこれを主張する主要根拠もまさしくこ の点にあると言わなければならない。

ID‑3.  ニュー・ケンブリッジの長期政策

さて,

NC

が対外政策として為替切下げよりも輸入規制を選好する理由が 切らかになったところで,これまで不充分にしか取扱われてこなかった税率

(21)

変更の効果分析をここで補足しておこう

O

この税率変更,とりわけ減税とい う政策オプションは

NC

の政策体系においてきわめて主要な役割を果たす

d

というのも,

(3‑7)

, 

(3‑8)

式を見れば明らかなように,賃金率,マ ークアップ率は税引後の要求水準に応じて設定されると考えられており,し たがって税率変更は民間部門の金融資産需要だけでなく国内価格にも影智‑を 与えないではおかないからである。

その効果を検討するため,これまでと同様,当初経済は定常状態にあり,

そして初期経常収支(したがって財政収支)はバランスしていたとしよう

o

そして,税率変更幅を

AT=T*‑TO < 0

と 定 義 す れ ば ( 乙 こ で は 減 税 の 効果を見る乙ととする),これと国内価格の増分

Zt=Pt‑P

。との問には,

(3‑7)

, 

(3‑8)

式等から

(3 ‑44)  Zt=O"ulT  ( t

詮1)

O"t=~一一 (l-Hot) ,

‑H Ho=(l+ 一一一)一一一‑n

W  ‑

o  '  ‑ 1  ‑To /  1  ‑To  h  W O  h 

J 2 三(1十一一一一)一一一 1  ‑To /  1  ‑To  on+

. 

,  f (1 

‑To)  ̲¥2(WO n+eo ・ a)

という関係があることがわかる

D

そうすると厄介な計算手続きは紙幅の都合

24) 

上省略することにして,ここではいきなり結果だけを掲載することにすれ

帥 ( 3

7)

( 3  ‑ 8 

 )

(3 ‑ 1 2 )

, 

(3 

‑l3)式から

Pt ー Po ' = i (1  +1 二干。 )n(Wt‑Wo)+ (1‑To)2  (Wo h  ・ n+eo ・ a ) L 1 T

1 1

九 ー ル 五 ( 孔

1 一 山 岳 o d T

であり,これらから

2t=Pt‑Po

とおいて

h  W  ‑ h  Wo ‑

Ho=(1 + 1 二 万 )

1二子~n ,

(1  +  1.二百) T 二 万 n

+←ー」

(  1  ‑TO)  ‑ 7 ( W

+eoa)

と記号を定義すれば,

z t  = H   02LI  +Q L 1 T ( t

1 , 20=0) 

が導かれる。これを解けば(

3‑44)

式が得られる。

é2~

Pt(G‑T 本 Yt) e = ; ‑ToXt‑Yo L 1 T ,Dt‑Do

と寸

(1‑TO)( 乞 t +  Yozt) ‑kYoJT 

ということに注なしさえすれば,これまでと同様である。

(22)

ば,減税の即時効果は

(3 ‑45)  =  (l‑k)+{) ¥.J.  "')  I 

t"

J J  [ L  ( ¥ . ε +m‑l) . . .   .J.)  μ

1‑'‑

。 0  I '"  +k

(

¥ .

l

1 .   ‑TO)J .  U /  J ( ‑ Y  AT  )  >  0  TO+ μ 。 +k

(l

‑ T O)

(  3  ‑46) 

(l‑k) 

+()t"

J  { k

(l

‑To ) ー [To+k

(l

‑TO)J(ε +m‑

l)}

(  ‑YoAT) 

T O +

μ

。 +k

(l

‑ T O)

で表わす乙とができる。ただし

O < k < 1

, {)t"

J >   0である。乙の繁雑な結

果については,減税の価格に及ぼす効果を無視した場合のそれと,その価格 に及ぼす効果を通じたいわば間接的効果とを分離して考えれば理解しやすい であろう口前者の効果((

1  ‑ k )  (  ‑ Y  oAT )  > 

) に つ い て は 既 に 前 節 で 説 明済みであるから省略しよう

o

後者については,減税が国内価格を低下させ うる可能性に端を発している

o

乙れは

( a )

価格・賃金率が需給動向とは無関係 に設定されること,そして

( b )

マークアップ率および賃金率が税引後の実質所 得要求に基づいて設定され, したがって税率の引下げはこうした実質所得要 求がー厄満たされやすくなるように作用することによっている。仮りに減税 がこのような効果を持つのであれば,それは一方で外国生産物価格に比して の自国生産物相対価格を低下させるから,需要転換効果により,実質国民所 得を増加させ,また経常収支を改善するように作用するであろう

( { ) J

"t

(ε+ 

m ‑1 

)J1

o (  ‑YoAT)> 0)

。しかし,他方で減税は国内価格の絶対水準をも低 下させるから,実質残高効果を通じて実質国民所得を一層増加させるととも に,また経常収支を悪化させる傾向がある

( { ) t

功(l

‑ T O) (‑YoAT)>  0)

したがって,減税はその価格効果を無視した場合の効果およびその価格効果 の双方ともに実質国民所得を増加させるように働くが,その経常収支に及ぼ す効果は,需要転換効果があるため,必ずしも定かではないのである

D

乙れに対して,減税の定常効果は,その即時効果を表わす

(3‑45)

, 

(3‑

4 6 )

式において実質残高効果

(k

(l

‑TO)YO )および税率変更に伴う金融資

産の蓄積による効果(

‑kY o)

をそれぞれ消去したものに等しい。乙れは金 融資産純取得がストック均衡の確立された定常均衡でゼロとなることに根拠 を置いている口そうすると,その定常効果は

(23)

(3 ‑47)  1+0 ' 1 '

( ε +m‑1)

m ‑ J . J μ  I ‑ ' ‑ O  (‑Yo . J T)>  0  ( " : 0 ' 1 '

∞> 

0) 

(3 ‑48) 

TO μ 。

μ 。 [l‑To O ' l ' ∞

(ε

+m‑1)]

Bc

∞ = ー ( ‑

Yo . J T )  

T O + μ 。

でみることができる。したがって,減税は,少なくともサプライ・サイドが (  3  ‑ 7) ,  (3 ‑ 8  )式によって捉えることができる限りにおいて,長期的 には国内価格を抑制しつつ実質国民所得を高めると結論できるが,その経常 収支に及ぼす効果については再び定かでなし )0 しかし , NC の見解に従い,

ここでは

(  3  ‑49)  l>T oO'I'

( ε +m‑1) 

と忽定しておく。すなわち,減税は,長期的に経常収支を悪化させると考え

26) 

ておくのである。

かくして,われわれは必要な政策効果分析を完了したこととなる o そうす ると,この最終段階での課題とは,対外的には経常収支がほぼバランスして

27) 

いるとはいえ,国内では大量の失業が発生している状況を出発点としてイン フ レ を 抑 制 し つ つ 内 外 均 衡 の 同 時 達 成 を 保 証 す る よ う な NC の 長 期 政 策 体 系を考察することである。

帥 K.Cuthbertson  [ l 3 J   p .   1 3 ー 1 4 , p . 8 7 を参照のこと。またこのことは w.

Godley and R .   May [ 1 5 J においてインプリシットである。

~

なお,均衡財政の効果も同様にしてみる乙とができる。政府支出増加を J G=G* 

‑Go>O と定義すれば,その即時効果は JG‑Yoih= 0 とおいて h ‑0 1 1[(  e  +m‑ 1 ) μ o+k(  1  ‑ T o ) J  

一一

YoJT TO+

μ

o+k(l‑To )  

h‑(} ' I ' I  { k (   1  ‑TO)

ー[

T  0 

k (   1  ‑ T  0 )   J  (  e 

m  ‑ 1  ) }  

BC'I=ー

μ

。 Yo , ;h

TO+ μ 。 +k(1  ‑To)  である。他方,その定常効果は

( } T o o (  e  +m  1 )μo 

z

∞=ー

YoJT く O

τ 。 +μo

T0 ( } ' I ' ∞(  e  +m‑ 1) 

Bc ,

∞=一

μ 。 . ノ YoJT く 0 T O 十

μ

となる。したがって,均衡財政の即時効果は必ずしも明らかではないが,その

;;Uiy

効果については実質国民所得を低下させ,経常収支を思化させると結論できる。こ

れと同様の結論は J . McCaIIum and D .   V i n e s [ 2 0 J とおいても導かれている o

{

1 9 7 6 " ' ‑ ' 7 7 年頃の英国がほぼこのような状況であった。

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