農・商学校通則公布に至る
地方実業学校発達状況に就て
―文部省年報に限定して―
内 山 克 巳
増 田 史 郎 亮
(1)
維新直後の実業教育は主として平等を主とする官立高等教育機関による政府の技術教育施策 によって押し進められたが(註1)地方にあっても極めて徐々ではあるが其の機運は些少なが
ら醸成されて行った。然し5年学制や爾後の諸々の実業教育関係法令規定や中央教育当局め関 心にも拘らず地:方学事当局にあっては普通教育,別けても小学校の増設・就学督責・学資蓄積
・設備充足・教員養成・教師改良・教則改正など教育行財政上当面の問題に焦点が向けられて 行ったことは周知の通りである。勿論これらの施策と共に幼児教育・社会教育その他の面に対
しても次第に関心が向けられ来ってはいるが,この間にあって地方学事当局の実業教育に対す る関心と営為の状況を文部省年報一府県学事年報に表れた限りに於て要約考察し今後の一参考 資料としたい。
(2)
既に学制発布後早くも地方実業教育実際の緒言も現れているが(註2)斯種教育機関事実上 の設置過程は姑く措き,試みに実業教育に対する関心要望(註3)を表明した府県学事当局の年 報順概数を拾ってその拡がりを頻数で見ると,次のように実業教育に対する関心は明治15年を 除き12年頃を機として徐々にその拡がりを示している。
自第1年報至第12年報0,4245611111561516(註4)
次に関心要望の内容に就て概察すると次表の如く各年度を通じて農工商と云った実業全般に わたる関心要望が多くなされ,叉!6・7年度を除き農業だけの要望は少なく農と商,農とコニと 云うように商工を併せているものがあり,惣じて云へば寧ろ工商関係に対する関心要望の比重 が高いように見える。このように見てくると斯種教育面に限って云へば徐々に拡がり乍らもそ の関心要望の方向が実業一般(農工商)殊に商工方面により多くの比重に於て志向せられてい るように観察せられる。
関心要望内容の年報順概数
農 コニ商 011123423574
農商0ユOlOOユ010エ4
農 農 工 商 工 其
工
商 他
0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 0
010011021055 000212011000 001000013QO3 000010233110
0 10000322000 (註5)
尚之等の府県当局が特に斯種教育乃至学校の設置を必要と感じた理由は勿論一般的には産業 の発達にあったろうが直接の理由動機が幾つか挙げられる。尤も少数の事例であるから時期区 分的に特徴を挙げられないが大体の傾向から云へば当初頃は先づ西洋の学術に刺戟されたのを 始まりとして(熊谷県),実学として将来一般学事進歩のため或は就学奨励のために採り入れ る意図(奈良・高知・小倉)や三三の偏見を正し学問は実学であることを知らせるため(山梨
・高知・兵庫・新潟・神奈川)などがある。叉小学校卒業後の志望に応へる機会として提供
(石川・福島・岩手)や直接家職乃至女子の斉家の資として(群馬・山形・山梨)或は地域特 有の産業開発のためがある(秋田・静岡・東京・高知・山形)。そうして次第に生産力の見地 から一般に殖産興業更に人民福利・国家隆盛のため(埼玉・群馬・山梨・福島・滋賀)などと 高まりを見せたもの其他が見られるが以上が特に注意せられる直接の理由動機群である。
(3)
前述のような地方学事当局の志向に拘らず事実としての学校設置はどのように進んで行った か。先づ学制前後の1,2の教育機関を経て6年以降各年度に新しく設立された公私立の実業 教育機関を所与の関係年報を通じて調整し(註6)年度順に新設校数並に学校種別を挙げて見 ると,明治10年及び12年の東京府商業夜学校や庶民夜学校の多数同年開設を除いて公立私立が 少数ながら年々同じ位に設立せられているが13年の一時的増加があっても公私丁数全体の漸増 傾向は見られない。又学校種別で云へば農業学校が公私立を併せて年々新設せられて行った傾 向が特徴的であり之に次いで商業関係学校の同様傾向が見られる程度である。
年度順新設学校数(明治6年〜17年 官立を除く)
公立3一一1721843211 私立一一4112442141
計3−42842285352
年度順学校種別公私立別新設丁数
農 了三l l三 三
工
商 量
商 船 商 工
二三=
三三=
一三=
穀==
翁==
了
5 了=
三l
lT
圭
璽
舞
丁
}
i
=三i三
丁=三=
農工翁=======三====
然るに三等年々新設の学校も廃校乃至公私立の切換などを経て行ったのであるから斯種学校 の発達過程を各年度における現在数で考察する必要がある。それで一応(註7)各年報に於て 公私立の専門学校として掲げられたものXうち農・獣・エ・商・商船の学校のみを選んで年報 順に処理すると,一般的に云へば学校現在数は次第に増加するが当初公私立並行の出発傾向か
らやがて公立学校設置が高配的となる方向に進んでいる。叉学校種別学校現在数について見る と商業学校が当初にあっては農業関係学校に比べて多く存在しているが次第に農業関係学校が 之を越え明治19年以降は両者がやx並行的に進む方向にある。工業関係学校にあっては地方学 事当局の関心要望にも拘らず殆んどその発達を示していない。公私立別に見ても工業・商船以 外,殊に農業学校に於て顕著であるが商業学校に於ても多くは公立であり叉両者は何れも公立 化の過程を強めていることが注意せられる。又教員生徒数に於てもこの方向に於て農商夫々次 第に増加しており,工業は18年以降私立学校が担当し特に21年から急増しているのが目立つ。
年報順学校現在数(3年報〜18年報)一官立を除く
公立 一177781012
私立 11357688
計1210ユ214141820
11 8 19
].3 ].9 18 17 18 ].8 19
5 7 7 7 6 4 3
18 26 25 24 24 22 22
年報順学校種別学校現在数 農
獣 商 工 商 農
業 医 業 業 船 工
1 1
1
ユ 2 5 6 8 10
一 一 一 一 ユ ユ
6 7 4 5 6 6
1 1 1 一 一 一
2 2 4 2 3 3
一 一 一 1 一 一
98 ユ386677
12 233333
55 6991099
].一 222222
33 334311
年報順学校種別公私立別 農 野
獣 医
商 業 工 業 商 船 農 工
翁了 総=
釜=
釜=
翁=
念=
了
三 了
6
ユ.
2
6 1 1
葺i
3 2
2 2 1
1 3 5
土 7 1
1 3 3
8 2
1 4 2
3 3
8 1
1 2 3
1 1 2
7 12 1 1 1 1 1 1 4 5 1 1
= i
l 1 2 2
7
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