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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

空力騒音の低減は、空気抵抗低減とともに航空機開発にとって極めて重要な空力技術課題 の一つである。空力音には、ジェットエンジンのような高速噴流から発生する音、着陸フェーズに おける脚など鈍体からの渦放出によるエオリス音、翼や機体表面に沿って発達する境界層から 発生する音などがあげられる。本論文は、境界層から発生する音を対象としており、境界層中の 単一の壁面粗度から放射される音の発生機構を調べている。壁面粗度から発生する空力音に 関する研究は、そのほとんどが十分に発達した乱流境界層を対象としたものであり、乱流遷移機構 との複合した現象の解明が必要とされる層流境界層を対象としたものは極めて少ない。

本論文は、層流境界層中の孤立粗度(小さな突起)から発生する空力音の発生機構とその発生 条件に関する実験的研究の成果をまとめたものである。実験では、低乱低騒音風洞に設置された 境界層平板において高レイノルズ数まで層流境界層を維持し、境界層表面の突起から発生する 空力音の音響場と境界層内の不安定波(トルミーン・シュリヒティング波動)の成長に関する詳細な 実験観察を行っている。以下に、本研究で得られた主な成果を要約する。

1)層流境界層中の二次元突起から発生する空力音の発生機構とその発生条件が実験的に 調べられ、境界層平板前縁で音響撹乱を受容して励起されたトルミーン・シュリヒティング波動

(T-S 波動)が、線形不安定領域で増幅した後突起直前の剥離泡で強い渦に急成長し、その渦 が突起前縁と干渉して狭帯域音が発生する音響フィードバック機構により狭帯域音が自励的に 維持されることが明らかにされた。また、狭帯域音の周波数は、剥離泡に到達するまでの T-S 波 動の線形増幅過程における周波数選択性により決定され、突起高さが境界層厚さ程度になると 剥離泡が十分に成長し、狭帯域音の強さが卓越することが示された。

2)フィードバック機構の構成要素である境界層の受容性(音による T-S 波動の励起)を微小 高さの孤立粗度により人為的に制御することにより、発生する狭帯域音が大きく変化することが 明らかにされた。すなわち、二次元突起の上流の線形不安定領域に境界層の排除厚さに比べ 一桁小さな厚みの二次元孤立粗度を設けると、粗度と突起の間で音響フィードバックループが 形成され、それが、元々の前縁と突起間でのフィードバックループに代わり狭帯域音の発生を 支配するようになる。

3)突起が主流方向に対してスパン方向に傾いている場合、突起の傾斜角とともに音圧レベルが 急速に減少し、わずか 10°の傾斜角で狭帯域音がほとんど放射されなくなることが明らかにされた。

これは、剥離泡で急成長した渦が二次元的な構造を維持したまま突起と干渉し、突起前縁と干渉 して突起前縁周りに誘起する圧力変動の位相が、突起前縁に沿ってスパン方向に揃わなくなるた めである。この結果は空力音の抑制を考える上で極めて重要である。

以上のように、本論文は、境界層中の突起から発生する狭帯域音の発生機構に関して新規 性に富む結果を与えており、博士(工学)の学位を与えるに十分であると判断する。

(最終試験又は試験の結果)

(2)

本学の学位規則に従い、最終試験を行った。公開の席上で論文発表を行い、学内外の多数 の教員による質疑討論を行った。また、論文審査委員により本論文及び関連分野に関する試 問を行った。これらの結果を総合的に審査した結果、専門分野についても十分な学力があるも のと認め、合格と判定した。

参照

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