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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

1.研究の目的

近年,自動車などの輸送機械においては,軽量化と共に振動騒音の低減が強く求められ ている.特に,車室のような閉空間内の内部騒音は,音響特性とそれを取り囲む構造体の 構造特性の相互の影響を考慮する必要があり,構造音響連成系として扱う必要がある.本 研究では,車室内騒音の原因となる車室空間の共鳴モードを音響主体の連成モードとして 捉え,構造変更により騒音低減を行うことを目的とする.これを達成するために本研究で は,以下の三つの検討を行っている.すなわち,1)構造音響連成系の音響主体モードの特 性把握のための音響加振法,2)構造音響連成系固有モードの主体性の判別手法,3)音響 主体連成モードを対象とした構造変更による騒音低減の方法である.

2.研究の方法と結果

本研究では,まず構造音響連成系の新たな加振手法を提案している.従来,モード特性 を実験的に計測するためには,構造加振による周波数応答関数の計測が広く行われてきた.

しかし,対象周波数を騒音帯域の周波数とすると,構造系のモード密度が大きくなりモー ド特性の把握が困難となる.音響主体の連成モードを把握するためには,いわゆる共鳴モ ードを確実に加振する手法が必要となる.そのため,本研究では音響加振用の六面体スピ ーカを制作し,その内部音圧を圧力計測用マイクロフォンで計測し,スピーカの排除体積 加速度を推定することにより,音響系の周波数応答関数を計測する方法を提案した.提案 法は,従来の音響加振法に比べて小型化が容易であり,しかも音響加振の入力項である排 除体積加速度の算出が可能である等の長所を有する.

次に,提案された音響加振法を用いて連成モードの同定を行い,騒音対策のため音響主 体の連成モードを特定する.本研究ではこの連成モードの主体性の判別方法を提案した.

連成モードは構造系もしくは音響系の特性の影響を大きく受けるため,それぞれの単体系 の特性が分かれば,これを元に主体性を判断することができるが,通常の実験計測では,

他の影響を排除した単体系の特性を計測することはできない.そこで本研究では連成間伝 達率を新たに定義し,連成モードの主体性を判別する方法を提案した.連成間伝達率では,

構造と音響の境界面付近の物理量として,例えば音圧を入力,構造の加速度を出力として 伝達率を算出する.このとき,伝達率には構造系のみの共振点が含まれ,音響系の共振点 を排除して観察することができる.本研究では,この連成間伝達率を用いることにより,

音響系主体の連成モードを特定することを提案している.提案法を用いて,実車両を対象 として音響主体の主要な連成モードが特定可能であることを示すことができた.

本研究ではさらに,音響主体の連成モードを対象とした騒音対策のための構造変更方法 を検討し,従来振動低減に用いられてきた動吸振器の原理を用いた音圧低減手法を提案し た.音響系を含む連成系を主系,構造変更を加える部分の構造系を付加系と見なし,付加 系と見なす構造系の固有振動数を対象とする主系の共振周波数に一致させることにより,

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音圧低減が可能であることを確認し,提案法の妥当性を示すことができた.

3.審査の結果

本研究は,構造音響連成系を対象として,実験計測に基づいた連成固有モードの把握と 騒音低減の方法を検討したものである.

まず,音響系のスピーカ加振法の提案においては,相反性の検証実験により,提案法で

は 400Hz 程度までの音響加振が精度良く実施できることが確認されており,その有用性が

認められる.また,スピーカが小型化されることにより,将来的には音響系の多点加振へ の拡張性も期待できる.

次に,構造音響連成系固有モードの主体性の判別法については,従来は有限要素解析に よる音響系単体の解析結果を比較参照して判断する等の曖昧な方法しかなかったため,提 案法はより客観的な判別方法として評価することができる.提案法は,対象の連成モード が明確な共振点を示していないと判断が難しくなる場合もあると考えられるが,様々な連 成特性を示す音響系の基本モードを対象とした騒音対策において特に有効であると判断さ れる.

さらに,構造変更による音圧低減手法ついては,構造の一部を付加系と見なして動吸振 器の原理を適用する点が,従来の微小変更を前提とした感度解析等のアプローチと異なる.

騒音低減効果の定量的な予測が困難であり,構造変更部位を適切に選択する必要がある等 の制約はあるが,必ずしも微小変更を前提とせず,騒音低減のための構造変更指針が得ら れるという点で有用性があり,その価値が認められる.

以上,本研究の成果は,構造音響連成系を対象とした連成特性の把握,ならびに騒音低 減のための構造変更を行う上で有用な,いくつかの重要な知見が得られており,工学的な らびに工業的価値が認められる.これらを総合的に判断した結果,本研究の成果は博士(工 学)に十分値するものと判断した.

4.最終試験の結果

本学の学位規定に則り,論文審査委員による論文審査会を 5 回開催し,本論文の内容お よび関連分野に関して多角的な視点から審査委員による筆答および口頭の試験を実施した.

また,公開の論文発表会を開催して,学内外から多くの参加者を得て多角的な討論を行っ た.その結果,申請者は論文内容および関連科目に関して,博士(工学)としての専門知 識を十分有するものと判断され,試験は合格と判定した.

参照

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