セルラ移動体通信システムにおける
高効率無線チャネル割当制御方式に関する研究
Study on Highly Efficient Radio Channel Allocation for Cellular Mobile Communication Systems
2013年 2月 大西 健太
セルラ移動体通信システムにおける
高効率無線チャネル割当制御方式に関する研究
Study on Highly Efficient Radio Channel Allocation for Cellular Mobile Communication Systems
2013年 2月
早稲田大学大学院国際情報通信研究科 国際情報通信学専攻 ワイヤレスシステム研究Ⅱ
大西 健太
目次
略語 ...iii
図表一覧 ...iv
第 1 章 緒言 ... 1
1.1 研究の背景と目的... 1
1.2 本論文の構成... 5
1.3 用語定義... 6
第 2 章 セル間の信号干渉の対策... 7
2.1 周波数の繰り返し... 7
2.2 静的チャネル割当... 8
2.3 動的チャネル割当... 10
第 3 章 排他制御によるチャネル割当方式...14
3.1 まえがき... 14
3.2 システムモデル... 15
3.3 システムの定式化... 15
3.3.1 先行研究におけるチャネル割当方式... 16
3.3.2 基地局間の排他制御... 16
3.4 シミュレーションと考察... 18
3.4.1 シミュレーション手順... 18
3.4.2 QIの最適化... 22
3.4.3 提案方式の考察... 24
3.5 むすび... 27
第 4 章 帯域保証チャネル割当方式...29
4.1 まえがき... 29
4.2 システムモデル... 30
4.3.1 先行研究におけるチャネル割当方式... 31
4.3.2 帯域保証... 31
4.4 シミュレーションと考察... 32
4.4.1 シミュレーション手順... 32
4.4.2 シミュレーション結果... 39
4.5 むすび... 51
第 5 章 基地局間 MIMO における帯域保証リソース割当方式 ...52
5.1 まえがき... 52
5.2 MIMOについて... 53
5.3 システムモデル... 53
5.4 提案方式... 55
5.5 シミュレーション結果... 59
5.6 むすび... 68
第 6 章 結言 ...70
参考文献 ...73
謝辞 ...75
研究業績 ...76
略語
3GPP 3rd Generation Partnership Project
BD Block Diagonalization
C.D.F Cumulative Distribution Function CSI Channel State Information
DCA Dynamic Channel Allocation
ESDL Eigenmode based Scheduling with Double Loops FCA Fixed Channel Allocation
GBR Guaranteed Bit Rate
GPA Greedy Power Allocation
LTE Long Term Evolution
JP Joint Processing
MIMO Multi Input Multi Output
OFDM Orthogonal Frequency Division Multiplexing QCI QoS Class Identifier
QoS Quality of Service
RB Resource Block
RNC Radio Network Controller
SINR Signal to Interference and Noise Ratio
WF Water Filling
Wi-Fi Wireless Fidelity
WiMAX Worldwide Interoperability for Microwave Access
図表一覧
図1.1-1 基地局間の干渉... 2
表1.1-1 LTEのQCI一覧... 4
図1.2-1 論文構成... 5
図2.1-1 基地局への周波数帯域の割当イメージ... 8
図2.2-1 静的チャネル割当... 9
図2.2-2 フラクショナル周波数繰り返し方式... 10
図2.3-1 OFDMによる周波数・時間軸方向のユーザへのリソース割当の例.. 13
図2.3-2 LTEによる周波数・時間軸方向のユーザへのリソース割当の例... 13
図3.3-1 基地局間排他制御... 17
図3.4-1 提案方式のフローチャート... 20
表3.4-1 シミュレーション諸元... 22
図3.4-2 パラメータQI/N0に対するシステムスループット... 23
図3.4-3 システムスループット... 24
図3.4-4 端末の平均スループット... 25
図3.4-5 呼損率... 25
表3.4-2 要求トラヒック量83%, 100%の端末の平均スループットと呼損率... 27
図4.4-1 提案方式のフローチャート... 33
図4.4-2 干渉抑止制御のフローチャート... 35
表4.4-1 シミュレーション諸元... 40
図4.4-3 端末分布... 41
図4.4-4 各端末における受信電力と干渉電力のマッピング... 42
図4.4-5 端末の各チャネルにおけるSINRに関する累積分布... 43
図4.4-6 平均のSINR... 44
図4.4-7 呼損率... 44
図4.4-8 システムスループット... 45
図4.4-9 平均のSINR... 46
図4.4-10 呼損率... 47
図4.4-11 スループットが0.2Mbpsより小さいチャネルの割合... 48
図4.4-12 チャネルスループットの累積分布... 49
図4.4-13 システムスループット... 50
図5.3-1 システムモデル... 54
図5.4-1 提案方式のリソース割当アルゴリズム... 56
表5.5-1 シミュレーション諸元... 60
図5.5-1 ESDL方式のリソース割当アルゴリズム... 61
図5.5-3 端末の平均スループット... 65
図5.5-4 システムスループット... 65
図5.5-5 呼損率... 66
表5.5-2 各方式のスループットの比較... 68
第 1 章 緒言
1.1 研究の背景と目的
近年,携帯電話機器に占めるスマートフォンやタブレット端末の割合が急激 に増加している.スマートフォンやタブレット端末は,あらかじめ機能が構成 され,ユーザが追加できるアプリケーションなども機能が制限されているベー シックフォンと比べて,画面の大きさ,画面解像度,操作性等,ユーザインタ フェースの性能が向上している.また,アプリケーションの作成やインストー ルが容易で,パーソナルコンピュータ(PC)のような自由な操作を可能である.ま た,クラウドサービスの出現により,ユーザデータを自分の端末ではなくイン ターネット上に保存して活用する利用形態が広がりを見せている.クラウドで はインターネットを通じて動画のようなリッチコンテンツが端末プラットフォ ームに依存することなく扱われることから,これまではパーソナルコンピュー タを用いて実現されていた機能が,モバイル通信においても使われるようにな った.例えば,Googleの提供するWebメールサービスであるGmailやウェブア
ルバムのPicasa や Evernoteが提供している情報蓄積サービスについても,スマ
ートフォン向けのアプリが用意され,多くのユーザが存在する.このようにモ バイル通信で利用するコンテンツのリッチ化により通信トラヒック量は増加の 一途をたどっており,高速で大容量な通信を可能にするモバイルネットワーク が求められる.
モバイルネットワークの高速化に向けては,LTE(Long Term Evolution)[1]のサ ービスが2010年に開始され,第4世代と呼ばれる新しい無線通信技術の開発が 行われている.加えて,大容量化に向けては,周波数再編による 800MHz 帯な どモバイルの周波数帯域の増加,Wi-Fi(Wireless Fidelity)へのトラヒックオフロー ド,小型セルの活用等が行われている.しかし,トラヒック量の爆発的な増加 に対して,多くのユーザで限りある周波数資源を効率的に利用するには,ユー ザの利用用途によってネットワークの通信品質(QoS: Quality of Service)を制御 することによって,より多くのユーザが快適にモバイル通信を行うことが必要 である.たとえば,Skype 等によるビデオ通話や USTREAM 等のリアルタイム
なストリーミングを行っているユーザの通信品質が低下した場合,遅延に伴う 映像や音声の劣化や途切れにより快適な利用が阻害される可能性があるため品 質を保証した通信が必要である.サービスを正常に利用するために必要な最小 スループットを満たさない場合は,通信をしてもユーザはサービスを利用でき ずメリットはない.また,そのような通信を行うモバイルネットワークとして も周波数資源や電力の浪費となりメリットはない.そこで,そのリソースを他 の端末に割当てることで,サービスを利用できる端末の増加とシステム効率の 増加という効果が期待できる.一方,Web ブラウジングやメール,ユーザが意 識せずにアプリがバックグラウンドで定期的に行う通信では品質が悪化した場 合でも遅延が許容されるためスループットが保証されない通信でもユーザの利 便性はあまり損なわれない.LTE の場合,表 1.1-1 のように QCI(QoS Class Identifier)に応じたQoS制御の枠組みが3GPP(3rd Generation Partnership Project)標 準上[2]で規定されている.QCIの値が1~4については通信中には一定の通信品 質が保証される.QCIの値が5~9については通信品質が保証されておらず,通 信中のパケット損失が発生する可能性がある.
現在のモバイル通信システムは,周波数利用効率の観点からセルラ方式を採 用している.広い地域をセルのように細かく分割し各セルに基地局を設置する ことで,セル当たりの収容端末数を限定し,高速,大容量の通信が可能になる.
しかし,セルラ方式では,図1.1-1に示すように近傍の基地局間で同じ周波数チ ャネルを用いて伝送する場合,ある基地局から送信される信号が近傍の基地局 と通信をしている端末に干渉が生じ,通信品質が悪くなる.特にセル端と呼ば れるセルの境界付近では干渉が大きくなる.そこで,このような基地局間の干 渉を防ぎ,端末の通信品質を向上させる必要がある.
基地局
基地局
所望の信号
所望の信号 干渉が発生
干渉信号
図1.1-1 基地局間の干渉
上記に述べてきたように,セルラ方式によるモバイルネットワークにおいて,
スループットを提供することで,限られた周波数資源を有効活用し,多くのユ ーザに快適にモバイル通信を提供することが必要である.そこで,本論文では,
そ の よ う な モ バ イ ル 通 信 を 実 現 す る た め に ,LTE や WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)のように高速,大容量通信として利用が拡大 し て い る 直 交 周 波 数 分 割 多 重 化 (OFDM: Orthogonal Frequency Division
Multiplexing)において,複数の基地局を考慮したセルラシステムにおけるチャ
ネル割当方式を提案し,計算機シミュレーションを用いて提案方式の有効性を 明らかにすることを目的とした.提案するチャネル割当方式では,個々のユー ザが快適にサービスを利用可能とするために,各端末に対してサービスに必要 なチャネル数やスループットを保証した通信を提供する.ある端末がサービス に必要な最小のスループットが得られない場合,その端末を使用しているユー ザにとってその通信は不要である.また,その端末の通信が他の端末へ干渉を 与えたり,周波数チャネルを無駄に消費したり,悪影響を及ぼすため,提案方 式ではそのような端末に通信は行わせず他の端末にチャネルを割当てる.
表1.1-1 LTEのQCI一覧 QCI Resource
Type
Priority Packet Delay Budget
Packet Error
Loss Rate
Example Services
1 GBR 2 100ms 10-2 Conversational Voice
2 GBR 4 150ms 10-3 Conversational Video (Live
Streaming)
3 GBR 3 50ms 10-3 Real Time Gaming
4 GBR 5 300ms 10-6 Non-Conversational Video
(Buffered Streaming)
5 Non-GBR 1 100ms 10-6 IMS Signaling
6 Non-GBR 6 300ms 10-6 Video (Buffered Streaming)
TCP-based (e.g., www, e-mail, chat, ftp, p2p file sharing, progressive video, etc.)
7 Non-GBR 7 100ms 10-3 Voice,
Video (Live Streaming) Interactive Gaming
8 Non-GBR 8 300ms 10-6 Video (Buffered Streaming)
TCP-based (e.g., www, e-mail, chat, ftp, p2p file
9 Non-GBR 9 300ms 10-6 sharing, progressive video, etc.
1.2 本論文の構成
1.1節で述べた課題に対して,第2章では,これまでに検討されてきたセル間 干渉制御方式について述べる.
第3章では,中央制御装置(RNC: Radio Network Controller)を用いた基地局間で の動的周波数チャネル割当アルゴリズムについて提案する.各時刻で端末が一 定のチャネル数を割当てられている条件の下で,近傍の基地局からの信号で互 いに干渉する可能性がある信号を排他的に利用可能とする方式(以降,排他的 チャネル割当方式と呼ぶ)を提案する[3].
第 4 章では,第 3 章と同じく中央制御装置セルを用いた基地局間での動的周 波数チャネル割当アルゴリズムを提案する.セル間干渉条件下において,各端 末のチャネル数のみでなく各端末のスループットを保証する基地局間チャネル 割当制御方式について提案する[4].
第5章では,複数基地局間連携 MIMO(Multiple Input Multiple Output)のJoint
Processingを用いた伝送において,個々の端末のスループットを保証するリソー
ス割当方式を提案する[5].なお,第5章のリソース割当とは,電力割当とMIMO の空間的に独立した伝搬路の割当を指す.
第6章で本論文についてまとめる.
第2章:従来の技術
第3章:排他制御による チャネル割当方式 第4章:帯域保証動的 チャネル割当方式
第5章:基地局間MIMOにおける 帯域保証動的リソース割当方式 MIMOの場合
MIMO以外の場合
第1章:緒言
新規チャネル割当方式の提案
改善
第6章:結言
図1.2-1 論文構成
1.3 用語定義
本論文で使用する用語について説明する.
・要求トラヒック量…セルラシステム全体における周波数チャネル数の総和に 対して,端末が通信を要求するチャネル数の総和の割合.
・要求スループット…各端末がネットワークに要求する保証すべき最小のスル ープット.
・システムスループット…セルラシステム全体における全ての端末のスループ ットを足し合わせた合計値.
・平均スループット…セルラシステム全体における通信端末のスループットの 平均値.システムスループットを通信端末数で割った値に一致する.
・呼損…チャネル割当制御において,通信を要求している端末が通信対象外と なり,通信できないこと.
第 2 章
セル間の信号干渉の対策
第 1 章で述べたように,セルラ方式では近傍の基地局間で同じ周波数チャネ ルを用いて伝送する場合,ある基地局から送信される信号が近傍の基地局と通 信をしている端末に干渉が生じ,通信品質が悪くなる.本章では,これまでに 提案されている代表的なセル間の信号干渉の対策について述べる.
2.1 周波数の繰り返し
セル間の干渉は図1.1-1のように近傍のセルで同一周波数を使用することで問 題となる.特にセル端では干渉が大きい.セル間干渉を防ぐために,近傍のセ ルにおける使用周波数帯の分離や同一時間使用を避けることなどが考えられる.
そ れ ら の 実 現 方 法 と し て は 大 き く 静 的 チ ャ ネ ル 割 当(FCA: Fixed Channel Allocation)と動的チャネル割当(DCA: Dynamic Channel Allocation)に大別するこ とができる.図2.1-1に基地局への周波数帯域の割当イメージを示す.図2.1-1(a) に 3 つの周波数帯域による静的チャネル割当方式を示す.静的チャネル割当と は,各基地局で別の周波数帯域を使用するように固定的に決めておくチャネル 割当方式である.近傍の基地局では互いに異なる周波数帯域を用いるように設 計し,干渉を防ぐ.次に,図2.1-1(b)に1つの周波数帯域の繰り返しによるチャ ネル割当方式を示す.基地局で使用可能な周波数帯域はシステム全体で利用可 能な周波数帯域と等しいので,図2.1-1(a)と比べて3倍の周波数利用効率が見込 める.しかし,セル間での同一使用周波数の使用による干渉のため,端末の分 布や通信の状況に従って臨機応変に各端末で使用する周波数帯域を決定する必 要がある(動的チャネル割当).
静的チャネル割当方式と動的チャネル割当方式の詳細について2.2節,2.3節 にそれぞれ示す.
f f
(a) (b)
図2.1-1 基地局への周波数帯域の割当イメージ
2.2 静的チャネル割当
2.1節で述べた通り,静的チャネル割当では各基地局で近傍の基地局とは異な る周波数帯域を固定的に使用する.近傍の基地局では互いに異なる周波数帯域 を用いるので,干渉を防ぐことができる.信号の干渉を考慮する必要がないく らい距離が離れた基地局同士では,同じ周波数帯域を利用することが可能であ る.これによって限られた周波数チャネルを繰り返し利用することで,広い範 囲での通信をカバ-することができる.
周波数の繰り返し構造の代表例を図 2.2-1 に示す.図 2.2-1(a)が 3 セル繰り返 しであり,図2.2-1(b)が4セル繰り返しとなる.図からわかる通り,それぞれの 基地局で使用可能な周波数帯域はシステム全体で利用可能な周波数帯域の 3 分 の1または4分の1になる.
f f
(a) 3 セル繰返し (b) 4 セル繰返し
図2.2-1 静的チャネル割当
((a)3セル繰り返し, (b)4セル繰り返し)
3セル繰り返し方式や4セル繰り返し方式はセル間干渉を低減することはでき るが,各基地局で使用可能な周波数帯域がそれぞれ固定的され使える周波数帯 域が少ないため,通信容量も小さくなる.静的チャネル割当によって利用可能 な周波数帯域が減るため,その欠点を補完する方式としてフラクショナル周波 数繰り返し方式[6]がある.フラクショナル周波数繰り返しのイメージを図2.2-2 に示す.
f セル中央 f
セル端
図2.2-2 フラクショナル周波数繰り返し方式
フラクショナル周波数繰り返し方式では,セル端での信号干渉を避けるために
図 2.2-1 と同様に各基地局のエッジで固定的に周波数帯域を割当てる.さらに,
セル中央付近では送信電力を下げてシステム全体で使用できる周波数帯域を割 当てる.これによって,セルのエッジ付近の端末は周波数繰り返しにより近傍 のセルと干渉することなく通信が可能になり,セル中央付近の端末は近傍のセ ルに位置する端末に与える干渉の影響を小さくした上で,システムの全周波数 帯域を利用して通信することができる.
2.3 動的チャネル割当
2.1 節で述べた通り,静的チャネル割当は,システム全体の周波数帯域の内,
一部の周波数帯域を基地局に固定的に割当てるため,トラヒックや無線品質に 応じてシステム全体の周波数帯域を最大限活用することができず,周波数資源 に無駄が生じる.一方,動的チャネル割当では,各基地局で使える周波数帯域
域を決定する.同時に,他の端末への干渉を低減するため送信電力制御を行う.
動的チャネル割当方式では,システムのいずれの周波数帯域でもトラヒックや 無線品質の状況に応じて動的に割当てることができるため,システム全体の周 波数帯域を有効に活用することができる.これまでにも動的チャネル割当に関 して多くの研究がなされてきた[7]-[15].その中には,複数の基地局におけるチ ャネル割当を1つのRNCで集約的に実施する方式(以下,中央制御方式)[8][9]
や,近傍の基地局からのチャネル情報を利用して分散的に各基地局でチャネル 割当を実施する方式(以下,分散方式)がある[10][12].
図2.3-1に示す通り,OFDMの無線リソースは時間軸と周波数軸に分けること
ができ,時間と周波数チャネルで分けられたリソースがそれぞれのユーザに割 当てられる.具体例として,LTE のリソース割当のイメージを図 2.3-2 に示す.
LTEのリソース割当の最小単位はリソースブロック(RB: Resource Block)と呼ば れ,周波数方向には180kHz の周波数帯域になる 12 のサブキャリア,時間方向
には0.5msのスロット(slot)から構成されている[11].それぞれのRBを割当てる
ユーザは 1 スロット毎に変更可能であるが,リソース割当制御の最小単位は 1 サブフレームであり,時間にして 1ms である.周囲の基地局との干渉を避ける ためには,時間毎に周波数チャネル割当が必要である.OFDM においても動的 チャネル割当を用いることで,ユーザのトラヒックやチャネル品質によってそ れぞれのユーザに割当てるリソースを動的に変更することで,有効に無線リソ ースを活用することができる.[13][14]では,RNCと基地局で分担してリソース 割当を行う準中央制御方式を提案しており,システム全体として高いスループ ットを実現できることが報告されている.
[13]では,周囲の基地局から最も大きく干渉する信号を干渉波とみなし,それ 以外の干渉信号については雑音とみなす.端末は,全ての周囲の基地局からの 干渉波をフィードバックするのではなく,一番支配的な干渉波が存在する場合 と,存在しない場合の実現可能なスループットを基地局にフィードバックする.
これによりフィードバックのオーバーヘッドが小さくなる.RNC はスーパーフ レーム時間毎に,周囲の基地局との干渉を踏まえて各基地局に周波数チャネル を割当て,基地局がフレーム時間毎にチャネル品質やトラヒック状況を踏まえ て各ユーザに対して周波数チャネルを割当てる.
[14]では,端末の要求トラヒック(保証伝送速度(GBR: Guaranteed Bit Rate)と上 限伝送速度(PBR: Peek Bit Rate))が考慮されている.実際には,各端末に割当てら れるリソースブロックの最小と最大の値が決まっている条件の下で,システム 全体のスループットを最大化するように周波数チャネルを割当てる.また[13]
と異なり,RNC はスーパーフレーム時間毎に各基地局と各端末との間のチャネ
ル情報(CSI: Channel State Information)を得て,それを元にセル間干渉を考慮した
チャネル割当を行っている.基地局はRNCで割当てられたリソースに従い瞬間 的なチャネル品質にもとづいてチャネル割当を行うことで,マルチユーザダイ バーシティを実現する.
周波数
時間
ユーザA
チャネル1 チャネル2 チャネル3
ユーザB ユーザC
図2.3-1 OFDMによる周波数・時間軸方向のユーザへのリソース割当の例
周波数
時間
ユーザA
ユーザB ユーザC 12サブキャリア
(180kHz)
1タイムスロット (0.5ms) リソースブロック
図2.3-2 LTEによる周波数・時間軸方向のユーザへのリソース割当の例
第 3 章
排他制御によるチャネル割当方式
3.1 まえがき
周波数の繰り返し使用の点で静的チャネル割当よりも動的チャネル割当の方 が効率的であることは2.3節に述べた.第1章でも述べた通り,無線通信におけ るリアルタイム伝送サービス等では,通信のスループットと遅延時間の保証が 求められる.端末のスループットを考慮した周波数チャネル割当に関する先行 研究として[14]がある.2.3節でふれたように,[14]では,各端末に割当てられる チャネル数を保証することで要求されたスループットを実現しようとしている.
しかし,[14]で提案されている方式では,近傍の基地局と通信を行う複数の端末 が,同じ周波数帯域を使っているような場合,それらの信号は互いに干渉し,
端末のスループット低下を引き起こす.多くの端末が通信を要求しているよう な高トラヒックな状況になるにつれ干渉が増加し,各端末で得られるスループ ットが小さくなる.さらに,システム全体のスループットも小さくなる.
近傍の基地局の端末間で同じ周波数帯のチャネルを使うことによる干渉につ いて,いずれかの端末が通信を抑止することで,他方の端末の S/N が改善する ことでスループットの増加し,トラヒック量が多くても大きなスループットが 得られると期待できる.さらに,結果的にシステム全体のスループットを大き くすることが期待できる.そこで,第 3 章では,通信を行う端末のチャネル数 の保証する条件下において,近傍の基地局で同じ周波数チャネルを使用し,信 号干渉が発生する場合,それらの基地局同士で互いに排他的にその周波数チャ ネルを利用可能とする方式を提案する.
第3章の構成は次の通りである.3.2節では提案する排他的チャネル割当方式 で用いるシステムモデルについて説明する.3.3節では提案の排他的チャネル割 当方式の定式化を行う.3.4節では提案方式のシミュレーション結果を示し,過 去に提案されてきた方式と結果を比較する.最後に,3.5節では第3章の提案方 式についてまとめる.
3.2 システムモデル
提案方式は,図2.1-1(b)に示す1セル周波数繰り返しモデルを用いた動的チャ ネル割当である.同時刻における割当てるリソースは,それぞれの端末に対す るチャネルの割当と電力の割当がある.動的な電力割当制御については,[15]
によると,電力を固定的に割当てた場合と比較してわずかな性能向上しか得ら れていない.従って,本章では動的な電力割当制御は行わず固定的に電力を割 当てる.
伝播損失は(3.1)式のようになる.
ij n ij hd
g (3.1)
ここで,dijはi番目の基地局(以降,基地局iと示す)とj番目の端末(以降,端末 jと示す)の間の距離,hは伝播損失係数,nは距離減衰係数を示す.
本システムにおいて,全体のチャネル数をMとし,それぞれの周波数帯域を Δfとする.Nb個の基地局がNm個の端末と通信を行う.基地局iが用いるチャネ ル数をMiとする.図2.1-1 (a)の場合,Mi=M/3であり,図2.1-1(b)の場合,Mi=M となる.Di(m)は基地局iがm番目のチャネル(以降,チャネルmと示す)を使って 送信可能な端末の集合である.xij(m)は,基地局iから端末jに向けてチャネルm を使ったデータの送信状態を示し,送信する場合は xij(m)=1,未送信の場合は xij(m)=0を示す.
Rij(m)は基地局iから端末jに対してチャネルmを使ってデータを送信するとき のスループットの大きさを示す.シャノンの定理より Rij(m)は(3.2)式のように表 される.
i p q Dp m
m pj pq m ij
ij
N x g Q
Q f g
R
) (
) 0 (
) 2
(
log 1
(3.2)ここで,N0,は周波数幅Δf当たりの熱雑音,Qはチャネル当りの基地局の送信 電力を示す.
3.3 システムの定式化
3.3節では,前節に述べたシステムの定式化を行う.
3.3.1 先行研究におけるチャネル割当方式
初めに,提案方式のベースとなる[14]のチャネル割当方式について述べる.初 めの条件として,(3.3)式に示すように,それぞれのチャネルにおいて,各基地局 から同じ時刻にデータ送信可能な端末はただ一つある.
)
1
( ) (
m i m D q
x
iq
mMi,
i 1 , 2 ,
,
Nb
(3.3)(3.4)式は,それぞれの端末で発生する通信については,あらかじめ設定されたチ ャネル数 N であることを示している.一般的には,各端末に対してはそれぞれ 異なるチャネル数を割当可能であるが,ここではトラヒック量に着目するため,
各端末にはN個のチャネルが割当てられているものとする.
N x
mMi m
ij
)(
jDi(m),
i 1 , 2 ,
,
Nb
(3.4)上記の拘束条件の下,システムスループットを最大化する.目的関数は(3.5)式の ように示される.
i j Di m m Mi
ij m ij m
x R
) (
) ( )
max
( (3.5)3.3.2 基地局間の排他制御
3.2節で述べたように,提案方式では,(3.3),(3.4)式に加えてセル間干渉を減 らすための排他的制御を拘束条件として加える.排他的制御条件を図3.3-1を用 いて説明する.
i g
pjQ(>Q
I) j
p
g
p’jQ(<Q
I) p’
P
j(m)( )
P
j(m)( )
図3.3-1 基地局間排他制御
図3.3-1では基地局iから端末jに対してチャネルmを使って信号を送信する.
そのとき,同時に基地局iの周囲にある基地局pは,チャネルmを使って自セ ルにある端末に信号を送信しているとする.基地局pから送信される信号は端 末jに干渉を引き起こし,端末jのスループットを低下させる.そこで,干渉を 防ぐために基地局iと基地局pがチャネルmを排他的に利用可能とするように 条件を加える.端末jにおけるチャネル当りの電力が閾値QIを超えるとき干渉 を無視できないと仮定する.このとき,端末jに干渉を与えるうる基地局の集合 をPj(m)とすると,Pj(m)は(3.6)式のようになる.
: ,
( )0 ,
)
(m pj I p m
j p g Q Q D
P
m m
i j N
D j i
p
,
( ),
1 , 2 ,
,
(3.6)
図3.3-1で,基地局p’が端末jに与える電力の大きさはQIよりも小さいことを示
す.その場合,基地局p’は Pj(m)には含まない.基地局i がチャネル mを使って 端末jに信号を送信しようとしたとき,その周囲の基地局と基地局iがチャネル mを排他的に使用可能とする条件を(3.7)式に示す.
)
1
( ) ( )
(
m p m
D q m pq
ij
x
x
(3.7)
pPj(m),
jDi(m),
mMi,
i 1 , 2 ,
,
Nb
図3.3-1では,基地局iがチャネルmを使って端末jに信号を送信する場合,Pj(m)
に含まれる基地局 p はチャネル m を使用できない.一方で,Pj(m)に含まれない 基地局p’は,基地局 i がチャネルm を使用しているかに関わらず,チャネルm を使用することができる.
3.4 シミュレーションと考察
3.4.1 シミュレーション手順
第3.3節で述べた拘束条件および目的関数より,提案方式の最適化問題は(3.8) 式のように書ける.
i j Di m m Mi
ij m ij m
x R
) (
) ( )
max
(拘束条件:
)
1
( ) (
m i m D q
x
iq
mMi,
i 1 , 2 ,
,
Nb
N x
mMi m
ij
)(
jDi(m),
i 1 , 2 ,
,
Nb
)
1
( ) ( )
(
m p m
D q m pq
ij
x
x
pPj(m),
jDi(m),
mMi,
i 1 , 2 ,
,
Nb
(3.8)
ここで,xij(m)は0または1を示す変数であり,(3.8)式は0-1整数計画問題となる.
[14]の方式(排他制御は考慮せずシステム全体のスループットを最大化するため,
以下,全体最適化方式と言う)では,グリーディ法(Greedy Method)を用いてお
しかしながら,(3.8)式に含まれる(3.7)式は異なる基地局に属する端末同士の拘束 条件であるから,[14]と同じ方法で解くことはできない.そこで,非線形0-1整 数計画問題である(3.8)式を解くため,(3.5)式で表される目的関数の線形化と0-1 整数変数である xij(m)の実数への緩和を行う.目的関数の線形化は排他制御条件 を用いて行う.(3.2) 式の分母に含まれる項 xij(m)gpjQ は,基地局 i が端末 j に信 号を送信しているときに,周囲の基地局から受ける干渉電力を示す.基地局 i から受信する信号電力gpjQと比較して干渉電力が十分に小さければ,または(3.7) 式の排他制御によって基地局 i が送信する信号と同じチャネルを周囲の基地局 が使用しなければ,(3.9)式のように,Rij(m)は変数xij(m)を含まない定数として表さ れる.
0 ) 2
(
log 1
N Q f g
R
ij m ij (3.9)これにより,目的関数((3.5)式)は線形 0-1 整数計画問題に近似される.0-1 整数 変数xij(m)の実数への緩和を行うことで,(3.8)式より線形計画問題を得ることがで きる.
ある ない
Start
全ての0-1整数変数xij(m) を実数に緩和
最適化問題を解く
得られた解xij(m)のう ち,0.5より大きいも のは存在するか?
得られた解xij(m)のうち,
最も大きい値となるもの を見つける
そのxij(m)を実際の 解としてxij(m)=1とする
式(3.3),(3.4),(3.7) から可能なものは
xij(m)=0とする
全てのxij(m)の値が 決定しているか?
決定している
決定していない
End
図3.4-1 提案方式のフローチャート
上記の手段を用いて,逐次的に線形計画問題を解くことで準最適解を導出する.
図3.4-1にそのフローチャートを示す.
初めに,(3.8)式の0-1整数変数xij(m)を実数緩和して線形計画問題を導出し,そ
れを解く.得られた実数解xij(m)が0.5よりも大きい場合は,そのxij(m)を1に決定
する.(3.4)式の拘束条件より,端末 j に関しては最大で N 個の実数解 xij(m)を 1
に決定することができる.もし0.5よりも大きい実数解 xij(m)が存在しない場合,
全ての実数解xij(m)の中で最も大きい値を持つものを1 に決定する.つまり,0.5 よりも大きいxij(m),または,全ての実数解xij(m)の中で最も大きい値を持つxij(m) が 尤も 1 とすべき変数とみなしている.次に,前の手順で新しくいくつかの変数 xij(m)を1とみなすことにより,(3.3),(3.4),(3.7)式を用いて変数xij(m)を0とみな すことが可能なものは,xij(m)=0 とする.その後,全ての変数 xij(m)が 0 または 1 に決定されたかどうかをチェックする.もし,まだ 0 または 1 に決定されてい ない変数 xij(m)が存在する場合は,これまでに 0 または 1に決定された xij(m)はそ のまま用いて,新しく最適化問題を解き,まだ 0 または 1 に決定されていない xij(m)を0または1に決定していく.これらの手順を全てのxij(m)が0または1に決 定されるまで行う.この結果,準最適解を得ることができる.システム全体と して高いスループットに寄与する端末やチャネルが通信を行うものとして決定 していくことになる.もし,ある基地局に属する端末から要求されるチャネル の総和がその基地局で提供可能なチャネル数よりも小さい場合,余ったチャネ ルは使われないことになる.また,ある端末jについて,全てのmでxij(m)=0と なる場合,端末jは呼損となり,通信を行わない.
表3.4-1にシミュレーション諸元を示す.本シミュレーションにおいては,端
末に属している全ての端末が通信を行うとする.提案方式(Exclude)のシミュレ ーションと共に固定チャネル割当方式(FCA)と[14]で採用されている全体最適化
方式(Greedy)についてもシミュレーションを行い,提案方式の結果と比較するこ
とでその有効性を検証する.提案方式は線形計画法で解けるため多項式時間内 で解くことができるが,全体最適化方式は0-1整数計画問題であるため多項式時 間で解くことができない.
表3.4-1 シミュレーション諸元
Cellular layout 7 cells
1 cell reused, 3 cell reused
Cell radius 1,300m
System Bandwidth 14.4MHz
Channel bandwidthΔf 180kHz
Number of channels 60
Number of Mobile Station(MS)s per cell
10
Coefficient of path loss h 1/200
Pass loss index n 3.5
Shadow fading Log normal distribution
(Standard deviation 10dB) BS transmitting power per channelQ 22.2dBm
White noise per channelN0 -121.4dBm
3.4.2 Q
Iの最適化
3.3.2項で述べた通り,近傍の基地局から受けた干渉電力が閾値QIを上回ると
きチャネルの基地局間排他制御を行う.QIの値を決定するため,QIの値を変え たときのシステムスループットについてシミュレーションを行った.図3.4-2は そのシミュレーション結果を示す.
50 100 150 200 250
0 10 20 30
Systemthroughput(Mbps)
Parameter
QI/N
0(dB)
33% 50%
67% 83%
100%
図3.4-2 パラメータQI/N0に対するシステムスループット
ここで,システムスループットはシミュレーション環境上の全ての端末に送 信されるデータのスループットを足し合わせた合計値を示す.システム全体に おけるチャネル数の総和に対して,端末が通信を要求するチャネル数の総和の 割合を要求トラヒック量と定義すると,N=2, 3, 4, 5, 6のときの要求トラヒック
量は33%, 50%, 67%, 83%, 100%となる. 図3.4-2が示す通り,各要求トラヒッ
ク量に対して,システムスループットは特定のQIでピークを持つ.QIがピーク より大きいときシステムスループットが小さくなる理由は,干渉が大きくなる ことである.QI が大きいと,ほとんどの干渉波は基地局間排他制御の制御対象 外となる.一方で,QI がピークより小さいときシステムスループットが小さく なるのは,小電力の干渉波でも基地局間排他制御を行い,過剰に信号を抑止し てしまうからである.
各要求トラヒック量のシステムスループットは,異なる QIでピークを持つ.
要求トラヒック量が小さい場合は基地局排他制御をしなくても干渉はあまり発 生しない.従って,小さい QIにより厳しい基地局間排他制御を行ったときにピ ークを持つ.要求トラヒック量が大きい場合,近傍の基地局で同じ周波数帯を 使用することが多くなり干渉が発生しやすい.QI が小さいと多くの端末が基地 局間排他制御によって呼損になりシステムスループットが小さくなる.そのた め,大きいQIでピークを持つ.図3.4-2から,要求トラヒック量が33%, 50%, 67%,
83%, 100%のそれぞれの場合について,QIが-112,-105,-100,-94,-94dBmで システムスループットが最大となりシステムが最適化される.セルラシステム では,要求トラヒック量に応じて動的に最適な QIを設定し,排他的チャネル割 当を行う.
3.4.3 提案方式の考察
提案方式の有効性について検討するため,要求トラヒック量を33~100%の範 囲で値を変えてシミュレーションを行った.それぞれの要求トラヒック量にお
けるQIとして3.4.2項で最適値として導出した値を用いた.図3.4-3に要求トラ
ヒック量とシステムスループットの関係を,図3.4-4に要求トラヒック量と端末 の平均スループットの関係を,図3.4-5に要求トラヒック量と呼損率の関係をそ れぞれ示す.平均スループットは各端末で得られるスループットの平均値,呼 損率は全ての端末数に対して干渉によって呼損となった端末の割合を示す.
150 200 250 300
33 50 67 83 100
SystemThroughput(Mbps)
Traffic Load (%) Exclude
Greedy FCA
図3.4-3 システムスループット
(Exclude…排他的チャネル割当方式(提案方式),Greedy…全体最適化方式,
FCA(Fixed Channel Allocation)…固定チャネル割当方式)
0 2 4 6 8 10 12 14
33 50 67 83 100
MSAverageThroughput(Mbps)
Traffic Load (%) Exclude
Greedy FCA
図3.4-4 端末の平均スループット
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
33 50 67 83 100
Calllossrate
Traffic Load (%) Exclude
Greedy FCA
図3.4-5 呼損率
図3.4-3,図3.4-4 に示すように,100%の要求トラヒック量では,提案方式の 方が全体最適化方式よりもシステムスループット,平均スループットが上回っ た.これは,提案方式は基地局間排他制御を用いて干渉を低減することで,個々 の端末で大きなスループットを得られたからである.全体最適化方式のチャネ ル当りの平均の信号対干渉雑音比(SINR: Signal to Interference and Noise Ratio)が
5.0dBに対して提案方式の SINRは 8.9dBであった.図 3.4-5 に示すように,提
案方式では100%の要求トラヒック量で18%の端末が呼損となっており全体最適 化方式では呼損はない.しかし,提案方式が全体最適化方式より呼損が多いこ とによるシステムスループットの減少よりも,端末の平均スループット増加に よるシステムスループットの寄与が大きかった.また,図 3.4-3 が示すように,
33%から83%の要求トラヒック量において,提案方式のシステムスループットは 全体最適化方式よりも下回った.提案方式の平均スループットは全体最適化方 式と同等である一方で,図3.4-5に示すとおり,呼損端末は提案方式の方が全体 最適化方式よりも多いためである.基地局間排他制御によって干渉の発生は全 体最適化方式よりも少ないと考えられるが,スループットの向上に寄与してい ない.これは,(3.2)式で示されるシャノンの定理において信号電力の大きさを考 慮した基地局間排他制御ができていないこと,また,複数の基地局から同時に 干渉波を受けることが考慮できていないことが原因として考えられる.
FCA については,要求トラヒック量の増加とともに呼損率が増加した.各基 地局で使用可能なチャネル数に限りがあり,チャネル数の増加とともに通信可 能な端末が減少するためである.また,要求トラヒック量の増加とともに平均 スループットは増加した.静的チャネル割当によりセル間干渉が極めて小さい ため,チャネル数の増加が大きくスループットに寄与するためである.要求ト ラヒック量が 33%から 83%までは呼損率の増加よりも平均スループットの増加 による影響が大きくシステムスループットが増加したが,83%から100%は呼損 率増加の影響が大きくシステムスループットが低下した.FCA は提案方式と比 較して端末の平均スループットとシステムスループットが大きいが,通信可能 な端末数がかなり限定されてしまう.
本項の初めに述べた通り,要求トラヒック量におけるQIとして3.4.2項で最適 値として導出した値を用いた.しかし,図3.4-2が示すように,要求トラヒック
量は83%, 100%についてはQIの広い範囲でシステムスループットのピークを持
つ.そこで,そのような QIにおける特性を比較するため,端末の平均スループ ットと呼損率を表3.4-2に示す.
表3.4-2 要求トラヒック量83%, 100%の端末の平均スループットと呼損率 要求
トラヒック量 (%)
閾値QI
(dBm)
システム スループット
(Mbps)
端末の平均 スループット
(Mbps)
呼損率
83
-97 213 4.1 0.25
-95 215 3.6 0.15
-94 215 3.4 0.10
-93 215 3.3 0.06
-92 213 3.2 0.04
100
-97 227 4.6 0.30
-95 230 4.2 0.22
-94 230 4.0 0.18
-93 229 3.8 0.14
-92 228 3.7 0.12
表 3.4-2 からわかるように,要求トラヒック量が 83%,100%のそれぞれについ
て,QIが-92dBmから-97dBmで同程度のシステムスループットとなる.しかし,
端末の平均スループットと呼損率は,その QIの範囲で大きく異なっており,平 均スループットが大きいときは呼損率が大きく,平均スループットが小さいと きは呼損率が小さい.従って,要求トラヒック量が83%,100%のときには,提 供するシステムのポリシーに従い,適切なQIを設定する必要がある.
3.5 むすび
本章では,排他的制御を用いた動的チャネル割当方式について提案を行った.
排他的制御によって,基地局間の信号による干渉条件下で,基地局が周波数チ ャネルを独占的に使用するかどうかが決定される.チャネル割当を行うための 最適化問題である非線形 0-1 整数計画問題を線形化して逐次的に解いて解を導 出した.最適化問題の線形化には排他的制御の拘束条件を用いた.
シミュレーション結果では,100%の要求トラヒック量では,排他的チャネル 割当方式のシステムスループットは全体最適化方式よりも高くなることを示し た.これは排他的制御を導入したことにより得られた効果による.しかしなが ら,33~83%では,全体最適化方式は排他的チャネル割当方式よりもシステムス ループットが高くなった.
排他的チャネル割当方式は事前に決めた閾値を超えるような干渉信号がある
場合に,その干渉信号を出している基地局と干渉を受ける端末が通信をしてい る基地局で,どちらか一方を通信可能とするものであり,受信電力と干渉電力 を相対的に比較したアルゴリズムになっていない.受信電力をアルゴリズムに 含み,SINR(Signal to Interference and Noise Ratio)として動的チャネルを行う方式 について第4章で述べる.
第 4 章
帯域保証チャネル割当方式
4.1 まえがき
第 3 章では,排他的に同じ周波数帯域のチャネルを利用可能とすることで,
システム全体で高いスループットを実現し,かつ,個々の端末のスループット を向上させる排他的チャネル割当方式を提案した.排他的チャネル割当方式は,
各端末が所望の基地局以外の基地局から受ける干渉波の受信電力があらかじめ 定めた閾値 QI以上であったとき,所望の信号を送信する基地局と干渉波を送信 する基地局との間で排他的にチャネルを利用するものであった.排他的チャネ ル割当方式では,[14]の全体最適化方式と比較して1チャネル当たりのSINRが 4dBほど改善することが示された.しかし,排他的チャネル割当方式は各基地局 からの干渉電力が閾値より大きければ個別に抑止するのみであり複数の基地局 からの干渉波が考慮されていなかった.また,受信電力の大きさが考慮されて いなかった.従って,端末のスループット向上効果は限定的であった.
そこで第4章では,複数の基地局配下の端末に基地局制御装置(RNC)で集約的 にチャネルを割当てる方式において,受信電力の大きさと複数の基地局から受 ける干渉波を考慮した帯域保証チャネル割当方式を提案する.受信電力と干渉 電力を同時に考慮してチャネル割当を行うため,端末のスループットを制御す ることが期待できる.具体的には,各基地局で使用する各チャネルにおいて各 端末の最低のスループット(以降,要求スループット)を保証する条件の下,
システムのスループットを最大化する方式を提案する.本章の4.2節ではシステ ムのモデルについて述べる.4.3節では提案する基地局間チャネル割当制御方式 のモデルを定式化する.4.4節ではシミュレーションの結果および考察について 述べる.シミュレーションにおいては,全体最適化方式,排他的チャネル割当 方式の結果と比較し,提案方式の有効性を確認する.4.5節では結論を述べる.
4.2 システムモデル
本章のモデルは,図2.1-1(b)に示した1セル周波数繰り返し方式による集約的 な動的チャネル割当である.各基地局がシステム全体の周波数帯域を使用可能 であり,チャネル割当の制御周期毎に,それらの周波数帯域の中から動的に端 末へのチャネルの割当を行う.同時刻において割当てるリソースは,それぞれ の端末に対するチャネルの割当と電力の割当がある.基地局の電力割当に関し て,[15]によれば,各チャネルに対する動的な電力割当は,固定的な電力割当と 比較してわずかなスループットの上昇しか得られないため,本章では,各基地 局から送信する信号の1チャネル当たりの基地局の送信電力を Qで一定とし,
動的な電力制御は実施しないこととする.電波伝播損失は基地局iと端末jの間 の距離dijの関数として,(4.1)式のように仮定する.
ij n ij hd
g (4.1)
ここで,hは伝播損失の係数,nは距離減衰係数である.フェージングについて はシャドーイングを考慮する.
システム全体での周波数帯域は周波数幅Δf の M 個の周波数帯域に分割され ているとする.すなわち,同じ時刻に存在するチャネルはM個である.またシ ステムには基地局が全部でNbあり,Nm個の端末がそれらのいずれかの基地局の セルに属しているとする.このとき,Nc個のチャネルの集合をMとし,基地局 iでチャネルmを用いて通信を行うことが可能な端末の集合をDi(m)とする.
各々の時刻でチャネルmを使用して基地局iから端末jへデータを伝送してい る状態をxj(m)で表す.xj(m)= 1は信号を送信していることを示し,xj(m)= 0は信号 を送信していないことを示す.
端末 j が基地局 i からチャネル m でデータを受信するときのデータの受信速度 Rj(m)は,基地局 i からの受信電力と,周りの基地局からの干渉電力を用いると,
シャノンの公式より以下のように表せられる.
i
p m
Dp q
m pj q m ij
j
N x g Q
Q f g
R
) (
) 0 (
) 2
(
log 1
(4.2)ここで,Δfは 1チャネル当たりの周波数幅,N0は周波数幅Δf 当たりの熱雑 音を表している.
4.3 システムの定式化
本節では,4.2節で説明したモデルをもとに提案方式の定式化を行う.
4.3.1 先行研究におけるチャネル割当方式
[14]における全体最適化方式について述べる.まず,初めの条件として,基地 局から同じ時刻においてチャネル m を使用して伝送することができる端末はた だ1つである.その条件は(4.3)式として表すことができる.
)
1
( ) (
m i m D q
x
q
mM,
i1 , 2 ,
,
Nb
(4.3)また,それぞれの 1 端末当たりで発生する通信については,あらかじめ設定さ れたチャネル数になるように制限されているとする.ここで,端末jに割当てる チャネル数をNjとすると本条件は(4.4)式となる.
m j m
j
N
x
( )
jDi(m),
i1 , 2 ,
,
Nb
(4.4)[14]においては,近傍の基地局同士が動的にスケジューリングし,各時刻におい て,(4.3), (4.4)式の条件を満たし,かつ,システム全体のスループットTが最大 となるように周波数チャネルを割当てる.つまり(4.3), (4.4)式の条件のもとで
(4.5)式に表す目的関数を最大化するような xj(m)に関する非線形整数最適化問題
を解くことで,各端末へ割当てるチャネルを決定する.
m j
j m j m
x R
T
( ) ( ) (4.5)4.3.2 帯域保証
第 3 章で述べた排他的チャネル割当方式は,それぞれの端末の通信品質に関 わらず,システム全体のスループットが大きくなる場合は端末へのチャネル割 当を行う.各端末が割当てられるチャネル数は保証されているが,それぞれの チャネルの品質は保証されておらず,スループットが遅くなる可能性がある.
そこで,(4.3), (4.4)式の条件式に加えて(4.6)式を新たな条件式として追加する.