第 5 章 基地局間 MIMO における帯域保証リソース割当方式
5.4 提案方式
図5.4-1に示す提案方式のリソース割当アルゴリズムについて説明する.通信
を行う端末のセットを Aとする.初めに A に含まれる端末数はM である.BD でマルチユーザMIMOを行うときの各ストリームの固有値は,シングルユーザ MIMOにおける固有値よりも小さくなることが示されている[23].そこで,はじ めに,全ての端末に関して,通信を行う端末がその端末唯一である(シングルユ
ーザMIMO)と仮定した場合にスループットを保証可能か判定し,不可能な場合
はマルチユーザ下の通信においてもスループットが保証できないとみなし A か ら除く.A に含まれる端末を MIMO の伝搬路を割当対象とする.A に含まれる 端末に対してBDを適用し,各ストリームに対して電力割当を行う.より多くの 端末でγより大きなスループットを得るため,Aに含まれる全ての端末の中で最 小となるスループットを最大化するように電力割当を行う.
start
全ての通信端 末の帯域が保 証されるか?
end
BDを用いてAに含ま れる全ての端末の中 で最小となるスルー プットを最大化する ように各ストリーム に対して電力割当
保証される 保証されない
一番チャネル品質 が悪い端末をAから 除外
シングルユーザ MIMOでも帯域を保 証できない場合はA から除外
電力と送信ウェイ トを決定
図5.4-1 提案方式のリソース割当アルゴリズム
ここで,BDの送信ウェイト及び各ストリームに割当てる電力の導出方法につ いて述べる.端末 k に関する Nn×m の送信ウェイト行列を Wkとする.端末 k に対するデータストリームをSkとすると,端末kのアンテナで受信する信号Rk
は,Aに含まれる端末の信号を足し合わせることで(5.2)式のようになる.
k A
j
j j k
k
H W S z
R
(5.2)
jはA に含まれる端末を示すインデックス,zkは端末 kで受信する平均0,分散 σ2の白色ガウス雑音を示す.Rkにおいて,異なる端末向けの信号干渉を除去で きるように Wj を決定する.すなわち,任意の異なる j と k の組合せに対して HkWj=0を満たすよう Wjの値を決定する必要がある.ここで,行列H
~
kを(5.3)式 に定義する.
a k k k
H H H H
H
1 1 1
~
(5.3)aはAに含まれる端末の数を示す.このとき,干渉を除去する条件は(5.4)式とな る.
~
kWk 0
H
k
(5.4)H
~
kを特異値分解すると(5.5)式となる.
k k
Hk k
k
U V V
H ~ ~ ~ ~
(1)~
(0) (5.5)ここで,Hはエルミート転置を表す.
~
(1)Vk は0 以外のm(a-1)個の特異値に対応
する列ベクトルからなるNn×m(a-1)行列であり,
~
(0)Vk は特異値0に対応する列 ベクトルからなるNn×(Nn - m(a-1))行列である.さらにm×(Nn -m(a-1))行列で ある
~
(0)k kV
H の特異値分解は(5.6)式のようになる.
k k
Hk k
k
V
kU V V
H
(0) (1) (0)0
0
~ 0
(5.6)) 1 k(
V は0以外のm個の特異値に対応する列ベクトルからなる(Nn-m(a-1))×m行 列であり,Vk(0)は特異値0に対応する列ベクトルからなる(Nn - m(a-1))×(Nn -ma)行列である.また,Σkは m 個の特異値を要素に持つ対角行列である.各端 末の送信ウェイト行列Wkをまとめて(5.7)式に示すWとする.
W W Wa
W 1 2 (5.7)
通信を行う端末の各ストリームに対する信号電力から成る対角行列を P とする
と,端末信号間の干渉を除去する送信ウェイト行列Wは(5.8)式のようになる.
(0) 2(1) (0) (1)
1/2) 2 1 1( ) 0
1(
~ ~
~ V V V V V P
V
W
a a (5.8)次に,各ストリームに割当てる電力を導出する.まず,(5.1)式を用いて端末k のスループットrkは(5.9)式で表すことができる.
m
l
kl
k kl p
r
1 2
2
2
( 1 )
log
(5.9)μklは(5.6)式のΣkのl番目の対角要素であり,端末kのl番目のストリームに対
応している.pklは端末kのl番目のストリームに対応するPの対角要素である.
全ての通信端末のうちで最も小さいスループットを最大化する電力に関する最 適化問題は(5.10)式のようになる.
k k P
min
rmax
s.t.
v p Q
A k
m
l
i kl
kl
1 )2(
i
(5.10)
vkl(i)は送信ウェイトを示す(5.8)式の括弧内の行列において,端末 kの l 番目のス トリームに対応する列のうち,基地局iに対応するn個の要素から成るベクトル
である.(5.10)式では,電力が各基地局の電力上限Qを超えないことを拘束条件
としている.(5.10)式で求めた電力から(5.8)式を用いて送信ウェイトを導出する.
以上のように,(5.8)式,(5.10)式から導出した送信ウェイトと電力を使用した ときの各端末のスループットを計算し,要求スループット γ を超えるか判定す
る.(5.9)式から導出する各端末のスループットが要求スループットγ以上の場合
に通信対象の全ての端末でスループットが保証され,下回る場合はスループッ トが保証されない.要求スループット γ を満たせない端末が存在する場合,最 もチャネル品質が悪い端末を通信対象外(呼損)と判断しAから除外する.チャネ ル品質として,各端末のチャネル行列Hkのフロベニウスノルムを用いる.再度,
Aに含まれる端末から行列H~kを求めて特異値分解を行い,(5.8)式,(5.10)式から 送信ウェイトと電力を計算後,(5.9)式から各端末のスループットを導出し,それ らが要求スループットを保証可能か判定する.全ての通信対象端末のスループ ットが保証できるまで,チャネル品質が悪い端末を呼損とする処理と送信ウェ イト及び電力計算処理を繰り返す.送信ウェイト及び電力計算処理は最大で M 回行われる.Mが大きいと計算時間の増加に影響する可能性がある.この場合,
チャネル品質が悪い複数の端末を一度に A から除外することで計算時間の短縮
証されたとき,そのときの電力と送信ウェイトを用いて,送信アンテナから信 号を送信する.