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第 5 章 基地局間 MIMO における帯域保証リソース割当方式

5.6 むすび

表5.5-2 各方式のスループットの比較

Method MS Average

Throughput

System Throughput

BD-GBR(γ=1.0) 2.0 27.7

BD-GBR(γ=2.0) 2.3 32.6

ESDL(γ=1.0) 1.1 15.0

ESDL(γ=2.0) 1.5 20.7

BD-MM 0.8 10.9

BD-WF 1.3 18.6

GPA 2.5 34.9

(単位:bps/Hz)

BD-MM方式は,BDにおいてチャネル品質が悪い最小スループットの端末を

最大化する電力割当を行うため,他の方式よりもスループットは小さくなった.

BD-GBR,GPA,ESDL(γ=2.0)の各方式のスループットはBD-WF方式より大きく

なった.BD-GBR方式のスループットが BD-WF方式よりも大きくなったのは,

BD-WF 方式はチャネル品質が悪い端末を含めて送信ウェイトを導出する一方,

BD-GBR 方式ではチャネル品質が悪い端末を呼損として送信ウェイトを導出す

ることによって(5.9)式の特異値μが大きくなるためである.BD-GBR 方式の

γ=1.0,2.0bps/HzのときのシステムスループットはESDL方式の同じγのシステ

ムスループットと比較して,それぞれ 12.7,11.9bps/Hz 大きくなったが,GPA 方式よりは小さくなった.なお,BD-GBR 方式の通信端末の平均スループット はγ=1.0,2.0bps/Hzでそれぞれ3.2,4.5bps/Hzであり,ESDL方式やGPA方式と 比較して大きなスループットを得られている.BD-GBR 方式はチャネル品質が 悪い端末を呼損とすることで,他の通信端末のスループットを保証しているが,

ESDL方式と比較してシステムとして効率的な通信が実現できていると言える.

地局が協調してBDを行って送信ウェイトを導出する.シミュレーションでは,

スループットの保証を考慮する ESDL 方式では通信を行う一部の端末で要求ス ループットを満足することができない一方で,BD-GBR 方式では,チャネル品 質が悪い一部の端末を呼損とすることによってその他の全ての通信端末で要求 スループットを保証することを示した.また,BD-GBR 方式では ESDL 方式よ り多くの端末のスループットを保証できることを示した.さらに,BD-GBR 方 式のシステムスループットは ESDL 方式よりも 10kbps/Hz 以上大きくなり,

BG-GBR方式ではシステム全体で高い伝送効率を実現することを示した.

本章では BD-GBR方式の要求スループットを端末によらず一定としたが,端

末毎に異なる要求スループットを適用することも可能である.その場合,(5.10) 式の最適化問題の目的関数において,端末kのスループットrkrk - γkに置き換 えて計算を行う.ここでγkは端末kの要求スループットである.

また,本章ではシステム全体の送信アンテナ数の和と受信アンテナ数の和を 同一としたが,システム下の送受信アンテナ数が異なる場合の通信対象ユーザ の選択制御やリソース割当制御の検討は今後の課題である.

第 6 章 結言

本論文では,直交周波数分割多重化(OFDM)を用いたセルラシステムにおいて,

周囲の基地局間の信号干渉を防ぎ,端末がスループットの保証を実現可能とな るような基地局間チャネル割当制御方式について提案し,その計算機シミュレ ーション結果について考察した.本論文の要点を以下に述べる.

第1章では,本論文の研究の背景と目的,論文の構成について概説した.

第 2 章では,セルラシステムで基地局間の信号干渉の抑止するためにこれま でに検討されてきた周波数チャネル割当方式に関して,静的チャネル割当方式 と動的チャネル割当方式に分けて述べた.

第 3 章では,複数基地局間における排他的チャネル割当方式を提案した.本 方式では,セル間干渉を減少させることを目的に,周囲の基地局から事前に決 めた閾値を超えるような干渉信号がある場合に,その干渉信号を送信する基地 局と干渉される端末が通信を行う基地局のどちらかに排他的に周波数チャネル を割当てる.計算機シミュレーションによって,システムの全周波数チャネル の通信を要求された場合(100%の要求トラヒック量)は,排他的チャネル割当方 式の効果が表れ,システムスループット,端末の平均スループットは全体最適 化方式よりも高くなることを示した.しかし,33~83%の要求トラヒック量では,

全体最適化方式は提案方式よりもシステムスループットが高くなり,提案方式 のシステム効率が劣った.

第 4 章では,複数基地局間において,個々の端末のスループットを保証可能 な動的チャネル割当方式について提案を行った.第 3 章で提案した排他的チャ ネル割当方式では干渉電力のみが考慮されており,受信電力と合わせて相対的 に導出するSINRが考慮されておらず,端末のスループットの保証ができなかっ た.そこで第4章で提案する帯域保証動的チャネル割当方式では,SINRを保証 するように周囲の基地局で使用するチャネルの抑止を行った.計算機シミュレ ーション結果から,提案方式では,通信品質が悪い端末を通信対象外(呼損)とす ることで,それ以外の通信を行う各端末があらかじめ設定した要求スループッ トで通信できていることを示し,要求スループットを保証できる端末は全体最

送効率が良く,既存の全体最適化方式よりも大きなシステムスループットを得 られることを示した.一方で,第 4 章の提案方式では干渉抑止制御のため一部 の端末が呼損となるケースが発生する.公平性の観点から,干渉抑止制御のた め呼損となった端末の通信を行うために,チャネル割当の制御周期毎に基地局 ループにおける基地局の順序を変えるなどの制御が必要である.また,周波数 チャネル割当においては電力の動的制御を行っていない.電力の動的割当を行 うことで,より多くの端末で要求スループットを保証する通信ができる可能性 がある.ただし,本論文ではこれらの実現方法までは検討できておらず,今後 の課題である.

第5章では,基地局連携MIMOにおいて,端末のスループットを保証するリ ソース割当方式(BD-GBR方式)を提案した.BD-GBR方式では,チャネル品質が 悪くスループットの保証が難しい端末は呼損としMIMOの伝搬路を割当てない.

一方で,それ以外の端末に対して電力を割当て,CSIを既知とする基地局が協調 して BD を行って送信ウェイトを導出する.計算機シミュレーションにより,

BD-GBR 方式は通信を行う全ての端末で要求スループットを保証することを示

した.また,要求スループットを保証する端末数やシステムスループットは,

これまでに提案された帯域保証方式であるESDL方式よりもBD-GBR方式の方 が優れていることを示した.

以上のように,本論文では,直交周波数分割多重化(OFDM)を用いたセルラシ ステムにおいて,端末の周波数チャネル数やスループットを保証する基地局間 チャネル割当制御方式について提案した.本論文で提案した方式を用いること で,干渉が発生する複数基地局環境においても,高いスループットが得られる.

特に第 4 章,第 5 章の提案方式では,端末のスループットを保証することでビ デオ通話等のリアルタイム通信を安定してサービス提供することが可能である.

同じサービスにおいて要求スループットを段階的に変更することでチャネル品 質に応じたサービス提供が可能である.例えば,ビデオ通話においては,画質 を変えることが想定できる.しかし,これらの提案方式は,他のユーザに安定 した通信を提供するため一部のユーザを呼損とする制御が必要である.このよ うなチャネル品質が悪く,ある要求スループットでは呼損とされた一部の端末 については,要求スループットを小さくすることで,その端末を通信対象とし てサービスを提供できる.しかし,チャネル品質が悪くサービスとして成立す るための最低限のスループットを保証できない端末は呼損とし,より多くの端 末のスループットを保証し,システムの伝送効率を高める方が望ましい.ただ し,本研究では,チャネル品質が悪い端末を呼損としたが,呼損とする端末の 選択については今後の検討が必要である.例えば,音声通話のようなコミュニ ケーションサービスでは,チャネル品質が低下したときでも通信を継続する必

要があると考えられる.また,緊急用の通信(110番等)は可能な限り通信対象 とすべきである.また,一定の時間,チャネル割当で呼損となる端末は,次回 のチャネル割当で優先的に通信対象とすることも想定される.LTE の場合,最 小 1 ミリ秒周期でリソース割当制御が可能であり,チャネル品質やサービス利 用状況に合わせて柔軟な対応ができる.

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