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Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(1): 593‑600

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Title 教員のレジリエンスを高める要因とメンタルヘルスとの関連 : 「職務上 経験した困難な状況からの乗り越え」調査から

Author(s) 藤川, 聡; 野口, 直美

Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(1): 593‑600

Issue Date 2021‑08

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12029

Rights

(2)

教員のレジリエンスを高める要因とメンタルヘルスとの関連

―「職務上経験した困難な状況からの乗り越え」調査から―

藤川  聡・野口 直美

北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践(教職大学院)

北翔大学教育文化学部教育学科(投稿時:北海道旭川永嶺高等学校)

RelationshipBetweenFactorsthatEnhanceTeachers’Resilienceand MentalHealth:

―BasedonInterviewSurvey“HowDidyouOvercomeDifficulties”―

FUJIKAWASatoshiandNOGUCHINaomi

GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation

HokushoUniversity

要 旨

本研究では,教員個人のレジリエンスを高める要因を見いだし,メンタルヘルスとの関連を 検討するため,「これまで職務上経験した困難な状況に際し,どのように乗り越えてきたか」

について,北海道A高等学校の教員10名を対象に個別インタビューを行った。その結果,同教 員らは困難な状況を乗り越えるため,起こった出来事に対し意味付けをし,感情調節をしつつ その状況を受け止めていた。そして,同教員がもつリソース(内的・外的)が「困難の受け止 め方」と「乗り越え方」に影響を及ぼし,実際に困難を乗り越えることを通じてレジリエンス が強化される様子が見られた。そして,それらを通じて「得たもの」と教員が信念とする「大 切で価値あるもの」,そして自覚する「自分の強み」の三つの要素が相互に関連しながら教員 のメンタルヘルスの保持に貢献していることが推察された。

1.はじめに

近年,教師は日々の教育活動に加え,個々の児 童生徒や保護者に関わり多様かつ困難な対応が増 えている。それは,業務量の増加や心理的負担と いった教師の過重労働として社会問題になってい

るところである。

文部科学省が2017(平成29)年4月に公表した

「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報 値)について(概要)」1)によると,教頭や校長 も含め全ての職種で勤務時間が増えている。教員 では小学校の3割,中学校の6割が「過労死ライ

(3)

藤川  聡・野口 直美

ン」に達する週60時間の残業を超えて働いている 実態が浮き彫りになっている。

また,メンタルヘルスに関する文部科学省の報 告2)によると,平成27年度の教職員における病気 休職者の6割強を精神疾患が占め,在職者に占め る割合は約0.54%で184人に1人が精神疾患で休 職していることが明らかになった。このような状 況から,学校現場の多忙化は心身の負担に大きな 影響を及ぼしていると言わざるを得ない。

さらに,藤原(2014)は,「教師のメンタルヘ ルスは,教師個人の単なる健康状態ではなく,授 業や児童生徒との関わりなど日々の教育活動に影 響を与えるものである。また,教師は児童生徒の 深刻な状況を打開する最前線の担い手であり,教 師のメンタルヘルスなくしては,その打開も不可 能である。そのため,児童生徒の深刻な状況への 対処と並行して,教師の深刻な状況への対処に取 り組む必要がある」3)と述べている。つまり,働 き方改革に伴い労働時間も含め環境整備が進むな か,教員のメンタルヘルスは教育の質に影響を与 える極めて重要な学校課題といえる。

本研究では,教員のメンタルヘルスに影響を及 ぼす職務上の困難な状況とレジリエンスに着目し た。困難な状況に対する対処は一様ではない。そ こで,困難を乗り越えたプロセスやその結果から レジリエンスを高める要因を見いだし,メンタル ヘルスとの関連について検討したいと考えた。

2.レジリエンスについて

レジリエンスの定義は研究者により様々であ る。小塩ら(2002)は,「レジリエンスの状態に ある者とは,困難で脅威的な状況にさらされるこ とで,一時的に心理的不健康に陥っても,それを 乗り越え,よく適応している者」4)と捉えている。

石毛ら(2005)は,「ストレスフルな状況でも精 神的健康を維持する,あるいは回復へと導く心理 的特性」5)と定義している。また,齋藤ら(2010)

は,「ストレッサーを経験しても心理的な健康状 態を維持する,あるいは陥った不適応状態を一時

的なものとして乗り越え,健康状態へと回復して いく力や過程」6)と定義している。加えて,山下 ら(2011)は,「ストレスフルな出来事を経験し たり困難な状況にさらされていても精神的健康や 適応行動を維持する,あるいはネガティブな心理 状態に陥ったり心的外傷を受けたりしても回復す る能力,またはそれを糧としてコンピテンスを高 め成長・成熟する能力や心理的特性」7)としてい る。これらを踏まえ,野口ら(2021)は,レジリ エンスはメンタルヘルスを良好に保つための重要 なスキルであり,「困難な状況や心理的不健康か らの回復や成長・成熟する能力や心理的特性と いった包括的概念」8)と捉えている。

また,久世(2015)はレジリエンスを高める要 素として,「自己肯定感」「感情調節」「自己効力感」

「楽観性」「関係性」をあげ,「5つがバランスよ く備わると,逆境のときでも強いレジリエンスを 発揮できるようになる」との見解を示している9)。 加えて,芳賀ら(2014)は,「個人を取り巻く環 境的要因とレジリエンスとの間に何らかの関係が あることが明らかにされており,それらの関係を より詳細に把握するために,個人的要因と環境的 要因とがどのように相互作用し,レジリエンスを 促進しているのかを調査する必要がある」10)と 述べている。

このことから,筆者らはレジリエンスを心理的 特性とともに「困難を乗り越えたプロセス」や「困 難を乗り越えた結果」に関与する外的要因(リソー ス)もレジリエンスの要因として捉えた。すなわ ち,個人が持つ心理的特性としてのレジリエンス

(内的要因)と,個人を支えるリソースとしての レジリエンス(外的要因)の二つがどのように作 用し,個人のレジリエンスを高めているのかを検 討したいと考えた。そして,高められたレジリエ ンスがどのように教員のメンタルヘルスを支えて いるかについて1つの仮説を提案したい。

3.方 法

対象は,北海道A高等学校(以下A校)の教員

(4)

10名,調査期間は平成28年10月11日~31日とした。

同10名の年齢構成は,50代が6名,40代が2名,

30代が2名であった。調査方法は,「これまで職 務上経験した困難な状況に際し,どのように乗り 越えてきたか」についての個別インタビュー調査 を行った。その内容は表1に示す8項目からなる。

なお,「職務上経験した困難な状況」は,その エピソードからネガティブな感情を想起せざるを 得ないところがある。そのため,調査協力者には,

インタビューへの回答は自由意志であり,インタ ビューの途中でも協力しない選択,語りたくない ことは「パス」する自由が尊重されることを紙面 にて通知した。加えて,リラックスして語れるよ う調査協力者の出来事に対する捉え方や感じ方,

考え方を尊重し理解するよう努め,発問や応答な ど対応に留意した。

次に,インタビュー項目の回答から見いだせる レジリエンス要因を検討した。また,困難な状況 を乗り越えたプロセスや結果から,その乗り越え に関与したリソースや得たもの,調査協力者の強 みなどを整理した。次に,困難な状況の乗り越え 経験からレジリエンスは高まったのか,レジリエ ンスの高まりと組織はどのように関わっているの かについて検討した。

4.結果と考察

⑴ インタビュー調査の回答内容

インタビュー調査の回答結果を表2に示す。ア ンケート項目「1.どのような困難な状況があり,

それはいつか?」ついては,表2に示すとおり「生 徒に関すること」「保護者に関すること」が各2名,

「同僚に関すること」が6名であった。また,そ の年代は,20代が2名,30代が6名,40代が2名 で,30代が最も多かった。さらに,困難な状況に おける対人関係が様々でも,不安,孤独,空虚,

疲労感といったメンタルヘルスの不調と同僚性が 語られていた。このように,その他の項目(2~

8)についても同様に表2に示している。

これらの調査から,調査協力者が職務上経験し た困難な状況を乗り越えることで得られたものに ついて,以下の視点から考察する。

⑵ 困難な状況の乗り越えに関与するもの

①出来事の意味付け

インタビュー調査の結果から,総じて調査協力 者は,それぞれが困難な状況を乗り越えるという 出来事に意味付けをしていると考えられた。

項目3より,困難な状況時にわき上がる感情は,

個々の教員さまざまであり「腹立たしい」「やり きれない」など一様にネガティブなものであった。

また,「先生方との関わりが億劫」「かまわないで ほしい」など他者と心理的距離を持ちたい心情が あった。一方,項目2より,自分のネガティブ感 情に振り回されず,「自分の弱さを自覚」しつつ も困難な状況を「考えが甘かった」「自分に不足 がある」と失敗や困難を受け入れるところから問 題解決を図ろうとする姿勢があった。また,困難 な状況の乗り越えを「物事を価値あるものに高め るための作業」「特効薬はない」と意味のある経 験とした意味付けをしていた。そして,その乗り 越え方から,不安や焦燥感,空虚感を抱えながら も困難を乗り越えるために「誠意を尽くす」「時 間をかける」といった解決への努力を惜しまない 強い職責が感じられた。

表1 インタビュー調査の項目 項  目

1.どのような困難な状況があり,それはいつか?

2.困難な状況をどのように受け止め,乗り越え たか

3.困難な状況時の感情について(心構え)

4.困難な状況時の力になったもの(人,事柄)

5.困難を乗り越えることで得たもの 6.大切にしている,価値あること

7.自分にはどのような強みがあると思うか 8.このインタビューの感想

(5)

藤川  聡・野口 直美

②内的リソースと外的リソース

表2の結果を全般的に見て,困難な状況を乗り 越えた経験はネガティブな感情だけを残すもので はないことが推察できる。まず項目2の「受け止 め方」より,「何がいけなかったのか」と自分を 見つめ,「考えが甘かった」「不足がある」自分を 受容している。次に,項目2の「乗り越え方」か ら,「これ以上の困難はないはず」「つらい時期ば かりじゃないはず」と自分を励まし,前向きに対 処しようとする姿勢が推察できた。そして,困難 な状況を乗り越えるため,「自分はできる」と自 分を信頼し,「頑張ったじゃないか」と自己を肯 定していた。また,項目4より,「困難を乗り越 えてきた」経験や「逃ないで向き合う」意思は,

自分への信頼感を強化し,困難な状況の乗り越え にあたって内的リソースになっていると思われ た。加えて,「大丈夫」「たいしたことない」「な んとかなるものさ」と声をかけてくれる同僚の存 在,「グチれる,弱音を吐ける人」「苦労を理解し てくれる」同僚の存在や,項目5の「困った時は 先生方が助けてくれる」という思いは,困難な状 況を乗り越えるにあたって外的リソースになって いると思われた。一方,項目4の「部活動の指導 場面の空間(ホッとできた)」から,個々の専門 性を生かした指導やそれらが行われる空間そのも のが外的リソースになりえることも示唆された。

一方,項目5より,「教育は明日を期待するもの」

「どんな時も期待を失わない」や「つらい時こそ,

ポジティブな開き直りが大事」といった物事の捉 え方があった。加えて「生徒が教えてくれること がある」「教師の仕事は心のつながり」「自分は1 人じゃない」といった気付きを得ていた。これら の楽観性は上記で述べた「内的リソース」と「外 的リソース」から得られたものであり,乗り越え 方の視点として得られたものと考えている。

⑶ 乗り越えた状況から教員を見つめる

①教員の教育的価値観と自覚する「強み」

項目6から,「生徒は成長するゆえ待つ」こと や「近すぎると問題が見えなくなるため,生徒と の距離感」「人とのつながりや心のつながり」と

いった生徒との関係や人とのつながりを大切にし ていることが理解できた。そして,「現状に甘ん じることなく一生懸命」「誠実に」「本音で向き合 う」といった姿勢も大切にしていた。加えて,困 難な状況を乗り越えた経験から「教師の仕事はこ ころのつながり」「自分の座標軸を持つ」といっ た記述にその教員の教育的価値観が推察された。

項目7より,自覚する現在の自分の強みについ ては,「適応力」「孤独への耐性」といった心理的 特性,「忙しいことを楽しめる」「ポジティブに考 えることができる」といった物事の捉え方,「協 力を求めることができる人々」といった自分が持 つリソースに関わるものが見られた。また,「自 分の弱みを知っている」「これしかできない自分 を受け入れられる」といった,自分のネガティブ なことを認めるのは強さであるといった考えが推 察された。

②教員のレジリエンスを見いだす

調査協力者からは,困難な状況におけるネガ ティブ感情をポジティブな思考へと転換させるこ とが乗り越える力につながっていたことが語られ た。そこには「これ以上困難なことはないはず」

(項目2),「悪いことは長く続かない」(項目5)

といった肯定的な未来志向があり,「頑張ったじゃ ないか」といった自己肯定感,「自分はできる」

といった自己効力感があった(項目2)。ここに,

久世の見解におけるレジリエンスの五つの要素の うち「感情調節」「楽観性」「自己肯定感」「自己 効力感」の四つの要素を見いだすことができた。

また,前項⑵から,感情を語り,理解し合える 人や頼れる人など,安心や信頼がある「関係性」

や「職場の空気」が,個々にとって大きな支援要 因になっていたと推察できた。ここにレジリエン スの五つの要素のもう一つ,心の支えとなる「人 間関係」があったと示唆された。加えて困難を抱 えた時,そのことに埋没するのではなく,部活動 等困難な状況とは全く別の時間や空間を持ってい ることが,自身の傷つきを癒やし,支援的な「人 間関係」のなかで,「感情調節」や「楽観性」,「自 己肯定感」や「自己効力感」が高まっていたと考

(6)

項  目 回答内容

1.どのよう な困難な状 況があり,

それはいつ か?

〈困難な状況〉

・生徒に関すること(2名)

・保護者に関すること(2名)

・同僚に関すること(6名)

  ・困難さ ・不安 ・孤独   ・空虚  ・疲労感   ・人と人や物事と人との板挟

〈その年代〉

・20代(2名)

・30代(6名)

・40代(2名)

2.困難な状 況をどのよ うに受け止 め,乗り越 えたか

〈受け止め方〉

・仕方がない

・自分に不足がある

・考えが甘かった

・教職に向いているか

・何がいけなかったか

・戦力外通告を受けた感じ

・自分と相違のある様々な意見がある

・自分の弱さを自覚,空回り

・できないと思われたくない

〈乗り越え方〉

・時間が解決してくれるだろう

・つらい時期ばかりじゃないはず

・仕事をやめてもいいという開き直り

・物事を価値あるものに高める作業だ

・特効薬はない

・なんとかなるという思い

・これ以上の困難なことはないはず

・誠意を尽くす

・時間をかける

・同僚に不信感を持たれたくない

・自分でなんとかするもの

・自分はできる

・頑張ったじゃないか

・1人じゃない

・生徒を見放さない

・感情に振りまわされない

3.困難な状 況時の感情

(心の構え)

・ねぎらいの言葉を素直に聞けない

・怒りが湧いてくる

・腹立たしい

・やりきれない

・先生方との関わりが億劫

・かまわないでほしい

・話しかけてほしくない

・思うようにいかないのは自分のせい

・浅はかさを自覚

・無力感を持つ

・自分でやるしかない

・想定内のこと

・あきらめない

・転んでもただでは起きない

4.困難な状 況時の力に なったもの

(人,事柄)

・それまでの困難からの立ち直り経験

・相談し,力になってくれる人を持っている

・苦労を理解してくれる同僚心強さ

・幾度も困難を乗り越えてきた

・何とかなると思う強い気持ち

・ねぎらい,肯定的評価

・同じ価値観の同僚,共感者

・職場仲間との信頼関係

・理解し合える仲間

・グチれる,弱音を吐ける人がいる

・励まし「大丈夫だよ」等の言葉とその思い・部活動 の指導場面と空間(ホッとできた)

・部員(生徒)とのつながり

・生徒との関わり

・投げ出したくない

・事実から逃げないで向き合う

・深刻な受け止めに対し,教頭の「たいした ことない」の一言

・同僚の「なんとかなるもんさ」という言葉 5.困難を乗

り越えるこ とで得たも

・「自分は大丈夫」という思い

・自分の不足分は自分で埋めることができる

・結局やらなきゃダメだ

・自ら動かす勇気

・不本意ななかでも耐えきる自分

・困難な経験は無駄じゃない

・仕事の活力,エネルギー

5.困難を乗 り越えるこ とで得たも

・物事には必ず終わりがある

・悪いことは長く続かない

・なんとかなるもの

・つらい時こそポジティブな開き直りが大事

・教育は明日を期待するもの

・どんな時も期待を失わない

・生徒との関わり

・相談することの大事さ

・自分は1人じゃない

・仲間のありがたさ

・生徒が教えてくれることがある

・感謝の気持ち

・困った時は先生方が助けてくれる

・物事にはさじ加減が大事

・ときに割り切ることが解決につながる

・意思をつらぬく

・仕事だと割り切ること

・できないことは短時間で解決しない

・心で投げても平常心で過ごす

・不用意な発言はしない

6.大切にし ている,価 値あること

・生徒との信頼関係

・生徒ファースト

・親の思い

・入学させた生徒は卒業させる

・生徒は成長するゆえ「待つ」ことを大切に

・教科への情熱とこだわり

・部活動(職場が変わってもやりたいことが

・生徒との距離感(近すぎると問題が見えづやれる)

らくなる)

・教師の仕事は心のつながり

・人間性を伸ばす

・人とのつながり,心のつながりを大切に

・同僚にとどまらない他者とのつながり

・誠実に・本音で向き合う

・求められたら応える

・やりきる(できないことを減らす)

・自分の座標軸を持つ

・思考の意味,頑張ることの意味

・一生懸命,現状に甘んじることなく

・自分のスキルアップ

・一人の時間

・様々なことのさじ加減,いいかげん

7.自分には どのような 強みがある と思うか

・協力を求めることができる人々

・孤独への耐性がある

・適応力・教育以外でも生きていける自信

・これしかできない自分を受け入れられる

・自分の弱みを知っている

・継続力,志,ゆとり

・すべてのことを自分で消化する

・専門性・多くの引き出しを持っている

・周囲の人を使うマネジメント的思考

・いつでもギア(モチベーション)を上げら

・予想外のことを受け入れることができるれる

・仕事をしやすい環境に変えることができる,

その仕掛けができる

・目の前の仕事に集中

・常に目標設定し,仕事の内容や意味を考える

・気付いて,やれることはやる

・相手の立場になって考えられる

・精神的テクニック

・忙しいことを楽しめる

8.インタビュー の感想

・自分を語ることで振り返った

・自分のことを話すって,そうない

・久しぶりに自分のことを話した

・こういうのは面白い

・聞いてくれてありがとう

・話していて発見があった。

・心のふたを開けられる感じ

・正直嫌な感じ,照れくさい

・言わなくていいことを言わされている感じ で落ち着かない

・隠す言葉,言い訳を探す自分がいる

・緊張した

・さらけ出す感じが恥ずかしい

・多くの事例を集め,教職員の悩み相談の材 料にしてほしい

・難しいテーマだと思うから,信頼関係があっ てできること

表2 インタビュー調査の回答結果

(7)

藤川  聡・野口 直美

えられた。

⑷ 教員のレジリエンスを高める要因とメンタル ヘルスとの関連

ここでは,表2で得られた結果から,調査協力 者が職務上経験した困難な状況に際し,どのよう に乗り越えてきたかについての流れと,それらを 背景としたレジリエンスを高める要因とメンタル ヘルスとの関連を図式化した(図1)。

まず,困難な状況に直面した際に感情(往々に してネガティブな感情)が生じる。そして,その

感情と困難な状況を照らしながら,教員がそれぞ れの「受け止め方」をする。その際,久世の言う レジリエンスを高める要素の一つである「感情調 節」が行われる。感情調節の際には,その教員が 持つリソース(内的・外的)が影響を与えると考 えられる。リソースのうち「外的」な要因につい てはレジリエンスを高める要素の「人間関係」に 該当する。そして,受け止めた認知から,困難な 状況の「乗り越え方」に関する思考へと進むが,

そこでも,その教員が持つリソースが影響と与え

図1 教職員のレジリエンスを高める要因とメンタルヘルスとの関係(筆者作成)

(8)

ていると推察される。「乗り越え方」に関する思 考においては,レジリエンスを高める残りの要素 である「楽観性」「自己肯定感」「自己効力感」が 随伴すると考えられる。そして,乗り越えたこと により,その教員のレジリエンスが強化され,「得 たもの」して「メンタルヘルスの保持」に資する 思考の一つを形成すると推察される。なお,乗り 越えて得たものとは別に,自分の周りに備わる「リ ソースの自覚」という形で「得たもの」として帰 納されるという流れも考えられる。

また,メンタルヘルスの保持に貢献する要因と して,それら「得たもの」の他に,教員が「大切 で価値あるもの」として考えている信念,及び「自 分の強み」として感じている事実や感情も存在し ていると推察する。つまり,困難を乗り越えるこ とで「得たもの」と,教員が信念とする「大切で 価値あるもの」,教員が自覚する「自分の強み」

の三つの要因が相互に関連しながら教員のメンタ ルヘルスを支えていると推察する。なお,「自身 の強み」については,もともと備わっていたと自 覚しているものもあれば,乗り越えた過程を通じ て自覚したもの,あるいは新たに獲得したと自覚 したものもある。いずれも自覚したリソースとし てメンタルヘルスを保持する一要因を担っている と推察される。

5.まとめ

本研究では,北海道A高等学校の教員10名を対 象に行った個別インタビューから,教員個人のレ ジリエンスを高める要因を見いだし,メンタルヘ ルスとの関連を検討した。その結果,同教員らは 困難な状況を乗り越えるため,起こった出来事に 対し意味付けをし,感情調節をしつつその状況を 受け止めていた。そして,同教員がもつリソース

(内的・外的)が「困難の受け止め方」と「乗り 越え方」に影響を及ぼし,実際に困難を乗り越え ることを通じてレジリエンスが強化される様子が 見られた。そして,それらの過程を通じて教員が

「得たもの」と教員が信念としている「大切で価

値あるもの」,そして教員が自覚している「自分 の強み」の三つの要素が相互に関連しながら教員 のメンタルヘルスの保持に貢献していることが推 察された。

なお,これらレジリエンスに資する認知や思考 は,乗り越える過程で獲得したものなのか,もと もと備わっていたことに気付いたものなのかにつ いては判断が難しい。また,認知や思考の流れに ついても一律・一様ではないはずである。今回提 案した図式は,それらを念頭に置きつつ,インタ ビュー調査から導き出した一つの仮説として提案 したい。

また,本研究において,調査協力者の10名中6 名が困難な状況と捉える出来事が起きた時期を30 代と答えていた。文科省の調査によると,心の病 による休職者の在職者数に占める割合が最も高い 世代は30代であり11)本研究の結果と一致してい る。本研究では言及できなかったが,年代別の傾 向やその原因について今後,再検証する必要があ ると考えている。

教師は今,多種多様な要求にさらされ,余裕を 失い,時に不安や孤独を感じ,傷つきやすくなっ ていると思われる。教員が不全感を抱えない,あ るいは抱えたときどう対処するかは,教育現場に おける喫緊の課題といえる。そのような中,教員 のレジリエンスを高めることは,メンタルヘルス の向上に重要な役割を果たすと考えている。

本研究では,教員のインタビュー調査から教員 のレジリエンスを高める要因とメンタルヘルスと の関連について考察したが,今後は,どのような 介入を行えば教員のレジリエンスの内的要因が高 まるのか,どのような組織マネジメントや環境整 備をすれば外的要因が高まるのかについて,具体 方略につて検討していきたい。

引用・参考文献

1)文部科学省(2017).教員勤務実態調査(平成28年度)

の集計(速報値)についての概要

 教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)

(9)

藤川  聡・野口 直美  https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/

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 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1380718.

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―精神的回復力尺度の作成― カウンセリング研究,

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人事行政状況調査

https://www.mext.go.jp/content/20201222-mxt_

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11)文部科学省(2020).令和元年度公立学校教職員の人

事行政状況調査

https://www.mext.go.jp/content/20201222-mxt_

syoto01-000011607_03.pdf(2021.1.10最終閲覧)

(藤川  聡 旭川校教授)  

(野口 直美 北翔大学准教授)

参照

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