における事例検討
Author(s) 加藤, 慎嗣; 姫野, 完治
Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(1): 601‑611
Issue Date 2021‑08
URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12033
Rights
学校における組織的取組の継続要因に関する研究
―石狩市立花川小学校における事例検討―
加藤 慎嗣・姫野 完治*
石狩市立花川小学校
*北海道教育大学大学院教育学研究科
ContinuationFactorsofOrganizationalActivityinSchool:
ACaseStudyatIshikariCityHanakawaElementarySchool
KATOShinjiandHIMENOKanji*
IshikariCityHanakawaElementarySchool
*DepartmentofAdvancedTeacherProfessionalDevelopmentProgram,GraduateSchoolofEducation
概 要
本研究では,北海道教育委員会による「学校力向上に関する総合実践事業」の実践指定校で ある石狩市立花川小学校において,事業の開始期に在籍した教師3名と現在在籍している教師 3名に対して半構造化インタビューを行うことを通して,取組が継続されてきたプロセスと要 因の解明を行った。学校力事業の実践指定校に選定されたことが一つの契機となりながらも,
そこでの取組が子どもの実態に合った取組であったこと,子どもの姿で成果が共有され,取組 の大きな納得感につながったこと,成果が学校外に伝わることにより,新たに転入してくる教 師の意識に影響を与えたこと等,複合的な要因があることが明らかになった。
1.はじめに
2020年度から小学校で学習指導要領が全面実施 された。今回の改訂においては「生きる力」を育 むという基本理念は継承しつつ,「社会に開かれ た教育課程」「主体的・対話的で深い学び」「カリ キュラム・マネジメント」といった新たなキー ワードが出てきている。これからの社会を創る子
どもに必要な資質・能力を社会全体として育てて いくことが,より明確になった。また,教育現場 が抱える課題がますます複雑化し,種々の対応が 求められる中で,改革を加速させるとともに,働 き方を改革することも喫緊の課題となっている。
このような課題を解決するための方策として,
中央教育審議会(2015)は,学校の組織としての 在り方や学校の組織文化に基づく業務の在り方な
どを見直し,「チームとしての学校」を作り上げ ていくことが大切であると指摘している。そして,
「チームとしての学校」実現のための視点として,
①専門性に基づくチーム体制の構築,②学校のマ ネジメント機能の強化,③教職員一人一人が力を 発揮できる環境の整備の3点を挙げている。三沢 ほか(2020)は,「チームとしての学校」の実現 について,積極的な意見交換や個性の尊重などに 特徴づけられる協働を指向し,相互に率直で開放 的な議論が交わせる風土のもとでは,教師の行動 面でのチームワークも発揮されやすいと論じてい る。また,後藤(2016)は,教師が「協働」して いくためには同僚間での相互作用が必要不可欠で あり,お互いのことを考え,調整し合うことで,
初めて「協働」が成り立つと述べている。さらに 秋田(2010)は,同僚性とは教育に対する同じ展 望を持ち,その展望の実現に向かって各々が責任 を引き受けあう関係のなかで生まれる信頼による 同僚関係であるとし,それはトップダウンで同じ ように足並みをそろえる均質集団としての階層関 係ではなく,相互に個人の持ち味を発揮し認め合 う自律的な専門職関係の中で創られる関係である と指摘している。このような指摘をふまえると,
学校組織は強いトップダウンの様相は呈しておら ず,「同僚性」が築きやすい環境にあるといえる。
しかしながら,現実には「チームとしての学校」
を実現することは簡単なことではない。その一つ の要因として,学校組織の特殊性がある。浜田
(2014)は,Weick,K.やBacharach,S.B.等の論 を用いて,各教師の教育活動は,各自の課題意識 に基づいて進められており,それぞれのもとで教 育実践の質に関わる重要な意思決定がなされてい ると述べている。また,「鍋蓋型」とする学校組 織論は,学校組織の一側面を捉えているにすぎな いとし,「ウェブ(クモの巣)型組織としての学校」
を提起している。学校は,管理職からの管理統制 が限定的であり,実際には現場での即時的で個別 的な対応が求められることが多い。学校組織にお ける教師は,それぞれがその場その場での意志決 定者といえる。そのため,学校は組織としての共
通性や統合性を維持しようとする傾向がありつ つ,教師の個別性や多様性を保持しようとする傾 向もある。このような教師の裁量性を尊重する組 織は,局面的な対応に優れていたり,課題に対し て多様な解を活用できたりするよさがある。しか し,組織としての統合性を失い,学校の教師が個 別拡散的に教育活動を展開することが常態とな り,非効率的な組織運営に陥った状態になること で,「個業化された状況」になることも,佐古(2006)
によって指摘されている。教師それぞれの教育観 や指導法が尊重されるため,相反する教育観や指 導法などが校内に同居してしまい,時にはそれが 同僚性の高まりを阻む場合もある。多様性が認め られることによって,自分の考え方や実践の方法 に固執し,個業化につながる場合も想定される。
これらのことから,「チームとしての学校」の 在り方が求められていながらも,学校組織の特殊 性から,一体となった教育活動が展開しにくいと いう課題がある。このような課題を解決する上で,
三沢ほか(2020)は,「チームとしての学校」を 実現する前提として,教師集団の協働のあり方に 関する実証的検討の必要性を指摘している。しか しながら,組織的な取組についての実証的検討を 行った研究は多いとはいえない。
本研究では,組織的に学校力の向上に取り組ん できた石狩市立花川小学校を研究対象として,ど のようにして長期間にわたって組織的な取組を継 続することができたのか,そのプロセスと要因を 明らかにすることを目的とする。
2.研究の方法
2-1 研究の対象
研究の対象とする石狩市立花川小学校(以降,
花川小学校と記す)は,2020年時点で,児童数 271名,学級数14学級(特別支援学級2学級含)
の中規模校である。北海道教育委員会が平成24年 度から創設した「学校力向上に関する総合実践事 業(以後,学校力事業と記す)」の実践指定校と なり,これまでに様々な取組の中で学校力の向上
を図ってきた。指定以前は児童が落ち着かない,
いわゆる荒れた学校であったが,様々な取組を 行ったことが功を奏して,子どもの様子に変化が 見られている。また,CRT学力テストや全国学 力・学習状況調査でも,全国平均を大きく下回っ ていたが,学校力事業の指定を受けて以降は,国 語,算数ともに8年連続で全国平均を上回る結果 となっている。実践指定校となってからの9年間 の取組の継続によって,学校改善が図られたと言 える。これらのことから,石狩市立花川小学校を 研究対象とすることが妥当と考えた。
2-2 研究の枠組と方法
本研究では,花川小学校が「学校力事業」の実 践指定校となり,様々な取組を開始した時期と,
それらの取組を引継ぐ時期に在籍した教師に対し て,半構造化インタビューを行った。調査の枠組 みとインタビューの項目を表1に示す。研究Ⅰで は,事業の開始時に在籍していた教師3名を対象 とし,研究Ⅱでは,事業開始後4年目以降に赴任 してきた教師3名を対象とした。
インタビューの際には,研究の目的と選出理由,
個人情報の保護について説明し,事前に研究倫理 に関する承諾を得た。また,ICレコーダーを使っ て録音することも確認した。インタビュー時間に ついては30分程度としていたが,本人の語りを重 視したため,対象者によって多少の過多が生じて いる。花川小学校では,様々な取組を行ってきて いるが,組織的に行ってきた「教えて考えさせる 授業」が最も特徴的な取組であることから,その 取組を中心としたインタビューを実施した。対話 的なインタビューを意識し,研究対象者の率直な 思いや考えを引き出せるように配慮した。
2-3 分析の方法
インタビュー時の発話をもとにプロトコルデー タを作成し,コーディングを行った。コーディン グの際には,できるだけ対象者の発言の特徴を生 かし,例えば「先生方のいろんな意識があるけど,
どっかで学校力っていうのがあったから(中略)
みんながどっかでの意識の統一はたびたび図られ ていて,(中略)だからうまくいっていたかな」
表1 研究の枠組みとインタビュー項目
研究Ⅰ 研究Ⅱ
目的 学校力開始時の状況や様々な取組が始まった背 景,その前後の変化や継続のプロセスや要因を 明らかにするため
赴任してきた時の学校への見え方,取組の受け 入れ方,継続のプロセスや要因を明らかにする ため
対象者の選定 条件
※立場によって見え方や考え方が違うことを考 慮し,年齢や経験年数の違う3名であること。
※記憶が薄れている可能性も考慮し,転出して から3年以内であること。
※時期によって見え方や考え方が違うことを考 慮し,赴任してきた年度の違う3名であること。
※立場によって見え方や考え方が違うことを考 慮し,年齢や経験年数の違う3名であること。
研究対象者 学校力の事業開始時に在籍していた教師(3名)
〇A教諭:60代
〇B教諭:40代
〇C教諭:30代
事業開始後4年目以降に赴任してきた教師(3名)
〇D教諭:40代
〇E教諭:50代
〇F教諭:30代
形態 対面とZoom(1対1) 対面(1対1)
調査の時期 2020年5月~8月 2020年5月~8月 主な質問項目 「取組が始まった時の経緯」「その時の自分の
立場と受け取り方」「周りの反応」「取組が継続 してきた理由」
「赴任してきた時の取組への感想」「自分の立 場と受け取り方」「他の教師について」「取組が 継続してきた理由」
という発話は,キーワードと捉えられる「意識の 統一」という言葉を取り出し,そのまま中カテゴ リーのコードとした。また,「まったく個人で,
やる子はやるしやらない子はやらないし。やるク ラスはやるし,やらないクラスはやらないしって 感じだったんだよね。」という発話は,インタビュ アーの質問と発話の前後の文脈をふまえ,「それ までの学校の課題」というコードをつけた。これ らの中カテゴリーから関連性のあるものをまとめ て整理し,大カテゴリーとした。表2はその一部 である。
3.結果と考察
3-1 研究Ⅰ
学校力事業の開始時に在籍していた3名の発話 を分析したところ15のカテゴリーに整理すること ができた(表3に示す)。
⑴ 学校力向上に関する総合実践事業の存在 学校における組織的取組がどのような契機に始
動するかは様々ではあるが,花川小学校では,北 海道教育委員会による学校力事業の実践指定校に 選定されたこと,そのために学校全体として成果 を出さなければならないという強い意識を持って いたことが伺える。しかも,その成果とは,A教 諭が「人を増やしているからそれなりの成果は出 さなきゃいけないっていうのはたびたび言われて いたね。」,B教諭が「相当プレッシャーはありま した。変な話,数字を毎回出さなきゃいけないっ ていうのが。」と言及するように,学力テスト等 の結果で示すということが,暗黙の了解とされて いたようである。2007年から再実施された全国学 力・学習状況調査では,北海道の子どもたちの結 果が全国平均よりも低い傾向が続いており,学力 の底上げが重要な課題となっていた。そのような 中始まった北海道教育委員会による学校力事業 は,学校力を向上させることが主目的ではあるが,
学力向上はそのための重要な取り組みと位置づけ られていた。教育活動の成果をテスト等の数値の みで判断することには批判的な声もあるが,花川 小学校では最低保障学力テストなど独自の取組に 表2 発話分析の一例
大カテゴリー 中カテゴリー 発話例
学校力向上に関する
総合実践事業の存在 ⑴意識の統一 「先生方のいろんな意識があるけど,どっかで学校力ってい うのがあったから(中略)みんながどっかでの意識の統一は たびたび図られていて,(中略)だからうまくいっていたか な。」(A教諭)
⑵職員の増加 「やっぱり学校力がついたことによって人数が増えたから」
(A教諭)
⑶成果を求められる 「ただ人を増やしているからそれなりの成果は出さなきゃい けないっていうのはたびたび言われていたね。…」(A教諭)
⑷他の実践指定校との違い 「その知り合いの先生はうまくいかなくて転勤するって言っ てすぐ転勤しちゃったんだけどね。」(A教諭)
学校の実態に合った 取組の開始
⑸それまでの学校の課題 「まったく個人で,やる子はやるしやらない子はやらないし。
やるクラスはやるし,やらないクラスはやらないしって感じ だったんだよね。…」(A教諭)
⑹児童の実態からのスター ト
「教えて考えさせることがいいんじゃないかっていうのが はっきりした形ではないけども話としては出ていたから(中 略)私としては受け入れやすかったかな。」(A教諭)
⑺共通理解 「大きく揉めることはなかったかな。(中略)学力ここが落 ちているからやっぱりあれやっていた時の方がよかったねと か,ちょっとずつちょっとずつ。大きくもうやめましょうっ ていうのはなかったかな。(A教諭)
表3 取組継続の要因(学校事業創始期に在籍した教師)
大カテゴリーコード 取組開始時に在籍した教師のインタビュー結果をもとにした発話例
Ⅰ-1 学校力向上に関する
総合実践事業の存在 「人を増やしているからそれなりの成果は出さなきゃいけないっていうのはたびたび言われ ていたね。」(A教諭)
「その知り合いの先生はうまくいかなくて転勤するって言ってすぐ転勤しちゃった。(A教諭)」
「相当プレッシャーはありました。数字を毎回出さなきゃいけないっていう。」(B教諭)
Ⅰ-2 学校の実態に合った
取組の開始 「荒れてたよ。とりあえず言うこと聞かなくて。(中略)とりあえず教師に対す口の利き方 はひどかったね。『なんだ,このやろー!』みたいな感じで。」(B教諭)
「もともとは学力が低かった子どもたちをなんとかしなきゃから始まったので。」(B教諭)
「道の指導主事の研究会で「教えて考えさせる授業について」っていうのがあって(中略)
市川伸一先生が直々に公演をするとかっていうのがあって行ったんだわ。」(B教諭)
「教えて考えさせるをやります」って言った時に,やっぱり抵抗感はあった…」(C教諭)
Ⅰ-3 転入者への説明 「やっぱり『教えて考えさせる』って,(中略)だから,オレはけっこうかみついた。で,
後で研究部長の〇さんと〇さんに呼ばれて,いやこうなんだって説明してくれた。」(C教諭)
Ⅰ-4 取組に対する管理職
の理解と信頼関係 「トップダウンかボトムアップかっていうところで,ああしろこうしろって言われてってい うことは(中略)それは(花小では)無かったから。」(A教諭)
「ただよかったのは,校長先生に対してのみんなの信頼が厚かったから…」(A教諭)
「人が変わっても引き継いでいくっていうのを管理職が言ってたのでそこは大きいんじゃな いかな。みんなでつないでいくぞっていうのを言葉にして伝えていたのは大きいんじゃない かな。」(B教諭)
Ⅰ-5 職員同士の関係性の
よさ 「学校に行きたくないのは無いんだよね。(中略)職員室が大事だよね。子どもたちにとっ ても職員室の空気がいいって大事だよね。これだけいろんな人がいろんなところから来てい るけど,雰囲気が悪くならないって大事だと思う。」(A教諭)
「前向きに変われる学校ってそうなんじゃないかな。職員室の雰囲気ってすごくいいと思 う。」(B教諭)
Ⅰ-6 協働性の高さ 「みんなでやる中でいろんな意見はあるけど(中略)本当にみんなでやっていた感はすごい あった。」(A教諭)
「断然チームワークだと思います。(中略)そこを一番大切にするところかな。」(B教諭)
「みんなで一緒に進んでいくっていうのはすごく体験できたから,そこは勉強になったかな。
(中略)一つの方向にみんなが向かっていったときの力ってすごいなって思った。」(C教諭)
Ⅰ-7 若い教師の多さ 「やっぱり若い先生が多いってことじゃない。やっぱり年齢層が高かったら,やりたいと思っ たことを遠慮しちゃうこともあるし,逆に20代の先生が多いと,30代ががんばるよね。(中略)
みんなついてきてくださいって言っても,ついてきてくれやすいと思うんだよね。」(C教諭)
Ⅰ-8 ミドルリーダーの存
在 「30代,20代がいた中で,40代の先輩たちがやるっていうならついていこうかなって感じか な。」(C教諭)
「あれを見せられたら子どもにやらせなきゃ,言わなきゃって思ったし,(中略)オレも胸 が熱くなったし,やっぱり40代の人とか,それを支える30代とかががんばってるおかげだと 思う。」(C教諭)
Ⅰ-9 担外の存在感 「だから担外の先生だからっていう軽い感じでもないし(中略)きっちりそこのやり取りも 大事だなって,やっていて思いました。」(A教諭)
「TTに入る人って大事だなって,すごく。(中略)ちょっとした存在なんじゃなくて,大き い存在としていれるっていうことがその効果は大きかったかな。(A教諭)
Ⅰ-10 子どもの姿に説得力
を感じる 「ただ,子どもたちがすごく,(中略)だんだん自信をもってくるっていうのがわかったから,
少なくとも子どものためになるなっていうのは実感できました。」(B教諭)
「そしたら子どももよくなって,テストの結果もよくなっていったから,みんなも喜ぶよね。
そしたら,もっとみんなやりたいってなって(中略)学校が活発になった気がした。」(C教諭)
Ⅰ-11 保護者や地域からの
理解 「よその学校評価見ても,花小みたくなりたいっていうのがあったりすると,じゃあがんば ろうかなってなるよね。子どもも親も学校の取組に協力的だなっていうのを感じたからがん ばらなきゃなっていうのはあったかな。」(B教諭)
Ⅰ-12 外部からの刺激 「自分が中にいると,ここがすごいって言われても,全然わかんなかったから。それこそ大 学院生が2人ずつ来てて,(中略)『あぁそうなんだ』って。」(A教諭)
「取材とかも来るようになったんだよね,テレビ局とか。そういうのも大きい。」(B教諭)
「25,26,27が多かったんじゃないかな?(中略)あれだけ毎週のように視察が来たらさ,
続けざるをえないというかさ,途中でやめたって言えないじゃん。何とかしてこれをキープ しなきゃって。だからそういう自分らの意識とは違う流れができてしまったっていうのがあ るかなって。」(B教諭)
Ⅰ-13 人事異動 「まずそういうはずれがなかったっていうね。それは我々の力じゃなくて局の力。」(B教諭)
「12,3人入ってきたんだよ。(中略)新しく来た人は,最初の会議では何も言えないから,
あ~やるんだって。(C教諭)」
Ⅰ-14 校内人事の力 「だからそういう意味では校内人事もはまったっていうか,次の年の6年生をやってくれる 先生が,オレたちも負けないぞ,がんばるぞっていうような先生だったっていうのが大きかっ たかな。バトンがつながった感じかな。」(B教諭)
Ⅰ-15 わかりやすい形とし
て残すこと 「やっぱり次の年に始まった時に前のことがわかるようにしていこうってしたのは大きかっ たと思う。形で残したでしょ。(中略)そこが大きいなって思う。」(A教諭)
おいても細かい数値目標を設定しており,これら の数値が事業の成否を測る一つのバロメーターと 捉えられていたようである。
「学校力事業」の実践校に指定されたことによ り加配教師も配置されるため,少なからず成果を 出さなければならないというプレッシャーがある にせよ,それだけでは組織的な取組にはならず,
また本質的な学校改善にもつながらない。A教諭 が「その知り合いの先生はうまくいかなくて転勤 するって言ってすぐ転勤しちゃったんだけどね。」
と言及するように,学校力事業の実践指定校の中 には,取組が継続していかなかった学校も存在し ている。このことからわかるのは,学校力事業の 実践指定を受けることは,組織として取り組んで いく上での前提にはなるが,その取組の継続につ ながった要因を探索していく必要がある。
⑵ 子どもや学校の実態に合わせた取組
花川小学校で9年間にわたって取組が継続され た一つの要因として,「Ⅰ-2子どもや学校の実態 に合った取組」がある。学校力事業が始まった当 時の花川小学校は非常に荒れており,B教諭が「荒 れてたよ。とりあえず言うこと聞かなくて。(中略)
とりあえず教師に対する口の利き方はひどかった ね。『なんだ,このやろー!』みたいな感じで。」
「そうだね,もともとは学力が低かった子どもた ちをなんとかしなきゃから始まったので。」と語っ ているように,様々な課題を抱えていた。学力差 も大きく,授業についていけない子どもをどのよ うに支援するかが模索されていた。その中で「教 えて考えさせる授業」が取り入れられた。
「教えて考えさせる授業」とは,市川(2008)
が提唱した授業方法であり,授業の導入で教える べきことをしっかりと教えた上で,導入で学んだ ことを生かして問題の解決に取り組むという授業 方法である。教えるべきことを教師がしっかりと 教えるため,子どもの学びを保障しやすいという 利点がある一方で,C教諭が「教えて考えさせる をやりますって言った時に,やっぱり抵抗感は あった。」と言うように,子どもの自由な思考を
妨げるのではといった批判や,授業方法を変える ことに抵抗を示す教師も多いという指摘もある。
このように賛否両論ある授業方法ではあるが,花 川小学校ではその授業法に組織的に取り組んでい る。それは,学校力事業ありきの取組ではなく,
B教諭が「もともとは学力が低かった子どもたち を何とかしなきゃから始まったので。」と言及し ているように,取組が子どもの実態に合致してお り,結果として成果をあげていることから,取組 を継続することにつながったと考えられる。
⑶ 子どもと学校の変化
このように子どもの実態に即した取組であって も,それが長年にわたって継続するとは限らない。
花川小学校では,「Ⅰ-10子どもの姿に説得力を感 じる」「Ⅰ-3転入者への説明」「Ⅰ-15わかりやす い形によって残すこと」等が実現されたことによ り,組織としての取組が共有され,継続されてき たと考えられる。とりわけ,子どもが成長し,成 果が目に見える形で出てくることは,取組継続に とって非常に重要である。B教諭が,「ただ,子 どもたちがすごく,(中略)だんだん自信をもっ てくるっていうのがわかったから,少なくとも子 どものためになるなっていうのは実感できまし た。」,C教諭が「そしたら子どももよくなって,
テストの結果もよくなっていったから,みんなも 喜ぶよね。そしたら,もっとみんなやりたいって なって(中略)学校が活発になった気がした。」
と述べるように,最初は抵抗感を抱いていた教師 も,子どもの姿で取組の意義を実感することによ り,さらに組織としての取組として位置づいたと いう好循環が生まれていたと言える。
また,このように好循環が生まれた取組を,次 につなげ,共有していくことにも重きが置かれて いた。日本の学校には教師の異動があり,毎年少 なからず教師の入れ替えが起こる。そのような循 環によって新しい関係性が生まれ,組織が滞留す ることを防ぐことができる反面,短期間で組織が 変わるため,取組を継続することが難しい。3名 の発話から,取組を継続するためには,わかりや
すい形で見える化するとともに,そしてそれを転 入してくる教師に説明し,子どもの姿で納得して もらうことが鍵になったと捉えられる。
⑷ 協働性の高さとミドルリーダーの存在
「Ⅰ-4取組に対する管理職の理解と信頼関係」
「Ⅰ-5職員同士の関係性のよさ」「Ⅰ-6協働性の 高さ」のカテゴリーにみられるように,職員の関 係性に関する発話が数多く挙げられている。A教 諭による「本当にみんなでやっていた感はすごい あった」,B教諭による「断然チームワークだと 思います」,C教諭による「みんなで一緒に進ん でいくっていうのは すごく体験できた」といっ た発話からは,秋田(2010)が指摘する「信頼に よる同僚関係」が土台となり,協働性が高まって いたことが伺える。では,なぜこのような「チー ムとしての学校」を実現することができたのだろ うか。その要因の一つが,「Ⅰ-8ミドルリーダー の存在」や「Ⅰ-9担外の存在感」にみられるよう な,つなぎ役の存在である。浜田(2014)の示す
「ウェブ型(クモの巣)型組織としての学校」で は,一般教職員同志のコミュニケーションを取り 持つことが重要であると指摘され,それを担うミ ドルリーダーの存在の重要性が示されている。C 教諭が「30代,20代がいた中で,40代の先輩たち がやるっていうならついていこうかなって感じか な」「あれを見せられたら子どもにやらせなきゃ,
言わなきゃって思ったし,(中略)オレも胸が熱 くなったし,やっぱり40代の人とか,それを支え る30代とかががんばってるおかげだと思う」と言 及しているように,ミドルリーダーの率先垂範,
それが周りに大きな影響を与えていることがわか る。
当時の花川小学校には,ミドルリーダーの役割 を担うような立場の教師が校内に複数人存在して いた。例えば,インタビュー対象者であるA教諭 は,研究部長や学力向上推進係を担当し,学校の 中心となっていたと言える。この他にも,リーダー シップを発揮しながらも若手の相談にのったり,
職員室での会話を盛り上げたりするなど,職員同
士をつなげる存在だった教師もいた。この点は,
吉村・中原(2017)が,学校改善に向けたミドル リーダーの行動プロセスの基盤として示している
「関係性の醸成」に当てはまると思われる。ミド ル・アップダウン・マネジメントにおける「リー ダー的機能」「マネージャー的機能」「メンター的 機能」の3つの役割を担うミドルリーダーがいた こと,そしてそれが1人ではなく,複数の教師が それぞれの立場や個性を生かしながら機能して いったことが,取組を継続していく上で要因の一 つと考えられる。
3-2 研究Ⅱ
学校力事業が始まって4年目,5年目,6年目 に赴任してきた3名の発話を分析したところ,14 のカテゴリーに整理することができた(表4に示 す)。
⑴ 転入者に与える影響
学校力事業の開始時に在籍した3名と比べて,
研究Ⅱで対象とする3名は,花川小学校が学校力 事業の実践指定校であること,またどのような取 組を行っているのかも少なからず理解した上で転 入している。そのため,一般的な異動と比べて,
花川小学校への異動は多少なりとも意味合いが異 なる。「Ⅱ-1転入前の学校への印象」にあるように,
程度の違いはあれども,3名とも転入前に花川小 学校について知っており,とりわけE教諭はホー ムページ等を通して具体的な取組を理解していた。
一般的に,異動によって職場環境が変化すると,
新しい学校文化や価値観に適応することが求めら れるため,少なからず負荷がかかる。町支(2019)
は,初任校から2校目への異動が教師に与えるネ ガティブな影響に着目し,異動後の困難さを明ら かにしているが,それは経験年数を重ねた教師に も同様である。しかしながら,F教諭が「花川は すごい力持ってる,先生方もパワーあってってい う評判は聞いていましたよ」「花川だったら学校 力もやってるし勉強になるんじゃないか,(中略)
力を磨くチャンスなんじゃないかっていう話はあ
表4 取組継続の要因(学校事業開始4年目以降に在籍した教師)
大カテゴリーコード 取組開始後4・5・6年目に赴任してきた教師の発話例
Ⅱ-1 転入する前の学校へ
の印象 「やっぱり花小に来るよってなったら(中略)言う通りやらなきゃとかって思うんじゃない かな。やっぱり学校力をやって,結果を出している学校ですよっていうのがあるから。自分 もそうだったもんね。」(D教諭)
「花川はすごい力持ってる,先生方もパワーあってっていう評判は聞いてました。」(F教諭)
「花川だったら学校力もやってるし勉強になるんじゃないか,(中略)力を磨くチャンスな んじゃないかっていう話はありましたね。」(F教諭)
Ⅱ-2 転入してきた時の学
校の印象 「『教えて考えさせる授業』は,(中略)最初はいずかった気がするなぁ。」(D教諭)
「学年でそろえるとか学校でそろえるっていうやり方は,先生たちも安心してできるし,自 信をもってできるし,後ろ盾もあるし,すごくいいなと思っていました。」(E教諭)
「職員みんなが同じ気持ちで授業とかやり方が統一されていたから,すごく明確でわかりや すいなって思いました。…」(F教諭)
「学校でやるべきことにすごく追われるっていうのはありましたね。(中略)だからやっぱ り自分がこうしたいなっていうのができなかったかな。」(F教諭)
「花小はそれぞれのクラスを自由に見ていいっていうスタンスでいたので,…(中略)…授 業もテストの時とか見に行けたので参考になったっていうのがありましたね(F教諭)」
Ⅱ-3 管 理 職 の リ ー ダ ー シップと信頼関係づ くり
「管理職の強力なリーダーシップっていうのが必要だなって。校長先生がこうやりますって はっきり言えるようなリーダーシップをもっていたんじゃないかなって。先生方をねぎらっ たり,しっかり努力しているところを認めて,そういうところを大事にしてからこそ,一般 の先生たちもついていったんじゃないかなって思いますね。」(E教諭)
Ⅱ-4 職員同士の関係性の
よさ 「ある程度経験のある先生も(中略)決まったらそれに従う。当たり前っちゃあ当たり前な んだけど,それがしっかりできているというか,そう考えると人間性なんですかね。(E教諭)
「自分が来た時に,丁寧に説明してくれて,授業も見てくれて,困ってることない?って聞 いてくれてそれが大きかったなぁって。」(F教諭)
Ⅱ-5 協働性の高さ 「若い先生たちをサポートしたりだとか,うまく育っていってほしいという思いをもって接 している(中略)おせっかいおばさんですね。そういう気持ちでいる人が多いかと。」(E教 諭)「ひとつのことを決めたら全員で動く学校だよっていうのは聞いていて,来た時に本当にそ うだなっていうのは感じたんですよね。(中略)一体感っていうか,意識をちゃんと共有し ているというか。(F教諭)
「新しい先生が来ても,こういう取組やっていたからって意識をちゃんと共有するっていう のが…」(F教諭)
Ⅱ-6 若い教師の多さ 「若い先生が多いから,みんなでいっしょにやっていこうっていうところがすっと入る,すっ と納得できるっていうのがあるかと思います。」(E教諭)
Ⅱ-7 ミドルリーダーの存
在 「メンバーが変わる中で自分がつなぎ役になるとか,そこにならなくちゃいけないなぁって いうのがあって(中略)やっぱり自分の考えをもって,それを他の人たちにしっかり伝えて いって,できればまとめていくっていう…」(F教諭)
Ⅱ-8 担外の存在感 「先生たちが大変なんです。(中略)時間があるときはふらっと回って,先生のいないとこ ろに行けばちょっと入ってていうのをするようにしていたっていう感じですね。」(E教諭)
「あとは担外の先生が多いってことで(中略)きっといろんな要素が組み合わさってるんだ と思います」(F教諭)
Ⅱ-9 子どもの姿に説得力
を感じる 「上の学年を見た時に,書けるようになってくるんだなっていうのを思った。…(中略)…
鍛えられているからね。」(D教諭)
「6年生がやっぱりすごくきちんとやっていたから,(中略)これをイメージして,この形 だよっていうのがけっこう共有できたんじゃないかな。」(D教諭)
「最初もったのが5年生で高学年だったので,今まで培ってきたものがあって,何というか 伝統っていうのがあったから,子どもたちがやんなくちゃいけないものだって思ってたって いうのが一番かなって思います。」(F教諭)
Ⅱ-10 保護者や地域からの
理解 「あとは地域的なものかと思うのがあって,保護者の方も学校でやっていることに協力して くれるっていうのが大きいんじゃないかなって思うんですよね。…」(F教諭)
Ⅱ-11 内側からの刺激
外側からの刺激 「視察って大変だけど,視察が来ることによってよくなってるからね。来た人よりもうちの 学校がよくなるっていう方がね。」(D教諭)
Ⅱ-12 伝え続ける必要性 「他の学校だったら言う人も言わない人もいるって中で,みんな言う。」(D教諭)
「続けていく人がやっぱり必要なんだろうね。(中略)口を出していけるかっていうとこだし,
みんなに発信していけるかっていうところかな。」(D教諭)
Ⅱ-13 つなげていきたいと
いう思い 「これを継承していけるんだったら(中略)真髄の部分っていうのは残していかなきゃいけ ないっていうのは思いますね。(E教諭)
「子どもたちを落ち着かせる要因の一つには勉強がわかるっていうのがあると思うんですよ ね(中略)そこの部分は大事にしていかなくちゃいけないって思います。」(E教諭)
「今まで培ってきた学力もそうだし,(中略)だから,よさを無くさない。」(F教諭)
Ⅱ-14 継承の課題 「人も状況も変わる中で,(中略)今まで継続してきたことのよさが薄れてきているのかなっ て。特に今年はありますね。子どもたちもなんかそれが当たり前になってしまうと,じゃあ 元の花小に戻そうっていう風になるのかなっていう心配はありますね。」(F教諭)
りましたね。」と述べるように,教師にとって花 川小学校への異動が力量向上の契機と捉えられて いたと考えられる。姫野・益子(2015)は,教師 が「経験から学習する状態」になっているかどう かに焦点をあて,異動が教師の学習を開く上での 一つの契機となることを明らかにしている。また,
山崎(2012)は「意味ある学校への赴任」が職能 機能やキャリアにとって良い転機になったと答え る教師が多くなっていることを指摘している。こ れらのことから,学校力事業で成果をあげてきた 花川小学校に異動するということは,少なからず 教師の自己肯定感を高めることに寄与し,またそ ういった花川小学校の取組に積極的に関与するこ とで自らの力量を高めようとする意識を持ってい たと言える。
⑵ 子どもの姿に説得力を感じる
先述したように,転入前に花川小学校の取組を 理解し,また希望する異動であったとしても,新 しい学校組織や文化に慣れるのは時間を要するも のである。とりわけ学校力事業の始動期を経験し ていないD教諭,E教諭,F教諭の3名にとって は,各取組がどのような経緯で始められたのか,
またどのような効果があるのかを知り得ない。そ のような中で取組に意義を見出す上で重要となる のが,研究Ⅰでも指摘したように「Ⅱ-9子どもの 姿に説得力を感じる」ことである。D教諭が「6 年生がやっぱりすごくきちんとやっていたから,
(中略)これをイメージして,この形だよってい うのがけっこう共有できたんじゃないかな。」,ま たF教諭が「最初もったのが5年生で高学年だっ たので,今まで培ってきたものがあって,何とい うか伝統っていうのがあったから,子どもたちが やんなくちゃいけないものだって思ってたってい うのが一番かなって思います。」と言及している ように,赴任後に実際に子どもの様子を見て,子 どもと接する中で納得感へとつながっていったこ とがわかる。成果を出しているからそれに従って 当たり前ということではなく,実際に子どもの姿 を見て感じるものがあるからこそ,自然な形で納
得し,取組がつながっていっていると考えられる。
⑶ 転入者への対応
教師の個別性や多様性が尊重される学校組織の 特殊性をふまえると,異動に伴い多数の教職員の 入れ替えがおこることによって,取組を継続して いくことが困難になる場合が少なくない。一般的 に,授業者は自分がこれまで学んできた理論や経 験をもとにして授業づくりを行う。また,研究団 体などに所属している人は,その研究団体の授業 方法で実践することが多い。そのため,授業の方 法を校内で統一している学校は少なく,特定の授 業方法に統一されている学校というのは非常に特 徴的と言える。このような中,花川小学校では,
決して一般的な方法とはいえない「教えて考えさ せる授業」に学校全体で組織的に取り組んできて いる。D教諭が「『教えて考えさせる授業』は,(中 略)最初はいずかった気がするなぁ。」と述べる ように,それまで取り組んできた授業法の転換を 迫られることは,教師の教育観や価値観が揺さぶ られる機会となる。個が尊重される学校組織の特 殊性を考えると,経験したことがなかったり,自 分の指導方針に合わなかったりする授業方法に抵 抗感を感じるのは当然といえるだろう。また,そ れがたとえ子どもの成長を実感できるものであっ たとしても,自分が指導可能なものでなければ受 け入れることはできない。それでも取組が継続さ れてきた背景には,「Ⅱ-4職員同士の関係性のよ さ」の中で,F教諭が「自分が来た時に,丁寧に 説明してくれて,授業も見てくれて,困ってるこ とない?って聞いてくれてそれが大きかった なぁって。」,「Ⅱ-5協働性の高さ」の中で,D教 諭が「そういったところの議論ができるのがいい ところだなって思うかな。だからこそ納得できた んじゃないかな。」と言及しているように,転入 した段階からしっかりと取組に対する合意形成を 図っていけるような環境や機会が内在しているこ とがある。
⑷ 取組の参加者から伝達者へ
新しく赴任する教師に取組が引き継がれたとし ても,毎年の異動により多かれ少なかれ教師の入 れ替わりが生じる。転入時は取組の参加者であっ たとしても,徐々に伝達者として取組を受け継い でいく者がいなければ,取組を続けていくことは 難しい。花川小学校では,誰もが参加者が伝達者 へと転換していく正統的周辺参加がうまく機能し ている。「Ⅱ-13つなげていきたいという思い」に おいて,E教諭が「これを継承していけるんだっ たら,(中略)真髄の部分っていうのは残して行 かなきゃいけないっていうのは思いますね。」と 発話しているように,学校力事業の開始後に赴任 した教師が取組を伝えていくことの重要性を感じ ている。しかも,それは一部の教師だけではない。
「Ⅱ-12伝え続ける必要性」において,D教諭が
「やって見逃さないって。他の学校だったら言う 人も言わない人もいるって中で,みんな言う。」,
D教諭が「続けていく人がやっぱり必要なんだろ うね。(中略)口を出していけるかっていうとこ だし,みんなに発信していけるかっていうところ かな。」と発言しているように,転入者への対応 という点だけでなく,在籍する教師全員でコミュ ニケーションをとりながら意識を共有している様 子が伺える。
4.おわりに
本論文では,石狩市立花川小学校に在籍した教 師を対象としたインタビュー調査をもとに,組織 的取組が継続してきたプロセスと要因を明らかに してきた。「チームとしての学校」が求められつ つも,その実現は決して簡単なことではない。北 海道教育委員会による学校力事業の実践指定校に 選定されたことが一つの契機となりながらも,そ こでの取組が子どもの実態に合った取組であった こと,子どもの姿で成果が共有され,取組の大き な納得感につながったこと,そういった成果が学 校外に伝わることにより,新たに赴任してくる教 師の意識に影響を与えたこと等,複合的な要因が
あることが明らかになった。そして,このような 取組が学校の文化となり,脈々と受け継がれてき た。学校改善の方策として,校内研修やカリキュ ラム・マネジメント等,改善のために新たな取組 を加算する場合が多いが,花川小学校ではそのよ うな研修の加算ではなく,取組の共有と継続に よって「チームとしての学校」を実現し,それが 学校力の向上につながっていると考えられる。今 後は,本研究で明らかにしたことが,花川小学校 だけの特殊解なのか,他の学校でも通用する一般 解なのか等,さらに詳細を検討していきたい。
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(加藤 慎嗣 石狩市立花川小学校教諭)
(姫野 完治 大学院教育学研究科教授)