日本小児循環器学会雑誌 3巻3号 327〜336頁(1988年)
心電図R−R間隔変動の時系列解析 自律神経機能検査としての検討
(昭和61年9月4日受付)
(昭和63年2月3日受理)
山崎 士郎
大分県地域成人病検診セソター
小 野 靖 彦
長崎大学医学部小児科 上原 豊 渡辺 幹生 柳 忠道 辻 芳郎
key words:心電図R−R間隔変動,自律神経機能,自己回帰モデル
安井 誠
要 旨
心電図R−R間隔変動は自律神経の緊張状態を反映していると考えられる.心電図R−R間隔変動と自 律神経緊張状態の関係を検討するため,副交感神経の緊張が強いと考えられる第1度房室ブロックの生 徒(房室ブロック群)と房室伝導は正常な生徒(対照群)の,安静臥位と立位での心電図R−R間隔変動 幅の時系列データを自己回帰モデルで解析した.心電図R−R間隔変動幅のパワースペクトルは体位によ
り変化し,対照群では臥位と立位での自己回帰係数が変化した.そこで自己回帰モデルの係数を変数と して判別分析を試みた.臥位と立位は,房室ブロック群の生徒では有意に判別できなかったが,対照群 では臥位と立位が有意に判別された(p〈0.01).房室ブロック群と対照群は,立位(p<0,01)で有意に 判別された.心電図R・R間隔変動の時系列データの解析により自律神経緊張状態の推定が可能であると 思われた.
はじめに
心拍が呼吸により変化することは18世紀にStephen Haiesにより報告され,呼吸性不整脈について研究さ れてきた1) 5).短時間の心拍変動は主に自律神経によ り調節されており6),心拍変動は自律神経中枢の活動 を反映していると考えられる.心拍変動の臨床的利用 としては胎児モニタリングで,徐脈や心拍数基線細変 動の消失により胎児仮死が診断されている7).また,呼 吸性不整脈による心拍変動は心臓迷走神経の活動を反 映しており1)2),心電図R−R間隔の変動係数が副交感神 経機能の検査として用いられている3).これらの検査 では心拍変動を時系列としてではなく,離散量として 解析し,心拍変動の周期成分については考慮されてい ない.心拍変動は呼吸性の変動だけではなく,Ak一 別刷請求先:(〒859−61)長崎県北松浦郡江迎町赤坂 免229
北松中央病院小児科 小野 靖彦
selrodらは犬を使った研究で交感神経と副交感神経 は周波数特異的に心拍変動に影響していると報告して いる8).心拍変動の周波数分析を行うことで,心拍変動 から副交感神経機能だけではなく,交感神経も含めた 自律神経緊張状態の推定が可能であると考えられる.
周波数分析の方法としてフーリエ変換,自己回帰解析 等があるが,サンプル数が少ない場合の周波数分析に は自己回帰解析が適していると言われており9),今回 の検討では自己回帰解析を使用した.生体の揺らぎ現 象に自己回帰解析を使用した研究は比較的に少なく,
小川ら1°),佐藤ら11)12)が脳波,重心動揺の解析に応用 し,心電図では佐藤ら11},高田ら13),佐々木ら14)により 運動負荷中の心電図R−R間隔の変化について報告さ れている.しかし,これらの研究では,自律神経の緊 張状態とR−R間隔変動の関係について検討はされて いない.そこで自律神経のバランスの心拍変動に対す る影響をみるため副交感神経の緊張が強いと考えられ
る機能的第一度房室ブロックのみられた生徒とブロッ クのみられなかった生徒について検討した.
対象および方法 1)対象
心電図2次検診を受診した生徒で,第1度房室ブ ロックの認められた12人(中学1年生7人,高校1年 生5人)を房室ブロック群とし,2次検診で異常のな かった19人(中学1年生9人,高校1年生10人)と完 全右脚ブロックの認められた6人(中学1年生1人,
高校1年生5人)を対照群として比較した.第1度房 室ブロック群の生徒は全員運動負荷後に房室ブロック が消失し,房室ブロックの原因は副交感神経の緊張充 進と考えられた.明らかな心拍のドリフトが認められ たものは解析の対象から除外したため,対照群は臥位 19例,立位21例,房室ブロック群は臥位12例,立位11 例について検討した.
2)心電図記録装置と解析法
心電図R−R間隔の計測には心電図モニター(フクダ 電子DS−501)のR波同期信号をタイマーカウソター
(コンテックTIR−6)を経由してマイクロコンピュー ター(NEC PC 9800)にオンライン入力し, R・R間隔 を計測した(図1).計測したR・R間隔はフロッピー ディクスに保存した.サンプリングの単位時間は1 msecとした.心電図の記録は午後1時から4時の間
に行い,臥位で5分以上,その後立位で5分以上心電 図R−R間隔を計測した.測定中は心電図モニターで心 電図を監視したが,P−R間隔の明らかな変化は認めら れなかった.今回の検討では,短時間の心拍変動を解 析したため,心拍変動の低周波成分と雑音の鑑別が困 難であると考え,心拍変動のドリフトを減少させるた めに心電図R−R間隔そのものではなく,心電図R・R 間隔変動の差をとりR−R間隔変動幅の時系列として 解析した.N番目のR−R間隔をAnとするとR・R間 隔変動幅YnはYn=(An)一(An−1)となる.臥位と立 位で連続した129心拍の心電図R・R間隔変動幅を時系 列データとして赤池の方法に従い自己回帰モデルを使 用し解析した15}.自己回帰モデルは,将来のR−R間隔 変動幅Ytが過去のR・R間隔変動幅Yt−1, Yt・2,…
Yt−mを使って予測できることを示している(付録参 照).従って,自己回帰モデルの係数A1, A2,…Am には,その時系列の情報が集約されており,佐藤らは 自己回帰モデルの係数で群の比較を行っている12).そ こでR・R間隔変動幅の時系列に差がみられるか自己 回帰モデルの係数を比較し,更に自己回帰係数を変数
心電図テレメーター
タイマーカウンター
マイクロコンピュータ NEC PC−9800
プリンター
図 1
として佐藤らと同様に線形判別関数法を用いて房室ブ ロック群と対照群の比較を行なった.有意差検定は Student t−testを使用し,自己回帰モデルの係数の有意 差検定は多重比較(Morrison法)を使用した.
結 果
1)心電図R−R間隔変動幅のパワースペクトル 安静臥床状態での心電図R・R間隔変動幅を時系列
データとして周波数分析を行なうと図2のようなパ ワースペクトルが得られる.図2には対照群中学1年 生のパワースペクトルを示した.図2(A)では,臥位 で0.3(1/beat)付近に明瞭なピークが認められ,立位 でピークの高さが減少した.しかし,パワースペクト ルのパターンは症例間のぼらつきが大きく,図2(B)
では臥位で多峰性にピークが認められ,立位で0.2(1/
beat),0.35(1/beat),0.45(1/beat)付近のピーク が減少した.立位でパワースペクトルのピークの位置 が左に移動しているが,これは立位で心拍数が増加し たためと考えられる.図2(C)では臥位と立位の変化 は(A),(B)ほど明瞭ではなかった.この様にパワー スペクトルのパターンは症例毎の変化が大きく,パ ワースペクトルの視察で心拍変動の体位変換に伴う変 化を明確にすることは困難であった.
2)体位変換による心拍数の変化
平均R−R間隔は体位変換により変化し,対照群では 臥位837±122msecから,立位671±97msecとR−R間 隔が有意(p〈0.01)に短縮した.房室ブロック群でも 平均R−R間隔は臥位786±140msecから,立位726±
131msecに短縮したが,有意差はみられなかった.ま た,対照群と房室ブロック群では臥位の平均R・R間隔 に有意差はみられず,立位の平均R−R間隔にも有意差 はみられなかった.
3)自己回帰モデルの次数
自己回帰モデルを使用する場合,自己回帰モデルの
昭和63年5月1日 329−(41)
(sec・}
0025
Csec2}
0025
一臥 位一
O,1 02 05
一立 位一
口.4 0.5 {1/beat)
。L_=こ__==___________
(secz)
0、005
{secり 0.005
0
一臥 位一
0.5 (1/beat}
01 0.2 0.5 0,4
図2(A) 中学1年生(男)
01 O.2 D、3
一立 位一
D.4 05 {1/beat)
O.1 0、2 0.3 0.4
図2(C) 中学1年生(男)
0.5 (1/beat)
lsecり 0005
(sec弓
0005
一臥 位一
01 O.2 0.5
一
立 位一0、4 O.5 (1/beat)
01 02 05 04 05 (1/beat)
図2(B) 中学1年生(女)
予測誤差が最も小さくなる次数(最適次数)を用いて 計算を行うべきであるが(付録参照),最適次数は症例 毎サソプル位置毎に変化する.自己回帰モデルの係 数を使用して群の比較を行う場合自己回帰モデルの次 数を一定にして計算を行う必要があり,自己回帰モデ ルの次数を何次にすべきか検討した.
A)最適次数と最終予測誤差(以下FPEと略す)
自己回帰モデルの対照群と房室ブロック群の最適次
数を図3に示した.最適次数は症例により違い,0次 から17次まで変化していた.次数を固定すると最適次 数ではないために推定の誤差が大きくなるが,自己回 帰モデルでは次数によるFPEの変化は比較的に少な く,8次から10次のFPEは全例について最適次数 FPEの10%増加の範囲にあった.従って次数を8次か ら10次とすれば,次数を固定することによる自己回帰 モデルの推定誤差の増加が少ないと考えられる.
B)自己回帰モデルの係数
対照群の臥位について15次で解析した場合の自己回 帰係数(A1, A2,…, A15)を表1に示した.自己回 帰係数は総て負の値を示しA2が一〇.491で最も低値 であり,A11以上では絶対値が0.1未満であった. A11 以上の係数の自己回帰モデルでの重みは小さいことに
なる.
従って,解析次数を10次とした場合に最も予測誤差 は少なくR・R間隔変動の持つ情報も失われないと考 えられ,解析次数を10次とした.
4)自己回帰係数の体位による変化
対照群と房室ブロック群の自己回帰係数と平均R−
R間隔を表2に示した.対照群では臥位と立位で自己 回帰モデルの係数に差が認められ,図4(A)に示した ようにAl, A2に有意差がみられた.臥位と立位では自 己回帰係数のパターンに差があると考えられた.図4
(B)に示したように,房室ブロック群では,臥位と立 位で対照群で認められた様な明瞭な差は認められず,
20
15
|0
O最適次数
互襯翻㌫の
1 2 3 4 5 6 7 8 9101112症例
一房室ブロック群臥位一 図3
次数20
15
10
5
0
1 2 3 4 5 6 7 8 91011症例
一房室ブロック群立位一
(A)次数とFPEの変化
次敷0 2
15
10
5
0
○最適次数
杢需翻鑑の
1
次数20
15
10
5
0 12345678910111213141516171819症例
一対照群臥位一一
図3(B)
123456789101112 13 141516171819 20 21症例
次数とFPEの変化
一対照群立位一
表1 15次で計算した場合の対照群(臥位)の自己回 帰係数
A1 A2 A3 A4 A5 平 均
標準偏差
一〇.246 0.280
一〇.491 0.197
一〇.203 0.266
一〇.193 0.148
一〇.235 0.102
A6 A7 A8 A9 A10 平 均
標準偏差
一〇.209 0.144
一〇.167 0.115
一〇.170 0.091
0,113 0,130
0,146 0,098
A11 A12 A13 A14 Al5 平 均
標準偏差
一〇.096 0.093
一〇.066 0.085
一〇.045 0.102
0,047 0,083
一〇.043 0 082
房室ブロック群は臥位と立位で心拍変動パターンにあ まり差がないと考えられた.
5)線形判別関数法による判別
対照群で自己回帰係数に体位による変化が認められ たので,自己回帰モデルの係数を変数として線形判別 関数法で群間の判別を試みた.房室ブロック群と対照 群の臥位と立位について線形判別関数法で求めた各群 間のマハラノビス距離と判別率を表3に示した.マハ ラノビスの距離は群の重心間の距離を表わしている.
A)体位による比較(図5(A))
対照群の臥位と立位は,有意に判別され(p<0.01),
判別率は93%であった.しかし,房室ブロック群の臥 位と立位は,判別率87%であったが有意に判別できず,
房室ブロック群の立位と対照群の臥位も判別率は87%
であったが有意に判別できなかった.房室ブロック群 は立位でも臥位に近い自己回帰係数パターンであっ た.房室ブロック群の臥位と対照群の立位は,判別率
昭和63年5月1日 331−(43)
表2(A) 自己回帰係数と平均R−R間隔
一対照群臥位一
No. 自己回帰係数 平均R−R間隔
A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 A10
1 一〇.325 一〇.739 一〇.668 一 〇.287 一〇.193 一〇.247 一 〇.106 一〇.168 一〇.102 一〇.106 879.12 2 一〇.003 一〇.391 一〇.278 一〇.098 一〇.258 一〇.094 一〇.139 一〇.198 一〇.154 一〇.103 857.36 3 0,303 一 〇.510 0,060 一〇.236 一〇.092 一〇.168 一〇.053 一〇.050 一〇.023 一〇.041 740.14 4 一〇.504 一 〇.634 一〇.046 一〇、401 一〇.265 一〇.248 一〇.103 一 〇.322 一 〇.139 一〇.181 854.30 5 一〇.104 一〇.180 一〇.228 一〇.173 一 〇.142 一〇.045 一〇.134 一 〇.113 0,153 一〇.065 907.94 6 一〇.529 一〇.376 一〇.055 一〇.219 一〇.300 一〇.247 一〇.156 一〇.204 一〇.128 一〇,078 803.70 7 一〇.500 一〇.392 一〇.147 一〇.157 一〇.254 一〇.219 一〇.132 一〇.142 一〇.251 一〇.181 630.57 8 一〇.310 一〇.385 一 〇.466 一〇.119 一〇.208 一〇.234 一〇.183 一〇.106 0,017 一〇.193 697.70 9 一〇.442 一〇.554 一〇.132 一〇.084 一〇.312 一〇.231 一 〇、261 一〇.111 一〇.051 一〇.141 896.62 10 一〇.048 一〇.768 一〇.285 一〇.127 一〇.164 一〇.014 一〇.251 0,017 一〇.209 一〇.096 904.10 11 一〇.208 一〇.291 0,472 一〇.079 一〇.161 一〇.323 0,077 一〇.198 一〇.009 一〇.214 753.67 12 一〇.640 一〇 940 一〇.680 一〇.573 一〇338 一〇.184 0,009 0,096 0,118 一〇.004 1127.58 13 一〇.547 一〇.557 一〇.033 一〇,275 一〇.239 一〇.300 一〇.040 一〇.041 0,009 0,014 864.87 14 一〇、278 一〇.410 0,112 0,139 一〇.273 一〇.342 一〇.380 一〇.206 一〇.125 0,079 889.13 15 一〇.333 一〇.520 0,033 一〇.156 一〇.257 一〇.354 一〇.210 一〇.125 0,072 0,036 858.95 16 一〇.277 一〇.467 一〇.347 一〇.080 一〇.067 一〇.077 一〇,097 一〇.145 一〇。132 一〇.145 940.44 17 一〇.217 一〇.239 一〇.295 一〇.230 一〇.118 0,095 0,017 一〇.116 一〇.179 一〇.116 647.75 18 0,148 一〇.275 一〇.436 一〇.088 一〇.113 一〇.108
一〇.167 一〇.132 0,087 一〇.233 688.73 19 0,314 一〇.559 一〇.099 一〇.035 一〇.071 一〇.040 一〇.105 一〇.245 0,062 一〇.158 963.38
表2(A) 自己回帰係数と平均R−R間隔
一対照群立位一
No. 自己回帰係数 平均R−R間隔
A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 A10
1 一〇.020 0,033 一〇.263 一〇.087 一〇.217 一〇.077 一〇.012 一〇.073 0,068 一〇.008 671.09 2 0,399 一〇.307 0,142 一〇.176 0,077 一〇.116 0,005 一〇.163 0,014 一〇.013 721.69 3 0,390 一〇.196 一〇.047 一〇.060 0,060 一〇.241 0,025 一〇.217 0,035 一〇.010 701.70 4 0,255 0,069 一〇.254 一〇.025 一〇.017 一〇.184 一〇.029 0,025 0,133 一〇.178 650.99 5 0,176 0,355 一〇.014 0,144 0,006 一〇.154 一〇.039 一〇.072 一〇.115 一〇.130 529.88 6 0,229 一〇.082 一〇.057 一〇.084 0,003 一〇.031 一〇.203 一〇.056 一〇.206 一〇.070 632.68 7 0,440 一〇.168 0,002 一〇.147 0,083 一〇.122 一〇.005 一〇.058 一〇.004 一〇.109 613.86 8 0,221 一〇.068 一〇.001 0,067 一〇.003 一〇.339 一〇.139 0,029 一〇.160 一〇.068 648.58 9 0,270 一〇。343 0,080 一〇.098 一〇.003 一〇.126 一〇.093 一〇、078 一〇.109 一〇。109 713.07 10 0,337 一〇.163 一〇.263 一〇.197 0,119 一〇.234 一〇.116 一〇.093 一〇.003 一〇.106 709.20 11 0,388 一 〇.173 一〇.234 一〇.082 0,162 一〇.081 一〇.147 一〇.106 一〇.021 一〇.000 604.07 12 一〇.015 一〇.103 一〇.029 一〇.083 一〇.380 一〇.238 一〇.047 一〇.059 一〇.025 一〇.191 774.15 13 一〇.047 一〇.346 一〇.273 0,002 一〇.188 一〇.058 一〇.231 一〇.064 0,027 一〇.301 879.13 14 0210 0,250 一〇.004 0,008 一〇.062 一〇.073 一 〇.016 0,017 一〇.101 一〇.092 576.48 15 0,271 一〇.425 一〇.285 一〇.069 一〇.218 一〇.131 一〇.098 一〇.174 一〇.026 一〇.077 884.75 16 0,019 一〇.123 一〇.155 0,026 一〇.025 一〇.239 一〇.170 一〇.092 0,049 一〇.100 767.72 17 0,478 0,059 一〇.124 一〇.042 一〇.067 一〇.029 一 〇.026 一〇.084 0,004 一〇.039 527.16 18 0,153 0,124 一〇.039 0,138 一〇.216 一〇.083 一〇.179 0,070 一〇.105 一〇.128 645.55 19 0,487 一〇.140 一〇.155 一〇.170 0,166 一〇.221 0,006 一〇.077 一〇.044 一〇.104 610.50 20 0,220 一〇.082 一〇.318 一〇.134 一〇.160 一〇.048 一〇.107
一〇.067 一〇.042 一〇.202 581.83 21 0,354 一〇.329 一〇.113 一〇.156 0,054 一〇.177 一〇.074 一〇.003 0,031 一〇.087 643.01
表2(B) 自己回帰係数と平均R−R間隔
一 房室プロツ ク群臥位一
No. 自己回帰係数 平均R−R間隔
A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 A10
1 0,238 一〇.323 一〇.239 一〇.127 一〇.063 一〇.012 0,047 0,138 0,105 0,183 680.77 2 0,336 一〇.327 0,068 0,150 一〇.Ol9 0,024 一〇.247 一〇。022 一〇.252 0,053 668.72 3 0,046 一〇.165 一〇.307 一〇.319 一〇.138 一〇.012 0,080 一〇.048 一〇.156 一〇.014 648.61 4 0,133 一 〇.396 一 〇.245 0,027 一〇.221 一 〇.088 一 〇.069 一〇.254 一〇.019 一 〇.008 612.77 5 一〇.482 一〇.729 0,031 一〇.395 一〇.029 一〇.157 0,019 一〇.150 一〇.045 一〇.034 935.52 6 一〇.341 一〇.465 一534 一〇.227 0,036 0,005 一〇.039 0,023 一〇.088 一〇.021 786.89 7 一〇.239 一〇.311 0,267 一〇.087 一〇.072 一〇.093 一 〇.249 一〇.228 一〇.153 0,084 930.11 8 0,443 一〇.186 一〇、129 一〇.063 0,227 一〇.062 0,090 一〇.055 一〇.054 一〇.037 580.09 9 一〇.320 一〇.509 0,151 一〇.060 一〇.057 一〇.420 一〇.137 一〇.160 0,007 0,002 837.18 10 一〇.157 一〇.469 0,075 0,121 一〇.177 一〇.175 一〇.034 一〇.226 一〇.055 一〇.167 875.40 11 一〇.567 一〇.910 一〇.605 一〇.263 一〇.325 一〇.195 一〇.259 一〇.059 一〇.057 一〇.086 915.88 12 一〇.143 一〇.691 一〇.451 一〇.038 一〇.343 一〇.019 一 〇.223 一〇.184 一〇.019 一〇.067 960.40
表2(B) 自己回帰係数と平均R−R間隔 一房室ブロック群立位一
No. 自己回帰係数 平均R−R間隔
A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 A10
1 0,356 0,127 一〇.332 0,017 一〇.176 −0.263 0,420 0,021 一〇.111 一〇.064 657.98 2 0,317 一 〇.249 一〇.004 0,042 一〇.005 −0.075 一 〇.106 一〇.251 一〇.109 一〇.236 594.95 3 0,364 一〇.238 一〇.095 0,045 一〇.083 0.074 一〇.061 一〇.034 一〇.138 0,103 555.62 4 一〇222 0,022 0,263 一〇,030 一〇.320 −0.207 0,004 0,019 一〇.154 一〇,306 763.95 5 0,323 一〇.018 一〇.038 一〇.049 0.141 0.213 一〇.043 一〇.129 0,029 0,092 745.16 6 0,045 一〇.478 一〇.104 0,028 一〇.263 −0.227 一〇.123 一〇.050 一〇.053 0,051 860.91 7 0,711 一〇.190 0,005 一〇.216 一〇.090 0.201 一〇.191 0,060 一〇.056 0,130 507.08 8 0,136 一〇.288 一〇.093 一〇.001 一〇.314 −0.096 一〇.081 一〇.250 一〇.057 一〇.178 780.48 9 0,308 一〇.331 一〇.007 0,449 一〇.182 −0。092 一〇.014 0,015 一〇.009 一〇.010 776.99 10 一〇.347 一〇.422 一〇.123 0,090 一〇.080 −0.193 一〇.373 一〇.092 一〇.201 一〇.144 814.57 11 一〇.252 一〇.604 一〇.418 一〇.128 一〇.253 −0.226 一〇.214 一〇.241 一〇.161 一〇.008 927.37
※※P〈0.01 0.4 一対照群一 ※P〈0.05 0.2
ly: ・
::i轡卵㌧
・ 立位
一〇.6
AI A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 Ag A10 図4(A) 自己回帰係数の体位による変化
100%で有意に判別された(p<0.01).
B)房室ブロック群と対照群との比較(図5(B))
房室ブロック群の臥位と対照群の臥位は,判別率 81%であったが,有意に判別されず,房室ブロック群
O、4
0.2
0
−0.2
− o.4
−0.6
一
房室プロvク群一}畑ぽ;{
AI A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 Ag AIO 図4(B) 自己回帰係数の体位による変化
の立位と対照群の立位は,判別率88%で有意に判別さ
れた(p〈0.01).
C)各群間のマハラノビスの距離(表3)
マハラノビスの距離は各群の重心間の距離を表して
昭和63年5月1日 333−(45)
対 照 群 立 位
100
50
0
一50
一100
照群(Gr。叩D 室プロソク群〔G・・叩2)
睡 謹
一
一
A
盤 瞳
一
一
10.0
5.0
0
一 5、0
一1D.O
臥 位 房室プロvク群
50
口
一 5,0
図5(A)体位による比較(判別得点のヒストグラム)
5,0
0
一5.0
図5(B) 対照群と房内ブロック群の比較(判別得点 のヒストグラム)
表3 群間のマハラノビスの距離と判別率
房室ブロック群 房室ブロック群 対 照 群 対 照 群
臥 位 立 位 臥 位 立 位
房室ブロック群 *
臥 位 0 2.9 4.4 19.9
N=12 (87) (81) (100)
房室ブロック群 *
立 位 0 4.4 7.0
N=11 (87) (88)
対 照 群 *
臥 位 0 10.2
N=19 (93)
対 照 群
立 位 0
N=21
P〈O.Ol
( )内は群間の判別率%
おり,距離が離れているほど各群の自己回帰係数のパ ターンに違いがあると考えられる.各群間のマハラノ ビスの距離は,房室ブロック群の臥位と対照群の立位 の距離が最も離れており,房室ブロック群の立位と対 照群の臥位はその中間に位置していた.
考 案
心拍数は交感神経,副交感神経,ホルモン,体温等 の影響を受けているが,心拍の短時間の変化は主に自 律神経により調節されており6),心拍変動は自律神経 活動を反映している.呼吸性不整脈の振幅と迷走神経
活動の変化は平行しており,心拍変動の振幅は副交感 神経による心拍調節の指標となると言われ1)2)3),心拍 の変動係数が副交感神経機能検査として用いられてい る.安静状態の心拍変動は副交感神経機能のみを反映 しているとして臨床的に用いられているが,二宮らに よると安静状態でも心臓交感神経活動は心拍や呼吸に 同期した変動を示し,情動や姿勢変換に伴って著明に 変動する16).また,呼吸周期に一致して副交感神経と交 感神経の活動がみられ17),その位相は180度ずれており 呼吸性不整脈には迷走神経だけではなく交感神経も関
与している18)19).Chessらによると呼吸性不整脈は副 交感神経により形成されているが,交感神経の影響も 受けており,交感神経の緊張が強くなると呼吸性不整 脈は減少する5).従って呼吸性不整脈は副交感神経機 能だけではなく,交感神経機能も反映しており,心拍 変動を自律神経機能検査として使用する場合には,副 交感神経と交感神経のバランスをみていると考えられ る.また,心拍変動を時系列データとして周波数分析 を行なうと呼吸周期に一致した心拍変動以外にも周期 的な変動がみられる.Sayersは心拍変動に,体温性リ ズム,血圧性リズム,呼吸性リズムが認められるとし ている4).Akselrodらは犬の心拍変動のパワースペク トル分析を行い,mid−frequency peakとhigh・
frequency peakには副交感神経が関与し, low−
frequency peakには交感神経と副交感神経,レニン ーアンギナテンシン系も関与していると報告してい る8).心拍変動リズムは,主に副交感神経により形成さ れるが,心拍変動には交感神経も含めた自律神経の緊 張状態が反映されており,心拍変動の周波数分析によ
り交感神経活動と副交感神経活動を分離することも可 能と考えられる.
(周波数分析の方法)
周波数分析の方法として,高速フーリエ変換
(FFT), Blackman−Tukey法,自己回帰法などがあ る.自己回帰モデルによるスペクトル推定は,FFTな どと比ベスペクトル分解能が良く,少ないサソプルか らもスペクトルの推定が可能である点で優れてお り9),また,佐藤らはフーリエ変換では優勢成分以外の 特性を明らかにすることは困難であると述べてい
る12).定常状態で心電図を長時間記録することは困難 であり,心電図R・R間隔の周波数分析を行う場合,自 己回帰モデルが優れていると考えられる.
(心拍数とパワースペクトル)
パワースペクトルを1/beatで計算しているため,図 2に示したように心拍数が変化するとパワースペクト ルのピークの位置も変化する.従って,自己回帰係数 の変化は単に心拍数の変化を表している可能性もあ り,心拍数の変化についても検討した.心拍数は対照 群では体位により有意に変化しているが,房室ブロッ
ク群では有意な変化はみられなかった.従って自己回 帰係数の体位による変化の一部は心拍数の変化を反映 したものと考えられる.しかし,図2に示したように パワースペクトルはピークの位置だけでなく,ピーク の高さも変化しており,心拍数の変化だけでは説明で
きない.また,対照群と房室ブロック群では,臥位の 平均R−R間隔,立位の平均R−R間隔ともに有意差は みられず,対照群と房室ブロック群の立位での自己回 帰係数パターンの違いを総て心拍数の違いで説明する ことはできない.また,心拍数は自律神経の緊張状態 を反映しており,心拍数の変化に関する情報も含んだ 心拍変動パターンから自律神経緊張状態を推定するこ
とは合理的であると考えられる.
(パワースペクトルの負荷による変化)
心電図R−R間隔パワースペクトルの安静時と運動 負荷中の変化について,高田らは,安静状態のR−R間 隔時系列のパワースペクトルは,長周期成分が主体で,
呼吸性要素と考えられる3−4拍リズムが存在し,走 運動中は,軽い走運動負荷で安静時と類似したスペク トルパターンであるが,走運動負荷が増加すると2拍 リズムやランダムパターソ化がみられたと報告してい る11).佐々木らは要素波解析を行い,心拍変動には安静 時,運動中を通じて2−5拍周期の波が認められ,安 静時に認められる10−15拍周期の波は,運動時には周 期が短縮し呼吸性動揺と重なり区別が困難になると述 べている14).佐藤らは2名について検討し安静時には パワースペクトルに違いがみられたが,運動中には15 拍と5拍周期の波が認められ,7拍付近に谷が認めら れると報告している1 ).この様に心拍変動パターンは 運動負荷により変化するが,我々の検討では,対照群 で心電図R−R間隔変動幅の自己回帰係数は臥位から 立位に体位変換しただけで変化し,副交感神経緊張が 強いと考えられる房室ブロック群では体位変換による 自己回帰係数の変化はみられなかった.心拍変動パ ターンは自律神経緊張バランスが普通であれぽ立位負 荷でも変化し,副交感神経緊張が強い場合には立位で も臥位に近いパターンのままであると考えられた.こ の様に心拍変動は自律神経の緊張状態を鋭敏に反映し ていると考えられる.
(線形判別関数法によるパターン識別)
自己回帰係数を変数として線形判別関数法を利用し てパターン識別を行うと群間の重心の距離を表すマハ ラノピスの距離は,房室ブPック群の臥位と対照群の 立位とが最も離れ,房室ブロック群の立位と対照群の 臥位がその中間に位置していた.臥位と立位では,臥 位が副交感神経優位の状態,立位が交感神経優位の状 態,第1度房室ブロックの認められる群は副交感神経 が過緊張状態と考えられ,線形判別関数法によるパ ターン識別の結果は予想される自律神経バランスの順
昭和63年5月1日
序と一致していた.対照群では臥位と立位が有意に判 別され(p〈0.01),房室ブロック群と対照群は立位
(p〈0.01)で有意に判別された.有意に判別できな かった群間でも判別率は80%以上であり,心電図R−R 間隔変動の自己回帰解析で自律神経の緊張状態の評価 が可能であると思われる.
結 論
自己回帰分析を用いて心電図R−R間隔変動を解析 し,R−R間隔変動幅の自己回帰係数を変数とした判別 関数により機能的房室ブロック群と対照群の判別を 行った.房室ブロック群と対照群は有意に判別され,
対照群では臥位と立位が有意に判別された.副交感神 経緊張状態,交感神経緊張状態は判別可能と考えられ た.マハラノビスの距離は房室ブロック群の臥位と対 照群の立位で最も離れていた.房室ブPック群の臥位 が副交感神経緊張は最も強く,対照群の立位が交感神 経緊張が強いと考えられ,房室ブロック群の臥位,房 室ブロック群の立位と対照群の臥位,対照群の立位の 順に交感神経の緊張が強くなると考えられた.心電図 R−R間隔変動の自己回帰モデルによる分析で自律神 経の緊張状態の評価が可能であると思われる.
謝辞:稿を終えるにあたり大分医科大学在籍中ご指導い ただいた小川昭之教授,計測システムの作成に御指導,御援 助をいただいた大分大学工学部,西村敏博先生,御校閲いた だいた北松中央病院院長石野徹先生に深謝いたします.
本論文の要旨は第22回日本小児循環器学会で発表した.
付録(文献20より引用,一部改変)
適当な時間間隔△t毎に測定した脳波,その他の揺 らぎ現象の,時刻t・kAt,(k=O,1,2,…)の値を Y(t−kAt)とし,その平均値からの偏差の時刻列を,
Yt_k ・
yt_k=Y(t−kAt)一μy
(μy:平均,k=0,1,2,…)
(1)
とする.すると,時刻tの値ytは,それより以前のいく つかの,例えばM個の値,
{yt.m},(m=1,2,……, M)に依存し,その依 存度の重みをかけた値{amyt.m}と依存しない偶然量 ntの和二
yt=alyt_1十a2yt_2十…十amyt_m十nt (2)
と書くことができ,生体の揺らぎ現象の時系列ytは,
「M次自己回帰過程」を示すと言える.ここで,ntは,
無自己相関で分散σn2の純偶発過程と考えることがで
きる.
次の様な,時間遅延演算子B;
335−(47)
Bmyt=yt−m(m=0,1,2,…)
を,(2)に代入すると,
yt=(aiB十a2 B2十…amBm)yt十nt となるので,
A(B)=1−a1B−a2 B2−…am Bm (特性関数)
G(B)=1/A(B),(伝達関数)
とすると(4)はさらに,
nt・G(B)=yt となる.すなわち,
nt→G(B)→yt
となって,
(3)
(4)
︶︶
亡」 ρ0
︵︵
(7)
(7,1)
ランダムな自然刺tw nt(人工的な刺激を与 えていない場合でも,生体内の種々の受容器などから 刻々と無数の求心性インパルス群が,脳に送りこまれ ている人が,脳やその他の生体系に与えられて,それ が脳その他の生体系の活動性G(B)によって変換され て,脳波その他の生体揺らぎ現象を発生していること を示している.このとき,ytのパワースペクトルをP
(f)とすると,これは活動性G(B)に B=e−i2・fを代入して,
P(f)=σn21G(e−i2πf)12,(−1/2≦f≦1/2)
として考えられる.実際には,自己回帰過程の次数M を求める問題がある.まず適当に大きい整数Lを定め て,自己回帰係数{am}を, M=1,2,3,…Lの各の 場合について逐次推定し,時系列ytが,これらの各の 場合を示すとしたときの推定の誤差を示す最終予測誤 差FPE(M),
FPE(M)=σ2(M)(N十M十1)(N−M−1)−1 (M=1,2,…L)
を求め,このFPE(M)を最小にする次数Mを採用す るという赤池の方法が用いられる.
文 献
1)Katona, P.G. and Jih, F.: Resiratory sinus arrhythmia:Nonivasive measure of parasym−
pathetic cardiac control. J. Appl. Physio1.,39:
801,1975.
2)Eckberg, D.L.:Human sinus arrhythmia as an index of vagal cardiac outflow, J. ApPL Physio1,,54:961,1983.
3)景山 茂:心電図R−R間隔変動を用いた自律神 経機能検査法.脳と神経,36:433,1984,
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bility. Ergonomics,16:17,1973、
5)Chess, G.F., Tam, M.K. and Calaresu, FR.:
Influence of cardiac neural inputs on rhythmic variations of heart period in the cat. Am. J.
Physiol.,228:775,1975.
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10)小川昭之,杉山明夫:小児脳波の定量的解析.自己 回帰.要素解析を中心として.小児内科,13:1800,
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12)Sato, K.:Dynamic analysis of higher order
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J.Sports Sa.,2:313,1983.
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Time Series Analysis of R−R Interval
Yasuhiko Ono Oita Adult Security Institutes
Shiro Yamasaki, Yutaka Uehara, Mikio Watanabe, Makoto Yasui,
Tadamichi Yanagi and Yoshiro Tsuzi
Department of Pediatrics, Nagasaki University Faculty of Medicine
The autonomic nervous system influences heart rate variability. The sympathetic and para−
sympathetic nervous systems are usually the principal systems in short−term cardiovascular control.
We analyzed the R・R intervals of electrocardiogram using autoregressive model(AR mode1)to evaluate the autonomic nervous system function which influence the atrio−ventricular node. Usually the parasympathetic nervous system is dominant at supine position and the sympathetic nervous system is dominant at standing position. So we compared the first degree AV・block group with the control group at supine position and standing position. The AV−block group(12 subjects who had first degree AV block which was normalized by exercise)and the control group(19 normal subjects and 6 subj ects who had CRBBB)were compared by discriminant function test using AR・coefficients as variables.The AV・block group and the control group were discriminated at standing position(p<0.01).
The supine position and the standing position were discriminated at the control group(p<0.01).
Analysis of heart rate variability using AR model is useful to estimate the balance of the sympathetic and parasympathetic nervous systems.