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Microsoft Word - H25日中省エネ環境報告書(日中経済協会)改訂1

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平成 25 年度国際エネルギー使用合理化等対策事業

(日中省エネルギー等・環境ビジネス推進事業)

報 告 書

平成 26 年 3 月

経済産業省 資源エネルギー庁

(委託先:一般財団法人日中経済協会)

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目 次

第 1 章 事業の目的と報告の趣旨...1 第 2 章 中国の省エネ等・環境ビジネスを取り巻く状況...2 2-1 2013 年度の省エネルギー・主要汚染物質排出削減状況...2 2-2 深刻化する環境汚染被害...3 第 3 章 2013 年の省エネ等・環境ビジネス推進活動と検討課題...6 3-1 第 8 回フォーラム実施に向けた取組み...6 3-2 フォーラムに向けた案件形成の基盤となる省エネ等・環境ビジネス推進活動の 実施...10 3-3 検討課題...11 3-4 今後の対応...13 第 4 章 省エネ等・環境ビジネス推進活動状況...20 4-1 大気汚染改善...20 4-1-1 中国大気汚染改善ネットワークの設立と活動...20 4-1-2 天津市省エネ・環境訪日団受入れ...23 4-1-3 山東省・淄博(しはく)市訪日団受入れ...35 4-2 水処理・汚泥処理...46 4-2-1 「2013(第 5 回)上海水ビジネス“熱点”フォーラム」における下水汚泥 処理市場の情報収集とマッチング支援...46 4-2-2 首都海水淡水化事業に係わる日中企業マッチング支援...54 4-2-3 天津万峰環保科技有限公司訪日視察団受入れ...60 4-2-4 「2013 中国水博覧会、中国国際膜と水処理技術及び装備博覧会」に出展 ...63 4-2-5 「Inter Aqua 2014(第 5 回国際水ソリューション総合展)」に出展...71 4-2-6 中国人民大学環境学院 王洪臣副院長一行受入れ、省エネ・環境保全型下水 処理・汚泥処理ソリューションの交流...75 4-3 省エネルギー・新エネルギー・循環経済...87 4-3-1 山東省グリーン建築訪日代表団受入れ...87 4-3-2 西部博覧会出展及び日中低炭素社会セミナー開催...92 4-3-3 広東省における省エネ技術交流...100 4-4 地方政府とのビジネス・プラットフォーム構築...120

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4-4-1 黄石市(湖北省)...120 4-4-2 宜興環保科技工業園との日中省エネ環境企業交流会共催...136 4-4-3 遼寧省...139 4-4-4 東北 3 省+内蒙古自治区「2013 年日中経済協力会議-於新潟」...143 4-4-5 安慶市(安徽省)...147 4-4-6 山東省と青島市・淄博市...152 4-5 日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会(JC-BASE)の活動...159 4-6 日中省エネ・環境ビジネスワンストップ・プラットフォームへの情報発信 ...162 第 5 章 日中省エネルギー・環境総合フォーラム調印案件のフォローアップアンケート 分析...163 資 料 省エネ等・環境政策と機構改革...174 1 省エネ等・環境政策の動向...174 2 機構改革の動き...190

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第1章 事業の目的と報告の趣旨

我が国の成長戦略やエネルギー戦略上、世界の成長エンジンとして経済成長著しいアジ ア市場はその要諦であるが、このアジア地域が持続的な経済成長を遂げるには、健全な経済 発展に加えて、安定的なエネルギーの確保及び地球温暖化を含む環境問題の解決が不可欠 である。中でも、2010 年に我が国を抜いて世界第 2 位の GDP を達成した中国は、アジア経 済成長の原動力であり、かつ膨大なエネルギー需要、環境問題が内在する国として、我が国 の戦略上最重点地域の一つとして位置付けられる。中国における省エネルギーや再生可能 エネルギーやその他エネルギー(以下「省エネルギー等」という。)の促進、環境技術の普 及は、アジア域内の持続的な成長を助け、ひいては我が国の経済成長、安定的なエネルギー の確保にも資するものである。 我が国は、省エネルギー等・環境分野において一日の長があり、我が国の優れた省エネル ギー等・環境技術及び機器の中国における普及は、中国やアジア域内のエネルギーセキュリ ティや環境問題の解決につながるのみならず、我が国のビジネス海外展開やエネルギーセ キュリティ確保の視点からも非常に重要である。 我が国が有するこれら省エネルギー等・環境技術及び機器を加速的に中国に普及させる ためには、民間によるビジネスベースの取組みのみでは不十分であり、官民が、適切な役割 分担の下、一体となって取り組んでいくことが必要となる。本事業では、個々の企業では解 決し難い障害や問題の解決に向けて、中国中央及び地方政府・関係機関等と連携・交流を図 り、省エネルギー等・環境分野における我が国民間企業・関係団体等の中国進出に向けた環 境整備を実施した。 今年度予定していた「第 8 回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」は、両国外交関係 が厳しさを増す中で開催に至らなかったが、その実現に向けた連絡調整をハイレベルから 事務レベルまで一体となって尽力するとともに、フォーラムの基盤となる協力案件発掘・形 成に資する各種活動を大幅に拡充した。 各章の構成は次のとおりである。第 2 章では、中国の省エネ・環境ビジネスを取り巻く状 況として、中国の省エネ・排出削減、環境汚染被害状況について概観した。第 3 章では、今 年度実施した省エネ等・環境ビジネス推進活動から検討課題を抽出し、今後に向けた対応を 検討した。第 4 章では、今年度の主な省エネ等・環境ビジネス推進活動の実施状況について それぞれ報告した。第 5 章では、第 7 回までのフォーラム調印案件 218 件についてのフォ ローアップ調査結果を整理した。最後に、中国の省エネ等・環境政策と機構改革の方向性を 整理し、参考資料として掲載した。 本報告書の内容が日中省エネ等・環境ビジネスの一層の推進に役立つことを願うもので ある。

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第 2 章 中国の省エネ等・環境ビジネスを取り巻く

状況

2-1 2013 年の省エネルギー・主要汚染物質排出削減情況

3 月 5 日、第 12 期全国人民代表大会第 2 回会議における政府活動報告において、李克強 総理は、2013 年の省エネ・排出削減について「対策を推進した結果、GDP 単位当たりエネル ギー消費量は 3.7%、二酸化硫黄排出量は 3.5%、化学的酸素要求量(COD)は 2.9%減少し た」と報告。同時に、直面する課題として、「一部の地域で大気・水・土壌等の汚染が深刻 で、省エネ・排出削減の任務が極めて重くなっている」と述べた。 また、国家発展・改革委員会徐紹史主任は、国民経済・社会発展計画の執行状況と次年度 案についての報告において、これら省エネ・排出削減の 2013 年の年度目標について「ほぼ 達成」と評価する一方で、「資源の消耗や環境汚染問題が際だっており、省エネ・排出削減 を取り巻く状況が厳しくなっている。特に広範囲にわたって頻繁に発生しているスモッグ は人民大衆の生活や健康に非常に深刻な影響をもたらしている」と述べている。 中国が第 12 次五カ年計画(2011~2015 年)において省エネ・排出削減率の拘束力のある 目標値と定めた GDP 当たりエネルギー消費と CO2排出、工業付加価値単位当たり水使用量、 4 つの主要汚染物質排出総量の削減状況は 2013 年時点で下表のとおりである。このほか、 都市部の下水処理率と生活ごみの無害化処理率はそれぞれ 87.9%、85.8%に達した。 第 12 次五カ年計画の省エネ・排出削減目標 (削減率。各年:前年比、目標:2010 年比、%) 2011 2012 2013 2014 2015 目標 GDP 単位当たりエネルギー消費 2.01 3.6 3.7 3.9 16 GDP 単位当たり CO2 排出 5.7 増 5.0 4.36 4.0 17 主要汚染物質 排出総量 COD 2.04 3.05 2.93 2 8 SO2 2.21 4.52 3.48 2 8 アンモニア態窒素 1.52 2.62 3.14 2 10 NOx 5.74 2.77 4.72 4.8 4.8 10 工業付加価値単位当たり水使用量 8.9 8.0 5.7 5.2 30 工業付加価値単位当たりエネルギー 消費 3.49 不明 4.9 21 (出所)第 12 次五カ年計画(綱要・節能減排・工業節能)、各年度計画執行情況報告(全人 代)、環境保護部「全国主要汚染物総量減排情況考核結果」2011 年度(12/09/07 発表)、2012

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3 年度(13/08/29 発表)、工業・信息化部「工業節能与総合利用工作要点」各年版等から作成。 2014 年は全人代で掲げられた計画目標値。 環境保護部は、特にアンモニア態窒素は 3.5%の削減率達成で排出量が初めて 2010 年の 削減の基数を下回り、COD、SO2の削減率も予想以上に進んでいるが、NOx は 2014 年、2015 年とも 4.8%の削減率が必要となり、依然として楽観できないとしている。一方、単位当た り工業増加値のエネルギー消費削減率は年平均 5%の目標値に届いておらず、加えて経済成 長に伴う総量の拡大もあり、単位当たりの削減率目標が達成されても全体の効果は相殺さ れ、実態の大幅な改善には至っていない。 2012 年の単位 GDP あたりエネルギー消費の減少率のうち1%は産業構造の変化によるも のと言われ、二次産業の比率の減少と三次産業の増加は進んでいるが、従来からのエネルギ ー構造の単一性や、生産能力過剰は局部から新興産業を含む全体に移行し、さらに産業移転 が公害を伴って中西部に移転しつつあるなど状況は一段と深刻になっている。

2-2 深刻化する環境汚染被害

2013 年は大気汚染をはじめ、水質汚濁・土壌汚染など環境汚染被害の一層の深刻度が露 わになった。環境保護部系統の報道媒体である「中国環境報」が総括した 2013 年の国内の 環境関連ニューストップ 10 を見ると、政策・制度関連が 5 件、大気、水質、土壌環境汚染 による被害・事件が 5 件である(5 ページ目を参照)。 中でも 2013 年に突出したのが大気汚染である。中国語で「霧霾」とよばれるスモッグの 発生は、1 月に北京で突出した後、年間を通じて東部中部のほとんどの都市を襲い、韓国、 日本にも飛来して問題となっている。2013 年は 25 省市自治区、100 カ所の大中型都市で発 生、全国の平均発生数は 29.9 日で、この 52 年間で最多となった。特に問題となっているの は「粒子状物質(PM10,PM2.5)」である(注)。12 期全人代 2 回会議での環境保護部呉暁青 副部長の記者会見によれば 2013 年、中国の 74 都市で大気汚染の状況を調べた結果、約 96% に当たる 71 都市で微小粒子状物質「PM2.5」が基準値を上回った。政府が定めた大気1立方 メートル当たりの PM2.5 の基準値は、年平均 35 マイクログラムだが、調査した全 74 都市 の年平均値は 72 マイクログラムで約 2 倍を記録。基準を満たしたのはチベット自治区の区 都ラサなど 3 都市にとどまった。また、環境汚染が深刻な場所として、北京、天津両市と河 北省、広東省など珠江デルタ地帯、上海市など長江デルタ地帯を挙げ、これらの地域の汚染 物質の排出量は全国平均の 5 倍に上ると指摘した(14/03/08)。原因は、「まず石炭燃焼、工 業、自動車、建設、道路のほこりなどを源とする汚染物質の大量排出が根本要因、次に拡散 に不利な気象条件が直接要因、さらに広域汚染と地元の汚染が重なることも重要な要因」 (呉副部長)だ。どの汚染源が具体的にどのように寄与しているかなどの明確な結論はでて いない。環境保護部は 2014 年 6 月までには北京、天津、石家荘 3 都市について、2014 年末

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4 までには北京・天津・河北、珠江デルタ、長江デルタについて原因解析結果を公表するとし ている。 水質汚染も依然深刻である。2012 年末、地表水は、河川ではⅠ~Ⅲ類が 7 割、Ⅳ類(軽 度汚染)とⅤ類(重度汚染)が 2 割、劣Ⅴ類(利用に適さない水)が 1 割。湖沼では、Ⅰ~ Ⅲ類が 6 割、Ⅳ~Ⅴ類が 3 割、劣Ⅴ類が 1 割だった。地下水はさらに深刻で、2012 年の全 国 198 の地級市の 4,929 地点の観測では、優良が 1 割、良が 3 割、やや良 0.5 割、やや劣 4 割、極劣 1.5 割で、水源としては使えないやや劣~極劣が 6 割近くを占めている。 土壌汚染については、国土資源部王世元副部長が、同部が行った第二次全国土地調査につ いて記者会見を行い、全国の耕地の 10%以上が重金属汚染を受けており、その面積は 1.5 億ムーに達すること、これは先に環境保護部の土壌調査で判明した中度重度の汚染耕地約 5,000 万ムーの結果と、地理的位置、評価において整合性が取れているとの報告がなされて いる(国務院新聞辧公室 13/12/30)。 なお、2014 年 3 月 14 日に公表された環境保護部「中国人群環境暴露行為模式研究」によ れば、中国人(成人)の環境汚染による健康リスクは次のとおりである。 ・1.1 億人が石化、コークス、火力発電等の重点汚染排出企業の周囲 1km の範囲に居住。 ・1.4 億人が幹線道路から 50 メートルに居住。 ・5.9 億人が室内で直接固形燃料による炊事を行っている。 ・4.7 億人が室内で直接固形燃料による暖房を行っている。 ・2.8 億人が安全でない水を飲料水にしている。 (31 省市自治区の 18 歳以上の住民 91,527 人によるアンケート調査。アンケート回収率 95%、有効回答率 99.6%) 目標を達成してもさらに悪化する汚染被害という現実を前にして、中国は大気汚染対策 をはじめ矢継ぎ早に政策・措置が打ち出しており、規制は強化され、資金投入も増加する方 向にあることは間違いない。従来の、そこそこのレベルの省エネ・環境技術や未熟な経験、 ずさんな管理運営で安価ではあるが効果は不十分・不安定というビジネスモデルが徐々に 転換する兆しが見えている。日本の技術・経験の価値が認められる市場はむしろこれからと 言えよう。 ン以下),さらには PM2.5(直径 2.5 ミクロン以下)と,粒子の直径が小さくなるほど, 肺 (注)粒子状物質は,PM10(直径 10 ミクロの奥,さらには血管へと侵入し易くなり,「PM2.5」 は直径が人の髪の毛の約 40 分の1という微粒子で,肺の奥,さらには血管まで侵入し,ぜ んそく・気管支炎,肺がんや心臓疾患などを発症・悪化させ,死亡リスクも増加させるとい われている。(出所)外務省海外安全ホームページ

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5 中国国内 10 大環境ニュース(「中国環境報」14/01/21) 1.中央が制度的に整った生態文明制度体系の確立を提起(18 期三中全会 11/9~12) 制度によって生態環境を保護。中央組織部は 12 月、「地方党政指導チームと指導幹部の政 績考査活動改善についての通達」を発信、幹部の成績考課について今後は GDP に基づかない ことを明らかに。 2.中央が都市化推進のための具体的配置。生態安全を高く重視(中央城鎮化工作会議 12/12~13) 中央城鎮化工作会議を初めて開催。都市化発展の質の向上のため、生態安全を高く重視 し、環境の質を不断に改善し、主要汚染物質排出総量を削減し、開発の度合いを抑制し、自 然災害防災減災能力を増強。 3.「大気汚染防治行動計画」を公布(国務院、9 月) 6 月には国務院常務会議が大気汚染防治 10 カ条の措置。9 月の行動計画では、北京・天 津・河北等地方では連携して大気汚染対策を採ることに。これより先、環境保護部は重点抑 制区の 6 大重汚染産業と石炭焚き工業ボイラーの新設、既存の火力発電・鉄鋼・石化・石炭 焚き工業ボイラーに対し、特別排出制限の実施を発表。 4.最高人民法院、最高人民検察院が環境汚染犯罪立件の敷居を下げる司法解釈 6 月 17 日、「環境汚染刑事案件審理に適用する法律の若干の問題についての解釈」を公 布、環境汚染犯罪に新たな基準を提示、立件のガイドラインを下げ、行為に対する犯罪をさ らに重視。 5.煙霧の頻発で各地で生産や授業が停止に 1 月、全国で前後して 30 の省で煙霧が発生、1961 年以来、同期間では最多。10 月下旬、 深刻な煙霧が東北を襲い、ハルビンが煙霧による学校閉鎖の初の都市に。11 月 30 日~12 月 上旬、中部東部の広い範囲で煙霧による汚染、上海で生産停止による汚染抑制、吉林と南京 等で小中学校が学校閉鎖。 6.国が一連の重大な生態工程を実施 12 月 18 日、李克強総理主宰の国務院常務会議で、青海三江源生態保護の推進、甘粛省国 家生態安全遮蔽総合試験区建設、北京天津黄砂源対策、全国五大湖沼区湖沼水環境対策等を 決定。 7.中国石油、中国石化が排出削減任務の未達成により「環評限批」に 8 月、中国石油、中国石化は 2012 年度汚染物質排出削減任務を未達成により、環境保護部 から、その精錬業の新規・改造・拡張プロジェクトに対し、環境アセスメントを実施しない 措置を実施。11 月、青島中国石化石油パイプラインの爆発で膠州湾の海面が汚染。中国石油 化工史上、稀にみる重大事故に。 8.水質汚染事故が頻発、飲用水の安全で論議 1 月初、山西省長治でアニリン漏出による河川汚染事故。4 月、雲南省昆明市東川区で 「牛乳川」が発生。7 月、広西自治区賀州市でカドミウム、タリウム等の重金属汚染事故。 2013 年春節以降、一部地方の環保局長は汚染された川での水泳に招かれた。河北省滄県環保 局長は、張官屯小朱庄村の井戸水が赤くなった事件について「あずきを煮た水」によるもの と釈明。 9.昆明パラキシレン・江門原子力プロジェクトが「隣避運動」によって一時停止と中止に 5 月 4 日、3,000 名の昆明市民が昆明市中心の南屏広場に集結、パラキシレン精錬プロジ ェクトに抗議。昆明市政府はプロジェクトは計画の検討段階だと回答。7 月 12 日、広東省江 門市で 1,000 名近くが集結、中核集団龍湾工業園の安全性に懸念を表明、市政府に訴え、本 プロジェクトは中止に。「隣避」=Not in My Backyard の中国語訳 10.土壌汚染と遺伝子組み替えが公衆の食品安全性への関心を喚起 5 月、広東省がカドミウム基準値超過米事件(100 ロットを超える)を公表、全社会の土 壌環境汚染に対する関心が喚起される。6 月 13 日、農業部は 3 種の遺伝子組み替え大豆の輸 入を認可。報道の暴露後、遺伝子組み替え食品に対する安全性に関心が高まった。 (出所)「2013 年国内国際十大環境新聞」http://news.h2o-china.com/html/2014/01/124755_1.shtml

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第 3 章 2013 年の省エネ等・環境ビジネス推進

活動と検討課題

3-1 第 8 回フォーラム実施に向けた取組み

2012 年の尖閣諸島をめぐる外交上の問題の発生以降、日中関係は国交正常化以来最悪と 言われる状態に陥り、両国の世論が相互に不信感を抱く事態となっている。この状況の下、 今年度事業で予定した第 8 回日中省エネルギー・環境総合フォーラムは、日中双方の努力に も係わらず、結果として開催に至らなかった。この間、日中経済協会は開催に向けて次のよ うな取組みをおこなった。 (背景) 「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」は、2006 年の第 1 回から毎年開催され、第 5 回フォーラムでは経済産業省と国家発展・改革委員会が定例化に合意、2012 年には第 7 回 を東京で開催した。省エネルギー等・環境分野のビジネス・政策の官民対話のプラットフォ ームとして日中両国で認知され、評価を得ている。毎回日中双方の所管閣僚が出席し、中国 開催の場合は副総理(第 2 回:王岐山、第 4、6 回:李克強)が出席し、「重要講話」を発表す る等、ハイレベルの交流の場となっている。出席者は毎回 1,000 人規模であり、これまで計 218 件の調印案件が披露され、毎回双方のニーズに合わせて設定される分科会での議論と参 加者間の交流や、フォーラムの前後、通年実施するビジネス・マッチング支援、調印案件フ ォローアップ、相談対応、双方関係者往来支援や案件形成、環境整備調査などの基盤形成活 動により、日中間における省エネ・環境ビジネス案件形成促進のプラットフォームとしての 役割を発揮してきた。 2012年8月、第7回「日中省エネ・環境総合フォーラム」開催後、尖閣諸島をめぐる外交上 の問題が発生し、日中関係はかつてない厳しい困難に直面する事態に至った。経済分野にお いては、9月中旬に起きた反日デモによる破壊などの被害に加え、不買、契約のキャンセル・ 延期、通関手続・許認可の遅延などの問題が発生した。本事業で予定した省エネ・環境ビジ ネス支援活動も、日中グリーンエキスポ2012の中止、第12回西部国際博覧会への出展・参加 断念(省エネルギー技術と分散型エネルギーそれぞれのセミナーを企画していた)、首都海 水淡水化事業日中企業交流会議の延期など、少なからぬ影響を受けた。さらに秋以降、日本 でのセミナー開催・マッチング等を予定していた地方政府が相次いで訪日をキャンセルす る事態となったほか、それまで安定的に実施してきた重慶市や山東省の訪日・マッチング交 流にも影響が及んだ。

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7 (開催に向けた調整状況) こうした状況の下、日中経済協会は、第8回フォーラム開催に向けて中国側主催者に対し、 様々な交流の場面を活用して、積極的に働きかけを行った。ハイレベルにおける主な調整状 況は次のとおりである。 1. 2013年3月~10月 日本経済界の中国指導部との交流の場として定例化している日中経済協会訪中代表団も、 2012年秋の派遣を予定していたが、日中関係悪化の影響を受けて延期を余儀なくされた。そ れにも拘わらず、日中経済関係の早期正常化を訴えるべく、2013年3月21日~23日、団長張 富士夫・日中経済協会会長、最高顧問米倉弘昌・日本経団連会長はじめ団員21名および随行 者で訪中した。北京では、李源潮国家副主席、陳健商務部副部長、唐家璇中日友好協会会長、 朱之鑫国家発展・改革委員会副主任、張業遂外交部副部長、蘇波工業・信息化部副部長と会 見した。 国家発展・改革委員会朱之鑫副主任との会見において、張富士夫会長より、第7回フォー ラムは張平主任に来日いただき、成功裡に実施されたことについて感謝を述べ、今年は中国 での予定になっているが、さらなる協力拡大が図られるよう日本側として努力したいと述 べた。これに対し朱副主任の回答は次のとおりであった。 「中日省エネルギー・環境総合フォーラムは当該分野における協力を展開する上で、大変重 要なプラットフォームとなっており、このフォーラムの下で中日両国が実務レベルで協力 を展開してきました。2012年は、第7回のフォーラムが成功裡に開催され、大変実り豊かな 会議となったと聞いております。特に日中経済協会におかれては主催側の一つとして、開催 にあたり大変なご努力をいただいた事に感謝申し上げます。中日双方の共同の努力の下、こ のフォーラムがより良い雰囲気の中で開催される事を期待しております。また、中日両国の 関係において、明らかな改善がみられた段階で、我々の方でも本件について積極的に検討し てまいりたい。」 中国側のもう一つの主催者である商務部でも、陳健副部長から省エネ・環境協力の一環と して、フォーラムと、フォーラムの場で毎年分科会として開催されている商務部と日中長期 貿易協議委員会による「省エネ等技術促進部会」についての言及があった。 この後、4月以降に事務レベルで開催期間等についての連絡を行ったが、中国側は、「よ り良い雰囲気の中で開催されること」を条件とし、双方、年内の開催を目指して日中関係の 好転を注視する状態が続いた。 9月の日中経済協会大気改善ミッションの訪中前後には、国家発展・改革委員会がフォー ラムの年内開催に向けて検討を始めた、外交部からの指示を受けているらしいなどの情報 も入り、エネ庁とも連絡を取りながら準備態勢に入った。 一方、10月に新潟で開催予定の日中経済協力会議については、尖閣諸島の国有化以降、大 臣・省長クラスが訪日していない中で、省長・副省長訪日は難しいとの中国側の態度に変化 が見られず、また、10月7日~8日のインドネシア・バリ島におけるAPEC首脳会議での日中首

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8 脳会談も実現せず、不透明性も依然存在した。 2. 2013年度日中経済協会訪中代表団 11月に入り、中国サイドもこのままの状況を続けるのは適当でないとの認識で関係改善 を探る動きがでてきた。こうした中、日中経済協会訪中団は11月18日~21日に、張富士夫会 長を団長、米倉弘昌経団連会長を最高顧問に合計178名で訪中した。北京では、汪洋副総理、 万季飛中国国際貿易促進委員会委員長、唐家璇中日友好協会会長と会見、国家発展・改革委 員会、商務部、工業信息化部との会議を行い、汪洋副総理および国家発展・改革委員会・商 務部において張団長より、フォーラムの早期開催を切望すると強く申し入れた。 これに対し、汪洋副総理は、「すでに7回開催されてきた「中日省エネルギー・環境総合 フォーラム」ですが、双方話し合いを行って、適切な時期に開催されることを期待していま す。そして、これは地球環境の改善にしても、両国間の協力にとっても大変有意義なことで す。」と述べ、日本側は極めて積極的な対応と受け止めた。ただ、朱之鑫国家発展・改革委 員会副主任、高虎城商務部部長からは特に言及はなかった。 この後、中国による防空識別圏設定により緊張が高まる場面があったが、両国の交流は続 き、12月20日に程永華駐日中国大使と岸田外務大臣が会談するなど、日中関係は徐々に打開 に向けて動きだし、年度内開催に向けて期待が高まったが、26日の安倍総理の靖国神社参拝 及びその後の中国側による対日非難キャンペーンにより、関係は一気に冷え込んだ。 3. 張富士夫日中経済協会会長書簡の発信 こうした中、日中経済協会は、事態打開のため、張富士夫会長による、フォーラムの早期 開催実現と、そのための事務局レベルの協議を要請する書簡を、汪洋副総理、解振華国家発 展・改革委員会副主任、高虎城商務部部長、王毅外交部部長宛に発出すると共に、これに先 立ち岡本理事長等が在京大使館各公使と個別に面談して協力を要請、併せて北京事務所よ り国家発展・改革委員会外事司に対し、岡本理事長と同委員会事務方責任者との面談を申し 入れた。 中国側の反応は、昨年4月以降の日中交流回復の動き及び張訪中団長から汪洋副総理への 早期開催要請等を契機に、昨年12月、中国側はかなり上まで含めてフォーラム開催準備を進 める方向に傾いたことを紹介しつつも、現下の日中関係を取り巻く雰囲気の中では省エネ 環境フォーラム開催に向けた話し合いを行うことは困難との感触であった。 2月下旬には、程永華大使が張富士夫会長と面会し、先の張会長書簡に対する本国政府の 回答として、「日中関係が険悪化する中、日中経済協会が省エネ・環境総合フォーラムの早 期開催を提案する趣旨は中国政府も共有するところが多いが、開催のためにはそれに有利 な環境の醸成が必要。引き続き双方の担当機関で連絡を取り合いたい」との趣旨のお話があ った。

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9 4. 岡本巌日中経済協会理事長の中国高層発展論壇参加と中国側実務責任者との会談 3月22日~24日、岡本理事長は北京で開催された中国発展高層論壇に出席した。この中で、 今後の中国のエネルギー戦略、低炭素化戦略の2つのセッションに重点参加、中国がエネル ギー安全保障、地球温暖化防止及び大気汚染改善の3つの視点から石炭過度依存のエネルギ ー構造から天然ガス及び再生エネルギーへの転換を加速しつつある。その際、エネルギー使 用原単位(GDP比)の低下及びクリーン・コール・テクノロジー、更には石炭のガス化・液化 に注力し、大気改善汚染という切迫したニーズのもとで、こうした取り組みが加速されてい る状況を聴取した。また、天然ガスシフトに関連して、中国が豊富に存在する非在来型天然 ガスの開発を加速すべきではないかとの観点から、岡本理事長より分科会やスピーカーと の個別会談で各方面に質問した。外国メジャーオイル及び中国側関係者によって濃淡はあ るものの、アメリカを凌駕する埋蔵量に鑑み、中国政府の支援を前提に開発が着実に進むと の方向を確認した。 上記論壇に引き続き、日中省エネ・環境総合フォーラムの早期開催につき、中国側主催者 である国家発展・改革委員会及び商務部並びに外交部の実務責任者と会談。中国側は本フォ ーラムの重要性を充分に認識しており、その上で開催時期につき、有利な雰囲気醸成を待ち たいとのスタンスであった。これに対し、岡本理事長より、フォーラムの開催を視野に入れ つつ、既存合意案件のフォローアップ及び新規案件の発掘に関し、双方実務レベルでの交流 を始動すべきではないかとの打診を行ったところ、中国側も全体として前向きなニュアン スであった。 5. このほか中国側主催者に対しては、事務レベルでも、本事業での往来の機会を活用する と同時に、北京事務所所員による日常的な連絡調整を通じ、フォーラムの早期開催を一貫し て働きかけた。 第8回フォーラムの今年度の開催は実現に至らなかったが、フォーラムは、これまで両国 政府の支援の下、日中双方が、省エネ・環境対策による国民の安全・安心確保の重要性を共 通の理念として、市場に関する情報収集、ビジネス・マッチングなど協力関係の模索、案件 の進捗状況と展開の確認、政府に対する支援要請、話題解決、成果普及・発表など、多様で 柔軟な推進機能を果たしてきた。今後も、案件形成の各段階において、その役割を果たすこ とが期待されている。 日本の関係企業からも早期実現の要望は強く、資源エネルギー庁と連携を取りながら、現 在も引き続き開催に向けて連絡調整を行っている。

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3-2 フォーラムに向けた案件形成の基礎となる省エネ等・環境ビジネス推進

活動の実施

日中外交関係に好転の兆しが見えず、実務レベルの対話ができない中で、政府間での定期 開催合意をベースにしたフォーラムの開催見通しも立たない状態が続く中、協会では民間 の日中友好団体、経済界の代表としての性格を前面に出し、中国側各界、各レベルに対して 接触と対話のきっかけ作りに力を入れることとした。両国の情勢の好転も想定し、今年度の フォーラム開催の条件がいつ整っても対応できるように、省エネルギー・環境ビジネス案件 形成の基盤となる交流活動を大幅に強化した。従来から一定のベースのある省エネルギー・ 新エネルギー、水処理・汚泥処理分野に加え、新たな視点として、中国側で急速に関心が高 まっている大気汚染対策を切り口として、交流に臨んだ。また、案件形成の舞台となるのは 市レベルの地方政府であることから、これまでの交流実績を踏まえながら、現下の情勢にお いてまず信頼関係の確認と強化を出発点に、中国側の関心を踏まえたビジネス・マッチング を行っていくこととし、そのための双方の基本合意・交流プラットフォーム形成という新し い手法も取り入れた。 本年度は山東省、黄石市(湖北省)などと複数回にわたる相互交流を実施、また安慶市(安 徽省)は中国側からの要請を受けて対応態勢をつくり、現地調査と分析を実施、また天津市 とも相互往来による技術交流・ビジネス・マッチングにそれぞれ進展があった。中でも山東 省と黄石市では中国側の行政のトップと当協会のトップ間での対話をベースに、モデル的 案件の提案や、企業レベルのビジネス・マッチング活動も始めており、山東省は従来のハイ レベルの協力覚書の有効性確認が基礎となり、黄石では覚書はないものの、トップ交流での 合意が双方向通算 4 回(昨年度から数えて 5 回)を数える往来につながり、協会を事務局に 協議会を立ち上げている。 これら本年度の活動は、前年度事業で、案件形成のための課題として抽出した次の 3 点に 対応し、実践を通じて交流の進展を見たものである。 *中国の省エネ・環境政策の位置づけと地元の課題解決を視野に入れた提案 省エネ・環境対策の実施主体である地方政府は、中央の方針に従って、地元の諸問題解 決策の一環として省エネ・環境対策に取り組む。加速する都市化・工業化や、中小企業支 援などのニーズと不可分の場合もある。各地域の実情・課題を理解し、その上で政策に適 う、課題解決の一環として省エネ・環境ビジネスを提案することが必要。 *中国の省エネ・環境市場の現状への理解と企業・研究機関との経常的交流 日本とは事情が異なる中国市場への参入のために、多くの中国企業と日常的に接触し、 優良なパートナーとなりうる企業を発掘すること。省エネ・環境プロジェクトの仕様書作 成や F/S 実施・アセスメント等やそれ以前の意見具申・諮問に携わる専門機関(設計院・ 大学等)と日常的に交流し、日本の技術・経験が認知・評価されるように努める。 *昨今の日中情勢の下での省エネ・環境交流強化

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11 日本の公害やエネルギー危機克服を経て、省エネ・環境技術を世界レベルに引き上げた 経験は中国にもよく知られている。省エネ・環境分野での交流は日中関係打開の一助とし ても期待できる。 年間を通じての主な交流(往来)状況は P.15~19 の表の通りである。このうち、本事 業での主な往来活動については第 4 章に詳述する。

3-3 検討課題

日本の省エネ等・環境技術・設備の中国市場参入や案件形成における課題を考えるとき、 その問題の原因には、中国の国情、制度や商習慣からくるものもあれば、日本側に起因する ものも少なくない。さらにビジネス推進支援方法に係るものなどがあり、中には原因が日中 でそれぞれ裏表の関係にあるものも散見される。今年度の対中省エネ・環境等ビジネス支援 活動を行う中で、日中双方の関係者,当事者からの問題提起や、実際の案件・事例等から浮 かび上がった課題を列挙してみた。 中国政府・ 企業から *日本企業の設備・製品・技術は総じて価格が高く、それも何倍も差がある ため、選択肢に入れることすら難しい。 *日本製品を組み込んだシステムを提案したが価格が高いとの理由で客先に 断られた。(※日中関係の影響については確認できないが排除できず) *生産現場の省エネ・環境意識の向上、高生産性維持のためには人材育成が 必要なことを実感。 *日本の技術は優れているが必ずしも中国の実情に適合したソリューション を提供できていない。市場として対応するにはまだ調査不足の感がある。 *日本企業が帯同した通訳の知識不足で、内容の理解がスムーズにいかず、 中国側も時間が取れず持ち越しになった。 *政府調達入札案件への応札タイミングを逃している。 *中国政府が求める認証手続きができていない。 *民間のプロジェクトに政府が関与できる度合いは小さい。 *中国企業との協力が十分に行われていない。

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12 日本企業から *水処理において、日本とは異なる(複雑で劣悪な)原水の水質、想定外の 原因による汚染やそれによる水質変動等への技術的な対応に苦慮。 *仕様書ができている入札段階での参入では遅いということは理解できる が、かといってプロジェクト形成段階からどう関与していけばいいのかが わからない。(そのあたりを支援する機会作りに期待) ビジネス・ マッチング 支援の立場か ら *中国政府による政策や補助金措置が新規に打ち出されたとしても、それを どうやって適時にビジネスに結び付ければよいのか。 *中国企業・設計院等専門家とのコンタクトの取り方がわからない。 *中国側は様々な異なる体系の技術を寄せ集めてシステムを構築すことがあ るが、その結果トラブルが発生しても、提供側としては誰も責任を取らな い(とれない)。寄せ集めをせず、任せてもらえれば問題解決を最後まで 事業主と共に行うことができる。 *知的財産権保護に不安がある。 *中国市場に対する理解、情報不足は否定できない。 *中国は広く、企業も多く、結果的に多くの引き合いがあることになるが、 情報開示が不足していて、どの企業が適切なパートナーになるのかの見極 めが難しい。 *ニーズのミスマッチ。日本側は自社製品やソリューションのユーザーとの 商談を期待するが、中国側は地方政府が地元企業を推薦してきたり、また それが同業者の場合が多く、現地での工場・拠点設立などの「合作」を求 めてくることが多い。(日本は製品を売りたい、中国は技術がほしい、買 収したい) *地方政府は往々にして環境対策よりも環境産業発展という名目で企業誘致 に関心を示す傾向が強い。(外資導入は今でも地元経済発展の柱。環境対 策が最優先になっても、やはり企業誘致は重要、という現実が垣間見え る) *多くの地方が「モデル区」、「展示館」、「新城」等への日本企業との「合 作」意向を示すが、これらが案件形成や市場獲得にどのように活用できる のかが不明なままで時間が経過するケースが少なくない。 *環境対策に投入する財源・資金が不足、不安定(汚泥処理など)。 *中国側のコスト意識。対策コストを短期的にしか見ない弊害。(施設や設 備のライフサイクルの長さ、運転効果の高さ等を一定の時間のスパンでみ た場合、日本企業の価格上の劣位はかなりカバーできる筈) *規制が強化されても法令順守やエンフォースメントが確保されなければ市 場とならない。(現在の政権の引き締め、腐敗撲滅の姿勢が環境対策にも 効果を発揮してくれば、企業の対応も変わってくる事は期待できる。)

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13 *汚染発生源が国有企業の場合、地元政府は強い対応がとりにくい。(中央 国有企業のトップは地元政府(特に地市級)では市長などと同格かそれ以 上の場合も多く、かつ環境対策は本部の指示で行うため、地元政府の規制 当局がなかなか手を入れることが難しい) *日本企業の在中国拠点で働く中国籍社員の養成レベルによるコミュニケー ション障害(通訳能力、技術理解度、営業能力、日本人社員への遠慮)。 *プロジェクトの初期段階からの参与について、リードタイムが長すぎると して対応できない日本企業もある(グローバル化で短期的な経営利益を優 先)。 このほか、日中外交関係の悪化に伴う影響も大きく、中央ではモデルプロジェクト実施の ための MOU の締結が延期されたり、地方では生活排水処理の設備として採用が決まり、その ための視察で来日する予定が中止になったりと言った事例が報告されている。中国企業か らも、特に国有企業では、日本との交流について慎重な姿勢が依然として存在する。

3-4 今後の対応

こうした課題を受け、今後の対応としては、次の点を重点に取り組んで行きたい。 (1) 適切な中国側パートナー探しの支援強化 日本と中国の国情・制度・商習慣の違いを考えれば、中国で「物を売る(イニシャル /ランニング)」にしても、ソリューションを売るにしても、運営そのものを行うにして も、絶対に必要となるのは中国のビジネスパートナーである。日中双方で開催される一 定規模・水準の博覧会・展示会への参加・出展・セミナーの開催や、訪日する企業関係 者との交流、日本での各種セミナーの開催、関係施設手配などの機会を通じ、より多く の中国企業と日本企業が接触できる場を創出する。また、政府や専門機関などを通じ、 信頼できる企業の発掘に努める。 (2) 地方政府との交流強化(公共事業参入支援) 環境対策は一般に市レベル以下の地方政府によって実施される。地方政府との信頼関 係構築・強化により、プラットフォームを形成し、これを通じて案件形成を支援する。 また、プロジェクトの初期段階からの関わりとフォローアップを強化する。環境対策は それぞれ複雑なシステムエンジニアリングで、現場ごとに状況が異なる。プロジェクト の初期段階から関わり、建設基準・投資などの全体状況を把握して初めて相手のニーズ に合った最適な設備や全体プランを提示することができる。 (3) 成功事例の宣伝 中国の適切なパートナーとの提携により、中国市場進出に成功した日本企業は目立た ないが存在する。フォーラムの場をはじめとして、そうした事例により案件形成のヒン トとなるよう宣伝する。

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14 (4) 日本の公害等環境汚染の教訓の認知 中国側は環境対策コストを短期的にしか見ない傾向がある。長い期間で見れば、今対 策を採る必要があることを認識させるためには、日本の公害の経験・教訓を地方政府、 企業に紹介することが最も説得力がある。そのための中国語による普及用資料も充実さ せる必要がある。 (5) 日本の強みを活かす工夫 高品質の製品だからこそ長寿命で耐久性に優れ、結果として長期にわたってアフター サービスの対象となり得るのである。日本企業はその優れた製品品質によって、当然他 の国又は中国国産製品よりも長い品質保証期間を設けることができ、そこに競争の優位 性が生まれる。 (6) 日本企業の公害対策経験 OB の活用 中国は今まさに、日本の公害問題が深刻な時代と同じ段階に入りつつある。しかし、 日本のその時代に企業の第一線で対策にあたった技術者はすでに現役を退いており、日 本の企業内にそうしたノウハウが蓄積されていないケースが多いという。公害対策を経 験した企業技術 OB の活用を検討したい。また、こうしたノウハウを中国で活用するこ とにより日本としても技術の蓄積をはかることができる。 中国は、世界第二の経済大国となったが、同時に、世界一のエネルギー消費国、二酸化炭 素排出国ともなった。2013 年は大気汚染が年間を通じ全国規模で蔓延、人々の目前に環境 染被害が顕在化して、否応もなく環境対策が迫られる事態となっている。これまでは、誇張 して言えば、そこそこのレベルの技術と設備、浅い経験に基づく杜撰な管理運営により、安 価ではあるが処理効果の低い対策しか採ってこなかったが、こうした市場では日本は力を 発揮できない。しかし、原単位当たりの目標を達成しても汚染被害が悪化する事態を前にし て、今後ますます規制が強化され、環境規準の向上、エンフォースメントの徹底により、対 策資金投入が増加することは間違いなく、日本の技術・経験の価値が認められる市場が到来 する。特に大気汚染対策では、出したものをきれいにするだけでなく、まず出さない、減ら す努力が不可欠で、省エネ自体が有効な対策となる。 日中外交関係の悪化の状況が容易に解消されそうもない状況の下ではあるが、中国の 少なからぬ地方政府や企業が、日本の経験や技術を評価している。それは、今年度本事業で 実施された活動自体が証明している。こうした交流を基盤として案件形成をサポートしな がら、フォーラムの早期開催に向けて引き続き努力していくが、同時に、日中関係の打開に よる好循環を切に期待する。

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15 表 2013 年度の日中省エネルギー・環境ビジネス推進に関連する主な交流状況 (青字:日中経済協会が省エネ・環境協力について覚書を締結している地方) 地域 月日 概要 北 部 遼寧 10/22-25 「関西・アジア 環境・省エネビジネス交流推進フォーラム」と共 に、遼寧省と瀋陽市の政府、環境関係団体、企業との交流を実施。 現地日系企業の環境市場参入状況を調査 東北 3 省+内蒙 古 10/27-28 遼寧・吉林・黒龍江・内蒙古と日本経済界の間で毎年定例の「日中 経済合作会議」を新潟で開催、「省エネ・環境分科会」において、 大気汚染、蓄電池、水処理等の分野で交流 黒龍江 12/15-19 大気汚染の深刻なハルビン市を含む、黒龍江省の大気汚染対策行動 計画を中心に省エネ等環境政策について情報収集、大慶市の CCS-EOR 技術の導入サイトを視察 沿 海 部 天津 12/11 許紅星・天津開発区管理委員会主任、党組副書記を団長とする、天 津開発区管理委員会一行が TEDA 日本事務所の紹介で来会。今後の 交流促進について意見交換 3/10-15 2013 年 10 月中旬に派遣した「大気改善設備技術交流ミッション」 を受け、天津の鋳造業界団体である天津市鋳鍛行業協会・王継英秘 書長を団長とした 11 名が構成する天津市省エネ・環境訪日団が来 日。東京において交流会、ビジネス・マッチング会を開催したほ か、一般社団法人日本鋳造協会の協力を得て、我が国の関連企業を 訪問し、ビジネスの強化を目的とした意見交換を実施 山東 4/8 山東省政府外事弁公室協議団一行が来会。山東省との新エネ・省エ ネ環境分野の交流協力について意見交換 7/28-8/3 岡本理事長一行が済南、青島を訪問。山東省政府、青島市政府と交 流。青島市と省エネ・環境分野での覚書締結について提案を受けた 7/29 煙台経済技術開発区商務局孫宇副処長が関西事務所往訪。ハイテク を重点に投資誘致をしており、具体案につき意見交換 8/19 李建勛・棗荘市経済・情報化委員会主任を団長とする、山東省北九 州環境保護研修団が来会。グリーン建築などについて、日中経済協 会と意見交換 9/8-11 張洪躍・済南市城郷建設委員会副主任を団長とする山東省グリーン 建築訪日代表団を受入、日本の省エネ建築やスマートシティ開発な どの現場視察、理解増進。セミナー開催、企業交流。 12/10 青島市科技局姜波局長一行の海洋研究開発機構訪問をサポート

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16 1/21 呂偉・山東省商務庁副庁長一行が来会、3 月の大阪での「第 16 回山 東省輸出商品展示商談会」について紹介、協力要請。省エネ・環境 分野での交流についても意見交換 1/22-26 魏建強・山東省発展改革委員会副巡視員、漳平・山東鋼鉄集団有限 公司副総経理をはじめとする山東省政府・鉄鋼企業関係者一行が来 日、省エネ・環境対策、特に大気汚染対策について企業を視察・交 流 2/28 青島市馬衛剛商務局長一行が来会、京都市・川崎市と交流関係、金 融試験区や港の改造等のほか、新型都市化の一環で、西海岸新区に ドイツと中徳生態工業園を建設。省エネ・環境での日中経済協会と の協力強化を期待 3/17-21 山東省中部の重化学工業都市、淄博(しはく)市を日中大気環境改 善対策のモデル地区にしようという構想のもと、張慶盈・淄博市副 市長を団長とした視察団が来日、東京で2度に渡り当協会、大気ネ ットワーク、関連企業、政府関係者等との交流会議を開催するとと もに、火力発電所、北九州市、山口県、周南市、トクヤマ等の対策 先進地区・山東省、淄博市とのゆかりのある自治体・企業を訪問 3/27 中国国際貿易促進委員会山東省分会宋副会長一行が日本貿促 60 周 年記念行事出席の為に来日。新年度の日本と山東省との交流活動予 定につき、紹介・日経協との協力の可能性につき意見交換 河北 9/15 「唐山市現地視察会」に北京事務所所長が参加、日本企業の進出状 況、曹妃甸工業区を見学 9/26 唐山市郭競坤副書記一行が来会、唐山市の大気汚染状況について紹 介、大気汚染改善ネットワーク企業がプレゼンする交流会議を開催 上海 2/19 汪小澍・上海市人民対外友好協会常務副会長を団長とする、上海市 人民対外友好協会代表団が来会。友好協会自身も経済交流活動支援 を進めているため、当協会の最近の環境事業や高齢者産業への取り 組みに関心があり、当該分野で、今後の経済交流の可能性について 意見交換 江蘇 4/23 「2013 中国泰州海陵(東京)投資懇談会」を共催 7/26-8/1 「宜興環境高峰論壇」(主催:全国工商聯環境サービス業商会)に 参加、中央政府の環境担当部門や企業関係者と交流、日本企業のマ ッチング支援。宜興環保工業園との今後の協力活動について協議 7/30 常州市武進区政府一行が来日、東京での投資説明会開催に協力 8/7 塩城市の「中国塩城(東京)スマートシティ協力説明会」開催に協 力

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17 10/21 江蘇省宜興環保産業技術研究院の協力で「日中省エネ・環境企業交 流会」を開催、双方参加企業がプレゼンテーション、個別マッチン グ、園区企業を視察。 11/25 孫中華・連雲港市徐圩新区副主任・国家東中西部地域協力モデル区 副主任一行が来会、同モデル区について紹介。中西部地区の対外開 放の窓口機能強化を目指す 11/26 黄政・江蘇省貿促会副会長一行が来会、「中国(昆山)ブランド製 品輸入交易会」(2014 年 5 月、昆山)について紹介。商務部、貿促 会、江蘇省政府の共催で、国家級輸入取引のプラットフォームとし て省エネ・環境を含む展示商談会。協力を検討 12/12 孫健・淮安市商務局長一行が来会、同市の経済状況や日本工業団地 について紹介。産業移転先として鍍金集中加工センターを設置して いることなど、今後の協力を検討 広東 6/5-8 王得坤・清遠市副市長を団長とする訪日団を受入れ、自動車産業を 中心に企業交流 3/11-15 広東省省エネ協会と共催で、広東省・関西省エネ技術交流セミナー を広州市で開催。 中 部 湖北 4/15-16 日本企業と共に黄石市を訪問、地元政府との間で磁湖水環境対策会 議を開催、アジア開銀借款対象事業の進捗状況について情報収集、 現地視察 9/24-27 黄石市張家勝副書記を団長とする黄石市政府訪日団を受入、水処 理・農業機械・コールドチェーンについて企業と交流。湖沼浄化、 植物工場、スマートシティを視察。日中経済協会との連携強化を協 議 10/3-4 黄石市周先旺書記一行を受入、北九州市の環境取組、エコタウンを 視察。東京で黄石市訪問企業との交流会議を開催、プラットフォー ム設置を協議 12/4-6 湖沼浄化対策をはじめとする省エネ・環境改善プロジェクトへの日 本企業の参入のため、今年 3 回目となる現地訪問。磁湖水質浄化対 策、県域の水源周囲の水処理対策について視察、意見交換。これま で活動に参加した企業を核に、12/24「日中経済協会 黄石市省エ ネ・環境等発展協力協議会」を立ち上げ 3/11 湖北省黄謀宏商務庁副庁長一行が来会、省エネ・環境ビジネスの交 流を中心に意見交換

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18 安徽 1/20-23 安慶市からの要請で、安慶石化等石化企業の環境対策に日本の技 術・経験を活かすため、関係企業 4 社による現地訪問チームを派 遣、市政府・大観区環境保護局、石化園区、安慶石化と協議 西 部 四川 10/23-27 「第 14 回中国西部国際博覧会」に参加。日本エネルギー経済研究 所と共催で「日中低炭素社会セミナー」を開催、日本企業 10 社の 出展をサポート、企業マッチングを支援 11/27 盧也・徳陽市副市長一行が来会、同市が企画する中日協力園区につ いて紹介、大気汚染対策について意見交換 12/16 四川省博覧会事務局劉萌副局長一行が来会(劉副局長は西部博低炭 素社会セミナーに出席、挨拶)。西部博の省エネ・環境保護を含む 専門性強化について協力要請。四川省の重点政策は自動車・情報・ クリーンエネルギー・環境と紹介、協力強化で合意 河南 5/18-20 「第 8 回中国中部投資貿易博覧会」(主催:商務部)に参加、北京 事務所が「中部 6 省ビジネスラウンドテーブル」などの分科会を開 催 青海 6/9-14 「2013 中国青海緑色発展投資貿易商談会」(西寧市)、太陽光発 電、水力、ごみ処理等の有力企業と交流 広西 12/11 丁元龍・欽州市産業園管理委員会副主任、肖瀟・欽州市外事僑務辧 公室主任ほかが来会、マレーシアとの協力で建設された同産業園に ついて紹介、情報交換 分野 月日 概要 大気 4/18 北京での日中大気汚染セミナーに参加(主催:日中友好環境保全セ ンター) 7/7-13 専務理事が中央政府関係機関との面談のため出張、合わせて大気汚 染改善協力の活動計画について説明し、意見交換 9/8-11 「大気改善設備技術交流ミッション」(団長:岡本理事長)を北京 に派遣。商務部、環境保護部、国家発展改革委員会ならびに北京市 に対し、日本企業の技術・設備や地方自治体の取組について紹介、 情報交換、企業マッチング支援 10/13-19 「大気改善設備技術交流ミッション」が北京、天津、河北、山東、 遼寧を訪問。各地方で地元政府・企業に対し、大気汚染改善技術・ 設備を紹介。企業マッチングを支援

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19 水 4/12-13 「第 11 回水業戦略論壇」(中国水網主催、北京)に参加。中国水ビ ジネス業界の企業トップの経営戦略について情報収集、日本企業の マッチングを支援 6/28-29 「第 7 回環境技術論壇」(中国水網主催、北京)に参加。上下水 道、工業排水、再生利用、海水淡水化のほか、重金属汚染やごみ処 理についての中国の技術の現状と課題について情報収集、日本企業 のマッチングを支援 9/12-13 「第 5 回上海水ビジネス“熱点”論壇」(中国水網主催、上海)に 参加、汚泥処理に特化した全国的な関係者の集まり。汚泥処理ニー ズや日本の技術の位置づけ等確認、専門家、企業との人脈形成、企 業マッチング支援 11/19-27 首都海水淡水化供水事業に関係する、清華大学、北控水務、北京市 市政工程設計研究総院の専門家を受入れ、メガトンプログラムシン ポジウムに参加、北九州、福岡の海水淡水化施設を視察、膜メーカ ーとの交流をサポート 11/25-30 天津万峰環保科技有限公司の日本での機器調達活動を支援。水処 理・汚泥処理を中心に都葛西水再生センター、諏訪湖流域下水道事 務所等を視察、環境事業関連企業との交流をサポート 12/2-4 「2013 中国水博覧会&中国国際膜・水処理技術及装備博覧会」(水 利部主催、北京)に昨年に引き続いて出展、日本の上下水道、工業 団地排水処理、湖沼浄化や日本企業の技術・設備について紹介。 「中国国際水務高峰論壇」で専門家、企業による講演を実施。企業 マッチングを支援 1/22-24 第 5 回国際水ソリューション展(InterAqua2014)に昨年に引き続き 出展、中国の水資源、上下水道、水ビジネスの状況や、水処理関連 マッチング支援を紹介した資料を配付、中国水処理市場について相 談に応じる 3/3-8 王洪臣・中国人民大学環境学院副院長一行を受入、熊本市で下水処 理・汚泥処理、諏訪湖流域の湖沼浄化について視察・理解増進、東 京でセミナー、企業マッチングを支援 スマコミ 5/28 程永華・駐日中国大使一行の「柏の葉スマートシティ」視察をアレ ンジ 7/25 刑継俊・中国科学技術交流センター副主任一行が来会、「中日韓グ リーンテクノロジーフォーラム」(10 月、北京)について紹介。 LED、水処理、グリーン建築等をテーマに政府・企業の交流活動。協 力を検討

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第 4 章 省エネ等・環境ビジネス推進活動状況

4-1 大気汚染改善

4-1-1 大気汚染改善ネットワークの設立と活動

(1)「中国大気汚染改善協力ネットワーク」の設立 2013 年 3 月、日中経済協会は、中国の大気汚染深刻化に対応する日本企業のプラットフ ォームとして、日中経済協会及び日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会(JC-BASE) の参加企業を主体に「中国大気汚染改善協力ネットワーク」を設立。大気の汚染対策分野に 豊富な知見を有する企業をメンバーとし、また政府・政府関係機関及び地方自治体の協力を 得て、幹事会を設置した(下図参照)。 活動主旨は、日本が大気汚染を克服してきた歴史のなかで蓄積された知見、経験、技術、 設備等の中国への紹介・活用を通じた問題改善への貢献である。 まず、13 年 9 月に、「日本企業の省エネルギー・環境関連設備・技術一覧(2013-2014) DVD」を作成した。内容構成は、第一部で大気汚染防止対策に関連する協力項目について紹 介し、中国政府から発表された大気汚染状況や行動計画を参考にして、「汚染監視」、「固定 発生源対策」、「自動車排ガス対策」、「粉塵汚染対策」、「汚染された後の大気の浄化対策」、 「自治体・行政の取組み」の6つに分類し、61 社(団体、自治体含む)・90 件を収録。第二 部では、大気汚染対策を含めた省エネルギー、新エネルギー、循環経済、水処理、土壌汚染 防止・土壌改良等に関連する 120 社・212 件を収録。また、世界省エネルギー等ビジネス推 進協議会(JASE-World)が集約した『国際展開技術集 2013』の 41 社・168 件の計 470 件も 収録した。

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21 日本企業・自治体をメンバーにして、この「一覧」をもとに技術交流を行う「大気改善設 備技術交流ミッション」を 9 月~10 月に北京市、天津市、河北省、山東省、遼寧省に派遣 し、特に関心を示した天津市、山東省については、14 年 3 月に政府・企業からなる関係者 を受け入れた。天津市は 3 月 10 日~15 日に、天津市鋳造協会及び環境産業協会所属の企業 責任者 11 名で来日、汚染モニタリング・鋳造業界の大気汚染改善等につき、日本側ネット ワーク企業との交流及びビジネス・マッチング会を実施した。山東省は、3 月 17 日~21 日 に、山東省政府と、省から大気汚染改善のモデル地区として指定された淄博市の関係者が来 日、日本側ネットワークとの協力可能性を探るとともに、ネットワーク参加企業との技術交 流を行った。 (2) 中国の大気汚染対策の主な目標 *2013 年 9 月 10 日 国務院公布:「大気汚染防止行動計画」 2017 年までの PM10、PM2.5 濃度の対 2012 年比削減目標(地区別) 上記削減目標達成のための主要措置 ※一部抜粋版 *2013 年 9 月 12 日 北京市公布:「大気清浄行動計画(2013-2017)」 2017 年までの PM2.5 濃度の対 2012 年比削減目標及び規制目標値(地区別) 懐柔、密雲、 延慶 順義、昌平、 平谷 東城、西城、 朝陽、海淀、 豊台、石景山城 門頭溝、房山、 通州、大興、 経済技術開発区 PM2.5 削減率(%) -25 -25 -30 -30 目標値(ミリグラ ム/立方メートル) 50 55 60 65 全国の一定規模以上 の都市(地級市) 京津冀(北京・天 津・河北)都市圏 長江デルタ地域 珠江デルタ地域 PM10 -25% PM2.5 -25% ‐20% ‐15% 燃料・自動車関連 暖房供給等、 燃焼ボイラー関連 エネルギー総消費量 に占める石炭の割合 非化石エネル ギーの消費比 率 ガソリン、ディーゼル 品質改善 10t/h 以下を淘汰 65%以下 13%以上 自動車保有台数規制、 老朽車両淘汰 20t/h 以下の新設を 禁止

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22 上記削減目標達成のための主要措置(一部抜粋) 燃料・自動車関連 暖房供給等、 燃焼ボイラー 関連 石炭消費量の削減 エネルギー転換 ガソリン、ディーゼル 品質改善 10t/h 以下 を淘汰 対 2012 年比 -56% ≪天然ガス供給増計画≫陝 西省から 180 億立法メート ル/年(2015 年)、 ≪SNG 供給計画≫内蒙古か ら 40 億立法メートル/年 自動車保有台数 600 万台以内に規制、 老朽車両淘汰 20t/h 以下 の新設を禁止 対 2012 年比-1,300 万 t *2014 年 1 月 7 日 環境保護部と全国 31 省市区が調印:「大気汚染防止目標責任書」 大気質量改善目標 各省(市、区含む) PM2.5 年平均濃度削減 目標率 -25% 北京市、天津市、河北省 -20% 山西省、山東省、上海市、江蘇省、浙江省 -15% 広東省、重慶市 -10% 内蒙古自治区 PM10 年平均濃度削減 目標率 -15% 河南省、陝西省、青海省、新疆ウイグル自治区 -12% 甘粛省、湖北省 -10% 四川省、遼寧省、吉林省、湖南省、安徽省、 寧夏回族自治区 -5% 広西チワン族自治区、福建省、江西省、 貴州省、黒龍江省 改善継続 海南省、チベット自治区、雲南省 *2014 年 3 月 5 日 政府活動報告(14 年の数値目標) 小型石炭ボイラー 5 万台を廃棄 石炭火力発電の発電 ユニット 1,500 万キロワット分に脱硫装置、1 億 3,000 万キロワット分 に脱硝装置、1 億 8,000 万キロワット分に集塵装置を取付け 自動車 「黄標車」(排ガス標準をクリアしていない車)や旧型車を 600 万台廃棄し、全国で国Ⅳ基準に適合するディーゼルを 供給。 エネルギー消費量 二酸化硫黄排出量 化学的酸素要求量 (COD) GDP 原単位当たり削減率 3.9% 2% 2%

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4-1-2 天津市省エネ・環境訪日団受入れ

(3 月 10 日~15 日 東京、掛川、豊橋) (1)-1 天津市の大気汚染対策 環境保護部と天津市が調印した「天津市・大気汚染防止目標責任書」には、2017 年を目 処に天津市が PM2.5 年平均濃度を対 2012 年比で 25%程度削減するための計画や各産業別に 課せられた重要任務、エネルギー総消費量のコントロール等、総合的かつ詳細な目標と手段 が示されている。目標責任書の主な任務とこれに基づく天津市の「重点工作年度実施計画表」 は以下の通りである。 天津市・大気汚染防止目標責任書の主な任務 ①小型燃焼ボイラー の全面的淘汰 2013 年末までに“高汚染燃料禁燃区”完成 2015 年末までに禁燃区内の 10t 以下のボイラーを淘汰 2017 年までに都市建設区内の 35t 以下のボイラーを淘汰 ②重点産業の汚染対 策強化 2015 年末までに全ての火力発電、鉄鋼、セメント、石油化学、 工業ボイラーにおける脱硫・脱硝・集塵設備の設置及改造完成 2014 年末までに全てのガソリンスタンド、オイルタンク、 タンクローリー車の石油ガス回収対策を完成 2015 年末までに 16 の化学工業企業、石油化学工業企業における 揮発性有機化合物(VOCs)の対策を完成 ③粉塵の総合対策強 化 クリーン施工推進 施工現場の表面安定化処理 道路舗装の機械化による低発塵の施工方式推進 ④自動車汚染対策強 化 新規登録される公共交通車両に占める新エネルギー、 クリーンエネルギー車両の比率を 60%程度にする 2017 年末までに公共交通の自動運行比率を 60%程度にする ガソリンの品質を 2013 年末までに国Ⅳ基準、ディーゼル燃料の 品質を 2014 年末までに国Ⅳ基準、ガソリン、ディーゼル燃料を 2015 年末までに国Ⅴ基準にする 2015 年末までに全市から 29 万台の旧式車両(黄標車)淘汰 ⑤産業参入許可環境 の厳格化 鉄鋼、セメント、アルミ電解、フロート法ガラス、船舶、 非鉄金属、カーバイド、鉄合金等における増産プロジェクトを 批准しない 火力発電、鉄鋼、石油化学、セメント、非鉄金属、化学工業等 の六大産業及び石炭ボイラーの新設については排出基準値内に 収めなければならない ⑥立ち遅れた生産能 力の淘汰を加速 鉄鋼の生産能力を 2,000 万 t/年以内にコントロール セメント(クリンカー)の生産能力を 500 万 t/年以内に コントロール 石炭発電所の生産能力を 1,400 万 kW/年以内にコントロール ⑦石炭消費総量抑制 2017 年末までに対 2012 年比で 1,000 万 t 削減 ⑧クリーンエネルギ ー代替の加速 2017 年末までに地域外送電の比率を 1/3 に引き下げる 2017 年末までに 3,800 万立法メートルの地熱資源を開発利用 ボイラーにおける石炭燃焼のガス化を加速 14 基のクリーンエネルギー発電所、60 万 kW の風力、太陽光発 電所の建設推進

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24 ⑨石炭のクリーンか つ高効率利用推進 灰分 10%以上、硫黄分 0.5%超の石炭販売規制 クリーンな石炭の使用率を 90%以上に ⑩産業構造を最適化 2017 年末までに、天津栄程聯合鋼鉄集団有限公司、 天津港散貨物流センター、天津渤天化工有限責任公司、 天津大沽化工株式有限公司等の重点の企業の移転と改造を推進 ⑪環境情報の公開を 実行 大気質量の年度改善目標の公開、社会の監督強化、区県の大気 質量状況を適時公開、区県の大気質量のランキングを公表 重汚染事業分野にある企業の環境情報を強制公開する制度確立 ⑫重度大気汚染への 適切な対応 天津市政府の緊急事態管理システムに重度大気汚染への緊急対 応を組み込む 2013 年末までに重度大気汚染の観測・警報システムの建設、 重汚染大気への緊急対応プランを完成させる 重度大気汚染の予測・警報度合いに基づき、適時緊急対応プラ ンを発動 「重点工作年度実施計画表」の工業大気汚染総合対策項目に示されている通り、電力業界 における脱硝設備の新設は 2015 年度に対策完了予定となっており、同じく鉄鋼焼結機の脱 硫対策に関しても 2015 年度に対策完了予定となっている。工業大気汚染総合対策項目にお いては、電力業界における除塵改造が 2014 年度にピークを迎えた後に大幅に下落し、2017 年度までは極めて僅かな伸びに留まることが見込まれる。また、2017 年度まで対策が継続 して注力される分野・項目は以下の通りである。 ①(工業大気汚染総合対策)オイルミスト回収・対策 ②(自動車汚染の防除)ガソリン・オイルの品質向上 ③(自動車汚染の防除)新エネルギー自動車の普及 ④(粉塵汚染の総合整備)路面清掃車 ⑤(粉塵汚染の総合整備)都市の緑化 ⑥(産業構造調整)鉄鋼業界の立ち遅れた生産能力淘汰 ⑦(産業構造調整)セメント業界の立ち遅れた生産能力淘汰 ⑧(エネルギー構造調整)クリーンエネルギーの大規模促進 ⑨(エネルギー構造調整)天然ガス利用促進 ⑩(エネルギー構造調整)既存建築の省エネ実施 ⑪(監視・監督能力の構築)VOCs 対策

参照

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