• 検索結果がありません。

日本環境設計株式会社

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "日本環境設計株式会社 "

Copied!
55
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

「みんなが参加する」より高度な循環型社会に向けた モデル事業

報告書

平成 28 年 2 月 29 日

日本環境設計株式会社

(2)
(3)

i

は じ め に

本モデル事業(以下「本事業」という)は、東京都と日本環境設計株式会社(以下「日 本環境設計」という)が、廃棄物の循環利用の更なる促進に係る取組について、「みんなが 参加する」より高度な循環型社会に向けたモデル事業」を共同で実施するものである。持 続可能な資源循環を実現するために必要なことは効率的で経済性のある資源回収の仕組み を構築することであり、これを実現するための重要課題は「消費者・企業に見えるリサイ クル動線作り」と「分かり易く、どこでも同じリサイクルのルール作り」であると定義し た。

本事業は、お台場地域(特に港区部分)において、二つの課題について実証実施し、そ の効果と将来持続可能な仕組みとして構築するために取り組むべき課題を明らかにするこ とを目的とするものである。

本事業を実施したことで、下記に掲げる事業について成果を得ることができた。

今後の展開として、「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」では、「バージン品質 と同レベル再生品を生み出す技術開発」「効率的な静脈物流の構築」「地域組織との連携及 び地域大規模企業・施設とのリサイクル事業者の共通化」に取組み、今回構築したリサイ クル・ループを持続可能なものとするべく取組み継続する。また、「分かり易く、どこでも 同じリサイクルのルール作り」では、「ごみ分別コンセプトの普及インフラの整備」「ごみ 分別コンセプトの普及展開活動」「継続的改善」を行い、同様に持続可能な仕組みとして定 着・普及するべく取組みを継続する。

本事業実施の結論として、将来持続可能な仕組みとして構築するための課題・問題点が 整理され、今後取り組むべき課題が明らかとなり、事業の目的を達成することができたも のと考える。この成果は、今後の廃棄物の循環利用の更なる促進に係る取組みを持続可能 なものへ高めるにあたって、極めて価値のあるものである。ここに改めて、東京都はじめ 多くの協力企業より頂いたサポートに対して感謝申し上げる次第である。

平成 28 年2月

日本環境設計株式会社

代表取締役社長 岩元 美智彦

【得られた成果】

「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」では、リサイクル・ループのプロセス全体 を一気通貫で構築するためのノウハウ・経験を蓄積できたこと、リサイクル・ループがよ り消費者に環境訴求をできることが分かったことが成果である。

「分かり易く、どこでも同じリサイクルのルール作り」では、リサイクルを促すためのご み分別のコンセプトを創造し、これが実際に企業・施設の実地現場での利用に資するもの であることが分かったことが成果である

(4)

目 次

1. 事業の目的・概要 ... 1

1.1 目的 ... 1

1.2 事業の概要 ... 2

2. 実施項目①「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」 ... 6

2.1 実施計画 ... 6

2.2 実施内容 ... 9

2.3 得られた成果及び課題... 21

2.4 展開計画 ... 31

3. 実施項目②「分かり易く、どこでも同じリサイクルのルール作り」 ... 32

3.1 実施計画 ... 32

3.2 実施内容 ... 34

3.3 ごみ箱ルールの要件定義(合同ワークショップ) ... 35

3.4 分かり易く、どこでも同じリサイクルごみ箱ルールの要件整理とコンセプト化 ... 43

3.5 効果検証 ... 48

3.6 得られた成果及び課題... 48

3.7 今後の展開計画 ... 49

4. 全体総括 ... 50

(5)

1

1. 事業の目的・概要

東京都は、持続可能な循環型都市の構築を実現していくため、東京都のこれからの資源循 環施策の基本的考え方や方向性を示した東京都「持続可能な資源利用」に向けた取組方針を 平成 27 年3月 31 日に公表した。

本事業は、この取組方針の中で「持続可能な資源利用」を進めるための施策の柱として掲 げた、①資源ロスの削減の促進、②エコマテリアルの利用の促進、③廃棄物の循環利用の更 なる促進に係る先駆的な取組に公募し、東京都と共同で実施するものである。

東京都と日本環境設計は、このうち③に掲げる廃棄物の循環利用の更なる促進に係る取組 について、「みんなが参加する」より高度な循環型社会に向けたモデル事業」を共同で実施 した。

1.1 目的

(1)東京都が目指す姿と3本の柱

東京都は、2020 年オリンピック・パラリンピックとその後を見据え、『東京の持続的発 展を確保するため、世界一の都市・東京にふさわしい資源循環を実現』することを目指して いる。これを実現する取り組みとして「資源ロスの削減の促進」「エコマテリアルの利用の 促進」「廃棄物の循環利用の更なる促進」を3本の柱と位置付けている。

(2)事業系廃棄物の循環利用に取り組む意義

東京には、オフィスビルや商業施設が多く集積しており、これらから排出される廃棄物(事 業系廃棄物)の量が多くなっている。そのため、事業系廃棄物のリサイクルを更に促進する ことが求められている。

しかし、東京は、分別ルールが異なる他県からの通勤客を受入れる一方、事業ビル・オフ ィスでは各々異なる一廃・産廃事業者が独自のルールで回収しているため、東京在勤者にと って在住地域と在勤地域の2重ルールとなり、これが効率的な資源回収を阻んでいるという のが現状である。

(3)本事業の目的

持続可能な資源循環を実現するために必要なことは効率的で経済性のある資源回収の仕 組みを構築することであり、これを実現するための重要課題は「消費者・企業に見えるリサ イクル動線作り」と「分かり易く、どこでも同じリサイクルのルール作り」である。動線作 り・ルール作りにおいては、非常に多くのステークホルダーが関わることもあり、大々的 にトップダウンで展開するよりは、小さく始めて、成功体験とそのブラッシュアップを積 み重ねて展開していくことが、より実現性を高めるものと考える。

したがって、本事業はお台場地域(特に港区部分)において、「消費者・企業に見えるリ サイクル動線作り」と「分かり易く、どこでも同じリサイクルのルール作り」をモデル事業

(6)

2

として実証実施し、1.その効果、及び、2.将来持続可能な仕組みとして構築するため に取り組むべき課題を明らかにすることを目的とする。

1.2 事業の概要

(1)事業の全体概要

本事業の上記1.2.の目的を達成するため、本事業の実施事項を2つに分けて展開する。

【実施事項①】

「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」は、本事業の協力企業・施設から廃PET ボトルを回収し、資源として再生化し、再生された材料を用いてお台場で開催されるワーク ショップイベントで活用するものであり、このための動線を構築するものである。

【実施事項②】

「分かり易く、どこでも同じリサイクルのルール作り」は、将来的に分別ルール・表示を 設計することを見据え、事業系ごみルール・表示の統一に必要な要件整理と、統一化した際 の効果検証を行うものである。

(2)対象となる地域

本事業の実施地域を「港区台場地域」とし、同地域に所在する企業・オフィスビル・商業 施設で実施するものとする。これは実施事項①及び実施事項②において共通である。

本地域を選定した理由は、「将来的発展の可能性が高いこと」「環境意識の高い企業が集積 しており先進事例を創出しやすいこと」「国内外からの集客求心力が高い地域であること」

から、オリンピック・パラリンピックとその後の仕組みを検討することに最適だからである。

(7)

3

(3)対象となる廃棄物

実施事項①においては、対象廃棄物を廃PETボトルに限定する。廃PETボトルに限定 する理由としては、本事業の準備としてお台場企業に分別状況を調査した際にプラスチック 関連の分別ルールがバラバラであったことを踏まえ、プラスチック関連の廃棄物を重点対象 とした実績があることが挙げれらる。また、廃PETボトルは、プラスチック関連の廃棄物 の中では、既に多様なリサイクル手法が確立しており、リサイクル・ループの実証として実 現可能性が高いものと判断したこともその理由である。

一方、実施事項②においては、事業系一般廃棄物から産業廃棄物までの廃棄物全体(但し、

粗大ごみ、特別管理廃棄物を除く)を範囲とする。

実施事項① 実施事項②

・ 廃PETボトル ・ 事業系一般廃棄物及び産業廃棄物

(画:港区台場地域の家庭ごみの分別・排出方法)

(8)

4

(4)実施体制及び役割分担

<協力企業の役割>

・お台場協力企業

お台場協力企業は、港区台場地域に事業所を構え、事業所から廃棄物を実際に排出する企 業のうち、本事業の実施事項①及び実施事項②に参画する企業を指す。

実施事項①においては、お台場協力企業は、期間を1ヶ月間程度に限定して廃PETボト ルを回収し、これを日本環境設計の指定するリサイクル施設に排出することにより、再生資 材・物品の素材提供をすることに協力をする。なお、この排出に関わる必要な遵法対応(契 約手続き・マニュフェスト等)が確保されていることを前提とする。また、お台場協力企業 は、この回収に必要な社内通知及び回収箱設置(既存の廃PETボトル用のごみ箱がある場 合は、シールなどの貼付で対応)を行う。

実施事項②においては、お台場協力企業は、協力企業間で統一された新しい分別マークが 表示されたごみ箱を社内で利用する。ここでいう分別マークとは、「資源物(リサイクル)」

「ごみ」等の大括りの表示や「紙類」「プラスチック類」等の中分類を整理・統一すること を想定している。なお、現在、各企業の既存分別・排出は更に細かい方法が取られているが、

これらを変更することを求めるものではない。お台場協力企業は、この新しい分別マークの 検討のための意見交換、社内通知及び新しい分別マーク付のごみ箱設置(実施事項①と同様 に既存のごみ箱がある場合は、シールなどの貼付で対応)を行う。

・リサイクル協力企業

リサイクル協力企業は、実施事項①において、お台場協力企業が回収した廃PETボトル を当該企業のリサイクル施設に集約し、廃PETボトルはフレークとして再資源化し、再生

(9)

5

品メーカー・商社などに販売する。お台場イベントで利用する資材・商品についても、リサ イクル協力企業が自社のネットワークを活用して調達の支援をする。

・新ごみ箱検討協力企業

新ごみ箱検討協力企業は、実施事項②において、日本環境設計とともにワークショップを 運営し、分別ルールの要件整理を行うとともに、新しい分別マーク付ごみ箱の製作を支援す る。

協力企業一覧

・お台場協力企業(50 音順)

企業名 住所 事業概要

サ ン ト リ ー ホ ー ル デ ィングス株式会社

東京都港区台場2-3-3(サントリー ワールドヘッドクォーターズ)

食品・酒類の製造販売事 業

株式会社乃村工藝社 東京都港区台場2丁目3番4号 集客環境づくりの調査・

コンサルティング、企画、

デザイン・設計、制作・

施工ならびに各種施設・

イベントの活性化、運営 管理

株 式 会 社 ホ テ ル グ ラ ンパシフィック

東京都港区台場2丁目6-1 ホテル グランパシフィ ック LE DAIBA 運営 株式会社マルエツ 東京都豊島区東池袋5-51-12

(お台場店:東京都港区台場1-5-3)

食品スーパーマーケット 事業

三 菱 地 所 リ テ ー ル マ ネ ジ メ ン ト 株 式 会 社

( ア ク ア シ テ ィ お 台 場 運営会社)

東京都港区台場1丁目1番1号 ア クアシティお台場4F

ショッピングセンター等 の運営・管理、ショッピ ングセンター等の企画・

開発・コンサルティング、

不動産の賃貸及び管理、

各種催し物の企画・運営、

警備業、宅地建物取引業、

その他付帯する関連事業

・リサイクル協力企業

企業名 住所 事業概要

東 京 ペ ッ ト ボ ト ル リ サイクル株式会社

東京都江東区青海3丁目地先中央防 波堤内側埋立地

廃PETボトルのリサイ クル事業

・新ごみ箱検討協力企業

企業名 住所 事業概要

株 式 会 社 日 本 デ ザ イ ンセンター

東京都中央区銀座4丁目9番 13 号 デザイン及びコンサルテ ィング事業

(10)

6

2. 実施項目①「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」

2.1 実施計画

(1)実施事項①「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」概要

お台場の協力企業・施設等から資源物(廃PETボトル)を回収する。資源物を排出する お台場協力企業から、再生工場を経て、お台場地域でのイベントまでのリサイクル・ループ 動線を構築し、「協力企業みんなで参加する」リサイクルを実現することで資源循環の意識 を高める。

(2)地域資源循環の実施ステップ

実施項目①は、「STEP1 お台場協力企業からの廃PETボトル回収」、「STEP2 回収廃PETボトルの再製品化」、「STEP3 再生品をお台場イベント等で活用」の3つ のステップに沿って実施する。

STEP1 お台場協力企業からの廃PETボトル回収

お台場協力企業において、廃PETボトルを企業の通常の分別方法と廃棄プロセスから切 り離し、廃PETボトル回収専用箱「資源回収箱」に企業・施設の従業員が投函する。

STEP1-1:体制構築

お台場協力企業は、現在、廃PETボトルを産業廃棄物もしくは飲料メーカー引き取りで 排出し、リサイクル施設で処理している。本事業のリサイクル協力企業・東京ペットボトル リサイクル株式会社は各社にとって新たなリサイクル処理先となるため、産業廃棄物収集運 搬・処理委託契約もしくは売買契約を期間限定で締結する。このための契約手続きを各社と 協議し進める。

STEP1-2:社内周知

廃PETボトル回収に先立って、社内周知のために必要な資材(ポスター及びチラシ等)

を用意し、お台場協力企業に提供する。

(11)

7 STEP1-3:資源回収箱設置

廃PETボトル回収に必要な箱を用意し、お台場協力企業に提供する。既に廃PETボト ル専用の回収箱や、既存のごみ箱がある場合などは、既存の資材(ごみ箱)に貼付するため のシールを提供し貼付することで、資源回収箱として対応する。

回収ボックスのイメージ

STEP1-4:廃PETボトル回収

各社に資材が到着次第、資源回収箱として資材を設置し、廃PETボトルの回収を開始す る。各オフィス・フロアで回収された廃PETボトルは、各社通常の廃棄物収集の流れに従 って、一旦各施設・建物の廃棄物集積場に集約される。廃棄物集積場に集められた廃PET ボトルを日本環境設計の指定するリサイクル施設(東京ペットボトルリサイクル株式会社)

に発送する。この廃PETボトルは、有価物として各企業から東京ペットボトルリサイクル 株式会社が買取り、有価物として運搬する。収集運搬事業者は、産業廃棄物収集運搬許可業 者・株式会社江栄が担う。有価物であるため、収集運搬の業許可は不要であったが、廃PE Tボトルの輸送に適した車両を有している株式会社江栄が妥当であると判断したためであ る。

回収期間は1ヶ月程度とする。企業で回収した廃PETボトルは、集まり次第、順次リサ イクル施設に発送する。

STEP2 回収廃PETボトルの再製品化 STEP2-1:再資源化

お台場協力企業から集めた廃PETボトルは、東京ペットボトルリサイクル株式会社に集 約する。集約された廃PETボトルは順次フレーク化し、再生品メーカー・商社などに販売 する。

(12)

8 STEP3 再生品をお台場イベント等で活用

お台場では、商業施設で多数のイベントが実施されており、様々な商品や資材が活用され ている。ここに、お台場協力企業から回収した廃PETボトルの再生材を活用した商品を販 売・提供し、イベント会場のワークショップで利用する。

STEP3-1:リサイクル・ワークショップイベント

消費者参加型のワークショップを開催する。ワークショップでは、お台場地域以外からの 観光客や親子も参加対象とし、身近な廃PETボトルで遊びながらリサイクルを学ぶキッカ ケ作りになるような「知る、見る、体験する」イベントを用意する。

「知る、見る」では、お台場で回収した廃PETボトルの再生材を活用した商品・資材を 紹介して、集められた廃PETボトルは「どのように生まれ変わるのか?」をアピールする。

また、「体験する」では、リサイクルイベントにおいて、実際の「素材」を用意し、リサ イクルを家族一緒に体験することを通じてエコ意識を高めることを狙う。

(3)本取組を持続可能なモデルとするための検討

「消費者・企業に見えるリサイクル動線づくり」の取組においては、平成 28 年度以降お おむね3年以内に、仕組みや制度を構築することを目論んでいる。これを実現するためには、

継続的に企業横断するリサイクルの動線を構築し、これを他地域に展開するための取り組む べき課題を明らかにする必要がある。本事業では、リサイクル動線づくりのモデル事業を実 施しながら、将来持続可能なモデルを構築するための課題抽出を行う。

【企業リサイクル実態の把握】

協力企業のリサイクル実態について聞き取り調査を実施し、まず現状を把握する。聞き取 り内容は事前調査で明らかになった分別分類に加えて、特に廃PETボトルの排出からリサ イクル施設への経路及びリサイクル処理方法などを明らかにする。各企業を横並びで比較す ることにより、リサイクルの現場における分別ルール・表示の統一に向けた現状の整理をす る。

【排出・収集運搬のオペレーション検証及び課題抽出】

本事業の廃PETボトルの収集運搬においては可能な限り混載便を手配し、静脈物流の効 率化を図る。これにより混載便の活用による効率化を検証するとともに、排出及び収集運搬 におけるオペレーション上の課題も明らかにする。

【消費者巻き込みイベントの効果検証・協力企業へのフィードバック】

再生材を活用したワークショップイベントにおいては、参加者の地域資源循環に対する反 応を集計する。ここで得られた消費者からの反応をお台場協力企業と共有し、お台場協力企 業として得られた効果を議論する。

【持続可能な仕組み構築のための課題抽出】

本事業の中で明らかとなったオペレーション上の課題及び協力企業としての参加効果を踏 まえて、地域でのリサイクル・ループ動線を持続可能な仕組みにまで高めるための課題を抽

(13)

9

出する。特に本事業は、地域内の企業が連携してリサイクルに参加することが特徴であった が、今後同様の仕組みを構築する上では、誰がイニシアチブを取るべきか、またどのような 運営母体が必要かなど、持続可能な実行に向けて必要な体制を明らかにすることに主眼を置 く。

2.2 実施内容

実施項目①は、以下の手順及び日程で実施された。

(1)お台場企業からの廃PETボトル回収

お台場企業からの廃 PET ボトル回収は、2015 年 11 月 9 日より同年 12 月 1 日まで行われ た。廃 PET ボトルの回収に協力した企業・施設は、三菱地所リテールマネジメント株式会社

(アクアシティお台場)、サントリーホールディングス株式会社、株式会社乃村工藝社、株 式会社マルエツ、株式会社ホテルグランパシフィックの5社であった。

図表:廃 PET ボトル回収企業・施設のロケーション

出所:グーグルマップより日本環境設計作成 各企業・施設には、廃 PET ボトルの回収に際して添付のようなシール及びチラシ・ポスタ ーを配布し、企業の従業員や施設・店舗の消費者に廃 PET ボトルの回収を呼びかけた。

(14)

10

図表:ポスター及びシールの掲示イメージ図

出所:株式会社日本デザインセンター

図表:ポスター・チラシ及びステッカー

出所:株式会社日本デザインセンター 備考:(左図)ポスター、(右図)ステッカー 本チラシとステッカーは、回収された廃 PET ボトルが回収後にお台場で開催されるリサイ クルイベントに活用されることをアピールするものである。

(15)

11

図表:ポスター掲示の様子

出所:株式会社乃村工藝社撮影(左図)、株式会社ホテルグランパシフィック撮影(右図)

3週間ほどの回収期間で廃 PET ボトルの回収協力企業5社から得た廃 PET ボトルは 2,261kg であった。

図表:廃 PET ボトル回収の様子

出所:日本環境設計撮影

商業施設・宿泊施設では週末に多くの廃PETボトルが発生することから、月曜日に量が 増加する傾向がある。また、平日は発生量が変動する傾向がある。一方で、オフィスビルな どは平日を中心に排出されるものであり、発生量も安定している。

効率的な廃 PET ボトル回収のためには、各ビルの業態をバランスよく組み合わせて配車す る必要があると考えられる。

①全体量の計測

②ヤードへ移動

③荷卸し

④荷卸し後

⑤計測

⑤計測

⑥空車の計測

(16)

12

図表:廃 PET ボトル回収量推移

出所:日本環境設計作成 備考:大量排出日(月曜)を黄塗

本事業の協力企業から回収された廃 PET ボトルの中に混入している異物は3週間で 67.5Kg であり、全体の 2.9%に留まっていた。また、この異物の多くは、廃 PET ボトル内に 含まれる飲み残しが大半を占めており、廃 PET ボトル内以外の混入物は僅少であった。

このように、今回の協力企業における廃 PET ボトル分別が優良である背景としては、オフ ィスビルの従業員への分別の周知・教育が徹底されていること、またオフィス・施設の廃棄 物収集運搬事業者がごみ回収時またはごみ集積場において、適切な分別作業を行っているこ とが挙げられる。

5社合計(kg)

11月9日 月 353.6

11月10日 火 87.2

11月11日 水 78.6

11月12日 木 106.3

11月13日 金 78.3

11月14日 土 39.9

11月16日 月 156.7

11月17日 火 102.7

11月18日 水 78.1

11月19日 木 96.2

11月20日 金 199.0

11月21日 土 58.7

11月23日 月・祝 107.4

11月24日 火 78.5

11月25日 水 96.3

11月26日 木 115.2

11月27日 金 56.5

11月28日 土 105.2

11月30日 月 170.9

12月1日 火 96.7

合計 2,261.9

平均 113.1

受入重量

(異物除去後)

日付 曜日

(17)

13

図表:協力企業から回収された廃 PET ボトル(その1)

出所:日本環境設計撮影 図表:協力企業から回収された廃 PET ボトル(その2)

出所:日本環境設計撮影

(18)

14

図表:回収された廃 PET ボトルに含まれる異物の例

出所:日本環境設計撮影 図表:過去にイベントで回収した廃 PET ボトルに含まれる異物混入調査

出所:日本環境設計撮影

(2)回収された廃 PET ボトルからの再生品製造

協力企業から回収された廃 PET ボトルは、江東区青海に所在するPETボトルリサイクル 工場・東京ペットボトルリサイクル株式会社においてメカニカルリサイクルの手法で再資源 化される。東京ペットボトルリサイクル株式会社では、回収した廃 PET ボトルは、異なる素 材・異物を除去した上で、破砕・洗浄後に PET フレークに生まれ変わった。

計量検査結果 ≪重量測定≫ 総計:8.174㎏

PETボトル品質調査結果報告

通常PETボトル:133本(計3.6㎏) 2.7㎏

中身入りPETボトル:16本 2.4㎏

プラスチックトレー類:92個 1.26㎏

プラケース:4個 98g パウチ:4個

0.3㎏

0.9㎏

ストロー・フタ他一式

その他:11個 0.46㎏

56g

(19)

15

図表:東京ペットボトルリサイクル株式会社の廃 PET ボトルリサイクルフロー

出所:東京ペットボトルリサイクル株式会社 ホームページより

東京ペットボトルリサイクル株式会社で PET フレーク素材に生まれ変わった廃 PET ボトル は、埼玉県さいたま市に所在する山征工業有限会社にてマグカップへと製品化された。山征 工業有限会社では、主にプラスチック製品(食品容器、洗剤キャップ、医薬品容器、OA 機 器部品など)の製造、販売並びにそれに関わる一切の業務を行っている。同社は 100%リサ イクル廃 PET を材料に、耐熱性、耐久性、耐衝撃性を兼ね揃えた環境と人に優しい食器を作 る事に成功し特許を取得しており、お台場で行われるリサイクルイベントに向けてマグカッ プを製造した。

図表:山征工業有限会社で製造される廃 PET ボトル再生材を活用したマグカップ

出所:山征工業有限会社試供品より日本環境設計撮影

(20)

16

(3)PET ボトル再生品を活用したイベント

本事業では、回収された廃 PET ボトルから再生品を製造し、その再生品を消費者が体験す るイベントの中で用いることにより、リサイクル動線の普及啓発及び見える化を図った。

イベント概要は以下の通り。

日時 : 2015 年 12 月 26 日(土)及び 27 日(日) 11:30~17:00

(リサイクルガイダンス 各日 11 時 30 分、14 時 00 分、15 時 30 分の3回)

場所 : アクアシティお台場(住所:東京都港区台場1−7−1)6F

フジテレビキッズカフェ「ママトコ」(以下「ママトコ」という)前特設会場 内容 : ・廃 PET ボトル再生品がプレゼントしてもらえるスタンプラリーを実施した。

・映画キャラクターミニオンズと連携したリサイクルガイダンスを行い、本事 業を紹介した。

・分別コンセプトを展示した。

本イベントは 2015 年 12 月 26 日(土)11:30~17:00、12 月 27 日(日) 11:00~17:00 にアク アシティお台場内の「ママトコ」前特設会場で開催した。

本会場を選定した理由は、特設会場を設置するスペースに隣接するテナントであるママト コが親子連れで賑わうカフェ施設であるため、消費者の動線が既に確保されており、ママト コに来店する消費者にもイベントの様子を伝えることができ、イベントを視認し興味を持っ た消費者を誘引することが期待できるからである。

図表:イベント紹介の概要(その1)

出所:日本環境設計作成

(21)

17

図表:イベントの概要(その2)

出所:日本環境設計作成

本イベントでは、環境貢献活動に関心の高いNBCユニバーサル・エンターテインメント ジャパン合同会社の協力を得て、ミニオンズという映画キャラクターとのコラボイベントを 実施した。ミニオンズは 2015 年に公開された親子に人気のあるNBCユニバーサル合同会 社制作の3DCG映画である。

また、会場である商業施設との連携策として、商業施設内でのスタンプラリーを実施した。

会場内に設置した8つのスタンプ台のうち4個以上のスタンプを集めることができた一般 客に対して、リサイクルマグカップ製作のワークショップに参加できることとした。このよ うな施設内スタンプラリーを実施することで、一般客が施設内を周回することを促し、テナ ントの売上に寄与することができるという効果がある。

具体的に本スタンプラリーによって、どのくらいの売上貢献効果があったのかについては 明らかではないが、施設担当者からはスタンプラリーが好評であったとの評価を得ている。

図表:リサイクル・イベントの様子

(22)

18

出所:日本環境設計撮影

図表:イベント会場レイアウト

出所:日本環境設計作成 スタンプラリーで規定数以上のスタンプを集めた一般顧客は、リサイクルマグカップ製作 のワークショップに参加することができることとした。

スタンプを集めた参加者は、ママトコ前の受付でイベントスタッフからワークショップ資 材(作画用の色鉛筆と画用紙)を受け取り、ママトコ前広場にてマグカップ絵かきを行った。

また、リサイクルへの関心を高めるために、「どのようなものが何に生まれ変わると嬉しい

(23)

19

か」と考えるきっかけ作りをする目的で、カラフルな付箋紙を配布し、ごみ箱コンセプト横 に備え付けたマジックを用いて作成されたメッセージカードをごみ箱に貼り付けた。

図表:イベント内でのミニオンズとの連携

出所:日本環境設計作成

1. PETボトル再生品

本イベントで配布したマグカップはお台場地域で事前に回収した廃 PET ボトルを協力会 社の東京ペットボトルリサイクル株式会社でリサイクルし、そのペレットを使用したもので ある。

このマグカップは、自身の書いた絵とミニオンズ、そして「このマグカップはお台場で回 収されたペットボトルをリサイクルしてできています」との文章をプリントすることができ、

世界で一つだけのオリジナルマグカップとなる。自分で製作したマグカップであるため、愛 着を持って継続的に使用することによって、必然的にリサイクルの普及啓発が誘引されるも のとなっている。

図表:マグカップデザイン

出所:日本環境設計株式会社作成

(24)

20 2. 参加者数

出所:日本環境設計作成

2015 年 12 月 26 日及び 27 日の2日間で、リサイクルマグカップ製作のワークショップへ の参加者は 409 名となった。具体的な内訳は集計していないが、参加者の多くはお台場を訪 れたお子様連れの親子が参加していた。他、カップルや学生グループなども多く参加してい た。

参加者をワークショップに誘引するために、1日3回のステージイベントを行い、ミニオ ンズの着ぐるみを登場させて、キャラクターと一緒に記念撮影もできる催しとした。初日は 11 時半からのステージイベントで 20 名、14 時からのステージイベントで 35 名、16 時から のステージイベントで 22 名の参加となった。イベントを開催した商業施設が観光立地であ ったため、午前中は来館者が少ない傾向があったため、2日目のステージイベントは、来館 者が増える午後に変更した。2日目の 13 時からのステージイベントでは 20 名、14 時半か らのステージイベントでは 25 名、16 時からのステージイベントでは 57 名が参加した。ス テージイベントの参加者数については、時間帯変更の効果が表れていないように見えるが、

ステージイベントに参加せずに遠巻きにイベント風景を観察する来館者は2日目が多く、こ れが結果として1日目のワークショップイベント参加者 111 名に対して、2日目が159名に 増えた要因ではないかと考える。

接客していたスタッフによると、参加者には概ね好評のようであり、具体的に以下のコメ

12/26(土) ステージイベント 参加者実数

ワークショップ 参加者実数

写真データ

入稿予定者 12/27(日) ステージイベント 参加者実数

ワークショップ 参加者実数

写真データ 入稿予定者

11:00の回 5 11:00の回 6

11:30~ 20 0 11:30の回 19

11:55の回 9 12:00の回 10

12:30の回 7 12:30の回 24 13

13:00の回 10 4 13:00~ 20

13:30の回 10 2 13:30の回 8 7

14:00~ 35 14:00の回 14 13

14:30の回 10 13 14:30~ 25

15:00の回 11 12 15:00の回 14 18

15:30の回 24 15 15:30の回 16 20

16:00~ 22 16:00~ 57

16:30の回 25 17 16:30の回 48 16

合計 77名 111名

(内11名写真へ変更) 63名 合計 102名 159名 87名

12/26(土) 当日お渡し 後日発送予定 写真データ

入稿予定者 12/27(日) 当日お渡し 後日発送予定 写真データ 入稿予定者

マグカップ 20名 80名 63名 マグカップ 17名 142名 87名

12/26(土) マグカップ実数 12/27(日) マグカップ実数

163個 246個

(25)

21 ント得ていた。

・リサイクルで再生される製品が分かることがリサイクルへのとても良い動機付けになる。

・自分で作ったものを使い続けることで、環境への意識を教えることができることは有難い。

以上から、本リサイクルイベントは当初の目的を達成できたものと考える。

(4)事業実施後のフォロー 1. 個人情報の収集

実施した展示・イベントでは、完成した製品を発送するために参加者の個人情報を収集し た。その方法は下記の手順に従った。

(1) 使用目的の通知

イベントワークショップで描いた絵をマグカップに印刷するためにはイベント日以 降に工場での作業が必要であるため、「完成したマグカップを発送するために使用す る」旨を、収集担当者が個人情報提供者に口頭で伝えた。

(2) 所定用紙への個人情報の記入、収集

個人情報提供者本人に自筆で住所、氏名、電話番号を所定の用紙に記入していただき、

その記入済みの用紙を収集した。

(3) 問合せ窓口の通知

個人情報提供者へ、問合せ窓口として、日本環境設計の電話番号、メールアドレスを 記載した用紙を引き渡した。

2. 個人情報の使用

収集した個人情報については、取扱者を限定し目的外使用を禁止した上で、製品発送時に 使用した。保管は施錠可能な日本環境設計の事務所内保管場所を使用した。日本環境設計で は個人情報の取り扱いについて定めた規定に従って、社員に対して教育及び研修を実施して いる。

3. 個人情報の破棄

収集した個人情報の破棄は、事業実施後の 2016 年 3 月 4 日に日本環境設計所属の取扱担 当者がシュレッダーを用いて全ての記入用紙を破棄することとした。

4. 問い合わせ対応

問合せ窓口に対して事業実施後の個人情報提供者からの問合せは無かった。

2.3 得られた成果及び課題

「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」を実行した結果として、得られた成果と今 後持続可能とするための課題を説明する。

(1)得られた成果

「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」で得られた成果として、「リサイクル・ル ープのプロセス全体を一気通貫で構築するためのノウハウ・経験を蓄積できたこと」、「リサ イクル・ループがより消費者に環境訴求できることがわかったこと」の2点である。

(26)

22

【リサイクル・ループのプロセス全体を一気通貫で構築するためのノウハウ・経験を蓄積で きたこと】

リサイクル・ループを通して資源が再製品化されるまでには、多くの事業者とプロセスが 介在する。具体的には、一般企業や施設で構成される排出者、排出者のビル・施設での廃棄 物回収や分別を委託されている清掃業者、廃棄物をビル・施設から回収し運搬する収集運搬 事業者、回収された資源物をリサイクル処理するリサイクル事業者、再生材で製品を製造す るメーカー、再生物を販売する卸売・小売事業者・イベント事業者、そして消費者である。

通常、リサイクル・ループ全体を俯瞰して事業を組み立てることを1事業者が担うことは稀 有であり、東京都との共同事業ならではの特徴と考える。この事業を組み立てる過程で、「エ リア内の異なる業種及び異なる事業規模の企業・施設を巻き込み、平仄を合わせて実行する こと」「エリア内の企業・施設でリサイクルのインフラ(物流等)を共通化することによる 効率化検討」を経験することができたことは非常に有益であったと考える。

 「エリア内の異なる業種及び異なる事業規模の企業・施設を巻き込み、平仄を合わせ て実行すること」

今回モデル事業に協力企業として参加した企業は、大手飲料メーカー、大規模宿泊 施設、大規模商業施設、小売店舗、オフィスビル等と、業種・施設も事業規模も多様 な企業・施設で構成されていた。必然的に廃棄物を所管する部門や決裁権者の階層な どは異なり、ある企業では担当者一人で意思決定することもあれば、部門として決裁 することもあり、意思決定までの時間及び提案時に求められる実施内容の精度も異な る。従って、このような異なる業種や事業規模の企業・施設を束ね、平仄を合わせて 事業を遂行するためには、それぞれの企業・施設に合わせた時間軸と提案内容を考慮 した上で、準備を進めることが必要である。

また、いずれの企業も廃棄物を排出する事業体であるものの、廃棄物の管理を事業 の本業としているものではないため、企業全体としての取組みまでに高めることが難 しく、多くの場合は廃棄物に係る部門、もしくは担当者の取組みに留まってしまった。

しかし、組織的な活動に高めるためには、このような活動を実際に実施することによ って実績を積み、各企業との信頼関係を構築することが重要であることを再認識し、

かつ、本事業を通してその基礎を築くことができた。

 「エリア内の企業・施設でリサイクルのインフラ(物流等)を共通化することのよる 効率化検討」

本事業に参加した企業・施設は、営業日・時間帯が異なり、廃棄物の搬出ヤードな どの規模も異なっていた。具体的には、オフィスビルなどは廃棄物の排出が平日中心 であり、商業施設・宿泊施設は逆に週末に廃棄物の排出が中心となる傾向がある。ま た、商業施設・宿泊施設は、1施設で大規模に廃棄物を排出するため大型の車両でも 受け入れることが出来る一方で、オフィスビルや小売店舗などは廃棄物の排出量が限 定的であるために車両制限が存在する。このような状況の中で、共同の回収のための トラックを手配すると、配車効率・積載効率の点で不利となり、コスト高となること が分かった。

物流改善については後述するが、このような性質の異なる企業・施設での共同回収

(27)

23

を実施することを通じて、実施する上で配慮するべき点を明らかにすることができ、

実際に物流改善の打ち手を実行することができた。

【リサイクル・ループがより消費者に環境訴求をできることがわかったこと】

「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」では回収した廃PETボトルのリサイクル の最終製品としてオリジナルマグカップを製作し、消費者に絵付けワークショップに参加し てリサイクルの普及啓発を図った。このリサイクルイベントは、事前告知による集客ではな く、日常的に一般的な顧客が足を運ぶ会場をイベント会場として設定し、必ずしも環境に興 味がない消費者を巻き込むことを狙った。

2015 年 12 月 26 日及び 27 日の2日間でワークショップイベントに参加した人数は、前述 の通り 409 名であったが、多くの参加者は子供連れの親子が絵付けに参加していた。特に子 供をもつ方には、楽しみながら環境貢献できるイベントに好印象を得ていた。

以下は、イベント運営スタッフが、参加者からヒアリングした内容を記録したものである。

・ 廃PETボトルからマグカップができることをはじめて知った。プラスチックから何が リサイクルできるのかを知らなかったので勉強になった(40代女性、子供連れ)。

・ 子供は、自分でマグカップを作ると、それを大切に使い続けてくれると思う。そのよう なマグカップとリサイクルを結びつけたことは、教育の上でとても良いと思った(40 代女性、子供連れ)。

・ 再生品が実用的なものになって返ってきたら、リサイクルをやる気になる(40代女性)。

図表:2015 年 12 月 26 日及び 27 日ワークショップイベントのメディア掲載

出所:東京新聞 TOKYO WEB(2015 年 12 月 27 日)より

必ずしも環境意識の高い顧客層を狙ったわけではないが、2日間で 409 名の参加を達成す ることができたことは、環境意識の普及展開において大きな成果があったものと考える。キ ャラクターとの連携が集客を誘引する要因となったことは確かであるが、様々な媒体やコン テンツとの連携によって、普及啓発効果を高めることができることが分かったことは大きな 収穫である。

(28)

24

(2)明らかになった課題

「消費者・企業に見えるリサイクル動線作り」におけるリサイクル・ループを今後持続可 能なものに高めるためには、3つの課題があると考える。「バージン品質と同レベル再生品 を生み出す技術開発」「効率的な静脈物流の構築」「地域組織との連携及び地域大規模企業・

施設とのリサイクル事業者の共通化」である。

【バージン品質と同レベル再生品を生み出す技術開発及び企業連携】

実施計画段階では、お台場企業から回収された廃 PET ボトルはデコスイーツのアクセサリ ーに再生させることを目論んでいた。しかしながら、国内におけるプラスチック製品メーカ ー十数社と再生 PET 素材を活用した商品製造を議論する中で、今回お台場協力企業から回収 した廃 PET ボトルから再生された素材を活用して国内で製品製造することの困難さが明ら かとなった。

現在プラスチック製品のメーカーの多くは、製造コスト面で優れる海外に生産拠点を移転 しており、プラスチック製品の大量生産の大半は中国やベトナム等の海外が担っている。日 本で回収された再生素材を海外生産拠点まで輸送し製造することがバージン素材を調達す ることに対してコスト面で非現実的である。また、海外産の原材料に少量の日本国内で回収 された素材を混ぜることが品質管理上対応できないこともわかった。

国内におけるプラスチック製品メーカーの多くは、10 万個程度の中ロットを短納期で生 産する企業、又はメーカーの試作品などを小ロット多品種の高品質品生産を受託する中小・

中堅クラスの製造事業者で占められている。これら企業で、再生材を活用したプラスチック 製品を生産した実績のある企業は限定的であった。原因としては、再生材のためにはその品 質に適合するための射出成形機の金型を製造する必要があるが、これにコストと時間がかか ることが挙げられる。金型1基の制作に 100~200 万円程度かかり、納期としては2~3ヶ 月が標準的である。また、再生材の品質については、リサイクル業者の技術によって異なっ ており、同じレベルの再生素材を安定的に調達することが困難である。このため、プラスチ ック製品メーカーとして、再生素材のために投資をすることに二の足を踏むこととなり、国 内において再生素材を活用してプラスチック製品を製造する事業者が伸び悩んでいるもの と考えられる。

したがって、プラスチックのリサイクル事業者にとっては、再生された素材を販売する先 が限定的であることがリサイクル事業の難しさであると考えられる。

図表:再生PET樹脂を活用したプラスチック製品製造の主な意見

メーカー 主な議論・回答

大阪府 プラスチック製品メ ーカー

プラスチックの再生原料については、当社で生産してい る製品のほとんどが中国の工場にて生産しており、原料 を送って生産となると、諸経費・関税等がかかるため利 用できる可能性は、ほとんどないと思われる。

東京都 玩具メーカー

・金型について

金型については持ち込みの材料を使うというのは非 常に難しい。金型というのは一つの金型につき決まった

(29)

25

プラスチック素材が使われるため、持込の材料では金型 が破損してしまうリスクが避けられない。

・ロット数

基本的に大量生産が基本である。どのロット数でも金 型にプラスチックを流し込むのは同じくらい手間がか かる。少ないロット数では製造はかなりの手間になる。

目安として1万~10 万くらいからでないと難しい。

香川県 プラスチック製品メ ーカー

自社で製造しているプラスチックビーズは、主な用途は アクセサリーや手芸用のため、ある程度色合い(見た目 の綺麗さ)が要求され、また、成型後艶出し加工をする ため、リサイクル材料(再生ペットなど)では不向きで ある。

現在使用している樹脂はアクリル樹脂(バージン樹脂)

である。

また、プラスチックビーズは射出成型で製造している。

成型用金型はアクリル樹脂で成型するように設計され ているので、再生ペット樹脂ではうまく成型できないと 思われる。

出所:各メーカーとの議論より日本環境設計作成

この課題に対する解決策としては、高品質な再生プラスチックリサイクル工場を運営して いる企業との連携を図ることが考えらえる。

高品質な再生プラスチックリサイクル工場を運営している企業との連携

一般的にプラスチック製品は PET 以外にも、PP,PS,ABS など様々なプラスチック素材で製 造されている。リサイクル・ループを持続可能とするためには、本事業の「廃 PET ボトルか らマグカップ」へのリサイクルといった、生まれ変わるものの一つループに限定するのでは なく、企業・消費者が望むものに対して柔軟に再生・提供できる体制を整える必要がある。

下記に、既に国内でプラスチックに関する高度なリサイクルを行っている事業者とその技 術特徴をまとめた。

(30)

26

図表:再資源化工場と特徴とするリサイクル技術(例)

再資源化工場名 リサイクル技術

新日鐵住金株式会社

(工場:千葉県君津市)

コークス炉化学原料化法というコークス炉を使ったケミ カルリサイクル法で、製品プラスチックを熱分解し、炭 化水素油やコークス、コークス炉ガスを製造している。

既に家庭から出る容器包装などのプラスチック製品がこ の技術でリサイクルされていて、全国の自治体で回収さ れる容リプラスチックの約 30%のリサイクルを実施して いる。

容リプラの他、玩具や文具、日用品などについても処理 を実施している。

ユーエムジー・エービーエス株 式会社(工場:山口県宇部市)

単一のABS素材の製品(主に玩具や携帯電話の充電器 など)を、ABS樹脂に戻すリサイクルを実施している。

エム・エム・プラスチック株式 会社(工場:千葉県富津市)

主にプラスチック製容器包装などを原料にペレットや減 容品、その他プラスチック素材に戻すリサイクルを実施 している。

協栄産業株式会社(工場:東京 都江東区 東京ペットボトルリ サイクル)

表面の汚れだけではなく、真空・高温下で樹脂の中にしみ込 んだ不純物までを徹底的に除去する技術である。また、物性 の劣化を防ぎ IV 値も回復させることができる。開発した

「MR-PET」は飲料メーカーの飲料ボトルに採用。メカニカル 手法によるボトル to ボトルリサイクルとしては国内初の取 り組みである。

出所:日本環境設計作成

本事業では、リサイクル・ループの出口をリサイクルイベントでの再生プラスチック製品 (マグカップ)の利用とし、キャラクターとの連携により付加価値を高めることでできた。し かし、今後リサイクル・ループを持続可能なものとして、一般的なプラスチック製品に恒常 的に活用されるものへと高めるためには、再生素材自体を国内外のプラスチック製品メーカ ーが品質的にもコスト的にも受け入れられる状態に高めることが必要である。

【効率的な静脈物流の構築】

国内外のプラスチック製品メーカーが品質面及びコスト面で受け入れることができるリ サイクル技術がリサイクル・ループを持続可能なものとするために必要であることは述べた。

しかし、リサイクルは排出者から回収・運搬することから始まるため、排出者からの効率的 な回収が実現できなければコスト面で競争力が落ちる恐れがある。

ペットボトルの再生品については現在、自治体回収及びスーパーでの店頭回収等がある。

自治体は、消費者から高品質な廃 PET ボトルを回収することができるものの、入札のため安 定的調達に課題がある。スーパーなどの店頭回収で得られる廃 PET ボトルについても高品質 であるもの、回収コスト負担が大きく、石油価格の動向による採算性の確保が難しい。

今回のお台場地域での共同廃 PET ボトル回収においては、エリア内での業界連携により経 済的・効率的な回収ができるのではないかと仮説を持って検証を行った。2015 年 11 月の廃 PET ボトル回収については、毎日集荷、2トン平ボディ車を共通回収車両として利用し、お 台場の企業・施設を巡回して、納入先である江東区青海の東京ペットボトルリサイクル株式 会社に輸送した。3週間でのペットボトル回収のための平均費用は、\265/kg となったこと が分かった。また、オフィスビルと商業施設・宿泊施設では排出される廃 PET ボトルの量が

(31)

27

曜日ごとに大きく変動し\84~\751/kg となることも分かった。逆に、地域内での共同廃 PET ボトル回収が割高となることが判明した。

図表:廃 PET ボトル回収に係る物流費単価推移

出所:日本環境設計作成

現在多くのオフィス・商業施設で発生する廃 PET ボトルは多くは自販機メーカーが回収し ており、飲料製品の搬入時に同時に廃 PET ボトルを回収する帰り便活用であるために、コス ト面ではほとんど排出者側に負担なく回収されている。一方で、このような自販機メーカー による回収・リサイクルは、各メーカーが集積した大量の廃 PET ボトルを大口で任意のリサ イクル事業者に依頼しており、排出者側でリサイクルの手法及び再生品を指定することが難 しいと言える。

この課題に対する解決策として、エリア内での共同収集運搬を効率化する、もしくは既存 の自販機メーカーとの連携による効率的な回収の仕組みを構築する必要がある。

エリア内共同収集運搬の効率化施策の実施

エリア内の共同収集運搬の効率化を実現するための施策として、回収ルート・頻度の効率 化及び積載効率の向上が挙げられる。効率性を改善するための実験を、本事業期間の中(2016 年2月 22 日~26 日)でお台場企業の協力の下で実施した。

第2回PETボトル回収実証実験

 目的:お台場地域でのPETボトル共同回収の物流費について、回収頻度と車体を 11 月 回収時と変更することで効果測定を行う。

 回収先:アクアシティお台場、サントリーホールディングス株式会社、株式会社乃村工 藝 社、株式会社ホテルグランパシフィック

 期間:2月 22 日(月)~26 日(金)

 回収日:2月 22 日、24 日、26 日の3回。頻度を毎日から2日に1回とした。

 回収車両:4tパッカー車(積載容量 2,000kg)

(32)

28

 運搬先:東京ペットボトルリサイクル株式会社(回収後にリサイクル)

図表:第2回廃 PET ボトル回収実証実験の車両

出所:日本環境設計作成

3回の回収実験での回収量と物流費、及び回収に係る所要時間は以下の通りとなった。所 要時間は、それぞれの回収先を巡回する所要時間と納入先である東京ペットボトルリサイク ル株式会社への輸送・搬入時間で構成されている。

図表:第2回廃 PET ボトル共同回収実証(4社回収実績)

出所:日本環境設計作成

この結果に基づくと、11 月の回収では輸送単価が\265/kg であったが、2月の回収では輸 送単価 149.2/kg まで落とすことができた。また、第2回実証で活用した車両は、積載容量 が 2,000kg であり、半日チャーターしたものとして 38,000 円/台であった。仮に、同じ地域 で、同様規模のホテル1棟、オフィスビル6棟、商業施設1棟を追加で回収した場合は、所 要時間1時間55分、回収量 552kg を回収することができ、この場合は下表に示すとおりに 凡そ\68.7/kg まで削減できる可能性があることが分かった。

回収前の現場状況 回収作業① 回収作業② 回収後の現場状況 受入先到着後の流れ

③荷卸し前

④荷卸し作業中1

⑤荷卸し後

⑥荷卸し後の荷物

①全体量の計測

②ヤードへ移動

④荷卸し作業中2

4社合計

2月22日 月 379.2 38,000 100.21 1.20

2月24日 水 201.7 38,000 188.39 0.85

2月26日 金 182.9 38,000 207.79 0.65

合計 763.8 114,000 149.26 0.90

日付 曜日

受入重量(異物

除去後) 物流費 (税抜)

物流単価(¥/K G)・グロス

回収所要 時間

(33)

29

図表:第2回廃 PET ボトル共同回収実証(12 社回収した場合のシミュレーション)

出所:日本環境設計作成

今後は、このシミュレーションの妥当性を確認することと、このような共同回収の取組み 企業を巻き込むことが課題となる。また、共同回収以外の施策として、自販機メーカー回収 ルートを活用することも検討が必要である。

【リサイクル・ループを持続可能なものとするための仕組み・体制づくり】

リサイクル・ループを持続可能なものとするための施策として、静脈物流の効率化が必要 であり、その具体的解決策として地域内での共同回収やリサイクル品を地域に再び還元させ るリサイクル・ループづくりをすることが必要となる。また、リサイクル・ループで生まれ 変わるものについては、企業・消費者のニーズに合わせてリサイクル及び製品化することを オーガナイズする機能が必要となる。特に、誰がその地域内での共同回収及びリサイクル・

ループ構築のイニシアチブを取るべきか、またどのような運営母体が必要かについて、その 要件を明確にして体制を構築しないと、一度構築したリサイクル・ループも一過性のもので 終わってしまう恐れがある。このような持続しないもので終わることを防ぐためにも、リサ イクル・ループを定常的な仕組みに落とし、それを継続して行えるような仕組み・体制とそ の能力を向上していく必要がある。

ただし、このようなオーガナイズ機能・運営体制構築するためには、未だ再資源化可能な 製品と再生素材から生産できる製品についての知識の蓄積が不十分であり、また、回収にか かわる最適解が不明確である。したがって、まず、回収参加企業・施設の要望を取りまとめ、

また、回収の成功事例・再資源化可能な製品について共有・蓄積する準備組織体制を構築し、

これを将来的に自立的な運営組織に高めていくことを目指す。

上記の準備組織として考えられるスキームは以下の通りである。

12施設合計

2月22日 月 770.8 38,000 49.30 1.93

2月24日 水 469.2 38,000 80.99 1.93

2月26日 金 418.3 38,000 90.84 1.93

合計 1,658.3 114,000 68.74 1.93

回収所要 日付 曜日 時間

受入重量(異物除

去後) 物流費

(税抜)

物流単価(¥/K G)・グロス

(34)

30

図表:PLA-PLUS 連絡協議会のスキーム案

出所:日本環境設計作成

・効率的な店頭回収の促進と店頭回収の事例共有

連絡協議会では、各企業が抱える課題を共有し、課題解決策などについて話し合う。その 際、効率的な店頭回収の事例や他成功例を共有し、解決策を検討するための土台とする。

・勉強会の開催とアンケートの実施

国内外含めた効率的な店頭回収の事例や店頭回収の成功例(もしくは失敗例)を共有し、

物流面などで効率的に回収する方法、リサイクル手法を模索する勉強会を開催する。

・自社製品の店頭回収、再資源化に関心のある製造事業者の取りまとめ

連絡協議会がリサイクル手法に関心を持つ製造事業者の相談窓口となり、店頭回収となり 得る店舗と回収対象品や回収後のリサイクル手法などを調整しながら店頭回収を促進する。

・再資源化可能な製品のリスト化

製品プラスチックを中心に、再資源化可能なものをリスト化し蓄積する。再資源化可能な 物を明確にしてリスト化することで、今後の店頭回収の対象品目の増加、店頭回収の効率化、

促進に繋げる。

このように、回収参加企業・施設の要望を取りまとめ、また回収の成功事例・再資源化可 能な製品について共有・蓄積する体制を構築し、将来的に自立的な運営組織に高めていくこ とを目指す。

(35)

31 2.4 展開計画

今後の展開計画として、明らかになった3つの課題「バージン品質と同レベル再生品を生 み出す技術開発及び企業連携」「効率的な静脈物流の構築」「リサイクル・ループを持続可能 なものとするための仕組み・体制づくり」を各々取り組んでいく。

【バージン品質と同レベル再生品を生み出す技術開発及び企業連携】

バージン品質と同レベル再生品を生み出す技術開発として、日本環境設計ではコスト面及 び品質面でバージン品と同レベルの再生ポリエステル素材を得る技術開発を進めており、

2016 年 12 月末より北九州市においてそのためのリサイクル・パイロットプラントが稼動す る予定である。稼動にむけた、新リサイクルプラントの建設を現在鋭意推し進めているが、

同時に回収スキーム及び再生材の販売スキームも含めた事業スキームを構築する必要があ る。

一方で、ポリエステル以外の素材については、日本環境設計では複数のリサイクル事業者 と既に連携しているが、今後排出されるプラスチック製品と再生素材の親和性を調査し、そ の情報を蓄積する。これにより、現在、既にリサイクル事業者と連携して、プラスチック製 品の回収・リサイクルを実施しているが、より幅広い種類のプラスチック製品をリサイクル できるようにする。

【効率的な静脈物流の構築】

効率的な静脈物流の構築のためには、第2回回収実験で明らかにしたように、同じエリア における共同回収に賛同する企業数を増やす必要がある。従って、お台場地域(港区部分)

の近隣エリアも共同回収ターゲットエリアと定めて、コンソーシアム形式で共同回収に参加 する企業を募る。

【リサイクル・ループを持続可能なものとするための仕組み・体制づくり】

持続可能なものとする仕組み・体制づくりについては、協議会構築の可能性を検討する。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

 -コスト面及び品質面でバージン材と同レベルの再生    プラスチックを得る技術開発

   1事業スキームの構築

   2新リサイクルプラントの建設    3新リサイクルプラントでのリサイクル運営  -既存の高品質な再生プラスチックリサイクル工場を    運営している企業との連携

   1廃プラスチック製品と再生素材との親和性整合    2廃プラスチック製品のリサイクル

 -共同物流インフラのコンソーシアムの立ち上げ

 -協議会の構築可能性検討 展開にむけた実施項目

2016年 2017年

高品質な再生品を生み出す技術開発及び企業連携

効率的な静脈物流の構築

リサイクル・ループを持続可能なものとするための仕組み・体制づくり

参照

関連したドキュメント

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

2月 1月 12月 11月 10月 9月 8月 7月

10月 11月 12月 1月 2月 3月