環境・経済・社会に配慮した
持続可能な土壌汚染対策
東京都環境局環境改善部
化学物質対策課土壌地下水汚染対策担当
1 土壌汚染対策制度の基本
土壌汚染とは
<原因>
・工場等から漏洩した有害物質が地下へ浸透した ことによる人為的原因
・自然界にもともと存在する自然的原因
・水面埋立て土砂由来
国内外において、自然由来や埋立由来の基準 不適合土壌は、多くの場所で認められており、
都内においても同様の状況。
自然由来地層 埋立由来
土壌中の有害物質濃度が法律や条例の基準を超過した状態
手に付いた土や砂ぼこり等
地下水等
直接摂取
・ 飲用
地下水等を経由した摂取リスク 土壌溶出量基準(㎎/ℓ)
直接摂取のリスク 土壌含有量基準(㎎/㎏)
地下水の水質の汚濁に係る基準 地下水基準
(㎎
/ℓ)
条例では、地下水環境の保全も考慮する必要あり
土壌溶出量基準・土壌含有量基準・地下水基準
生涯(70年間)
居住し1日に100 mg
(6歳以下は1日200 mg)
生涯(70年間)
1日に2リットル 胃液で溶出する量を想定
地下水を飲む量を想定
地下水に溶け込んでいる量 第二溶出量基準:措置方法の選択や、地下水汚染拡大のおそれの判断に係る基準
第二地下水基準:措置方法の選択や、地下水汚染拡大のおそれの判断に係る基準 溶出量基準値
の3~30倍
条例独自、水濁法の排水基準と同値
6
含有量基準 不適合土壌
含有量基準 不適合土壌
舗 装
A)人の出入りがあり、含有量基 準不適合土壌が露出
人が土壌に触れる 可能性がある。
B)人の出入りはあるが、
舗装等により含有量基準不適合土壌 が覆われている。
人が土壌に触れる可能性ない。
健康リスクなし 健康リスクあり
法:要措置区域
条例:要対策区域 法:形質変更時要届出区域
条例:要管理区域
土壌含有量基準値を超える土壌が見つかった場合
条例独自
法:要措置区域
条例:要対策区域 条例:地下水汚染拡大防止区域 法:形質変更時要届出区域 条例:要管理区域
※第二溶出量基準不適合 又は第二地下水基準不適合
土壌溶出量基準値を超える土壌が見つかった場合
2 「持続可能な土壌汚染対策」施策の背景
「Sustainable Remediation WhitePaper ー持続可能な土壌汚染対策のために一」2019年発行
環境・経済・社会に配慮した
持続可能な土壌汚染対策
ガイドブック
基準不適合土壌が存在する又は存在する可能性がある土地において、土地の改変(解体・建築・建設 工事等)や開発事業、有害物質取扱事業者、土地の売買・不動産仲介等を検討している事業者
※中小事業者に対しては、「中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン」の改定で対応
対象者
汚染土壌を除去しないと買 い手がつかないかな?
早く土地を見つけたい!
費用を抑えて開発したい!
序章
環境面・経済面・社会面に配慮した持続可能な土壌汚染対策を実践するため
・事業者による対応のポイントや考え方
・持続可能な対策を実現することができた事例等 を分かり易く示す。
目的
持続可能な土壌汚染対策が広く普及
土地所有者・有害物質取扱事業者
不動産業者
開発事業者
操業中に取組むべきことは・・
3 持続可能な土壌汚染対策の紹介
環境・経済・社会に配慮した持続可能な対策とは?
解説 編
持続可能な土壌汚染対策:実践のポイント
土壌の3R
解説 編
持続可能な土壌汚染対策:実践のポイント
持続可能な 土壌汚染対策
・土地の利活用社会面
(ブラウンフィールド化の回避)
・地域コミュニティや施設利用者 等
・対策による環境負荷環境面
(エネルギ使用(CO2排出)、
自然環境や大気環境への影響、
資源消費・廃棄物発生等)
・対策・維持管理費用経済面
・土地の資産価値
土壌の3R
措置が必要な場合
序章
それ以外の土地
健康リスクがある土地
一定濃度を超える汚染がある土地
有害物質の摂取経路を遮断するための措置の実施
必ずしも土壌汚染の除去等の措置を求めていない
まず、赤枠の例を見てみましょう!
法令による措置が必要な土地における対策
掘削除去 舗装・盛土
含有量基準に適合しない土壌への措置の比較
溶出量基準に適合しない土壌への措置の比較
地下水モニタリング
掘削除去 掘削除去 原位置浄化(生物的分解)
直接、土が口に入って しまうことへの基準
土から溶け出した 地下水を飲用する ことへの基準
措置が不要な場合
序章
それ以外の土地
健康リスクがある土地
一定濃度を超える汚染がある土地
有害物質の摂取経路を遮断するための措置の実施
必ずしも土壌汚染の除去等の措置を求めていない
次に、青枠の例を見てみましょう!
措置が不要な場合の例①(土地取引と開発)
解説 編
搬入元の自然環境等 への影響の可能性
① 土地所有者
建物解体時に基準不適合土壌を全量掘削 ② 土地所有者
基準適合土壌による埋め戻し ③ 開発事業者
新築工事に必要な部分を、再度、
場外搬出
④ 開発事業者 新築建物が完成
① 既存建物解体 ② 基準不適合土壌の搬出なし ③新築工事に必要な部分のみ
基準不適合土壌を場外搬出 ④ 新築建物完成
舗装による維持管理を継続 不要な掘削除去・
土壌の搬出を削減 基準不適合土壌の搬入を抑制 不要な掘削除去・
土壌の搬出を削減 舗装を行うことで、土壌汚染 による健康リスクを回避
CO2の排出量削減
上段:良くある例
下段:「土壌の3R」を考慮した例
措置が不要な場合の例②(基準適合土壌の扱い)
基準不適合土壌
盛土(基準適合土壌)
<断面図>
地表
要措置区域等
配管 掘削
良く見られる例
「土壌の3R」を考慮した例
〇掘削した基準適合土を「みなし汚染土 」 として汚染土壌処理施設に搬出 ※
〇購入土を搬入して埋戻し
〇掘削した基準適合土は、分別して仮置きし、
埋戻土として利用
〇余剰となった(又は仮置きできない)
基準適合土壌が生じた場合には、認定調査 ※※
を実施し、健全土として搬出
※
要措置区域等から区域外に搬出する土壌は、汚染土壌処理施設に搬出することが原則となっている。
※※
認定調査を行い申請を行えば、健全土と取り扱う ことができる。土壌汚染とは
土壌中の有害物質濃度が法律や条例の基準を超過した状態
<原因>
・工場等から流出した有害物質が地下へ浸透した人為的原因
・自然界にもともと存在する自然的原因
序章
国内外において、自然由来や埋立由来の基準不適合土壌 は、多くの場所で認められており、都内においても同様 の状況。
措置が不要な場合は、
自然由来等土壌の例も多い!
措置が不要な場合の例③ (自然由来土・埋立由来土等の扱い)
改正土壌汚染対策法について(平成31年4月1日施行)環境省資料より引用
飛び地間移動
自然由来:同一地層間 埋立由来:同一港湾内
上段:良くある例
汚染土壌処理施設へ 埋立由来による基準不適合土壌
埋立由来による基準不適合土壌
埋立由来による基準不適合土壌
埋立由来による基準不適合土壌 敷地内移動 又は埋立地特例 区域間移動 汚染土壌処理施設へ
基準適合土壌
下段:「土壌の3R」を考慮した例
解説 編
持続可能な土壌汚染対策:実践のポイント①
土壌の3R
コミュニケーション
□ 関係者間のコミュニケーション
□ リスクコミュニケーション
解説 編
✔
専門技術者 専門技術者
工事施工者 工事施工者 土地所有者
(工場主)
土地所有者
(工場主) 開発事業者開発事業者
不動産仲介事業者 ディベロッパー等 不動産仲介事業者 ディベロッパー等 土地賃借者
土地賃借者工場主 工場主
マッ チン グ コー ディ ネー ト
土壌汚染対策の アドバイス
事業に適した用地は ないか・・・
土地の活用の仲介 土壌汚染対策の相談 基準不適合土壌あるが
活用したい・・・
各事業者間の円滑なコミュニケーション 実現のための調整役として期待!!
コミュニケーション
持続可能な土壌汚染対策:実践のポイント②
□ 関係者間のコミュニケーション
□ リスクコミュニケーション
コミュニケーション
解説 編
✔
事業計画に主に関わる人(例)
事業計画に主に関わる人(例) 施設管理者施設管理者 自治体
自治体
地域住民 地域住民
状況に応じて質問・意見交換 リスクコミュニケーション To do list
関係者の把握
情報提供の範囲
情報提供の方法
提供内容
提供のタイミング 施設利用者施設利用者 適切な情報提供・意見聴取持続可能な土壌汚染対策:実践のポイント②
この図を消す!!
法 や条 例 に よる 調 査
基準 適 合 確 認
地下水の流れ 基準不適合土壌 地下水面
処理槽
土壌 汚 染 発 生
早 期に 自 主 調 査を 実 施
土 壌 汚 染発 覚
相談
・ 対 策 の 助言
・ 提 案
・選 択
対 策 の 実施
地 下 浸 透 防 止 対 策
工 場 廃 止・ 事 業 転 換 等
次の 土 地 利 用 等
対策費用を計画的に分 散して支払うことがで きる。
初期費用 管理費用
土対法の廃止時の調査義務免除 初期費用 管理費用
〇操業中から計画的な土壌汚染対策に取り組んでいた場合 ※:自主調査後に地下浸透防止措置を実施し、点検記録が 適切に保管されていれば、廃止後の法や条例による 新たな調査の実施は不要になる場合があります。
操業中の調査・措置の重要性
解説 編
土壌 汚 染 発 生
地下水の流れ 地下水面
基準不適合土壌
基準不適合土壌の 分布範囲が広がる
土 壌 汚 染 発 覚 法
や 条 例に よ る 調査 工
場 廃 止
対策 の 実 施
基準 適 合 確 認
次 の 土 地利 用
廃 止
対策費用を一度に支払う 必要が生じる。
対策方法の選 択 肢 が 少 な い・・・
土壌汚染の拡大に気がつかないまま工場の操業を継続
〇計画的な土壌汚染対策に取り組んでいなかった場合
自主調査の結果を条例 の規定に基づき、届け 出ることが可能です。
持続可能な土壌汚染対策:実践のポイント③
解説 編
専門技術者 専門技術者 土地所有者
土地所有者工場主 工場主
開発事業者 開発事業者 不動産仲介事業者
ディベロッパー等 不動産仲介事業者 ディベロッパー等
コミュニケーション
地域住民 地域住民
施設利用者 施設利用者
施設管理者 施設管理者
持続可能な土壌汚染対策:実践のポイント(まとめ)
原位置浄化は時間を要する ので、操業中からの対策 実施が有利!
特に、自然由来等土壌は、
法令上、盛土利用等が 認められている。
・基準適合土壌分別管理
・掘削範囲の工夫による搬 出量の削減など
形質変更時要届出区域の現状
解説 編
データで見る持続可能な対策
既に、区域指定したまま管理が進んでいる!
4 取組み事例
(1)措置が不要な土地における
「持続可能な土壌汚染対策事例」
事例1.土壌の搬出入をせずに解体・新築工事を実施
事例1.土壌の搬出入をせずに解体・新築工事を実施
・土地の売買において、専門技術者の活用により、基準不適合土壌がある 土地の法制度と「土壌の3R」の考え方を理解できた。
・建物配置の工夫により、土壌の搬出入の抑制(Reduce)につながった。
環境負荷を低減することができた。
事例2.将来的な設備等の維持管理を考慮し、除去対象とする基準不適合土壌の範囲を選択
・将来的な設備の維持管理等の工事まで見据えた計画とすることで、
土地運用後の工事負荷・費用を低減させた。
・基準不適合土壌を残置することで 土壌の搬出入量の抑制
(
Reduce
)につながった。事例2.将来的な設備等の維持管理を考慮し、除去対象とする基準不適合土壌の範囲を選択
事例3.土壌汚染調査の早期実施による設計見直しと効率的な施工の実施
事例3.土壌汚染調査の早期実施による設計見直しと効率的な施工の実施
・関係者とコミュニケーションをとり、早期に土壌汚染の可能性を踏まえた 対策を検討。
・基準不適合土壌の存在にも柔軟に対策(舗装のみ)
(Reduce)できた。
事例5.土壌汚染のある工場跡地をマッチングにより開発
事例5.土壌汚染のある工場跡地をマッチングにより開発
・マッチングにより基準不適合土壌がある土地で開発実績のある開発事業者 を選定。
・利便性を重視する消費者にターゲットを絞ったため(ターゲティング)、
基準不適合土壌が存在する状態での開発が可能。
・基準不適合土壌を搬出することなく(Reduce)、
土地を有効活用。
事例6.措置対象とする基準不適合土壌を選別し、場外搬出土量を削減
事例6.措置対象とする基準不適合土壌を選別し、場外搬出土量を削減
・周辺一帯を含む土地の特徴を理解し、関係者間でしっかり協議した。
・人為由来による基準不適合土壌のみ搬出(Reduce)、埋立地特例区域内 の土壌を有効活用(Reuse)することができた。
事例7.自然由来基準不適合土壌を土木構造物の盛土材料に利用
事例7.自然由来基準不適合土壌を土木構造物の盛土材料に利用
・自然由来土について
基準不適合土壌の処理量を削減(Reduce)できた。
(1)場内で有効利用することを検討(Reuse)
(2)同一地層の分布する現場等への搬出を検討
(2)措置が必要な土地における
「持続可能な土壌汚染対策事例」
事例1.比較的濃度の高い基準不適合土壌
※のみを掘削・搬出
周辺に飲用井戸なし 高濃度
事例1.比較的濃度の高い基準不適合土壌
※のみを掘削・搬出
・措置目標を明確にしたため、土壌搬出を抑制(Reduce)できた。
・基準不適合土壌がある土地での開発実績のある開発業者とのマッチング により、区域内の土壌を利用(Reuse)できた。
事例2.対策工事を早期に実施し、汚染浄化後に土地を売却
操業中から土壌調査、対策を実施
事例2.対策工事を早期に実施し、汚染浄化後に土地を売却
・早期に汚染状況を把握していたので、工場廃止までの時間を有効利用した 措置を選択(Remediation)できた。
・措置費用も削減でき、計画どおり条件に合う開発業者に土地 を売却できた。
事例4.地域要望を踏まえた健康リスクの低減措置の実施
事例4.地域要望を踏まえた健康リスクの低減措置の実施
・地域住民とのコミュニケーションにより、地域の要望に沿った措置対策が実現
・基準不適合土壌の搬出抑制(Reduce)につながった。