第 5 章 日中省エネルギー・環境総合フォーラム調印案件のフォローアップアンケート
1 省エネ等・環境政策の動向
(1) 2014 年に向けた方向性 1) 三中全会での「決定」
習近平体制が自前の総合的改革案を打ち出すとして注目された中国共産党第 18 期中央委員会第 3 回全体会議(三中全会)は、2013 年 11 月 9 日~12 日に開催され、「改革の全面的深化における若 干の重大な問題に関する中共中央の決定」を採択、「経済、政治、社会、文化、生態文明に関する体 制改革を深化させる」、「資源配置における市場の決定的な役割を発揮させる」ことを強調、2020 年 までに重要分野や鍵となる部分の改革について決定的な成果を収めるよう要求した。生態環境に関 する体制改革が盛り込まれたのは今回が初めてである。「決定」全 16 項目のうち、省エネ等・環境 に関する主な内容は次のとおりで、今後の関連政策・措置の指針を示した。
項目 番号
テーマ 内容
1 改革の全面的深化の重大な 意義と指導思想
・資源配置における市場の決定的な役割の発揮
3 現代市場システムの整備加 速
・水等の分野における価格改革推進、競争性のある分野の価格の 開放
6 都市・農村の発展一体化体 制・メカニズムの健全化
・民間資本が特許経営制度を利用して都市インフラ建設に関する 投資や運営に参加することを許可
9 法治中国の建設推進 ・食品、薬品、安全生産、環境保護、労働保障、海域・海島等重 点分野・末端における法執行力強化
14 生態文明制度建設の加速 ・自然資源資産に関する財産権制度や用途規制制度の健全化
・生態環境保護に関するレッドラインの制定
・自然資産に関する貸借対照表の模索、指導幹部に対する離任後 の監査実施、生態環境破壊責任の終審追及制の構築
・資源の有償使用制度と生態環境補償制度の実施
・汚染物質排出許可制の整備、企業・事業単位の排出総量規制制 度の実施
・生態環境破壊の責任者に対する賠償制度の厳格適用、法に基づ く刑事責任の追及
175 2) 中央経済工作会議での「任務」
これを受けて、党中央と国務院が次年度の経済運営方針を定める中央経済工作会議(12 月 10 日
~12 日)は、5 つの任務のうち、
・「産業構造の調整強化」において、「環境保護や安全などの基準の拘束力を強め、法執行を強化 し、生態環境の破壊に対しては厳罰に処す」「戦略的新興産業の発展強化」
・「民生保障・改善活動の適正実施」において、「環境対策や生態保護に関する活動、投資、政策を 強化し、地域による共同の取組を強化し、発生源対策を強化し、大気汚染防止措置を真に実行に 移す」ことを提起。
生態文明の建設加速と、持続可能な発展推進、新型都市化の推進と都市化の質の向上に力を入れ るとした。
3) 全人代政府活動報告における 2014 年省エネ・環境関連重点活動
第 12 期全国人民代表大会第 2 回会議での李克強総理の政府活動報告では、2014 年の重点活動と して 9 番目に「生態文明の美しい故郷作り」が掲げられた。概要は次のとおり。
〈政府活動報告〉2014 年度の重点活動(9)「生態文明の美しい故郷作り」
汚染対策強化にいっそう 力を入れる
・スモッグが頻繁に発生する大都市と地域を重点に、微小粒子状物質
(PM2.5)と吸入性粒子状物質(PM10)への対策を突破口として、産 業構造、エネルギー効率、排ガス、砂塵等重要要素をしっかり押さ え、政府・企業・大衆が共同で参画する新たな仕組みを整え、地域 間大気汚染共同対策を実行に移し、大気汚染対策行動計画を踏み込 んで実施する。
・今年度は、小型石炭ボイラーを 5 万台廃棄し、石炭火力発電所の発 電ユニット 1,500 万キロワット分に脱硫装置を、1 億 3,000 万キロワ ット分に脱硝装置を、1 億 8,000 万キロワット分に集塵装置を取り付 け、「黄標車」(排ガス基準をクリアしていないことを示す黄色いラ ベルが貼られている車)や旧型車を 600 万台廃棄し、全国で国家第 4 段階基準を適合する自動車用軽油を供給する。
・「清潔水」行動計画を実施し、飲用水水源の保護を強化し、重点流域 の水質汚濁対策を進める。土壌復元プロジェクトを実施する。農業 の面源汚染対策を行い、美しい農村づくりに取り組む。
エネルギーの生産・消費 方式の変革を推進
・省エネ・排出削減にさらに力を入れ、エネルギー消費総量を抑制 し、今年度は GDP1 単位当たりのエネルギー消費量を 3.9%以上削減す る。二酸化硫黄排出量と科学的酸素要求量(GOD)はいずれも 2%減少 させる。
・非化石エネルギーによる発電の割合を引き上げ、スマートグリッド の整備と分散型エネルギーの導入を進め、風力発電・太陽光発電を
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奨励し、水力発電所・原子力発電所の建設をいくつかスタートさせ る。
・天然ガス、炭層ガス、シェールガスの探査・採掘・応用を強化す る。
・資源性産品の価格改革を推し進め、家庭用水道・ガスの累進従量料 金制を確立し、完全なものにする。
・建物の省エネ性能の向上や補助金交付による省エネ製品購買促進プ ロジェクトを実施し、クリーン生産、グリーン・低炭素技術、循環 型経済を発展させ、気候変動への対応能力を高める。
・水や原材料の節約、資源の総合利用を強化する。省エネ・環境保護 関連の技術と製品の開発・普及を急ぎ、省エネ・環境保護産業を活 気あふれる成長産業に育て上げていく。
4) 2014 年度国民経済・社会発展計画の省エネ・環境分野の主要任務
全人代における「2014 年国民経済・社会発展計画案」では、2014 年の省エネ・環境分野の主要任 務を抜き出すと次のとおりである(国家発展・改革委員会徐紹史主任報告/番号は報告の項目番号)。
(1) ⑤資源関連製品などの価格改革…民生用水道・ガスの累進従量料金制を確立、健全化。主 要汚染物質排出にかかわる料金基準と一部の供水価格引き上げ。
(2) ②政府投資構造の最適化…(中央予算枠内の投資先として)省エネ・排出削減と環境対策 等分野が含まれる。
(6) ②生産能力過剰の矛盾解消…エネルギー消費率や環境保護、労働安全に係わる業種参入 基準引き上げ、厳格実施。④インフラ産業強化…エネルギー総消費量を合理的に抑制、
エネルギー消費構造を改善、クリーンエネルギーの開発・利用を奨励。
(8) 生態文明建設の着実な推進
①制度上の保障を強化する。エコ文明建設のさらなる推進と気候変動の対応強化に関する 政策を検討し、関連文書の作成に取り組む。エコ文明に関する先行的モデル事業を繰り 広げるとともに、生態補償の仕組みの確立、健全化をはかる。汚染者負担(PPP)・鉱産資 源開発補償制度、生態環境保護に関する責任追及制度と環境損害賠償制度を完全なもの とする。生態系の管理・規制における警戒ライン制度と企業を対象とした環境保護信用 評価制度を確立する。
②省エネ・排出削減を力強く推進する。省エネ・排出削減目標についての責任制と問責制 を強化し、エネルギーの総消費量と消費率の「二つの抑制」の実態に対する査定を進め る。省エネ・排出削減重点プロジェクトを実施し、工業や建築、交通、公共機構などの 重点分野における省エネ・排出削減への取り組みとそれに対する監督・管理を強化し、
1 万社の企業を対象とする省エネ・低炭素化キャンペーンを徹底的に繰り広げ、エネル ギーを大量に使用する重点企業・事業体のエネルギー消費の状況を把握するオンライン・
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モニタリングシステムの整備を速める。トップランナー方式の導入を開始し、政府が投 資した公益的建築物や建築面積 2 万平方メートル以上の公共建築物に対してグリーン建 築基準を強制的に適用する。省エネ・環境保護産業の発展促進に関する意見を貫徹・実 行する。省エネ・排出削減科学技術特別キャンペーンを推し進めるとともに、全国民に よる省エネ・排出削減キャンペーンを続けていく。
③循環型経済を大いに発展させる。循環型経済戦略と近い将来における行動計画を確実に 実施に移す。循環型経済のモデル都市(県)づくりを繰り広げ、産業パーク(ゾーン)
の循環型化につながる改良をしっかりと行い、再生可能資源のリサイクルの産業化を加 速する。引き続き国家「都市鉱山」(都市家電ごみの中に存在するレアメタル等のリサイ クル)モデル基地の整備や、生ごみの再資源化と無害化処理の試行作業を進め、資源総 合利用「双百プロジェクト」(資源総合利用のモデル基地 100 ヵ所と中堅企業 100 社の育 成)の第 2 期目計画を実施し、食料・綿花の主要生産区におけるワラの総合的利用を推 進する。鉱業開発の秩序を整頓し、グリーン鉱業を発展させる。海水淡水化のモデル事 業を展開する。
④環境対策とエコ建設にしっかりと取り組む。大気汚染防止・除去行動計画の実施にいっ そう力を入れ、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、珠江デルタなどの諸地域を重 点に地域間の共同予防・抑制を強化するとともに、脱硫・脱硝・集塵の技術改良や石油 精製企業のグレードアップ・改造を奨励する経済政策を充実させる。引き続き重点流域・
地域における水環境の総合対策を推し進め、きれいな水を取り戻すための行動計画を策 定・実施する。土壌汚染対策を強化する。都市部における汚水・ゴミ処理施設などのプ ロジェクト建設を加速する。森林・草原資源の保護と整備を行い、北京・天津周辺の風 砂発生源地区や、カルスト地域の石漠化、黄土高原・チベット高原など重点地域の総合 対策の実施を推進する。クリーンな生産を全面的に押し広めていく。
⑤気候変動対策に関わる諸般の活動にしっかり取り組む。低炭素省・自治区や低炭素都市、
低炭素産業パーク、低炭素コミュニティーなどのモデル事業をいっそう推し進めるとと もに、全国の温室効果ガス排出権取引市場と温室効果ガス排出量の統計・算定システムの 確立を検討し、気候変動に対応する能力の向上に力を入れる。国の気候変動対応戦略を徹 底化する。気候変動対策をめぐる国際的な話し合いに建設的な姿勢で参加するとともに、
気候変動対応面での国際交流と実務的な協力を引き続き行う。
(2) 「大気汚染防治行動計画」
2013 年の省エネ・環境分野で最も注目されるのは大気汚染防止に関する一連の対策が打ち出され たことである。国務院は 6 月、「大気汚染防治 10 カ条措置」を公布、9 月にはこの 10 条に基づきさ らに 35 項目の具体的措置を明示した「大気汚染防治行動計画」を発表し、特定地域と業種に対して それぞれ異なる規制・管理が指示された(中国では「大気国十条」と略称)。10 月には環境保護部