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在とその重症度を評価することにあると考えられる 冠動脈硬化重症度は冠動脈石灰化量と相関すると考えられており 冠動脈石灰化を定量化したのが Caスコアである Caスコアに関してはAHA/ACC のコンセンサスが示されているので参考にしていただきたい ( 表 1) 1) Caスコアの予後因子としての有用

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はじめに

 近年多列化された検出器をもつCT(MDCT)が登場し、 その急速な性能の向上および画像再構成法の進歩により 冠領域においても冠動脈病変の描出能は飛躍的に向上 し、その非侵襲性・簡便性も相まって日常臨床の場へ広 く浸透してきた。その結果、心臓CTの活用範囲は冠動 脈病変のスクリーニングはもとより、プラークの性状評 価や、治療後(ステント留置後、バイパス術後や積極的 薬物介入後など)のフォローおよび予後評価に至るまで 多岐に及ぶようになり、日常診療における虚血性心疾患 診療のあり方を大きく変化させることとなった。  本稿では冠動脈疾患のリスク分類としてCaスコア リングの意義と、心筋梗塞を含む急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)のリスク分類として不安定プ ラークを示唆するCT所見およびプラーク破綻のリスク について概説する。

Caスコアリングの意義

1.Caスコアリングの意義  冠動脈の石灰化は粥状動脈硬化のプロセスで生じる ため、正常血管壁には生じないと考えられている。した がって、冠動脈石灰化を評価する意義は冠動脈硬化の存

3.心臓CT所見と心筋梗塞のリスク

川崎 友裕,福山 尚哉,古賀 伸彦

医療法人天神会 新古賀病院 心臓血管センター 循環器科

Risk of Acute Myocardial Infarction Detected by Multi-Slice

Computed Tomography

Tomohiro Kawasaki, M.D., FACC, Takaya Fukuyama, M.D., Nobuhiko Koga, M.D. Summary

 Coronary plaque instability has been shown to play a significant role in the development of acute coronary syndrome.The ultimate goal of interventional cardiology is the early detection of vulnerable plaques with the potential to cause acute coronary syndrome (ACS) in order to prevent the onset of ACS.However,it has been considered difficult to detect vulnerable plaque that seemed likely to cause ACS using conventional coronary angiography.Therefore,the emergence of a non-invasive diagnostic tool capable of detecting such vulnerable plaques has been highly anticipated.

 Recently,the development of multislice computed tomography (MSCT) has shown a great potential to evaluate coronary arteriosclerosis using the coronary calcium score and there is also great potential to detect vulnerable plaques,which are characterized by positive plaque remodeling,low CT density and spotty calcification on MSCT, suggesting the potential to induce ACS.

 In this session,I will provide an outline of the importance of coronary Ca scoring as a risk classification for coronary arteries disease,discuss the characteristics suggesting vulnerable plaques on MSCT as a risk classification for ACS and evaluate the risk of plaque rupture based on these findings.

Department of Cardiology, Cardiovascular Center, Shin-Koga Hospital

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日獨医報 第55巻 第 1 号 2010 在とその重症度を評価することにあると考えられる。冠 動脈硬化重症度は冠動脈石灰化量と相関すると考えられ ており、冠動脈石灰化を定量化したのが、Caスコアで ある。Caスコアに関してはAHA/ACC のコンセンサス が示されているので参考にしていただきたい(表1)1) Caスコアの予後因子としての有用性をみたメタ解析(図 1)では、冠動脈石灰化がみられない群に比し、冠動脈石 灰化が認められる群では虚血性心疾患死もしくは心筋梗 塞発症の危険度が 4.3 倍あるとされ、冠動脈石灰化が予 後因子として重要な情報を与えることがわかる2)。心臓 CTではこのCaスコアの測定が可能であり、Agatstonら が発表したスコアリングがよく使われている。Caスコ アの算出はワークステーションで半自動的に行い、1 症 例あたり10 分以内で解析可能である3)  石灰化スコアへの期待としては、無症候例での中等度 リスク例における冠動脈疾患リスク予測、非典型胸痛例 での冠動脈疾患可能性判定、CTAとの組み合わせによ る診断能向上などが挙げられる。一方で石灰化スコア の問題点は、わが国での認識が低かったため日本人での データベースがないことであり、今後は日本人でのデー タベースの構築が急務であると思われる。以下に当院に おいて胸痛症状を主訴に心臓CT検査を行った連続1,527 症例(男性862人、女性665人、平均年齢66±12歳、透 析患者、冠動脈ステント留置術後、冠動脈バイパス術後 症例を除く)の年齢と石灰化スコアの関係を図2に示す。 このグラフからもわかるように、冠動脈硬化症の指標と してのCaスコアは年齢とともに増加していくため、Ca スコアを冠動脈疾患の判定予測として用いる場合は、年 齢別の域値を設定する必要がある。図3に冠動脈病変(> 75%)のスクリーニングのためのCaスコアのCutoff値を 年代別に検討した結果を示した。その結果、50歳未満、 50〜69歳および70歳以上の年代でのCutoff値はそれぞ れ9、36、78であり、このCutoff値による冠動脈病変(> 75%)のスクリーニング精度は感度、特異度ともに60% から80%程度であった。またいずれの年代でのAUC(area under the curve)は70%台であり、中等度のスクリーニ ング精度があるといえる。   2.CaスコアはACS診断に有用か  通常、Caスコアは慢性期の冠動脈疾患患者の分類に 用いられているが、前述するようにCaスコアの予後因 子としての有用性をみたメタ解析では、冠動脈石灰化が 認められない群に比し、認められる群では虚血性心疾患死 もしくは心筋梗塞発症の危険度が 4.3 倍あるとされる2) またGreenlandらはFramingham分類によるリスクスコ アとCaスコアとを組み合わせて冠動脈疾患と冠動脈イ ベント発症の関連についての報告を行っており、Caス コアが300を超える患者においてはACS発症の危険性が

Interpretation and Recommendations for CT Heart Scanning and CACP Scoring

Adapted from ACC/AHA expert consensus document on EBCT for the diagnosis and prognosis of CAD.

1. A negative test(score=0)makes the presence of atherosclerotic plaque, including unstable or vulnerable plaque, highly unlikely. 2. A negative test(score=0)makes the presence of significant luminal obstructive disease highly unlikely(negative predictive

power by EBCT on the order of 95% to 99%).

3. A negative test is consistent with a low risk(0.1% per year)of a cardiovascular event in the next 2 to 5 years. 4. A positive test(CAC>0)confirms the presence of a coronary atherosclerotic plaque.

5. The greater the amount of coronary calcium, the greater the atherosclerotic burden in men and women, irrespective of age. 6. The total amount of coronary calcium correlates best with the total amount of atherosclerotic plaque, although the true

"atheroscle-rotic burden" is underestimated.

7. A high calcium score(an Agatston score>100)is consistent with a high risk of a cardiac event within the next 2 to 5 years(>2% annual risk).

8. Coronary artery calcium measurement can improve risk prediction in conventional intermediate-risk patients, and CACP scanning should be considered in individuals at intermediate risk for a coronary event(1.0% per year to 2.0% per year)for clinical decision-making with regard to refinement of risk assessment.

9. Decisions for further testing(such as stress testing or cardiac catheterization)beyond assistance in risk stratification in patients with a positive CACP score cannot be made on the basis of coronary calcium scores alone, as calcium score correlates poorly with stenosis severity in a given individual and should be based upon clinical history and other conventional clinical criteria.

(文献 1より引用) 表1 冠動脈Caスコアに対するAHA/ACCのコンセンサス

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図1 冠動脈Caスコアの予後因子に関するメタ解析 冠動脈石灰化がみられない群に比し,冠動脈石灰化が認められる群では虚血性心疾患死もしくは心筋梗塞発症の危険度が 4.3 倍であり,冠動 脈石灰化が予後因子として重要な情報を与えることがわかる. (文献 2より引用) 0.01 0.1 1 10 100 0.01 0.1 1 10 100 Study(Year) CACS

Range Effect(95% CI) Higher Risk Low Risk P Events / N Kondos(2003) Greenland(2004) Arad(2005) Taylor(2005) Vliegenthart(2005) LaMonte(2005)     Women      Men Summary RR Ratio 4~30.5 31~169 170~1,700 1~100 101~299  300 1~100 101~399  400 1~9 10~44  45 101~400 401~1,000 >1,000 1~16 17~112 113 1~38 39~249  250 1.8 1.5 3.7 1.5 2.0 3.5 1.9 10.5 26.5 2.1 10.5 25.4 3.5 5.6 10.8 5.5 9.2 12.9 1.1 12.3 22.1 4.3 (0.8~3.8) (0.7~3.2) (1.9~7.3) (0.8~2.9) (0.98~4.0) (1.9~6.3) (0.8~4.3) (4.9~22.3) (12.8~54.8) (0.1~43.2) (1.5~73.9) (5.0~129.9) (1.3~9.7) (2.1~15.3) (4.2~27.7) (1.2~24.5) (2.5~34.3) (3.8~44.0) (0.3~4.3) (3.7~41.6) (6.8~71.9) (3.5~5.2) 15/1,633 16/2,045 27/1,424 21/321 15/171 34/221 20/1,973 38/686 63/450 0/120 2/120 5/124 10/425 10/269 14/196 3/379 5/376 7/376 6/4,968 19/1,382 34/1,380 364/19,039 12/2,349 12/2,349 12/2,349 14/316 14/316 14/316 8/1,512 8/1,512 8/1,512 2/1,261 2/1,261 2/1,261 6/905 6/905 6/905 4/2,780 4/2,780 4/2,780 3/2,692 3/2,692 3/2,692 49/11,815 0.12 0.26 <0.0001 0.24 0.053 <0.0001 0.12 <0.0001 <0.0001 0.63 0.003 <0.0001 0.008 <0.0001 <0.0001 0.012 <0.0001 <0.0001 0.91 <0.0001 <0.0001 <0.0001

Lower Risk Higher Risk

図2 年齢とCaスコアの関連 新古賀病院において胸痛症状を主訴に心臓CT検査を 行った連続1,527症例(男性862人,女性665人,平均 年齢66±12歳,透析患者,冠動脈ステント留置術後, 冠動脈バイパス術後症例を除く)での検討.Caスコア と年齢には正の相関関係があり,Caスコアは加齢と ともに増加していくことがわかる. 2,400 2,200 2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 20 30 40 50 60 70 80 90 Ca score=-197.0384+4.9229565×age R2=0.055758 P<0.0001 C A ス コ ア 年齢

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日獨医報 第55巻 第 1 号 2010 高いと述べている4)。さらにErbelらは2009年のACCに おいて、中等度リスクの患者では冠動脈Caスコアが最 も高い1/4群の者は最も低い1/4群の者と比較し心筋梗塞 の発症または心臓死の発生オッズ比が4.26倍となり、標 準的な心血管リスクファクター(米国コレステロール教 育プログラムによる)を用いた検討結果(オッズ比3.19) よりも予測因子として優れていることを報告するなど、 ACS発症との関連についての報告は散見される。  しかし、Caスコアは、年齢や性差などによる相違が 大きく(絶対値が変化する)閾値が定めにくい、特異度、 陽性病変的中率(positive predictive value:PPV)がとも に低い、機能的な情報を供給できない、冠動脈疾患の既 往があっても側副血路が形成されているような患者につ いては評価不可能かつ無意味なものであるなど、問題点 も多い。これらに加え、Caスコアとプラークの不安定 性の関係については異論が多いことから、ACSの診断 に関してCaスコアには定まった評価はないのが現状で ある。

不安定プラーク

 われわれ循環器科医、特に冠動脈疾患治療を専門とし ている者にとっての究極の目標は急性心筋梗塞をはじめ とするACSの発症予防であり、その発症を如何にして 未然に察知し得るかが大きな課題であった。従来から冠 動脈疾患の診断法のゴールドスタンダードはカテーテル を用いた侵襲的冠動脈造影であったが、こと心筋梗塞に 関しては、その約70%が冠動脈造影上は50%以下の軽 度〜中等度狭窄病変から発症することが示され5)、心筋 梗塞の予測においては狭窄度のみを反映する冠動脈造影 検査では限界があることが認識されることとなった。   1.不安定プラークの概念  不安定プラークの概念については2003年にNaghavi らが急性の冠動脈イベントや突然死の原因として考えら れる異なったさまざまなタイプのプラークがあることを 報告しているが6)、一般的にはその中で挙げられている

rupture-prone vulnerable plaqueがACSに移行しやすい 不安定プラークの形態的特徴として認識されている(図 4)。このrupture-prone vulnerable plaqueは組織学的には、 マクロファージが多数集積する65μm以下の薄い線維性 皮膜に覆われた大きな脂質コアを有する陽性リモデリン グしたプラークで、neovascularization(vasa vasorum の発達)が認められると報告されている7)  一方でプラークの進展過程では、プラークはその面 積が血管面積の40%を越えるまでは血管内腔を保持 するように外側方向へ増大することが知られている (compensatory enlargement)8)ことから、上述するよう 図3 年齢別Caスコアの至適Cutoff値 冠動脈病変(>75%)のスクリーニングのためのCaスコアの年代別の至適Cutoff値を示す.Cutoff値は年代とともに高くなり,年代別に Cutoff値を設定することにより,どの年代もAUC 0.73以上の中等度のスクリーニング精度を保つことができる. 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 1-特異度 偽陽性 真 陽 性 感 度 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 1-特異度 偽陽性 真 陽 性 感 度 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 1-特異度 偽陽性 真 陽 性 感 度 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 50歳未満 Cutoff値 9 Sensitivity 60.9% Specificity 82.0% AUC 0.73796 50歳以上70歳未満 Cutoff値 36 Sensitivity 69.6% Specificity 71.9% AUC 0.75849 70歳以上 Cutoff値 78 Sensitivity 78.8% Specificity 61.4% AUC 0.73786

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なACSを発症するような冠動脈造影上50%以下の軽度〜 中等度狭窄病変の場合、すでに多量の脂質コアを有する 陽性リモデリングしたプラークが外側に形成されていた 可能性が考えられる。さらにこのようなプラークの破綻 は無症候性に多発的に生じていることも知られている9) すなわちACSを発症するかもしれない不安定プラーク の診断には冠動脈病変の存在する動脈壁の性状診断が不 可欠であり、動脈壁の性状診断が可能な心臓CTへの期 待が大いに高まっていった。   2.不安定プラークを示唆するCT所見  近年、心臓CTの飛躍的な画像描出能の向上により、 これらの特徴をもつプラークの存在を非侵襲的に同定す ることが可能となった10)。64列冠動脈CTによる50%以 上の狭窄病変の検出に関する診断精度は感度89%、特 異度96%、陽性病変的中率76%、陰性病変的中率98% と報告され11)、プラーク診断に威力を発揮することは異 論のないところである。  Motoyamaら12)は 心 臓CTに よ るACSの 責 任 冠 動 脈 病変では安定型狭心症の責任病変に比較して陽性リモ デリングプラーク、CT値<30HUのsoft plaqueおよび spotty calcificationなどの形態学的特徴が有意に多く 認 め ら れ た と し、Kitagawaら13)はACSの 責 任 病 変 だ けではなく、ACS患者自体が非ACS患者と比較しこ れらの形態学的特徴をもつプラークを多く有すること を報告した。さらに2年以上の追跡調査によりこのよ うな特徴をもつプラークがACSへ移行するハイリスク であることがMotoyamaらにより示された14)。また不 安定プラークでの組織学的特徴として挙げられている neovascularization の描出に関しても、心臓CTで描出で きる可能性が示唆されている15)。  3.プラーク破綻のリスク  ACSへ移行する可能性のある破綻しやすい脆弱(不安 定)なプラークは、形態学的特徴として、65μm以下の 薄い線維性皮膜に覆われている、大きな脂質コアをも つ、病変部分が陽性リモデリングしていることなどが認 識されており7、16、17)、さらに組織学的にはプラーク内に 脆弱なneovascularizationを認め、薄い線維性皮膜には マクロファージが多数浸潤し、matrix metalloproteinase (MMP)が発現していることが、破綻しやすいプラーク の特徴として挙げられている7)。また、これらの陽性リ モデリングプラークではプラークの容積が増大するため さらにプラーク破綻の危険性にさらされることも知られ ている18)。以下にACSへ移行した示唆に富む2症例を提 示する。  症例1は73歳の男性である。 複数の冠危険因子と非特 異的胸部症状の原因精査目的で心臓CTによる冠動脈の 評価を行った。その結果、図5Aのように84%のプラー ク面積を有するCT値の低い(最低CT値−36HU)陽性リ モデリングしたプラーク病変と、spotty calcificationが 認められた。プラークの性状は前述する不安定プラーク Normal Rupture-prone

Vulnerable Plaque Ruptured / HealingVulnerable Plaque Vulnerable PlaqueErosion-prone Vulnerable PlaqueEroded Intra-plaque HemorrhageVulnerable Plaque With Vulnerable Plaque WithCalcified Nodule Vulnerable PlaqueCritically Stenotic

Large Lipid Core Collagen Non-Occlusive Clot Dysfunctional Endothelium Smooth Muscle Cells Proteoglycans Platelets Non-Occlusive Mural Thrombus / Fibrin

Leaking Vasa Vasorum / Angiogenesis Calcium Nodule Extensive Calcification Old Thrombus Intact Cap Ruptured Cap Thin Cap Macrophage

図4 Different types of vulnerable plaque

一般的には上記に挙げられているrupture-prone vulnerable plaqueがACSに移行しやすい不安定プラークの形態的特徴として認識されている. (文献 6より引用)

(6)

日獨医報  第55巻  第 1 号 2010 を示唆するCT所見の特徴と合致し、さらに高血圧・糖尿 病・高コレステロール血症を有していたが、この時点で 明らかな虚血は認められなかったため、厳格な危険因 子管理下に経過観察としていた。しかし実際には投薬 を自己中断されており、1年後に胸痛症状が再念し繰り 返すようになったため心臓CTの再検査を行ったところ、  図5Cのようにプラーク部分には潰瘍形成とプラーク容 積の増大による内腔の狭小化の進行が認められた。病変 形態よりプラーク破綻に伴う不安定化と考えられ治療 を予定していたが、冠動脈CT検査から数日後に問題の プラーク部分が閉塞し、急性心筋梗塞を発症してしまっ た(図5B)。治療時のIVUSによる病変性状の観察では ほぼ全周性の減衰エコーを伴う大きくリモデリングし たプラークが認められ、非常にlipid richなプラークで あろうと推察された。本症例では前述するようなハイリ スクプラークの様相を呈していたにもかかわらず、積極 的薬物治療が行えなかったため心臓CTによる早期発見 の甲斐なく悔むべき結果となってしまった症例であっ た。  症例2は59歳、男性、陳旧性下壁梗塞(#4PDの閉塞 に対してPOBA施行の既往あり)の既往がある。冠危険 因子に高脂血症(LDL 131mg/dL、HDL 36mg/dL)、高 血圧症、糖尿病がある。2005年12月、冠動脈バイパス 術(LITA-LAD、SVG-D1-OM)を施行。術後の心臓CT 検査では右冠動脈全体に軽度のプラークを伴うspotty  calcificationが散在している程度であったため(図6A)、 術後は高血圧、糖尿病に対して内服加療が行われてい た。しかし18ヵ月後に労作時胸痛症状が頻回に生じる ようになり、心臓CT検査の再検で右冠動脈近位部に亜 完全閉塞病変を認めた(図6B)。冠動脈造影検査では心 臓CT同様に右冠動脈近位部で99%造影遅延ありであっ たため、ひきつづきステント留置術を行った。本症例の 場合、初回心臓CTにおける進行部位の壁性状はspotty  calcificationは認められていたものの、CT値3HUのごく 軽度のプラークが認められるのみでRemodeling Index (RI)は0.93とむしろ陰性リモデリングした形態であっ た。  この2症例の違いに示されるように、不安定プラーク の形態的特徴として挙げられている低いCT値を有する 陽性リモデリングしたプラークは、プラークの進行過程 において代償性リモデリングが働いている比較的成熟し た段階の状況のものであり19)、心臓CTでも形態判断は 図5 症例1 73歳,男性 2008 年 2 月,右 冠 動 脈 近 位 部 に プラーク面積 84%,低い C T 値(最低 C T 値− 36HU),spotty calcificationを伴う陽性リモデリング(Remodeling Index 1.6)した, いわゆる不安定プラークを認める(A).1年後に不安定化し,再検査ではプラーク 部分には潰瘍形成とプラーク容積の増大による内腔の狭小化の進行が認められた (B).その数日後に問題のプラーク部分が閉塞し,急性心筋梗塞を発症した(C). 2008/2/13 2009/2/10 2009/2/22 血管面積 33.8mm2 内腔面積 5.4mm2 プラーク面積 28.4mm2 CT値 -36~15HU Remodeling Index 1.6   血管面積 33.8mm2 内腔面積 5.4mm2 プラーク面積 28.4mm2 CT値 -36~15HU Remodeling Index 1.6   血管面積 34.3mm2 内腔面積 4.1mm2 プラーク面積 30.2mm2 A B C

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容易であるが、一方でプラーク形成の初期段階では症例 2で示したようにプラーク量も少なく、形態的特徴から 将来的なACSの予測をするのはきわめて困難ではない かと思われる。ここに現時点でのCT単独による不安定 プラークの予測の一つの限界がある。    4.心像CTによる不安定プラーク診断の限界と   今後の展望  現在報告されている不安定プラークの形態的特徴は主 にACSを発症した時点での安定型狭心症との比較所見 から得られたものであるため、言い換えれば不安定プ ラークの終末的所見であるといえる。しかし重要なこと は、不安定プラークがACSを発症する前にそのプラー ク自体が脆弱かどうかを判断し、何らかの積極的治療を 介入させなければACS発症は予防できないということ である。このためには不安定プラークの要素をもつ中等 度狭窄以下のプラーク症例を集積し、長期間の観察を行 うことが必要である。現在この目的のための全国規模の 多施設共同研究が進行中であり、この調査の中から前述 してきた既知の不安定プラークの特徴以外の、不安定プ ラークを同定できるような何らかの形態的特徴や傾向が 得られることが期待されている。  また現在主流となっている64列CTをはじめ最大320 列CTに至るまで、実臨床で稼働しているほとんどの心 臓CTの空間分解能は0.5mm程度である。このため、不 安定プラークで重要な要素と考えられている65μm以下 の薄い線維性皮膜やマクロファージの浸潤などは検出困 難であり、心臓CTによる不安定プラークの形態学的評 価の一つの限界と考えられる。これに関しては現在心 臓CTの空間分解能の更なる向上のためdual energyによ る撮影方法や検出器のフラットパネル化などが開発中で あり、今後空間分解能の飛躍的な向上が大いに期待さ れる。  一方で他のモダリティ、たとえば心臓MRIによるプ ラークイメージングとの併用などにより不安定プラーク の検出精度を向上させることも可能であるかもしれな い。MRIによる不安定プラークイメージングは頸動脈 の領域では広く認識されているが20)、われわれの施設で はMRIを用いたプラークイメージングに早期から取り 組んでおり、頸動脈撮影と同様のシーケンスで冠動脈に おけるプラークイメージングに成功、報告した21)。この MRIで検出された不安定プラークと考えられるプラーク RI=0.93 3HU -3HU RI=1.23 18ヵ月後 11.1mm2 1.40mm2 28.74mm2 23.37mm2 13.92mm2 25.5mm2 27.5mm2 図6 症例2 59歳,男性 A 初回心臓CT検査では右冠動脈全体にごく軽度 のプラークを伴うspotty calcificationが散在し ていた. B 18ヵ月後.症状が不安定化し,心臓CTの再 検では右冠動脈近位部の亜完全閉塞を認め た.初回心臓CTでの同部位の所見は,spotty  calcificationは認められていたもののRIは0.93 で,CT値3HUのごく軽度のプラークが認めら れるのみであった B A

(8)

日獨医報 第55巻 第 1 号 2010 は非造影T1強調画像にて高信号プラーク(hyperintense plaque:HIP)として描出され、ACSの病変部分で有意に 多く認められ、CTでいわれているような不安定プラー クとしての特徴を高率に有していた22、23)。前述した ACS(AMI)に移行した症例1ではプラーク指摘時の図 5Aの時点で、心臓CTで指摘されていた右冠動脈近位部 の陽性リモデリングしたプラークに一致して心臓MRI ではHIPが認められており、将来的にACSへ移行する可 能性の高い不安定なプラークとして認識されていた(図 7)24)。このように複数のモダリティから得られた所見 の併用評価により不安定プラークの検出精度を向上させ る可能性があるかもしれず、期待は大きい。

まとめ

 われわれ循環器医、特に冠動脈疾患治療に携わる者に とってACSの発症予防は究極の目標の一つである。心 臓CT時代を迎えた今日、冠動脈壁の性状評価が可能と なり、冠動脈狭窄病変のみならずさまざまな段階のプ ラークが検出、性状評価がなされるようになってきた。 その中でACS病変・患者での成熟したプラーク所見もあ る程度確立されてきたが、一方で心臓CTによる不安定 プラークの形態学的評価の限界もみえてきた。心臓CT の空間分解能の更なる向上のための技術開発が現在も 進行中であり、近い将来、形態学的評価の限界が克服さ れることを大いに期待したい。また今回示したMRIな ど他種のモダリティによる評価の併用により、不安定プ ラーク検出が向上する可能性についても期待がもたれる ところである。 【参考文献】

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MSCT CMR CT value: -36 HU PMR 1.09 図7 症例1におけるhyperintense plaque(HIP) AMIに移行した症例1では,プラークが指摘された図5Aの時点 で心臓CTにより指摘されていた右冠動脈近位部の陽性リモデリ ングしたプラークに一致して,心臓MRIでは明瞭なHIPが認めら れていた. (文献 24より引用)

(9)

score combined with Framingham score for risk prediction in asymptomatic individuals.JAMA 291:210-215,2004 5) Falk E,Shah PK,Fuster V:Coronary plaque disruption.

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参照

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