博士学位論文審査報告書
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(2) を十分に積んでいる男子大学生9名(競泳群)とオーシャンスイムのトレーニングを 十分に積んでいる男子大学ライフセーバー9名であった。試技は 50m 室内プールにお いて行われ、被験者には実際のサーフレースのレースペースに合わせるために 50m を 35 秒のペースで泳がせた。 その結果、ライフセーバーのスイミングフォームに関して、①クロール泳では、競 泳選手に比べてエントリー+キャッチ局面時間比率が有意に小さく、プル局面時間比 率が有意に大きかった。また、指先における進行方向速度の最小値(後方に水を押す 際の手の速度の最大値)が、1 ストロークの早い時点で現れていた。②オーシャンス イムでは、クロール泳に比べてエントリー+キャッチ局面時間比率が大きく、また、 平均値に有意差は見られなかったものの、多くの被験者が入水後に手を上方へ移動さ せてから後方にかきはじめていた。このストローク特性は、水を多く捉えてヘッドア ップ動作を行うためのものと考えられた。さらに、ストロークの前半で前方確認動作 を行うことから、進行方向速度の最小値が、クロール泳に比べて 1 ストロークの遅い 時点で現れることが明らかとなった。 第4章では、「研究課題2」として、両腕のストロークコーディネーションに及ぼ すオーシャンスイムの影響について検討した。被験者はオーシャンスイムトレーニン グを十分に積んでいる男子大学ライフセーバー12 名とした。試技は流水槽プールにお いて行われ、被験者は実際のサーフレースでのレースペースに合わせるために、50m を 35 秒のペースで、クロール泳とオーシャンスイムの2試行を行った。 その結果、ライフセーバーがオーシャンスイムを行う際には、①クロール泳に比べ てストローク頻度を高くし、ストローク長を短くしていることが明らかとなった。ま た、オーシャンスイムでは、非呼吸側に比べて呼吸側の腕における非推進局面時間比 率およびエントリー+キャッチ局面時間比率が有意に大きかった。これらはヘッドア ップ動作を行うためにより多くの水を捉える必要があることによると考えられた。一 方、②ストロークコーディネーションに有意差は見られず、ライフセーバーはクロー ル泳とオーシャンスイムにおいて、同様に左右対称的なストロークコーディネーショ ンを示しており、常に推進局面が生じるように腕を動かしていると考えられた。 第5章では、「研究課題3」として、オーシャンスイム時の左右のストロークに及 ぼす泳速度の影響について検討した。被験者はオーシャンスイムトレーニングを十分 に積んでいる男子大学ライフセーバー10 名とした。試技は 50m 室内プールで行われ、 被験者はクロール泳とオーシャンスイムにおいて、両腕の動きを撮影するために、そ れぞれ左右方向からの2回の全力泳と2回の 80%泳を行った。 その結果、泳速度を上げた際に、①クロール泳ではストロークに変化がみられたが、 オーシャンスイムではクロール泳に比べてその変化は小さかった。②進行方向の最大 値においては、オーシャンスイムではヘッドアップ動作を行うために、泳速度を上げ ても、呼吸側では手を入水した後の前方への移動距離は長く、推進効率の低いストロ ークを行っていたが、非呼吸側では 80% 泳の時から効率の良いストロークを行って おり、速度上昇に伴う変化はみられなかった。このように、オーシャンスイムでは呼 吸側と非呼吸側におけるストロークの特徴がクロール泳とは異なることや、泳速度を 上げた際にもクロール泳に比べてストロークをあまり変化させないことが明らかとな 2.
(3) った。 第6章の「総合討論」では、オーシャンスイムに特徴的なヘッドアップ動作を行う ために、①手を入水後に上方へ移動させるとともにエントリー+キャッ局面時間比率 を大きくしていること、②両腕のストロークコーディネーションは左右対称であった が、呼吸側の腕では非呼吸側に比べて非推進局面時間比率を大きくしていること、③ 泳速度を上げても、局面時間や時間比率を大きく変化させないこと、呼吸側の腕では 手を入水した後の前方への移動距離を変化させていないことや、非呼吸側では 80%泳 から効率的なストロークを行っていることについて、総合的な論議を展開している。 そして、これらの結果から、オーシャンスイムを指導する際には、呼吸側の腕では入 水後に手を上方へ移動させ、前方への移動距離と時間を長くして水をしっかりと捉え ることでヘッドアップ動作を行う一方で、非呼吸側の腕では入水後の手の前方移動距 離を短くし推進局面時間を長くすることで、呼吸側の非効率な動作を補助することが 必要であるとしている。 第7章の「今後の課題」では、本来のオープンウォーター環境下でのヘッドアップ 技術を正確に再現することや、ヘッドアップ動作をより詳細に記述するためには、肘 の角度変化や体幹の傾きおよびキック動作など、全身の動作を明らかにすることが必 要であるとしている。また、本論文ではオーシャンスイムにおける最適なスイミング フォームを定義するまでには至らなかったことも反省点として挙げられている。 以上、本論文には今後検討すべき課題は残されているものの、世界で初めてオーシ ャンスイムの動作を定量化し、詳細に明らかにした本論文の意義は極めて大きいと言 える。そして、これらの成果は、現在投稿中の1編の論文の他に、以下に記した学術 雑誌に掲載されており、関連する分野の研究者からも高い評価を得ている。これらの ことより、本論文審査委員会は、原怜来が申請した博士学位論文について、博士(ス ポーツ科学)の学位を授与するに十分値するものと認める。 1)原怜来、村岡功:ライフセーバーが行うヘッドアップスイムが手部の軌跡に与え る影響について.日本運動生理学雑誌、20(2)、37-46、2013 2)Hara,R., Y.Gando, I.Muraoka: Effect of head-up motion on stroke paramet ers and arm coordination of the front crawl in surf lifesavers. Gazzetta Medica Italiana Archivio per le Scienze Mediche, 175(12), 621-627, 2014 以. 3. 上.
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