博士学位論文審査報告書
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(2) 及び技術の工夫によって<公明正大>な勝利を追求し,このことが学生剣道の理念形成(公 平性と競技性の追求)に一定の貢献を果たしたこと,②彼らの勝利の追求は,竹刀操作と刀 剣の観念との乖離を生み出しながら結果的に近代スポーツに類似した競技文化を作り上げ ていったこと,③明治維新から昭和天覧試合(1929)までは,学生らによる<公明正大>な 勝利の追求によって競技スポーツ性が次第に台頭し,型の術理が薄れていく時期であること を一次史料の分析から明らかにしている. 第二章(1868-1945)では,明治期以降における競技剣道の展開が論じられた.競技剣道 を成立させるルールに着目して戦前における有効打突の誕生と思想について検討し,①1927 年に大日本武徳会によって制定された有効打突の規定は,竹刀操作が真剣操作に密接に繋が ることが重視されていたこと,②有効打突の三要素とその説明は明治時代における剣道家の 文献によってすでに示されていたこと,また,③戦争が続いた 1930 年から日本の敗戦(1945) までは,剣道の型の術理が実戦性の観点から見直され,日本刀の操作法に対する関心が高ま っていくと共に,競技スポーツ性が一部で酷評されるなどして薄れていく時期であったこと, を明らかにしている. 第三章(1945-1975)では,敗戦後における競技剣道の<有効打突>の誕生と思想につい て検討している.まず,戦後の剣道実施の禁止のなかで剣道に代わるものとして誕生した撓 競技において打突のポイント化の傾向が生じたこと,その後 GHQ の指示によって剣道は“日 本刀(剣)の観念”を払拭した“体育・スポーツ”として再生したこと,全日本剣道連盟の 設立(1952 年)以後有効打突は戦前と同様の要素で復活したこと,を確認し,以下について 明らかにしている.①当該時期の有効打突は刃筋にみられる型の術理よりも競技スポーツ性 が強調されたこと,②その後国民体育大会への参加も公認され“打突による竹刀剣道”とし て復活したが,これはやがて勝敗にこだわる“当てる技術”(当打)を助長するに至ったこ と,③その原因は,敗戦から 1991 年までの間に型の術理を示す日本剣道形が学校教育から下 火となったことが主な影響であったこと,④このことを憂いた戦前・戦後を体験する剣道指 導者たちが“剣道の理念”と“剣道修行の心構え”を制定(1975)して過去の精神性の継承 を願ったこと,以上から,⑤敗戦から剣道の“理念制定”までは,戦前に比べて剣道の競技 スポーツ性が一気に高まり,それに伴って型の術理は急速に希薄化することになったこと. 第四章(1975 以降現在)では,あてっこ剣道と剣理剣道との対抗関係を歴史的に論じてい る.まず,これまで研究者の間で曖昧であった上記二つの剣道実態について,内在する性格要 素を中心にそれぞれ概念規定を行っている.この作業を踏まえて著者は,①あてっこ剣道が 根強く残存する要因としては,競技規則上は違背性がないこと,競技剣道に内在する積極性 をもっていること,及び規則内で技の多様性をもっていること,②“剣道の理念”制定以降, 刀剣の観念の重要性が見直されたことを明らかにしている. 本研究を総括して著者は,剣理剣道の思想が支持されるなかでも,なお残存するあてっこ 剣道との軋轢を解決するための方策として,剣道における試合,昇段審査,稽古の関係を追 求する必要性を提言している. 以上のように本研究の内容は,現在の剣道界がかかえる技術・思想上の問題について高度 な専門的知識に基づいて取り組んだ本研究科入学後の研究成果であり,独創性と学術的意義 をもつことが認められる.依って博士(スポーツ科学)の学位を授与するに十分値するもの と認める..
(3) <本研究に反映された論文> ・佐藤皓也・工藤龍太・志々田文明・大保木輝雄(2017)柳生新陰流の刀法:伝書にそった 実践者の理解を中心に, 埼玉武道学研究,第 10 号,埼玉武道学会,pp.3-17.[註:第 4 章 に反映. 原著] ・佐藤皓也, 剣道界における“あてっこ剣道”問題:“剣の理法”に基づく剣道との関係 から,スポーツ人類学研究 21 号,(印刷中).[註:第 4 章に反映. 原著]. 以. 上.
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