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博士(工学)葛 隆生 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)葛   隆生 学位論文題名

地中熱利用システム設計・性能予測ツールの開発と      その応用に関する研究

学位論文内容の要旨

  地盤は普遍的に存 在し、膨大な熱容量を有しているため、ヒートポンプの熱源や、蓄熱体として 優れた特性を持って いる。近年、この地盤をヒートポンプの熱源として用いる、地中熱利用ヒート ポンプ(Ground Source Heat Pump,GSHP)システ ムを含めた地中熱利用シス テム(Ground Thermal Energy System,GTES)が二酸化炭素排出量削減 効果をもたらす省エネルギー な暖冷房給湯システ ムとして世界的に注 目されており、今後家庭用のシステムのみならず、大規模な建物に対しても導 入が切望されている 。我が国においても、地盤が軟弱で基礎杭が必要となる建物が多いため、基礎 杭を利用したシステ ムを中心として将来大規模 なGTESの導入が期待できる。 また、我が国では大 都市が扇状地に位置 しており、地盤内に地下水流動が生じる場合も想定されるため、導入の際には これらを考慮した設 計が必要となる。

  本論文では、特に 大規模なシステムに有効で、地下水流れも考慮することも可能な間接熱交換型 のGTESの設 計・ 性能 予測 ツ ールを開発した。ま ず、GTESの性能予測を行うに あたり重要な要素 となる地中温度にっ いては、地中熱交換器の本数・配置と地下水流速が影響を与える大きな要因と なるため、理論計算 およぴ数値計算から導いた独自の演算手法によって、それらを考慮した地中温 度計算を行えるよう にした。また、建物の基礎 杭を地中熱交換器として用い る場合のGTESの性能 予測も可能とした。 さらに、これらの手法による地中温度などの計算値の実測値への再現性は、実 規模の実証実験から 得られた実測の温度との比較により確認した。そして、開発したツールを用い て、 実 際にGSHPシス テム が 導入 され た建 物の 設 計例 と、 地下 水 流れ を有 するGTESのフイージ ビリ テ ィス タデ ィに つい て 示し、本ツールのGTES評価への有用性と、GTESの 省エネルギー効果 への有効性を明らか にした。

  本論文の構成およ ぴ各章の内容は以下の通り である。

  第1章は、序論であ り、GTESの概要とその導入 の意義について、二酸化炭素 排出量削減効果の 観点などから述べた 。

  第2章 はGTESの 設 計手 法と ツー ルに 関 する 研究 を中 心と し て、GTESにっ い て従 来行 われ て き た 研 究 と の 比 較 を 行 っ た 上 で 、 本 研 究 の 目 的 お よ び そ の 位 置 づ け を 示 し た 。   第3章では、設計 ・性能予測ツールの開発の第 ー段階として、単独垂直型地中熱交換器を有する GSHPシステムのツー ルの概要について述べた。 まず、高速演算を可能とする ための、無限円簡表 面熱 流 応答 理論 を応 用し た 地中温度計算手法と 、GSHPシステムの運転シミュ レーション計算手 法にっいて示し、そ の計算結果をもととしたライフサイクル分析の方法について示した。次に、熱 応答試験の測定値と 比較することで、開発したツールにより計算した熱媒温度変化を検証した。さ らに は 札幌 の戸 建住 宅を 例 にと り、100mのシ ン グルUチューブ型地中熱交換 器を用いた場合の GSHPシ ステ ムの 性能 予測 と 導入 効果 の検 討を 行 い、 その 結果 、 暖房 期間 の平 均COP4.6でGSHP システムの運転を行 うことが可能で、対象シス テムとのコストベイバックタ イムは10年程度とな ることを提示した。

  第4章では、複数埋 設管を有するGTES全体の性 能を予測するため、周囲の埋 設管について、無

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限線源の温度場を重ね合わ せる手法の適用が可能であり、これらの温度応答を近似的に短時間で計 算する手法を提案した。次 に、地中熱交換器の循環回路の相違に対する熱媒温度の計算手法を示し た。 この 計算 手 法を 検証 する ため に 長さ8m、 口径140mm¢の 基礎杭を格子状に25本埋設し 地中 熱交換器として用いたGSHPシステムの採熱・暖房実証 実験を行い、熱媒温度ならぴに地中温度の 実測値と計算値の比較から 、ツールによる計算値が実測値をよく再現できる事を確認した。さらに は、開発したツールを用い て、鋼管基礎杭を地中熱交 換器として用いたGSHPシステムの長期運転 の検証を行った。

  第5章では、大口径の鋼 管基礎杭を地中熱交換器として用いた採熱実証実験の結果について示し た。まず、直接熱媒(不凍 液)を循環させる直接熱交換型と、内部に水を充填しUチューブを挿入 して使用する間接熱交換型 の実験を行い、その結果の比較を行った。次に、直接熱交換型熱交換器 において、開発したツール の還水温度と実測の還水温度を比較し、大口径の地中熱交換器の場合で も無限円筒理論を応用した 本ツールの計算が良く実測に合うことを確認した。さらには鋼管内部の 熱抵抗値を明らかにすると ともに、間接熱交換型地中熱交換器の内部熱移動計算手法を示した。こ の計算手法を用いて計算し た還水温度の変化は実測の還水温度とほば同様の結果が得られ、本計算 方法が有効であることを裏 付けた。

  第6章では地下水流れを 有する地中温度の計算手法の開発概要について述べた。まず、模擬地下 水を有する砂層内のサーマ ルプローブ法による実験から、有効熱伝導率を増大させ設計を行う手法 では長期的なG′rESの評価 を行うにあたっては誤差が生じることを示し、その温度場の計算には、

温度応答の重ね合わせを行 うことが有効な手段であると考えた。次に、温度応答の計算方法として 考えられる、移動線熱源温 度応答理論と差分法による数値プログラムによる計算値を実測値と比較 し、それらの再現性を確認 した。さらには、地下水流れを有する場合の土壌内の線熱源と円筒熱源 の温度応答の比較検討を行 い、それをもとに地下水流れを有する場合の円筒熱源周囲の温度応答を 高速計算できる手法を提案 した。この計算によって得られた温度応答にっいては、砂層内に地下水 流れを模擬させることが可 能なタンクを地中に埋設し、行われた熱応答試験によって得られた実測 値と比較・検証された。ま た、移動線熱源温度応答を応用した、地下水流速の推定方法にっいて提 案し、サーマルプローブ法 による実験の結果を用いて本手法が地下水流速の推定に効果的であるこ とを示した。

  第7章 で は、 開発 し たツ ール を用 い たGSHPシ ステ ムの 設 計の 実例 とGTESに っ いて のフ ィー ジビリティスタディである 。まず、札幌市立大学の桑園キャンパスにおける鋼管杭を地中熱交換器 と し て 用 い たGSHPシ ス テ ム に つ い て 設計 を行 い、 鋼管 杭51本 に75mの ボア ホー ルシ ン グルU チューブ型熱交換器3本を 加えることで、50 kWのべー ス負荷を十分に賄えることを明らかにし、

この結果をもとに施工が実 施され、現在運用に至っていることを示した。次に、札幌市の戸建住宅 を想 定し た場 合 のフ ィー ジビリテ ィスタディを行い、地下水 流れが及ばすGSHPシステムの 性能 向上にっいて論じた。さら には、都市排熱を有効利用するエネルギーシステムとして、高度下水処 理場を都市中心部に設置し 、処理下水を涵養し、下流で涵養した地下水を熱源として利用するシス テ ム を 提 案 し 、 計 算 に よ り 排 熱 を 有 効に 回収 でき る地 中 熱交 換器 本数 と配 列 を検 討し た。

  第8章は、本研究で得られた結論 を総括し、今後の地中熱利 用の展望と課題について示し た。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    長野克則 副査    教 授    繪内正道 副査    教 授    渡辺義公 副査   助教授   演田靖弘

学 位 論 文 題 名

地中熱利用システム設計・性能予測ツールの開発と      その応用に関する研究

  近年、 地盤をヒートポンプの熱源と して用いる、地中熱利用ヒートポンプ(Ground Source Heat Pump,GSHP)システムを含めた地 中熱利用システム(Ground Thermal Energy System,GTES)が省 エネルギ ーな暖冷房給湯システムとして世界的に注目されており、今後家庭用のシステムのみなら ず、大規 模な建物に対しても導入が切望されている。我が国においても、基礎杭が必要となる建物 が多いた め、基礎杭を利用したシステ ムを中心として将来大規模 なGTESの導入が期待できる。ま た、特に 我が国では大都市が扇状地に位置しており、地盤内に地下水流動が生じる場合も想定され るため、 導入の際には地下水流動を考 慮した設計が必要となる。

  本論文 では、特に建物の基礎杭を用いる大規模建物のシステムに有効で、地下水流れも考慮する ことも可 能な間接熱交換型のGTESの設 計・性能予測ツールの開発 を行っている。そして、開発し たツール を用いて、実際にGSHPシステ ムが導入された建物の設計 例等にっいて示し、本ツールの GTESの設 計・性能予測への有用性と、GTESの省エネルギー効果へ の有効性を明らかにしている。

  本論文 の構成および各章の内容は以 下の通りである。

  第1章 は 、 序 論 で あ り 、GTESの 概 要 と そ の 導 入 の 意 義 に っ い て 述 ぺ て い る 。   第2章 は 、 従 来 の 研 究 に っ い て 述 ベ 、 本 研 究 の 目 的 お よ び その 位置 づ けを 示し てい る。

  第3章で は、 設計 ・ 性能 予測 ツー ルの 開 発の 第一 段階と して、単独埋設管を用いるGSHPシス テムのツ ールの概要について述べている。まず、高速演算を可能とするための、無限円筒表面熱流 応答理論 を応用した地中温度計算手法 と、GSHPシステムの運転シ ミュレーション計算手法につい て示し、 その計算結果を基にしたライフサイクル分析の方法について示している。次に、模擬負荷 暖房実証 実験等の測定値と比較することで、開発したツールにより計算した熱媒温度変化や、予測 した性能 について検証を行っている。

  第4章では、複数埋設管を有す るGTES全体の性能を予測す るため、周囲の埋設管にっい て、無 限線源の 温度場を重ね合わせる手法の適用が可能であり、これらの温度応答を近似的に短時間で計 算する手 法を提案している。次に、地中熱交換器の循環回路の相違に対する熱媒温度の計算手法を 示してい る。この計算手法を検証する ために、複数埋設管を用い たGSHPシステムの採熱・暖房実

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証実験を行い、熱媒温度たらびに地中温度の実測値と計算値の比較から、計算値が実測値をよく再 現できる事を確認している。

  第5章では、大口径の鋼管 基礎杭を地中熱交換器として用いた採熱実証実験の結果にっいて示し ている。まず、直接熱媒(不 凍液)を循環させる直接熱交換型と、内部に水を充填しUチューブを 挿入して使用する間接熱交換型の実験を行い、それらの採熱量の比較を行っている。さらには間接 熱交換型地中熱交換器の内部熱移動計算手法を示しており、この計算手法を用いて計算した還水温 度の変化は実測の還水温度と ほば同様の結果が得られ、 本計算方法が有効であることを裏付けて いる。

  第6章では地下水流れを有 する地中温度の計算手法の開発にっいて述べている。まず、模擬地下 水を有する砂層内のサーマルプローブ法による実験から、地下水流れを有する場合の温度場の計算 には、温度応答の重ね合わせを行うことが有効な手段であると考察している。次に、温度応答の計 算方法として考えられる、移動線熱源温度応答理論と差分法による数値プログラムによる計算値を 実測値と比較し、それらの再現性を確認した上で、地下水流れを有する場合の土壌内の線熱源と円 筒熱源の温度応答の比較検討を行い、温度応答を高速計算できる手法を提案している。この計算に よって得られた温度応答については、砂層内に地下水流れを模擬させることが可能なタンクを地中 に 埋 設 し 、 行 わ れ た 熱 応 答 試 験 に よ っ て 得 ら れ た 実 測 値 と 比 較 ・ 検 証 し て い る 。   第7章は、開発したツール の応用例である。まず、札幌市立大学の桑園キャンパスにおける鋼管 杭を地中熱交換器として用い たGSHPシステムについて計 算を行い、この結果に従って実施設計・

施工が行われ、現在運用に至っていることを示している。さらには、高度下水処理水の地下涵養を 応用したエネルギーシステムの提案を行った上で、このシステムの導入効果の検討を行っている。

  第8章は 、 本研 究で 得ら れ た結 論を 総括 し、今後の 地中熱利用の展望について述 べている。

  これを要するに、筆者は特 に大規模なシステムに有効 で、地下水流れも考慮することも可能な GTESの設 計・ 性能 予測ツー ルを開発すると共に、この ツールを用いたGSHPシステム の具体的な 計画手法と応用例、そしてニ酸化炭素排出量削減効果、ライフサイクルコストなどを明らかにして いる 。こ れは 建築 設備工学 および都市環境工学の進展 に寄与するところ、大なるも のがある。

  よ っ て 筆 者 は 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も のと 認 める 。

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