博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 野 澤 亮 吉
学 位 論 文 題 名
Compensatory response of willow
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(マエキアワフキの産卵行動に対するヤナギの補償的成長と その補償作用が次世代のマエキアワフキに与える間接的効果)
学位論文内容の要旨
マ エ キ ア ワ フ キAphropカ 〇rapecforansの 産 卵 行 動 が ェ ゾ ノ カ ワ ヤ ナ ギSanx mjyabeanaとオノ エヤナギ5甜 抜sacわa舶ensjsのシ ュート生 長パタンに与える直接的な 影響とその影響が次世代のマエキアワフキの産卵行動に与える間接的な効果を調査した。
まず最初に、マェキアワフキの生活史を明らかにするために、石狩川河川敷(北海道)に 広く分布しているエゾノカワヤナギとオノエヤナギを調査木に選び、調査を行った。マェ キア ワフキ は、ヤナギを寄主植物とする汁吸性の昆虫である。本種は、年1化性で卵で越 冬す る。卵 の孵化はヤナギの当年シュートが伸び始める5月の中旬頃に、交尾・産卵行動 は当 年シュ ート生長 がほぽ完 了する8月上 旬から10月中旬に かけて見られた。アワフキ メス成虫は、長い当年シュートに対して強い産卵選好性を示し、当年シュートの先端内部 に卵 塊を埋 め込む。このため、産卵されたシュートの先端部は1週間以内に枯死した。ま た、2種類 のヤナギ間で幼虫のパフオーマンス(体サイズ、生存率、発育期間)と卵寄生 率に差が無いのにも関わらず、メス成虫はェゾノカワヤナギよりもオノエヤナギを産卵場 所として好む傾向を示した。
また、長いシュートに対する産卵選好性に影響を与えていると考えられる4つの要因(シ ユートの硬さ、シュートの落枝率、シュートの質、卵寄生率)とシュート長の関係を調査 した 。2種 類のヤナギ共に、シュー卜長の増加に伴ってシュートは硬くなり、落枝率は減 少した。一方、卵寄生率、シュートの質(窒素)とシュート長の間に、関係はみられなか った。
次に 、1998年 秋におけ るアワ フキの産 卵が翌年 のシュ ート生長 に対し てどのよ うな 影 響 を与 え る のか を 調 査し た 。2種類のヤ ナギとも に、1998年 秋に産 卵を受け たシュ ー ト (O−shoots) の 先 端 部 は ほ ぼ100%枯 死 し た。 そ の 結果 、1998年 秋に 産 卵 を 受 け てい な い シュ ー ト (N−shoots)に 比 べ てOーshootsで は、1999年春に おける 枯 死した芽の数は増加し、当年シュー卜の数は減少した。
1999年秋 に お いて 、2種類 の ヤ ナ ギ共 にN―shootsに 比べ てOーshootsで は 、当 年 シュ ートは 長くなル シュート 数は減 少した。その結果、O−shootsとNーshootsの間に、
総当 年シュ ート長の 差はみら れなか った。同様に、N―shootsに比ぺてO―shootsでは、
当年 シュー トあたり の葉の枚 数は増 加したものの、O−shootsとN―shootsの間に、葉の 総 枚 数の 差 は みら れ な かっ た 。 ま た、Nーshootsに 比 べてO―shootsで は、1999冬 か
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ら2000年春にかけての当年シュートの落枝率が、低い傾向がみられた。その結果、
OーshootsとN−shootsの間に、2000年春における生存した当年シュー卜数の差はみ られなくなった。また、N―shootsに比ぺてO―shootsでは、生存した当年シュートは長 かった。その結果、Nーshootsに比べてOーshootsでは、生存した総当年シュート長は長 く なった。2000年 秋におい て、N―shootsに 比べてO―shootsでは、2000年 度の 当年シュートは長くなり、本数も増加した。その結果、Nーshootsに比べてO−shootsで は、2000年度の総当年シュート長は長くなった。
最後に、アワフキの産卵(1998年秋)によって引き起こされたシュート生長パタン の変 化が、次世 代のアワフキの産卵行動(1999年秋と2000年秋)に与える影響を 調査した。2種類のヤナギにおいて共に、1999年秋と2000年秋において、N−shoots に比べてOーshootsでは当年シュートあたりの卵塊数は多い傾向がみられた。一方、19 99年秋において、N―shootsとO―shootsの間に総卵塊数の差はみられなかったものの、
2000秋 において、N−shootsに比べ てOーshootsでは 増加する 傾向がみ られた。
以上の結果から、アワフキの産卵によるシュートの先端部の枯死は(1998年秋)、
1年目には損失を完全に補う補償的生長を、2年目には、損失を上回る過剰な補償的生長 を引き起こした。さらに、2年目の過剰補償反応は、次世代のアワフキの産卵行動(20 00年 秋 ) に 対 し て 正 の 間 接 効 果 を 与 え て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。
学位論文審査の要旨
主査 教授 戸田正憲 副査 教授 原 登志彦 副査 助教 授 工藤 岳
副査 教授 大串隆之 (京都大 学生態学研究センター)
学位論文題名
Compensatory response of willow
to spittlebug ovlpOSltionanditSindireCtea ...eCtS OnSubSequentSpittlebuggenerationS
( マ エキ ア ワ フキ の 産 卵行 動 に対す るヤナギ の補償的 成長と そ の補 償 作用 が 次 世代 の マエ キ アワ フキに与 える間接 的効果)
植食性の生物間で見られる相互作用は、これまでその効果の検出が容易な干渉あるいは 消費型競争といった直接的作用を中心に研究されてきた。しかし近年、植物を介した間接効 果の重要性カ荘目されつっある。植物を介した間接効果は、植物を利用する生物(昆虫カ渉 い)によって引き起こされる植物の質的・量的な変化が、同じ植物体上の他の生物の適応度 に影響を与える現象であり、植物を利用しそこで生活するいろいろな生物を互いに間接的に 結び付けていると考えられる。申請論文は、吸汁性昆虫とその寄主植物であるアワフキムシ ーヤナギ系を対象にして、特に、これまで注目されて来なかった同一種の世代間で見られる 間接効果を明らかにすることを目的としている。
まず、アワフキの産卵が翌年のヤナギのシュート生長に対してどのような影響を与える のかを調査している。アワフキの産卵を受けていないシュート(N一shoot)に比べて、先端 部に産卵を受けたシュート(O‑shoot)では、先端部の芽の枯死により、翌年(1年目)の 当年シュートの数は減少した。しかし、同年秋までには、その損失を完全に補償するシュー ト伸長が見られること、さらに、2年目の秋には、アワフキの産卵による1年目のシュート 損失を上回るシュートの数および長さの増大(過剰補償)が見られることを明らかにした。
これらの結果は、アワフキの産卵行動はヤナギに補償的なシュート生長を引き起こさせるこ と 、 ゛ ま た そ の 反 応 が 年 次 間 で 増 幅 す る こ と を 示 し た 点 で 大 変 興 味 深 い 。 次に、アワフキの産卵によって引き起こされたシュート生長パタンの変化が、次世代のア ワフキの産卵行動に与える影響を調査している。1年目の秋において、N―shootsと0−shoots の間に総卵塊数の差は兄られなかったものの、2年目の秋には、Nーshootsに比べて0−shoots で増加する傾向が見られた。これれらの結果から、アワフキの産卵によって引き起こされた 補償的なシュート生長が、次世代のアワフキの産卵行動(2年目)を促進する効果を与えて
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いること、っまり、同一種の世代間で植物を介した間接効果が見られることを明らかにした 点が、特に注目に値する。
以上の研究によって、植物を介した間接効果は異なる昆虫間だけでなく同一種内でも見ら れることが明らかになり、その効果は植物体上で広く見られる普遍的な現象であることが示 唆された。特に、これまで明らかにされた被食防衛系の相互作用が、どちらかというと負の フイードバック効果をもち、系を安定化させる働きを持っと考えられるのに対して、植物の 補償反応を介した正のフイードバック効果は、植物体上の昆虫の多様性を大きく変化させる 働きを持っと考えられる。生物の進化を考える上で、このように変化を増幅させ、系を不安 定化させる内在的プ□セスは極めて重要であり、生物進化の段階的適応放散バタンを説明す る機構の1つとして、今後注目される価値がある。本研究の成果はそのような端緒を開く可 能性を秘めており、その意義は非常に高く評価される。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、大 学院課程における研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(地球環境科学)の学位を受ける のに充分な資格を有するものと判断する。
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