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     多 発 性 硬 化 症 患 者 に お け る 末 梢 血 CD28 一 CD4+T 細胞 に関 する研 究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 宮 崎 雄 生

     学 位 論 文 題 名

     多 発 性 硬 化 症 患 者 に お け る 末 梢 血 CD28 一 CD4+T 細胞 に関 する研 究

学位論文内容の要旨

    I .   背景

   多発性硬化症(MS: multiple sclerosis) は中枢神経の炎症性脱髄性疾患であり,臨床 的に中枢神経症状の増悪と寛解を繰り返すことを特徴としている. MS の病態は完全 には解明されていないが,中枢神経のミエリン抗原に反応性T の細胞が重要な役割を 果たしていると考えられている.このミエリン抗原反応性T 細胞は,健常な状態では 免疫調節性細胞の働きを含む末梢性トレランス誘導機構により抑制されており,免疫 調節性細胞の機能不全や自然免疫系の活性化など,何らかの機転でこの機構が破綻し た際にMS が発症または増悪すると想定される.

  CD28 は T 細胞上の 共刺激分 子であり,CD28 を介する刺激は T 細胞抗原受容体から の刺激を受けた T 細胞の,その後の活性化を決定する重要な要素である.しかしなが ら,興味深いことに慢性関節リウマチ,Wegener 肉芽腫症などの自己免疫性疾患の患 者末梢血中に,CD28 を発現しない CD4 十 T 細胞が増加していることが報告されている,

これらの患 者の CD28'CD4+T 細胞は CD28 の発現を欠くにもかかわらず,刺激により 大量のインターフェロン (IFN: interferon) ‐Y を産生し,疾患の増悪に関与していると 考えられている. MS においても,一部の患者でCD28‑CD4+T 細胞が増加していること や,患者のミエリン抗原反応性T 細胞がCD28 からの共刺激なしに増殖できることが 報告 され ており, CD28 ℃ D4+T 細胞が MS の病態に 関与して いる事が考 えられる ・     IL   目的

  MS 患者末梢血単核細胞を用いてCD28 ℃D4 ゛T 細胞の頻度,表現型,機能を解析し,

この疾患におけるCD28 ℃ D4+T 細胞の病態への関与を明らかにすることを目的とした.

    m .   方法

  28 人の MS 患者( 無治療患 者 17 人, IFN[3‑1b 投与患者11 人),および17 人の健常 者の末梢血から単核細胞を分離し,フ口ーサイトメーターを用いて CD28 ℃D4+T 細胞

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の頻度,表現型,細胞内サイトカイン産生を解析した.

    IV.  結果

  全CD4+T細 胞 中 に お け るCD28℃D4+T細 胞 の 頻 度 は 健 常 者 で は0.19〜 27.17%く5.20土 6.88)であ ったが ,MS患者 におい ては無 治療患 者で1.47〜 39.02% (13.OO土11.06%),IFNp‑lb投 与患者で0.23〜30.52% (7.58:t:9.220/o)であり,健常者と比べて無治療患者で有意に高値を示した.

phorbol‑myristate‑acetate (PMA),ionomycinくIM)刺 激に対す るIFbf一Y産生は,患者,健常 者 と もCD28℃D4+T細 胞 でCD28゛CD4+T細 胞 分 画 と 比 べ て 有 意 に 高 値 で あ り , さ ら に , MS患 者 で は 健 常 者 と 比 べ て 高 値 を 示 し た .IL‑4の 産 生 はMS患 者 と 健 常 者 間 で 明 確 な差は見られなかった・

  次 にCD28℃D4゛T細 胞 に お け るCD28の 代 替 と な り う る 共 刺 激 分 子 を 検 索 し た が , ICOS,OX‑40,4‑1BBな ど の 既 知 の 分 子 の 発 現 は 見 ら れ ず ,CD27の 発 現 はCD28゛ 細 胞 分 画 と 比 べ て む し ろ 低 値 で あ っ た . 加 え て , 慢 性 関 節リ ウ マ チ 患者 に お い てCD28℃D4+T 細 胞 の 共 刺 激 分 子 と し て 働 く こ と が 報 告 さ れ て い る ,NKG2Dやkiller immunoglobulin‑

like receptorの発現も見られなかった.

  最 後 に CD28'CD4+T細 胞 の 分 化 段 階 に 関 し て 検 討 し た と こ ろ ,MS患 者CD28℃D4゛T 細 胞 中 にCD45RAh'gICCR7‑の 表 現 型 を 示 す 細 胞 亜 分 画 が 増 加 し て い る こ と が 判 明し た , こ のCD45RAhighCD28℃D4+T細 胞 に お い て は ,PMA,IM刺 激 に 対 し てIFN■y産 生 細 胞 は 認 め ら れ た が ,IL‑4産 生 細 胞 率 は き わ め て 低 値 で あ り ,IFN‑y/IL‑4比 の 著 明 な 高 値 を示した.

    V.  考察

  本 研 究 で は ま ず , 健 常 者 と 比 べ てMS患 者 末 梢 血 中 でCD28℃D4゛T細 胞 が 増 加 し て い る こ と が 示 さ れ た . こ のCD28℃D4゛T細 胞 分 画 で は , 健 常 者 と 比 ぺ てMS患 者 に お い てIFN‑y産 生 細 胞 率 が 高 い も の の ,IL‑4産 生 細 胞 率 は 健 常 者 と 同 等 で あ り ,CD28‑

CD4゛T細 胞 のIFN‑y/IL‑4比 が 高 値 に な る こ と が ,MSの 病 態 と 関 連 し て い る と 考 え ら れた・

  続 い て ,MS患 者CD28℃D4+T細 胞 中 に ,CD45RAhighCCR7‑の 表 現 型 を 示 し,IFN‑y/IL‑4 比 の 著 明 な 高 値 を 示 す 特 異 な 細 胞 亜 分 画 が 含 ま れ て い る こ と が 示 さ れ た , こ の 表 現 型 を 示 す 細 胞 分 画 はCD28゛ 細 胞 分 画 に は み ら れ ず ,MS患 者CD28℃D4+T細 胞 は 特 異 な 環 境において生成されたェフェクター細胞であると考えられた.

    V.  結語

  本 研 究 で はMS患 者 末 梢 血 中 にCD28℃D4+T細 胞 が 増 加 し て お り , こ の 細 胞 集 団 は MS患 者 に お い て 高 いIFN■y産 生 率 を 示 す こ と を 明 ら か に し た . 本 細 胞 の 機 能 を 制 御 す る こ と が 可 能 と な れ ぱ ,MSを 初 め と す る 自 己 免 疫 性 疾 患 の 新 た な 治 療 法 が 確 立 さ れ ると考えられた.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

多発性硬化症患者における

末梢血 CD28 − CD4 十 T 細胞に関する研究

  多 発 性 硬 化症(multiple sclerosis: MS)は 中枢神 経の炎症 性脱髄性 疾患で ある.MS の 再発 予防薬と してはinterferon(IFN)Dーlbの有効 性がい くっかの 臨床試 験で確認 さ れ てい る が , その 効 果 は満 足 で きる も の では な い のが 現 状で ある.CD28はT細 胞上の 重要 橙共刺激分子であるが,慢性関節リウマチなどの自己免疫性疾患患者の末梢血中に,

CD28を発 現しないCD4゛T細胞(CD28‑CD4゛T細胞)が増加していることが報告されている,

これ らの患者 のCD28‑CD4゛T細胞は 刺激に より大量 のIFN‑yを産生し,疾患の増悪に関与 して いると考 えられて いる. MSにお いても ,一部の 患者でCD28‑CD4゛T細胞が増加して い るこ と が 報 告さ れ て いる が , その 病 態 への 関 わ りは 十 分 には 解 明 さ れて い な い,

  これ らの背景 をふま え,CD28・CD4゛T細胞のMS病態へ の関与を明らかにするため,MS 患者 の末梢血 単核細胞 を用い ,フロー サイトメーターを用いてCD28‑CD4゛T細胞の頻度,

表現型,細胞内サイトカイン産生を解析した,

  全CD4゛T細胞中におけるCD28‑CD4゛T細胞の頻度は健常者では0.19ー27. 17Yo  (5. 20土 6. 88)であったが,MS患者においては無治療患者で1.47ー39. 02%(13. 00土11. 06%), IFNp−lb投与患者でO.23丶一丶30. 52% (7. 58土9.22%)であり,健常者と比べて無治療患者で 有意 に高値を 示した.phorbol−myristate―acetate (PMA),ionomycin (IM)刺激に対す るIFN‑lr産生は,患者,健常者ともCD28・CD4゛T細胞でCD28+CD4゛T細胞分画と比べて有意 に 高値 であり, さらに,MS患者で は健常者 と比べ て高値を 示した ,IL―4の産生 はMS患 者と健常者間で明確な差は見られなかった.

  次にCD28・CD4゛T細胞におけるCD28の代替となりうる共刺激分子を検索したが,ICOS, Oxー40,4−1BBなどの既知の分子の発現は見られず,CD27の発現はCD28゛細胞分画と比べ てむ しろ低値であった.加えて,慢性関節リウマチ患者においてCD28・CD4゛T細胞の共刺

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典 則

正 和

原 江

   

   

野 々

笠 小

授 授

教 教

査 査

主 副

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激 分 子 と し て 働 く こ と が 報 告 さ れ て い る ,NKG2Dやkiller immunoglobulin−like receptorの発現も見られなかった,

  最後にCD28‑CD4゛T細胞の分化段階に関して検討し たところ,MS患者CD28・CD4゛T細胞 中 にCD45RAhighCCR7ーの表現型を示す細胞亜分画が増 加していることが判明した,この CD45RAriighCD28・CD4゛T細胞においては,PMA,IM刺激に対してIFN‑y産生を認めたが,IL−4 産 生 細 胞 率 は き わ め て 低 値 で あ り ,IFN‑y/ILー4比 の 著 明 な 高 値 を 示 し た .   本研 究で はMS患者 末梢 血中 にCD28−CD4゛T細 胞 が増 加しており,この細胞集団はMS 患 者に おい て高 いIFN‑y産 生率を示すことを明らかに した.本細胞の機能を制御するこ と が可 能と なれ ば,MSを 初め とす る自 己免 疫性 疾 患の 新たな治療法が確立されると考 えられた.

  公開発表にあたってはまず,副査の佐々木教授から 「CD28・CD4゛T細胞とMS臨床像と の関係」,「MS治療薬のCD28‑CD4゛T細胞への影響」,「CD28‑CD4゛T細胞の慢性関節リウマ チ やMSの病態における役割」に関する質問があった, 続いて,副査の小野江教授から,

「CD28・CD4゛T細胞がCD28を欠くにもかかわらずサイトカイン産生を行うことを,PMA/IM 以外の刺激で確認したか」,「CCR7が陰性である事から考えられるCD45RAhighCCR7一亜分画 の機能について」の質問があった.また,主査の笠原教授から「CD45RAriighCCR7ー亜分画 の増加とMS臨床像との関連」,「CD45RAhighCCR7―亜分画が増加する要因Hこ関する質問が あ った.いずれの質問に対しても,申請者は実験結果 や文献を引用して説明し,おおむ ね適切に解答した.

審 査員 一同 は, これ らの 成果 を高 く評 価し ,大 学 院課 程における研鑽や取得単位など も 併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分 な資格を有するものと判定した.

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参照

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