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オクラとトロロアオイとの種間交雑およびそれらより育成された種々の雑種ならびに倍数体に関する研究-香川大学学術情報リポジトリ

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オクラとトロロアオイとの程間交雑およびそれらよ少 育成された種々の雑種ならびに倍数体に関する研究

桑 田 晃

St11dies on theinterspecific crossiI鳩betweer−Abelmoschus esculenlus

MoENCH and A。ManihoiMEDIC…and tbe various hybrIidsar)d

polyploids der.ived from the above two species

Hikar・u KuwADA

(Laboratory(if Genetics and Br・eeding)

緒 論 3 4 4 4 4 弟1編 オ・クラとトロロアオイとの種問交雑に関する研究 序 説 第1章 交雑可能度および正道交雑のFlの形質ならびに還元分裂 第1節 実験材料および方法 節2節 着生した萌および種子 1親の品種を異にする場合 2 交配組合せの力向を異にする場合 5 57 889 11 13 14 14 15 161617 18 19 19 第3節 正辿交雑における花粉管の伸長,受精の有無,胚および種子の発育 第4節 正逆交難のFlの特性 第5節 染色体数および還元分裂における染色体接合 弟6節 考 察 第7節 摘 要 第2葦 オクラ×tロロアオイFlの稔性発現の機瀾 第1節 実験村料および方怯 第2節 Flの花粉形成に.およばす異常温度の影響 第3節 Flの染色体倍加による稔性の発生 11954年の実験 21955年の実験 31956年の実験 第4節 考 察 第5節 摘 要 第2編 役二倍休作物糊麻に関する研究 序 説 第3章粋麻の育成およ

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− 2 −一 策1節 育 2 3 4 4 つ︼ ︵∠ 2 2 第2節 稔 性 第3節 摘 要 弟4茸 糊麻とその両親作物との生理生態学的特性 第1節 種子 の発芽 1 発 芽 温 度 2 貯蔵条件を異にする種子の発芽 6 22 3 考 察 第2節土壌の乾燥が植物体の生育に、およ 第3節 実の同化,呼吸ならびに転移作用 第4節 受光時間の長短が生育ならびに開花結実におよぼす影響 第5節 耐 病 虫 性 弟6節 花粉の人工発芽およ 舞7節 胚珠の受精力保持期間ならびに種子稔性 舞8節 摘 要 籍5章 糊麻とその雨期作物との正道交雑における交雑和合性および雑種の形質ならびに還元分裂‥ 第1節 着生した朔および種子 第2節 花粉管の伸長,受精の宥軌胚および種子 第3節 雑種の特性 弟4節 染色体数および還元分要封こ.おける染色体接合 第5節 考 察 舞6節 摘 要 第3編 オクラおよびトロロアオイより育成された稜々の倍数体に関する研究 序 説 第6章 単・−の細胞の大きさ 弟1節 実験材料およびカ 第2節 気孔の長 さ 1予 備 実 験 2 本 突 第3節 花粉粒の廼径 第4節 表皮細胞 第5節 考 察 第6節 摘 要 弟7環 形使および生育 第1節 実験材料および方法 l 1 3 4 7 ︻ノ ﹁J ﹁ノ 第2節 種子の発芽歩合および日 第3節 開花迄の日数および開花期間 弟4節 草丈および節数 第5節 葉数および薬指数 第6節 茎の太さおよび花の大きさ 第7節 朔の大きさおよび着朔歩合 第8節 考 察 第9節 摘 要 総括および結論 引 用 文 献 英 文 摘 要 I判 図

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− 3 一 緒 論・ 種,属問交掛こよる育種ほ品種間のそれに比し,理論および方法において異なる場合がすこぶる多い。この種 の育種においてほ,交雑に始まって,Flの形質,とくに稔性発現の機構,複二倍休作物の育成,同稔性および特 性,後二倍体作物と両親作物との問のセスキデイブロイド,ならびに種々の倍数体の形質発現に至る聞の−、連の 問題が含まれてくる。しかるに。従来の研究に.おいては,こ.れらの諸問題のうち,個々の部分について−ほかなり詳 細に研究され,とくに交雑の問題ならびに交雑の結果得られた雑種の形質に関する研究などほすこぶる多いが, 同一一の材料より出発した種々の倍数体の形質発現の数的関係ならびにその理論的根拠などに関する研究ほいまだ 見られない。 種,属間交斯こ関して,用いる親晶種の違い,あるいほ交配組合せ方向の違いによって,着顕歩合,着粒歩 合,一新中の種子数,Fl種子の発芽能力のほか,Fl植物の詔形質,花粉稔性および種子稔性などに著しい差異 の生ずる場合のあることは,小変,燕麦および煙草などで研究,指摘されているが,いまだ,いずれの材料にも 共通した理論は見出されていない。またこの種の種,属間交雑のFlの不穏あるいは極度の稔性低下の原因,機 構ならびに稔性の向上についての研究,とくに,種々の環境要因による倍数生殖細胞の形成についての実験的研 究なども少なくない。さらに」司栗貢倍数体と原種との諸特性の比較,ならびに原種に対する交雑和合性などについ ての研究もきわめて−多いが,複二倍休作物の両親作物に・対する形態学的,ならびに生理生態学的特性についての 組織的な比較研究,また複二僧体作物の両親作物に対する交雑和合性,ならびに正道交雑によって生ずるセスキ デイブロイドに関する研究などほきわめて少ない。 倍数体の形質発現についても,種々の材料について研究され,ごく僅かの例外を除いてほ,ゲノムを嘩位とす る染色体数の増加が,諸器管ならびに組織の大きさの増大をもたらすことは認められているが,その増大の数的 関係は明らかでほない。かつ同じく同質あるいほ典男倍数体であっても,自然において成立した場合と人為的に 育成された場合とでは,器管ならびに組織の大きさの増大に.相違のあることも指摘されているが,その原因は明 らかでない。かかる事情の下において,同叫の材料より出発して,種々の雑種,同質ならびに異贋個数体を人為 的に・育成し,これらを材料として,ゲノムまたは染色体の細を単位とする倍数体と形贋発現との関係を究明する ことほ遺伝,育種学上興味ある問題である。 本研究は以上の観点から遂行したものであって,第1段階ではオ■タラ(A∂♂g沼0SCゐ以Sβ・SCαJ♂乃わ‘SMOENCH) (2rl=124)およびトロP1アオイ(A肋乃吉ゐ∂ま MEDIC.)(2n=68)を材料として,両者の問の交雑可瀧度, 正逆交雑のFlの形督ならびに還元分裂について−論じ,さらに.Flの稔性発現の機構に.言及した。ついで両者間の 扱二僧体作物である糊麻(A.gg鋸助0−ね止摘s KAGAWA)(2n=192)の育成ならびに.稔性を論じ,さらにこれ が生理生態学的特性の研究を,生産力検定の立場から,両耕作物との比較に・おいて行った。また複二倍休作物の 両新作物に対す・る交碓和合性,得られたセスキデイブロイドの語形贋,さらにこれらの交雑における新および磯 子の形質ならびに.交雑和合性を支配する諸原因などを究明した。最後に,オ・クラおよびトロロアオイを材料とし て種々の倍数体を人為的に育成し,両者の配偶子における染色体の組を単位とした形質発現の機構について研究 を行い,基準値(Base Value),同質化係数(Auto−COefficient)および輿贋化係数(Allo−COefficient)を設 定することによって,この間の関係の説明を試みた。 本研究の遂行に.あたり,恩師元素都大学教授,現愛媛大学々長香川冬夫博士,京都大学名誉教授竹崎嘉徳博 士,京都大学教授赤藤克己博士および西山市三博士より懇篤なる指導,助言を,元本学農学部長黒上泰治博士よ り激励と厚情を賜わった。また本実験に際しては,本学邪教官各位の授助をいただくとともに,とくに山本富良 助教授,高橋遺彦助手ならびに噂攻生各位から絶大なる協力を得た。なお,本研究にほ文部省科学研究費交付金 (総合研究),同(各個研究),および科学研究助成補助金(助成研究)の補助を受けた。ここに深甚の謝意を 表する次第である。

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・−・4 −

第1礪 オクラとトロロアオイとの種間交雑

に関する研究

説 種,属間交雑においてほ,交配時の環境ならびに植物体の生育段階の違いなどによって,交雑可能度が異なる はか,交配に用いる品種あるいは系統により,また交配組合せの方向によって交雑可能度に著しい差異のあるこ とが多くの研究老(117、391帖,112)によって指摘されている。 またこの種の交雑のFlは完全またほ高度の不稔を呈する場合が多い。ことに両親のゲノムが非相同,またほ 部分相同の場合に,この現象が見られる。したがって,種,属問交卿こ・よって新しい複二倍体を育成するに・は, Flに.おける倍数生殖細胞の生成がその手段の一つと考えられる。しかしてこの種の生殖細胞の生成にはコルヒ チン処理,その他の方法による体細胞染色体の倍加,あるいほ生殖細胞形成時の非減数などがあるが,異常湿 度,その他種々の環境要因に.よっても倍数生殖細胞の形成が助長され,新型の成立をみる場合(682829308687) もある。 従来,オクラとトロロアオイとの交配匿おいてほ,前者を母親とし,後者を父親として成功を収めてきた。こ の道の交配ほTESHIMA(109),知崎(111),UsTINOVA(114・115)および香川(31)7よどに・よって試みられて釆たが,いまだ 成功をみていない。しかし最近,PAL,SzNGH&SwARUP(84)ほこれらの正逆交雑に成功し,Fl植物を得てい る。しかしこれらのFlほいずれも完全な不稔であった。しかしてオクラ×十ロロアオイのFlほ,正常な外囲の 下でも,90%以上の著しい高率で二分子が作られる。この二分子のすべて−が2Ⅹ花粉になるとは限らないが,二 分子の生成ほ2Ⅹ花粉の生ずる一・つの基礎と考え.られる。このようにFlに・おいて著しく高率で二分子の出来るこ とおよびFlが完全あるいは高度の不稔を示すことば従来の研究者(10911184)も認めてし、るところである。 筆名ほオクラ(A∂βg仰SCゐ鋸Sβ・SC鋸Jβ乃′伽S)(2n=124)とトロロアオイ(A・肋乃gゐβ′)(2n=68)とを用い た交雑可能度の研究ならびに.トロロアオイの開花結実の習性に関する研究(49)の結果,従来不可能祝されていた トロロアオイ×オクラの交配に成功した。またFlの花粉・隠細胞に撰常温庶を与える巽験克らびに∴Flのコルヒチ ン処理試験の結果,Flの完全または高度の不稔の原因が,単に・Flに・おける成熟分裂およびその結果生ずる配偶 子の染色体の構成のみに帰せられるべきものではなく,受精卵を発育させる母親の子房組織にぶける細胞の染色 体の構成との関係によるものであることをつきとめた。

第1章 交雑可能度および正逆交雑のFlの形質ならびに還元分裂

第1節 実験材料および方法 親の品種を異にする場合の交雑可能度の実験に億用した材料は,従来より京都大学農学部育種学研究室におい て研究保存中のオクラ8品種と,トロロアオイ2品種である。オ・クラの品種名は正確な意味に・おいて未詳である ので,本実験ては番一別こよって表わすことにした。トロロアオイの2品種は,普通の赤茎で,草丈が約35cmの 品種と赤茎で,草丈が約150cmの「クモ瓶」と呼ばれている品種とであって,後者は戯賞瀾トロロ7■オイと同じ ものである。前者をトロロ・アオイ普通種,後者を同高稗種として表わすことiニした。これらの各品種はいずれも 永年自殖を続けて釆たものであって,一応固定種とみなされるものである。第1表はそれら各品種の特性を示し たものである。

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・・→ 5 − 第1蓑 オクラおよびトロロアオイの各品種の特性 品 種 番 号 ーーイ柳本平均 潜 胡 数 長 さ】周囲長博子針息)f(監)一(監)≠LⅠlMいⅠ − ■・−−−l・ 2.52 9、、49 4,73 20.84 15 77 14い36 †ロ。7・オイ普通種 同 高梓種 …:………二:;】;…二;】…三:… 備考‥各品種とも10個体の平均,朔および柴は合個体の同・−個所から採った。実の型の表示法ほHuTCHINSON (24)の方法による(第1図参照) また交配組合せの方向に.よる交雑可能 度の研究に使用した材料は当研究室保存 のオクラおよびトロロアオ・イで,1943年 以来自殖を琉けて来たものである。1953 年にこれら両種の間に正道交雑を行い, Fl種子を翌年5月12日に播種箱に.播種 し,6月30日に止塗の尺鉢に定植した。 エeα/一 丁乃de.芳 := E エ..J 〃eα乃 ムIdeズ 〟・∫= A A α=す 占= 交配方法)定植後の管理などほいずれも 関係作物の慣行法に腐った。 花粉管の伸長測定にほ,授粉後30分, 1時間,2時間および4時間毎に花柱を 第1図 薬の型の表示法 酪酸■7ルコール液で固定して,花柱の押 しつぶしまたはミクロトーム構断切片の検鏡に】よった。いずれもコットンブリュウで染色したものであり,使用 花柱数は各崩料いずれも1試験区.20個である。 受精の有無は,授粉後1時間,2時間および4時間毎に子房を酷酸アルコー・ル液で周遷して,パラフィン法に. よって連続切片を作って−検鏡した。染色はノ、イデンハイン氏へマナキシリンとユオ・シソの二重染色である。各試 験区に使用した子房の数ほオクラおよびトロロアオイの自殖でほ夫々15前後,カー・クラ×トロロアオイおよび逆交 雑でほ夫々30前後である。 胚および種子の発育の調査には授粉後2日,4日,8日,15日,20日および30日目に,子房を酪酸7ルコ−ル 液で固定し,それらの子房を切断して挽跡こ供した。使用子房数は各羽料いずれも1試験区30乃至40である。 根端の染色体数は酪酸■7■ルコー・ル液で固定し,酪酸オルセイン染色による押しつぶし法により,また花粉母細 胞の染色体接合はナワシン液で固定,離酸オルセイン染色により夫々観察した。 第2節 着生した前および種子 1..親の品種を異にする場合 (1)着満歩合および一朝中の種子数 オクラ8■■調動け各々を用瀬とし1これにトロロ■7■オイ2ポー碓を交配して,その羞動歩合および一動・いの柚子数 を調べたが,その結果ほ貴′‡2去に示す如くてある。交配に使用した花数は少ないが,着勅歩合は母親の品種によ

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− 6 − 第2表 オ・クラ×トロロアオイにおける貴顕歩合および一朝中の平均種子数 オ・クラ×トロロアオイ普通種 オクラ×トロロアオイ高稗種 って異なり,高いものほ90%以上,低いものは30%以下であった。また父親の品種の違いによっても着沸歩合に・ 差異が認められ,トロロアオイ普通種の方が同高梓種に・比し,概して良好であったが,その原因ほ不明である。 なおトロロアオ・イ2品種にオクラ8品種を交配した場合は,本実験ではいずれの組合せにおいて−も1個も着朔 をみなかった。ただし,オクラの自殖(単に袋掛けするのみならず,人為授粉を行う)では着癖歩合はいずれの 品種も100%であった。 ・一滴中の種子数についても,母親および父親の品種による差異が認められた。 (2)種子の大きさおよび重さ 種子の大きさおよび重さは第3表に示す如ぐである。オクラ×トロロアオイ普通種とオークラ×同高梓種とでほ, オクラ1を母親ケこした場合,その他ごく一部を傾き,いずれも前者の方が後者よりも大きな偲を示した。 第3表 オクラ×オクラ,オクラ×トロロアオイ普通種およびオクラ×トロロアヌーイ高梓種の種子の形質 オ・クラ1×トロP■アオイ高梓楷 〝 2× 〝 〝 3× 〝 〝 4× 〝 ︵=032︵∠ 2つん22 4・42士0“81f 31ファ土0・84 芸㌻こ言語呂‡三喜喜≧芸ミニ害§…呂:三≡三 4・67±0“91t 4・06土0“80 3,85土0.79 365士0.71 3.64±068 3.63土0‖74 3.95土0。72 3い61士0.73 386士0.77 3.95士0.77 ︵第2表参照︶ づ牒月6 2222 × × × × 巴J6﹁ノ8 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 肺考‥種子の大きさはいずれも50粒の平均値

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ー 7 −・ (3)Fl種子の発芽歩合 実験ほオクラ×トロロアオイ普通種の場合のみ であるが,その結果ほ第4表に示す如ぐである。 播種粒数の杓々少ない系統もあるが,母親である オ■クラの品種の速いに、よって発芽歩合に腰著な差 異が認められた。すなわち,発芽歩合はオクラ7 を母親にした場合が8313%て般もよく,最も悪い のはオクラ1,6および8を母親にした場合、で, それぞれ3・3%,2・7%および4.4%であった。 第4表 Fl種子の発芽歩合 オクラ品種番可播種撒】発芽数l発芽歩合(%) 81つ山1 7▲705 ︻hJ535 4364 つム618 81∩︶︵∠ l l l ︵∠ 5 3.3 31.4 34.4 353 59小6 2。.7 83 3 4、4 2.交配組合せの方向を異にする場合 (1)着南歩合およぴ一朝中の種子数 オクラおよびトロ=ロアオイの正逆交配に・よる着朔歩合および一湖中の種子数は第5表に示す如く,オクラ×ト ロロアオイほいずれも通交配より も良好な値を示した。なお一廟中 の磯子数はオクラとトロロアオイ の自殖では,100朔の平均で,夫 々73.1粒と59い3粒であった。この ように両者の間に.差異がみられた ので,交雑によって生じた…湖中 の種子数を,母親の自殖の時の−・ 新中の種子数に対する割合で比較 これにおいても明らかに前老の方 弟5表 オクラとトロロアオイとの間の交配による着覇歩合 および一粥中の種子数

交配組合せ 匪配花数座職

数の * (%) オ■クラ×トロロアオイ トロロアオイ×オクラ 備考‥*母親の自殖の時の一朝中の平均種子数に対する交配して得た沸の 種子数の割合 すると,オクラ×トロロアオイと辿交配とでほ,夫々34.8%と27l.3%となり, が高かった。 (2)種子の大きさ オクラおよびトロロアオイの正逆交配忙よって得られた新および種子はPl‖1,Fig.1に示す如くであり,Fl 種子の大きさを両親の自殖種子と比較して示したのが第6表である。すなわちオ・クラ×トロロアオイでほオク ラの自殖に、比し,長さ, 弟6表 オクラとトロロアオイとの間の交配により着生した種子の大きさ 幅,厚さともに明らかに 小さいが,逆交配ではト ロロアオイの自殖と,殆 んど差異は認められなか った。 種子の外観,とくに種 皮の色はオクラ×トロロ アオーイでは,オクラの自 殖と特別な差異ほ認めら 平均種子の大きさ(mm) 交 配 組 合 せ 調査種子数

長 さl 幅 l厚 さ

カークラ×トロロアオイ トロロ17■オイ×オクラ オ■ ク ラ の 自 殖 トロロ7■オイの自殖 4.3士1.0 3.8±0“8 5.1士09 38士07 3い6士0‖9 3.0土0.7 3て士0.9 2.3土0,5 れなかったが,逆交配でほ,トロロ7■オイの首殖に比し,柵々光沢のないこげ茶色を呈していた。髄子の内容は オクラ×トロロ7■オイでは,オクラの自殖と特別な差異ほ認められなかったが,逆交配ではPl.Ⅱ,Fig4に示 す如く,内容の充実した完全種子はごく僅かで,大部分が内容の空虚な種子であった。これらの種子を水に浸潰 すると,充実した相子は沈卜するが,雪害J詣な種子ほ皆浮いた。 (3)Fl種子の発芽歩合および交雑成功歩合 オクラおよびトロロブ■オイの正 逆交胤の結果得られたFl全種子の発芽歩合は第7表に示す如く,オクラ×ト ロロ7■勇一イの方が逆交配よりも著しくかゝった。また交雑成功歩合を着萌歩合と母湖の自殖の時の一廟中の平均

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ーー・8・一一 種子数に対する交 配して∴得た覇の種 子数の割合と発芽 歩合との欝で表わ すと,オ・クラ×ト 第7表 オクラとトロpアオイとの問の交配のFl種子の発芽歩合および交雑成功歩合 交雑成功歩合 (%) 交 配 組 合 せ オクラ×ト ロロアオイ トロロアオイ×オクラ 芽数発芽歩合(%) P Pアオイでほ約 9.91%で∴逆交配の015%に、比し著しく高い値を示した。 第3節 正逆交雑における花粉管の伸長,受精の有無,および種子の発育 前述の如く,オ・クラおよびトロロアオイの正道いずれの交雑に」おいても着沸し,種子を生じたが,トロロアオ イ×オクラでは内容の空虚な種子が大部分を占め,発芽が著しく不良であったので,その原因を・究明するために 花粉管の伸長,受精の童無,胚の発生状況および種子の発育程度を観察した。花粉管ほ弟8表に示す如く,オク ラおよび十ロPア オイの自殖でほ, 授粉後30分で,と もに花柱の長さの 平均約50∼60%ま で侵入し,1時間 後では,既に子房 に達していた。オ クラ×トロロアオ ̄ 第8表 オクラとトロロアオイとの間の交配における花粉管の伸長 交 配 組 合 せ ト授粉後30分l同 1時間同 2時間【同 4時間 オクラ×トロロアオイ トロロアオイ×オクラ オ ク ラ の 自 殖 トロロアオイの自殖 備考こ花柱の長さに対する花粉管の長さの割合(%),(各試験区20花使用) イでほ授粉後30分 では花柱の長さの平均的30%,1時間後でほ同じく約90%まで侵入していたが,通交雑では授粉後30分では,花 柱の長さの平均的20%,1時間後でほ同じく約50%まで侵入していたに・過ぎなかった。しかし,両者のいずれの 交配組合せにおいても,授粉後2時間でほ完全に子房に達していた。授粉後48時間における受精の状態ほPユ, Ⅲ,Fig.5に,これ以後の胚の発育はPl.m,Fig.6,Pl、Ⅳ,Fig..7に示す如くである。すなわち,オクラ ×トロロ17月一イ,オ・クラおよび十ロロアオ・イの自殖では,援粉後48時間で,既に受料を完了し,以後胚の発育を 見たが,トロロアオイ×オ・クラでは,受精の有無および胚の発育は見られなかった。また胚の発育ほオクラ×ト ロP1アオイではオクラの自殖に比し精々遅れていた。種子の発育をその長径で見ると第9表に示す如く,オクラ 弟9表 オ・クラとトロロアオ・イとの問の交配における授粉後の磯子(または胚珠)の発育 r 播種後2日】同 4日 交 配 組 合 せ オクラ×トロロアオイ トロロ■アオイ×オクラ オーク ラ の 自 殖 トロロアオイの自殖

同8日L 同1可 同2可 同30日

6.0 4−9 6.2 5.0 2.91 2。00 264 2.05 6 4 0 0 m O l つ山 9 6 5 6 4 5.9 4.9 6ル1 4.7 1い41 1.14 1.34 1120 備考:種子の平均長径(mm)で示す ×トロPアオイ,通交配,オクラおよびトロロ7■オイの自殖では,発育初期はいずれも2日日毎に約2倍に発育 したが,8日以後は大きさの増大は殆んどなく,30日の完熟期近くでは,ごく僅かではあるが小さくなった。 第4節 正逆交雑のFlの特性 オクラおよびトロロアオイの正逆交雑のFl椀物はPlV−,Fig。8に,ニれらの相性ほ補10真に示す如くであ る。トロロアオイ×オクラの2系統では,夫々1個体を待たので,供式場体数を揃え.るた捌こオクラ×トロロ7’

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・−・9 …− 第10表 オクラと†ロPアオイとの問のFl植物の生育状況 オイにおいても, 逆交配と同じ親の 系統の個体を用い て㌧作ったFlの2 系統から1系統1 個体宛を採用し, いずれも鉢植とし で比較し,残りの 個体は圃場栽培と した。鉢植のトロ l、

二」

:.−−⊥⊥_∴‥__二1、」

交配組合せ トロロ1アオイ×オクラ 備考:10月29日調査,*印ほ11月29日調査 ロアオイ×オ■クラ のFlの両個体の草丈が著しく異なり,実数も若干異なっていた。その原因は明らかではないが両親系統ほ正道 交配に.おし、てともに同一・であるが,用いた個体が違っていたために,永年自殖を続けてきた材料でほあるが,厳 密な意味の純系でなく,草丈に関して分離が起ったのか,あるいは供試Flの個体数が僅か1個体であるための 栄養,その他の環境に.よる変異に基づくものではないかと考え.られる。しかし,節数,着朗数には両種の交配 組合せの雑種の間にほ,全くあるいほ殆んど差が見られなかった。しかして,鉢植のオ・クラ×トロロアオイFlと逆 交雑のFlとは節数は殆んど同じであったが,貴顕数は著しく異なり,オクラ×トロロアオイ Flは多いが,逆交 雑では著しく少なかった。この着新教に関Lてほ,圃場栽培のオクラ×トロロアオ・イ Flの全個体についても, 系統および個体聞に大きな差異は認められず,いずれも鉢枯の場合と同様逆交雑より多かった。薬の切れこみ ほオクラ×トロロアオイFlの方が逆交雑より精々浅い傾向が見られた。なお,以上のFl植物に㌧見られた正遵交 雑に、おける着動および棄型の差異ほ各Flから生じたF2の分離植物においても持続される傾向としてうかがわれ た。 オ・クラおよびトロロアオイの正逆交燕のFl植物の四分子形成期における二分子形成の割合および花粉稔性は 第11表に示す如く,個体問および両種の交配組合せの雑種間に顕著な差異ほ認められず,いずれも,花粉二分子 弟11表 オクラとトロロアオイとの間のFlの四分子形成期における二分胞子の割合および花粉稔性 交 配 組 合 せ 個体番矧二分胞子 云管暮桓大花粉恒常花粉 合 討 健全花粉 の割合 オクラ×トロロアオイ トロロアオイ×オクラ の出現率や,花粉稔性ほ比較的高かった。 オクラ×l、ロロ17オ・イのFl椎物の自殖では17顔中に.1粒の種子を得たが,逆雑種では僅かに1覇を得て,1 粒の充実椰子が稔っていた。この正連邦種では稔性に.著しい差異を示しているが,本実験の範囲内では詳細は不 明である。しかし,いずれの雑種においても種子稔性は極めて低かった。 第5節 染色体数および還元分裂における染色体接合 オクラおよびトロロア勇一イの染色体数は夫々n=62,2n=124およびn=34,2n=68である。これを従来の研究 者の結果と比扮するとむ‘i12表に示す如く,研究者によりかなり異なっている。しかし,本実験に使用した材料の 染色件数ほ香ノIl′31〉と同じであった。またFlの染色体数は第2図に示す如く∴両種の正逆いずれの交雑も2n=96 で,両親の半数の和をホした。またPMCにおける成熟分裂はいずれも班別正しく行われているが,f1のPMCに

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−10− 弟12表 オ・クラおよびトロロアオイの染色体数 ト ロ ロ ア オ イ オ ク ラ 研 究 者 】l 二】l n

l 2n

TESHIMA(1933) DAVIE(1933) 知 崎(19.34) BRASLAVETZ(1934) S王【0VSTEI)(1935)(1941) MEDVEDEVA(1936) Cuba産 Ceylon産 FoRD(1937) 香 川(1944) Jos王ⅠⅠ&HARDAS(1953) 桑 田

長−炬

魚噂 、り.机 血響 第2図 オクラとトロロアオーイとの問の正道交雑のFlの棍端細胞における染色体(×1710) a:オ・クラ×トロPアオイfl(2n=96) b:トロPアオイ×オクラFl(2n=96) 第13表 オ・クラとトロロ■7■オイとの間のFlのPMCにおける染色体接合数とその頻度

∴、、、・=、

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d〕 0 b 第3図 オクラ×トロP7■オイFlの成熟分裂(×1140) a:5】Ⅰ+86I b:L7Ⅱ+82Ⅰ

(13)

ー11− おける染色体の接合は第13表に示す如く,いずれの交配組合せにおいても,二価染色体が現われ,その数7が最 高の出現頻度を示しノた。しかして,オクラ×トロロアオイ Flでは,本実験の範囲内でほ,5Ⅱ∼フⅡ以外ほ見ら れなかったが,逆雑種でほ1Ⅱ∼7Ⅱが観察された。それらの状況ほ第3および4図に示す如ぐである。 オクラ×tロロアオイおよび道雄種のPMCでは,その大部分に復旧核が形成されるが,ごく一部にはこれが 形成されず,四分子になる。その他種々の異常分裂が観察されたが,正逆雑種の問に,染色体接合数以外には大 きな細胞学的差異ほ認められなかった。 ’ 。 .こ、、 ∂0

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0 0 わ¢ 一り 0 ゆ 0 00 亡 第4図トロロアオイ×オクラFl(×1140) a こ3Jf+90工 b;41r+88工 C:6】Ⅰ−ト84ェ d:7Ⅱ十82工 第6節 考 察 湖の染色体数を異にするオクラ׆ロPアオイ普通種およびオクラ×同高梓種でほ,老親歩合は低く,約27∼ 92%で,母親の品種の違いによる差異は明瞭であり,父親の品種による差異も認められた。また一朝中の種子 数,穣子の大きさ,速さについても∼・母親および父親のl品種の違いにより,Fl種子の発芽歩合も母親の品種の速 いにより著い、差異が認められた。なおこのオ・クラ×トロロアオイFl種子の発芽歩合についてUsr川0vA(ユユ4)ほ 23.08%と報しているが,これは本実験において得られた最高と最低との間の値である。このような母親および 父親のl■−一t−一種の違いによって生ずるFl諸形封の追いは,いずれも遺伝子の差に基因するものと考えられる。 染色体数を異にする秘、屈問交雑においてほ,止迎交雑によって,このように着胡歩合,着粒歩合ならびに種 子の発芽歩合を異にし,したがって,交雑成功歩合に著しい差異を生ずる場合がある。KATAYAMA(36)ほ A紹朝坤sおよび7サ摘加仰いガ諸種の聞の種,属借交雑において,交雑成功歩合を着粒歩合と発芽歩合との私を 以て,表わしで、、るが,木突放の如く,潮のできる柄物でほ,着桝もまた交雑成功の条件の一つになるので,本 冥験では着勅歩合と着粒歩合と発芽歩合との毛てをもって表わすことにした。なお江迎交雑におけるこれらに閲す る一一・迎の研究(5211011711812=9119)は,虻の発生学的研究と柑侠って行われて釆たが,交配の方向と交雑成功歩

(14)

−12−一 合との間にリサべての植物に適する法則ほいまだ見出L・難い。若桑(117)は,小麦属の種間正道交雑において,染 色体数の少ない力を母親にすると,多数の種子が得られるが,発芽は悪く,逆に染色体数の多い方を母親にする と,着粒ほ少ないが,発芽は良好であるとしている。またKIHARA&NISHIYAMA(39)ほ燕麦の種間交雑において も略々同様の結果を得ている。しかして,これらの交配成功歩合についてほ,母親のゲノム,雌雄両核のゲノム の数に関する比数などからも考察が加えられている。本実験においても,染色体数の多いオ・クラを母親とし,染 色体数の少ないトロロアオイを父親としたカが,その逆の場合よりも,着沸歩合,→新中の種子数およびFl種 子の発芽歩合がそれぞれ高く,したがって,交雑成功歩合も高かった。 なお着新ほオ・クラの自殖およびオ・クラ×トロ∵ロ■アオイでほ,正常に行われるが,トロロアオイの自殖およびト ロPアオイ×オクラでほ,種々異なった様相を示す。すなわち,十PPアオイほ生育段階の違いによって,自殖 や交配の可能な時期と,交配ほ勿論,自殖すら著しく困難な,時にほ全く不可能な時期とがあり,こ.れがさら に,環境,とくにり気湿と湿度とによって強く影響される(桑田)(49)。またトロロアオイを母親とする場合に.は, 着掛こ細胞質が関与するものの如くである。このことば,トロロアオイ×オ・クラの着朔のみならず,オクラとト ロロアかイとの正逆交雑より生じた両種のFl植物の若潮に著しい差異が現われることよりも推察されるところ である。なおかかる現象は後述(第5章)のトロPアオイ×糊麻の場合にも見られる。 以上の如く,オクラおよび】、ロロアオイの正逆交雑に・おける着萌歩合は染色体数が多く,かつ自殖における着 荊が正常に行われるオクラを母親とする力が,染色体数が少なく,かつ自殖に・おける着朔に特殊な様相を示すト ロロアオイを母親とするよりも良好である。 一新中の種子数はオクラ×トロロアオイでも,逆交配でも,夫々オクラおよびトロロアオイの自殖より減少す るが,減少の程度ほ後茎のカが著い、。オクラ×トロロアオイFlの種子の形は母親と同じであるが,小さくな る。これに対して,迎交配のFl種子は形,大きさともに.母親と同じである。オクラ×トロロアオイ,オ・クラお よびトロロアオイの自殖でほ,いずれも充実した種子が得られるが,十ロロアオ■イ×オクラでは,オクラの花粉 が刺戟となって,種皮のみが正常に・発育し,安田(123125)が指摘するPhenospermyとみなし得る場合が大部分 である。したがって−,たとえ,外形および大きさに.おいて,正博の種子と大きな差異が認められなくても,その 大部分ほ内容の空虚な種子で,充実した種子ほ皆無か,あるいほどく僅かである。なおこれら一顔中の種子数ほ 花粉管の伸長とも関係している。すなわち,オクラ×トロロアオイでは,花粉管の伸長は良好で,かつ早いた め,多くの胚珠が受精されるが,通交配では,花粉管の伸長がおそいため,その大部分ほ子房に遷する迄に途中 で伸長を停止してしまう。また後者の場合に・は,たとえ花粉管が胚珠に到達し,受精が起っても胚の大部分ほ発 育が中途で停止し,したがって,順調な発育を遂げる胚珠ほ著しく少なくなる。このように.,花粉管の伸長が早 い交配組合せでは,これのおそい組合せよりも充実種子数ほ多い。 Fl種子の発芽歩合ほ当然その充実度に関係する。オクラ×トロロアオイでは,種子が前述の如くいずれも充 実してし、るために発芽は良好であるが,逆交配では,種子が空虚なため発芽は著しく悪い。したがって,交雑成 功歩合はオ・クラ×トロロアオイの力が逆交配よりも著しく良好となる。 TESH∫MA(109〉ほオクラ×トロロアオイは容易であるが,逆交配では新は発育するが,含まれる種子はいずれ も内容の室虚な不完全種子のみであるとし,この着朔現象は柱頭上に発芽する花粉の刺軟に】よる単為結果である としている。また同氏ほ正逆交雑の成功歩合の差異ほ花粉管の伸長の割合によるものではなく,細胞質の影響に. よるものであるとしている。筆者の場合は上述の如く,細胞質および環境などの原因が花粉管の伸長に差異を生 ぜしめ,そのために正道交雑に差が生じたものと思われる。 PAL,SINGI王&SwARUP(84)はオクラ×トロロアオイの着頻歩合ほ不明であるが,逝交配では80..0%の高率を 示し,−湖中の外観正常な種子数ほオクラ×トロロアオイでほ97粒,逆交配では34粒であり,−湖中の生育し得 る種子の割合は,オクラ×トロロアオイでは,100%であるが∴逆交配では47,.4%であると報じている。この ように,トロロ■アオイ×オクラの着萌歩合が本実験の場合より高いのはトロロアオイの品種の差異および生育 環境の相違に基づくものと思われる。また外観正常な種子がオクラ×トロロアオイ,逆交配ともに本実験の場 合より多いのは,やほり用いた両称の品種の差異によるものであろう。しかしてオクラ×トロロアオイでは全 部が生育し得る稚子であったのに反して,逆交配では約半数しか生育しなかったのは本実験の場合と同様に. PhenospeImyiこよって内容空虚な種子が含まれていることを示すものと考えられる。なお同氏等はFlほ正連邦

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・−・■13一 種いずれも実全に不稔であるため,F2を得てし、ないし,かつ,両種のFlの詳細な特性および両親の染色体数に. ついても触れていない。 本案験のオクラとトロロアオイとの正連交兼のFlにおいて,とくに大きな差異の認められない形質もあるが, 着朔数ほ著しい差異を示し,薬型に.も多少差異が認められた。正道いずれの交雑に.おいても,Flの核はオクラ およびトロロアオイのゲノムを併せ持つが上組職質ほオクラ×トロロアオイでほオ・クラの,逆交配でほトロロア オイの細胞質である。したがって,着妨数および葉型に現われた上記の差異ほ細胞質の差異に、基づくものと思わ れる。従来,この種の現象に関する研究ほきわめて多く,MICHAELIS(61)ほ塾那励加乃鮎川抽脚 と点り加東炒沼 との正逆交郊のFlに.おいて,花粉稔性が著しい差異を示すこと,あるいは点りゐわS〝f伽研と及」旭川〃ゎタ〝∽と の正道交掛こおけるFlの形肇の差異の程度がゐ査グ.S祝g〟研の系統の違いに.よってことなることを認めてこいる(62・63, 8465)。また木原(41)ほノ鮎邸兢ゆ5および㌧r正路乃㈲ の諸種を,木原,山田(42)ほAβgまわ♪一Sの諸種を用いて,兵 庫プラズマがFlの不稔の原因とみなし得る現象を報じているし,RuRIYAMA&WATANABE(48)もBrassica属 で同じBCゲ/ムを有する植物でありながら且cαダ吉〃αねの半数体の稔性と風習ggγα×且0おγαCβαのFlの稔 性とが著しく異なるのほ,プラズマの影響と思われると報じている。しかし,本実験における如く,細胞質が花 曹の形成,したがって,着卿こ影響をおよぼすことについてほ今迄にその報告を見ない。しかして,この着席に 細胞質の特性が関与することはトロ∵ロアオイの自殖,あるい ほトロロアオイ×オクラにおいて,トロロアオイ自 体の生育段階および環境に.よ、つて−,着荊の容易な場合と著しく困難な,あるいは時に.ほ不可㌧絶な場合のあること と何等かの関係があるかも知れない。 両親の染色体数ほ研究者によ、つて著しく異なっているが(灘12表),オクラについて,FoRD(1ら)はGuba産の 有料でn=66を,Ceyユom座の材料で2n=66を観察し,オクラに2Ⅹと4Ⅹとが存在すると称している。全体を通 覧すると,TESHIMA(109)の羽料とFoRD(15)のCeylon産の材料はnで30代,2nで60乃至70代であり,その他の 研究者の材料ほnで60前後,2nで120乃至130前後であって,大体に、おいて2群あることがうかがわれる。本実 験村料ほ2n=124であり,染色体数の多い群に属する。またトロロアオイの従来の研究結凛は2n=60乃至68であ るが,本実験羽料ほ2n=68である。なお,最近†ロロアオイの突然変異体で,2n=64乃至66の相物体が発見さ れたが(桑田)(50),詳細ほ後に報告する。オクラとトロロアオイとの正道交雑のFlのPMCの二佃傑色体数ほ1 ∼7で,二価染色体を含まないpMCは見られなかった。この点ほ知崎(111)の結果と異なっている。同氏の場合 ほこ価染色体数ほ0∼7で,0が最高の頻度を示し,PMC総数の約半数を占めていた。このような差異がどう して生じたのか,その原因は不明であるが,環境の相異または両親の染色体数の相異などが関与しているのかも 知れない。なお,本実験における正道交雑のFlの染色体接合についてほ,とくに大きな差異ほ認められなかつ た。 第7節 摘 要 (1) オクラとトロPアオイとの問の交雑において,親の品種を異にする場合,また交配凝合せの方向を異 にする場合の交雑可能度点らびに正道交雑に・おける雑種の形質および還元分雲掛こついて研究を行った。 (2) オ・クラ×トロロアオイにおいては,親の品種の違いによって着朔歩合に】差異を生じ,約27%より92% 迄であった。一朗中の種子数,種子の大きさおよび蛮さも両親の品種の速いによって差異を生じた。Fl毯子の 発芽歩合も母親の品種の違いによって著しい差異を示し,2…7∼83.3%であった。なお,トロロ■アオイ×オ・クラ でほ着功しなかった。 (:3) 着萌歩合ほオクラ×トロロブ■オイでは逆交配より良好であった。また一顔中の種子数はオクラ×トロ ロアオイでは逆交配より多く,かついずれも,オクラおよびトロPアオイの自殖よりも少なかった。着生した種 子の大きさはオ・クラ×トロロアオイではオクラの自殖よりも小さくなったが,逆交配でほトロPアオイの自殖と 殆んどかオフりがなかった。 (4) Fl種子の外観,とくに種皮の色および内容の充実度はオ・クラ×トロロアオイではオ・クラの自殖と同 様であったが,逆交配ではトロロアオイの自殖に比し種皮の色は光沢が無く,かつ内容が空虚であった。また Fl種子の発芽歩合および交椎成功歩合はオクラ×トロP7■オ・イでは連交配よりも著しく高かった。 (5) 花粉管の伸長速度ほオクラ×トロロアオイでほ早く,授粉後1時間で,花柱の長さの約半分しか侵入

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−・ユ4− していなかった。 (6)Fl植物において,オクラ×トロロアオイと逆交配とでほ,とくに大きな差異の認められない形質もあ るが,着粥数は著しい差異を示し,前老の交配組合せの方が多かった。トロロアオイ×オクデでほ,母親の細胞 質が着沸の少ないことに関与しているものと思われる。 (7)Fl植物に生ずる二分子形成の割合と花粉稔性とほ正道交紳こおいてともに高く,その間に差異ほ認め られなかった。またFl植物の種子稔性ほ正道交雑に・おいてともに著しく低く,その間に差異は認められなかっ た。 (8) 染色体数ほオクラ2n=124,l、ロFアオイ2‡l=68,正逆交雑のFlほともに・2n=96であった。また両 親のPMCに.おける還元分裂は規則正しく,具備ほ認められなかったが,正逆交雑のFlに・おいて,大部分のPMC に復旧核が形成され,二佃染色体ほ7Ⅱが最高の頻度として現われ,分掛こほ種々の異常が観察された。しかし, 正逆交雑のFlの間にこれらに関し,とくに大きな差異ほ認められなか、つた。

第2葦 オクラ×トロ=ロアオイ奴1の稔性発現の機構

第1節 実験材料および方法 花粉形成に.およばす異常湿度の影響に.関する実験に使用した材料は,1953年に・,オ・クラ2品橙にトロPアオイ 1品種を交配し,得たる2系統のFl種子を翌年5月12日に.全粒播種箱に・播種し,6月29日に・本圃に・定植したも のである。8月に供試個体に徐々に根廻しを行い,その後上塗の尺鉢に鉢上げして,鉢上研こよる植物体の影響 がなくなるのを待って実験を行った。試験区は高温区,低湿区および変渦区の3つに大別し,それらをさらに,

400c−1h,400c−3h,42Oc−1h,45Ocq30mと14∼160cTlh,14∼160c−3h,0∼4Oc−1h,0∼4Oc−3hおよび

0∼40c−1b,→420c−1Il,42◇c−1b→0∼40c−1壬1の10区に分けた。使用個体数は各試験区小ずれも2乃至3個 体である。まず,全便用個体について,鉢上捌こよる花粉形成におよぼす影響のないことを,鉢上げしない材料 と比較して,確認した。同時に対照として処理前の,自然条件下においてダイ7■ト紺胞の現われる頻度を観察し た。つづいてこれらの羽料個体中より,午前8時と9時との問において,蕾の中央部の一部の約を検鋭すること により,還元分裂中なることを確認したのち,この個体を所定の条件の下で処理せ行った。高温処理の場合は高 さ,幅および奥行が夫々60cm,50cmおよび50cmの偲穴何の定温器の中へ,底穴より地上部全部を挿入して, 所定の時間処理を行った。低温処理の場合ほ氷室を使用し,雑物体全部を処理した。変温の場合は上記両法を併 用した。処理後は鉢を取り出して日蔭に置き,処理蕾が四分子の時期に達した時に,これを採って1司足した。固 定液は酪酸アルコールで,染色にほ耐酸オルセインを使用した。 子房組織に.おける染色体の構成の差異が稔性の発現におよばす影響に関する実験に使用したオ司料はオクラとト ロロアオイの数系統で,実験ほ1954∼1956年にわたって行った。19S4年にほ,オ・クラ×トロロアオイFlの3系 統の幼植物(本葉2ないし3放出た頃)をコルヒチン処理によって染色体の倍加をはかった。

1955年にほ,オ・クラ×tロロ■アオイFlの数個体を用いて,同仙個体を挿木により2個体に分け,一・方を無処

理のj禦準とし,他方をコルヒチン処理によって染色体の倍加をほかった。かつ前年忙おいて,コルヒチン処理に ょる推定倍加個体(以下これを4Ⅹという)から自殖によって待た種子を播偏し,F2植物を育成し,その種子稔 性および染色体数を検定した。1956年には,前年,コルヒチン処理によって得た4Ⅹの自殖種子を播種し,F2植 物を育成し,その梅子稔性および染色体数を検定した。また前年にhおいて,無処理の個体(以下これを2Ⅹとい う)で,温室において越年させた個体をひきつづいて育成した。 同一個体を挿木によって2個体に分ける方法はつぎの如くである。まず,4月23日にオクラ×トロロ■アオイ Flの種子を播種箱に播種して硝子室内に眉いた。4枚日の本柴が展開しかけた時にり下より2枚日の本葉の葉 柄が茎に附着する部分の直下の茎遵メスで切り,切り取った挿穂は下より2枚日の本葉を葉柄の基部で,同じく 3枚日の本菓を葉の先端部約%で切り落し,あらかじめ用意した川砂をいれた浅い箱に挿し,上を硝子で蓋をし て,水分の蒸散を防いだ。なお挿木の時にル−・トンを使用した。このようにして,100%の活着を見た。挿木ほ 6月9日と11日の2回に分けて行った。−・九挿穂に取った残りの部分については,1枚日の本葉の所から出た 側芽を生長させ,6月22日に.コルヒチソ処理を始めた。処理方法はラノリン法で,濃度は0・・5%,期間は1主因間

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−▼1S− である。本閻への定植ほ,7月9日である。 なおコルヒチン処理当代における染色体倍加の推定ほ各年ともに,主に気孔の長さおよび花粉粒の直径にLよっ て行った。ただし推定倍加個体のうち,疑わしい個体および明らかにキメラ状とみなし得る個体は全部実験羽料 より除外した。その他,栽培管理などは慣行法忙従った。 第2節 Flの花粉形成におよぽす異常温度の影響 ダイアド細胞の現われる頻度を観察した結果ほ第14表に示す如くである。使用系統および個体数ほ夫々2およ び23である。対照区忙おける系統問および個体間のダイアト細胞の出現率の変異の幅ほ著しく狭く,86・4%乃至 989%である。各試験区に淑、ては,本実験に】おける如く,処理時間の比較的短い場合には,各供試荊中の花粉 母細胞の成熟程度の違いによって,処理の受け方も自ら異なってくることが考えられる。しかるに各試験区に・お ける処理区と対照区とのダイアト細胞の出現率には,かなりほっきりした違いがあり,処理区の最大値すら,対 照区の最低値にもおよばない。このことはたとえ処理の影響を受ける時に,各供試荊中の花粉母細胞の分裂時期 が多少異なっていても,すなわち,ダイアト網胞の生ずる頻度がことなったとしても,処理区のそれは対照区の ダイ・アド細胞の出現率よりも低くなるものとみて差支えないものと考えられる。 そこで各試験区j附こダイアド細胞のfH現率を検討するとつぎの通りである。高温区のうち400c−1h,400c一 策14表 オクラ×トロロ7■オイFlにおけるダイアト細胞(花粉粒)観察の頻度 対照区に 対する処 理区の% 、 ダイアド細 胞の%の花 蕾間変異 ダイ7■ド 細胞の% ダイアト 細胞数 花粉母細 胞全数 試 験 区 81.1 727′、フ84 89.9∼94い5 ;;ニ……二:;l851・2

¶・−

2……j948

処 理 対 照 処 理 対 照 64、1′−74.8 94.3∼95い5 420c−1tl 11.9へノ42.4 87.3へノ9フ,6 処 理 対 照 450c−こ30m 64.2∼71.4 94.8∼95.5 処 理 対 照 14∼16◇c−1b 54−7′}682 872∼964 519∼72.6 88い3・∼9フい3 処 理 対 照 14∼]60c−311 68 2 処 理 対 照 0∼40c−1壬】 58…7∼67.6 899∼98,6 2:…弓 …≡二; 処 理 対 照 0∼40c−3tl 66い3∼66.8 94.9′−〉98‖9 処 理 対 照 0′〉40c−1h一→ 420c−1Il

488【317

26= 24

66い2 55い0∼65.9 864∼98.4 処 理 対 照 42◇c−1b一寸 0・∼40c−1h

(18)

−16・− 3h,の両区でほ出現率ほ殆んど同じで,ともに朗照区守こ比し僅かに出現率が低いが,420c−1bでは,これがさ らに低く,また450c−30mでは著しく低くなる。したがって400c乃至450cの範囲の高湿では,処‡即寺間の長短よ りも,むしろ温度の高低に.よりダイアド細胞の出現率ほ著しく影響を受けるものと考えられる。低湿区では,14 ∼16◇cと0∼40cの2種類であるが,両区.の問に顕著な差異ほ認め難く,ともに対照区に㌧けし,ダイアド細胞の出 現率ほ低い。本低塩区でも0∼160cの問であれは,処理時間の長短はダイアド細胞の出現率に,たいした影響を およほさないようである。変温区では,高温より低湿と,低温より高温との2種類であるが,両者の間に∵大差は 認められず,ともに対照区よりもダイアド細胞の出現率ほ低い。 従来,この種の研究では,低温処理より常温(RosENBERG〈86)),あるいは高温(香川(28))に移した時に,倍 数生殖細胞生成の過程を示す特殊分裂像が多く現われるこ.と,および低湿より高温へ移す−場合ほ,迎の場合より も倍数花粉粒を生じ易いこと(松田(88))が知られている。さらに花粉母細胞に・異常温度を与えることによって, 出現率の増加したことを香川(呵ほQ〝α∽0√g∠才〟紹g鋸gαfβ× 吼き例眈由のFl,佐々木(87)ほ普通小麦×ライ麦 のFlにおいて−認めている。安藤(1)ほ本実験と同じ材料であるオクラ×トロロアオイのFlにこの種の異常温度を 与え,その影響を見ているが,処理が四分子期の48時間前に行われると倍数花粉粒の形成が多いこと,また処理 の温度,時間については,それらの高低,長短により,倍数花粉粒の形成が多くまたほ少なくなる場合のあるこ とを述べている。温度以外の環境条件として,香川(80)はrダ査f磨c%沼CO彿ゆαCわ‘∽×5♂CαJβC♂γβαおのFlについて−, 花粉形成に、およほす乾燥土壌の影響を見ているが,たいした影響ほなかったと報じている。 以上の種々の実験のうち,安藤(1)の実験を除くと,いずれもFlにおいて,倍数生殖細胞を作るためには,Fl の植物体をコルヒチン処理,その他の方法に.よって倍加するか,あるいほFlの生殖細胞の形成時に,何等かの 処理を与え.なければ,殆んど倍数生殖細胞が得られないことを示している。すなわち,正常な外囲条件の下に.お いて−ほ,倍数生殖細胞の形成される割合は著しく低いものである。しかるに〉,オクラ×トロロアオイ flにおい て−は,前述の如く正常の外囲の下においてすら,90%以上の高い割合でダイア=佃胞が生成される。すなわち, 普通小麦×ライ麦のFlなどとほ違って,幼植物にコルヒチン処理を行う必要がたいとされているオクラ×トロ ロアオイ Flにおいては,上述の如く異常環境は,かえって倍数生殖細胞の生成に顕著な悪影響をおよばすもの と考え.られる。 第3節 Flの染色体倍加による稔性の発生 1い1954年の実験 オクラ×トローコ7オイFlのラノリン法によるコルヒチン処理の成繚は第15蓑にト示す如くであり,使用系統は 8,10および11の3系統である。Flの8−2,8−3,8−4,8−6,10−4,10−6および11−1は無処 理の標準個体に比し,気孔の長さおよび幅はいずれも2乃至3割強大きく,菓の厚さも2乃至4割弱厚いが,花 粉粒の大きさは標準個体と大差が認められなかった。これら7個体の四分子の割合はいずれも80%以上で,着新 教は個体により柑々著しい差はあるが,種子稔性(一顧中の種子数をもって示す.)ほ標準個体に比し,著しく良 好であ、つた。また朔稔性(Pod−fe工・tility)=(全着新教に対し,完全に生育し得る種子を1粒でも含んでいる薪 の割合)も著しく良好であった。これらの点よりすれほ,以上の7個体はコルヒチン処理が成功したものと推定 される。 Flの8−1,10−1および10−2の3個体ほ某が精々縮れた状態を呈した。これほコルヒチン処理の影響で, キメラ状を呈するものと思われ,気孔の長さ,幅,実の厚さ,種子稔性および朔稔性に,精々例外的な異常な値 を・示し∴た。 Flの8−・7,8−8,8一9,10−3,10−7および11■2の6個体は気孔の長さ,幅,薬の厚さおよび花粉 粒の大きさなど,いずれも標準個体のそれらと大差はなかった。また着朔数は個体にLより差異を示すが,種子稔 性は例外なく,標準個体と同様に著しく低く,殆んど完全に不稔か,それに近い値を示した。新稔性も大部分の 個体では0%であったが,それ以外の個体でも,ごく低い値を示すにすぎなかった。したがって,これらの6個 体ほコルヒチン処理が成功しなかったものと思われる。

(19)

−17・− 第15表 オクラ׆ロロアオイFlのコルヒチソ処理成択(1954年) 備考:○印ほ推定倍加個体 △ほキメラ状,その他異常個体 ×印ほ推定非倍加個体 ※印ほ標準を100とした時の指数 2.1955年の実験 前年のFlのコルヒチン処理によって得られた7個体の4Ⅹの自殖および放任授粉によ、つて得られた種子を播種 した時の発芽歩合は第16表 に示す如くである。このう ち8−2,8−3,8−4 および8−6の4Fl個体の 自殖によるF2種子の発芽 歩合はいずれも著しく良好 であって,合計158個体発 芽し,96個体を育成するこ とができた。これらF24 系統96個体の特性ほ第1フ表 に示す如く,殆んど例外な く形質は揃っていた。また これら馳全個体の花粉粒 の大きさは1個体の例外も なく,両親のそれらより大 きく,既成の糊麻と大差は なかった。すなわち,これ ら96個体はいずれも復二僧 体と推察される。なお上記 第16表 F2種子の発芽歩合 第1フ表 オ・クラ×トロロアオイF2の語形質

(20)

・−18− のF24系統の夫々1個体について根端細胞を検鏡した結果ほいずれも2n=192であった。 つぎに前年オクラ×トロロアオーイより得たFl稚チを全粒橘篠し,得たるFl幼植物の全個体を挿木にhよって2 個体に分け,−・力を軸処理の標準とし,他力に.コルヒチン処理を行った。その成紆は第18表に示す如ぐである。 コルヒチソ処理の 成功したと思われ る個体の話形肇ほ 第18表 オクラ×トロロアオイFlのコルヒチン処理成蔚(1955年) 前年の場合と略々 同様の結果を示し た。−うーなわち,気 孔の長さおよびそ の他の形暦より判 断して,2−2, 3−1,5−5, 7−2,1、3−1お よび1:3−3はコル ヒチン処理の成功 したと思われる個 体であり,5−4, 7−8,12−2, 備考‥○,×および※印ほ弟15表と同じ 12−11および14−2は不成功と思われる個体である。これら各個体の様子稔性ほ成功したと思われる個体でほ 7..7乃至27.0粁であったが,成功しなかったと思われる個体では0乃至0碓如こすぎなかった。また朔稔性も前著 ではいずれも100%を示したが,後者では大部分が0%で12−11のみが50%を示したにすぎなかった。 3い1956年の実験 前年,Flのコルヒチン処理による推定倍加の6個体の自殖によって得られた種子のうち,2岬2,3−1,5 M5および7−2の4個体からの種子を播種してF2植物4系統を得た。これの4系統の種子の発芽歩合ほ前年 の成紆と同様に,いずれも著しく良好であった。またこれら4系統のF2植物の生育も前年の場合と同様,各系 統内の各個体間の形肇は殆んど例外なくよく揃っていた。かつこれらF2個体の気孔の長さおよび花粉粒の大き さも既成の糊麻と大差なかった。したがって,育成したF2個体はいずれも両親の複二倍休であると推定される。 なおこの4系統の夫々1個体について根端細胞を検錠した結果はいずれも2n=192であった。 っぎに前年,挿木によって2分したFlの一・力である無処理個体のうち,上記の4Ⅹと認められた4系統と同じ 個体番号のもの,すなわち同じ退伝子細成を秦する2−2,3−1,5−5および7−2の4個体と,同じく2Ⅹ の13−1および1二3−3の2個体,合討6個体を前年より温室内で越年させ,これらの個体の種子稔性を調査し た0それらの結果 凱9表4Ⅹと2Ⅹの種子稔性の比較 を前記F24系統 の4Ⅹと比較して 示したのが第19表 である。すなわち オクラ×トロロア オイF2の4Ⅹでは 種子稔性,朔稔性 はともに良好であ るが,オ・クラ×ト ロロ7■オイのFl の2Ⅹでは完全に 不稔である。 稔生(粒数)【勅稔性(%) 毒饗譲乳¶座竺

2_2 L 8

種 塀 オクラ×トロロアオイF2

8 【 252

2「2【 5--S

1 6

7−2 4 オクラ×トロロアオイFl

(21)

ー19一

第4節 考

察 −・般に種,屈間雑種における種子稔性ほ両親のゲノムの相同性によって著しく影響され,花粉稔性の著しく低 い時ほ種子稔性も当然低くなるが,花粉稔性が高いに.も拘らず,種子稔性が低下する場合がある。その原因と して,プラズマの影響,遺伝子の関与その他が考えられる。本実験の場合はいずれもオ・クラが母親であるため, 細胞矧まいずれも同山・である。1954年においては,4Ⅹ個体の自殖の種子稔性が2Ⅹの甘酢二比し著しく高かっ た。このことは,これら4Ⅹ個体が厳密な意味の倍加個体ゼはないとしても,注目に催する現象である。この稲 子稔性の差異の原田を究明するためにり遺伝子の影響帥こよる種子稔性の差異を除く目的で,勇一■クラ×トロロアオ イFlの−イ固体を栄養繁殖によって2分し,完全に同一竃伝子細織の個体を作り,一・力を無処理の標準とし,他 方をコルヒチン処理によって染色体を倍加して\比較検討した。 4Ⅹ個体の配偶子の染色体数はオクラとトロロアオイとの配偶子における染色体数の和で,n=96である。2Ⅹ 個体にぶいてほ,花粉母細月払から二分子のできる割合が高いことは観察しているが,卵のカの観察ほしていな い。しかし前述の花粉の場合と同様に,高率の倍加lした卵が生じているものと思われる。したがって2Ⅹ個体に・ おいてもn=96の配偶子が相当の割合を占めているものとみなし得よう。−・力体細胞における染色体数ほ4Ⅹで は両親の和の192であるが,2Ⅹでは両親の半数の和の96である。その結果ほすでに灘19表に示す如く4Ⅹと2Ⅹと では種子稔性,朔稔性に著しい差異が見られた。したがってこのことほ受精および受精卵の発育に,同じ染色体 数をもった配偶子同志が結合しても,それを発育させる母体の染色体数あるいは染色体の組成に影響されるもの と思われる。すなわち本実験においてほ,種子稔性の向上のためにほ,子房組織の染色体数あるいは染色体の組 織が受精卵のそれと同山であることが望ましく,前著が複名の半分である場合にほ,種子稔性の著しい低下ある いは不稔を示す。 従来櫛,属間の正道交掛こおける着粒および種子の発芽力の差異に・ついて種々の仮説が提起されている。 T厄OMPSON(110),若桑(117)はr7ま路地㈲乙において,肺乳内のゲノムが3Ⅹの時に・は橙子の発育ほ正常であるとし, WATKINS(120)は,7勤g吉c蝕椚=に.おいて,胚と胚乳のゲノムの比が正常比である2‥3を遠ざかるにしたがって, 種子の発達ほ悪くなる。またMUNrZING(67)はGαJ♂ゆS去Sにおいてほ,胚と胚乳と子房組織のゲノムの比が2 =:3:2から遠ぎかるに.したがって,雑得々子の発達ほ阻害されるとしている。オクラとトロロアオイのゲノム構 成は不明であるが,両種の配偶子にぉける染色体の紐を夫々AおよびBとすると,2Ⅹ個体あるいは4Ⅹ個体の体

細胞,胚および内胚乳は庚々AB,AABBおよびAAABBB,あるいはAABB,AABBおよびAAABBBの染色体

の紐となる。したがって■,上記の2Ⅹの憧子稔性が著しく低く,4Ⅹの種子稔性が高いことを染色体の構成より比 較説明するとつぎの如くになる。すなわち,胚と内胚乳との染色体の組の数の比がAABB‥AAABBB=4:6 (A】∋を一・単位とすれば,この比ほ2:3)である時に,子房組織のそれがAABB=4(同じく2)である場合 には,隆子稔性は良好であるが,これがAB=2(同じく1)である場合にほ種子稔性は著しく低下するかある いは完全に不稔となる。すなわち内胚乳の染色体の組の数が単に・6(あるいほ3)の場合,また胚と内胚乳の染 色体の組の数の比が4:6(あるいは2:3)の場合であれば,笹子稔性が良好であるのではなく,胚と内胚乳 との染色体の紐の数の比が4:6(あるいほ2:3)の場合に,受精卵を発育させる子房細職のそれが4(ある いほ2)であることが必要であり,これが2(あるいは1)である時には殆んど完全に不稔となる。すなわち, 従来の仮定とほ異なり,本村料においては,子房組織の染色体の構成の内容もまた呼子稔性に関与する。

第5節 摘

要 (1)オ・クラ×トロロアオイFlの稔性発現の機構をみるために、Flの花粉母細胞にL異′描濫度を与えることに ょってダイアド細胞の生成割合の変化,ならびにFlをコルヒチン処理.して染色体を・倍加させた場合の稔性の向 上に関する実験を行った。 (2)Flの花粉母細胞に異′嗣孟度を与える実験において対照区竹ま,90%以上の高率でダイアド細胞を生ず るが,高温(400c∼45〇c),低温(0∼160c)および変温(高温より低温,低温より高温へ移す場合)では夫々 ユ1.9%∼82い4%,519%∼72,6%および55,0%∼66.8%となり,450c処理が最も低かった。正常な外囲条件下に おいて,ダイアト細胞が高率に生ずる本実験の限りにおいては,異常温蜜処理ほかえ.って該%の低下をきたす。

(22)

・−20“− (3)オクラ×ナロロアオイFlの同一個体を挿木によって2個体に分け,−・方を無処理の標準とし,他方を コルヒチン処理によって−染色体の倍加をはかった。無処理の2Ⅹほ不稔であったが,倍加推定の4Ⅹの種子稔性は 良好であり,自殖によりF2を育成した。このF2も既成の細麻と同様良好な種子稔性を示した。かくて,オクラ ×トロロアオイFlの不稔の原因ほ胚と内胚乳との染色体の組の数の比が4‥6(あるいは2:3‘)の場合に,母 親の子房組織のそれが2(あるいは1)であるためであって,種子稔性の向上のためにほ4(あるいほ2)であ ることが望ましい。

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