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中武 優理 他 子宮頸部腺様嚢胞癌の1例 図1 摘出標本の肉眼写真 図2 頸部の組織像① HE染色100倍 癌細胞が 大小の胞巣をつくり浸潤性増殖を示している 胞巣 内に腺管構造がみられ 篩状構造を示す部位も認め られる 図4 初回再発時の胸部X線写真 右肺中葉に円形の結節影を認める 宮頸癌 肺転移

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宮崎医会誌 2014 ; 38 : 18-22.

症  例

 患者:59歳,2経妊,2経産。既往歴:52歳;甲 状腺腫瘍,左副腎腫瘍(クッシング症候群)。59歳; 発作性心房細動。不正性器出血を主訴に近医を受診 し,腟鏡診で子宮頸部に易出血性の隆起性病変を認 めたため,当院を紹介受診した。腟鏡診で後唇を置 換する2cmの隆起性病変を認めた。子宮頸部擦過 細胞診でadenocarcinoma,子宮頸部狙い組織診で adenocarcinoma,high gradeであった。子宮頸癌 Ⅰb1期の診断で腹式広汎子宮全摘出術,両側付属 器摘出術,骨盤リンパ節郭清術を施行した。組織学 的には比較的均一な核をもつ癌細胞が大小の胞巣を 作り浸潤性増殖を示していた。充実性胞巣や腺管構 造を含む胞巣がみられ,篩状構造も一部にみられた。 一部には胞巣の中心に壊死を伴っていた。間質に好 酸性の基底膜様物質の沈着が散見された。これらの 所見から,adenoid cystic carcinomaと診断された。 中等度の脈管侵襲がみられ,頸部筋層の全層に及ん でいたが明らかな子宮傍組織への浸潤や腟壁への浸 潤はなく,骨盤リンパ節転移を認めなかった。術後 診断は子宮頸癌Ⅰb1期(pT1b1N0M0)であった。 全層浸潤があったため,術後補助療法として同時化 学放射線療法を施行する方針とした。放射線療法と して外照射(全骨盤)45Gy/25Fr(1.8Gy×25回) を施行し,併用化学療法としてFP療法(5−フル オロウラシル 60mg/㎡(day 1−5),シスプラチ ン 60mg/㎡(day 1))を1コース施行した。シス プラチンによる抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 (syndrome of inappropriate secretion of

antidiuretic hormone:SIADH)のため,FP療法 は2コース目以降中止した。同時化学放射線療法終 了後,14 ヵ月後の定期検診での胸部レントゲン写 真で右肺門部に結節影を認めた。胸部CT検査で子

Paclitaxel(PTX),carboplatin(CBDCA)による化学療法

(TC 療法)が有効であった子宮頸部腺様嚢胞癌の1例

中武 優理

林  広典

栗原 秀一

中原 一成

田中 章子

佐藤 麻衣

髙村 一紘

安永 昌史

谷口 秀一

嶋本 富博

要約:子宮頸部腺様嚢胞癌(Adenoid cystic carcinoma)は唾液腺などに主にみられる腺癌の亜型で乳 腺,気管支,副鼻腔,バルトリン腺,子宮頸部にも発生する。発生頻度は子宮頸癌の0.4−1.7%と少なく, 一定した治療のプロトコールが確立されていない。症例は59歳,2経妊2経産。不正性器出血を主訴 に受診し,子宮頸癌Ⅰb1期の診断で腹式広汎子宮全摘出術,両側付属器摘出術,骨盤リンパ節廓清術 を施行した。術後病理組織診でadenoid cystic carcinomaと診断された。全層にわたる筋層浸潤を認め, 術後診断は子宮頸癌Ⅰb1期(pT1b1N0M0)であった。術後補助療法として同時化学放射線療法(外照 射および5FU+CDDP療法)を施行した。14 ヵ月後に子宮頸部局所再発と肺転移を認め,右肺下葉切 除術を行い,その後再度肺転移を来しpaclitaxel(PTX),carboplatin(CBDCA)による化学療法(以 下TC療法)を施行し,病変は消失した。その後2回の肺再発を繰り返したが,TC療法が奏効した。予 後不良な子宮頸部腺様嚢胞癌に対し,TC療法によってそれぞれ6ヵ月以上の無病期間が得られた。治 癒には到っていないが,TC療法により6年の長期生存が得られた。 〔平成25年11月12日入稿,平成26年2月18日受理〕 宮崎県立宮崎病院産婦人科

(2)

宮頸癌,肺転移が疑われた。腹部・骨盤造影CT検 査で他臓器に病変を認めなかったため,右肺下葉切 除術を施行した。術後の病理組織診断でadenoid cystic carcinomaで,子宮頸癌再発と診断した。術 後補助療法は行わず経過観察したが8ヵ月後の定期 検診での胸部レントゲン写真で右上肺野に結節影を 認め,胸部CT検査で両肺野に多発性転移病変を認 めた。子宮頸癌再々発と診断し,TC療法(パクリ タキセル175mg/㎡,カルボプラチンAUC 5)を6 コース施行した(AUC:血中薬物濃度時間曲線下 図1.摘出標本の肉眼写真. 図2.頸部の組織像①(HE染色100倍).癌細胞が 大小の胞巣をつくり浸潤性増殖を示している。胞巣 内に腺管構造がみられ,篩状構造を示す部位も認め られる. 図4.初回再発時の胸部X線写真. 右肺中葉に円形の結節影を認める. 図3.頸部の組織像②(HE染色200倍).間質に好 酸性の基底膜様物質の沈着を認める.

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面積であり,体内の薬物量の指標となる)。治療終 了後の胸部CT検査で指摘可能な病変は消失したが, 7ヵ月後に再度両側肺野に径12mmを最大とする多 発性結節の再出現及び縦隔リンパ節の腫大を認め た。子宮頸癌の3度目の再発と診断したが,最終治 療から6ヵ月以上経過していることからsensitive relapseと判断し,再度TC療法を施行する方針とし た。TC療法を前回と同量で6コース施行後,残存 病変を認めさらに2コース追加し,全8コースを施 行した。8コース後の胸部CT検査で指摘可能な病 変は消失した。7ヵ月後の胸部CT検査で右肺野に 径14mmを最大とする2個の結節病変を認め,子宮 頸癌の4度目の再発と診断した。2度の感受性を示 していることから再度TC療法を6コース施行し, 指摘可能な病変は消失した。初回治療から6年経過 し,現在も外来経過観察中である。 図6.2回目再発時の胸部CT画像. 図5.初回再発時の胸部CT画像. 図7.3回目再発時の胸部CT画像. 図8.4回目再発時の胸部CT画像.

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 腺様嚢胞癌(Adenoid cystic carcinoma)は,唾 液腺に最もよくみられる腺癌の1型で,乳腺,気管 支,副鼻腔,バルトリン腺,子宮頸部などにもまれ に発生することがある。

 子宮頸部腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma of uterine cervix)を初めて報告したのは,Palman ら1)で,発生頻度は子宮頸癌全体の0.4−1.7%とさ れ2−4),Berchuckら5)は85例の子宮頸部腺様嚢胞 癌の検討で発症年齢は52 ~ 99歳で,平均68.8歳と 報告している。子宮頸部腺様嚢胞癌は早期に局所再 発や遠隔転移をきたすことがあるため一般的に予後 は不良であり,最も頻度の高い遠隔転移臓器は肺と されている5)。唾液腺腺様嚢胞癌の5年生存率が 62%であるのに比べ6),子宮頸部腺様嚢胞癌では37 −40%と報告されている7)。発生頻度が稀であるた め,治療方針に一定した見解がなく扁平上皮癌のプ ロトコールに沿って治療が行われることがほとんど である。  組織学的に腺様嚢胞癌は唾液腺由来のものに類似 した特徴がある。類基底細胞様の腫瘍細胞は核が小 型で細胞質に乏しく,島状に腺管および篩状の胞巣 を形成している。管腔内にアルシアンブルー陽性の 粘液物質が貯留し,胞巣辺縁部では腫瘍細胞の柵状 配列がみられ,菅腔構造を示さない胞巣では無構造 な好酸性物質が形成されている。免疫組織化学的検 討では,4型コラーゲンやラミニンが基底細胞膜部 分に陽性を示し,p63も腫瘍胞巣の辺縁部に1層性 に,あるいは胞巣内で陽性細胞と陰性細胞が混じり 合うように発現すると報告されている。p63がびま ん 性 に 陽 性 に な るbasaloid squamous cell carcinomaとの鑑別に有用とされている8)  細胞学的には,①小型で,大小不同性に乏しい腫 瘍細胞が,著名な重積性のある集塊を形成,②核は 類円形~楕円形で大小不同性に乏しく,核クロマチ ンは増量しているが,均等に分布し,核小体は小型 ながらときに認められる,③細胞質はレース状で乏 しい,④globules of mucusを認める,⑤しばしば 扁平上皮系および腺系の異型細胞が共存する,と いった特徴が挙げられる。  Dixitら9)は子宮頸部腺様嚢胞癌の71症例の後方視 的検討を行ったところ,FIGO分類でstageⅠ期は34 症例(47.8%),stageⅡ期は21症例(29.5%),stage Ⅲ期は10症例(14.0%),stageⅣ期は4症例(5.6%), stage不明は2症例(2.8%)であった。また,平均 観察期間39 ヵ月での無病生存率は48.4%であったと している。StageⅠ,Ⅱとされたものでも早期に遠 隔転移をきたしていることがあり,局所治療である 手術療法のみではなく化学療法の有用性および必要 性も検討されるべきとしている。StageⅢ,Ⅳでは 遠隔転移巣への治療も必要となるため,局所療法の みでの治療は困難とされる。  化学療法については64症例中7症例に施行されて おり,3症例にはシスプラチン100mg/㎡が術後化 学療法として施行され,stageⅠbの2症例は12 ヵ 月と64 ヵ月の無病生存期間が得られた。1症例に はブレオマイシンが投与され,18 ヵ月の無病生存 期間が得られている。4症例は再発症例に対する化 学療法で,3症例にそれぞれブレオマイシン,アド リアマイシン,5−FUが行われたが奏功せず,1症 例にはシスプラチン,シクロフォスファミド,アド リアマイシンの多剤併用療法がおこなわれ,8ヵ月 の無病生存期間を得た。化学療法に対する報告は少 ないものの,高容量のシスプラチン,多剤併用療法 が有効ではないかと考えられている。  子宮頸部腺様嚢胞癌に対し,術後再発に対して子 宮頸癌にも有効性が示されつつあるTC療法を行っ た。子宮頸部腺様嚢胞癌は非常に稀な疾患であるた め現在のところ一定した治療方針の見解がない。本 症例ではこれまでに報告の少ないタキサン製剤の併 用療法によって,子宮頸部腺様嚢胞癌においても長 期生存が望める可能性があることを示唆した。 参 考 文 献

1) Palman R. J,Counseller V. S. Clyindroma of the Cervix with Procidentia, Am. J. Obst. & Gynec, 1949 ; 58 : 184-7.

2) Fowler WC, Miles PA, Surwit EA, et al. Adenoid cystic carcinoma of the cervix, report of nine cases and a reappraisal. Obstet Gynecol 1978 ; 52 : 337-42.

(5)

3) King AL, Talledo E, Gallup DG, et al. Adenoid cystic carcinoma of the cervix in women under age 40. Gynecol Oncol 1989 ; 32 : 26-30.

4) Musa AG, Hughes RR, Coleman SA. Adenoid cystic carcinoma of the cervix-a report of 17 cases. Gynecol Oncol 1985 ; 22 : 167-73.

5) Berchuck A, Mullin TJ. Cervical adenoid cystic carcinoma associated with ascitis. Gynecol Oncol 1985 ; 22 : 201-11.

6) Simpson JR. Cancer of the salivary gland. In : Perez CA, Brady LW, eds. Principles and Practice of Radiation Oncology, Philadelphia : J B

Lippincott ;1987: 520.

7) Dingh TV, Woodruff JD. Adenoid cystic and adenoid basal carcinomas oithe cervix. Obstet Gynecol 1985 ; 65 : 705-9.

8) E m a n u e l P, W a n g B, W u M, e t a l : p63 immunohistochemistry in the distinction of adenoid cystic carcinoma from basaloid squamous cell carcinoma. Mod Patholo 2005, 18 : 645-50. 9) Dixit S, Singhal S, Vyas R, et al : Adenoid cystic

carcinoma of the cervix ; J Postgrad med 1993 ; 39 : 211-5.

A patient with uterine cervix adenoid cystic carcinoma who achieved long-term survival with TC chemotherapy.

Yuri Nakatake Hironori Hayashi Shuichi Kurihara Kazushige Nakahara Akiko Tanaka Mai Sato Kazuhiro Takamura Masafumi Yasunaga Shuichi Taniguchi Tomihiro Shimamoto

Department of Obstetrics and Gynecology, Miyazaki prefectural Miyazaki Hospiral, Miyazaki Abstract

Adenoid cystic carcinoma of the cervix constitutes about 0.4 to 1.7% of all cervical carcinomas, and there is no protocol for treatment. A 59-year-old female(gravida : 2 para : 2)visited a clinic with a chief complaint of irregular vaginal bleeding. She was diagnosed with cervical cancer of stageⅠ b1, and radical hysterectomy, bilateral salpingo-oophorectomy, and pelvic lymph node dissection were carried out. The post-surgical pathological diagnosis adenoid cystic carcinoma, showing infiltration of the cervical muscularis throughout all layers. The post-surgical diagnosis was cervical cancer of stageⅠb1(pT1bN0M0). As post-surgical adjuvant chemotherapy, concurrent chemoradiotherapy (external irradiation and FP chemotherapy)was carried out. After 14 months, lung metastasis

was observed, and so lobectomy of the lower lobe of the right lung was carried out. Thereafter, the recurrence of lung metastasis was observed, for which TC chemotherapy was conducted. In spite of the disappearance of the lesion, there were two recurrences of lung metastasis thereafter but, in each case, TC chemotherapy proved to be effective. In spite of the poor prognosis associated with adenoid cystic carcinoma of the cervix, the patient was able to achieve a long-term survival of six years after the initial treatment. The TC chemotherapy was proven to be effective.

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