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第7章 ロボットシステムでの総合評価実験

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Academic year: 2022

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(1)

第7章 ロボットシステムでの総合評価実験

7.1 緒言

第5章まで,高バックドライバビリティを有するロボット用アクチュエータにつき 様々な側面から設計手法,工夫について述べ,それぞれについて試作,実験,評価を行 ってきた.そして,前章で,このアクチュエータを実際のロボットシステムに適用する 検討を示した.本章では,このロボットシステムとして使用される場合のアクチュエー タが持って欲しい機能を実現しているかどうかを,ロボットシステムとして総合動作実 験を行い,その評価を通して確認することを主題とする.102)

最初に,本章で取り上げる様々な評価実験が今まで述べてきた内容とどうつながり,

本研究の目的を達成していることの評価にどうつながってくるのかを検証する.

まず,ロボットシステムへ適用するためのアクチュエータの目標仕様として第6章に 述べた内容を示すと,Table 7.1 のようになる.5項目があげられているが,これを受 けてさらに,より具体的な基本機能を上げている.これを,Table 7.2 に示す.さらに,

第6章では,この基本機能をより具体的,定量的な機能・性能目標値に煮詰めて各要素 の目標機能として設定している.これを,Table 7.3 に示す.各章では,この各要素の 目標機能を達成するべく様々な設計手法を提示し,試作を行い,実験を通して評価を行 ってきた.そしてアクチュエータの各要素としては,目標機能をほぼ実現してきたこと を述べてきた.ここでは,実現されたアクチュエータが組み込まれたロボットシステム として最初の目標仕様を達成しているかどうかを確かめる実験を行う.

Table 7.4 に最初の5項目の目標仕様の達成度を評価するための実験として適切と考 えられる評価実験の案をまとめた.これらのすべてを行うことがより確度の高い評価が 行えるものと思われるが困難であるので,本章では,このなかから適切と思われるいく つかの実験を選択して実施する.具体的には,A,C,E,F,G,H(灰色部分)を 選択して行う.選択した評価実験の具体的な動作と評価内容について次に述べる.

まず最初に, 広角度旋回動作実験であるが,180度の旋回動作を1回で行う動作に ついて実験を行い評価を行う.自由度の可動範囲の点,アクチュエータの応答レベル,

(2)

アクチュエータの動作の安定性の確認などを行う.次に, 転倒動作の実験評価を行う.

前方転倒, 及び後方転倒の双方を行う.まず,加速度センサーが転倒発生を検出できる か,次に,転倒開始時,モータはPIDパラメータの変更を適時に実行しているかを確 認する.さらに,今回大きな開発ポイントであるアクチュエータのバックドライバビリ ティがその性能を発揮しているかどうかをモータの動作を計測して確認する.また,バ ックドライバビリティによりその衝撃を柔軟に受け止め本体の破壊を起こさないでいる ことができているか, を確認する. さらに,復帰動作実験も行う.

以上の評価実験を通して,第3章から述べてきた各設計手法,すなわち,高出力小型 軽量モータの実現,小型高精度減速機に必要な機能の解析と仕様の設定,必要仕様に基づ く小型高精度減速機の実現、バックドライバビリティを特長とする減速機の構造設計,

モータと減速機を組み合わせたアクチュエータとしての必要仕様の実現,などの妥当性 を確認していく.

Table 7.1 Basic Specification for a robot actuator

ロボット適用におけるアクチュエータの目標仕様

1  ロボットが動作範囲の広い,かつ負荷の高い動作を行う場合において,十分な  出力を持ち,またそれが適切な重量の範囲内で実現されていること.

2  2足歩行の状態でダイナミックなパフォーマンスを上体も含めて  全体で行なっても動作は滑らかに安定して実現出来ること.

3

 外部から衝撃的な負荷がかかった場合,例えば、転倒した場合でもその衝撃を  柔軟に受け止め,アクチュエータおよび本体の破壊を起こさず,復帰することが  可能であること.

4  外部から手足などを動かそうとする外力が加わった場合に  容易に受動的に動作し,安全で,自然な動きが可能であること.

5  人間と触れ合っても危害を与えず,安全であること.

(3)

Table 7.2 Basic Functions of a robot actuator

基本機能

1  アクチュエータが小型,軽量,高出力であること 2  アクチュエータ出力がコギングなどの振動成分

 が少なく滑らかであること

3  理想的な,モータによるインピーダンス制御を可能にする  外部トルクに対する抵抗の少ない減速機であること

4  外部トルクに対し受動的に容易に動作する減速機であること 5  外部トルクに対し抵抗少なく安全に動作する減速機であること

Table 7.3 Specific specifications

項目 機能・性能目標

1 小型  直径: 20~30mm

 長さ:  約50mm

2 軽量  1個あたり: 約100g

3 高出力

 アクチュエータ: 2.2Nm以上  モータ:      0.045 Nm以上   (コギングなど振動成分の少ないこと)

4 バックドライバビリティの向上

 バックドライバビリティ値:

 

   腕部用:   2.5 x 10-2 Nm以下    腰・胴体用: 5.0 x 10-2 Nm以下

(4)

Table 7.4 Examples of reasonable experiments checking required specifications

本研究の目標仕様 適切な評価実験 適切な評価項目

 広角度旋回動作実験 1.自由度の可動範囲は高い表現力のために十分か?

2.自由度は適切な速度で滑らかに動作するか?

 加速度確認実験 1.各自由度の最大加速度を測定し,ダイナミック性   を確認する.

C  広角度旋回動作実験 1.広角度の旋回動作中に,各アクチュエータの出力   は滑らかに安定した出力を示しているか?

  ゆらぎや振動は発生していないか?

D  加速度安定性  確認実験

1.各自由度の最大加速度を測定し,その際の安定性   を確認する.

E  転倒動作実験  (前方)

1.加速度センサーが転倒発生を検出できるか?

2.転倒開始時,モータはPID変更制御ができるか?

3.転倒開始時,全身の自由度は即座に適切な動作   をするか?

4.アクチュエータはバックドライバビリティの性能を   発揮するか?

5.本体は破壊を起こしていないか?

F  転倒動作実験

 (後方)  同上 G  転倒復帰動作実験

 (うつ伏せ) 1.うつ伏せ状態から起き上がることができるか?

2.拡大された自由度の可動範囲は適切か?

H  転倒復帰動作実験

 (仰向け)  同上

4

 外部から手足などを動かそうとする  外力が加わった場合に、容易に受動的  に動作し、自然な動きが可能であること。

I  外力受動動作実験  押されたなどの外力により,受動的な動作を行い  柔軟な動作をするか?

 人間と触れ合っても危害を

 与えないこと. J  外力受動動作実験   押されたなどの外力により,受動的な動作を行い  柔軟な動作をするか?

 ロボットが動作範囲の広い、かつ負荷の  高い動作を行う場合において、十分な  出力を持ち、またそれが適切な重量の  範囲内で実現されていること。

 2足歩行の状態でダイナミックな  パフォーマンスを上体も含めて  全体で行なっても動作は滑らかに  安定して実現出来ること.

3

 外部から衝撃的な負荷がかかった場合、

 例えば、転倒した場合でもその衝撃を  柔軟に受け止め、アクチュエータおよび  本体の破壊を起こさず,復帰することが  可能であること.

1

5 2

(5)

7.2 広角度旋回動作実験と評価

アクチュエータの目標の仕様である,ロボットが動作範囲の広い、かつ負荷の高い動 作を行う場合において、十分な出力を持ち、またそれが適切な重量の範囲内で実現され ていること,および,2足歩行の状態でダイナミックなパフォーマンスを上体も含めて 全体で行なってもアクチュエータの動作は滑らかに安定して実現出来ること,を確認す る目的で,広角度旋回動作実験を行う.

1)実験条件

ロボットはまず両足で立っているところから右足を上げ,一度に180度後方に旋回 させ,体重を右足に乗せる.その後,左足を上げ,180度旋回させ,右足にそろえて 立ち旋回を終える.この動作は,旋回としては最大の動作範囲を可動し,片足で旋回動 作中全体重を支持する高い負荷の必要とする動作で評価にふさわしい動作と考える.腰 部の関節配置については,腰部のヨー軸が後方にオフセットされていることにより、脚 部の大きな旋回角度が得られるようになっている.

2)実験結果

旋回の様子を、Fig.7.1 に示す.約7秒かかっているが,3秒くらいのところで,左 足から右足に体重を移動させていることがわかる.Fig.7.2 から Fig.7.5 において,こ の旋回時の関節角度推移のデータを示す.最初のデータは右足の腰部ヨー軸の遷移を示 す.この脚部はまず90度回転してまた戻っている.次のデータは右足の腰部ロール軸 関節の角度遷移である.最初まず外側にいきすぐに内側に戻ってくる.この時0度でな いのはロボットの重心ベクトルが路面と交わる点を足底内に入れて安定化させるため上 体をシフトさせるために少し変移した値となっている.その後さらに内側に入りまた外 側に戻り,0度に帰ってきている.後半は右足が立脚となるため,右足に体重がかかり,

角度目標値と実測値に偏差が幾分見られる.3番目は左足腰部ピッチ軸の遷移を示して いる.ピッチ軸では,体重移動の様子がわかる.4番目は左足の腰部ヨー軸の遷移を示 す.4種の角度遷移の実験データより,アクチュエータの動作は大変安定して滑らかに 目標軌道を推移していることがわかる.

今回の実験は複数回行ったが,ほぼ同様の結果が安定して得られているため,その一 部のデータを示した.

(6)

3)実験結果の考察

一度の旋回で180度の回転を行うことは人間でも難しいが,

・ 本ロボットの腰部ヨー軸アクチュエータが後方にオフセットされて配置 されている.

ことによりヨー軸の可動範囲の拡大が出来,広角度の旋回が可能となっていることが確 認された.104) 動作中の位置変位のデータをみてもかなり滑らかに推移していることが わかり,アクチュエータの出力が満足されるレベルにあることが確認される.また,片足 支持中に上体が回転することは大変不安定な状況となるが,内蔵されている加速度セン サーと足底の力センサーによる重心の安定化制御が寄与している.

ロボットの動作としては,腕の動作をもう少し広げて行うなど,腕の動作に工夫を加 えれば旋回中の重心の移動がより少なくなるなどの効果が期待でき,より安定した旋回 動作が可能になるものと思われる.

Moving the gravity center

t = 0.0 t = 1.0 t = 2.0 t = 3.0

t = 4.0 t = 5.0 t = 6.0 t = 7.0

Moving the gravity center

t = 0.0 t = 1.0 t = 2.0 t = 3.0

t = 4.0 t = 5.0 t = 6.0 t = 7.0

sec

Fig.7.1 Motion with wide angle turn (180 degrees/turn )

(7)

-100 -90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.

Time sec

Ang

0

e degl

R_Right_Hip_Yaw M_Right_Hip_Yaw

Fig.7.2 Joint motion data of wide angle rotation ( right hip yaw )

-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0

Time sec

Angle deg

R_Right_Hip_Roll M_Right_Hip_Roll

Fig.7.3 Joint motion data of wide angle rotation ( right hip roll )

(8)

-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7

Time sec

Angle deg

.0 R_Left_Hip_Pitch

M_Left_Hip_Pitch

Fig.7.4 Joint motion data of wide angle rotation ( left hip pitch )

-10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7

Time sec

Angle deg

.0 R_Left_Hip_Yaw M_Left_Hip_Yaw

Fig.7.5 Joint motion data of wide angle rotation ( left hip yaw )

(9)

7.3 転倒動作実験と評価

7.3.1 転倒反射動作実験(1)

アクチュエータのバックドライバビリティ向上の効果を確認するため,ロボットが転 倒する場合の衝撃吸収のための反射動作について実験を行う.まず,前方への転倒動作に ついて実験を行う.

1)実験条件

Fig.7.6 に転倒の様子を0.1秒単位で記録した時間シーケンスの図を示す.最初の

2枚はロボットが前方に押され始めている図で, 3枚目のt=0.0 secの時点で,ロボット のZMPが足底の先端に到達し, 前方転倒の衝撃吸収動作が開始している.同時に, ロ ボットのアクチュエータのサーボループゲインがある設定された低いゲインへリアルタ イムに変更される.動作は,いくつかの動作の組み合わせであるが, まず両手を幾分前 に出し, また両肘を曲げる.そして両腕を少し両側に開く.同時に, 両膝を曲げて上体 を少し下に移動し転倒着地の際の衝撃を少なくする.反射動作が開始されてから0.5秒後 に両手の先端が床面に着地し始める.両手のアクチュエータはサーボゲインが低く設定 されているので着地と同時に両手はバネのように開き始め、衝撃吸収を開始する. 床面 は,薄目の絨毯(オフィス用)である.

2)実験結果

Fig.7.7 から Fig.7.12 は実際に転倒の反射動作が開始されてから転倒するまでの, いくつかの関節軸の目標角度数値と実測角度数値のデータグラフである.最初のグラフ は, 肩部のロール軸関節のデータである.

ⅰ) モータのPIDパラメータ変更の実行確認

このグラフから分かることは, t=0.35 secの時点で目標角度数値は既に最終目標値に 到達しているが, 実測角度数値はまだ到達せずに安定状態に入っている.これは, モー タのPIDサーボパラメータ,特にP制御のゲインパラメータが転倒開始時に変更され,

その後,位置制御性能が緩くなっていることが確認される.他の軸についても同様の傾 向が確認される.このことは,転倒開始時に,転倒発生を加速度センサーが検出して正 常に指令を発生していることも確認される.

ⅱ) バックドライバビリティの性能確認

t=0.5 (sec)の時点で手先の着地が開始され, この軸は急速に外部の力により変形を 開始しており, 衝撃を吸収していることがわかる.サーボループゲインが低く設定され

(10)

ているためにモータ出力軸は回転方向に柔らかいバネのようになっており,外部の衝撃 力は減速機を通り越してモータの動きに即座に影響していることが確認される.これは,

減速機の抵抗がかなり低い,すなわち,減速機のバックドライバビリティがその性能を 発揮しているために,外力の影響がモータの動きに即座に伝わっていることがデータか ら確認できる.

衝撃直後の出力軸の回転数は,図から0.1 sec の間に約10度回転していることから これを回転数にすると,約16rpm となる.これは前章で述べたアクチュエータ単体で の衝撃吸収の必要回転数10~20rpmを達成している.すなわち,単体のバックドライ バビリティの性能が発揮されていることが確認される.

ⅲ) 本体の破壊への影響

バックドライバビリティの向上による効果により,衝撃力発生後,t=0.7 secのところ で変形は終了し衝撃吸収もほぼ落ち着いたことが読み取れる.滑らかな位置変化により 衝撃は抑えられ,本体の破壊への影響もかなり少なくなっており,破壊自身は発生して いないことが実験から確認される.

第2番目の図は, 肩部のピッチ軸の様子であるが, 同様にt=0.5 secの時点で実測角 度数値の変動が見られ衝撃吸収をしていることがわかる.第4番目の図は, 肘部のピッ チ軸、第5番目の図は, 体幹部のピッチ軸の様子である.同様にt=0.5secより, 実測値 の変動が見られる.肘部のピッチ軸は1秒後においても衝撃吸収の動きが続いているが, 体幹部のピッチ軸では, 一旦衝撃吸収のため目標値から幾分離れるがその後目標値に再 度近づいていっていることがわかる.

3)実験結果の考察

この実験は,加速度センサーの値の変化により,モータへのPIDパラメータ変更の 指令が適切に行われているかを確認するとともに、最も重要なポイントは,減速機のバ ックドライバビリティの効果が大きく現れているかどうかである.実験結果からわかる ようにモータそのものの動きが計測され,動きの遅れや不適切な振動などが発生してい ないことが確認され,期待されたバックドライバビリティの性能がよく現れていると考 えられる.今回はバックドライバビリティの性能を転倒時の衝撃吸収の点で評価し,実 際の値の検討も摩擦抵抗値を確認してきたが,バックドライバビリティ向上の要素とし ては,粘性抵抗,慣性抵抗も存在し,その改善のための努力も実際には加えてきた.し かし,実験ではこれらのパラメータの影響度まで解析するところまで十分な検討は今回 は加えてはいない.この解析については今後の課題としていきたい.

(11)

t = - 0.2 sec t = - 0.1 t = 0.0

t = 0.1 t = 0.2 t = 0.3

Shock absorbing mode starts.

Arms move forward.

t = - t = - 0.1 t = 0.0

t = 0.1 t = 0.2 t = 0.3

Shock absorbing mode starts.

Arms move forward.

t = - 0.2 sec t = - 0.1 t = 0.0

t = 0.1 t = 0.2 t = 0.3

Shock absorbing mode starts.

Arms move forward.

t = - 0.2 sec t = - 0.1 t = 0.0

t = 0.1 t = 0.2 t = 0.3

Shock absorbing mode starts.

Arms move forward.

t = - t = - 0.1 t = 0.0

t = 0.1 t = 0.2 t = 0.3

Shock absorbing mode starts.

Arms move forward.

t = 0.9

t = 0.4 t = 0.5 t = 0.6

t = 0.7 t = 0.8

Arms touch the ground. Arms absorb the shock.

t = 0.8

Arms touch the ground. Arms absorb the shock.

t = 0.9

t = 0.4 t = 0.5 t = 0.6

t = 0.7 t = 0.8

Arms touch the ground. Arms absorb the shock.

t = 0.8

Arms touch the ground. Arms absorb the shock.

Fig.7.6 Motion of forward falling-over

(12)

-25 -20 -15 -10 -5 0

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Shoulder_Roll M_Right_Shoulder_Roll

Fig.7.7 Joint motion of forward falling-over ( right shoulder roll )

-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Shoulder_Pitch M_Right_Shoulder_Pitch

Fig.7.8 Joint motion of forward falling-over ( right shoulder pitch )

(13)

-14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Shoulder_Yaw M_Right_Shoulder_Yaw

Fig.7.9 Joint motion of forward falling-over ( right shoulder yaw )

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Elbow_Pitch M_Right_Elbow_Pitch

Fig.7.10 Joint motion of forward falling-over ( right elbow pitch )

(14)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Waist_Pitch M_Waist_Pitch

Fig.7.11 Joint motion of forward falling-over ( waist pitch )

-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Hip_Pitch M_Right_Hip_Pitch

Fig.7.12 Joint motion of forward falling-over ( right hip pitch )

(15)

7.3.2 転倒反射動作実験(2)

次に,同様にアクチュエータのバックドライバビリティ向上の効果の確認として,ロ ボットが後方に押されて転倒する場合の衝撃吸収の反射動作について実験を行う.

1)実験条件

Fig.7.13に転倒の様子を0.1秒単位で記録した時間シーケンスの図を示す.最初の 5枚はロボットが後方に押され始めている図で, 6枚目のt=0.0 secの時点で, ロボッ トのZMPが足底の先端に到達し,後方転倒の衝撃吸収動作が開始している.同時に, ロ ボットのアクチュエータのサーボループゲインがある設定された低いゲインへリアルタ イムに変更される.動作は, いくつかの動作の組み合わせであるが, まず体幹部ピッチ 軸を90度近くまで前屈させる.腰部ピッチ軸は腰部後部が転倒着地時に直接接地して 衝撃を受けないように逆に伸ばす方向に動き腰部後部を引っ込める形をとる.同時に両 膝を曲げ,足首部も曲げるように動作させる.反射動作が開始されてから0.5秒後に背中 の一部が床面に着地し始める.体幹部のアクチュエータはサーボゲインが低く設定され ているので着地と同時に背中部及び腰部はバネのように動作し、衝撃吸収を開始する.

2)実験結果

Fig.7.14 から Fig.7.19 は実際に転倒の反射動作が開始されてから転倒するまでの,

いくつかの関節軸の目標角度数値と実測角度数値のデータグラフである.最初のグラフ は, 体幹部のピッチ軸関節のデータである.

ⅰ)モータのPIDパラメータ変更の実行確認

このグラフから分かることは, t=0.3 secの時点で目標角度数値は既に最終目標値に到 達しているが, 実測角度数値はまだ到達せず遅れて動作している.このデータから,転 倒開始時に加速度センサーは転倒開始を検出して制御の変更を指示していることがわか る.PIDパラメータは反応が緩くなる方向に変更され,すなわち, サーボループゲイ ンが低く設定されたために柔らかいバネのようになったことがわかる.

ⅱ)バックドライバビリティの性能確認

t=0.5 secの時点で背中部の着地が開始されているが,この時点よりこの軸は動きの方 向が急速に外部の力により変動を開始しており,衝撃を吸収していることがわかる. こ れは減速機のバックドライバビリティ向上の効果が現れていると考えられ,外部からの 動きがモータに即座に伝わっており,モータ自身のインピーダンス制御で応答している ということが確認できる.その後,t=1.0secのところまで変動を繰り返しておりそのあ

(16)

とは衝撃吸収もほぼ落ち着いたことが読み取れる.

第 3番目の図は, 腰部のピッチ軸の様子であるが, 同様にt=0.5 secの時点で実測角 度数値の変動が見られ衝撃吸収をしていることがわかる.第5番目の図は, 膝部のピッ チ軸, 第6番目の図は, 足首部のピッチ軸の様子である.同様にt=0.5secより, 実測値 の変動が見られる.膝部のピッチ軸はそれほど大きな変動はないが, 足底部はt=0.5sec 後に地面より離れることがわかる.

3)実験結果の考察

後方への転倒は,手や腕で受け止める前方への転倒と異なり,体幹部の背中下部で最 初に直接衝撃を受けるということになり,前方への転倒に比較して衝撃が大きいという ことはある.しかしながら,体幹部や股関節ピッチ軸などのインピーダンス制御によっ てその衝撃力はかなり抑えられていると思われる.これは体幹部ピッチ軸などの位置変 化を確認することにより,衝撃時に滑らかに受動的な動きをしていることが確認できる ことから理解される.これも減速機のバックドライバビリティの効果が現れて,モータ のインピーダンス制御の効果がかなり現れているためと思われる.

体幹部や腰部のアクチュエータは,転倒衝撃時に0.1 sec の間に 1~3度回転してい ることがデータからわかるが、これは出力軸での回転数にすると,2~4rpmとなる. 前 章で衝撃吸収には2~3rpmが必要で,単体アクチュエータでは衝撃直後に5rpm まで応 答することが確認されているが,この実験結果はこれを裏付けるものである.

実験では行わなかったが,横方向や斜め方向の転倒時の対応については,転倒開始が 検出されたと同時に,脚部や体幹部の動きを調節することにより,前方転倒か後方転倒 の動作に近いように持って行くように制御している.

(17)

t = - 0.5 sec t = - 0.4 t = - 0.3

t = - 0.2 t = - 0.1 t = 0.0

Body starts to move backward.

Shock absorbing mode starts.

t = - 0.5 sec t = - 0.4 t = - 0.3

t = - 0.2 t = - 0.1 t = 0.0

Body starts to move backward.

Shock absorbing mode starts.

t = 0.1 t = 0.2 t = 0.3

t = 0.4 t = 0.5 t = 0.6

Back touches the ground. Body pitch absorbs the shock.

t = 0.1 t = 0.2 t = 0.3

t = 0.4 t = 0.5 t = 0.6

Back touches the ground. Body pitch absorbs the shock.

Fig.7.13 Motion of backward falling-over

(18)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Waist_Pitch M_Waist_Pitch

Fig.7.14 Joint motion of backward falling-over ( waist pitch )

-1 0 1 2 3 4 5

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Waist_Roll M_Waist_Roll

Fig.7.15 Joint motion of backward falling-over ( waist roll )

(19)

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Hip_Pitch M_Right_Hip_Pitch

Fig.7.16 Joint motion of backward falling-over ( right hip pitch )

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Shoulder_Pitch M_Right_Shoulder_Pitch

Fig.7.17 Joint motion of backward falling-over ( right shoulder pitch )

(20)

0 20 40 60 80 100 120 140

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Knee_Pitch M_Right_Knee_Pitch

Fig.7.18 Joint motion of backward falling-over ( right knee pitch )

-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

Time sec

Angle deg

R_Right_Ankle_Pitch M_Right_Ankle_Pitch

Fig.7.19 Joint motion of backward falling-over ( right ankle pitch )

(21)

7.4 転倒復帰動作実験と評価

7.4.1 転倒復帰動作実験(1)

アクチュエータのバックドライバビリティの効果で転倒衝撃を緩和し適切に復帰動 作が可能であることも本研究の目的にあるため,前方転倒後のうつ伏せ状態からの転倒 回復動作が可能であるかどうかの実験を行った.

1)実験内容

Fig.7.20 にうつ伏せ状態からの起き上がり動作の実験内容を示している.動作の流

れは,まず、膝関節を曲げ,その後腰部のピッチ軸関節を内側に曲げていく.足首関節 の動作範囲が広く90度まで内側に曲げることが出来るので,腰部のピッチ軸関節が内 側に曲げられた時に,足底部が全面で床面に接地させることが出来る.時間 t=4secの状 況を見ると,両方の足底が全面で床面に接地していることがわかる.この時より,両腕 が床面を押して上体を押し上げ始める.同時に,両脚は一歩ずつ前方に踏み出し上体を 上げていっている.両手も上体を押し上げることを行っている.両脚が内側に次第に入 ってくるが、体幹部ピッチ軸関節及び腰部ピッチ軸関節の動作範囲を加えた範囲が広い ため、t=10 secの時点では,膝上の腿の部分が体幹の胸の部分につくほどになっている.

これにより,ロボットの重心ベクトルが路面と交わる点は足底の安定領域に入ることが でき,立ち上がるための安定な状態位置を得ることが出来ている.t=11sec以降,手は床 面から離れ両脚で立ち上がり動作に入っている.

2)実験結果

実験結果としては、アクチュエータのバックドライバビリティの効果により,アクチ ュエータや関節機構部に転倒衝撃による損傷はなく,正常に動作を開始することが確認 された.復帰動作については,特に無理な動作もなく起き上がることができることが確 認された.これは,機構部の特徴による効果が大きいが,具体的には,

ⅰ)足首自由度の可動範囲が大きいことから,足底部を最初に路面につけること が可能であること.

(22)

ⅱ)体幹部ピッチ軸が前方にオフセットされていることから可動範囲が前方に 大きくとれており,体幹部を大きく前方に曲げることが可能であること.

が大きく起き上がり動作に寄与していることが確認された.

腕部のピッチ軸,ロール軸などのアクチュエータの出力も起き上がりに必要な出力を 確保していることも確認された.

3)考察

アクチュエータのバックドライバビリティの効果により,モータのインピーダンス制 御が効果的に働き,転倒時に柔らかく衝撃を受けることができ,アクチュエータや関節 機構部などに破壊を起こさず,正常に動作を続行することができた.起き上がり動作を スムースに行うには,アクチュエータだけでなく,関節機構部の構造も大変重要であり,

今回可動範囲が大きい効果も確認された.

All foot sole touches the ground.

t = 0 t = 2 t = 4 t = 6

t = 10 t = 12 t = 14

t = 8

All foot sole touches the ground.

t = 0 t = 2 t = 4 t = 6

t = 10 t = 12 t = 14

t = 8

sec

Fig.7.20 Standing-up motion from a prone position

(23)

7.4.2 転倒復帰動作実験(2)

同様に,アクチュエータのバックドライバビリティの効果で転倒衝撃を緩和し適切に

復帰動作が可能であることも本研究の目的にあるため,後方転倒後の仰向け状態からの 転倒回復動作が可能であるかどうかの実験を行った.

1)実験内容

Fig.7.21 は仰向け状態からの起き上がり動作の実験内容を示している.動作の流れは,

まず,上体をほぼ90度まで曲げて持ち上げる.その後,両腕を後方に移動し上体を支 持する.次に膝部を曲げて上体に近づける.そして両腕と両足を使用して上体を持ち上 げていく.その後,足首部のピッチ軸関節が次第に前方に曲げられていき,上体と両腕 は次第に前方へと移動していく.そして次第に,ロボットの重心ベクトルが路面と交わ る点が両足底の内部に存在するようになり,図のt=10 secではほぼ足底内に移ってきて いる.その後,上体は上方に上がっていき,両脚も立脚状態になるように伸びていって いる.これらの動作においても,体幹部ピッチ軸関節と腰部ピッチ軸関節の動作範囲が 広いことが貢献している.

うつ伏せ状態及び仰向け状態からの起き上がり動作中は,常に足底に内蔵された力セ ンサーを利用した安定制御が動作しており,様々な姿勢においても重心ベクトルが路面 と交わる点を足底内安定領域に入れるようになっている.そのためかなり不安定そうに 思われる姿勢においても安定に起き上がり動作が継続できるよう制御されている.この 図において,立ち上がりまで15秒経過しているが,実際はもう少し短時間で起き上が り可能である.

2)実験結果

実験結果としては、アクチュエータのバックドライバビリティの効果により,転倒後 に,アクチュエータや関節機構部に転倒衝撃による損傷はなく,正常に動作を開始する ことが確認された.復帰動作については,特に無理な動作もなく起き上がることができ ることが確認された.仰向け状態からの起き上がりは人間にはかなり困難であるが,実 験よりこの起き上がり方が本ロボットでは可能であることが確認された.

(24)

3)考察

アクチュエータのバックドライバビリティの効果により,モータのインピーダンス制 御が効果的に働き,転倒時に柔らかく衝撃を受けることができ,アクチュエータや関節 機構部などに破壊を起こさず,正常に動作を続行することができた

今回,試作ロボットにおいてこの起き上がり方を可能とさせたのは,ロボットである がゆえに機構部の特徴による効果が大きいが,具体的には

ⅰ)人間以上に腕や足首の可動範囲を大きくできること.

ⅱ)腰,膝や足首関節の出力を人間より大きくできること.

などから可能となっている.また,転倒後に起き上がる場合,仰向け状態から直接起き 上がることが可能であればうつ伏せ状態に移行してから起き上がる必要がなくなるため,

有効であるということからも実現させた.横方向や斜め方向に転倒が開始された場合は,

脚部や体幹部の動作を工夫して転倒後に仰向けかうつ伏せかどちらかの状態になるよう に動作を考慮している.

t = 0 sec

Bending the knee forward.

t = 4 t = 6

t = 8 t = 10 t = 12 t = 14

t = 2

Bending the knee forward.

t = 4 t = 6

t = 8 t = 10 t = 12 t = 14

t = 2

Fig.7.21 Standing-up motion from the position on his back

(25)

7.5

結言

本章では, 第6章において,アクチュエータを実際のロボットシステムに適用する場 合にアクチュエータがもって欲しい機能として設定した次の5項目,

1) ロボットが動作範囲の広い,かつ負荷の高い動作を行う場合において,十分な 出力を持ち,またそれが適切な重量の範囲内で実現されていること.

2) 2足歩行の状態でダイナミックなパフォーマンスを上体も含めて全体で 行なっても動作は滑らかに安定して実現出来ること.

3) 外部から衝撃的な負荷がかかった場合,例えば,転倒した場合でもその衝撃を 柔軟に受け止め,アクチュエータおよび本体の破壊を起こさず,復帰することが 可能であること.

4) 外部から手足などを動かそうとする外力が加わった場合に容易に受動的に 動作し,安全で,自然な動きが可能であること.

5) 人間と触れ合っても危害を与えず,安全であること.

について,実際のロボットシステムで実験を行うことにより, 第5章までに述べてきた 様々な設計手法,工夫により, 実現されたアクチュエータが, これらの目標機能を達成 しているかどうかを各種の動作実験を通して評価し確認した.具体的な確認動作実験と して, 主に1),2)の確認のために,広角度旋回動作実験を,また,主に3),4),

5)の確認のために, 前方転倒動作及び後方転倒動作および復帰動作などについて実験 を行った.各実験における結論を以下にまとめる.

(1) 広角度旋回動作

一度の旋回で180度の回転を行う実験を行った.動作中のアクチュエータの位置 変位のデータよりかなり滑らかに推移していることがわかり,アクチュエータの出力が 満足されるレベルにあることが確認された.機構的には,本ロボットの腰部ヨー軸アク チュエータが後方にオフセットされて配置されていることによりヨー軸の可動範囲の拡 大が出来,広角度の旋回が可能となっていることが確認された.また,片足支持中に上 体が回転することは大変不安定な状況となるが,内蔵されている加速度センサーと足底 の力センサーによる重心の安定化制御が寄与した.

今回は行わなかったが,腕の動作をもう少し広げて行うなど,腕の動作に工夫を加え れば旋回中の重心の移動がより少なくなるなどの効果が期待でき,より安定した旋回動

(26)

作が可能になるものと思われる.

(2) 前方転倒反射動作

アクチュエータのバックドライバビリティ向上の効果として,前方に転倒した場合で もその衝撃を柔軟に受け止め本体の破壊を起こさず, 復帰することが可能であるか, と いう点が評価のポイントであるが, 衝撃の吸収が実際に行われているかどうかを確認す るために, いくつかの関節軸の目標角度数値と実測角度数値のデータを比較する手法を とった.結果としては, 転倒衝撃回避動作に入ると同時にサーボループゲインを低く変 更するために, 衝突直前で目標角度数値は既に最終目標値に到達しているが, 実測角度 数値はまだ到達せずに安定状態に入っており, アクチュエータが柔らかいバネのように なっていることがわかった. さらに,

ⅰ)衝突と同時に, 腕部の軸は急速に外部の力により変形を開始しており, 衝撃を吸収している.

ことがわかった.これは, アクチュエータのバックドライバビリティが高いため,急激 な外力は減速機で受けるのではなく

ⅱ)減速機を通してモータまで回転し,モータのインピーダンス制御で受けている ことを示し、減速機の破壊が防止されている.

ことが確認された.

具体的には,衝撃直後の出力軸の回転数は、データ図から0.1 sec の間に約10度回 転していることからこれを回転数にすると,約16rpm となる.これは前章で述べたア クチュエータ単体での衝撃吸収の必要回転数10~20rpmを達成している.すなわち,

単体のバックドライバビリティの性能が発揮されていることが確認された.

(3) 後方転倒反射動作

同様に,後方に転倒した場合の実験を行った.結果として,

ⅰ)衝突と同時に, 体幹部,腰部の軸は急速に外部の力により変形を開始しており, 衝撃を吸収している.

ことがわかった.

具体的には,体幹部や腰部のアクチュエータは,転倒衝撃時に0.1 sec の間に 1~3 度回転していることがデータからわかったが、これは出力軸での回転数にすると,2~

4rpmとなる.前章で衝撃吸収には2~3rpmが必要で,単体アクチュエータでは衝撃直

(27)

後に5rpm まで応答することが確認されているが,この実験結果はこれを裏付けるもの であり,バックドライバビリティの性能が発揮されていることがわかった.

(4) 前方転倒後のうつ伏せ状態からの転倒回復動作

アクチュエータのバックドライバビリティの効果で転倒衝撃を緩和し適切に復帰動 作が可能であることも本研究の目的にあるため,前方転倒後のうつ伏せ状態からの転倒 回復動作が可能であるかどうかの実験を行った.

実験結果としては、アクチュエータのバックドライバビリティの効果により,アクチ ュエータや関節機構部に転倒衝撃による損傷はなく,正常に動作を開始することが確認 された.復帰動作については,特に無理な動作もなく起き上がることができることが確 認された.これは,機構部の特徴による効果が大きいが,具体的には,

ⅰ)足首自由度の可動範囲が大きいことから,足底部を最初に路面につけること が可能であること.

ⅱ)体幹部ピッチ軸が前方にオフセットされていることから可動範囲が前方に 大きくとれており,体幹部を大きく前方に曲げることが可能であること.

が大きく起き上がり動作に寄与していることが確認された.

腕部のピッチ軸,ロール軸などのアクチュエータの出力も起き上がりに必要な出力を 確保していることも確認された.

(5) 後方転倒後の仰向け状態からの転倒回復動作

後方転倒後の仰向け状態からの転倒回復動作が可能であるかどうかについても同様 の目的で実験を行った.

実験結果としては、アクチュエータのバックドライバビリティの効果により,転倒後 に,アクチュエータや関節機構部に転倒衝撃による損傷はなく,正常に動作を開始する ことが確認された.復帰動作については,特に無理な動作もなく起き上がることができ ることが確認された.仰向け状態からの起き上がりは人間にはかなり困難であるが,実 験よりこの起き上がり方が試作ロボットでは可能であることが確認された.

今回,試作ロボットにおいてこの起き上がり方を可能とさせたのは,ロボットである がゆえに機構部の特徴による効果が大きいが,具体的には

ⅰ)人間以上に腕や足首の可動範囲を大きくできること.

ⅱ)腰,膝や足首関節の出力を人間より大きくできること.

(28)

などから可能であることが確認された.

これらの実験を通して小型アクチュエータのロボットシステムに対する当初の目標 が達成されているかどうかを確認してきたが,最後に達成されたアクチュエータおよび 減速機の仕様について示す.

まず,モータと減速機が一体化されたアクチュエータについてであるが,

<目標値>

出力: 定格2.2 Nm 以上 (最も出力を必要とする Actuator-C において)

大きさ: 直径20~30 mm, 長さ50 mm程度

重量: 100 g / 個 レベル (主に使用するActuator-A,B の平均値)

に対して,実際に実現した仕様は,Table.7.5 のようである.

Table. 7.5 Realized actuators specification

Type

A B C

Torque Rate Nm

0.6 1.4 2.2

Size (diameter x length) mm

25 x 55 32 x 53 32 x 58

Weight g

85 125 155

これより,目標としてきた出力,大きさ,重量がほぼ達成されていることが示されてい る.Actuator-C は,155 gと目標より重くなっているが,ロボットに使用している28 個のアクチュエータのうち,膝部の2個だけであるので,他のアクチュエータの平均値 としては約100 g/個となっている.

次に,減速機についてであるが,

(29)

<目標値>

バックドライバビリティ目標値

脚部、胴体部 : 5.0 x 10-2 Nm 腕部 : 2.5 x 10-2 Nm

バックラッシ: 0.5度以内

に対して,実際に実現した仕様は,Table.7.6 のようである.

Table. 7.6 Realized reduction gears specification

Gear A Gear B

Reduction ratio

1:40 1:50

Size mm

40.5

Weight g

30 60

Bearable startup

Torque Nm

2 6

Backdrivabirity Nm

2.0~2.5 x 10

-2

4.5~5.0 x 10

-2

Backlash deg

< 0.5 < 0.5

30 31 × 20 φ

24 × φ

これより,目標としてきたバックドライバビリティ,およびバックラッシは達成してい ることが示されている.困難とされたサイズや重量もモータと減速機が一体化されたア クチュエータ全体としての目標仕様を満足する範囲で実現されている.また,耐トルク も同サイズの他減速機に比較してそれより上回っているか2倍近い値を実現しており,

使用に十分耐えうるレベルのものを実現した.

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