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慢性閉塞性肺疾患増悪入院患者に対する非侵襲的陽圧換気療法を用いた理学療法介入

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 442 46 巻第 6 号 442 ∼ 449 頁(2019 年) 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 症例報告. 慢性閉塞性肺疾患増悪入院患者に対する非侵襲的 陽圧換気療法を用いた理学療法介入* ─超音波画像診断装置を用いた横隔膜移動距離に着目して─. 杉 谷 竜 司 1)# 西 山   理 1) 白 石   匡 1) 藤 田 修 平 1) 水 澤 裕 貴 1) 工藤慎太郎 2) 大 城 昌 平 3) 東 本 有 司 4) 木 村   保 1) 東 田 有 智 1) 福 田 寛 二 1). 要旨 【目的】慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease;以下,COPD)増悪患者の運動時 に非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive Positive Pressure Ventilation;以下,NPPV)を併用し,超音波 画像診断装置にて横隔膜移動距離の変化を検証した。結果をもとに,理学療法時に NPPV を導入し,良 好な転帰が得られたため報告する。 【症例紹介】COPD 増悪にて入院し,第 5 病日より理学療法を開始。 呼吸困難感にて離床が困難であり,運動時の NPPV 併用効果を検証した。【経過】NPPV 併用による運動 時間,呼吸困難感,横隔膜移動距離の改善を確認でき,理学療法に NPPV を導入した。日常生活動作の 改善にて第 25 病日に退院した。 【まとめ】COPD 増悪患者の離床促進に NPPV 導入が有効であり,横隔 膜移動距離は動的肺過膨張の客観的な評価指標として有用であった。 キーワード 慢性閉塞性肺疾患,非侵襲的陽圧換気療法,超音波画像診断装置. に運動療法に移行していくことが求められる。しかし,. はじめに. COPD 増悪患者では,安定期と比較して呼吸困難感が 3).  呼吸リハビリテーションマニュアルでは,急性期はコ. 増強しやすく. ンディショニング主体に開始し,状態に合わせて全身持.  NPPV は,気管切開することなくマスクを介して換気. 久力訓練や ADL 訓練を主体とした訓練を実施していく. を行う非侵襲的な治療であり,近年ではリハビリテー. 1). ,離床を阻害する場合が多い。. 。特に,COPD 増悪では,IL-6. ションとの併用効果が報告されている。日本呼吸器学会. 2). の NPPV ガイドラインにおいても,運動中の換気補助. ADL の低下を招くため,全身状態に応じて可及的早期. としての NPPV 使用は, 「高度な呼吸機能障害例におい. ことが推奨されている 増加とともに大. *. 四頭筋力の低下などを引き起こし. ,. Physical Therapy Intervention using Noninvasive Positive Pressure Ventilation for Inpatients with Exacerbated Chronic Obstructive Pulmonary Disease: Focusing on Evaluation of Diaphragmatic Inspiratory Amplitude using Ultrasonography 1)近畿大学病院 (〒 589‒8511 大阪府大阪狭山市大野東 377‒2) Ryuji Sugiya, PT, MS, Osamu Nishiyama, MD, Masashi Shiraishi, PT, MS, Shuhei Fujita, PT, Yuuki Mizusawa, PT, MS, Tamotsu Kimura, PT, Yuji Tohda, MD, Kanji Fukuda, MD: Kindai University Faculty of Medicine 2)森ノ宮医療大学 Shintarou Kudou, PT, PhD: Morinomiya University of Medical Sciences 3)聖隷クリストファー大学 Shohei Ohgi, PT: Seirei Christopher University 4)公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 Yuji Higashimoto, MD: Kitano Hospital The Tazuke Kofukai Medical research Institute Rehabilitation Center # E-mail: [email protected] (受付日 2019 年 2 月 25 日/受理日 2019 年 8 月 28 日) [J-STAGE での早期公開日 2019 年 11 月 26 日]. て,運動強度・運動時間を向上させる(エビデンスレベ ルⅡ,推奨度 B) 」とされている. 4). 。しかし,NPPV ガ. イドライン内での NPPV 併用効果に関する報告は,安 定期の呼吸器疾患患者を対象としており,急性期の患者 を対象とした報告は少ない。また NPPV 併用による運 動持続時間の延長効果の報告は多いものの,生理学的効 果を検証している報告は少ない。COPD 患者は静的肺 過膨張によって横隔膜が平定化しているが,運動中は呼 気制限により,さらなる肺過膨張をきたす(動的肺過膨 張)。COPD 患者の主要な呼吸困難感の要因は動的肺過 5) 膨張とされるが ,NPPV 併用が動的肺過膨張を軽減さ. せるのではないかと考えた。安定期と比較して呼吸困難 感が強い COPD 増悪時の病態. 3). において,COPD 患者.

(2) COPD に対する NPPV 併用運動療法時の横隔膜移動距離. 443. 図 1 左図;胸部レントゲン所見,右図;胸部 CT 所見(気管支分岐部レベル) 各画像は,入院 1 ヵ月前の安定期に測定された所見である.胸部レントゲン所見では肺 過膨張(横隔膜平定化,摘状心),胸部 CT 所見では高度な気腫化を認めた.. の主要な呼吸困難感の要因である動的肺過膨張を軽減す. 療は,吸入薬としてグリコピロニウム / インダカテロー. るためにも,運動時の NPPV 併用は有効になり得ると. ル配合剤を開始した。外来呼吸リハビリテーションを提. 考えた。. 案されていたが,本人より拒否があった。2 年前にはじ.  一般的に動的肺過膨張は,呼気ガス分析装置やスパイ. めて COPD 増悪にて入院となり,それを契機に本人希. ロメーターにより,運動中の予備吸気量を測定すること. 望にて外来呼吸リハビリテーションを開始した。外来呼. 6)7). 。しかし NPPV にてマスクを装. 吸リハビリテーションのプログラムは,呼吸法指導,呼. 着した状態では測定が困難である。超音波画像診断装置. 吸補助筋のリラクゼーション,胸郭可動域訓練,重錘を. を使用して横隔膜移動距離を評価すれば,NPPV 併用に. 用いた下肢筋力訓練,全身持久力訓練(自転車エルゴ. よる運動中の横隔膜平定化の軽減,つまり動的肺過膨張. メーター;運動負荷 20 watt,運動時間 20 分)にて実. の改善を客観的に捉えることが可能になるのではないか. 施していた。3 ヵ月間の集中プログラムを開始し(2 回. によって評価する. と考えた。. / 週) ,その後は自主トレーニングに移行していた。し.  今回,増悪にて入院した COPD 患者に対して,早期. ばらく増悪はなかったが,6 ヵ月前より 3 回の急性増悪. から NPPV を併用した理学療法を実施した。理学療法. による入院を繰り返していた。直近では,1 ヵ月前に急. に NPPV を導入するにあたって,その効果を超音波画. 性増悪にて入院している。. 像診断装置による横隔膜移動距離を評価することで検証.  今回の入院前の安定期に呼吸機能検査,画像検査,動. した。動的肺過膨張を客観的に観察することができ,そ. 脈血ガス分析を実施している。呼吸機能検査では,肺活. の後の理学療法にて NPPV を併用した結果,良好な転. 量 2.19 L,% 肺 活 量 66.4%, 一 秒 量 0.64 L,% 一 秒 量. 帰が得られた症例を経験したため報告する。. 25.3%,一秒率 34% であった。入院前の胸部レントゲン 所見,胸部 CT 所見では,顕著な気腫化を認め,横隔膜. 症例紹介. 平定化を認めた(図 1)。外来時の動脈血液ガス分析で. 1.現病歴. は,pH 7.411,PaCO2 43.8 torr,PaO2 68.3 torr,HCO3-.  76 歳,男性。162.6 cm,38.7 kg,BMI14.7。COPD に. 27.2 mmol/L で あ っ た。 呼 吸 不 全 は 認 め て い な い が,. て当院呼吸器・アレルギー内科にて外来通院されていた. HCO3- は高値を示している。PaCO2 は正常域であるが,. 患者である。2 年半前に呼吸困難感を自覚し,初診にて. 直近の入院時(1 ヵ月前)に 2 型呼吸不全を認め,HCO3-. 当院呼吸器・アレルギー内科を受診し,COPD と診断. にて代償していた影響と考えられる。. された。喫煙歴は,3 箱× 60 年(23 ∼ 73 歳まで喫煙し.  入院前の薬剤治療は,吸入薬としてグリコピロニウム. ており,COPD 診断時より禁煙) 。同日の呼吸機能検査. / インダカテロール配合剤,フルチカゾンフランカルボ. は,肺活量 1.85 L,% 肺活量 55.9%,一秒量 0.6 L(23.4%) ,. ン酸,および頓用のプロカテロールを処方されていた。. % 一秒量 23.4%,一秒率 33.3% であった。COPD の重症. 3 日前より,感冒症状を認め,外来受診したところ,気. 度分類(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung. 道感染に伴う COPD 増悪との診断にて当院呼吸器・ア. 8). Disease;以下,GOLD) は stage Ⅳであった。薬剤治. レルギー内科に即日入院となった。.

(3) 444. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 2.治療経過. 入院前の歩行は自立レベルであった。しかし,入院期間.  入院時,CRP は 0.053 mg/dL であり,明らかな炎症. での臥床の影響により,立ち上がりと立位保持は見守り. 値の増加や肺炎像は認めなかったが,白血球は 7.08 ×. レベルであったものの,足踏みは腋窩把持にて軽介助レ. 3. 10 /µ L,好中球 81.7% と増加を認め,気道感染に伴う. ベルであった。. COPD 増悪と診断された。抗菌薬は第 1 病日∼第 5 病日 にて静注スルバクタム / アンピシリン 9 g/ 日,第 6 病. 5.臨床経過および理学療法の内容. 日から経口アモキシシリン 750 mg/ 日および経口クラブ.  第 3 ∼第 8 病日まではコンディショニング,排痰訓練,. ラン酸 / アモキシシリン配合錠 750 mg/ 日を投与してい. 関節可動域訓練,低負荷での徒手筋力訓練,立位訓練を. る。第 1 病日よりプロカテロールのネブライザー吸入を. 中心に実施した。. 開始した。入院時の動脈血液ガス分析では,pH 7.327,.  第 5 病日より,NPPV は終日の装着から夜間のみの装. PaCO2 63.0 torr,PaO2 32.1torr,HCO3- 32.2 mmol/L と. 着に変更された。しかし,離床訓練時に顕著な労作時呼. 2 型呼吸不全と呼吸性アシドーシスを認め,終日 NPPV. 吸困難感を認めた。NPPV の終日装着中は,数回の立位. 導入となった。第 3 病日より,急性期理学療法が開始と. 訓練が行えたが,離脱後は 1 回程度の立位練習までしか. なった。. 実施できず,離床が遅延した。離床による SpO2 の低下 は認めなかったことから,NPPV による換気補助が呼吸. 3.NPPV の設定. 困難感の軽減につながっていたと考えた。第 9 病日より.  NPPV(トリロジー 100 plus,フィリップス・レスピ. 離床促進を目的に理学療法時の NPPV 併用を検討した。. ロニクス株式会社)の設定は,S/T モード,吸気相陽. 第 9 病日に理学療法時の導入を目的として,超音波画像. 圧(Inspiratory Positive Airway Pressure:以下,IPAP). 診断装置を用いた効果検証を行った。. は 20 cmH2O,呼気相陽圧(Expiratory Positive Airway Pressure: 以 下,EPAP) は 5 cmH2O, 吸 入 気 酸 素 濃. 6.超音波画像診断装置による NPPV の効果検証. 度(Fraction of inspiratory oxygen:以下,FiO2)は 26%,.  COPD 増悪患者に対する運動時の NPPV 併用のエビ. 設定呼吸数は 22 回 / 分であった。肺気腫による圧損傷. デンスはないため,継続的な理学療法時の NPPV 導入. のリスクを考慮する必要があるが,PaCO2 の上昇を避. には,量的な指標での効果検証をしたうえで医師に依頼. けるため,日中離脱(第 5 病日)以降も退院時まで上記. する必要があった。NPPV 併用を検討した段階(第 9 病. 設定のまま変更はなかった。理学療法での併用時は,運. 日)にて,NPPV 併用による運動持続時間,自覚症状,. 動中の呼吸数増加を考慮して設定呼吸数を 1 回 / 分に変. 生理学的な影響について検証した。理学療法時の NPPV. 更している。本来であれば,運動中は設定呼吸数を 0 回. の効果を確認するために,NPPV 下および酸素カニュー. / 分としたかったが,トリロジー 100 plus の S/T モー. レ 3 L/ 分下の 2 条件で評価を実施した。NPPV 設定は,. ドでは,設定呼吸数を 1 回以上に設定する必要があった. S/T モ ー ド,IPAP は 20 cmH2O,EPAP は 5 cmH2O,. ため,1 回 / 分とした。. FiO2 は 26%, 設 定 呼 吸 数 は 1 回 / 分 と し た。 酸 素 カ ニューレは病棟での労作時指示と同様,3 L/ 分で実施. 4.理学療法開始時身体所見(第 3 病日). した。理論上での FiO2 は 26% より少し高くなるが,酸.  理学療法開始時の安静時バイタルサインは,体温 37.0° ,. 素カニューレ下での離床訓練時にすでに SpO2 の低下を. 血圧 110/66 mmHg,NPPV 装着下で,安静時経皮的酸素. 認めないことが確認したため,病棟指示と同様に実施し. 飽和度(saturation of percutaneous oxygen;以下,SpO2). た。NPPV による呼吸筋疲労軽減の効果を検討した報告. 96%,脈拍数 61 bpm,呼吸数 22 回 / 分であった。心拍. においても,自発呼吸と NPPV 併用下の 2 条件にて比. 数は,脈拍数と同様であり,心電図所見上では不整脈は. 9) 較し,NPPV 併用効果を示している 。この 2 条件で同. 認めず,洞調律であった。. じ運動負荷での比較をすれば,純粋な NPPV 併用効果.  視診では,胸郭のビア樽状変形,安静時での呼吸補助. を示せると考えた。離床状況を考慮して,ベッドサイド. 筋(胸鎖乳突筋,斜角筋群)の発達と過剰収縮を認めた。. にて使用可能な仰臥位用負荷可変式エルゴメーター(昭. 呼吸は胸式優位であり,呼気の延長を認めていた。聴診. 和電機株式会社,てらすエルゴⅡ)で運動を実施した。. では,連続性低音性ラ音が聴取された。湿性咳嗽を認め. 完全な仰臥位では,ギャッジアップ位や端座位等と比較. るが,咳嗽力は弱く,自己排痰困難であった。. して努力肺性肺活量が減少するとされ.  Eastern Cooperative Oncology Group Performance. しては腹部臓器にて横隔膜が上方に押し上げられるため. Status(以下,ECOG PS)は 4 であり,常時臥床して. と考えられている。本症例においても,運動時の自覚症. 過ごしていた。身体機能は,膝伸展筋力,股関節外転筋. 状について,仰臥位と比較してギャッジアップ位にて軽. 力等,下肢筋力は MMT5 であった。動作能力について,. 減を認めたため,30°ギャッジアップした状態で検査を. 10). ,その要因と.

(4) COPD に対する NPPV 併用運動療法時の横隔膜移動距離. 445. 図 2 エコーによる横隔膜測定方法(左)および B-mode での横隔膜同定時のランドマーク(中) ,M-mode での横隔膜移動距離の計測方法(右) 左図は健常者を対象に疑似的に示している.コンベックス型プローブを右肋骨弓(左)にあて胆嚢,肝臓, 腎臓をランドマークに横隔膜を同定した(中).M-mode にて吸気開始時から吸気終末での横隔膜移動距離 (DIA)を計測した(右).. 表 1 酸素カニューレ,NPPV 併用下での安静時および運動時のバイタルサイン,自覚症状の変化について(第 9 病日). 酸素 カニューレ (3L). NPPV. 安静時. 1分. 2分. 3分. 4分. 5分. 6分. 6 分 20 秒. SpO2(%). 97. 96. 96. 96. −. −. −. −. 脈拍数(bpm). 69. 70. 72. 72. −. −. −. −. BS. 0. 4. 7. 10. −. −. −. −. 呼吸数(回 / 分). 16. 22. 27. 29. −. −. −. −. SpO2(%). 100. 100. 98. 98. 98. 98. 98. 98. 脈拍数(bpm). 68. 70. 75. 77. 81. 82. 80. 80. BS. 0. 3. 5. 6. 6. 10. 10. 10. 呼吸数(回 / 分). 14. 7. 11. 20. 22. 23. 24. 24. 実施した。負荷設定は 20 watt とした。増悪期では最大. 運動時(1 分毎)に 15 秒間ずつ記録し,DIA の計測が. 運動負荷の測定は困難であり,外来リハビリテーション. 可能な 3 回以上の呼吸での最大値を算出した。測定指標. 通院時と同等の負荷にて実施した(外来通院時は 15 分. としては,運動持続時間および 1 分毎の SpO2,脈拍,. 以上可能)。回転数は 50 ∼ 60 回転 / 分とした。回転数. 呼吸困難感(modified Borg scale:以下,BS)を評価. を 50 回転 / 分に維持できなくなった時点で終了とした。. した。. 運動中の横隔膜移動距離を超音波画像診断装置(キヤノ.  各条件下での運動持続時間,バイタルサインの変動に. ンメディカルシステムズ株式会社,超音波画像診断装置. ついて表 1 に示した。運動持続時間は,酸素カニューレ. XARIO)を用いて測定した。周波数は 3.5 MHz,プロー. 下にて 3 分 0 秒,NPPV 併用下にて 6 分 20 秒であり,. 11). を参. NPPV による運動持続時間の延長を認めた。最低 SpO2. 考に前腋窩線の延長線上,右側肋骨弓下に沿って長軸方. 値は,酸素カニューレ下にて 97%,NPPV 併用下にて. 向にプローブを設置し,下大静脈,肝臓,胆嚢をランド. 98% と 著 変 を 認 め な か っ た。 最 大 脈 拍 数 は, 酸 素 カ. マークに横隔膜位置を同定した(図 2)。複数回測定で. ニューレ下にて 72 bpm,NPPV 併用下にて 82 bpm で. の測定位置を統一するために,心窩部より右肋骨弓下に. あった。最大 BS は 2 条件ともに 10 であったが,NPPV. 沿って線上で遠位方向に 7 cm 地点で統一した。M モー. 併用下の方が酸素カニューレ下と比較して増加が緩徐で. ドにて横隔膜移動距離(diaphragmatic inspiratory ampli-. あり,酸素カニューレ下での運動を終了した 3 分(BS. tude;以下,DIA)を計測した。吸気開始直前∼横隔膜. 10)の時点では BS 6 であった。横隔膜移動距離につい. 移動がプラトーとなった地点までの距離を計測した. て,安静時・深呼吸時・運動時の超音波画像(図 3) ,. (mm)。超音波画像診断装置は,安静呼吸時,深呼吸時,. DIA の経時的変化(図 4)を図示した。酸素カニューレ. ブの形状はコンベックス型を用いた。先行文献.

(5) 446. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 図 3 酸素カニューレ(上段) ,NPPV 併用下(下段)における安静時,深呼吸時,運動時の横隔膜動態の 超音波画像(第 9 病日) (a)安静時 (b)深呼吸時 (c)3 分経過時 (d)安静時 (e)深呼吸時 (f) 3 分経過時 (g)6 分経過時. 図 4 酸素カニューレ,NPPV 使用下での安静時,深呼吸時および運動時の横隔膜移動距離(第 9 病日). 下での DIA は,安静時 18.1 mm,深呼吸時 38.4 mm,1. 習を開始できた。第 11 病日より,訓練室でのリハビリ. 分後 25.9 mm,2 分後 22.6 mm,3 分後 19.2 mm であっ. テーションに移行した。訓練室移行後は,コンディショ. たのに対し,NPPV 併用下では安静時 25.9 mm,深呼. ニング,排痰訓練,関節可動域訓練,徒手筋力訓練,歩. 吸時 55.3 mm,1 分後 53 mm,2 分後 33.8 mm,4 分後. 行訓練,自転車エルゴメーターによる全身持久力訓練,. 37.2 mm,5 分 後 32.7 mm,6 分 後 29.3 mm で あ っ た。. ADL 訓練を実施した。自転車エルゴメーター駆動時も. Paulin らは,COPD 患者の深呼吸時の DIA と運動耐容. NPPV 併用しながら実施した(図 6) 。急性期のため,6. 能の関係性を報告しているが,横隔膜の可動性低下がエ. 分間歩行試験や呼気ガス分析装置を用いた運動負荷試験. 12). 。酸. は実施できていないが,運動耐容能として自転車エルゴ. 素カニューレ下では運動に伴って経時的に DIA が減少. メーターの定常負荷(20 watt)での運動持続時間を記. しており,エアートラッピングに伴う動的肺過膨張を示. 録した(図 5) 。全身持久力訓練開始時点(第 11 病日). していると予測される。一方で NPPV 併用下では,酸. では,運動持続時間は 6 分であったが,徐々に増加し,. 素カニューレ下と比較して,DIA が大きかった。先行. 第 24 病日には 15 分の連続運動が可能となった。初期評. アートラッピングに由来していると述べている. 12). では,深呼吸時の DIA で 34 mm をカットオフ. 価時の ADL は,足踏みが腋窩介助による軽介助レベル. 値として群分けしている。本症例の場合,酸素カニュー. であったが,第 11 病日より支柱台把持にて見守りレベ. レ下では,深呼吸時の DIA は 38.4 mm であり,カット. ルで歩行が行えるようになった。第 14 病日からは病棟. オフ値は超えているものの,DIA 低下群に近い数値を. 内 で の 歩 行 は 酸 素 使 用 下 で 修 正 自 立 レ ベ ル と な り,. 示していた。そのため,NPPV 併用下での 55.3 mm は,. ECOG PS は 3 と改善を示した。血液ガス検査,血球化. 大きく改善しているといえる。. 学検査,生化学検査の検査値の推移は図 7 に示した。第. 研究. リハビリテーション経過(図 5). 19 病時点での PaCO2 は 54.4 torr となりプラトーと考え られた。.   評 価 結 果 を も と に, 第 10 病 日 よ り 理 学 療 法 時 は.  第 25 病日,日中の在宅酸素療法(安静時 1 L/ 分,労作. NPPV 併用下での理学療法を開始した。同日から歩行練. 時 3 L/ 分) ,夜間 NPPV(S/T モード,EPAP 20 cmH2O,.

(6) COPD に対する NPPV 併用運動療法時の横隔膜移動距離. 447. 図 5 リハビリテーション経過および自転車エルゴメーターでの運動持続時間. に本研究の意義は,NPPV 導入時に超音波画像診断装置 を用いた評価によって DIA の改善を確認できたことに ある。これまで NPPV 併用効果について,生理学的効 果を検証した報告は少なかった。今回,超音波画像診断 装置にて DIA を評価することによって,客観的な指標 として NPPV 併用効果を示すことができた。本症例は 重症 COPD 患者であり,運動に伴う経時的な DIA 減少 を認めたが,NPPV 併用による DIA 改善効果を可視的 に確認することができた。  COPD 患者における主要な呼吸困難感の機序として は,動的肺過膨張による吸気筋の努力性収縮が要因とさ れている. 5). 。閉塞性換気障害による呼出制限により,運. 動中は十分な呼気が行えず,肺内に空気が残ったまま吸 気相に移行するため,運動に伴って経時的に呼気終末肺 気量が増えていく。呼気終末肺気量が増えて胸郭が拡張 した状態では,胸郭の弾性収縮力が増加するため,吸気 筋への負担増加による呼吸努力感として自覚症状が増強 する. 13). 。また COPD 増悪時は,安定期と比較して予備. 吸気量が減少することも報告されている. 2). 。.  通常運動中の予備吸気量の測定は呼気ガス分析装置や 図 6 NPPV 併用下での全身持久力訓練(自転車エ ルゴメーター). スパイロメーターなどを使用することで可能である が. 6) 7). ,NPPV のマスクを装着した場合は測定できない。. そこで,今回は超音波画像診断装置を用いて横隔膜移動 IPAP 5 cmH2O,FiO2 26%,RR 20 回 / 分)を処方され自. 距離を定量的に評価することで,動的肺過膨張の評価を. 宅退院となった。. 行った。酸素カニューレ下では,DIA が運動終了時ま. 考   察. で経時的に減少しており,呼気終末肺気量が増加して横 隔膜が平定する,つまり動的肺過膨張を示す所見が確認.  COPD 増悪入院の患者に対して,NPPV を併用した. された。しかし NPPV を併用することによって動的肺. 理学療法を実施した。安定期の COPD 患者と同様,運. 過膨張が軽減し,運動持続時間および呼吸困難感が軽減. 動持続時間や呼吸困難感の軽減を認め,運動負荷を増強. した。また運動時の肺の容量変化が大きくなったことに. できたため,良好な転帰が得られたと考えられる。さら. よって,DIA が改善したと考える。.

(7) 448. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 図 7 血液ガス検査,血球化学検査,生化学検査の検査値の経過.  NPPV 併用によって DIA が改善したメカニズムにつ. が運動持続時間を延長させる機序について,可視的に評. いては,① EPAP による気道虚脱の軽減,② IPAP によ. 価した報告は少なく,筆者の確認する限りでは運動中の. る吸気量増加が考えられる。先行研究では,鼻マスク型. PaO2 を高値に保つことを報告した研究. のインターフェイスを使用して,6 分間歩行試験時の呼. 超音波画像診断装置による横隔膜の評価は,腹部外科手. 気陽圧補助(positive expiratory pressure;以下,PEP). 術後の肺活量低下を予測する指標. の併用効果を検討している. 14). 。全肺気量,機能的残気量,. 20). のみである。. 21). ,また人工呼吸器. 離脱の可否や合併症のリスクを予測するツールとして利 22). 。運動時の横隔膜移動距離について,. 残気量の改善とともに,6 分間歩行距離の増加を認めた. 用されている. と報告している。本症例においても PEP と同様,EPAP. 現在のところエビデンスのある測定方法は存在しない。. による呼気時の陽圧が気道虚脱を防ぎ,呼出量を確保し. しかし,今回の症例における単回の評価では,COPD. やすくなったことで動的肺過膨張が軽減したと考えられ. 患者での運動に伴う DIA の経時的な減少,NPPV 併用. る。また COPD 患者における吸気筋トレーニングの有. による DIA の改善が確認できた。. 効性が報告されており. 15). ,呼吸筋の重要性が示唆され.  COPD 増悪入院患者では,安静臥床 25). 23). ,炎症 24),低. など様々な因子が筋力低下につながるため,早. ているが,本症例では IPAP による吸気補助が吸気筋努. 栄養. 力の軽減につながった可能性もある。Kantarci らの報. 期からの離床訓練の重要性が指摘されている。NPPV 併. 告. 16). では,健常者(> 50 歳)の深呼吸時の DIA の平. 用の理学療法が離床促進につながり,身体機能や動作能. 均値は 50.0 ± 12.1 mm であったが,本症例の NPPV 併. 力の維持や改善につながる可能性が考えられる。さらに. 用下での DIA は 55.3 mm であり,健常者以上であった。. その効果の指標として,超音波画像診断装置による横隔. IPAP が 吸 気 量 増 加 に も つ な が っ た と 考 え ら れ る。. 膜移動距離の評価が有用であることが示唆された。. COPD 患者における深呼吸時の DIA が運動耐容能と関.  本研究の限界として,運動耐容能や ADL を示す客観. 連がある. 9). とする先行研究と同様の結果となった。. 的評価が不足していたことが挙げられる。今後は症例数.  これまでリハビリテーションと NPPV の関係性につ. を増やし,また他の客観的評価も加え,急性期における. いては,長期効果が多く報告されてきた。NPPV は睡眠. NPPV を併用した理学療法のエビデンスを構築していく. 時無呼吸症候群など夜間に使用する頻度が多く,夜間. ことが重要である。また本症例は,常食を全量摂取でき. NPPV と日中の運動療法により,運動耐容能だけではな. ていたが,Alb 値の低下を認めていた。COPD 患者に対. く. 17). 改善. ,生活の質(Quality of Life;QOL)や PaCO2 の. する呼吸リハビリテーションと栄養療法の併用効果につ. 18). いてはすでに報告されており. が得られると報告されている。運動における即. 時的効果としては,肺結核後遺症患者にて運動持続時間 を延長させることが報告されている. 19). 。しかし NPPV. 26). ,本症例においても栄. 養療法を併用すればさらに運動療法の効果が得られやす かったと考える。また呼吸困難感によって ADL が低下.

(8) COPD に対する NPPV 併用運動療法時の横隔膜移動距離. していたため,動作方法の指導など作業療法の介入も必 要であったと考える。 説明と同意  今回,超音波画像診断装置による評価および NPPV のリハビリテーション時への導入にあたって,超音波画 像診断装置を含む運動評価を行う目的,NPPV 併用にて 期待される効果やリスクについて十分に説明したうえで 実施した。また本誌への掲載にあたり,情報開示の方法, 個人情報の取り扱い,相談時への対応について説明を実 施して同意を得た。 利益相反  本症例研究について開示すべき COI はない。 文  献 1)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテー ション委員会ワーキンググループ:呼吸リハビリテーショ ン マ ニ ュ ア ル ─ 運 動 療 法 ─( 第 2 版 ) . 照 林 社, 東 京, 2012,pp. 2‒11. 2)Spruit MA, Gosselink R, et al.: Muscle force during an acute exacerbation in hospitalised patients with COPD and its relationship with CXCL8 and IGF-I. Thorax. 2003; 58: 752‒756. 3)van Geffen WH, Kerstjens HA: Static and dynamic hyperinflation during severe acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Int J Chron Obstruct Pulmon dis. 2018; 13: 1269‒1277. 4)Akashiba T, Ishikawa Y, et al.: The Japanese Respiratory Society Noninvasive Positive Pressure Ventilation (NPPV) Guidelines (second revised edition). Respir Investig. 2017; 55: 83‒92. 5)O’donnel DE, Bertley JC, et al.: Qualitative aspects of exertional breathlessness in chronic airflow limitation: pathophysiologic mechanisms. Am J Respir Crit Care Med. 1997; 155: 109‒115. 6)Yoshimura K, Maekura R, et al.: Effects of tiotropium on sympathetic activation during exercise in stable chronic obstructive pulmonary disease patients. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2012; 7: 109‒117. 7)Meys R, Schiefer M, et al.: Measurement of Dynamic Hyperinflation During the 6-Minute Walk Test Using a Mobile Device. Respir Care. 2019; 64: 182‒188. 8)Vestbo J, Hurd SS, et al.: Global strategy for the diagnosis, management and prevention of chronic obstructive pulmonary disease: GOLD executive summery. Am J Respir Crit Care Med. 2013; 187: 347‒365. 9)Polkey MI, Kyroussis D, et al.: Inspiratory pressure support reduces slowing of inspiratory muscle relaxation rate during exhaustive treadmill walking in severe COPD. Am J Respir Crit Care Med. 1996; 154: 1146‒1150.. 449. 10)Martinez BP, Silva JP, et al.: Influence of different body positions in vital capacity in patients on postoperative upper abdominal. Braz J Anesthesiol. 2015; 65: 217‒221. 11)Ayoub J, Cohendy R, et al.: Non-invasive quantification of diaphragm kinetics using m-mode sonography. Can J of Anaesth. 1997; 44: 739‒744. 12)Paulin E, Yamaguti WP, et al.: Influence of diaphragmatic mobility on exercise tolerance and dyspnea in patients with COPD. Resir Med. 2007; 101: 2113‒2118. 13)Rochester DF, Braun NM: Determinants of maximal inspiratory pressure in chronic obstructive pulmonary disease. Am Rev Respir Dis. 1985; 132: 42‒47. 14)Wibmer T, Rudiger S, et al.: Effects of nasal positive expiratory pressure on dynamic hyperinflation and 6-minute walk test in patients with COPD. Respir Care. 2014; 59: 699‒708. 15)Beaumont M, Forget P, et al.: Effects of inspiratory muscle training in COPD patients: a systematic review and meta-analysis. Clin Respir J. 2018; 12: 2178‒2188. 16)Kantarci F, Mihmanli I, et al.: Normal diaphragmatic motion and the effects of body composition: determination with M-mode sonography. J Ultrasound Med. 2004; 23: 255‒260. 17)Kohnlein T, Schonheit-Kenn U, et al.: Noninvasive ventilation in pulmonary rehabilitation of COPD patients. Respir Med. 2009; 103: 1329‒1336. 18)Duiverman ML, Wempe JB, et al.: Nocturnal non-invasive ventilation in addition to rehabilitation in hypercapnic patients with COPD. Thorax. 2008; 63: 1052‒1057. 19)Tsuboi T, Ohi M, et al.: Ventilatory support during exercise in patients with pulmonary tuberculosis sequelae. Chest. 1997; 112: 1000‒1007. 20)Dreher M, Doncheva E, et al.: Preserving oxygenation during walking in severe chronic obstructive pulmonary disease: noninvasive ventilation versus oxygen therapy. Respiration. 2009; 78: 154‒160. 21)Kim SH, Na S, et al.: An evaluation of diaphragmatic movement by M-mode sonography as a predictor of pulmonary dysfunction after upper abdominal surgery. Anesth Analg. 2010; 110: 1349‒1354. 22)Goligher EC, Dres M, et al.: Mechanical Ventilationinduced Diaphragm Atrophy Strongly Impacts Clinical Outcomes. Am J Respir Crit Care Med. 2018; 197: 204‒213. 23)Edgerton VR, Zhou MY, et al.: Human fiber size and enzymatic properties after 5 and 11 days of spaceflight. J Appl Physiol. 1995; 78: 1733‒1739. 24)Beyer I, Mets T, et al.: Chronic low-glade inflammatiuon and age-related sarcopenia. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2012; 15: 12‒22. 25)Soini H, Routasalo P, et al.: Characteristics of the MiniNutritional Assessment in elderly home-care patients. Eur J Clin Nutr. 2004; 58: 64‒70. 26)Holst M, Beck AM, et al.: Insufficient intake of energy and protein is related to physical functional capacity among COPD patients referred to municipality based pulmonary rehabilitation. Clin Nutr ESPEN. 2019; 30: 35‒41..

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参照

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