【はじめに】ノロウイルスは感染力が強く少量のウイルス でも感染が成立するため、迅速かつ高感度に検出する検査 体制の構築が望まれる。高感度な検査法として厚生労働省 が推奨するリアルタイムRT-PCR 法があるが、操作が繁雑 であり、結果を得るまでに約4 時間を要する問題点がある。 また、ノロウイルス抗原キットは操作が簡便かつ迅速性に 優れている反面、十分な感度を有していないことが指摘さ れている。近年、これらの問題点を克服するためTRC Ready ノロウイルス (TRC 法:東ソー)が開発された。本検 査法は、核酸の抽出・増幅・検出までを自動化した遺伝子 解析装置を利用するため操作が簡便であり、さらに測定時 間も約50 分と迅速性に優れている。そこで、今回我々は、 TRC 法によるノロウイルスの検出能について評価した。 【対象】ノロウイルス感染疑い患者の便60 検体とした。 【方法】TRC 法による検出は、自動遺伝子検査装置 TRC Ready-80 を用いた。比較対照のリアルタイム RT-PCR 法は、 TaKaRa qPCR Norovirus (GⅠ/GⅡ) Typing Kit (タカラバイ オ)と LightCycler Nano システム (ロシュ・ダイアグノステ ィックス)を用い測定した。さらに、陽性を示した検体は遺 伝子型解析を行い、Genotype を決定した。 【結果】リアルタイムRT-PCR 法では、60 件中 GenogroupⅠが 4 件、GenogroupⅡが 20 件、GⅠ・ GⅡの混 合感染が1 件の計 25 件が陽性を示し、ウイルス量は、 3.14×108 – 1.54×10 copies/μL であった。また、遺伝子型は、 GenogroupⅠは GⅠ.1 (1 件)、GⅠ.2 (2 件)、GⅠ.3 (2 件)、 GenogroupⅡは GⅡ.2 (1 件)、GⅡ.4 (6 件)、GⅡ.13 (2 件)、 GⅡ.17 (12 件)であった。一方、TRC 法では、24 件が陽性を 示し、リアルタイムRT-PCR 法との陽性一致率は 96.0%で あった。TRC 法で偽陰性であった検体は、GⅠ.2 で 1.54×10 copies /μL とウイルス量が極めて少ない検体であ った。 【結語】TRC Ready ノロウイルスの検出能は、リアルタイ ムRT-PCR とほぼ同等であり、測定時間も短く操作も簡便 であるため、日常検査に有用と考えられた。 連絡先011-611-2111【内線 3645】
自動遺伝子検査装置
TRCReady-80 を用いたノロウイルス検出能の性能評価
◎佐藤 勇樹1)、品川 雅明1)、韮澤 慎也1)、八鍬 佑貴1)、佐伯 理知1)、東 恭悟2)、淺沼 康一1)、高橋 聡1) 札幌医科大学附属病院 検査部1)、札幌医科大学附属病院 病理部2)EntryNo. 35
【はじめに】壊死性筋膜炎は急激な経過を辿り、死亡率も 高い感染症であり、早期診断、治療を要する。β 溶血性連 鎖球菌による壊死性筋膜炎は主にA 群溶連菌(以下 GAS) が起炎菌として知られている。今回、短期間にG 群溶連菌 による壊死性筋膜炎を2 例経験したので報告する。 【症例1】91 歳、男性。慢性心不全、完全房室ブロックな どの既往歴あり。2015 年 9 月 10 日夜から発熱、右手背の 疼痛があり、SPO2低下に伴い、9 月 11 日深夜に当院へ救 急搬送された。来院時より右手背の皮下出血斑と前腕にか けての腫脹があり、精査中に血圧の低下と右前腕の腫脹の 急速な悪化を認めた。同日夕方に入院時提出の血液培養が 陽性になり、G 群溶連菌が分離されたことから、デブリー ドマン目的に緊急手術が行われた。その後PCG、CLDM 投 与による治療が続けられ、第64 病日目に軽快退院となった。 【症例2】83 歳、女性。慢性心不全、高血圧の既往歴あり。 以前より左下肢に浮腫を認めていたが、2015 年 9 月頃より 悪化していた。10 月 30 日に転倒、その後から左下肢に水 疱が出現、自宅で様子を見ていたが11 月 2 日当院受診した。 左足部から大腿近位にかけて後面以外に水疱形成があり、 壊死性筋膜炎が疑われ、水疱内容液と血液培養2 セットが 提出された。水疱内容液のグラム染色にて連鎖球菌を認め たため、ストレプトLA「生研」(デンカ生研)を使用して 水疱内容液から直接ラテックス凝集反応を実施しG 群溶連 菌と報告した。緊急手術にて左大腿の切断が行われ、 PCG、CLDM 投与による治療が続けられたが、多臓器不全、 循環不全となり、翌日永眠された。また、血液培養からは 菌は検出されなかった。 【まとめ】2 症例とも精査の結果、Streptococcusdysgalactiae subsp. equisimilis(以下 SDSE)と同定された。
SDSE は特に高齢者に対して、GAS と同様な感染症を引き 起こすことが知られており、近年注目されている菌である。 今回の2 症例から壊死性筋膜炎が疑われる場合は臨床側と 連携をとりつつ、グラム染色形態などから迅速に起炎菌を 推定し、報告する必要があると改めて感じた。 連絡先 025-522-7711(内線 2566)
短期間に経験した
G 群溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎の2例
◎山本 絢子1)、郷 裕昭1)、齋藤 芳弘1) 新潟県立中央病院 臨床検査科1)EntryNo. 40
【目的】Clostridium difficile は C. difficile 感染症(CDI)の
起炎菌であり、院内感染の原因菌でもある。しかし、現在 市販されている迅速診断キットは、toxin の検出感度が低く、 抗原であるGlutamate dehydrogenase(GDH)のみ陽性の場 合の解釈が難しい。今回GDH のみ陽性の場合に培養検査 を追加し、菌株からtoxin を再検査することの有用性と、調 査から見えた当院の課題について検証した。 【対象・方法】対象は2015 年 1 月から 2016 年 5 月までに、 CDI を疑い提出された糞便 536 検体。GDH と toxin の検出 にはC. DIFF QUIK CHEK コンプリート(アリーアメディ
カル)、分離培養にはCCFA 培地(日本 BD)を使用した。 検体でtoxin 陽性(Ⅰ群)、検体で GDH のみ陽性のうち菌 株でtoxin 陽性(Ⅱ群)、菌株で toxin 陰性(Ⅲ群)の 3 群 に分け、該当患者の治療内容から評価を行った。 【結果】総検体数536 検体のうちⅠ群 47 件。GDH のみ陽 性だった54 件を培養したところ、43 検体で C. difficile の発 育を認めた。菌株でtoxin を再検査するとⅡ群 15 件、Ⅲ群 28 件であった。それぞれの群で治療を行ったのは、Ⅰ群 42 人(89.4%)、Ⅱ群 6 人(40%)、Ⅲ群 11 人(39.3%) であった。治療期間の中央値はⅠ群12 日間、Ⅱ群とⅢ群は 10 日間であった。(治療中の転院・死亡症例は除いた) 【考察】GDH のみ陽性検体の C. difficile 培養後の toxin 陽 性率は27.8%で、他報告(39.4%~82.2%)と比較して低か った。Ⅰ群とⅡ・Ⅲ群では治療を行った割合に差が認めら れたが、Ⅲ群でも約4 割が治療を行っていた。また当院の 傾向として、toxin 産生の有無に関わらず、臨床症状から CDI として治療している症例も多く、「toxin 陰性」が治療 中止の根拠となるのか不明であった。今後、菌株での toxin 再検査の結果を臨床に還元し、その効果について検討 していきたい。さらに今回の調査で、検査の適応とならな い症例(治療効果判定)や、長期入院にも関わらず、便培 養が同時に提出されている症例も散見された。糞便検体が 提出された際には細菌検査室でもアセスメントを行い、検 査の適応に関して、医師とディスカッションする必要性が あると思われた。 連絡先:0178-72-5111(内線 2430)
Clostridium difficile の培養検査からみえてきた当院の現状と今後の課題
◎金澤 雄大1)、佐藤 真喜1)、村山 久恵1)、中村 尚子1)、鎌田 恵理子1)、奥田 千晶1)、秋山 怜美1)、堀内 弘子1) 八戸市立市民病院1)EntryNo. 44
【はじめに】腸管出血性大腸菌感染症はベロ毒素を産生す る腸管出血性大腸菌(以下EHEC)の感染によって起こる 全身疾病である。重症例においてはベロ毒素の作用により、 溶血性貧血、急性腎不全をきたし、溶血性尿毒症症候群 (以下HUS)を引き起こすことがある。今回 HUS を発症 したEHEC 感染症を経験したので報告する。 【症例】患者は78 歳女性、2014 年 8 月 19 日腹痛、嘔吐、 血便を認め22 日に近医を受診。腹部レントゲンを施行する も異常なし。点滴にて改善したためLVFX を処方され帰宅。 23 日症状が再燃したため当院 ER を紹介受診。感染性腸炎 の疑いで入院となった。 【入院時検査所見】WBC:18,200/µl RBC:556 万/µl Hb:16.8g/dl PLT:17.9 万/µl CRP:5.18㎎/dl 【細菌学的検査】入院時に血性水様便、入院4 日目に緑色 水様便の便培養が提出されたが35℃2 日培養ではいずれの 検体も大腸菌の発育は認めなかった。入院3 日目に主治医 よりEHEC による HUS 疑いの連絡を受けたため、入院時 提出の便検体にて大腸菌O-157 抗原検査(キャピリア O157)を行い陽性となった。引き続き外注検査にて、便検 体によるベロ毒素迅速検査(オーソVT1/VT2)を依頼し、 入院時提出の便検体で陽性となった。 【まとめ】 EHEC 感染症は 3 類感染症として全数届出が 義務付けられている。確定診断には検体から大腸菌を分離 し、分離株のベロ毒素産生性の確認またはVT 毒素遺伝子 の検出が必要である。しかし、溶血性尿毒素症候群 (HUS)症例に限っては菌が分離されない場合においても 便中のベロ毒素検出または患者血清中の抗大腸菌抗体の検 出によって診断し届出が必要である。本症例ではEHEC 感 染症からHUS を続発したため大腸菌を分離できなかったが 迅速診断キットにてO-157 抗原およびベロ毒素の検出によ ってEHEC 感染症の診断が確定した。病原性大腸菌による 感染が強く疑われる場合は培養検査と並行して迅速キット の活用や便検体からの毒素の検出も考慮することで早期診 断や早期治療開始に貢献できると考えられる。 連絡先 0258-35-3700(内線 3883)溶血性尿毒素症候群を発症した腸管出血性大腸菌感染症の一症例
◎石井 幸恵1)、安藤 昭子2)、村山 由美子3)、飯塚 麻里1) JA 新潟厚生連 長岡中央綜合病院1)、JA 新潟厚生連 豊栄病院2)、JA 新潟厚生連 三条総合病院3)EntryNo. 98
溶血性尿毒症症候群を発症した腸管出血性大腸菌感染症の一症例
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【はじめに】ノロウイルスは感染力が強く少量のウイルス でも感染が成立するため、迅速かつ高感度に検出する検査 体制の構築が望まれる。高感度な検査法として厚生労働省 が推奨するリアルタイムRT-PCR 法があるが、操作が繁雑 であり、結果を得るまでに約4 時間を要する問題点がある。 また、ノロウイルス抗原キットは操作が簡便かつ迅速性に 優れている反面、十分な感度を有していないことが指摘さ れている。近年、これらの問題点を克服するためTRC Ready ノロウイルス (TRC 法:東ソー)が開発された。本検 査法は、核酸の抽出・増幅・検出までを自動化した遺伝子 解析装置を利用するため操作が簡便であり、さらに測定時 間も約50 分と迅速性に優れている。そこで、今回我々は、 TRC 法によるノロウイルスの検出能について評価した。 【対象】ノロウイルス感染疑い患者の便60 検体とした。 【方法】TRC 法による検出は、自動遺伝子検査装置 TRC Ready-80 を用いた。比較対照のリアルタイム RT-PCR 法は、 TaKaRa qPCR Norovirus (GⅠ/GⅡ) Typing Kit (タカラバイ オ)と LightCycler Nano システム (ロシュ・ダイアグノステ ィックス)を用い測定した。さらに、陽性を示した検体は遺 伝子型解析を行い、Genotype を決定した。 【結果】リアルタイムRT-PCR 法では、60 件中 GenogroupⅠが 4 件、GenogroupⅡが 20 件、GⅠ・ GⅡの混 合感染が1 件の計 25 件が陽性を示し、ウイルス量は、 3.14×108 – 1.54×10 copies/μL であった。また、遺伝子型は、 GenogroupⅠは GⅠ.1 (1 件)、GⅠ.2 (2 件)、GⅠ.3 (2 件)、 GenogroupⅡは GⅡ.2 (1 件)、GⅡ.4 (6 件)、GⅡ.13 (2 件)、 GⅡ.17 (12 件)であった。一方、TRC 法では、24 件が陽性を 示し、リアルタイムRT-PCR 法との陽性一致率は 96.0%で あった。TRC 法で偽陰性であった検体は、GⅠ.2 で 1.54×10 copies /μL とウイルス量が極めて少ない検体であ った。 【結語】TRC Ready ノロウイルスの検出能は、リアルタイ ムRT-PCR とほぼ同等であり、測定時間も短く操作も簡便 であるため、日常検査に有用と考えられた。 連絡先011-611-2111【内線 3645】
自動遺伝子検査装置
TRCReady-80 を用いたノロウイルス検出能の性能評価
◎佐藤 勇樹1)、品川 雅明1)、韮澤 慎也1)、八鍬 佑貴1)、佐伯 理知1)、東 恭悟2)、淺沼 康一1)、高橋 聡1) 札幌医科大学附属病院 検査部1)、札幌医科大学附属病院 病理部2)EntryNo. 35
【はじめに】壊死性筋膜炎は急激な経過を辿り、死亡率も 高い感染症であり、早期診断、治療を要する。β 溶血性連 鎖球菌による壊死性筋膜炎は主にA 群溶連菌(以下 GAS) が起炎菌として知られている。今回、短期間にG 群溶連菌 による壊死性筋膜炎を2 例経験したので報告する。 【症例1】91 歳、男性。慢性心不全、完全房室ブロックな どの既往歴あり。2015 年 9 月 10 日夜から発熱、右手背の 疼痛があり、SPO2低下に伴い、9 月 11 日深夜に当院へ救 急搬送された。来院時より右手背の皮下出血斑と前腕にか けての腫脹があり、精査中に血圧の低下と右前腕の腫脹の 急速な悪化を認めた。同日夕方に入院時提出の血液培養が 陽性になり、G 群溶連菌が分離されたことから、デブリー ドマン目的に緊急手術が行われた。その後PCG、CLDM 投 与による治療が続けられ、第64 病日目に軽快退院となった。 【症例2】83 歳、女性。慢性心不全、高血圧の既往歴あり。 以前より左下肢に浮腫を認めていたが、2015 年 9 月頃より 悪化していた。10 月 30 日に転倒、その後から左下肢に水 疱が出現、自宅で様子を見ていたが11 月 2 日当院受診した。 左足部から大腿近位にかけて後面以外に水疱形成があり、 壊死性筋膜炎が疑われ、水疱内容液と血液培養2 セットが 提出された。水疱内容液のグラム染色にて連鎖球菌を認め たため、ストレプトLA「生研」(デンカ生研)を使用して 水疱内容液から直接ラテックス凝集反応を実施しG 群溶連 菌と報告した。緊急手術にて左大腿の切断が行われ、 PCG、CLDM 投与による治療が続けられたが、多臓器不全、 循環不全となり、翌日永眠された。また、血液培養からは 菌は検出されなかった。 【まとめ】2 症例とも精査の結果、Streptococcusdysgalactiae subsp. equisimilis(以下 SDSE)と同定された。
SDSE は特に高齢者に対して、GAS と同様な感染症を引き 起こすことが知られており、近年注目されている菌である。 今回の2 症例から壊死性筋膜炎が疑われる場合は臨床側と 連携をとりつつ、グラム染色形態などから迅速に起炎菌を 推定し、報告する必要があると改めて感じた。 連絡先 025-522-7711(内線 2566)
短期間に経験した
G 群溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎の2例
◎山本 絢子1)、郷 裕昭1)、齋藤 芳弘1) 新潟県立中央病院 臨床検査科1)EntryNo. 40
【目的】Clostridium difficile は C. difficile 感染症(CDI)の
起炎菌であり、院内感染の原因菌でもある。しかし、現在 市販されている迅速診断キットは、toxin の検出感度が低く、 抗原であるGlutamate dehydrogenase(GDH)のみ陽性の場 合の解釈が難しい。今回GDH のみ陽性の場合に培養検査 を追加し、菌株からtoxin を再検査することの有用性と、調 査から見えた当院の課題について検証した。 【対象・方法】対象は2015 年 1 月から 2016 年 5 月までに、 CDI を疑い提出された糞便 536 検体。GDH と toxin の検出 にはC. DIFF QUIK CHEK コンプリート(アリーアメディ
カル)、分離培養にはCCFA 培地(日本 BD)を使用した。 検体でtoxin 陽性(Ⅰ群)、検体で GDH のみ陽性のうち菌 株でtoxin 陽性(Ⅱ群)、菌株で toxin 陰性(Ⅲ群)の 3 群 に分け、該当患者の治療内容から評価を行った。 【結果】総検体数536 検体のうちⅠ群 47 件。GDH のみ陽 性だった54 件を培養したところ、43 検体で C. difficile の発 育を認めた。菌株でtoxin を再検査するとⅡ群 15 件、Ⅲ群 28 件であった。それぞれの群で治療を行ったのは、Ⅰ群 42 人(89.4%)、Ⅱ群 6 人(40%)、Ⅲ群 11 人(39.3%) であった。治療期間の中央値はⅠ群12 日間、Ⅱ群とⅢ群は 10 日間であった。(治療中の転院・死亡症例は除いた) 【考察】GDH のみ陽性検体の C. difficile 培養後の toxin 陽 性率は27.8%で、他報告(39.4%~82.2%)と比較して低か った。Ⅰ群とⅡ・Ⅲ群では治療を行った割合に差が認めら れたが、Ⅲ群でも約4 割が治療を行っていた。また当院の 傾向として、toxin 産生の有無に関わらず、臨床症状から CDI として治療している症例も多く、「toxin 陰性」が治療 中止の根拠となるのか不明であった。今後、菌株での toxin 再検査の結果を臨床に還元し、その効果について検討 していきたい。さらに今回の調査で、検査の適応とならな い症例(治療効果判定)や、長期入院にも関わらず、便培 養が同時に提出されている症例も散見された。糞便検体が 提出された際には細菌検査室でもアセスメントを行い、検 査の適応に関して、医師とディスカッションする必要性が あると思われた。 連絡先:0178-72-5111(内線 2430)
Clostridium difficile の培養検査からみえてきた当院の現状と今後の課題
◎金澤 雄大1)、佐藤 真喜1)、村山 久恵1)、中村 尚子1)、鎌田 恵理子1)、奥田 千晶1)、秋山 怜美1)、堀内 弘子1) 八戸市立市民病院1)EntryNo. 44
【はじめに】腸管出血性大腸菌感染症はベロ毒素を産生す る腸管出血性大腸菌(以下EHEC)の感染によって起こる 全身疾病である。重症例においてはベロ毒素の作用により、 溶血性貧血、急性腎不全をきたし、溶血性尿毒症症候群 (以下HUS)を引き起こすことがある。今回 HUS を発症 したEHEC 感染症を経験したので報告する。 【症例】患者は78 歳女性、2014 年 8 月 19 日腹痛、嘔吐、 血便を認め22 日に近医を受診。腹部レントゲンを施行する も異常なし。点滴にて改善したためLVFX を処方され帰宅。 23 日症状が再燃したため当院 ER を紹介受診。感染性腸炎 の疑いで入院となった。 【入院時検査所見】WBC:18,200/µl RBC:556 万/µl Hb:16.8g/dl PLT:17.9 万/µl CRP:5.18㎎/dl 【細菌学的検査】入院時に血性水様便、入院4 日目に緑色 水様便の便培養が提出されたが35℃2 日培養ではいずれの 検体も大腸菌の発育は認めなかった。入院3 日目に主治医 よりEHEC による HUS 疑いの連絡を受けたため、入院時 提出の便検体にて大腸菌O-157 抗原検査(キャピリア O157)を行い陽性となった。引き続き外注検査にて、便検 体によるベロ毒素迅速検査(オーソVT1/VT2)を依頼し、 入院時提出の便検体で陽性となった。 【まとめ】 EHEC 感染症は 3 類感染症として全数届出が 義務付けられている。確定診断には検体から大腸菌を分離 し、分離株のベロ毒素産生性の確認またはVT 毒素遺伝子 の検出が必要である。しかし、溶血性尿毒素症候群 (HUS)症例に限っては菌が分離されない場合においても 便中のベロ毒素検出または患者血清中の抗大腸菌抗体の検 出によって診断し届出が必要である。本症例ではEHEC 感 染症からHUS を続発したため大腸菌を分離できなかったが 迅速診断キットにてO-157 抗原およびベロ毒素の検出によ ってEHEC 感染症の診断が確定した。病原性大腸菌による 感染が強く疑われる場合は培養検査と並行して迅速キット の活用や便検体からの毒素の検出も考慮することで早期診 断や早期治療開始に貢献できると考えられる。 連絡先 0258-35-3700(内線 3883)溶血性尿毒素症候群を発症した腸管出血性大腸菌感染症の一症例
◎石井 幸恵1)、安藤 昭子2)、村山 由美子3)、飯塚 麻里1) JA 新潟厚生連 長岡中央綜合病院1)、JA 新潟厚生連 豊栄病院2)、JA 新潟厚生連 三条総合病院3)EntryNo. 98
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【背景】 IgG 感作赤血球は間接抗グロブリン試験におい て凝集が認められない場合に添加し、血球洗浄の確認、抗 ヒトグロブリン試薬の活性や入れ忘れを確認するために用 いられる。このIgG 感作赤血球は抗ヒトグロブリン試薬を 用いた検査において使用される重要な試薬であるが海外か ら輸入されるため、試薬メーカーで異なるが2 ヵ月前から の予約注文が必要である。また、試薬単価は使用頻度を考 えると安い試薬ではない。そのため、使用頻度やコストの 面などを考えてIgG 感作赤血球を作製している施設もある。 しかし作製方法は教本などで示されているが、不明な点も 多い。そこで本研究は、安定したIgG 感作赤血球の作製を 目的として条件検討をおこなった。 【材料と方法】 IgG 感作赤血球は、O 型 RhD 陽性赤血球 にポリクローナル抗D を感作させて作製することが知られ ている。そこで赤血球量を500μL(500 万個/μL) 使用する 条件下で、1)抗D 試薬量と使用期限、2)加温時間、3) 抗D 試薬ロット間差、4)供血者血球差について、抗ヒト グロブリン試薬を用いて反応強度を比較・検討を行った。 なお、作製は輸血・移植検査技術教本に準じて実施し、研 究に用いた輸血検査用試薬はオーソ社製を使用した。 【結果・考察】 O 型赤血球に加える抗 D 試薬量と使用期 限を検討した結果、50μL で 1+、100μL で 2+、150μL で 3+であり、100μL 群と 150μL 群では作製後 14 日目まで 2+以上の反応強度が示され、21 日目では 3 群共に溶血が認 められた。また、抗D 試薬を 100μL 加えて加温時間と反応 強度の関係を測定した結果、50 分加温で 3 回実施した全て 2+となった。次に、抗 D 試薬のロットを変えてロット差が 結果に与える影響を検討した結果、50μL 群、100μL 群およ び150μL 群の全てにおいてロット差は認められなかった。 最後に、O 型赤血球を 2 検体、B 型赤血球を 1 検体用意し て個人差と血液型による差を検討した結果、抗D 試薬を 150μL 使用する系で検討した3検体全てで 2+以上であった。 以上のことから、検討した条件下では抗D 試薬を 150μL 使 用した場合、抗D 試薬のロットに関係なく 37℃で 60 分感 作すると、安定したIgG 感作赤血球が作製されることが示 唆された。連絡先 ― 025-257-4529
安定した
IgG 感作血球の作製条件の検討
◎渡邊 愛1)、金田 航1)、竹中 航太1)、田邊 幸1)、川村 宏樹1) 新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科 1)EntryNo. 104
【はじめに】 平成26 年 12 月に赤血球型検査ガイドライン (以下GL)が改訂されたことを受け、我々は GL に準じた 活動を行ってきた。新潟県合同輸血療法委員会で実施して いるアンケート調査結果をもとに、新潟県における輸血検 査の現況と課題について報告する。 【対象と方法】 新潟 県内で輸血を行う主要80 施設を対象とし、県医務薬事課か らアンケート調査用紙を発送、回答はFAX 返信とした。同 様に過去3 年間に輸血用血液の供給実績のある小規模 63 施 設にも実施した。 【調査結果】 主要80 施設すべてから 回答を得た。①検体の種類:血液型検査では血漿が 51 施 設(64%)を占めるが、不規則抗体検査と交差適合試験では血 清と血漿の割合は半数ずつであった。②血液型検査:方法 は試験管法56 施設(70.0%)、カラム法 19 施設(23.8%)でカラ ム法が微増傾向、外注は3 施設。試験管法の施設における Rh コントロールの使用は平成 26 年度の 36 施設から平成 27 年度は 43 施設に増加した。同一患者二重チェックは 74 施設(92.5%)、同一検体二重チェックは 63 施設(78.8%)で 行われていた。③不規則抗体検査:方法は試験管法 40 施 設(50.0%)、カラム法 33 施設(41.3%)、外注と未実施は各 3 施設。術式は酵素法&クームス法 27 施設(36.5%)、生食法 &クームス法 17 施設(23.0%)、クームス法単独 16 施設 (21.6%)の順であった。クームス法の反応増強剤は、平成 26 年度の PEG 19 施設・アルブミン 19 施設から平成 27 年 度はPEG 33 施設・アルブミン 5 施設と大きな変化があっ た。自己対照の使用は39 施設(48.8%)で減少傾向。臨床的 意義のない抗体が検出された場合の臨床報告では、「陽性」 報告が53 施設(68.8%)、「陰性」報告が 22 施設(28.6%)であ った。 小規模施設の調査では44 施設から回答を得た(回 収率69.8%)。不規則抗体検査の未実施 11 施設、検査技師 以外が検査を実施している状況が散見された。 【考察】 GL 改訂を受け、我々が啓蒙活動を行ってきた試 験管法におけるクームス法の反応増強剤切り替え、酵素法 や自己対照の省略等についてはある程度の成果が得られた。 一方で、小規模施設では輸血検査を含めた安全な輸血療法 実施のための体制整備が急務である。 連絡先 025-230-1770新潟県における輸血検査の現況と課題
◎松山 雄一1)、古俣 妙1) 新潟県赤十字血液センタ-1)EntryNo. 101
【はじめに】危機的出血時では、RhD 陰性患者が抗 D を 保有していなければRhD 陽性 RBC を輸血することがある。 今回、緊急手術に際し、RhD 陰性患者へ RhD 陽性 RBC を輸血した症例を経験したので報告する。 【症例】68 歳女性。作業事故により転院搬送、右上腕動脈 吻合手術施行。出産歴2 回。O 型 RhD 陰性、ccEE、不規 則抗体陰性。当院での検査歴・輸血歴は無かったが、前医 よりO 型 RhD 陰性との事前連絡があった。また、前医で の輸血はなかった。 【経過】緊急輸血オーダーを受け、準備していたO 型 RhD 陰性RBC を 8 単位出庫し、その後患者の RhD 陰性を確認 した。緊急手術後の出血に対し、血液センターと調整を図 り対応していたが、供給が間に合わず、RhD 陽性 RBC を 8 単位輸血した。大量出血状態を脱した後も供給の不足に より、更にRhD 陽性 RBC を 4 単位輸血した。輸血量は、 10 日間で RBC が 61 単位(RhD 陽性を含む)、FFP240 が 12 本、FFP480 が 14 本、PC が 100 単位であり、FFP と PC は全て RhD 陽性を輸血した。また、当院の輸血同意書 には、RhD 異型製剤使用の説明・同意に関する適切な文言 の記載がなく、患者又は家族への説明に苦慮した。 【輸血検査】RhD 異型輸血から 1 か月間定期的に検査を実 施した。血液型検査では、抗D との反応が異型輸血後 1 日 は4+、2 日目は mf を示し、3 日目からは陰性となった。 SCR/DAT は全て陰性であった。一方、抗 D を用いた吸着 解離試験では、全て3+程度の強い凝集を認めた。また、異 型輸血から約2 ヵ月後の検体を、血液センターで FCM 検 査したところ、1%程度の RhD 陽性赤血球が残存していた。 【考察・結語】本例では抗体産生の可能性が高い約一か月 という期間では抗D は産生されなかった。このような事例 では、輸血後の患者のフォローアップが重要となることか ら、検査結果に応じた具体的な手順を含めたフローチャー トを整え、臨床医に報告できる体制の構築が必要と考えら れた。また、輸血同意書の内容を、緊急時に速やかに説明 し同意が得られるように、異型輸血の説明をRhD 型も含 め対応できるものに改訂することとし、検討している。 連絡先 018-829-5202 (内線 5621)RhD 陽性 RBC を輸血した RhD 陰性患者の緊急輸血症例
◎田仲 宏充1)、横山 一二美1)、鶴田 聡1) 秋田赤十字病院1)EntryNo. 84
【はじめに】新潟県は、魚沼地域に不足する救命救急医療 や高度医療を確保するため、H27 年 6 月 1 日に「新潟大学 地域医療教育センター魚沼基幹病院」を開院した。新卒新 採用が5 名いて、他にも輸血業務の経験の浅い検査技師も 多く、開院前より輸血の基本的なトレーニングは必須であ った。開院前から現在に至るまでの日当直に入る検査技師 への指導や緊急輸血の経験を報告する。 【緊急輸血の体制】輸血オーダーには「通常」、「緊急」 、「超緊急」の3 つの依頼区分がある。「超緊急」は医師 が電話で依頼し、検査技師が臨床現場まで血液製剤を運び、 検査技師と現場スタッフでダブルチェックをして払い出し ている。一度の出庫はO 型 RBC 6 単位、AB 型 FFP 6 単位 までで繰り返しの出庫は可能である。同型血への切り替え は電子カルテでのオーダーであり、血液型が2 回別時点で 確定し、出庫時、使用時の認証操作が可能であることであ る。 【日当直者への指導】開院前より日当直に入る検査技師 18 名(新人含む)に輸血担当者 3 名で輸血に関するトレー ニングを行った。全自動輸血検査装置(オーソ オートビ ュー)の操作、用手法(オーソ バイオビュー、試験管法) 、FFP の融解の仕方、輸血システムの操作、緊急輸血時の 対応等を指導した。開院後、緊急輸血が日勤帯にあった場 合、実際に輸血担当者以外のスタッフに製剤の準備から払 い出しまで実践してもらった。 【緊急輸血の経験】これまで緊急輸血は日勤帯に14 件、日 当直帯に17 件あった。輸血トレーニングの成果もあり、実 際に緊急輸血が発生したときは円滑に行うことができてい る。 【終わりに】輸血のトレーニングは日当直に入る者に必要 である。また定期的な輸血のトレーニングを行うことで、 輸血の知識が身に付き、迅速な輸血の対応が可能になる。 連絡先:025-777-3200(内線:2202)新設病院における緊急輸血の体制の構築と日当直者への輸血指導
◎小林 徹1)、加藤 瑞希1)、柴田 真由美1)、小池 敦1) 新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院1)EntryNo. 77
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【背景】 IgG 感作赤血球は間接抗グロブリン試験におい て凝集が認められない場合に添加し、血球洗浄の確認、抗 ヒトグロブリン試薬の活性や入れ忘れを確認するために用 いられる。このIgG 感作赤血球は抗ヒトグロブリン試薬を 用いた検査において使用される重要な試薬であるが海外か ら輸入されるため、試薬メーカーで異なるが2 ヵ月前から の予約注文が必要である。また、試薬単価は使用頻度を考 えると安い試薬ではない。そのため、使用頻度やコストの 面などを考えてIgG 感作赤血球を作製している施設もある。 しかし作製方法は教本などで示されているが、不明な点も 多い。そこで本研究は、安定したIgG 感作赤血球の作製を 目的として条件検討をおこなった。 【材料と方法】 IgG 感作赤血球は、O 型 RhD 陽性赤血球 にポリクローナル抗D を感作させて作製することが知られ ている。そこで赤血球量を500μL(500 万個/μL) 使用する 条件下で、1)抗D 試薬量と使用期限、2)加温時間、3) 抗D 試薬ロット間差、4)供血者血球差について、抗ヒト グロブリン試薬を用いて反応強度を比較・検討を行った。 なお、作製は輸血・移植検査技術教本に準じて実施し、研 究に用いた輸血検査用試薬はオーソ社製を使用した。 【結果・考察】 O 型赤血球に加える抗 D 試薬量と使用期 限を検討した結果、50μL で 1+、100μL で 2+、150μL で 3+であり、100μL 群と 150μL 群では作製後 14 日目まで 2+以上の反応強度が示され、21 日目では 3 群共に溶血が認 められた。また、抗D 試薬を 100μL 加えて加温時間と反応 強度の関係を測定した結果、50 分加温で 3 回実施した全て 2+となった。次に、抗 D 試薬のロットを変えてロット差が 結果に与える影響を検討した結果、50μL 群、100μL 群およ び150μL 群の全てにおいてロット差は認められなかった。 最後に、O 型赤血球を 2 検体、B 型赤血球を 1 検体用意し て個人差と血液型による差を検討した結果、抗D 試薬を 150μL 使用する系で検討した3検体全てで 2+以上であった。 以上のことから、検討した条件下では抗D 試薬を 150μL 使 用した場合、抗D 試薬のロットに関係なく 37℃で 60 分感 作すると、安定したIgG 感作赤血球が作製されることが示 唆された。連絡先 ― 025-257-4529
安定した
IgG 感作血球の作製条件の検討
◎渡邊 愛1)、金田 航1)、竹中 航太1)、田邊 幸1)、川村 宏樹1) 新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科 1)EntryNo. 104
【はじめに】 平成 26 年 12 月に赤血球型検査ガイドライン (以下GL)が改訂されたことを受け、我々は GL に準じた 活動を行ってきた。新潟県合同輸血療法委員会で実施して いるアンケート調査結果をもとに、新潟県における輸血検 査の現況と課題について報告する。 【対象と方法】 新潟 県内で輸血を行う主要80 施設を対象とし、県医務薬事課か らアンケート調査用紙を発送、回答はFAX 返信とした。同 様に過去3 年間に輸血用血液の供給実績のある小規模 63 施 設にも実施した。 【調査結果】 主要 80 施設すべてから 回答を得た。①検体の種類:血液型検査では血漿が 51 施 設(64%)を占めるが、不規則抗体検査と交差適合試験では血 清と血漿の割合は半数ずつであった。②血液型検査:方法 は試験管法56 施設(70.0%)、カラム法 19 施設(23.8%)でカラ ム法が微増傾向、外注は3 施設。試験管法の施設における Rh コントロールの使用は平成 26 年度の 36 施設から平成 27 年度は 43 施設に増加した。同一患者二重チェックは 74 施設(92.5%)、同一検体二重チェックは 63 施設(78.8%)で 行われていた。③不規則抗体検査:方法は試験管法 40 施 設(50.0%)、カラム法 33 施設(41.3%)、外注と未実施は各 3 施設。術式は酵素法&クームス法 27 施設(36.5%)、生食法 &クームス法 17 施設(23.0%)、クームス法単独 16 施設 (21.6%)の順であった。クームス法の反応増強剤は、平成 26 年度の PEG 19 施設・アルブミン 19 施設から平成 27 年 度はPEG 33 施設・アルブミン 5 施設と大きな変化があっ た。自己対照の使用は39 施設(48.8%)で減少傾向。臨床的 意義のない抗体が検出された場合の臨床報告では、「陽性」 報告が53 施設(68.8%)、「陰性」報告が 22 施設(28.6%)であ った。 小規模施設の調査では44 施設から回答を得た(回 収率69.8%)。不規則抗体検査の未実施 11 施設、検査技師 以外が検査を実施している状況が散見された。 【考察】 GL 改訂を受け、我々が啓蒙活動を行ってきた試 験管法におけるクームス法の反応増強剤切り替え、酵素法 や自己対照の省略等についてはある程度の成果が得られた。 一方で、小規模施設では輸血検査を含めた安全な輸血療法 実施のための体制整備が急務である。 連絡先 025-230-1770新潟県における輸血検査の現況と課題
◎松山 雄一1)、古俣 妙1) 新潟県赤十字血液センタ-1)EntryNo. 101
【はじめに】危機的出血時では、RhD 陰性患者が抗 D を 保有していなければRhD 陽性 RBC を輸血することがある。 今回、緊急手術に際し、RhD 陰性患者へ RhD 陽性 RBC を輸血した症例を経験したので報告する。 【症例】68 歳女性。作業事故により転院搬送、右上腕動脈 吻合手術施行。出産歴2 回。O 型 RhD 陰性、ccEE、不規 則抗体陰性。当院での検査歴・輸血歴は無かったが、前医 よりO 型 RhD 陰性との事前連絡があった。また、前医で の輸血はなかった。 【経過】緊急輸血オーダーを受け、準備していたO 型 RhD 陰性RBC を 8 単位出庫し、その後患者の RhD 陰性を確認 した。緊急手術後の出血に対し、血液センターと調整を図 り対応していたが、供給が間に合わず、RhD 陽性 RBC を 8 単位輸血した。大量出血状態を脱した後も供給の不足に より、更にRhD 陽性 RBC を 4 単位輸血した。輸血量は、 10 日間で RBC が 61 単位(RhD 陽性を含む)、FFP240 が 12 本、FFP480 が 14 本、PC が 100 単位であり、FFP と PC は全て RhD 陽性を輸血した。また、当院の輸血同意書 には、RhD 異型製剤使用の説明・同意に関する適切な文言 の記載がなく、患者又は家族への説明に苦慮した。 【輸血検査】RhD 異型輸血から 1 か月間定期的に検査を実 施した。血液型検査では、抗D との反応が異型輸血後 1 日 は4+、2 日目は mf を示し、3 日目からは陰性となった。 SCR/DAT は全て陰性であった。一方、抗 D を用いた吸着 解離試験では、全て3+程度の強い凝集を認めた。また、異 型輸血から約2 ヵ月後の検体を、血液センターで FCM 検 査したところ、1%程度の RhD 陽性赤血球が残存していた。 【考察・結語】本例では抗体産生の可能性が高い約一か月 という期間では抗D は産生されなかった。このような事例 では、輸血後の患者のフォローアップが重要となることか ら、検査結果に応じた具体的な手順を含めたフローチャー トを整え、臨床医に報告できる体制の構築が必要と考えら れた。また、輸血同意書の内容を、緊急時に速やかに説明 し同意が得られるように、異型輸血の説明をRhD 型も含 め対応できるものに改訂することとし、検討している。 連絡先 018-829-5202 (内線 5621)RhD 陽性 RBC を輸血した RhD 陰性患者の緊急輸血症例
◎田仲 宏充1)、横山 一二美1)、鶴田 聡1) 秋田赤十字病院1)EntryNo. 84
【はじめに】新潟県は、魚沼地域に不足する救命救急医療 や高度医療を確保するため、H27 年 6 月 1 日に「新潟大学 地域医療教育センター魚沼基幹病院」を開院した。新卒新 採用が5 名いて、他にも輸血業務の経験の浅い検査技師も 多く、開院前より輸血の基本的なトレーニングは必須であ った。開院前から現在に至るまでの日当直に入る検査技師 への指導や緊急輸血の経験を報告する。 【緊急輸血の体制】輸血オーダーには「通常」、「緊急」 、「超緊急」の3 つの依頼区分がある。「超緊急」は医師 が電話で依頼し、検査技師が臨床現場まで血液製剤を運び、 検査技師と現場スタッフでダブルチェックをして払い出し ている。一度の出庫はO 型 RBC 6 単位、AB 型 FFP 6 単位 までで繰り返しの出庫は可能である。同型血への切り替え は電子カルテでのオーダーであり、血液型が2 回別時点で 確定し、出庫時、使用時の認証操作が可能であることであ る。 【日当直者への指導】開院前より日当直に入る検査技師 18 名(新人含む)に輸血担当者 3 名で輸血に関するトレー ニングを行った。全自動輸血検査装置(オーソ オートビ ュー)の操作、用手法(オーソ バイオビュー、試験管法) 、FFP の融解の仕方、輸血システムの操作、緊急輸血時の 対応等を指導した。開院後、緊急輸血が日勤帯にあった場 合、実際に輸血担当者以外のスタッフに製剤の準備から払 い出しまで実践してもらった。 【緊急輸血の経験】これまで緊急輸血は日勤帯に14 件、日 当直帯に17 件あった。輸血トレーニングの成果もあり、実 際に緊急輸血が発生したときは円滑に行うことができてい る。 【終わりに】輸血のトレーニングは日当直に入る者に必要 である。また定期的な輸血のトレーニングを行うことで、 輸血の知識が身に付き、迅速な輸血の対応が可能になる。 連絡先:025-777-3200(内線:2202)新設病院における緊急輸血の体制の構築と日当直者への輸血指導
◎小林 徹1)、加藤 瑞希1)、柴田 真由美1)、小池 敦1) 新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院1)EntryNo. 77
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【はじめに】 PIVKA-II は肝細胞癌の患者血中に高率に出現する。その ため、PIVKA-II は肝細胞癌の診断・予後診断や B 型慢性肝 炎、C 型慢性肝炎、肝硬変患者などの肝細胞癌ハイリスク 者のモニタリングに使用される。また、肝細胞癌症例にお いて、AFP と PIVKA-Ⅱの間には相関関係が認められず相 補的関係にあるため、AFP と PIVKA-Ⅱを組み合わせて測 定することにより診断能は向上する。 今回、「アーキテクト・PIVKA-II」の基礎的検討を行う機 会を得たのでその結果を報告する。 【使用機器と対象】 測定機器としてARCHTECT アナライザー i2000SR をも ちいて検討を行った。同時再現性、日差再現性の検討には 検体として「ARCHITECT PIVKA-II ・コントロール M」(500mAU/mL)を使用し、検討を行った。希釈直線性試 験には「ARCHITECT PIVKA-II ・キャリブレータ」を使用 し、希釈系列を作成し、検討した。相関性試験での使用検 体は外部委託(エーディア社 ピコルミ PIVKA-II MONO を 使用)により PIVKA-II を測定した血清検体を用いて検討を 行った。 【結果】 同時再現性(n=10)の結果、CV=2.94%であった。日差再現 性は13 日間測定した結果、CV=3.15%であった。希釈直線 性試験の結果、30000mAU/mL から 10mAU/mL までの直線 性が確認出来た。相関性試験(n=46)では、回帰式 y=0.8436x+132.82、相関係数 r=0.98 となり、良好な結果と なった。 【結論】 今回の検討から、本試薬の基礎性能を確認出来た。本試 薬の基礎的性能は再現性試験、相関性試験、希釈直線性試 験において良好な結果であり、日常分析項目として使用で きる性能を有していることが確認することが出来た。本試 薬を日常分析項目として導入した場合、結果の報告時間を 短縮することが出来るため有用性が高いと思われる。 連絡先―025‐232‐5220 内線―2234