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アセアン史のための経済統計基礎資料― GDP と 貿易

早 瀬 晋 三

Basic Economic Statistics for ASEAN History: GDP and Trade

Shinzo Hayase

In order to understand the history of ASEAN, basic economic statistics like GDP and trade are ana- lyzed. The main sources are Ajia Doko Nenpo (Yearbook of Asian Affairs) published by Institute of Devel- oping Economies, Japan External Trade Organization (JETRO) and Direction of Trade Statistics, Yearbook by International Monetary Fund (IMF).

〈はじめに〉

1967年に設立されたアセアン(Association of Southeast Asian Nations, ASEAN)の現状の概略を 理解するためには,外務省のホームページから参照できる「目で見るASEANASEAN経済統計基 礎資料―」1で充分である。しかし,アセアン加盟国間および加盟各国と日本,中国,アメリカなどと の歴史的経済関係を理解するためには,さらに詳しい統計資料が必要である。また,アセアン史を語 る場合,経済統計資料を参照しながらだと説明しやすいが,経済史を専門とする書籍や論文以外で詳 細に掲載されることはあまりない2。本稿は,アセアン史を論じるときの補足資料として執筆した。

幸い,GDPGross Domestic Product国内総生産)などにかんしては,アジア経済研究所が発行 している『アジア動向年報』に「アジア諸国・地域の主要経済指標」が掲載されており,1976年か らアセアン原加盟5ヶ国のデータを得ることができる。ミャンマー(1989年までビルマ)について は不完全なデータが得られ,ベトナムは92年,カンボジアとラオスは2005年から記載されている。

ブルネイについてはない。また,世界貿易統計にかんしては,国際通貨基金(International Mone- tary Fund, IMF)が発行する年報Direction of Trade Statistics, Yearbookがある。これらのデータを整 理することで,各国の基本的経済状況を理解することができる。ただし,これらのデータは,しばし ば大幅に修正されることがあるので,注意が必要である。そのため,本稿では『アジア動向年報』に 記載された3年前のものを「最終データ」とした。たとえば,2000年の数値は『アジア動向年報  2003』に記載されたものである。国際通貨基金のものは,前年のものを「最終データ」とした。

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授

1 アジア大洋州局地域政策参事官室(令和元年8月)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf2020125日閲覧

2 幸い,拙著『グローバル化する靖国問題―東南アジアからの問い』(岩波書店,2018年)では,編集者が理解してくれ,巻 末資料として「アセアン諸国 対日本・対中国輸出入貿易(20012015年)」(20509頁)が掲載できたが,紙数の制限から 掲載されないことが多い。

(2)

1.GDP(国内総生産)

現アセアン加盟10ヶ国は,人口43万のブルネイから2億6766万のインドネシアまで大きな差があ る。しかし,人口564万(アセアン内0.9%)のシンガポールが名目GDPでアセアン内の12.3%を占 めるなど,人口比だけで経済力はわからない。ちなみに,1人当たりのGDPは,シンガポールの6 4582アメリカ・ドルからミャンマーの1326まで50倍近い差がある。人口ではインドネシアがアセア ン内40.9%を占め,以下フィリピン16.3%,ベトナム14.6%,タイ10.6%,ミャンマー8.2%,マレー

1-1. 東南アジア各国・日本・中国の名目GDP(100万アメリカ・ドル) 19762018年

1-2. 東南アジア各国の名目GDP100万アメリカ・ドル) 19762018

出典:『アジア動向年報』各年に掲載された「アジア諸国・地域の主要経済指標」

註:各国会計年度は112月。ただし,シンガポール,ミャンマー,日本は43月,タイは『アジア動向年報 2016』掲載ま 109月,ラオスは『アジア動向年報 2017』掲載まで109月。

数値はしばしば修正されるため,『アジア動向年報』に記載された3年前のものを「最終データ」とした。たとえば,

2000年の数値は『アジア動向年報 2003』に記載されたものである。

1977年の数値は『アジア動向年報 1980』に記載がないため,『アジア動向年報 1979』に記載されたものである。

1992年ミャンマーの名目GDPは『アジア動向年報 1995』に記載がないため,『アジア動向年報 1994』に記載された ものである。

1983年と84年のビルマの名目GDPの数値は,10倍になっているものと考え,小数点を加えた。

(3)

シア4.8%,カンボジア2.5%,ラオス1.1%,シンガポール0.9%,ブルネイ0.1%となるが,2018年の 名目GDPではインドネシア35.1%,タイ17.0%,シンガポール12.3%,マレーシア11.9%,フィリピ ン11.1%,ベトナム8.3%,ミャンマー2.4%,カンボジア0.8%,ラオス0.6%,ブルネイ0.5%となる3

日本と中国を加えた名目GDP19762018年)をグラフにすると図1-1のようになる。中国と日 本が突出していて,アセアン各国は取るに足らないように見える。中国が日本を抜いたのは2010 で,その差は急速に拡大している。中国は1990年には日本の8分の1でしかなかったが,アセアン のなかでもっとも高いインドネシアの3.6倍で,アセアン各国にとっては大きな存在であった。

ブルネイを除くアセアン9ヶ国だけをグラフ化すると,図1-2のようになる。アセアン内では,イン ドネシアが「大国」,タイがつぎで,マレーシア,シンガポール,フィリピンの3ヶ国が追随し,ベト ナムが続いている。1999年にアセアン加盟国が10ヶ国になってから,ほぼ同様にGDPが伸びている。

ただし,ミャンマーについては88年から10年間,実態とは違う数値を示しているように思われる。

1-3. 東南アジア各国・日本・中国の1人当たりの名目GDP(アメリカ・ドル) 19762018年

1-4. 東南アジア各国(シンガポールを除く)・中国の1人当たりの名目GDP(アメリカ・ドル) 19762018

3 数値は「目で見るASEANASEAN経済統計基礎資料−」に記載された2018年のものである。

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ところが1人当たりの名目GDPになると,図1-3から違った様相がわかる。日本とシンガポール が突出しており,2007年にシンガポールが日本を抜いた後,数年間は日本が抜きかえすこともあっ たが,その後は日本が減少傾向を示したのにたいしてシンガポールは大きく増加した。『アジア動向 年報』に記載のないブルネイは,シンガポールの約半分の31628アメリカ・ドル2018年)である。

日本とシンガポールを除いたアセアン8ヶ国と中国をグラフ化すると図1-4になり,マレーシアが リードし,タイが追随していることがわかる。1997年のタイにはじまりインドネシア,マレーシア,

韓国に波及した通貨の暴落によるアジア通貨危機の影響は,その年だけか影響があまりないかで,そ の後順調に伸ばし,1万アメリカ・ドルを超えたマレーシアは賃金の上昇から伸び悩む「中所得国の 罠」にはまったことがみてとれる。マレーシア,タイ以外の国ぐにも順調に伸ばしているが,その伸 びは緩やかでマレーシア,タイとの差は拡大している。ミャンマーについては,88年から10年間,

実態とは違う数値を示しているように思われる。中国は,2000年ころまではインドネシアやフィリ ピンより低かったが,その後急速に伸び,GDPで日本を抜いた10年に,1人当たりのGDPでタイ を抜いて「豊か」になったことを示した。それは,東南アジアへの中国人観光客の増加となって目に 見えるかたちで明らかになった。

2. 実質GDP成長率・物価・失業率

実質GDP成長率が注目を集めるが,成長率以上に消費者物価が上昇すると,ひとびとの生活は豊 かにならない。また,失業率の低さは,経済的な安定を示している。この3つをあわせてアセアン各 国の経済成長と安定をみていきたい。

まず目立つのは,1998年の実質GDP成長率の低下と急激な消費者物価の上昇である。97年のア ジア通貨危機の影響をもっとも大きく受けたのがインドネシアで,98年の成長率はマイナス13.1%,

ついでタイのマイナス10.8%,マレーシアのマイナス7.4%で,フィリピンはマイナス0.5%,シン ガポールは辛うじてプラスの0.1%で,日本も影響を受けマイナス2.5%だった。インドネシアの消費 者物価上昇率は77.6%に達したが,ほかの国ではそれほど大きな上昇はみられなかった。きっかけと なったタイは97年が成長率マイナス1.7%であったが,99年には4.4%に回復した。マレーシアは 996.1%,シンガポールは996.9%で順調に回復したが,フィリピンは993.4%で回復がや や遅れた。いっぽう,インドネシアは99年に0.8%で回復が遅かった。アセアン原加盟5ヶ国が大き な影響を受けるいっぽう,ミャンマーは98年6.2%,ベトナムは5.8%で影響をあまり受けていない。

また,中国も7.8%で影響を受けなかったことから,当時アセアン原加盟5ヶ国との経済的関係があ まりなかったことがわかる。

ついでアセアン各国がマイナス成長に陥ったのは,2009年のアメリカの大手証券会社のリーマ ン・ブラザーズの破綻をきっかけに世界の景気が後退した「リーマン・ショック」のときで,日本は 前年の08年にマイナス1.2%であったこともあって09年はマイナス6.3%に落ち込んだ。アセアン 原加盟5ヶ国は日本ほどではなかったが,タイはマイナス2.3%,マレーシアはマイナス1.6%,シン ガポールはマイナス1.0%で,フィリピンはプラスを保ち1.1%,インドネシアは大きな影響を受け ず4.6%だった。各国とも消費者物価上昇率は比較的安定していた。インドシナ3ヶ国では,対アメ リカの輸出額が全輸出額の半分を占めていたカンボジアが0.1%と影響を受けたが,ベトナムは

(5)

5.3%,ラオスは7.6%で影響を受けず,ミャンマーも10.2%だった。中国は9.1%で,マレーシアや タイとの1人当たりの名目GDPの差を縮め,ほかのアセアン原加盟との差を広げた。「リーマン・

ショック」を機に,日本がさらに東南アジアから後退し,中国の存在が大きくなった。

このほかでマイナス成長になったり,消費者物価上昇率が高い数値を示したりしたのは,各国の事 情によったものと考えられるので,各国ごとに説明する。

2-1. タイの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018

出典等:図2は,図1と同じ。

1)タイ(図2-1)

タイは1978年に10.1%の高い実質GDP成長率を達成したが,消費者物価上昇率は8.4%で,その 後成長率が鈍化するいっぽうで,79年に物価上昇率9.9%,8019.7%,8112.7%,失業率は 197880年に5.55.6%で,経済成長の軌道に乗れなかった。しかし,198890年に3年連続2桁成 長(13.2%,12.0%,12.1%)を遂げたときは,物価上昇率はそれぞれ3.8%,5.4%,6.0%で成長率 を大きく下まわり,失業率は3%台だった。また,91年以降も5年間7.68.8%の成長率を維持し,

外国資本が過剰に流れ込み,97年のアジア通貨危機の引き金となった。99年から10年間,成長率 は2.16.9%であったが,物価上昇率は0.35.5%に抑えられ,失業率は2005年以降1%台に低下し,

その後14年に0.5%になった。「リーマン・ショック」以降,政治的不安定,洪水などの被害に遭い ながら比較的安定した経済成長をし,物価上昇率はマイナスになることもあった。

2)フィリピン(図2-2)

フ ィ リ ピ ン は マ ル コ ス政 権(196586年) 末 期の198485年に実 質GDP成 長 率が マ イ ナ ス

(−5.3%,−3.8%)になり,消費者物価上昇率は79年以降10%台が続き,84年に50.3%,85年に 23.1%に達し,失業率は85年に7.1%になった。「二月政変」でコラソン・アキノ政権(198692年)

が誕生し,経済成長率が一時回復したが,8991年の物価上昇率は10%台(12.2%,14.2%,18.7%)

で,失業率は91年に10.6%に上昇した。8899年は成長率を上まわる物価上昇率をつねに記録し,

失業率も最低で7.4%だった。安定したのは,2012年以降で,成長率6%台を7年連続で記録し,物 価上昇率はそれを下まわった。失業率も16年以降5%台に低下した。

(6)

3)マレーシア(図2-3

マレーシアは,1976年に実質GDP成長率10.5%を記録し,その後も7.6%,7.5%,9.2%,7.9%,

7.4%の高い成長率を維持したが,81年に消費者物価上昇率が9.7%になり,85年にはマイナス成長

(−1.0%)に落ち込み,失業率は86年に8.3%になった。しかし,88年に成長率9.5%に回復してか らアジア通貨危機の前年の96年まで7.811.2%の高い成長率を記録し,物価上昇率は24%台で安定 した。失業率は2%台まで低下した。この10年間で経済的基盤を固め,2002年以降,09年の「リー マン・ショック」を除いて,成長率4.17.2%,物価上昇率概ね23%台,失業率3%台で安定した。

4)シンガポール(図2-4)

シンガポールは,1980年に実質GDP成長率10.2%を記録するなど84年まで概ね710%台の経済 成長を遂げたが,いっぽうで80年に消費者物価上昇率8.5%,81年に8.2%を記録し,不安定要因が あった。85年にマイナス成長(−1.6)になり,86年にプラスに転じたが1.8%に留まった。87年以 降,88年に11.1%,93年に10.4%,94年に10.5%の2桁成長を記録するなどアジア通貨危機前ま

2-2. フィリピンの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018年

2-3. マレーシアの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018

(7)

でつねに6%以上の経済成長を遂げ,物価上昇率13%台で安定し,失業率は2%前後まで低下した。

この10年間で経済的基盤を固め,2012年以降は24%台の成長率で,物価上昇率はマイナスになる ときもあり,失業率は2%前後で安定した。

5)インドネシア(図2-5)

インドネシアは,1980年に実質GDP成長率9.7%,81年に9.3%,90年に9.1%を達成するなど 好調なときがあったが,多くの年で成長率を上まわる消費者物価上昇率を記録し,経済成長の波に乗 れなかった。98年にスハルト政権(196898年)が崩壊し,民主化が進み,2000年以降,概ね 56%の成長率を記録したが,物価上昇率が10%を超えるなど安定しなかった。ようやく2015年以 降,成長率5%前後,物価上昇率3%台,失業率5.36.2%で安定した。

6)ビルマ/ミャンマー(図2-6

ビルマ/ミャンマーは,ところどころ数値がない年があり,また数値に不自然な点があるため,そ 図2-4. シンガポールの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018年

2-5. インドネシアの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018

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のまま受け取ることはできない。『アジア動向年報』に記載された数値から,民主化を求め弾圧され た1988年に実質GDP成長率マイナス11.4%になり,その後の政情不安から停滞し91年にふたたび マイナス(−1.0%)になった以外は,順調に経済成長しているように見えるが,消費者物価上昇率 は87年から99年まで連続2桁の15.632.3%で推移した。2001年以降も02年の58.1%,01年の 39.2%,07年の32.9%など大幅な上昇がみられたが,09年以降は15年を除き1桁におさまり,成 長率より低い年が多くなり,やや安定した。失業率は10年以降記載されているが,毎年4.0%で不 自然である。

7)ベトナム(図2-7)

『アジア動向年報』に記載されるようになった1992年以降,実質GDP成長率は99年の4.8%が最 低,最高が95年の9.5%で,着実に経済成長しているようすがうかがえるが,消費者物価上昇率が 9295年の4年間に3回,200711年の5年間に4回,2桁の10%台になった。12年以降1桁にお さまり,15年以降は成長率よりも低い。

2-6. ビルマ/ミャンマーの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018年

2-7. ベトナムの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018

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8)カンボジア(図2-8

カンボジアは,『アジア動向年報』に2005年から記載され,0507年の3年間は実質GDP成長率 10%台,消費者物価上昇率5%前後で,急速に成長したが,08年に成長率6.7%に鈍化し,物価上昇 率が19.7%に跳ね上がり,09年は「リーマン・ショック」の影響で,成長率0.1%に落ち込んだ。10 年以降,67%台の成長率で,概ね3%前後の物価上昇率で安定した。

9)ラオス(図2-9

ラオスは,カンボジアと同じく『アジア動向年報』に2005年から記載され,概ね7%台の実質 GDP成長率,それより低い消費者物価上昇率で,安定して高成長を続けた。

10)まとめ

高い実質GDP成長率を達成しても,消費者物価上昇率がそれを下まわらないと成長は一時的で,

成長軌道に乗れないことがわかった。物価上昇率や失業率を抑えて,成長率を高めることがカギとな 図2-8. カンボジアの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018年

2-9. ラオスの実質GDP成長率・消費者物価上昇率・失業率(%) 19762018

(10)

る。

3. 輸出入貿易

アセアンが,EU(ヨーロッパ連合)と大きく違うことのひとつに域内貿易がある。EUが輸出入と もに60%を超え,域内に大きく依存しているのにたいして,アセアンは2018年の輸出で24.2%,輸 入で21.7%に留まっている。輸出入ともに域内が最大だが,輸出では中国14.0%,EU11.3%,アメ リカ11.3%,日本8.0%,香港7.0%,韓国4.2%,インド3.5%で,輸入では中国20.5%,EU9.0%,

日本8.6%,アメリカ7.5%,韓国7.2%,台湾4.5%,サウジアラビア2.3%で,輸出と輸入とで多少 の違いがある。近年,域内貿易比率は低下傾向にあるが,それは域内貿易が成熟期に入るいっぽうで,

域外との関係が貿易協定などで発展してきているからで,バランスのとれた貿易構造になっていると いうことができる4

ラオスとブルネイを除いて,中国が第1の貿易相手国になっているが,その割合はミャンマーの 32.6%が最大で,以下カンボジア25.3%,ベトナム22.7%で,そのほかのアセアン原加盟5ヶ国は 11.419.7%である。後で検討する中国,日本,アメリカ以外では,EUがラオス(3.7%),カンボジ ア(17.9%),ブルネイ(データなし)を除き各国10%前後を占めた。韓国は,ベトナムで14.0%,

フィリピン7.8%,ブルネイ6.7%のほかインドネシア,マレーシア,シンガポール,ミャンマーで 5.12.4%の貿易を占めた。香港は,フィリピンで7.1%,シンガポール6.7%,マレーシア5.0%はじ め,タイ,カンボジア,ベトナムで3.02.0%の貿易を占めた。台湾は,シンガポールで6.2%,フィ リピン4.5%,ブルネイ3.9%,ベトナム3.5%,カンボジア2.3%の貿易を占めた。オーストラリアは,

ブルネイで5.9%,タイ3.3%,インドネシア2.3%の貿易を占めた。インドは,ブルネイで5.3%,

インドネシア5.1%,ミャンマー4.3%,マレーシア3.5%,ベトナム2.3%の貿易を占めた5

以下,各国別,輸出・輸入別に1995年以降の貿易をみていく。まず,主要貿易相手国である中国,

日本,アメリカとアセアン域内を比較し,つぎにアセアン各国別にみていく。

1)タイ(図3-1-1, 3-1-2, 4-1-1, 4-1-2

タイは,2018年の輸出入貿易総額では,中国16.1%,日本12.2%,EU9.2%,アメリカ9.0%,マ レーシア5.0%,ベトナム3.7%,インドネシア3.7%,シンガポール3.6%,オーストラリア3.3%,

香港3.0%,その他31.2%である6

対中・日・米・域内の輸出では,東南アジア域内がつねに20%前後を占め,対アメリカが20%前 後から徐々に減らし10%前後になり,対日本も10%台半ばから10%以下に減少した。いっぽう,対 中国は23%から徐々に増加し2009年に10%を超えて安定した。近年,アセアン域内が25%前後 で,対中米日がそれぞれ10%前後で安定している。

輸入では,アセアン域内が10%台前半から後半に増加した後,安定している。対日本が30%弱か ら徐々に減少し10%台になり,それに反比例するように対中国が増加し,2013年に逆転したが20%

4 数値はすべて「目で見るASEANASEAN経済統計基礎資料―」に記載された2018年のものである。

5 同上。

6 同上。

(11)

3-1-1. タイ対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 19952017年

3-1-2. タイ対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017

出典:International Monetary FundIMF),Direction of Trade Statistics, Yearbook, Washington DC, IMF, 200217.

4-1-1. タイ対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(12)

には達していない。対アメリカは10%台前半から徐々に減少し,ここ10年間は56%台である。

アセアン域内では,2017年の輸出でベトナム19.4%,マレーシア17.3%,インドネシア14.8%,

シンガポール13.9%,フィリピン11.6%,輸入でマレーシア28.2%,シンガポール19.2%,インド ネシア17.8%,ベトナム12.0%の順で,陸続きの隣国のひとつであるマレーシアとの関係が比較的 深い。

貿易額そのものでは,「リーマン・ショック」の影響で2009年に減少した以外は増加傾向が続い ていたが,ここ数年間,対中国輸入以外は減少傾向にある。とくに対日本輸入の減少幅が大きい。

2)フィリピン(図3-2-1, 図3-2-2, 図4-2-1, 図4-2-2)

フ ィ リ ピ ン は,2018年の輸出入貿易総額で は,中国17.1%,日本11.4%,ア メ リ カ10.4%,

EU9.7%,韓国7.8%,香港7.1%,タイ5.9%,シンガポール5.8%,台湾4.5%,インドネシア4.1%,

その他16.3%である7

対中日米域内では,対アメリカ輸出入額比率がともに20年間で半分以下になり,輸出が10%台半 ば,輸入が10%を割るようになった。対日本輸出は10%台半ばから20%強で,近年若干増加傾向に あったが,2017年に16.2%に減少した。対中国は,2000年代後半に10%台に増加したが,その後 は伸び悩んだ。対日本輸入は20年間で半分になり,近年は10%を割るようになった。かわって対中 国が10年代になって10%を超えて日本,アメリカを抜き10%台半ばになった。アセアン域内の輸 出は10%台半ばから後半,輸入は20%台半ばまで増加した。アセアン域内では,17年の輸出でシン ガポール39.8%,タイ27.2%,マレーシア16.4%,輸入でタイ26.8%,インドネシア25.6%,シン ガポール22.2%,マレーシア14.7%,ベトナム10.2%の順だった。シンガポール,タイとの関係が 深い。

7 同上。

4-1-2. タイ対アセアン域内各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

出典:図4は,図3と同じ。

(13)

3-2-1.フィリピン対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 19952017

3-2-2. フィリピン対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017年

4-2-1. フィリピン対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(14)

貿易額そのものでは,2009年の「リーマン・ショック」の影響で減少した後,対日本輸出,対中 国輸入,アセアン域内輸入が順調に増加したが,対日本輸入,対中国輸出,アセアン域内輸出はあま り増減しなかった。12年に南シナ海の島じまの領有権問題で,中国がフィリピンからのバナナの輸 入を事実上停止するなどの「経済制裁」をおこなったことが影響したが,16年にドゥテルテ大統領 Rodrigo Roa Duterte(1945, 在任2016‒)が就任して中国に接近したことから,対中国貿易がその 後増加していることが想像される。

3)マレーシア(図3-3-1, 3-3-2, 4-3-1, 4-3-2

マレーシアは,2018年の輸出入貿易総額では,中国17.6%,シンガポール13.6%,EU10.3%,ア メリカ8.8%,日本7.5%,タイ5.9%,香港5.0%,韓国…,インドネシア4.0%,インド3.5%,そ

4-2-2. フィリピン対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

3-3-1. マレーシア対日本、中国、アメリカ、アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 

19952017

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3-3-2. マレーシア対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017

4-3-1. マレーシア対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017

4-3-2. マレーシア対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(16)

の他19.6%である8

対中日米域内では,マレーシアは2000年代後半に日本,アメリカにかわって中国との輸出入貿易 額それぞれの比率が大きくなり,対日本,対アメリカ輸出入はともに10%を割るようになった。対 中国輸出は10%台前半,輸入は近年10%台後半に増加した。アセアン域内の輸出合計は20%台後半 で安定しており,輸入は20%台半ばで安定した。アセアン域内では,17年の輸出でシンガポール 49.4%,タイ18.6%,インドネシア12.8%,ベトナム10.2%,輸入でシンガポール43.2%,タイ 22.4%,インドネシア17.6%,ベトナム10.5%の順で,隣国シンガポールとの関係がかなり深い。

貿易額そのものでは,2009年の「リーマン・ショック」の影響で減少した以外は順調に増加して いたが,その後一時的に増加したものの,対中国輸入を除いて,対日本,中国,アセアン域内すべて の輸出入で減少になった。1人当たりの国内総生産(GDP)が1万アメリカ・ドルを超えたマレーシ アは,経済成長とともに賃金が上昇して成長が止まる「中所得国の罠」に陥っていると考えられる。

4)シンガポール(図3-4-1, 図3-4-2, 図4-4-1, 図4-4-2)

シンガポールは,2018年の輸出入貿易総額では,中国12.8%,マレーシア11.2%,EU11.1%,ア メリカ9.4%,香港6.7%,台湾6.2%,インドネシア6.2%,日本5.4%,韓国3.8%,タイ3.0%,そ の他24.3%である9

対中日米域内では,シンガポールは2000年代前半にアメリカ,日本にかわって中国との輸出入貿 易額それぞれの比率が大きくなり,17年の輸出で14.7%,輸入で13.9%であった。対日本輸出はこ の10年間ほど4%台で安定しており,輸入は減少傾向が続き05年以降10%未満であった。対アメ リカ輸出は07年以降,10%未満で減少傾向にあったが近年若干増加した。輸入も減少傾向にあった が,10%台を保った。それにたいして,アセアン域内の輸出は30%前後,輸入は20%台前半を保っ た。アセアン域内では,17年の輸出でマレーシア39.0%,インドネシア21.0%,タイ14.5%,ベト

8 同上。韓国の数値がない。

9 同上。

3-4-1. シンガポール対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 1995

2017

(17)

3-4-2. シンガポール対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017年

4-4-1. シンガポール対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

4-4-2. シンガポール対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(18)

ナム12.2%,輸入でマレーシア57.7%,インドネシア17.1%,タイ10.7%の順で,隣国マレーシア との関係が深い。

貿易額そのものでは,全体に減少傾向にあり,とくにアセアン域内は輸出入ともに減少が激しい。

5)インドネシア(図3-5-1, 3-5-2, 4-5-1, 4-5-2

インドネシアは,2018年の輸出入貿易総額では,中国19.7%,日本10.2%,シンガポール9.3%,

EU8.5%,アメリカ7.8%,インド5.1%,韓国5.1%,マレーシア4.9%,タイ4.8%,オーストラリ ア2.3%,その他22.3%である10

対中日米域内では,インドネシアは2017年の対日本輸出額比率で20年前の半分以下の10.5%に

10 同上。

3-5-1. インドネシア対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 1995

2017

3-5-2. インドネシア対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017

(19)

なったが,対中国は13.7%にとどまっており,増加傾向がある対アメリカは10.6%だった。輸入で は2000年代半ばに中国が日本を抜き,17年に日本8.8%,中国21.5%になった。アメリカは5%前 後であった。アセアン域内の輸出は徐々に増えて20%台前半になった。輸入は2000年代前半に急激 に増加し30%を超えたが,近年若干減少傾向にある。アセアン域内では,17年の輸出でシンガポー ル32.5%,マレーシア21.5%,フィリピン16.9%,タイ16.4%,輸入でシンガポール43.3%,マレー シア23.1%,タイ23.0%の順で,同じマレー語圏のシンガポールとマレーシアとの関係が深い。16 年にマレーシアとの輸出入が急減した。

貿易額そのものでは,2009年の減少後,一時的に増加に転じた後,再び減少した。とくに対日本 輸出入ともに減少幅が大きい。対中国輸入でもあまり増加していない。

4-5-1. インドネシア対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

4-5-2. インドネシア対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(20)

6)ビルマ/ミャンマー(図3-6-1, 図3-6-2, 図4-6-1, 図4-6-2)

ミャンマーは,2018年の輸出入貿易総額では,中国32.6%,タイ15.6%,シンガポール11.6%,

EU9.5%,日本5.8%,インド4.3%,マレーシア3.0%,インドネシア2.9%,韓国2.4%,その他 12.3%である11

対中日米域内では,ミャンマーは貿易量が多くなく,国別貿易額比率はあまり安定していない。対 日本輸出入はともに数%で,対中国輸出も同程度であったが2010年代半ば以降急増し,40%を超え た。対中国輸入は20%台から30%台に増加した。対アメリカ輸出入は,ともに1%前後であったが,

17年に若干増加した。アセアン域内の輸出は01年以降30%台から50%台を占め,輸入はそれ以前

11 同上。

3-6-1.ミャンマー対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 

19952017年

3-6-2. ミャンマー対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017年

(21)

から30%台から50%台を占めた。アセアン域内では,17年の輸出でタイが69.3%で圧倒的で,つぎ がシンガポールの18.9%であった。輸入では,シンガポール38.5%,タイ28.4%で大半を占め,マ レーシアが13.1%で続いた。タイとの関係がひじょうに深い。

貿易額そのものでは,緩やかに増加していたのが,2010年からアセアン域内の輸入,対中国輸入 が急激に増加し,13年からは対中国輸出も大きく増加した。アセアン域内輸出,対日本輸出入はあ まり増加していない。113月に長年続いた軍政がおわり,民政に移管したことが影響している。

7)ベトナム(図3-7-1, 図3-7-2, 図4-7-1, 図4-7-2)

ベ ト ナ ム は,2018年の輸 出 入 貿 易 総 額で は, 中 国22.7%, 韓 国14.0%,ア メ リ カ12.8%,

EU11.9%,日本8.1%,タイ3.7%,台湾3.5%,マレーシア2.4%,インド2.3%,香港2.0%,その

4-6-1. ビルマ/ミャンマー対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

4-6-2. ビルマ/ミャンマー対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(22)

3-7-1. ベトナム対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル)19952017

3-7-2. ベトナム対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017

4-7-1. ベトナム対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(23)

他16.6%である12

対中日米域内では,ベトナムは対アメリカ輸出入貿易額それぞれの比率が2000年代になって急激 に増加し,輸出で30%を超える年もあり,輸入は20%前後で安定した。対日本輸出入は,近年とも に10%を割るようになった。中国とは輸出で10%台前半で徐々に増加し,輸入で近年30%を超える こともある急激な増加をした。対中国の増加にたいして減少したのは,対日本だけでなく,アセアン 域内も輸出で10%台後半から前半に,輸入で30%近くから10%台前半まで減少した。アセアン域内 では,17年の輸出でマレーシア21.8%,タイ20.0%,カンボジア14.9%,シンガポール13.2%,イ ンドネシア12.6%,フィリピン11.4%,輸入でタイ37.3%,マレーシア21.8%,シンガポール 18.5%,インドネシア12.3%の順だった。

貿易額そのものでは,対中国輸入,対アメリカ輸出が顕著な増加をしており,そのほかは緩やかな 増加傾向にある。

8)カンボジア(図3-8-1, 3-8-2, 4-8-1, 4-8-2

カンボジアは,2018年の輸出入貿易総額では,中国25.3%,EU17.9%,アメリカ9.9%,タイ 9.9%,シンガポール9.6%,日本5.3%,ベトナム5.1%,香港3.0%,カナダ2.9%,台湾2.3%,そ の他8.9%である13

対中日米域内では,カンボジアは対アメリカ輸出額比率で2000年代に60%を超えることがあった が,近年は20%台になった。輸入は12%台の年が多い。対日本輸出入,対中国輸出は,それぞれ 1%前後か多くても5%未満であったが,近年輸出で対日本,対中国ともに5%を超えるようになっ た。対中国輸入は徐々に増加し,30%を超えた。アセアン域内の輸出は,2000年代前半の数%から 10%台前半に増加し,近年は10%を割っている。輸入は30%台で安定している。アセアン域内では,

17年の輸出でタイ48.7%,ベトナム28.2%,マレーシア13.0%,輸入でシンガポール32.5%,タイ

12 同上。

13 同上

4-7-2. ベトナム対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(24)

3-8-1.カンボジア対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 19952017

3-8-2. カンボジア対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017

4-8-1. カンボジア対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017

(25)

32.2%,ベトナム25.0%で,シンガポールが急速に増加した。

貿易額そのものでは,対中国と対アセアンの輸入が急激に増加し,そのほかは緩やかに増加してい るが,ときどき大幅に落ち込むことがある。

9)ラオス(図3-9-1, 図3-9-2, 図4-9-1, 図4-9-2)

ラオスは,2018年の輸出入貿易総額では,タイ51.6%,中国27.0%,ベトナム8.1%,EU3.7%,

日本2.2%,ロシア1.3%,アメリカ1.2%,その他4.9%である14

対中日米域内では,ラオスは対日本輸出入額比率それぞれ13%台で少ない。対アメリカ輸出も同 様で,輸入は1%未満である。対中国も少なかったが,輸出は2009年以降20%台に急増し,輸入は

14 同上。

4-8-2. カンボジア対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

3-9-1. ラオス対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 19952017年 

(26)

3-9-2. ラオス対日本,中国,アメリカ,アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017年

4-9-1. ラオス対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

4-9-2. ラオス対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(27)

徐々に増加して10%台になり,近年は20%台半ばになることもあった。アセアン域内の輸出は50% 前後で,輸入は6070%台でひじょうに高い。アセアン域内では,17年の輸出でタイ78.7%,ベト ナム19.0%の2ヶ国で100%近く,輸入でタイが84.7%と大半を占め,ベトナムが14.0%となった。

貿易額そのものでは,全般的に順調に増加したが,アセアン域内の輸入が大きく増加した。対中国 輸入も一時急激に増加したが,2015年から一時減少した。

10)ブルネイ(図3-10-1, 図3-10-2, 図4-10-1, 図4-10-2)

ブルネイは,2018年の輸出入貿易総額では,日本22.8%,中国17.5%,シンガポール10.5%,マ レーシア9.8%,タイ7.4%,韓国6.7%,オーストラリア5.9%,インド5.3%,アメリカ3.9%,台 湾3.9%,その他6.4%である15

対中日米域内では,ブルネイは対日本輸出が3050%台で安定しており,対日本輸入および対中国輸 出はそれぞれ数%ずつと少ない。対中国輸入は,2009年まで徐々に増加し10年に10%を超え,17年に 20%を超えた。対アメリカ輸出は2000年前後に10%台であったが,08年以降1%以下になった。輸入 は,2000年代に5%以下になっていたのが,近年10%台に回復した。アセアン域内の輸出は多少の増減 はあったが概ね20%前後で,輸入は4060%台であった。基本的に日本に輸出し,アセアン域内から輸 入しているが,近年は中国からの輸入が増加した。アセアン域内では,17年の輸出でマレーシア35.0%,

タイが34.2%,シンガポール23.8%となった。輸入では,シンガポール42.8%,マレーシア42.2%で,2 国で85%を占めた。ブルネイ・ドルはシンガポール・ドルと等価で固定しており,両国で紙幣が使える。

ブルネイは,輸出額比率の90%以上が液化天然ガスおよび石油で,国際的な価格の上下で,2008 年以降,輸出入額そのものも増減を繰り返したが,近年は減少傾向にある。輸出の減少幅のほうが,

輸入の減少幅より大きい。

15 同上。

3-10-1.ブルネイ対日本、中国、アメリカ、アセアン域内輸出入貿易額(100万アメリカ・ドル) 

19952017年

(28)

3-10-2. ブルネイ対日本、中国、アメリカ、アセアン域内輸出入貿易額比率(%) 19952017年

4-10-1. ブルネイ対アセアン各国貿易 輸出(100万アメリカ・ドル) 19692017年

4-10-2. ブルネイ対アセアン各国貿易 輸入(100万アメリカ・ドル) 19692017年

(29)

11)まとめ

対日本の2017年のアセアン加盟各国の輸出額比率では,ブルネイ29.3%,フィリピン16.2%,イ ンドネシア10.5%以外は10%を割っている。ほかのアセアン加盟国が軒並み減少しているなかフィ リピンは例外的に増加傾向にあったのは,対中国関係悪化が影響しているものと思われるが,その後 の好転で変化しているものと想像される。輸入ではタイ14.5%,フィリピン11.4%以外は10%未満 で,1995年に20%を超えていた国5ヶ国から大きく後退した。それにたいして,対中国の輸出で 20%を超えているのはラオス28.5%,ミャンマー38.8%の2ヶ国だけで,貿易額の多い上位6ヶ国で はシンガポールの14.7%が最高である。輸入で20%を超えたのは7ヶ国で,カンボジア34.2%がもっ とも多く,中国が日本にとってかわったことがわかる。対アメリカは,フィリピン,マレーシア,シ ンガポール,タイ,インドネシアで,対日本と同様の傾向がみられる。カンボジアとは2000年代に 輸出で特別な関係があり,比率で半減したものの額ではほぼ同じである。ベトナムとは2000年代に 関係を深め,輸出20%前後,輸入4%台で安定している。

アセアン域内の2017年の輸出より,対日本のほうが多かったのはフィリピン16.2%の1ヶ国だけ で,輸入では1ヶ国もなかった。輸出で対中国のほうが多かったのはミャンマー38.8%とベトナム 14.6%の2ヶ国,輸入でタイ20.0%,ベトナム25.9%の2ヶ国だった。アセアン域内輸出が多い順に 列挙すると,ラオス53.8%,ブルネイ32.1%,マレーシア28.8%,ミャンマー28.0%,シンガポー ル27.8%,タイ25.2%,インドネシア23.3%,フィリピン15.4%,ベトナム10.0%,カンボジア7.7% となる。輸入では,ラオス69.9%,ブルネイ43.2%,カンボジア39.4%,ミャンマー39.0%,フィ リピン26.5%,マレーシア25.4%,インドネシア25.0%,シンガポール20.8%,タイ18.6%,ベト ナム13.2%となる。

1997年のアジア通貨危機,2009年の「リーマン・ショック」で,日本はじめアセアン原加盟5 国などが大きく影響を受けるなか,中国はあまり影響を受けることなく経済発展し,アセアン諸国へ の貿易を拡大し,影響力を強めた。

これらの貿易統計資料から,近年アセアン域内の貿易が伸び悩んでいることがわかる。このこと は,域内の貿易が確固としたものになってきたことの証でもある。伸び悩みの原因のひとつは,中国 への対外投資が増えて,すでに「中所得者の罠」に陥っている国があるなどアセアンへの投資が減少 したことである。だが,中国も賃金が上昇して「中所得者の罠」に陥る危険性が近づいており,また

「中国プラス 1」としてベトナムはじめ,ミャンマー,ラオス,カンボジアのアセアン後発国が注目 されている。また,バングラデシュなど域外の国ぐにの低賃金労働を利用することもできる。アセア ン経済共同体の強化によって投資を呼び戻しつつあり,中国と競合しつつ補完的に経済発展してきた 関係を,南シナ海の島じまの領有権問題などを抱え,中国からの「経済制裁」を受けながらも,いか に継続・発展させるかが課題となる。

もうひとつ域内の貿易が伸び悩んでいる原因として,域外とのいろいろな貿易協定の影響がある。

「東アジア地域の包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership, RCEP)」などで アセアンが主導権をとらなければ,域内の活動が収縮する危険性がある。とくに,貿易額そのものの 少ない国のアセアン域内の貿易額比率が高いことから,これらの国ぐににとってアセアン経済共同体 の意義が問われることになる。

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