岡 山 医 誌 (1993) 105, 589∼600
骨髄 間質細 胞 の老 化 に関す る研究
第
1
編
ヒ ト骨 髄 間 質 細 胞 の 細 胞 構 成 比 率,増 殖 動 態 及 び
造 血 因 子 産 生 能 に及 ぼ す 加 齢 の 影 響
岡山大学医学部第二内科学教室(指 導:木 村郁郎教授)
出
口
静
吾
(平成5年3月18日 受稿)
Key words: Long-term bone marrow culture, Human marrow stromal cells, Aging, Growing dynamics, Cytokine production
緒 言
1961年,Till, McColloch1)に よ る 多 能 性 幹 細 胞(colony forming unit-spleen; CFU-S)の ア ッセ イ 法 の 開 発 は,CFU-Sが 骨 髄 と 脾 臓 に 限 っ て 定 着 増 殖 す る こ と を見 出 し,造 血 に は特 殊 な 環 境 を 必 要 とす る こ と を 示 した.さ らに1968年, Wolf, Trentinら2)はCFU-Sの 分 化 に影 響 を 及 ぼ す の は 細 胞 間 接 触 な どの 微 細 環 境 で あ る こ と を 明 ら か に し,こ れ を 造 血 微 小 環 境
(hemopoietic inductive microenvironment; HIM)と い う概 念 で 提 唱 し た.ヒ トで 造 血 微 小 環 境 の 主 体 を な す 骨 髄 間 質 細 胞 は,線 維 芽 細 胞, 内 皮 細 胞,マ ク ロフ ァー ジ,脂 肪 細 胞(adipocyte) な ど に よ り構 成 さ れ る 不 均 一 な 細 胞 集 団 で あ る と言 わ れ て お り3)4),骨髄 の 中 で 造 血 幹 細 胞 と共 に これ らの 細 胞 が 極 め て 複 雑 で は あ る が 秩 序 正 し く相 互 に 三 次 元 構 造 を形 成 し,造 血 幹 細 胞 と の 直接 接 触,あ る い は 各 種 サ イ トカ イ ン を含 む 造 血 因 子,細 胞 外 基 質 の 産 生 等 に よ り造 血 を 調 節 して い る と考 え られ て い る5)6).し た が っ て こ れ らの 骨 髄 間 質 細 胞 に障 害 が 起 これ ば,各 種 造 血 障 害 を 惹 起 す る可 能 性 が 考 え られ るが,実 験 的 に は 先 天 的 に貧 血 を発 症 す る系 統 マ ウ ス の う ちW/Wv系 マ ウ ス は,骨 髄 中 のCFU-S量 が 先 天 的 に 欠 乏 して い る の に 対 して,Sl/Sldマ ウ ス は 移 植 さ れ たCFU-Sを 定 着 さ せ る 造 血 微 小 環 境 に 欠 陥 が あ る こ とが,Bernsteinら7)に よ り明 ら か に さ れ,微 小 環 境 の 異 常 に よ る造 血 障 害 の 存 在 が 示 さ れ た.臨 床 的 に は 多 くは な い もの の, 再 生 不 良 性 貧 血 に お い て 造 血 幹 細 胞 の 減 少 が 微 小 環 境 の 異 常 に 起 因 す る と考 え られ る例 が 報 告 され て い る8)9). 一 方 ,近 年老 化 の問題 が 強 い関心 を集 め,造 血 系 の 老 化 に 関 す る 知 見 も 豊 富 に な っ た10)1l)12)13)14).一般 に65歳 以 上 の 高 齢 で は,青 壮 年 の ヘ モ グ ロ ビ ン測 定 値 に あ て は め て み れ ば10 %前 後 が正 常 値 の 下 限 以 下 で あ り15),骨髄 異 形 成 症 候 群 の よ う に 高 齢 者 に 多 く発 症 す る 疾 患 が あ る こ と,ま た 同 一 血 液 疾 患 で あ っ て も老 年 患 者 と青 壮 年 患 者 で は 自 然 経 過 を 若 干 異 に す る 場 合 が あ る こ と,さ ら に 治 療 に 対 す る 反 応 性 を 異 に す る こ と な ど は 臨 床 上 よ く経 験 す る と こ ろ で あ る.そ れ らは 一 般 的 な 栄 養 低 下,免 疫 力 低 下, 他 疾 患 の 合 併 な どの 影 響 も あ るが,生 物 学 的 老 化 過 程 に よ る造 血 器 へ の 修 飾 が あ り,造 血 細 胞 の み な らず 骨 髄 微 小 環 境 の 変 化 もそ の 要 因 と な り得 る こ と が 考 え ら れ る.実 験 的 に は,Frieden steinら16)に よ る 異 所 性 移 植 法(heterotropic transplantation)に よ り,Hottaら17)は 加 齢 マ ウ ス の 造 血 微 小 環 境 に 欠 陥 を見 出 し て い る が, ヒ トで は 骨 髄 間 質 細 胞 の 加 齢 に よ る影 響 に 関 す る報 告 は な され て お らず,加 齢 に よ る脂 肪 髄 の 出 現 機 序 も い ま だ 不 明 で あ る. 589
既 に 当教 室 で は,健 常 人 及 び 各 種 造 血 器 疾 患 に お け る 骨 髄 間 質 細 胞 の 細 胞 構 成 比 率 な らび に 増 殖 動 態 につ い て報 告 して い るが18),今 回 著 者 は, 加 齢 に よ る 造 血 へ の 影 響 を骨 髄 間 質 細 胞 側 か ら 解 析 す る た め,検 討 を 加 え た の で 報 告 す る. 研 究 対 象 並 び に 方 法 1. 骨 髄 血 使 用 した 骨 髄 血 は,イ ン フ ォー ム ド コ ン セ ン ト を 得 た 後,血 液 学 的 に 正 常 な13名 の 高 齢 者 (60∼82歳:中 央 値73歳)及 び10名 の 若 年 健 常 人(24∼33歳:中 央 値26歳)の 胸 骨 も し くは 腸 骨 よ り穿 刺 吸 引 法 に て,ヘ パ リ ン 加 で 無 菌 的 に 採 取 し た. 2. 骨 髄 間 質 細 胞 の 培 養 法 Dexter培 養 法19)に 準 じ,細 胞 培 養 を行 っ た. ま ず,ヒ ト 骨 髄 血 よ りFicoll-Hypaque (HISTOPAQUE-1077; 1.077g/μl, Sigma, St. Louis, MO)を 用 い,比 重 遠 心 法(450g, 15分 間)に て 骨 髄 単 核 球 を分 離 し た.こ の 単 核 球 を37℃, 5%CO2の 条 件 下 で 液 体 培 養 した.培 養 液 は,alfa-minimal essential media (α-MEM; GIBCO, Gland Island, NY)に15%牛 胎 児 血 清(fetal calf serum; FCS, Flow gen eral company, McLean, VA), 2×10-6Mメ チ ル プ レ ドニ ゾ ロ ン(Solu-Medrol: Upjohn, 東 京),40U/mlペ ニ シ リ ン(明 治 製 菓,東 京), 40μg/mlス ト レプ トマ イ シ ン(明 治 製 菓,東 京) を 加 え た もの を 使 用 した.以 下,培 養 液 は,週 に1回,全 量 を 新 鮮 な 培 養 液 と 交 換 し4週 間 後 ま で 培 養 した.本 実 験 系 は 間 質 細 胞 の み の 検 討 で あ り,造 血 幹 細 胞 の ア ッ セ イ を 要 し な い た め 培 養 液 は 全 量 交 換 と して お り,1週 毎 の 培 養 液 交 換 を 半 量 ず つ と して い るDexterの 培 養 法 と こ の 点 で 異 な る. 1) 骨 髄 間 質 細 胞 の構 成 細 胞 比 率 骨 髄 血 よ り分 離 した 単 核 球5×106個 を用 い, 25cm2フ ラ ス コ(Costar, Cambridge, MA)で 骨 髄 間 質 細 胞 を前 述 の 方 法 で 液 体 培 養 し た(1次 培 養).骨 髄 間 質 細 胞 が フ ラ ス コ底 にconfluent
と な っ た 時 点 で,そ の ま まphosphate-buffered saline (PBS)に て2回 洗 浄 し た 後,0.05% ethylenediamine-tetraacetic acid (EDTA)加
0.25%ト リ プ シ ン 液(千 葉 県 血 清 研 究 所)を5 ml加 え,充 分 に ピ ペ ッ テ ィ ン グ し,骨 髄 間 質 細 胞 を 個 々 に 剥 離(ト リ プ シ ン 処 理)し,細 胞 を 回 収,15mM sodium azide加PBS (PBS azide (+))を6ml加 え 洗 浄 後,PBS azide(+)200 μl当 た り約2×107個 ず つ と な る よ う に 分 配 し,
そ れ ぞ れ 抗fibronectin抗 体(rabbit anti-human fibronectin: DAKOPATTS, Denmark),抗
vWF抗 体(mouse anti-human von Willebrand factor: DAKOPATTS, Denmark),抗CD 14
抗 体(mouse anti-human Leu-M 3: Becton Dickinson, San Jose, CA),抗CD 7抗 体
(mouse anti-human Leu-9: Becton Dickin son, San Jose, CA),抗CD 4抗 体(mouse anti-human Leu-3 a: Becton Dickinson, San Jose, CA),抗CD 8抗 体(mouse anti-human Leu-2 a: Becton Dickinson, San Jose, CA)
と と も に(抗fibronectin抗 体 は 原 液50μl,そ の 他 は 原 液25μl)氷 上 で0℃ に て30分 間incu bateし た.そ の 後,そ れ ぞ れPBS azide(+)
を1ml加 え 洗 浄 し,抗fibronectin抗 体 に 対 し て はfluorescein isothiocyanate (FITC) -con jugated swine anti-rabbit immunoglobulin
(DAKOPATTS, Denmark)(原 液 を 蒸 留 水 で 10倍 に 希 釈 し た 溶 液50μl)を,そ れ 以 外 の モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 に 対 し て はFITC-conjugated rabbit anti-mouse immunoglobulin (DA
KOPATTS, Denmark)(原 液 を 蒸 留 水 で10倍 に 希 釈 し た 溶 液25μl)を そ れ ぞ れ2次 抗 体 と し て 用 い,0℃ で25分 間incubateし て 標 識 し た. 再 びPBS azide(+) 1mlを 加 え 洗 浄 し,1800 回 転 で5分 間 遠 沈 後 上 清 を 除 き,50%グ リ セ リ ンPBS 200μlを 加 え,そ れ ぞ れ ス ラ イ ド グ ラ ス へ1滴 ず つ の せ カ バ ー グ ラ ス で 密 閉 し,螢 光 顕 微 鏡(400倍)で 観 察 し,線 維 芽 細 胞,内 皮 細 胞,単 球/マ ク ロ フ ァ ー ジ,Tリ ン パ 球(CD 4, CD 8陽 性T-cell)の 比 率 を 算 定 し た.抗fi bronectin抗 体 陽 性 を 示 す 細 胞 は 線 維 芽 細 胞 と 内 皮 細 胞 が あ り,抗vWF抗 体 陽 性 細 胞 を 内 皮 細 胞 と し,こ れ を 差 し 引 い た も の を 線 維 芽 細 胞 と し た.ま た,抗fibronectin抗 体 陽 性 細 胞 の 中 に は 脂 肪 滴 を 持 つ も の も 含 ん で い た が,そ の ま ま カ ウ ン ト し た.抗CD 14抗 体 陽 性 細 胞 を 単
ヒ ト骨髄 間質 細胞 に及ぼ す加 齢 の影響
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球/マ ク ロ フ ァ ー ジ,抗CD 7抗 体 陽 性 細 胞 を 全 Tリ ンパ 球,抗CD 4抗 体 陽 性 細 胞 をHelper/ Inducer T-cell,抗CD 8抗 体 陽 性 細 胞 をSup pressor/Cytotoxic T-cellと した.な お,脂 肪 細 胞 に 関 し て は,ト リプ シ ン処 理 後 の 一 部 の 細 胞 をautosmearに よ り細 胞 塗 抹 標 本 を作 成 し, Oil red O染 色 法 に よ り陽 性 細 胞 比 率 を 算 定 し た.Oil red O染 色 は,標 本 を ホル マ リ ン 蒸 気 固 定 し,Oil red O液 に よ り15分 間染 色 した 後, 50%イ ソ プ ロ ピル ア ル コ ー ル に て 分 別 し,マ イ ヤ ー の ヘ マ トキ シ リ ン液 で5分 間 の 後 染 色 を 行 い,1/4飽 和 の 炭 酸 リチ ウ ム で30秒 間 の 色 出 し を して 行 っ た. 2) 骨 髄 間 質 細 胞 の 増 殖 動 態 前 述 の 方 法 で 骨 髄 血 よ り分 離 した 単 核 球5× 106個 を,25cm2フ ラ ス コ で4週 間 後 まで 液 体 培 養 し,1週 毎 に フ ラ ス コ 底 に 形 成 さ れ る付 着 細 胞 コ ロニ ー の 占有 面 積 比 率 を 測 定 した.測 定 は, フ ラ ス コ底 を200分 割 しその 内 の40分 割 を ラ ン ダ ム に 選 び,そ れ ぞ れ コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を倒 立 顕 微 鏡 で 判 定 し 占有 率 を算 出 し た(1次 培 養). ま た,4週 間 後 フ ラ ス コ 底 に 付 着 して い る細 胞 を 用 い,そ の ま まPBSに て2回 洗 浄 した後 ト リプ シ ン処 理 し,さ ら にPBSに て2回 洗 浄 後, その 細 胞 数 を5×105個 に調 整 し,培 養 液1.5mlで 35mm培 養 皿(Costar Cambridge, MA)に て さ
らに4週 間 後 まで 培 養 した.そ の 間1週 毎 に, 一 部 の 培 養 皿 底 の 細 胞 を ト リプ シ ン処 理 して 剥 離 回 収 し,付 着 細 胞 数 をtriplicateで 算 定 し, 増 殖 動 態 を 検 討 した(2次 培 養). 3) 培 養 上 清 中 の サ イ トカ イ ン濃 度 測 定 培 養 開 始1週 後 と3週 後 の1次 培 養 の 培 養 液 交 換 時,培 養 上 清 を回 収 し,-70℃ で 凍 結 保 存 し, 解 凍 して,Granulocyte colony-stimulating fac tor (G-CSF), Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF), Macro
phage colony-stimulating factor (M-CSF), Interleukin-1β (IL-1β), Interleukin-3 (IL
-3) , Interleukin-6 (IL-6)濃 度 を 測 定 した. 高 齢 者(63∼82歳:中 央 値78歳),若 年 者(29歳: 中 央 値29歳)共 に3例 ず つ で 測 定 検 討 した.
G-CSF濃 度 測 定 はRadioimmunoassay (RIA)法 で 行 っ た.そ の 他 の サ イ トカ イ ン は
Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)法 で 行 い,M-CSFはHanamuraら20)
の 方 法 に 従 い 測 定 し た.IL-3, IL-6はQuanti kine human ELISA kit (R & D Systems : Minneapolis, MN)を, IL-1β は ヒ トイ ン タ
ー ロ イ キ ン-1β 測 定 キ ッ ト(大 塚 製 薬 ,東 京) を,GM-CSFはHuman GM-CSF ELISA kit
(Genzyme: Boston, MA)を 使 用 し た.
成 績
1. 骨 髄 間 質 細 胞 の 構 成 細 胞 比 率
図1 aに 細 胞 がconfluentに な っ た フ ラ ス コ 底 の 顕 微 鏡 写 真,図1 bに 螢 光 抗 体 陽 性 細 胞 の 螢 光 顕 微 鏡 写 真,図1 cにOil red O陽 性 細 胞 の 顕 微 鏡 写 真 を 示 す.脂 肪 細 胞 と して は こ の よ う に 小 さ い 脂 肪 滴 を 細 胞 質 内 に 持 つ 細 胞 の み 観 察 さ れ た.図2に 若 年 者 と 高 齢 者 骨 髄 間 質 細 胞 の 構 成 細 胞 比 率 の 比 較 を 示 す.高 齢 者 で は 線 維 芽 細 胞,内 皮 細 胞 は そ れ ぞ れ58.6±10.6%, 17.0±6.4%で,若 年 者 の63.6±3.8%, 14.7± 3.2%に 比 し 有 意 差 は な か っ た が,単 球/マ ク ロ フ ァ ー ジ で は14.0±4.3%と 若 年 者 の8.6±4.1% に 比 べ 有 意(p<0.02)に 高 く,脂 肪 細 胞 で も5.7± 2.9%と 若 年 者 の2.6±1.7%に 比 べ 有 意(p< 0.05)に 高 か っ た.全Tリ ン パ 球 は12.0±3.0 %と 若 年 者 の6.8±2.6%に 比 し 有 意(P<0.01) に 高 く,ま た そ の う ちHelper/Inducer T-cellは 8.1±2.2%と 若 年 者 の3.5±1.4%と 比 べ,Sup pressor/Cytotoxic T-cellは6.4±2.4%と 若 年 者 の3.8±1.0%に 比 べ 有 意(そ れ ぞ れp<0.001, p<0.02)に 高 か っ た. 2. 骨 髄 間 質 細 胞 の 増 殖 動 態 1次 培 養 開 始 よ り1週 毎 に フ ラ ス コ 底 に 形 成 さ れ る 付 着 細 胞 の 占 有 面 積 比 率(以 下,占 有 率) を 測 定 し た.そ の 増 殖 曲 線 を 若 年 者 と 高 齢 者 で 対 比 し て 図3に 示 す.1週 目 の 時 点 で 若 年 者 の 占 有 率7.0±3.5%に 対 し,高 齢 者 で は21.2±20.2 %と 有 意(p<0.05)に 増 殖 が 速 か っ た.そ の 後 の 占 有 率 は,2週 目 が 若 年 者81.5±13.3%,高 齢 者82.7±19.9%, 3週 目 が 若 年 者100.0±0.0 %,高 齢 者99.2±2.8%, 4週 目 は と も に100% と 有 意 差 は な か っ た.2次 培 養 の 増 殖 曲 線 を 図 4に 示 す.2次 培 養 開 始 時 の5×105個 の 細 胞 を
100%と して,結 果 は そ れ に 対 す る 比 率 と して 表 した.2次 培 養 開 始1週 目 で 若 年 者269±104%, 高 齢 者425±197%, 2週 目 が 若 年 者452±127%, 高 齢 者660±310%, 3週 目 が 若 年 者625±188%, 高 齢 者995±359%, 4週 目 が 若 年 者645±211%, 高 齢 者1025±301%で あ り,有 意 差 は な い が2次 培 養 に お い て も若 年 者 よ り高 齢 者 骨髄 間 質 細 胞 の 増 殖 が1週 目 ま で 速 か っ た.2週 目以 降 は 増 殖 曲 線 に お い て 両 者 は ほ ぼ 平 行 に増 殖 して い た. 図1 骨 髄 間質 細 胞 (a)フ ラス コ底 にconfluentと な った骨 髄 間 質 細 胞 の顕 微 鏡写 真:紡 錘 形 の胞 体 を した細 胞 が フ ラス コ 底 に 付着 増 殖 して い る.形 態 的 に は線 維 芽細 胞様 の 細 胞 が大 多数 を 占め て い る.(b)螢 光 抗体(CD 7) 陽性 細 胞 の螢 光 顕微 鏡 写 真:diffuseに 螢光 を発 す る細 胞 を陽性 細 胞 と した.(c)Oil red O陽 性 細 胞 の 顕微 鏡写 真:小 さい脂 肪 滴 を細 胞質 内に 多数 持 つ 脂 肪 細 胞.顆 粒 は 淡赤 色 に 染 色 さ れ て い る. 3. 培 養 上 清 中 の サ イ トカ イ ン 濃 度 結 果 を表1に 示 す.G-CSF濃 度 は,高 齢 者1 週 目の1例 で0.83ng/mlで あ っ た 以 外 は1週 目 3週 目 と もに0.1ng/ml以 下 と測 定 感 度 以 下 で あ っ た.一 方,若 年 者1週 目,3週 目 と もに す べ て0.1ng/ml以 下 と測 定 感 度 以 下 で あ っ た.GM-CSF濃 度 は,高 齢 者1週 目の1例 で2.18pg/ml で あ っ た 以 外 は す べ て2.00pg/ml未 満 と測 定 感 度 以 下 で あ っ た.若 年 者1週 目,3週 目 と もに す べ て2.00pg/ml以 下 と測 定 感 度 以 下 で あ った. IL-1β, IL-3濃 度 は 高 齢 者,若 年 者 と もに そ れ ぞ れ15.6pg/ml未 満,31pg/ml未 満 とす べ て 測 定 感 度 以 下 で あ っ た.M-CSF濃 度 は,高 齢 者1 週 目の1例 で63U/mlで 他 の2例 で は50U/ml未 満 と測 定 感 度 以 下 で あ っ た が,3週 目で は ば ら つ き は あ る が742.3±366.9U/mlと 上 昇 した.一 方,若 年 者 の1週 目 は1例 で101U/mlで あ り他 の2例 は50U/ml未 満 と測 定 感 度 以 下 で あ っ た が,3週 目で は1417.7±636.7U/mlと 上 昇 し, 高 齢 者 よ り高 値 を 示 し た.IL-6濃 度 は,1週 目 が 高 齢 者 で3007.9±4343.5pg/ml,若 年 者 で 249.4±164.0pg/mlと 高 齢 者 で 高 く,高 齢 者 の 1例 で8000pg/mlと 著 明 高 値 を示 した.こ れ に
ヒ ト骨髄 間質 細 胞 に及 ほす 加 齢 の影 響
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対 し,3週 目 で は 高 齢 者199.0±148.3pg/ml,若 年 者826.3±731.0pg/mlと 逆 に 若 年 者 が 高 く, 若 年 者 の1例 で1610pg/mlと 高 値 を 示 し た. 図2 骨 髄 間 質 細 胞 構 成 比 率 の 検 討 高 齢 者9名(脂 肪 細 胞 の み5名),若 年 者8名 に お い て 検 討 した.高 齢 者 で は 線 維 芽 細 胞,内 皮 細 胞 は そ れ ぞ れ58.6±10.6%, 17.0±6.4%で,若 年 者 の63.6±3.8%, 14.7±3.2%に 比 し有 意 差 は な か っ た. 単 球/マ ク ロ フ ァ ー ジ は14.0+4.3%と 若 年 者 の8.6±4.1%に 比 べ 有 意 に 高 く,脂 肪 細 胞 も5.7±2.9%と 若 年 者 の2.6±1.7%に 比 べ 有 意 に 高 か っ た.全Tリ ン パ 球 は12.0±3.0%と 若 年 者 の6.8±2.6%に 比 し 有 意 に 高 く,ま た そ の う ちHelper/Inducer T-cellは8.1±2.2%と 若 年 者 の3.5±1.4%と 比 べ,Suppressor/ Cytotoxic T-cellは6.4±2.4%と 若 年 者 の3.8±1.0%に 比 べ 有 意 に 高 か っ た. 図3 高 齢 者 及 び 若 年 者 骨 髄 間 質 細 胞 の 増 殖 動 態 の 比 較 検 討 1次 培 養 開 始 よ り1週 毎 に フ ラ ス コ 底 に 形 成 さ れ る付 着 細 胞 の 占 有 面 積 比 率 を測 定 した. 1週 目 の 時 点 で 若 年 者 の 占 有 率7.0±3.5%に 対 し,高 齢 者 で は21.2±20.2%と 有 意(P< 0.05)に 増 殖 が 速 か っ た.そ の 後 の 占有 面 積 比 率 は,2週 目が 若 年 者81.5±13.3%,高 齢 者82.7±19.9%, 3週 目 が 若 年 者100.0±0.0 %,高 齢 者99.2±2.8%, 4週 目 は と も に100 %と 有 意 差 は な か っ た. 考 察 造 血 微 小 環 境 と して の 骨 髄 間 質 細 胞 は,造 血 幹 細 胞 及 び 造 血 因 子 等 との 相 互 連 携 に よ り,造 血 系 の 維 持 ・調 節 を 行 い,さ ら に は生 体 防 御 に 関 し,T細 胞,マ ク ロ フ ァ ー ジ等 よ り産 生 さ れ る サ イ トカ イ ン を介 し て の 反 応 性 造 血 を行 う と い う点 で 重 要 な役 割 を果 た して い る5)6).加 齢 に 伴 い 造 血 組 織 の減 少 が 報 告 され て お り21),加齢 に よ る骨 髄 間 質 細 胞 へ の 影 響 は,造 血 幹 細 胞 と 同 様 に 量 的 質 的 低 下 す る 可 能 性 が 考 え ら れ る が, 逆 に減 少 に 対 す る フ ィー ドバ ッ ク を受 け て何 ら か の 亢 進 状 態 に な る可 能 性 も否 定 で き な い.今 回 こ れ らの 点 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し, 若 年 者 と高 齢 者 を 対 比 し構 成 細 胞 比 率,増 殖 動 態,造 血 因 子 産 生 能 を検 討 した.図4 高 齢 者及 び若 年 者骨 髄 間 質 細 胞の 増 殖動 態 の 比較 検 討 2次 培 養 開 始 時 の5×105個 の細 胞 を100% と して,そ れ に対 す る細 胞 比 率 を算定 した. 2次 培養 開 始1週 目で若 年 者269±104%,高 齢 者425±197%, 2週 目が若 年 者452±127%, 高 齢 者660±310%, 3週 目が 若 年 者625±188 %,高 齢 者995±359%, 4週 目が 若年 者645± 211%,高 齢 者1025±301%で あ り,有 意 差 は な い が2次 培 養 に お い て も若年 者 よ り高 齢 者 骨 髄 間質 細 胞 の 増殖 が1週 目ま で速 か っ た. 2週 目以 降 は 両者 は ほぼ平 行 に増 殖 してい た. 骨 髄 間 質 細 胞 培 養 に 関 して はDexterら19)の 方 法 に 準 じた.Dexterら が1970年 代 に な り,骨 髄 間 質 細 胞 を 用 い る こ とに よ っ てin vivoに 近 い 造 血 系 がin vitroで 再 現 可 能 で あ る こ と を 報 告 し,造 血 幹 細 胞,造 血 微 小 環 境 を め ぐ る研 究 は 急 速 に発 展 し て き た22)23)24).今回,Dexterの 長 期 培 養 法 の 変 法 と した の は,間 質 細 胞 の み の 細 胞 構 成 と増 殖 動 態 を み る こ と に 重 点 を お い た た め で あ る. 骨 髄 間 質 細 胞 構 成 比 率 に 関 して,Strobelら4) は1986年 に 線 維 芽 細 胞60∼70%,内 皮 細 胞 10∼20%,単 球/マ ク ロ フ ァ ー ジ10∼20%,脂 肪 細 胞5∼10%と 報 告 して い るが,対 象 症 例 の 年 齢 の 記 載 は な か っ た.今 回 の 検 討 で,高 齢 者, 若 年 者 と も 骨 髄 間 質 細 胞 の 構 成 比 率 は ほ ぼ Strobelら の デ ー タ と一 致 して い た が,若 年 者 と 高 齢 者 の 間 質 細 胞 の 比 率 を比 較 し た と こ ろ,単 球/マ ク ロ フ ァ ー ジ,脂 肪 細 胞,全Tリ ン パ 球, Helper/Inducer T-cell, Suppressor/Cytotoxic T-cellに お い て,高 齢 者 で の 比 率 が 若 年 者 に 比 しそ れ ぞ れ 有 意 に 高 か っ た.単 球/マ ク ロ フ ァ ー ジ比 率 が 高 い 理 由 と して は,サ イ トカ イ ン 産 生 を含 め た 造 血 細 胞 支 持 細 胞 と しての 作 用 の 亢 進, も うひ とつ に は 造 血 幹 細 胞 の 老 化 に よ る異 常 血 球,異 常 幹 細 胞 の 排 除 を行 う食 作 用 の 亢 進 を意 味 す る もの な どが 考 え ら れ る. 表1 培 養 上 清 中の サ イ トカ イ ン濃度 他2例 は<50と 測 定感 度 以 下 他2例 は ≦0.1と 測定 感 度 以 下 他2例 は<2.00と 測 定 感 度 以下 G-CSF濃 度 は,高 齢 者1週 目 の1例 で0.83ng/mlで あ っ た 以 外 は 高 齢 者,若 年 者1週 目,3週 目 と も に 測 定 感 度 以 下 で あ っ た.GM-CSF濃 度 は,高 齢 者1週 目 の1例 で2.18pg/mlで あ っ た 以 外 は 高 齢 者, 若 年 者1週 目,3週 目 と も に 測 定 感 度 以 下 で あ っ た.IL-1β, IL-3濃 度 は 高 齢 者,若 年 者 と も に す べ て 測 定 感 度 以 下 で あ っ た,M-CSF濃 度 は,高 齢 者1週 目 の1例 で63U/mlで 他 の2例 で は 測 定 感 度 以 下 で あ っ た が,3週 目 で は742.3±366.9U/mlと 上 昇 し た.一 方,若 年 者 の1週 目 は1例 で101U/mlで あ り 他 の2例 は 測 定 感 度 以 下 で あ っ た が,3週 目 で は1417.7±636.7U/mlと 上 昇 し,高 齢 者3週 目 よ り高 値 を 示 した.IL-6濃 度 は,1週 目 が 高 齢 者3007.9±4343.5pg/mlと 若 年 者249.4±164.0pg/mlに 比 し高 く, 高 齢 者 の1例 で8000pg/mlと 著 明 高 値 を示 し た.こ れ に 対 し,3週 目 で は 高 齢 者199.0±148.3pg/ml,若 年 者826.3±731.0pg/mlと 逆 に 若 年 者 が 高 く,若 年 者 の1例 で1610pg/mlと 高 値 を示 し た.
ヒ ト骨 髄 間質 細胞 に 及ぼ す加 齢 の影響
595
ま た,高 齢 者 に お い て 脂 肪 細 胞 の 比 率 も高 か っ た が,老 化 に 伴 い こ れ らの 細 胞 が 増 加 す る こ と は,加 齢 に伴 い 脂 肪 髄 が 増 加 し て くる の と同 様 の 機 序 が 働 い て い る こ と も推 測 さ れ る.こ れ は 単 に 骨 髄 間 質 自体 の 老 化 の 結 果,黄 色 髄 と な っ て 造 血 幹 細 胞 も減 少 す る の か,造 血 幹 細 胞 の 減 少 に よ り造 血 の 使 命 を終 え た 結 果 で あ るの か, 造 血 幹 細 胞 の 減 少 に 対 して 造 血 支 持 能 を 増 強 す る た め 間 質 細 胞 の 組 成 が 変 化 した 結 果 で あ るの か,興 味 深 い.し か し,骨 髄 間 質 細 胞 の 中 で 脂 肪 細 胞 の 役 割 は 明 確 に は さ れ て い な い もの の, 脂 肪 細 胞 の 前 駆 細 胞 で あ る 前 脂 肪 細 胞 は 単 一 細 胞 と して 造 血 支 持 能 が あ る こ と も報 告 され て お り25),脂肪 細 胞 の 増 加 が 造 血 支 持 能 を失 った 結 果 と考 え るの は早 計 で はな かろ うか.Katsunoら26)27) は,X線 亜 致 死 量 照 射 マ ウ ス でcolony forming unit-fibroblast (CFU-F)ア ッ セ イ を行 っ た と こ ろ,造 血 回 復 に 先 行 して 脂 肪 滴 を持 つ 細 胞 が50 %以 上 を 占 め るadipocyte colony (CFU-A)が 一 過 性 に増 加 す る こ と を報 告 し て い る.さ ら に 急 性 白 血 病 の 化 学 療 法 後 の 細 胞 再 生 期 に も増 加 す る こ と を 指 摘 して お り,脂 肪 滴 を持 つ 細 胞 と 造 血 再 生 との 関 連 が 強 く示 唆 され て い る.著 者 ら は重 症 再 生 不 良 性 貧 血 の 症 例 に お い て そ の 発 病 早 期 の 未 治 療 時 に,間 質 細 胞 培 養 に て2週 以 内 にconfluentに な る ほ ど増 殖 が 速 く,し か も 脂 肪 細 胞 の 比 率 が50%程 度 と異 常 に高 か っ た 症 例 を経 験 し報 告 して い る28)が,発 病 早 期 で造 血 幹 細 胞 が 低 下 しは じめ て い た 時 期 で も あ り,脂 肪 細 胞 出 現 の 機 序 の 一 つ に 造 血 幹 細 胞 の 低 下 に伴 う造 血 支 持 機 能 の 亢 進 が あ げ られ るの で は な い か と考 え られ た. 一 方 ,T細 胞 も高齢 者 にお いて増 加 して いた. T細 胞 は 厳 密 に は 骨 髄 間 質 細 胞 と は 言 え ず, Dexterの 培 養 系 で はT細 胞 は あ ま り増 加 しな い と言 わ れ て い る が,無 視 で き な い 数 が 存 在 し て い る の で 今 回 の 検 討 に含 め た.T細 胞 は 各 種 サ イ トカ イ ン を産 生 して お り,主 に 感 染,炎 症 な どの と きの 反 応 性 造 血 に 関 与 して い る.今 回 の 検 討 で 有 意 差 は あ っ た もの の 数 字 的 に は 若 年 者 と高 齢 者 で 大 きな 差 が あ っ た わ け で は な い. 高 齢 者 でT細 胞 が 増 加 し て い た の は,全 身 的 な 免 疫 能 力 の 変 化 に 伴 う もの で あ る の か,単 球/マ ク ロ フ ァ ー ジ増 加 と同 様 に 異 常 血 球,異 常 幹 細 胞 の 排 除 に 関 与 して い るの か,あ る い は 造 血 因 子 産 生 を含 め た 造 血 支 持 細 胞 と して の 作 用 に 関 与 して い る た め な どが 考 え られ る が,い ず れ も 決 定 的 な 証 拠 を あ げ る に は い た ら ず 今 後 の 検 討 を 要 す る. 骨 髄 間 質 細 胞 の 増 殖 動 態 に つ い て,今 回 の 検 討 で は培 養 フ ラス コ底 に対 す る 占有 率 を%conflu enceで 表 した.Borbenyi29), Coutinho30)ら は myelodysplastic syndrome (MDS)に お い て, 頼 ら18)はchronic myeloblastic leukemia(CML)に お い て 同様 の検 討 を行 い そ の 低 下 を 報 告 して い る.こ れ ら の検 討 は 間 質 細 胞 の構 成 の 異 常 また は 増 殖 能 力 の 低 下 を表 す もの で あ り, 骨 髄 間 質 細 胞 を不 均 一 な細 胞 集 団 と考 えた場 合, そ の 構 成 の 異 常 か ら細 胞 の 相 互 関 係 が 崩 壊 した 状 態 を 反 映 す る とい う考 え30)があ るが,松 崎 らの 報 告 で は形 態 的 に も細 胞 構 成 に も変 化 を認 め て い な い.し か し,CFU-Fの 数 に 異 常 が な くて も confluentに な ら な い例 もあ り,増 殖 能 力 の低 下 を 表 す もの で あ る こ と は ま ち が い な く,間 質 細 胞 の 増 殖 動 態 を み る こ とは,不 均 一 な 細 胞 集 団 と して 細 胞 相 互 間 の 作 用 を反 映 した 間 質 細 胞 の 一 つ の 機 能 をみ て い る こ とに な る と考 え られ る. 骨 髄 間 質 細 胞 の 増 殖 動 態 に つ い て は,1次 培 養 で1週 目 の 時 点 の 占有 率 が 若 年 者 で は7%程 度 で あ るが,高 齢 者 で は20%余 り を 占 め,若 年 者 に 比 し高 齢 者 が 有 意 に1週 目 まで の 増 殖 は速 く,そ の 後 の 占 有 率 に は 有 意 な 差 が な か っ た. しか し,1週 目 か ら2週 目 に か け て の 増 殖 速 度 を み る と若 年 者 の 方 が 速 い と言 え る が,こ の 実 験 はconfluentに な る まで の 観 察 で,付 着 細 胞 がconfluentと な る ま で の 期 間 は 共 に3週 間 で あ り差 が な く,confluent直 前 に は 増 殖 にdown regulationが か か り増 殖 速 度 が 緩 や か に な る た め 単 純 に は 比 較 で きな い.ま た,占 有 面 積 だ け で は 立 体 的 に重 層 さ れ た 細 胞 ま で 評 価 で き な い こ と と,培 養 開 始 当 初 よ り高 齢 者 で 造 血 幹 細 胞 に 比 しCFU-Fの 比 率 が 高 か っ た こ と も考 え ら れ た た め,4週 間 が 経 過 した 時 点,即 ち 造 血 幹 細 胞 が 培 養 液 交 換 及 び 成 熟 分 化 な ど の た め ほ ぼ 除 去 され 間 質 細 胞 だ け とな っ た と考 え られ る 時 点 で,2次 培 養 を 行 い細 胞 数 に よ る 増 殖 の 評 価
を行 っ た.2次 培 養 は35mm dishを 用 い る こ と に よ り,25cm2フ ラ ス コ使 用 時 の 約1/3の 底 面 積 に 対 し細 胞 数 を1/10に 減 らす こ とでconfluenceの 時 期 を 遅 らせ,down regulationの 影 響 を な る べ く除 外 し,ま た ト リプ シ ン処 理 に よ る細 胞 数 を 検 討 す る こ とに よ り,立 体 的 に 重 層 し た細 胞 も含 め て 評 価 で き た.そ の 結 果,2次 培 養 開 始 1週 目 よ り有 意 差 は な い が 若 年 者 に 比 しや は り 高 齢 者 骨 髄 間 質 細 胞 の 増 殖 は 速 い 傾 向 に あ っ た. 2週 目以 降 は と も に 平 行 な 増 殖 曲 線 を描 い て お り,増 殖 速 度 は ほ ぼ 同 じ と考 え ら れ た.以 上 よ り,1次 培 養 及 び2次 培 養 と も に高 齢 者 の 骨 髄 間 質 細 胞 は 若 年 者 の そ れ と比 べ,増 殖 動 態 に お い て 全 く低 下 して お らず,む しろ 亢 進 状 態 に あ っ た と 言 え る.し か し,細 胞 構 成 の 結 果 と増 殖 動 態 の 結 果 か らだ け で は,骨 髄 間 質 細 胞 の 機 能 の 細 部 を論 じ る こ と は で きな い た め,さ ら に機 能 の 指 標 と して 培 養 上 清 中 の 各 種 サ イ トカ イ ン 濃 度 の 測 定 を 行 っ た. 骨 髄 間 質 細 胞 の サ イ トカ イ ン産 生 能 に つ い て は,線 維 芽 細 胞 及 び 内 皮 細 胞 はG-CSF, M-CSF, GM-CSFな ど を,単 球/マ ク ロフ ァー ジ はG-CSF, M-CSF, IL-1, IL-3な どを,T細 胞 はGM-CSF,
IL-2, IL-3, IL-4, IL-5, IL-6, interferon-γ (IFN-γ)な ど を産 生 す る と言 わ れ て い る). 一 方,IL-1は 線 維 芽 細 胞 や 内 皮 細 胞 に 働 い て G-CSF, GM-CSF, M-CSF, IL-6な ど を 分 泌 さ せ る 作 用 が あ る と報 告 され てい る33).Haylockら
は 末 梢 血CD 34陽 性 細 胞 を6種 類 の サ イ トカ イ ン,即 ちIL-1, IL-3, IL-6, G-CSF, GM-CSF, SCFを 用 い て 培 養 し,顆 粒 球 マ ク ロ フ ァ ー ジ 前
駆 細 胞(CFU-GM)が14日 目 に は 平 均66倍 に も 増 加 す る こ と を 報 告 して お り34),いず れ の サ イ ト カ イ ン も造 血 に 関 して 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る と考 え られ る の で,今 回,G-CSF, GM-CSF, M-CSF, IL-1β, IL-3, IL-6を 測 定 す る こ と
に した. 培 養 上 清 中 のG-CSF, GM-CSF, IL-1β, IL-3濃 度 は 高 齢 者,若 年 者 と も に,ま た1週 目, 3週 目 と も に 測 定 感 度 以 下 の 濃 度 で あ っ た もの が ほ とん どで あ っ た.し か し,以 上 の サ イ トカ イ ン の 産 生 が 行 わ れ て い な い と い う こ と で は な い.実 際 に 骨 髄 内 に お い て は,CSFは 間 質 細 胞 の 細 胞 外 基 質 のglycosaminoglycan,特 に そ の 中 のheparan sulphateにGM-CSFな ど が 結 合 し,造 血 細 胞 が 間 質 細 胞 に 接 着 して そ の 作 用 を 発 現 す る こ と が 知 られ て お り35)36),産生 さ れ て い て も培 養 上 清 中 に 測 定 で き る ほ ど の 量 が な い こ と も推 定 さ れ る.ま た,間 質 細 胞 の 状 態 に よ っ て 産 生 能 力 が 異 な り,マ ウ ス 胚 由来 の 骨 髄 間 質 細 胞 の 細 胞 株 で あ るC3H10T1/2細 胞 に よ る検 討 で は,confluentな 状 態 で な い と産 生 さ れ な い サ イ トカ イ ン も指 摘 され て い る37).ま た,造 血 幹 細 胞 の 接 着 等 の 刺 激 が あ っ て は じめ て 産 生 さ れ る サ イ トカ イ ン もあ り,今 回 の 間 質 細 胞 増 殖 段 階 の 産 生 で は検 出 し に くい サ イ トカ イ ン も あ ろ う し,む しろ今 回検 出 され た サ イ トカ イ ン は 間 質 細 胞 自体 の 増 殖 に 関 与 した もの で あ る か も しれ な い.症 例 数 が 少 な く検 定 は で き な い が,M-CSF 濃 度 は,両 者 と も に1週 目 は低 値 で あ っ た が, 3週 目 に は と も に 濃 度 上 昇 が み られ,若 年 者 が 高 か っ た.IL-6濃 度 は1週 目で 高 齢 者 が 若 年 者 に比 し高 く,逆 に3週 目 は 若 年 者 が 高 齢 者 に 比 し高 か っ た.こ れ らの 結 果 と骨 髄 間 質 細 胞 の 細 胞 構 成 及 び 増 殖 動 態 との 関 連 性 に つ い て は,若 年 者 に 比 し高 齢 者 で 単球/マ ク ロ フ ァ ー ジの 比 率 が 高 か っ た こ と と,高 齢 者 よ り若 年 者3週 目 の M-CSF濃 度 の 方 が 高 か っ た こ と は 矛 盾 す る よ う に思 わ れ る が,逆 にM-CSF産 生 亢 進 に よ り単 球/マ ク ロ フ ァー ジ 増 殖 にdown regulationが 働 い た もの と も考 え られ た.ま た,M-CSFを 加 え た 培 養 系 でT細 胞 増 殖 が 抑 制 さ れ た とい う報 告38)が あ る が,若 年 者 よ り高 齢 者 でT細 胞 比 率 が 高 か っ た こ と は,M-CSF産 生 の 亢 進 に よ りT 細 胞 増 殖 に 抑 制 が か か り,結 果 的 に 比 率 を低 下 させ た 可 能 性 が 考 え られ た.一 方,IL-6で は 骨 髄 間 質 細 胞 自 身 の 増 殖 も促 進 され る こ と が報 告 さ れ て お り39),IL-6に よ り骨 髄 間 質 細 胞 の 自 己 増 殖 が 促 進 さ れ た と考 え れ ば,増 殖 動 態 に お い て 高 齢 者 骨 髄 間 質 細 胞 の1週 目 ま で の 増 殖 速 度 が 速 か っ た とい う 結 果 が 理 解 で き る.IL-6の 産 生 が 早 期 よ り亢 進 し,間 質 細 胞 増 殖 が 若 年 者 よ り急 速 で あ る こ とが,逆 に 支 持 能 の 亢 進 とす ぐ に 結 び つ け る こ と は で き な い が,IL-6は 造 血 の 比 較 的 初 期 に働 くサ イ トカ イ ンで あ り,す で に 高 齢 者 の 骨 髄 間 質 細 胞 が 刺 激 に 対 してIL-6の 産
ヒ ト骨髄 間質 細 胞 に及ぼ す加 齢 の影響
597
生 準備状 態 にあ った とす れ ば,重 要 な所 見 と考
え られ る.今 後 は,細 胞接 着 現象,各 種 サ イ ト
カ イン刺激 に対 す る反 応,細 胞外 基 質の 検討 を
して い く必要 が あ ろ う.
今 回の検 討 で,加 齢 に よる骨髄 間 質細 胞 の変
化が 存在 す る こ とが 示 され た.若 年 者の 間質 細
胞 と比較 した場合,い ず れ も機 能低 下 を示 す所
見 はな く,変 化 の機 序 の一 つ に老 化 に よる造血
幹細 胞の 質的 量 的低 下 に対 し,骨 髄 間質 細胞 の
造血 刺激 が高 まっ たた め にお こ る可 能 性 も推 察
された.間 質 細胞 へ の 加齢 の影響 を検討 す るこ
とは,間 質細 胞 に起 因 す る と考 え られ る造血 障
害 の発症機 序 の解 明に つ なが り,ま た 高齢者 に
おけ る造血器 疾 患 の治療 に際 して も重要 な情 報
を提 供 す る もの と考 え られ た.
結
論
ヒ ト骨髄 間質 細胞 の細 胞構 成 比率,増 殖動 態
及び造血 因子産 生 能 に及ぼ す 加齢 の影響 を検 討
した結果,
1. 細 胞構 成 にお いて,高 齢者 では 単球/マ ク
ロ ファー ジ,脂 肪 細 胞,Tリ
ンパ球 の比 率 が若
年 者 に比 し高 か った.
2. 増殖 動態 にお いて,高 齢 者 の骨髄 間質 細
胞 の 増 殖 は 若 年 者 に比 し,1次 培 養 で は 培 養1 週 後 まで は 速 く,培 養1週 か ら2週 後 に か け て 遅 か っ た.2次 培 養 で も,高 齢 者 の 増 殖 は若 年 者 に比 し培 養1週 後 ま で は 速 く,以 後 ほ ぼ 同 じ 傾 向 に あ っ た. 3. 造 血 因 子 産 生 能 に お い て,M-CSFは 培 養 3週 後 で 上 昇 し,高 齢 者 よ り若 年 者 で 高 か っ た. IL-6は 培 養1週 後 で 高 齢 者 が 高 く,培 養3週 後 で 若 年 者 が 高 か っ た. 今 回 の 検 討 で 若 年 者 と比 較 し高 齢 者 に お い て 骨 髄 間 質 細 胞 の 変 化 が 存 在 す る こ と が 示 され た が,こ れ らが 高 齢 者 の 造 血 能 の 低 下 に 如 何 に 関 与 す る か は い ま だ 不 明 で あ る.間 質 細 胞 の 加 齢 に よ る 影 響 を検 討 す る こ と は,間 質 細 胞 に起 因 す る造 血 障 害 の 機 序 解 明 に つ な が り,今 後 さ ら に 詳 細 な 検 討 を 要 す る と考 え られ た. 本 論 文の 要 旨は 第34回 日本臨 床 血 液学 会 総 会(大 阪)に お い て発表 した. 稿 を終 え るに あ た り御指 導 な らび に御 校 閲 を賜 っ た 恩 師木 村 郁郎 教 授 に深 甚 な る謝 意 を表 す る と とも に,終 始懇 切 な る御指 導 を頂 い た大 本英 次 郎 助 手 に 感 謝 す る.文
献
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