<論説>集合的・公共的利益に対する私法上の権利の法的構成についての一考察(5・完)
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(2) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. (2)考 察 の 方 法 (3)第 一 次 的 権 利(地 位 的権 利)と. して の集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に. 対 す る私 法 上 の 権 利(以 上57巻1号) (4)集 合 的 ・公 共 的 利 益 の維 持 に対 す る私 法 上 の権 利 に基 づ く第 二 次 的 権 利(道 具 的 権 利)(以. 下 本 号). (5)民 事 実 体 法 に外 在 的 な 視 点 か らの 考 察 第四章. 本 稿 の 結 論 と今 後 の 課 題. 第三章. 集合的 ・公共 的利益 の維持 に対する私法上の権利の. 根拠 となる民法理論 第三 節. 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 法技 術 的概 念 と して の 「私 法 上 の権 利 」 を基 礎 と して(承 前). 三.集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成. そ. の 要 件 と効 果 (4)集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に基 づ く第 二 次 的 権 利(道 具 的 権 利). 前 述(3)にお いて は,第 一一 次 的 権 利(地 位 的 権 利)と. して の 集 合 的 ・公 共. 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 を 明 らか に した。 以 下(4)に お いて は,こ の よ うな 「他 者 へ の 強 制 力 の 行 使 を 是 認 され る法 的 地 位 」 と して の 「第 一 次 的 権 利(地 位 的 権 利)」 の 内 容 を実 現 す る た め に,ど の よ う な種 類 ・内 容 の 「第 二 次 的 権 利(道 具 的 権 利)」 が 発 生 す る の か,と. い. う問 題 につ いて 考 察 を 加 え る。 こ こで の 考 察 は,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 が 現 在 の 民 事 訴 訟 手 続 を 通 じて 実 現 され う るか, と い う問 題 と特 に密 接 にか か わ る た め,現 在 の 民 事 訴 訟 手 続 を 通 じて 異 論 *本 稿 は. ,科 学 研 究 費 補 助 金(研. 究 課 題 番 号:16730059)お. よ び科 学 研 究 費 補 助. 金(研 究 課 題 番 号:20730082)に よ る研 究 成 果 の 一 部 で あ る。 **本 稿 に お い て は敬 称 を 略 させ て い た だ き ま した 。. 52.
(3) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). な く実 現 され て い る債 権 と物 権 の それ ぞ れ で 示 され て い る 内容 との 比 較 と い う方 法 を と る(982)。な お,こ. こ で の考 察 に お いて は,思 想 的 ・哲 学 的 根. 拠 か ら示 され た 「集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 独 占的 享 受 が 認 め られ な い」 と い う条 件 につ いて の 考 慮 も行 う必 要 が あ る(983)。 (a)種. 類. 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 効 力 につ いて の 考 察 か ら,債 権 との 比較 の 中 で 示 さ れ た効 力 が 認 め られ る こ とを 示 した(984)。 その た め,債 権 に基 づ いて 発 生 す る第 二 次 的 権 利(道 具 的 権 利)に つ いて は,そ れ ぞ れ を 比 較 の 対 象 と した考 察 が 必 要 とな る。 他 方,物 権 の 効 力 と して の物 権 的請 求 権 との 比 較 か らの効 力 は認 め られ な か った(985)。この こ と は,集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 か らは,「 第 二 次 的権 利 (道具 的権 利)と 具 的 権 利)が. して の 物 権 的 請 求 権 」 との比 較 に お け る第 二 次 的権 利(道. 発 生 しな い こ と を示 して い る。 そ の た め,以 下 で は,「 第 二. 次 的 権 利(道 具 的 権 利)と. して の 物 権 的 請 求 権 」 を 比 較 対 象 と した 考 察 は. 行 わ な い(986)。 以 下(のに お いて 債 権 に基 づ く現 実 的 履 行 の 強 制 との 比 較 か ら,(イ)にお い て 債 権 に基 づ く損 害 賠 償 との 比 較 か ら,そ れ ぞ れ 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に基 づ く第 二 次 的 権 利(道 具 的 権 利)の 種 類 を 明 らか にす る(987)。. (982)前. 述(2)(b)参 照 。. (983)前. 述(3)(d)(イ)参照 。. (984)前. 述(3)(e)(ア)参照 。. (985)前. 述(3)(e)(イ)参照 。. (986)な. お,こ. の 帰 結 に 関 し て は 前 述(3)(e)(イ)ii)② 注(972)参. (987)な. お,以. 下 の 考 察 に お い て も,抽. 照。. 象 的 な債 権 の概 念 を 維 持 す る伝 統 的 理. 論 を 比 較 対 象 と し て 採 用 す る 。 そ の 理 由 も 含 め て 前 述(3)(e)(カi)注(940)参 照。. 53.
(4) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. Oり 是 正 請 求 権. 債 権 に基 づ く現 実 的 履 行 の 強 制 との 比 較 か ら. 債 権 者 は,債 務 者 が 債 務 を 任 意 に履 行 しな い と き,国 家 権 力 を 通 じて, 債 権 の 本 来 の 内 容 を 強 制 的 に実 現 させ る こ とが で き る(現 実 的 履 行 の 強 制)(988)。この現 実 的履 行 の強 制 は,債 権 の 効 力 で あ る執 行 力 に よ る もの と され る(989)。 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 効 力 と して も,そ の 内容 を強 制 的 に実 現 で き る と い う意 味 に お け る執 行 力(貫 徹 力)が 認 め ら れ る(990)。そ こ で,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の維 持 に 対 す る私 法 上 の権 利 の 権 利 者 は,義 務 者 が 任 意 に その 目的(客 体)た. る 「集 合 的 ・公 共 的 利 益 に関. して 形 成 され た秩 序 に基 づ いて 義 務 づ け られ る作 為 ま た は不 作 為 」 を 実 行 しな い場 合 に,執 行 力(貫 徹 力)を 根 拠 と して,国 家 権 力 を 通 じて,当 該 作 為 ・不 作 為 を な さ しめ る こ とが で き る(是 正 請 求 権)。 (イ)損 害 賠 償 請 求 権. 債 権 に基 づ く損 害 賠 償 との 比 較 か ら. 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に 対 す る 私 法 上 の 権 利 の 効 力 と して,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 実 現 と 同様 の 状 態 を 作 り出 す こ とを 目的 と して,集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る損 害 を 金 銭 に換 算 して 賠 償 させ る こ とが 認 め られ る(991)。しか し,こ の よ うな 損 害 賠 償 を認 め るた め に は,権 利 者 た る私 人 の 固 有 の 利 益 と は明 確 に区 別 され,当 該 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 の た め に 当該 金 銭 が 用 い られ る こ とを 保 障 す る制 度 の 創 設 が 必 要 とな る(992)。 しか し,現 在 の と こ ろ,こ の よ うな 制 度 は存 在 して いな い。 その た め, (988)奥[H昌. 道 『債 権 総 論. 権 総 論 」74頁(有 2008年)な (989)奥. 〔増 補 版 〕」100頁(悠. 斐 閣,2002年),中. 田裕 康. 々 社,1992年),淡 『債 権 総 論 」72頁(岩. 路 剛久. 「債. 波 書 店,. ど参 照 。. 田 ・前 掲 注(988)82頁,淡. 路 ・前 掲 注(988)49頁,中. 頁 な ど参 照 。 (990)前. 述(3)(e)(ア)ii)③ 参 照 。. (991)前. 述(3)(e)(ア)ii)④ 参 照 。. (992)前. 述(3)(e)(ガii)④. 参照。. 54. 田 ・前 掲 注(988)86.
(5) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). 現 時 点 で は,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に基 づ く第 二 次 的 権 利(道 具 的 権 利)と. して の 損 害 賠 償 請 求 権 を 解 釈 論 と して 認 め る. こ とが で きな い。 と は いえ,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 が 民 事 実 体 法 理 論 と して 認 め られ る との 前 提 に立 て ば,こ の よ うな 損 害 賠 償 請 求 権 を 実 現 す る た め の 制 度 を,将 来 的 に創 設 し な け れ ば な らな い。 そ こで,損 害 賠 償 請 求 権 に関 して は,制 度 を 創 設 す る に あた って の 要 件 と効 果 に関 す る実 体 法 的 指 針(ど の よ うな 点 につ いて どの よ う に示 す 必 要 が あ るの か)を 示 す た めの 考 察 を 行 う。 (b)要 件 お よ び効 果 前 述(a)に示 した よ う に,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 第 二 次 的 権 利(道 具 的 権 利)と. して は,是 正 請 求 権 と損 害 賠 償 請 求 権. が 認 め られ る。 以 下 で は,債 権 に お け る現 実 的 履 行 の 強 制 お よ び損 害 賠 償 請 求 権 との 比 較 か ら,そ れ ぞ れ の 要 件 お よ び効 果 を 明 らか に した い(993)。. (993)な. お,債 権 につ いて は,現 実 的履 行 の強 制 お よ び 損害 賠 償請 求 権 の そ れ. ぞ れ の 要 件 につ い て は,教 科 書 ・体 系 書 ご とに,そ の 表現 や ニ ュア ン スが 異 な って 記 述 され て い る。 前 述(3)(e)(ア)i)注(940)に示 した 債 権 の 概 念 に関 わ る議 論 との 関 連 を も踏 ま え れ ば,債 権 の現 実 的履 行 の 強 制 お よび 損 害 賠 償 請 求 権 の それ ぞ れ要 件 を記 述 す る た め に も膨 大 な考 察 が 必 要 とな る と も 考 え られ る。 しか し,以 下 の考 察 は,あ. くま で も集 合 的 ・公共 的 利 益 の 維. 持 に対 す る私 法 上 の権 利 の第 二 次 的権 利(道 具 的権 利)の 要 件 を 明 らか に す るた めの もの で あ り,債 権 に 関す る議 論 に つ い て一 定 の 帰 結 を 導 きだ す こ と は 目的 と して い な い。 そ の た め,債 権 に 関 す る議論 に お け る決 定 的 な 結 論 は必 要 と され ず,債 権 に関 して提 示 さ れ て い る特 定 の 系 統 の 理 論 を 比 較 対 象 と して 考 察 を進 め る こ と が認 あ られ よ う。 本 稿 に お い て,集 合 的 ・ 公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 効 力 に 関 して,前 述(3)(e)(ア)i) 注(940)に 示 した とお り,債 権 の 本 質 を 行 為(お よび 行 為 の 結 果)に 求 あ る 伝 統 的 理 論 に基 づ い た考 察 を行 っ て い る。 そ こで,以 下 で は 伝 統 的 理 論 に 基 づ く要 件 と して 中 田 ・前 掲 注(988)に お い て そ れ ぞ れ の 項 目で 示 さ れ て い る要 件 を 比 較 対 象 に用 い て 考 察 を 進 め る。. 55.
(6) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. σ)是 正 請 求 権 i)要. 件. 債 権 に お け る現 実 的 履 行 の 強 制 の 要 件 と して は,① 債 権 が 存 在 す る こ と,② 履 行 期 に あ る こ と,③ 履 行 が 可 能 で あ る こ と,④ 債 務 の 性 質 が 履 行 の 強 制 に適 さな い もの で はな い こ と,が 示 され て い る(994)。 是 正 請 求 権 は,債 権 の 現 実 的 履 行 の 強 制 と 同 じ く執 行 力 を 根 拠 と して い る(995)。ま た,民 事 訴 訟 手 続 を 通 じた実 現 可 能 性 と い う視 点 も踏 ま え る必 要 が あ る。 その た め,是 正 請 求 権 の 要 件 を 導 くに あ た って は,債 権 に お け る現 実 的 履 行 の 強 制 の 要 件 と 同様 の 考 慮 に基 づ くこ とが 求 め られ よ う。 以 下,比 較 考 察 か ら集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に基 づ く是 正 請 求 権 の 要 件 を 明 らか にす る。 まず 債 権 の 強 制 的 履 行 の 強 制 の 要 件 で あ る 「債 権 が 存 在 す る こ と」 との 比 較 に お い て,「 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 が 存 在 して い る こ と」 と い う要 件 が 導 か れ る。 是 正 請 求 権 が,第 一一 次 的 権 利(地 位 的 権 利)と. して の 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 を 基. 礎 に お いて 生 じる もの で あ る こ とか ら,こ の 要 件 は,当 然 に必 要 とな る。 「履 行 期 に あ る こ と」 とい う要 件 との 比 較 に お い て は,是 正 請 求 権 に基 づ い た請 求 を いつ か らで き るの か,と. い う点 が まず 問 題 とな る。 集 合 的 ・. 公 共 的利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の権 利 は,「 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に 関 し て 形 成 され た秩 序 に基 づ いて 義 務 を 課 せ られ て い る主 体 が その 義 務 に違 反 して い る場 合 に,そ の 義 務 を 負 って い る主 体 に対 して,そ の 違 反 して い る 状 態 の是 正 を 求 め る こ と の で き る地 位 」 と定 義 さ れ る(996)。この定 義 か ら. (994)中. 田 ・前 掲 注(988)86頁. て は,前. 掲 注(993)参. (995)前. 述(a)(ア)参照 。. (996)前. 述(3)(a)参 照 。. 。 この よ う な 要 件 を比 較 対 象 と す る こ と に つ い. 照。. 56.
(7) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). す れ ば,義 務 に違 反 した時 期 か ら請 求 が 可 能 にな り,そ れ よ りも前 の 時 点 で は請 求 が で きな い,と も考 え られ る。 しか し,こ の 権 利 は,義 務 者 の 作 為 ・不 作 為 を通 じて 達 成 さ れ る集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 実 現 を 正 当化 の 根 拠 とす る もの で あ る。 そ の た め,あ. く. まで も集 合 的 ・公 共 的 利 益 その もの の 実 現 こ そが,達 成 され るべ き本 来 的 目標 と して 位 置 づ け られ る。 こ こで,不 可 逆 性 を もつ よ うな 環 境 利 益 な ど を 想 定 す れ ば,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 実 現 を 妨 げ る義 務 違 反 が,未 だ 発 生 して いな いが,将 来 発 生 す る こ と につ いて は高 度 の 蓋 然 性 が あ る,と い う 場 合 に,違 反 が お こ る まで は請 求 で きな い とす る こ と は,こ の 権 利 の 本 来 的 な 目標 を 達 成 で きな い こ と とな る。 ま た,義 務 に違 反 す る状 態 の 発 生 の 直 前 と直 後 で 結 論 に大 きな 差 が 出 る と い う点 か ら も,義 務 違 反 の 発 生 まで 請 求 で きな い と い う帰 結 は是 認 され え な い。 と は いえ,全. く義 務 違 反 の お こ る可 能 性 の な い状 態 にお いて 請 求 を 認 め. る こ と は,こ の 権 利 の 定 義 か ら して 是 認 す る こ と はで きな い。 そ の た め, 義 務 違 反 の 発 生 以 前 に お いて 是 正 請 求 権 を 認 め るた め に は,義 務 違 反 と 同 視 しう る ほ どの 状 態,す な わ ち,義 務 違 反 の 発 生 につ いて の 高 度 の 蓋 然 性 の 存 在 が 必 要 と され るべ きで あ る。 以 上 の 考 察 か ら,「集 合 的 ・公 共 的 利 益 に関 して 形 成 され た 秩 序 に基 づ く 義 務 を 負 って い る主 体 が 当該 義 務 に違 反 して い る こ と,ま た は,当 該 義 務 に違 反 す る こ と につ いて 高 度 の 蓋 然 性 が 認 め られ る こ と」 が 要 件 と して 示 され る(997)。 続 いて,「 履 行 の可 能 な こ と」 とい う要 件 との比 較 に お い て,「 当 該 義 務 に違 反 して い る状 態 の 是 正 が 可 能 で あ る こ と」 と い う要 件 が 示 され る。 是 正 の 現 実 的 実 現 が 不 可 能 で あ るな らば,是 正 は実 現 され え な いわ けで あ る (997)後. 者 の 場 合 を,当 該 義 務 に違 反 す る こ とを予 防 す る た め の請 求 権(義 務. 違 反 予 防 請 求 権)と 呼 ぶ こ と も考 え られ る。. 57.
(8) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. の で,こ の 要 件 が 求 め られ るの は必 然 と いえ よ う。 問 題 は,そ の 具 体 的 な 内容,す な わ ち,こ こで の 「是 正 が 可 能 」 と は何 か で あ る。 債 権 の 現 実 的 履 行 の強 制 に関 して も,「 履 行 が可 能」 と は何 か が 問 題 と さ れ るが,全 体 と して の体 系 化 は 十 分 に な さ れ て い な い と さ れ る(998)。そ して,こ の 考 察 に は,①. 「債 権 の 効 力 」 の み か らで はな く,よ り広 い考 察 が 必 要 で あ る こ. と,お よ び. ② 抽 象 的 ・客 観 的 ・物 理 的 な 基 準 で 判 断 す るの で はな く,よ. り実 質 的 に判 断 す べ きで はな いか と い う認 識 が 広 ま って い る こ と,が それ ぞれ 指 摘 され て い る(999)。この 指 摘 に鑑 み れ ば,是 正 請 求権 にお け る 「是 正 可 能 性 」 の 具 体 的 な 内容 につ いて も,個 別 の 場 面 ご との 実 質 的 な 判 断 の 積 み 重 ね を 基 礎 と して,体 系 化 を はか る必 要 が あ る(1000)。この 問 題 につ いて は今 後 の 課 題 とせ ざ るを え な い。 最 後 に,「債 務 の性 質 が強 制 を許 す こ と」とい う要件 につ い て は,集 合 的 ・ 公 共 的利 益 の 維 持 に 対 す る私 法 上 の 権 利 の 目的(客 体)が,「. 集 合 的 ・公. 共 的 利 益 に関 して 形 成 され た秩 序 に基 づ いて 義 務 づ け られ る作 為 ま た は不 作 為 」 で あ る こ とが 重 要 と な る(1001)。 本 稿 に お い て は 「秩 序 」 を,「 実 現 され な けれ ば実 力 と して の 強 制 力 を 通 じて 実 現 され う る と い う性 質 を 持 つ 規 範 の 集 合 」 と い う意 味 で 用 いて い る(1002)。 す な わ ち,集 合 的 ・公 共 的 利 益 に 関 して 形 成 さ れ た 秩 序 に 基 づ い て 義 務 づ け られ る作 為 ま た は不 作 為 (998)中 (999)中 (1000)例. 田 ・前 掲 注(988)89頁 。 田 ・前 掲 注(988)89-90頁. 。. え ば,憲 法 上 あ る い は行 政 法 上 の法 理 に よ って そ の 活動 が 規 律 され て. い る行 政 主 体 が,義 務 を負 っ て い る主 体 で あ った場 合,そ の 行 政 主 体 が, 憲 法 上 の 法 理 あ る い は行 政 法 上 の法 理 に よ って定 め られ る限 界 を 超 え る手 段 を と らな けれ ば そ の義 務 に違 反 して い る状 態 の是 正 が 可 能 とな らな い, と い う と き には,「 是 正 は 不 可 能 」 と評 価 され る こ と とな ろ う。 (1001)前. 述(3)(c)参照 。. (1002)本. 稿 第 二 章 第 二 節 一.(宮. 澤 俊 昭 「集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の. 権 利 の 法 的 構 成 につ い て の一 考 察(1)」近 法54巻3号86(325)頁(2006年)) 参照。. 58.
(9) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). は,そ もそ も強 制 力 の行 使 によ って 実現 され る ことが 予定 され て い る(1003)。 その た め,こ の 要 件 は,是 正 請 求 権 の 要 件 とす る必 要 が な い。 ii)効. 果. 是 正 請 求 権 に基 づ いて,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 権 利 者 は,義 務 者 が 任 意 に その 目的(客 体)た. る 「集 合 的 ・公 共 的 利. 益 に関 して 形 成 され た秩 序 に基 づ いて 義 務 づ け られ る作 為 また は不 作 為 」 を 実 行 しな い場 合 に,国 家 権 力 を 通 じて,当 該 作 為 ・不 作 為 を な さ しめ る こ とが で き る。 この 是 正 請 求 権 は,債 権 に お け る現 実 的 履 行 の 強 制 と 同様 に,民 事 執 行 法 に基 づ く強 制 執 行 制 度 に沿 って 具 体 化 され る。 (イ)損 害 賠 償 請 求 権 前 述(a)(イ)に お いて 示 した通 り,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 権 利 者 に,損 害 賠 償 請 求 権 を 認 め る た め に は,権 利 者 た る私 人 の 固 有 の 利 益 と は明 確 に区 別 され,当 該 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 の た め に集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る損 害 を 換 算 した金 銭 が 用 い られ る こ とを 保 障 す る制 度 の 創 設 が 必 要 とな る。 以 下,そ の 制 度 にお け る要 件 と効 果 の 実 体 法 的 指 針 を,債 権 に お け る損 害 賠 償 請 求 権 との 比 較 にお いて 考 察 す る。 i)要. 件. 債 務 不 履 行 に基 づ く損 害 賠 償 責 任 の 発 生 要 件 は,① 債 務 の 存 在,② 事 実 と して の 不 履 行(1004),③ 債 務 者 の 帰 責 事 由,④ 損 害 の 発 生,⑤ 事 実 と して. (1003)仮. に,実 力 と して の強 制 力 を通 じて実 現 さ れ え な い義 務 で あ るな らば,. 第 一・ 次 的 権 利(地 位 的 権 利)と. して の集 合 的 ・公共 的利 益 の 維 持 に対 す る. 私 法 上 の 権 利 の 定 義 か ら導 か れ る要 件 を満 た さな い(前 述(3)(d)(力 参 照)こ と にな るた め,第 一 次 的 権 利(地 位 的 権 利)が そ もそ も成 立 しな い 。 (1004)中. 田 ・前 掲 注(988)91頁 は,「 事 実 と して の不 履 行 」 を 「債務 が 履 行 され. な い こ と」 を一 般 に示 す 意 味 で,「 債務 不 履 行」 を 「 債 務 が履 行 され ず,そ れ が 債 務 者 の 責 め に期 す べ き事 由(帰 責 事 由)に よ る こ と」を 示 す 意 味 で, そ れ ぞ れ 用 い る と して い る。. 59.
(10) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. の 不 履 行 と損 害 との 因 果 関 係,の 五 つ と され る(1005)。こ こで は権 利 者 か ら み た要 件 の 設 定 で はな く,責 任 の 発 生 と い う形 で,義 務 者 か らみ た要 件 の 設 定 とな って い る。 まず,「 債 務 の存 在 」 とい う要 件 との 関 係 に お い て は,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に対 応 す る義 務 が,二 層 構 造 にな って い る こ とに 注 意 が 必 要 とな る。 す な わ ち,「 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に 関 して 形 成 され た秩 序 に基 づ く義 務 」 の な か で,一 一 定 の 要 件 を 満 た した もの が,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に よ って 強 制 され る対 象 と な る。 「債 務 の存 在 」と い う要 件 と の比 較 に お い て は,後 者 に お け る意 味 で の 義 務 の 存 在 が 必 要 とな る。 そ して,こ れ は集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に 対 す る私 法 上 の 権 利 の 存 在 を 求 めて い るの と 同義 で あ る。 その た め,こ こ で は,「 集 合 的 ・公 共 的利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の権 利 が 存 在 して い る こ と」 と い う要 件 に置 き換 え る こ とが で き る。 「事 実 と して の不 履 行 」 とい う要 件 との 比較 に お い て は,「 義 務 違 反 の 状 態 に あ る こ と」 と い う要 件 が 導 か れ る。 しか し,こ こで は債 権 に関 して, 債 務 不 履 行 の 態 様 ご と に類 型 化 され て 議 論 が 進 め られ て い る こ とが 重 要 な 意 味 を持 つ(1006)。集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 は,問 題 とな る集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 性 質 や,そ の 利 益 に関 して 形 成 され た秩 序 の 性 質 な どの 視 点 か ら見 て,多 種 多 様 な 義 務 を 対 象 とす る。 その た め,損 害 賠 償 請 求 権 の 実 現 を 可 能 にす る制 度 を 創 設 す る に あ た って は,そ の 対 象 とな る集 合 的 ・公 共 的 利 益 ご と に,ど の よ うな 義 務 違 反 の 状 態 で あ る こ と を求 め るの か,を 判 断 す る こ とが 求 め られ る(1007)。 「債 務 者 の 帰責 事 由」に お け る帰 責 事 由 と は,事 実 と して の 不 履 行 につ い. (1005) (1006) (1007). 中[H・ 前 掲 注(988)97頁. 。. 中 田 ・前 掲 注(988)98-122頁 こ の 点 に つ い て は,前. 。. 述(3)(e)(ガii)④. 60. 注(958)も. 参照。.
(11) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). て の 債 務 者 の 責 め に帰 す べ き事 由を 意 味 す る(1008)。 債 務 不 履 行 に基 づ く損 害 賠 償 に お け る帰 責 事 由 につ いて は,過 失 責 任 主 義 と結 びつ け る伝 統 的 通 説 と,そ れ に対 す る批 判 説 が 示 され て お り,債 権 法 全 体 に及 ぶ 問 題 と して 議 論 が 行 わ れ て い る(1009)。この 要 件 につ いて も,対 象 とな る集 合 的 ・公 共 的 利 益 ご と に,そ も そ も集 合 的 ・公 共 的 利 益 につ いて の 義 務 を どの よ うな 根 拠 に基 づ いて 負 って い るの か,と 態 様 が 想 定 され るの か,と. い う問 題 か ら,ど の よ うな 義 務 違 反 の. い う問 題 まで,幅 広 く考 察 して 具 体 的 な 要 件 の. あ り方 を 考 え る必 要 が あ る。 「損 害 の発 生 」 とい う要 件 に つ い て は,な に を賠 償 の対 象 とす る 「損 害 」 と い うか,と い う こ とが 問 題 とな る。 この 問 題 もま た,問 題 とな る集 合 的 ・ 公 共 的 利 益,さ. らに は その 利 益 に関 して 形 成 され た 秩 序 ご と にそ れ ぞ れ 性. 質 が 異 な る考 察 が 必 要 とな る。 「事 実 と して の不 履 行 と損 害 との 因果 関係 」と は,債 務 不 履 行 が な けれ ば その 損 害 が 生 じな か っ たで あ ろ う と い う関 係 で あ り,「事 実 的 因果 関 係 」と 呼 ばれ る(1010)。この 要 件 につ いて は,義 務 違 反 が 原 因 とな って いな い損 害 につ いて も義 務 者 に賠 償 責 任 を 負 わ せ るの か,と. い う問 題 につ いて 検 討 が. 必 要 とな る。 仮 に義 務 違 反 と損 害 との 間 の 因 果 関 係 を 成 立 要 件 と して 求 め な い とす るの で あれ ば,ど の よ うな 損 害 につ いて 損 害 賠 償 責 任 を 負 わ せ る の か,と. い う こ と につ いて の 基 準 を 別 に設 定 す る必 要 が 生 じる。. ii)効. 果. 債 務 不 履 行 に基 づ く損 害 賠 償 の 効 果 と して は,債 務 不 履 行 に よ る損 害 を 金 銭 に見 積 も っ て そ の 金 額 を支 払 う方 法 が原 則 と され る(民 法417条;金 銭 賠 償 の 原 則)。 しか し,損 害 賠 償 の方 法 と して は,債 務 不 履 行 が な か った. (1008)中[H・. 前 掲 注(988)122頁 田 ・前 掲 注(988)122-130頁. (1010)中. 田 ・前 掲 注(988)131頁. 。. (1009)中. 。 。. 61.
(12) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. とす れ ば あ っ たで あ ろ う状 態 と ほ ぼ 同 じ状 態 を 実 現 す る方 法(原 状 回 復) も存 在 しう る(1011)。この いず れ を 選 択 す るの か と い う問 題,さ. らに は,そ. の 具 体 的 な 方 法 に関 して も,や は り,問 題 とな る集 合 的 ・公 共 的 利 益 や, その 利 益 に関 して 形 成 され た秩 序 ご と に,そ れ ぞ れ の 性 質 に沿 って 考 察 を 行 う必 要 が あ る(1012)。 (5)民 事 実 体 法 に外 在 的 な 視 点 か らの 考 察 以 下(5)にお いて は,(3)お よ び(4)にお いて その 法 的 構 成 を 示 した集 合 的 ・ 公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 が,現 在 の 日本 法 体 系 の も とで, 解 釈 論 と して 実 現 可 能 か,と. い う問 題 につ いて,民 事 実 体 法 に外 在 的 な 視. 点 か ら考 察 を 行 う。 この 考 察 に お いて は,前 述(2)(b)にお いて 示 した通 り, 本 節 二.に. お いて 行 っ た考 察 の 中で 示 され た民 事 訴 訟 法 理 論 と憲 法 理 論 の. それ ぞれ に関 わ る二 つ の 留 保 事 項 の 考 察 が 中心 とな る。 (a)現 行 法 に お け る民 事 訴 訟 制 度 との 関 係 (ア)は じめ に. 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 との 比 較 と い う方 法. 民 事 訴 訟 法 理 論 との 関 係 で は,現 行 の 民 事 訴 訟 制 度 に お いて 「利 益 の 帰 属 ・享 受 」 と い う要 素 を 持 たな い法 的 地 位 で あ る と こ ろの 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 実 現 が 可 能 か 否 か と い う技 術 的 視 点 か らの 解 釈 論 的 考 察,さ. らに この 考 察 に よ って 実 現 の 可 能 性 が 否 定 され る場. 合 に は,そ の 実 現 を 可 能 とす る制 度 の 立 法 的 導 入 と い う視 点 か らの 考 察 が 必 要 とな る(1013)。 本 稿 に お いて は,こ の 考 察 を,2006年. の 消 費 者 契 約 法 改 正 に よ って 導 入. (1011)中. 田 ・前 掲 注(988)136頁 。. (1012)例. え ば,金 銭 賠 償 を原 則 とす る債 権 に つ い て は,何 を 賠償 の 対 象 とす る. 「損 害 」 と い うか,ど. こ ま でが 賠 償 す る損 害 か(損 害 賠 償 の 範 囲),損. 害を. どの よ う に金 銭 に換 算 す るの か(損 害 賠 償 額 の算 定)と い った 点 につ い て, 詳 細 な 議 論 が 行 わ れ て い る(中 田 ・前 掲 注(988)137-179頁)。 (1013)本. 節 二.(4)(d)(宮 澤 俊 昭 「集 合 的 ・公 共 的利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の. 法 的 構 成 につ い て の 一 考 察(3)」近 法56巻3号111-112頁(2008年))参. 62. 照。.
(13) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). され た消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に関 して 訴 訟 法 の 観 点 か ら示 され て い る議 論 と の 比 較 を 通 じて 行 う こ と とす る。 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 は,個 別 の 消 費 者 の 利 益 擁 護 で は な く,消 費 者 全 体 の 利 益 擁 護 を そ の 目標 と して い る こ とか ら,こ の 制 度 の も とで 認 め られ る差 止 請 求 権 は,特 定 の 消 費 者 の 利 益 を 実 現 す る た め に認 め られ る もの で はな い,と され る(1014)。この こ と は,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に お け る消 費 者 団 体 の 差 止 請 求 権 につ いて の 訴 訟 法 上 の 法 技 術 的 な 議 論 は,「 利 益 の 帰 属 ・享 受 」 とい う要 素 を持 た な い法 的地 位 の 実 現 に対 す る訴 訟 法 上 の 法 技 術 的 な 議 論 と 同質 な もの と捉 え う る こ とを 意 味 して い る。 以 下(イ)にお いて,ま ず 考 察 の 前 提 と して,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 にお け る 差 止 請 求 権 の 実 体 法 上 の 法 的 構 成 と,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る 私 法 上 の 権 利 の 実 体 法 上 の 法 的 構 成 との 比 較 を 行 う。 続 いて(ウ)に お いて, 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 の 導 入 に向 け た議 論 の 中で 示 され た 訴 訟 法 上 の 論 点 に つ いて,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に照 ら し合 わ せ た考 察 を 行 う。 な お,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に 基 づ く損 害 賠 償 請 求 権 に関 して は,本 稿 の 考 案 で は,そ れ を 実 現 す るた め の 制 度 の 創 設 の 必 要 性 が 示 され て い る(1015)。その た め,損 害 賠 償 請 求 権 に 関 わ る訴 訟 法 上 の 論 点 につ いて の 考 察 も,民 事 実 体 法 理 論 と と も に立 法 論 (1014)消. 費 者 契 約 法12条1項. な い し4項 は,差 止 め の要 件 と して,差 止 め の 対. 象 とな る事 業 者 の行 為 が 「不 特 定 か つ多 数 の 消 費者 」 に 対 して 現 に行 わ れ る場 合 又 は行 わ れ る お それ の あ る場 合 を必 要 と して い る(内 閣 府 国 民 生 活 局 消 費 者 企 画 課 編 『逐 条 解 説 消 費 者 契 約 法 〔 新 版 〕』238頁(商 事 法 務,2007 年))。 また,三 木 浩 一 「訴 訟 法 の観 点 か ら見 た 消費 者 団 体 訴 訟 制 度 」 ジ ュ リ1320号62頁(2006年)は,消. 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に よ って認 あ られ た 消 費. 者 団 体 の 差 止 請 求 権 につ い て,「 … …,消 費 者 被 害 に関 す る差 止 請 求 権 は, 特 定 の 個 人 や 団 体 に帰 属 す る と見 る こ とが 困難 で あ る とい う点 で 超 個 人 的 で あ り,ま た個 別 的権 利 に分 割 す る こ とが 困難 で あ る とい う意 味 で 不 可 分 な 権 利 で あ る」 とす る。 (1015)前. 述(3)(e)(ガii)④参 照 。. 63.
(14) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. と して 行 う こ とが 望 ま しい と考 え る た め,以 下 で は,実 体 法 理 論 の レベ ル に お いて は立 法 的 措 置 を 必 要 とせ ず に実 現 され う る是 正 請 求 権 に限 定 して 考 察 を行 う(1016)。 (イ)実 体 法 的 構 成 の 比 較 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に よ って 消 費 者 団 体 に認 め られ る差 止 請 求 権 の 法 的 構 成 につ いて は,消 費 者 団 体 に固 有 の 実 体 法 上 の 権 利 の 帰 属 を 認 め る構 成 (固有 権 構 成)が 採 用 さ れ て い る(1017)。た だ し,こ の 差 止 請 求 権 に よ って 保 護 され るべ き利 益 は,消 費 者 一般(不. 特 定 か つ 多 数 の 消 費 者)に 帰 属 して. い る と把 握 され,権 利 の 帰 属 主 体 と保 護 利 益 の 帰 属 主 体 が 分 離 して い る と され る(1018)。 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 も,私 人 に固 有 の 実 体 私 法 上 の 権 利 を 認 め る と い う構 成 を もつ 。 その た め,消 費 者 団 体 の 差 止 請 求 権 と 同 じ意 味 を 持 つ 。 ま た,私 人 個 々の 利 益 の 実 現 を その 直 接 の 目標 に お いて いな い,と い う点 も,こ の 両 者 は 同質 で あ る。 しか し,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 につ いて は, その 思 想 的 ・哲 学 的 根 拠 か ら,問 題 とな る集 合 的 ・公 共 的 利 益 につ いて 一一 定 の 市 民 に対 して 個 別 に利 益 が 割 り当て られ て い る,と い う意 味 に お いて 市 民 個 人 の 私 的 利 益 の 個 別 性 が 維 持 され て い る こ と,お よ び権 利 者 が,当 該 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に含 まれ て い る個 別 の 利 益 を 保 持 して い る こ と,を (1016)集. 合 的 ・公 共 的 利 益 につ い て の損 害 賠 償 請 求 権 ・利益 剥奪 請 求 権 な ど に. つ いて の 訴 訟 法 上 の 議 論 に 関 して は,三 木 浩 一 「消 費者 団 体 訴 訟 の 立 法 的 課題. 手 続 法 の 観 点 か ら」NBL790号55-57頁(2004年),同. 益 の 保 護 と集 合 的 訴 訟 制 度 」 現 代 消 費 者 法1号87頁(2008号)等 (1017)消. 費 者 契 約 法12条1項. な い し4項,同23条. 「消 費 者 利 参照。. 等 参 照。 ま た,山 本 豊 「わ が. 国 に お け る 消 費 者 団 体 訴 訟 の 制 度 設 計 」 法 律 の ひ ろ ば58巻11号21-22頁 (2005年),三 (1018)鹿. 木 ・前 掲 注(1014)62頁 参 照 。. 野 菜穂子 「 消 費 者 団体 訴 訟 の 立 法 的 課 題. に」NBL790号59頁(2004年),山. 団体訴 権 の内容 を中心. 本 ・前 掲 注(1017)21-22頁,大. 「実 体 法 か ら見 た 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 」 ジ ュ リ1320号54頁(2006年)。. 64. 村 敦志.
(15) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. そ れ ぞ れ 要 件 と す る こ と が 求 め られ る(1019)。 こ の こ と は,権. 利 者 が,集. 完). 合. 的 ・公 共 的 利 益 の 実 現 を 図 る と 同時 に,そ の 集 合 的 ・公 共 的 利 益 か ら 自 ら に個 別 に割 り当て られ る利 益 を 実 現 して い る こ とを 意 味 す る。 他 方,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に お け る差 止 請 求 権 の 消 費 者 団 体 は,不 特 定 か つ 多 数 の 消 費 者 の 一一 員 で は な い 。 す な わ ち,消. 費 者 団 体 は,自. らの 固 有 の 利 益 と は完. 全 に切 り離 され た集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 実 現 の た めの 権 利 が 認 め られ て い る,と. い え. る(1020)。. (ウ)是 正 請 求 権 につ いて の 訴 訟 法 上 の 論 点 i)総. 論的問題. 前 述(イ)に 示 した通 り,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利. (1019)前. 述(4)(d)(イ)参 照。. (1020)こ. の こ と は,前 述(3)およ び(4)にお い て そ の法 的構i成を 示 した 集 合 的 ・公. 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の権 利 に基 づ い て,消 費者 団 体 訴 訟 制 度 を 実 体 法 的 に根 拠 づ け る こ と は で き な い こ とを意 味 す る。 そ の た め,こ の 実 体 法 的 基 礎 につ い て の考 察 を別 個 に行 う必 要 が あ る。 本 稿 との 関 係 で は, そ の 考 察 にお い て 留 意 す べ き点 と して 次 の 二 つ の 点 が 挙 げ られ る。 第 一 は,本 稿 に お い て行 って い る考 察 が,「私 法 秩 序 の 表 現 と して 当 事 者 に認 め られ る私 法 上 の権 利 」 と して の集 合 的 ・公共 的 利 益 の 維 持 に対 す る 私 法 上 の 権 利 の 法 的構 成 を 目指 して い る こ とで あ る(本 章 第 一 節(宮 澤 俊 昭 「集 合 的 ・公 共 的利 益 に対 す る私 法 上 の権 利 の法 的構 成 に つ い て の 一 考 察(2)」近 法54巻4号60-70頁(2007年))参. 照)。 本 稿 が 基 礎 とす る民 法 と憲. 法 につ いて の 理 論 的枠 組 に基 づ け ば,私 法 上 の権 利 と して は,一 定 の 限 度 の 範 囲 内 に お いて 行 わ れ る 国家 の介 入 に よ って 内容 の形 成 され た 規 範 を 根 拠 と して 「私 法 秩 序 に対 す る 国家 の介 入 に 基 づ い て 当事 者 に 認 め られ る私 法 上 の 権 利 」 も認 め られ うる。 団体 訴 訟 の実 体 法 的基 礎 に つ い て は,後 者 に基 づ く法 的 構 成 の 可 否 を 考 察 す る必 要 が あ る。 第 二 は,行 政 法 理 論,と. りわ け い わ ゆ る 「 行 政 の 民 間 化 」 あ るい は 「公. 私 協 働 論 」 に関 わ る行 政 法 上 の議 論 と の接 合 を考 慮 に入 れ て 考 察 を 行 う必 要 性 で あ る(議 論 の概 要 につ い て は,角 松 生 史 「 行政事務 事業の民営化」 芝 池 義 一=小 早 川 光 郎=宇 賀 克 也 編 『行政 法 の 争 点(第3版)」152頁(有 斐 閣,2004年),山. 本 隆 司 「民 間 の 営 利 ・非 営 利 組 織 と 行 政 の 協 働」 前 掲. 『行 政 法 の争 点(第3版)」154頁. 参 照)。 大 村 ・前掲 注(1018)60頁. 65. は,適 格/.
(16) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. も,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に お いて 消 費 者 団 体 に認 め られ る権 利 と 同様 に, 権 利 者 に固 有 に帰 属 す る。 この う ち,自. ら固 有 の 利 益 と は完 全 に切 り離 さ. れ た利 益 の 実 現 を 目的 とす る消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 の 訴 訟 手 続 につ いて は, 民 事 訴 訟 の枠 組 み を 利 用 し,原 則 と して 民 事 訴 訟 法 の 規 定 に 従 う と され る(1021)。この よ う に 自 らの 固 有 の 利 益 と は完 全 に切 り離 され た権 利 につ い て 現 行 の 民 事 訴 訟 手 続 の 利 用 が 認 め られ て い る こ と に鑑 み れ ば,集 合 的 ・ 公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 につ いて も,民 事 実 体 法 上 の 権 利 と して の 正 当化 され る限 りに お いて,そ の 実 現 の た め に現 行 の 民 事 訴 訟 手 続 を利 用 しう る,と いえ よ う(1022)。 ii)各 論 的 問 題 以 下,是 正 請 求 権 と民 事 訴 訟 手 続 の 関 係 の 各 論 的 問 題 に関 して は,① 重 複 訴 訟(二. 重 起 訴),② 処 分 権 主 義 ・弁 論 主 義 の適 用,③. 範 囲,④ 判 決 効 の 主 観 的 範 囲,の. 判 決 効 の客 観 的. それ ぞ れ につ いて 考 察 を 加 え る(1023)。. \ 消 費 者 団 体 の認 定 につ き厳 格 な基 準 が設 け られ て い る こ とか ら,実 際 の 運 用 も厳 格 に行 わ れ る な らば,規 制 の民 営 化 の一 環 と して 認定 を 受 けた 少 数 の 適 格 消 費 者 団 体 を利 用 す る と い う側 面 が 前 面 に 出 て くる よ う に思 わ れ る,と す る。 ま た,適 格 消 費 者 団体 と な る た め に は,内 閣総 理 大 臣 の 認 定 を 受 け な けれ ば な らな い(消 費 者 契 約 法13条1項. 及 び 同2項)。. さ ら に,. 2008年 の 消 費 者 契 約 法 等 の改 正 に よ って,不 当景 品 類及 び不 当 表 示 防 止 法 (景品 表 示 法)と 特 定 商 取 引 に関 す る法 律(特 定 商 取 引 法)に 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 が 導 入 され た。 こ の改 正 で は,行 政 庁 に よ る行政 処 分 に よ って 執 行 され て きた 行 政 規 制 の一 部 が,民 事 上 の権 利 関係 を 規定 す る観 点 か ら規 定 し直 され て い る(例 え ば,景 品 表 示 法11条 の2な. ど)。 この よ うな 議 論 の 状. 況 か ら考 え れ ば,団 体 訴 訟 制 度 の実 体 法 的基 礎 を考 察 す るに あ た って は, 行 政 法 理 論 との 接 合 を 考 慮 に入 れ る必 要 が 認 め られ よ う。 (1021)国. 民生 活審議 会消費者 政策部 会消費者 団体訴 訟制度 検討委 員会報告 書. 「消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 の 在 り方 につ い て 」20頁(平 (1022)な. だ して い る(本 節 二.④(b)(宮 (1023)以. 成17年6月23日)。. お 本 稿 で は,既 に民 事 訴 訟 法 理 論 的 に は許 容 され る とい う帰 結 を 導 き 澤 ・前 掲 注(1013)67-80頁)参. 照)。. 上 の 論 点 は,三 木 ・前 掲 注(1016)「 立 法 的課 題 」44頁 が検 討 を 要 す る. 問 題 と して 示 して い る もの に従 って い る。. 66.
(17) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. ①. 完). 重複訴訟. 民 事 訴 訟 法142条 は,裁 判 所 に係 属 す る事 件 につ い て,当 事 者 が さ ら に訴 え を提 起 す る こ とを 禁 止 して い る(重 複 訴 訟(二 重 起 訴)の 禁 止)。 この 原 則 は,同 一事 件 につ いて 二 重 の 応 訴 を 強 い られ る被 告 の 負 担,お. よ び重. 複 す る 審 理 や 相 矛 盾 す る 審 判 を 避 け る公 の 利 益 を 考 慮 し た も の と さ れ る(1024)。 消 費 者 団 体 訴 訟 に お いて,当 事 者 に固 有 の 実 体 法 上 の 権 利 が あ る と い う 前 提 に立 て ば,古 典 的 な 民 事 訴 訟 法 理 論 に従 う場 合 に は,異 な る消 費 者 団 体 を 原 告 とす る団 体 訴 訟 ご と に訴 訟 物 も異 な るの で,重 複 的 な 訴 え の 提 起 が 妨 げ られ る こ と はな い(1025)。しか し,現 代 的 な 重 複 訴 訟 論 の 見 地 か らみ る と,実 質 的 な 審 理 の 重 要 部 分 が 重 複 す る事 態 が 生 じる場 合 に は,司 法 資 源 の 効 果 的 な 活 用 と裁 判 所 の 判 断 の 抵 触 回 避 の た め に,訴 訟 物 の 異 同 に関 わ らず,何. らか の 処 理 を す る こ とが 望 ま しい とす る考 え 方 が 有 力 で あ る と. され る(1026)。 平 成18年 の 消 費 者 契 約 法 の 改 正 を 通 じて 導 入 され た 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 (以 下 「平 成18年 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 」 と記 述)に. お い て は,ま ず,消 費. 者 契 約 法44条 に よ って,同 一一ま た は 同種 の 行 為 の 差 止 請 求 に係 る訴 訟 が 他 の 裁 判 所 に係 属 して い る場 合 に,弁 論 の 併 合 を 可 能 とす るた め,当 事 者 の 住 所 又 は所 在 地,尋 問 を 受 け るべ き証 人 の 住 所,争 点 また は証 拠 の 共 通 性 その 他 の 事 情 を 考 慮 して 相 当 と認 め る時 は,裁 判 所 の 裁 量 に よ って,当 該 他 の裁 判 所 ま た は他 の管轄 裁 判 所 に移 送 す る こ とが可 能 とされ て い る(1027)。. (1024)伊. 藤眞. (1025)三. 木 ・前 掲 注(1016)「. 立 法 的 課 題 」48頁. (1026)三. 木 ・前 掲 注(1016)「. 立 法 的 課 題 」48-49頁,ま. 191頁 (1027)内. 『民 事 訴 訟 法[第3版3訂. 版]」190頁(有. 斐 閣,2008年)。. 。 た 伊 藤 ・前 掲 注(1024). も参 照 。 閣 府 国 民 生 活 局 消 費 者 企 画 課 編 ・前 掲 注(1014)411頁. 送 は,民. 事 訴 訟 法17条. の 示 す 要 件(訴. 67. 。 な お,こ. 訟 の 著 し い 遅 滞 を 避 け,又. の移. は 当 事 者/.
(18) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. さ らに,消 費 者 契 約 法45条 は,請 求 の 内容 お よ び相 手 方 で あ る事 業 者 等 が 同一 で あ る差 止 請 求 に係 る訴 訟 が 同一一 の 第 一一 審 裁 判 所 ま た は後 訴 裁 判 所 に 数 個 同時 に継 続 す る と き は,そ の 弁 論 お よ び裁 判 は,併 合 して しな けれ ば な らな い 旨を 定 め る(1028)。この 根 拠 と して は,司 法 資 源 の 効 率 化,判 決 内 容 の 抵 触 防 止,事 業 者 の 応 訴 負 担 が 挙 げ られ る(1029)。ま た,他 の 適 格 消 費 者 団 体 を 当事 者 とす る差 止 請 求 に係 る訴 訟 等 につ き確 定 判 決 等 が 存 す る場 合,請 求 の 内容 及 び相 手 方 が 同一一 で あ る場 合 に は,差 止 請 求 を す る こ とが で きな くな る た め(消 費者 契 約 法12条5項2号),複. 数の適格消費者団体 に. よ り同一一 の 事 業 者 等 に対 す る 同一一内容 の 請 求 に係 る訴 え が 提 起 され る場 合 に は,判 決 内容 を 合 一一 的 に確 定 す る こ とが 望 ま しい こ と も根 拠 と して 挙 げ られ る(1030)。 第 一 次 的 権 利(地 位 的 権 利)と. して の 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す. る私 法 上 の 権 利 に は,物 権 と 同 じ意 味 で の 排 他 性 は観 念 され え な い た め, 複 数 並 立 して 存 在 す る こ とが 是 認 され る(1031)。その た め,古 典 的 な 民 事 訴 訟 法 理 論 に よれ ば,や は りそれ ぞ れ 訴 訟 物 が 異 な る た め に,重 複 的 な 訴 え が 妨 げ られ な い こ と とな ろ う。 しか し,複 数 並 立 して 存 在 した場 合 に も, それ らはす べ て 同一一 の 「集 合 的 ・公 共 的 利 益 に関 して 形 成 され た秩 序 に基 づ いて 義 務 づ け られ る作 為 ま た は不 作 為 」 を 目的(客 体)と す る こ と にな. \ 間 の 公 平 を 図 る た め に必 要 が あ る と認 め る とき)を 満 た す必 要 は な い と さ れ る(三 木 ・前 掲 注(1014)70頁)。 (1028)な. お,三 木 ・前 掲 注(1014)71頁. は,同 種 の事 件 が 複 数 係 属 す る 場 合 に. も,裁 判 所 は民 事 訴 訟 法152条1項. に基 づ く裁 量 的 な弁 論 等 の 併 合 の是 非. を 積 極 的 に検 討 す べ き とす る。 (1029)三. 木 ・前 掲 注(1014)71頁,内. 閣 府 国 民 生 活 局 消 費 者 企 画 課 編 ・前 掲 注. (1014)413頁 。 (1030)三. 木 ・前 掲 注(1014)71頁,内. 閣 府 国 民 生 活 局 消 費 者 企 画 課 編 ・前 掲 注. (1014)413頁 。 (1031)前. 述(3)(e)(イ)ii)①参 照 。. 68.
(19) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). る(1032)。 す な わ ち,複 数 の 原 告 が,同 一一 の 被 告 に対 して 同一 の 作 為 ・不 作 為 を 目的(容 体)と. した是 正 請 求 権 を 行 使 す る こ とが あ りう る。 この 状 況. は,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に お け るの と 同 じ状 況 と いえ る。 そ の た め,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に基 づ く是 正 請 求 権 につ いて も,同 様 の 考 慮 が 必 要 とな る。 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に は,訴 訟 法 的 な 立 法 措 置 はな され て いな い。 その た め,現 行 の 民 事 訴 訟 法 の も とで の 訴 訟 の 移 送,弁 論 等 の 併 合 の 規 律 に従 う こ と とな る。 管 轄 権 の あ る裁 判 所 に訴 え が 提 起 され た場 合 の 移 送 に関 して は,民 事 訴 訟 法17条 に基 づ き,裁 判 所 は, 当事 者 や 証 人 の 住 所,使. 用 す べ き検 証 物 の 所 在 地 そ の 他 の事 情 を 考 慮 し. て,訴 訟 の 著 しい遅 滞 を さ け,又 は 当事 者 間 の 衡 平 を 図 るた め必 要 が あ る と認 め る と き,申 立 て に基 づ き,ま た は職 権 で 他 の 裁 判 所 に訴 訟 を 移 送 す る こ とが で き る。 弁 論 等 の 併 合 に関 して は,民 事 訴 訟 法152条 に基 づ き,裁 判 所 の 裁 量 の も とで 認 め られ る。 この よ う に,少 な くと も,現 行 法 の も と で も,訴 訟 の 移 送 お よ び弁 論 等 の 併 合 は可 能 で あ り,司 法 資 源 の 効 率 化, 判 決 内容 の 抵 触 防 止,事 業 者 の 応 訴 負 担 に対 す る考 慮 は,現 行 法 の も とで もな し得 る と考 え られ る。 その た め,重 複 訴 訟 に対 応 す るた めの 規 律 が 存 しな い こ とを も って 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 実 現 が,訴 訟 法 に お け る技 術 的 視 点 か ら否 定 さ れ る と は い い得 な い で あ ろ う。 む ろん,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 と 同様 に,移 送 の 要 件 の 緩 和 お よ び弁 論 等 の 併 合 の 強 制 の た めの 新 たな 立 法 が 必 要 とな るか 否 か を 含 めて,民 事 訴 訟 法 理 論 の も とで の さ らな る考 察 が 必 要 とな る。 ②. 処 分 権 主 義 ・弁 論 主 義 の 適 用. 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 は,消 費 者 団 体 が,消 費 者 一 般 にか わ って,そ の 拡. (1032)前. 述(3)(c)参 照 。. 69.
(20) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. 散 的 な 利 益 を 擁 護 す る と い う制 度 で あ る こ とか ら,実 質 的 に一一 定の公益性 を有 す る と考 え られ る た め,当 事 者 主 義 に基 礎 を お く処 分 権 主 義 ・弁 論 主 義 が 通 常 訴 訟 と 同様 に適 用 され るべ きか ど うか につ いて 実 質 的 な 観 点 か ら の 検 討 が 必 要 とな る,と され る(1033)。 しか し,こ の よ うな 考 慮 は,自. らの 固 有 の 利 益 と は完 全 に切 り離 され た. 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 実 現 の た めの 権 利 を 消 費 者 団 体 に認 め る消 費 者 団 体 制 度 で あ るか らこ そ必 要 とな る もの と考 え られ る。 さ らに,訴 訟 法 上 の 検 討 か ら,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 につ いて は,処 分 権 主 義 ・弁 論 主 義 の いず れ につ いて も,特 別 の 規 定 を 設 け る必 要 はな い と され て い る(1034)。これ らに 鑑 み れ ば,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 につ いて も, 当事 者 主 義 ・弁 論 主 義 に関 して 特 別 の 規 定 を 設 け る必 要 はな く,民 事 訴 訟 法 上 の 規 律 が その ま ま適 用 され る こ と に問 題 はな い,と の 帰 結 に達 しえ よ う。 ③. 判決効の客観的範囲. この 判 決 効 の 客 観 的 範 囲 につ いて,差 止 請 求 訴 訟 に お いて 問 題 とな るの が,差 止 判 決 の 対 象 と して 特 定 され た侵 害 行 為 と,差 止 判 決 を 無 視 して 現 実 に行 わ れ た侵 害 行 為 との 同一一 性 で あ る と され る(1035)。この 侵 害 行 為 の 同 一 性 を厳 密 に要 求 す る と,禁 止 され た侵 害 行 為 につ いて,被 告 の 側 で それ にわ ず か な 変 更 を 加 え て 行 為 を す れ ば,判 決 効 を 簡 単 にか わ しう る こ と と な る。 他 方 で,侵 害 行 為 との 同一性 を 厳 密 に要 求 しな い もの とす る と,判 決 効 の 客 観 的 範 囲 が 不 明 確 とな って,無 用 の 萎 縮 効 果 を も た らす お それ が (1033)な. お,消 費 者 団体 訴 訟 制 度 に 関 して この よ うな公 益性 に着 目 した 訴 訟 法. 上 の 論 点 が 立 て られ る こ と は,消 費 者 団体 訴 訟 制度 の実 体法 的 基 礎 を 考 え る に あ た って,前 掲 注(1020)に 示 した よ うに,行 政 の民 間 化 ・公 私 協 働 論 との 接 合 を 考 慮 に入 れ る必 要 性 を 裏 付 け る もの と も いえ よ う。 (1034)三. 木 ・前 掲 注(1016)「 立 法 的 課 題 」50-52頁 。. (1035)以. 下,消 費 者 団体 訴 訟 制 度 に 関す る判 決 効 の 客観 的範 囲 の 記 述 につ い て. は,三 木 ・前 掲 注(1016)「 立 法 的 課 題 」52-53頁 を 参 照 。. 70.
(21) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). あ る。 この 問 題 に対 して は,差 止 判 決 の 効 力 は,そ の 判 決 主 文 に記 載 され た侵 害 行 為 と 「核 心 」 を 同 じ くす る他 の 侵 害 行 為 に も及 ぶ と す る核 心 説 (ド イ ツ に お け る判 例 ・通 説)や,差. 止 判 決 の 対 象 とな る侵 害 行 為 を 抽 象. 的 に特 定 す る こ と に よ って 差 止 判 決 の 実 効 性 を 確 保 す る見 解,さ. ら に は差. 止 訴 訟 一般 に関 す る議 論 に お け る もの と して,一 一 定 の 基 準 の 下 に抽 象 的 な 特 定 で 足 りる とす る見 解 な どが 提 示 され て い る。 た だ し,い ず れ の 考 え 方 を と って も それ な りに問 題 の あ る こ と,お よ び こ う した 問 題 は,あ ら ゆ る 差 止 訴 訟 に お いて 一般 的 に生 じる もの で あ り,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 そ れ 自 体 の 導 入 の 妨 げ にな る もの で はな い,と され る。 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に 基 づ く是 正 請 求 権 も,作 為 ・不 作 為 を 対 象 とす る もの で あ る こ とか ら,同 様 の 問 題 が 生 じ る。 しか し,こ こで 重 要 とな るの は,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 につ いて,こ の 問 題 が その 導 入 の 妨 げ にな らな い と され て い る こ とで あ る。 そ うで あ るな らば,前 述 α)に示 した通 り,私 人 に固 有 の 実 体 私 法 上 の 権 利 を認 め,ま た, 私 人 個 々の 私 益 の 実 現 を 直 接 の 目標 に お いて いな い と い う意 味 にお いて 同 質 で あ る集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に関 して も,こ の 問 題 を も って 訴 訟 法 上 の 技 術 的 視 点 か らその 実 現 が 否 定 され る と まで は いえ ま い。 ④. 判決効の主観的範囲. 民 事 訴 訟 に お いて,確 定 判 決 の 効 力 は,原 則 と して 訴 訟 の 当 事 者 にの み 及 ぶ もの とす る相 対 効 の 原 則 が と られ て い る(1036)。 消費者団体訴訟制度 に つ いて,そ の 法 的 構 成 と して 固 有 権 構 成 を 前 提 とす る限 り,こ の 相 対 効 の 原 則 を 否 定 す る理 由 はな い と され る(1037)。しか し,実 質 的 な 問 題 と して, (1036)民. 事 訴 訟 法115条1項1号 (1016)「. (1037)以. 下,消 は,三. 立 法 的 課 題 」54頁. 。 伊 藤i・ 前 掲 注(1024)499頁,三. 木 ・前 掲 注. 参照。. 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に 関す る判 決 効 の主 観 的範 囲 の 記 述 につ い て. 木 ・前 掲 注(1016)「. 立 法 的 課 題 」54-55頁. 71. を参照。.
(22) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. 相 対 効 の 原 則 を 貫 いて 消 費 者 団 体 訴 訟 の 趣 旨 と 目的 が 十 分 に達 成 され るか ど うか,と. い う視 点 か らの 具 体 的 な 検 討 が 必 要 と され る。 まず,原 告 で あ. る消 費 者 団 体 が 勝 訴 した場 合 に は,相 対 効 の 原 則 を 貫 い た と して も,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 の 趣 旨 と 目的 は基 本 的 に達 成 され る。 他 方,原 告 敗 訴 の 場 合 に相 対 効 の 原 則 が 貫 か れ る とす る と,他 の 消 費 者 団 体 が 同一一 の 不 当条 項 等 につ いて 差 し止 め請 求 訴 訟 の 別 訴 を 提 起 す る こ とが で き る こ と にな る。 これ は,あ る適 格 団 体 の 拙 劣 な 訴 訟 追 行 の 結 果 を 受 け る こ とが な い と い う 意 味 で 消 費 者 サ イ ドに と って は有 利 とな るが,他 方,被 告 とな る事 業 者 に と って は再 三 再 四 の 応 訴 を 余 儀 な くされ る可 能 性 が あ る と い う点 で,過 大 な 負 担 を 強 い られ る こ と とな る。 平 成18年 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に お いて は,こ の 判 決 確 定 後 も繰 り返 し無 制 限 に提 起 され る こ と に よ る差 止 請 求 に係 る相 手 方 の 過 大 な 応 訴 の 負 担 に くわ え,矛 盾 判 決 が 併 存 す る可 能 性 の あ る こ と,訴 訟 経 済 に反 す る こ と等 の 弊 害 を 考 慮 に入 れ て,適 格 消 費 者 団 体 に認 め られ る実 体 権 と して の 差 止 請 求 権 の 行 使 に,一 一 定 の 制 約 が 設 け られ た(1038)。 具 体 的 に は,ま ず,当 該 適 格 消 費 者 団 体 も し くは第 三 者 の 不 正 な 利 益 を 図 りま た は 当該 差 止 請 求 に 係 る相 手 方 に損 害 を 加 え る こ とを 目的 とす る場 合 に,差 止 請 求 を す る こ と が で きな い(消 費者 契 約 法12条 の2第1項1号)。. ま た,あ る適 格 消 費 者 団. 体 に よ り差 止 請 求 権 が 訴 訟 等 に お いて 行 使 され,当 該 訴 訟 等 につ き既 に確 定 判 決 等 が 存 す る場 合 に,他 の 適 格 消 費 者 団 体 は,請 求 内容 及 び相 手 方 が. (1038)以. 下,平 成18年 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 に お け る差 止 請 求 権 の 行 使 の 制 約 に. 関 す る記 述 につ いて は,内 閣府 国民 生 活 局 消 費者 企 画 課 編 ・前 掲 注(1014) 240頁 参 照 。 な お,平 成20年 の 消 費者 契 約 法 改 正 に よ って,そ れ まで12条5 項 お よ び6項 と して 規 定 さ れ て い た差 止 請 求 の 制 限 に 関 す る規 定 が 切 り分 け られ て12条 の2と して独 立 して規 定 さ れ た(そ の 趣 旨 も含 め て 加 納 克 利 =佐 久 間 正 哉=安 井 正 也 「消 費 者 契 約 法 等 の 一 部 を 改 正 す る法 律 につ い て 」 NBL884号32頁(2008年)参. 照)。. 72.
(23) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). 同一一 で あ る場 合 に,差 止 請 求 を す る こ とが で きな い(消 費 者 契 約 法12条 の 2第1項2号. 本 文)(1039)。な お,他 の適 格 消 費 者 団体 に つ い て 確 定 判 決 等. が 存 在 す る場 合 で あ って も,当 該 確 定 判 決 等 の 基 準 時 後 に生 じた 事 由 に基 づ く差 止 請 求 権 の 行 使 につ いて は消 費 者 契 約 法12条 の2第1項2号 制 約 は及 ばな い(消 費 者 契 約 法12条 の2第2項)。. 本文の. この よ うな 差 止 請 求 権 の. 行 使 の 制 限 は,訴 訟 法 上 の 既 判 力 の 拡 張 で はな く,相 手 方 の 過 大 な 応 訴 の 負 担 な どの 弊 害 を 除 去 す る観 点 か ら政 策 的 に規 定 され た 実 体 権 自体 の 制 限 と さ れ る(1040)。しか し,こ の よ う な実 体 権 の 制 限 と解 す る こ と につ い て は,訴 訟 法 理 論 と して 既 判 力 の 拡 張 に よ って 処 理 す べ きで あ った との 批 判 が 示 され て い る(1041)。ま た,消 費 者 契 約 法12条 の2第2項. の 解 釈 につ いて. も議 論 が あ る(1042)。 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に基 づ く是 正 請 求 権 に つ いて み た と き,法 的 構 成 と して は,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 と 同 じ く固 有 権 構 成 を と る以 上,や. は り確 定 判 決 につ いて の 相 対 効 の 原 則 が と られ る こ と. とな ろ う。 しか し,こ れ ま た消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 と 同 じ く,実 質 的 な 考 慮. (1039)た. だ し,消 費 者 契 約 法12条 の2第1項2号. イ ∼ ハ に規 定 され て い る場 合. につ いて は,差 止 請 求 権 の行 使 の制 約 事 由 と して の 「 確 定 判 決 等 」 か ら除 外 され る。 また,消 費 者 契 約 法34条1項4号. に基 づ い て適 格性 の 認 定 が 取. り消 され た 適 格 消 費 者 団体 につ い て確 定 判 決等 が存 す る場 合 には,請 求 の 内 容 及 び相 手 方 が 同一 で あ っ た と き に も,他 の適 格 消 費者 団 体 に よ る差 止 請 求 権 の 行 使 は 妨 げ ら れ な い(消 費 者 契 約 法12条 の2第1項2号. ただ し. 書)。 (1040)内. 閣 府 国 民 生 活 局 消 費 者 企 画 課 編 ・前 掲 注(1014)241頁,三. 木 ・前 掲 注. (1014)65頁 参 照 。 (1041)三 32頁. 木 浩 一 ほか 「【座 談 会 】 消 費 者 団体 訴 訟 を め ぐ って 」 ジ ュ リ1320号31〔 上 原 敏 夫 発 言,三. 木 発 言 〕(2006年)。 三 木 ・前 掲 注(1014)65-66頁. は,実 体 権 の 制 限 で あ る と して も,そ の解 釈 お よ び運 用 に 際 して は,既 判 力 に関 す る従 来 の 議 論 や 考 え 方 を 基 礎 にす べ き とす る。 (1042)三. 木 ほか ・前 掲 注(1041)32-36頁. 発 言,三 木 浩 一・ 発 言,野. 〔 加 納 克 利 発 言,山 本 豊 発 言,上 原 敏 夫. 々 山宏 発 言 〕 参 照 。. 73.
(24) 近畿大学法学. 第57巻 第2号. が 必 要 とな る。 まず,平 成18年 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 と 同様 に,是 正 請 求 権 を 実 体 法 と し て 制 限 す る こ と に関 して は,本 稿 に お いて,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に 対 す る私 法 上 の 権 利 を,「 私 法 秩 序 の表 現 と して 当事 者 に認 め られ る私 法 上 の 権 利 」 と して 構 成 して い る こ とが 重 要 な 意 味 を 持 つ(1043)。本 稿 で は, 「私 法 秩 序 」 の 語 を,社 会 に お い て 自律 的 に形 成 され る 「私 人 間 の 関 係 に お いて 実 力 と して の 強 制 力 を 持 って 実 現 され るべ きで あ る と され る規 範 の 集 合 」 と して 用 いて い る。 そ して,こ の 規 範 の 実 現 は,実 力 と して の 強 制 力 を独 占す る国 家 の 義 務 と して 捉 え られ る。 この よ うな 私 法 秩 序 の 表 現 と して 当事 者 に認 め られ る私 法 上 の 権 利 につ いて は,そ の 内容 と異 な る 内容 を裁 判 規 範 と して 制 定 す る と い う形 で 国 家 が 介 入 す る こ とが 認 め られ る。 しか し,そ の 介 入 に は,「 国 家 で あ る こ と に よ る憲 法 上 の制 約」 と 「自律 的 に形 成 され た私 法 秩 序 の 修 正 で あ る こ と」 の それ ぞ れ か ら導 か れ る限 界 が 存 在 す る。 この 理 論 的 枠 組 に従 う と,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 につ いて,実 体 権 と して その 行 使 の 制 限 を す る た め に は, 「国家 で あ る こ とに よ る 憲法 上 の制 約 」に基 づ い て,立 法 が 必 要 とな る。 現 在 に お いて,そ の よ うな 立 法 はな され て いな い た め,実 体 権 と して の 制 限 を根 拠 と して この 権 利 の 実 現 を 否 定 す る こ と はで きな い。 他 方,訴 訟 法 の 観 点 か ら見 た場 合,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る 私 法 上 の 権 利 も,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 と 同様 に,固 有 権 構 成 と捉 え られ る た め確 定 判 決 につ いて の 相 対 効 の 原 則 を 否 定 す る理 由 はな い。 と は いえ, 実 質 的 な 視 点 か ら見 た場 合,消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 と 同様 に,判 決 確 定 後 も. (1043)以. 下,理 論 的 視 点 か らの 考 察 の 基 礎 とな る本 稿 の 理 論 的 枠 組 につ い て. は,本 章 第 一 節(宮 澤 ・前 掲 注(1020)60-70頁)を,よ 昭 『国 家 に よ る権 利 実 現 の基 礎 理 論 (勤草 書 房,2008年)を. 参照。. 74. り詳 し くは,宮 澤 俊. な ぜ 国家 は 民法 を 制 定 す るの か 」.
(25) 集 合 的 ・公 共 的 利 益 に対 す る私 法 上 の 権 利 の 法 的 構 成 につ いて の 一 考 察(5・. 完). 繰 り返 し無 制 限 に提 起 され る こ と に よ る是 正 請 求 に係 る相 手 方 の 過 大 な 応 訴 の 負 担 に くわ え,矛 盾 判 決 が 併 存 す る可 能 性 の あ る こ と,訴 訟 経 済 に反 す る こ と等 の 弊 害 が 生 じる可 能 性 を 否 定 す る こ と はで きな い。 この よ う に 考 え る と,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 につ いて,既 判 力 の 拡 張 等 の 根 拠 とな る規 定 の 立 法 が な され な けれ ばな らな い と い う結 論 を 導 くこ と も あ りう る よ う に考 え られ る。 しか し,集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に お け る判 決 効 の 主 観 的 範 囲 の 問 題 を 考 察 す る に あ た って は,平 成18年 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 にお いて,相 手 方 と通 謀 し た適 格 消 費 者 団 体 の 認 定 の 取 消 しと,そ れ に よ って 他 の 適 格 消 費 者 団 体 が 差 止 請 求 権 の 行 使 の 制 約 か ら解 放 され る こ と につ いて も規 定 され て い る こ とを 考 え に入 れ る必 要 が あ る。 消 費 者 契 約 法34条1項. は,適 格 消 費 者 団 体 の 認 定 を 取 り消 す 事 由 につ い. て 規 定 して い る。 そ して 同項4号. は,当 該 適 格 消 費 者 団 体 が,差 止 請 求 に. 係 る相 手 方 と通 謀 して 請 求 の 放 棄 又 は不 特 定 か つ 多 数 の 消 費 者 の 利 益 を 害 す る 内容 の 和 解 を した と き,そ の 他 不 特 定 か つ 多 数 の 消 費 者 の 利 益 に著 し く反 す る訴 訟 等 の 追 行 を 行 っ た と認 め られ る と きを,認 定 の 取 消 事 由 と し て 規 定 して い る(1044)。この 取 消 事 由 に よ って 当該 適 格 消 費 者 団 体 の 認 定 が 取 り消 され た場 合 に は,他 の 適 格 消 費 者 団 体 に よ る差 止 請 求 権 の 行 使 は制 約 され な い(消 費 者 契 約 法12条 の2第1項2号. ただ し書)(1045)。. 集 合 的 ・公 共 的 利 益 の 維 持 に対 す る私 法 上 の 権 利 に基 づ く是 正 請 求 権 に (1044)こ. の 理 由 と して,訴 訟 を こ の よ うに追 行 した 当該 適 格 消 費者 団 体 は,不. 特 定 か つ 多 数 の 消 費 者 の利 益 を代 表 して差 止 請 求権 を行 使 す るに ふ さわ し くな い存 在 と いえ る こ とが 挙 げ られ て い る(内 閣府 国民 生 活 局 消 費 者 企 画 課 編 ・前 掲 注(1014)370頁)。 (1045)こ. の 理 由 と して,差 止 請 求 権 に対 す る制 限 の前 提 とな り う る(当 該 事 案. に関 す る終 局 的 な実 体 判 断 の基 礎 とな り得 る)実 質 を備 え た 訴 訟 上 の 権 利 行 使 ・訴 訟 等 の 追 行 が い ま だ行 わ れ て い な い状 態 に 復 す る こ とに な る もの と評 価 で き る こ と が あ げ られ て い る(内 閣府 国民 生 活局 消 費者 企 画 課 編 ・/. 75.
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