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博 士 ( 工 学 ) 大 島 功 三

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 大 島 功 三

学 位 論 文 題 名

高 分 解 能 推 定 法 を 用 い た 電 磁 波 計 測 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  

近年 、エレクト口ニクスの進歩により、電磁波は通信、レー ダなど広い範囲で利用さ れ て い る 。 こ れ に 伴 い 、 電 磁 波 計 測 技 術 が 極 め て 重 要 と な っ て い る 。

  

マイ クロ波・ミリ波帯におけるデバイスの測定・評価にはネ ットワークアナライザが 多く用 いられている。これは周波数領域での電磁波の振る舞い を反射・伝送係数として 測定す る装置であり、アンテナ測定、電磁波回路測定などに用 いられている。ネットワ ークア ナライザにはもうひとつタイムドメイン機能と呼ばれる ものがあり、周波数領域 データ を高速逆フーリエ変換し、時間領域データを得ることが できる。この機能は、デ パ イ ス の 時 間 領 域 特 性 に 着 目 す る の で あ れ ば 、 非 常 に 有 用 な も の と な り え る 。

  

また 、あるデバイスにおける時間領域応答が必要でない場合 でも、時間領域応答は測 定の不 完全さを取り除くために用いられる。例えば、コネクタ による微小な反射は周波 数領域 では検出することが困難であるが、時間領域に変換すれ ばその反射は明らかにな る。こ の反射波は、ゲーティング機能で取り除くことができる。その後、高速フー1」エ 変換を することにより周波数領域データに戻すことができる。 このようにして、不完全 なコネ クタによる誤差を含まない周波数領域での測定が実現で きる。更に、夕イムドメ イ ン機 能は 電 磁波 散乱 のメ カニ ズム の解 析や レーダターゲ ットの識別に有効である。

  

しか し、正しくゲーテイング機能が作用するには、個々の応 答が十分に分離されてい る必要 があり、広い帯域の周波数領域データを必要とする。よ って、狭帯域アンテナ等 の測定 においては、限られた周波数帯域でしか周波数領域デー タが得られないため、フ ー リ エ 変 換 を 用 い た 方 法 で は 十 分 な 分 解 能 特 性 が 実 現 さ れ な い 。

  

この ような背景から狭い帯域で良好な特性が得られる高分解 能推定法のひ・とつであ る

MUSIC

ア ル ゴ リ ズ ム 、 お よ び 、 そ の 変 形 手 法 であ るRoot MUSICア ルゴ リズ ムを 用 いた時 間領域測定法が提案されてきたが、これらには「信号は 遅延時間による位相遅れ 以外の 周波数特性を有しない」という仮定がある。種々のデパ イスの反射・伝送測定に お いて 信号 が 上記 以外 の周 波数 特性 を有 する こと は多 々あ り、 この 場 合MUSICアルゴ リズム はその特性を劣化させることになる。っまり、十分な精度を持った遅延時間推定、

信号パ ラメータの周波数特性推定ができない。

  

そこ で、その問題点を解決するため、および、従来の遅延時 間推定のみならず周波数 特 性 ま で 推 定 す る こ と を 目 的 と し て 提 案 さ れ た の が 改 良 型

RooMUSIC

法 で あ る。 こ の手法 は、測定データに対し、周波数特性を表す重み関数の逆 特性を乗算することによ り、周 波数特性の劣化を打ち消すと共に周波数特性の推定を実 現している。この改良型

(2)

RooMUSIC法を用 いた高分 解能時間 領域推定 に着目して いるものが本論文である。

以下に本論文の要旨を述べる。

  第1章で は、研究 の背景と 目的を明らかにするとともに、本論文の概要を示す。

  第2章 で は、MUSICア ルゴリズム 、RootMUSICアルゴ ルズムを 用いた高 分解能時 間領域推定について述ベ、フーリエ変換法に比べて、良好な特性が得られることを示す。

従来、MUSICアルゴリズムは狭帯域アンテナ測定など、狭い帯域幅の周波数領域デー タしか得られないため、フーリエ変換法では十分な分解能特性が実現されないとき、高 分解能特性を得ることを実現するため用いられてきた。しかし、相当広い帯域の周波数 領域データが得られる被測定物の測定にーおいては測定に必要な帯域幅を狭めることは 重要ではない。すなわち、フーリ工変換法では最大限に可能な広帯域周波数領域データ を用いても分離できないほど接近している個々の応答をMUSICアルゴリズムを用いて 分離することが重要となる。第2章ではこのような立場からマイクロ波回路測定に対し、

MUSICアルゴ リズム、 および、RootMUSICアルゴリ ズムを適用 し、その有効性につ いて論ずる。また、信号数が多い場合には、MUSICアルゴリズムの特性が劣化するこ とから、ゲーティング機能を用いて信号数を制限し、より高分解能な推定を行う。

  第3章では、従来の遅延時間のみならず到来方向も同時に推定する二次元MUSICア ルゴリズムについて論ずる。一次元の場合同様、フーリエ変換法に比べて高分解能な推 定ができることを示し、室内伝搬実験についての適用結果を示す。第2章のマイクロ波 回路測定と同様にフーリエ変換(ゲーティング)と相補的に用いることにより高分解能 な推定ができることを示す。

  第4章では、MUSICアルゴルズムが、周波数特性を有する信号に対しては特性の劣 化をき たすこと を述ベ、 その解決 手法である改良型RootMUSIC法の適用法を定式化 してい る。改良 型RootMUSIC法で、周波数特性の逆特性を乗算する際、周波数特性 が事前に既知の場合、適当なパラメータにより周波数特性を表し、それを変数として遅 延時間と周波数特性の推定を行う。一方、周波数特性は事前に知ることは通常は困難で あることが多い。この場合には、周波数特性をR耐or展開をした後、改良型RootMUSIC 法を適用することを試みる。また、周波数特性を有する場合には、相関抑圧前処理での 誤差が生じる。そこで、周波数特性推定精度改善のため、推定したい信号以外をノッチ フィルタリングで除去することを示す。

  第5章で は、周波 数特性を 有する信 号に対し、 改良型RootMUSIC法を適用した数 値結果を示す。振幅に周波数特性を有する例として電磁波散乱を考える。具体的には、

導体球による後方散乱、導体矩形板、無限スト1」ップによる後方散乱に対し、改良型 ROOtMUSIC法を適 用する。 周波数特性を既知とした場合や直線近似した場合の推定 精度の違いやノッチフィルタルングを行った場合の推定精度の改善効果などについて 計算機シミュレーションにより示す。また、位相に周波数特性を有する伝送路である導 波管に 対し、改 良型RootMUSIC法を適用することを試みる。導波管内の不連続点に おける反射波は周波数によって位相速度が違うため、遅延時間がある幅をもって現れる。

このような場合、遅延時間を推定することは重要ではなく、どこに不連続点があるかと いうこと(位置情報)が重要となってくる。ここでは、2つの不連続点をもった導波管 モデル に対し、 改良型RootMUSIC法を適用して不連続点の検出を行う。また、ノッ チフィルタルングにより精度の向上を図っている。

  第6章で以上を要約している。  ー620−

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

高分解能推定法を用いた電磁波計測に関する研究

  近年、電磁波の計測技術が極めて重要となっている。こ、の背景には、高度な通信方 式 の 普 及 、 レ ー ダ 技 術 の 発 展 、 様 々 な 電 磁 波 応 用 技 術 の 進 展 が あ る 。   従来、電磁波の測定にはネットワークアナライザが多く用いられてきた。これによ り、各種の電磁波デバイス、アンテナ、電磁波散乱体の反射係数、伝送係数、散乱係 数が周波数の関数として求められる。近年開発されているネットワークアナライザに はタイムドメイン機能が付加されている。これは、測定された周波数領域データを高 速逆フーリエ変換し、時間領域データを得ることを可能とするものである。さらに、

タイムドメイン機能を用いるとゲーティングと呼ばれる時間領域でのフイルタリング が可能となる。すなわち、ある時刻に存在する応答が不要である場合、時間領域でこ の応答を除くことができる。たとえば、導体球による散乱波の中でクリーピング波の みを抽出するゲートをかけることによって正規反射波の応答を抑圧することができる。

その後、高速フーリエ変換を行うことによルクリーピング波のみの周波数特性が得ら れる。しかし、正しくゲーティング機能が作用するには、個々の応答が十分に分離さ れている必要があり、広い帯域の周波数領域データを必要とする。従って、狭帯域な マイクロ波回路等の測定においては、限られた周波数帯域でしか周波数領域データが 得られないため、フーリエ変換に基づくタイムドメイン機能を用いては十分な分解能 が実現されないという問題点があった。

  このような背景から狭い帯域で良好な特性が得られる高分解能推定法のひとっであ るMUSICアル ゴリズム 、および 、その変形手法であるRoot MUSICアルゴリズムを 用いた時間領域測定法が提案されてきた。

  本論文は、これらの高分解能推定法を用いた電磁波計測についての研究成果をまと め た も の で あ り 、 そ の 主 要 な 成 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。 11マ イ ク ロ波 回 路に ついてMUSICア ルゴリズ ムとRoot MUSICアル ゴリズムの 時 間応答推定の高分解能性を示した。これらの手法は数少ない信号を高い分解能で推定 する際には有効であるが信号数が多いときには特性が劣化する。ゲーティングを先に 行 う こと に よっ て 信 号数 を 減少 さ せ た後 、MUSICア ルゴ リ ズ ムあ る いはRoot     ‑ 621―

孝 彦

恭 精

川 藤

小 伊

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

MUSICア ルゴリズ ムを適用 すること によって性 能が改善 されるこ とを示し た。

2)将来の高速無線LAN等を実現するためには室内における多重波伝搬構造(多重波 の到来方向と遅延時間)の解明が必要となる。この推定を高分解能で行う二次元 MUSICアルゴリズムの定式化を行った。一般に室内での多重波数は極めて多いため、

全体を二次元逆フーリエ変換で大域的な推定を行い、その結果にゲーティングを適用 して小領域に分割した。各小領域に二次元MUSICアルゴリズムを適用することによ り、高分解能な伝搬構造の解明が可能であることを計算機シミュレーション、および、

実験により明らかにした。

3) MUSICアル ゴリズム 、および、Root MUSICアルゴリズムは、信号が伝搬遅延 時間による位相遅れ以外の周波数特性を有しないという仮定に基づいている。この仮 定が成立しない場合、これらの手法はその特性を劣化させることになる。この問題点 を解決し、周波数特性も同時に推定可能な改良型Root MUSICアルゴリズムの定式化 を行った。また、改良型Root MUSICアルゴリズムを適用する際に用いる周波数特性 の関数形が未知の場合には、Taylor展開近似を用いることを提案した。これらを電磁 波散乱問題等に適用し、遅延時間と周波数特性の同時推定が可能であることを明らか にした。

  これを要するに、著者はMUSICアルゴリズムに基づいた高分解能推定法の特性改 善、適用領域の拡張を行うなど、電磁波計測技術に関して有益な新知見を得たもので あ り 、 電 磁 波 工 学 の 進 歩 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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