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博 士 ( 法 学 ) 福 田 誠 治

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Academic year: 2021

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博 士 ( 法 学 ) 福 田 誠 治

学 位 論 文 題 名

十 九 世 紀 フ ラ ン ス 法 に お け る 連 帯 債 務 と 保 証

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 論 文 で 論 ず る の は 、 債務 者の 一人 に債 務 消滅 事由 が生 じた 場合 にお いて 、相 連帯 債務 者 と 債 権 者 間 の 法 律 関 係 がど うな るか であ る 。す なわ ち、 債務 者の 一人 に弁 済・ 更改 ・債 務 免除 とい った 事由 が 生じ た場 合に は、 相債 務者 へ影 響が 及ぷ場合と及ばない場合 がある。

民 法 は 連 帯 債 務 の 項 目 に お い て 、 事 由 ご と に 効 果 を 定 め て い る ( 民 法435条 か ら440 条 ) 。 そ れ で は 、 個 々 の 事由 につ いて 、そ の 効カ が絶 対効 (こ れは 、一 体型 絶対 効と 負担 部 分 型 絶 対 効 に わ か れ る )か 相対 効か をわ け る理 由は どこ にあ るの か。 これ が本 稿の 課題 で ある 。

  本 稿 で は 、 分 析 視 角 を 個々 の債 務消 滅事 由 の性 質論 に求 める 。す なわ ち、 一体 型絶 対効

・ 負 担 部 分 型 絶 対 効 ・ 相 対効 をわ ける 理由 は 、債 務消 滅事 由の 性質 にあ ると 考え るの であ る 。 従 来 の 議 論 に お い て は、 連帯 債務 を真 正 連帯 と不 真正 連帯 とに わけ たう えで 、分 析視 角 を 債 務 の 性 質 に 求 め て きた 。す なわ ち、 民 法の 規定 は真 正連 帯の 性質 に着 目し て定 めら れ たも ので あっ て、 性 質を 異に する 不真 正連 帯に は民 法が 適用されないとする。も っとも、

従 来 の 連 帯2分 論 に は 変 遷 が あ る 。 古 典 的 な 議 論 で は 、真 正連 帯と 不真 正連 帯と を対 置し て 、 債 務 の 性 質 上 の 差 異 (通 説で いえ ぱ、 主 観的 共同 目的 の有 無) を強 調し た。 しか し、

今 日 で は こ れ を 否 定 し て 、不 真正 連帯 にあ た る債 務に は性 質と して の共 通性 がな く、 真正 連 帯 で な い と い う 点 に 共 通項 をも つに すぎ な いと いわ れる 。そ の結 果と して 、今 日で は、

不 真 正 連 帯 債 務 に あ た る 債務 を類 型化 して 、 債務 の類 型ご とに 民法 の適 用問 題を 考え るべ き だ と さ れ て い る 。 し か し、 近時 の理 解で あ って も、 分析 視角 を債 務の 性質 に求 める こと に か わ り な い 。 す な わ ち 、古 典的 な議 論で あ れ近 時の 理解 であ れ、 真正 連帯 に債 務と して の 共 通 性 が あ っ て 、 そ の 性質 が効 カに っな が って いる との 考え 方を 前提 とし てい る。 本稿 は こ の 前 提 を 疑 っ て 、 債 務消 滅事 由の 効果 に つい ては その 事由 の性 質が 影響 を与 えて いる と の 発 想 に 立 っ 。 す な わ ち、 個々 の事 由に 関 する 理解 およ び多 数当 事者 関係 の利 益調 整が

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法律にあらわれているのであって、債務の性質論とは無関係だと考える。しかも、条文に 現れている利益調整は、真正連帯以外の多数当事者関係一般に及ぼすことができるような も のだと思 われる。 本稿では このような主張を、フランスのポティエおよび19世紀にお ける議論を通じて保証と対比しながら検証する。もっとも、本稿で提示する分析視角が正 しいとすれば、不可分債務や担保物権等を視野に含めたうえで議論を展開する必要があろ う。この点は将来の課題として、本稿では従来とは異ナょる視角からの検討が必要であるこ とを示すにとどまる。

  以下では、個々の事由ごとに検討結果を示す。

  弁済・代物弁済といった事由は一体型絶対効を生ずる。その理由にっき日本法では、債 権者に満足を与えて債権の目的を達することに求めている。これについては、フランス法 から次のような視角を借用できる。フランスで議論されているのは、代物弁済として給付 された物が追奪された場合や供託物が取戻された場合である。これらの場合も議論の射程 に含めれば、債権者に満足を与えるといった理由づけは道具として大きすぎる。債権者が 受けた給付は、現実には奪われているからである。フランスの議論から得られる具体的な 考慮要素としては、当該債務消滅事由の性質や相債務者等の利益保護がある。ここでいう 利益保護とは、保証人の求償期待を保護するといった実質的な利益衡量であって、日本で みられる債務の性質論(主観的共同目的の有無)とは次元を異にする。これらのことから、

債務消滅事由の性質に視点をおいて議論すべきだとする方向づけを主張する。具体的効果 をどう考えるべきかは、将来の課題とする。

  債 務免除は 負担部分 型絶対効 を生ずる(民法437条)。現行民法や1日民法の起草者は フランスの議論を受け継いで、請求・求償という手間の回避や無資力危険の回避に理由を 求めた。学説はこれを批判して、負担部分の中身を頭割と解したり、免除の合意を相対的 免除と解するといった主張がみられる。これは、債権者にとって連帯債務の効カが弱まる と いう観点 からの批 判である 。これについては、19世紀フランス法とポティエのそれぞ れ から次の 視角を得 ることが できる。19世紀法についていうと日本の起草者と同旨の説 明はフランスにみられた。その一方で具体的な解釈論をみると、日本の学説にみられるよ う な議論は すでに19世 紀にみら れた。そのさいには、債権者・被免除者・相債務者とい う3者の利益を調整するような形で議論が展開されている。なかでも特徴ある議論は、合 意の解釈方法をめぐるものである。すなわち、日本では、債務免除に満足効がないことを 重視して相対的免除を認める説が有カである。これに対してフランスでは、免除の合意が

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被免除者にとって全く実益を失ってしまうような解釈が否定されている。この点にっき日 本の相対的免除の議論では、被免除者が債権者からの請求を受けないというだけでも免除 の意味があるといわれている。これと同旨の議論はフランスでもみられたが、議論の射程 は被免除者が危機状態にある場合に限られている。そういった違いはあるものの、免除が 債権者にとっては権利放棄であることに着目して、免除の効カを限定的に捉えるという方 向では共通点がある。そして、債務免除の負担部分型絶対効をめぐる議論において、連帯 債務の性質論が意味をもっような説明はみあたらない。かえって、3者関係の利益調整と いう観点からすれぱ、不真正連帯にも通ずる問題であると考えられる。他方で、ポティエ からは別の観点を得ることができる。債務免除の負担部分型絶対効は、弁済者代位におけ る担保保存義務違反抗弁の適用例にすぎないという観点である。この観点からしても、真 正連帯と不真正連帯とでは免除の効カに差異を生じないことになる。もっとも、この観点 を日本法へ持ち込むことができるかは別に問題となる。これは、担保保存義務違反抗弁に 関するポティエの考え方は、債務設定時における求償期待を保護したものであって、日本 民 法5.04条 と 理 解を 異 にす る か らで あ る。 こ の 問題 の 検討 は 将 来の 課 題 とす る 。   相 殺援用権 について は、民法 は負担部 分の限度 でこれを認 める(436条2項)。これ に ついては 、19世紀フ ランス法 から2っの 観点を得 ることができる。すなわち、反対債 権をもつ債務者の無資力危険に対する回避手段を相債務者に認めるのは妥当か、訴訟経済 として求償金請求を省くことは重視すべきものかという観点がそれである。また、不真正 連帯債務の場合について、もし求償権の要件として事前通知義務を課さないとすれぱ、第 3の観点として、債権者の無資力危険に対する回避手段を反対債権をもつ債務者から奪う のは妥当かも問題になることがわかった。これらの観点からすれぱ、負担部分の限度で相 殺 援 用 権を 認 め るの も1っの政策 判断であ る。そし て、不真 正連帯に436条2項の類推 を認めるかの問題は、民法の利益調整方法を正当と考えるか否かに掛かっており、債務 の 性質論とは無関係だといえる。

  以上を要するに、連帯債務の効カをめぐる問題の所在は、当該事由の効カや多数当事者 関係の利益調整にあるといえる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

十九世紀フランス法における連帯債務と保証

  連 帯債 務の 債務 者の 一人 に弁済 ・更 改・ 債務 免除 とい った 債務消滅事由が生じた 場合 に、 他の 債務 者の 債務 は消滅 する か。 民法 典は この 問題 を、消滅事由ごとに規 定 し て い る ( 民法435条 以 下 ) 。 し か し 、 他の 債 務 が 、 あ る 事 由 で は 消滅 し( 一 体型 絶対 効) 、他 の事 由で はその 負担 部分 の限 りで 消滅 し( 負担部分型絶対効)、

さら に別 の場 合に は消 滅し ない( 相対 効) のは 、ど のよ うな 理由によるのか。かつ ての 議論 は、 連帯 債務 を真 正連帯 債務 と不 真正 連帯 債務 とに 分けたうえで、主観的 共同 目的 の有 無な どの 債務 の性質 によ って この 問題 を決 して いた。近時の学説は、

不真 正連 帯債 務の 諸場 合に は共通 性が ない とし 、債 務の 類型 に分けて考える。しか し 、 真 正 連 帯 債 務 に っ い て は 、 依 然 と し て 債 務 の 性 質 に よ っ て 議 論 し て い る。

  本 論文 は、 この 問題 に関 する一 九世 紀フ ラン ス法 の議 論、 その基礎になったポテ イェ の考 えを 検討 する こと によっ て、 従来 の議 論が 見落 とし ていた観点を指摘し、

問題 を考 える 新し い枠 組み を準備 しよ うと する 。な お、 この 連帯債務の問題は保証 債務 をめ ぐる 同様 の問 題と 合わせ て議 論さ れて きた ので 、本 論文は、保証の場合の 主た る債 務と 保証 債務 との 関係に も検 討を 広げ てい る。

  論 文は 、序 章で 、連 帯債 務の性 質論 をめ ぐる 日本 の学 説を 歴史的に整理し、その 問題 点を析出する。続く第一章と第二章で、゛ポテイエと一九世紀フランス民法学の 議論 を、 弁済 、更 改、 代物 弁済、 免除 、相 殺と いう 債務 の消 滅事由ごとに検討する

。一 九世 紀フ ラン スの 検討 の冒頭 では 、連 帯債 務性 質論 をめ ぐる債務単一性説と相 互代 理説 の論 争を 紹介 し、 それが 債務 消滅 事由 の効 カと は関 係がなかったことを示 す。 最後 に結 語で 、ポ テイ エと一 九世 紀フ ラン スの 議論 から 得た示唆に基づいて、

真正 連帯 債務 を相 互保 証と 性格付 ける 学説 を批 判す る。

川 林

   

   

瀬 東

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

   論文は、フランス法の検討の結果、次のことを明らかにした。連帯債務の債務の ーっが消滅したときに他の債務が消滅するか否かを決めるのは、債務の性質論では なくて、各債務消滅事由の性質論と関係者の利益調整である。債務の性質論が見ら れるのは、合意免除の理論構成との関連だけである。消滅事由の性質論というのは

、更改により旧債務が消滅し追奪されても復活しない点、代物弁済を更改と見る点 などである。利益調整の観点として、わが国では、免除の相対効を説くときに債権 担保機能が強調されるが、フランスでは被免除者の期待保護の方を考慮する。債権 者から訴求されないという利益だけを理由に免除の相対効を説く議論があるが、債 務者が危機状態の場合に限られている。他方、日本では看過されている、他の債務 者 の 求債 権 の確 保 、債 権 者の 担 保保 存 義務という 観点に基づ く議論が多 い。

   本論文は、従来の学説が前提にしていた連帯債務の性質論、その他のドグマを再 検討する意欲的なものである。債務消滅事由ごとに利益調整の観点から問題を決す るべきだという結論は、ある意味では当たり前ことであるが、本論文は、この結論 をフランス法の詳細な検討によって検証した。厖大な文献の網羅的な渉猟と丁寧な 分析は、学説史研究として高い価値を有し、また、各学説の内在的な理解と整理、

消滅事由ごとの利害構造の析出は、鋭い指摘を随所に含み(代物弁済における追奪 の問題など)、日本民法の解釈論を考える際にも有益な観点を提供するであろう。

   本論文は、章・節の構成の再検討、文章表現の推敲の余地があり、形式的な完成 度が高いとは言えない。債務消滅事由にっいても、消滅時効、混同を扱っていない

(消滅時効にっいては、フランスでは、請求・時効中断の問題として議論している

からであるが)。さらに、本論文の課題設定を超えることになるが、請求、通知の

効果など債務消滅事由以外の検討が残され、また、日本民法の解釈論を提言するた

めには、日本の裁判例や連帯債務・保証契約の実態の分析、あるいはドイツ法の分

析が必要であろう。このような不十分さを残しているが、この問題に関する従来の

議論を大きく乗り越えるものであり、審査委員会は本論文が博士(法学)に値する

と判断した。

参照

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