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博 士 ( 法 学 ) 池 田 雅 則

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博 士 ( 法 学 ) 池 田 雅 則

学 位 論 文 題 名

集 合 財 産 担 保 に 関 す る 基 礎的 考 察

―日独諸制度の横断的比較―

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  集 合 動産 譲 渡 担 保を は じ め、 抵 当権、工 場抵当 および工 場財団 抵当なら びに企業 担保権 など は 、 いず れ も 複 数の 物 を 同時 にかつ 一体的 にその目 的物とし ようと する。こ の点に 着 目 す れ ば 、 こ れ ら の 担 保 権 を 「 集 合 財 産 担 保 」 と 呼 ぶ こ と が で き る 。   こ の よう な 担 保 目的 物 の 包括 的 な担保化 の要請 自体が従 来から もあった ことは明 らかで ある が 、 集合 動 産 譲 渡担 保 の 承認 ( 最 判昭 和54年2月15日 (1小 )民集33巻1号51頁および 最判 昭 和62年ll月10日 (3小 ) 民集41巻8号1559頁)以 来、実 務上ます ます重要 となっ てい る。

  と こ ろで 、 こ れ ら集 合 財 産担 保 をめぐる 従来か らの議論 は、複 数の物を 一括しよ うとす る法 的 根 拠お よ び 変 動す る 目 的物 に対す る担保 権の効カ に関して 行なわ れてきた 。たと え ば、 集 合 動産 譲 渡 担 保に お け る集 合物諭 、抵当 権におけ る「抵当 権と従 物」諭お よび「 分 離物 に 対 する 抵 当 権 の効 力 」 諭な らびに 工場抵 当におけ る「三条 目録の 意義」諭 などで あ る。 こ れ らの 議 論 は 、い ず れ も目 的物の 「一体 性」と「 変動性」 の確保 をどのよ うに調 懸 する の か とい う 点 で 共通 す る 。し かし、 従来の 議論は、 いずれも 個別の 担保手段 ごとに 行 な わ れ て お り 、 こ れ ら を 相 互 に 比 較 考 察 す る 視 点 を 欠 い て い た よ う に 思 わ れ る 。   そ こ で、 本 諭 文 にお い て は、 担 保手段の 相違を 超えた考 察およ びドイツ における 類似の 制度 と の 比較 考 察 を 行な っ た 。ド イツ法 をとり あげたの は、法制 度ない し法概念 がわが 国 と近 似 す るこ と お よ び民 法 制 定後 にドイ ツ法か ら学説継 受を受け たこと に基づい ている 。 考察 に 際 して は 、 集 合財 産 担 保に おける 「一体 性」と「 変動性」 の確保 という観 点から 、 当初 そ の 効カ が 及 ん でい な か った 物がそ の効力 範囲に加 わる「附 加」の 局面と、 それと は 逆に 、 担 保権 の 効 カ が及 ん で いる 物がそ の効カ の及ぷ範 囲から離 脱する 「分離」 の局面 と をとり あげた。

  こ の 考察 の 結 果 、第 一 に 、両 国 において 、民法 典制定以 前に一 旦認めら れていた 集合物 概念 が 、 民法 典 の 制 定を 通 じ て、 否定さ れたこ とが明ら かとなっ た。す なわち、 わが国 で も、 旧 民 法典 で は 集 合物 概 念 が法 定され ており 、物の一 種として 認めら れていた 。とこ ろ が、 現 行 民法 典 は 、 有体 物 概 念を 採用し 、集合 物概念を 否定した 。これ は、現行 民法典 の 起草に あたって ドイツ民 法典第 一草案を 参照し たとレ、 う事情 にその原因が求められる。ま た、 ド イ ツ法 に お い ても 、 普 通法 時代に は集合 物概念が 肯定され ており 、さまざ まに議 論 がな さ れ てい た 。 し かし 、 ド イツ 民法典 の起草 にあたり 有体物概 念が採 用された ことで 、 集合 物 概 念は 否 定 さ れた 。 こ の背 後には 、物権 概念の変 遷と人に よる直 接支配性 を物権 客

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体の要件と見る見解が存在していたと考えられた。このため、当事者の意思によって物概 念を変更することをドイツでは否定し、以後集合物概念は支持されることはなかった。

  第二に、ドイツの集合財産担保に関しては、次の二点が明らかとなった。第一点は、一 括化の根拠に関して、集合物概念が排除される傾向が強いことである。すなわち、商品倉 庫の譲渡担保の場合には「集合名称」が、抵当権の場合には「従物概念」が、そして用益 賃貸借質権の場合には「屈具概念」がそれぞれ用いられている。第二に、目的物の変動の うち、「分離」に関レて、集合財産が利用目的である(利用型集合財産担保)のか、処分 目的である(処分型集合財産担保)のかで、効カの相違が生じている。というのは、効カ の範囲からの離脱に関して、前者では利用可能性の停止ないし消滅をもたらす搬出という 事実が重視されるのに対して、後者では、動産の処分権限の授与とその行使による動産の 処分という事実が重視されているからである。また、この相違は、動産取得者の保護要件 の相違に結びっく。後者の場合には処分を本質とするために必然的に取引の安全を重視せ ざるをえないのに対して、前者の場合には動産の利用可能性を確保するために経営体の維 持が重視されるからである。

  第三に、わが国の集合財産担保に関しては、次の四点が明らかとなった。第一に、ドイ ツと比べて、集合物概念を排除する傾向が弱く、また、さまざまな法形式の担保手段が用 いられている。第二に、一物化の根拠に関して、集合物概念以外の概念も用いられている

。たとえば、「工場財団」概念および「企業の総財産」概念である。しかし、「財団」概 念では、一物化を確保するために目的物の変動を基本的に認めず、逆に、「企業の総財産

」概念は、目的物の変動を確保するために一物化を断念している。集合物概念はこの中間 に位置し、いわゆる「二重帰属」状態を承認することによって一物化と目的物の変動を確 保しようとする。第三に、このことは、目的物の変動に対する担保権の効カに関しても当 然に影響を及ぼしている。すなわち、工場財団抵当では、目的物の変動を基本的に認めて おらず、逆に、企業担保権では、目的物の変動を自由に認め、そのために担保椎の効カは 非常に弱いものとなっている。さらに、抵当権、工場抵当および集合動産譲渡担保は、こ の中間にありながらも、その効カの点では一致していない。第四に、しかし、これらの集 合財産担保は、ドイツにおけると同様に、利用型と処分型とに分けることができる。前者 に該当するのは、抵当権、工場抵当および工場財団抵当であり、後者に該当するのは、集 合動産譲渡担保である。もっとも、企業担保権は、このいずれの性質も有する中間的なも のと評価せざるをえない。

  以上、本諭文では、ドイツとわが国の集合財産担保諸制度を比較考察しヾ・「一体性」と

「変動性」の確保の観点から、集合財産担保が利用型と処分型に類別され、それぞれに異 なった効カを認める必要性のあることを明らかにすることができた。両者の類別は、担保 目的物の性質が利用目的であるのかそれとも処分目的であるのかによる。具体的には、「

価値の十a」の有無により判断される。すなわち、在庫商品などの場合には「価値の十a

」は認められず、工場の機械などの場合には認められる。この類別の結果、利用型の場合 には、利用可能性の停止ないし消滅をもたらす動産の搬出という事実の発生によって担保 権の効カが当該動産に及ばなくなる。これに対して、処分型では、設定者の経済活動の維 持のために必要な動産の処分授権および権限の行使としての動産の処分によって担保権の 効カの及ぶ範囲から離脱することになる。っまり、担保権の効カを限界づける基準は、類 型に応じて異なることになる。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    吉 田克 己 副査   教授   松久三四彦 副 査    教授    小 川浩 三

文 題 名

集合財産担保に関する基礎的考察

―日独諸制度の横断的比較―

  最 高 裁 が 有効 性 を 承認 し た こと が 契 機と な って 、近時 、集合動 産譲渡 担保の効 カに関す る 議論 が 盛 ん であ る 。 とこ ろ で 、一 個 の 物で は なく、 複数の物 を一括し て担保 にとる手 段 は 、集 合 動 産 譲渡 担 保 に限 定 さ れず 、 工 場抵 当 権、工 場財団抵 当権や企 業担保 権など、 他 に もあ る 。 ま た、 抵 当 権と 従 物 とい う 古 くか ら の論点 も、同様 に複数の 物に対 する担保 権 の効 カという 問題にか かわる 。本論文 は、こ れらの担 保制度 を全体と して「集 合財産担保」

と 名付 け 、 こ れら を 総 合的 に 比 較研 究 す る中 で 、それ それの制 度の位置 づけを 明確にし 、 そ のよ う に し て効 力 論 を中 心 と する 各 制 度の あ るぺき 姿を解明 しようと する。 それは、 従 来 の研 究 が 、 これ ら の 諸制 度 を 個別 的 に 扱う に 止まり 、それら を相互に 比較考 察する視 点 を欠 いていた という批 判的観 点に基づ く意欲 的な試み である 。

  ま ず 、 第1章 にお い て 上記 の よ う な問 題 意 識が 示 さ れた の ち 、第2章 にお い て 、集 合 財 産 担保 制 度 の 基礎 と な る物 概 念 が検 討 さ れる 。 その検 討によれ ば、ドイ ツにお いては、 普 通 法の 時 代 に 集合 物 概 念が 肯 定 され て い たが 、 ドイツ 民法典の 起草に際 して有 体物概念 が 採 用さ れ た 結 果、 集 合 物概 念 は 否定 さ れ た。 こ の背景 には、自 然科学的 観点か らの物概 念 と 直接 支 配 を 中心 と す る物 権 概 念が あ り 、か か る見解 は、その 後も維持 されて いる。こ れ に 対し て 、 日 本の 場 合 には 、 民 法典 制 定 時に は 、ドイ ツになら って有体 物概念 が採用さ れ て 集合 物 概 念 が否 定 さ れた に も かか わ ら ず、 そ の後の 学説は、 むしろ集 合物概 念を肯定 す る傾 向にあり 、この点 でドイ ツとは対 照的な 展開を示 してい る。

  3章 に おい て は 、集 合 動 産譲 渡 担 保、 登 録 質権 、 従 物法 理 を 対 象と し て、ド イツの集 合 財産 担 保 制 度が 分 析 され る 。 その 結 果 、ド イ ツでは 、ここで も集合物 概念を 極力避け て お り、 こ の 領 域で の 担 保化 と い う実 際 上 の要 請 に対し ては、従 物概念や 属具概 念また「 集 合 名称 」 と い う集 合 物 に代 わ る 概念 を 用 いて い ること が明らか にされる 。また 、包括的 な 担 保化 の 後 に 目的 物 か らの 分 離 が生 じ た 場合 の 効カの 検討から 、利用型 集合財 産担保と 処 分 型集 合 財 産 担保 と い う二 類 型 が析 出 さ れる 。 前者に おいては 、分離動 産に対 する担保 権 の 効カ の 有 無 を判 断 す るに 当 た って 、 分 離動 産 の利用 可能性の 停止ない し消滅 をもたら す 搬 出が 重 視 さ れる 。 こ れに 対 し て、 後 者 にお い ては、 動産の処 分権限の 付与と その行使 に

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よる処分が重視されるのである。動産取得者の保護要件もこのニつの類型に応じて異なり、

前者の場合には動産取引の安全よりも経営体の維持が重視されるのに対して、後者の場合 には本質 的に担保 対象動産の 処分が前 提となる ため、動 産取引の 安全が重視される。

  次いで、第4章において、日本の集合財産担保制度が取り上げられる。集合動産譲渡担 保、従物法理、民事特別法(工場抵当、工場財団抵当、企業担保法)が具体的検討の対象 である。これらの検討の結果、日本においては、ドイツとは異なり、これらの担保化を確 保するために集合物概念を用いる傾向があること、しかし、そこでの集合物概念は、内容 が多様であることが指摘される。たとえば、集合物自体の所有権と個別動産の所有権との

「二重帰属」を認める場合がある一方(集合動産譲渡担保における判例・通説)、「二重 帰属」を認めず個別動産を固定的に扱う場合もあるのである(財団抵当における財団概念)。

他方、担保目的物が設定者の経営にとって有する意味に応じた、利用型集合財産担保と処 分型集合財産担保という二類型は、日本でも見出される。この二類型に応じて、担保権の 効カもほぼドイツと同様な特徴を示すが、多少の相違もある。

  最後に、以上のような日独諸制度の横断的比較を通じて、集合財産担保の今後の解釈論 に関する基本的方向づけが提示される。そこで強調されるのは、利用型集合財産担保と処 分型集合財産担保という類型論である。そして、この二類型の区別の基準、それぞれの類 型における担保権の効力諭に関する基本的考え方が示される。

  本論文は、視野の広い、かつ、丹念な分析によって、この領域におけるこれまでの研究 水準を大きく引き上げたものと評価することができる。とりわけ次の諸点を指摘すること ができよう。

  第一に、本論文は、複数の物に対する担保を「集合財産担保」という概念でくくるとと もに、その相互の比較という斬新を視角に基づく総合的な検討を行っている。このような 研究は、従来には見られないものである。上の視角に想到すること自体は、それほど困難 なことではないであろう。しかし、この視角に基づぃて実際に諸制度の比較を行うことは、

それが要請する作業量を考えるならば、きわめて困難な課題である。本論文は、ドイツと 日本を対象としつつ、膨大な文献と資料の渉猟に基づいて、かかる困難な課題をほぼ満足 すべきレベルで達成している。そのような中で、たとえば日本における集合物概念の内容 の多様性などの貴重な知見が示されている。

  第二に、本論文は、上のような比較研究に基づぃて、利用型集合財産担保と処分型集合 財産担保という類型論を説得的に提示している。細かな解釈論の提示は今後め課題として 残されているとはいえ、この類型諭は、今後の豊かな成果をすでに感じさせるものとなっ ている。

  第三に、本論文の最大のメリットは、上記のように諸制度の横断的比較にあるが、その 前提としての個々の制度の検討においても、これまでの研究に貴重な知見を付け加えるも のが少なくをい。たとえば、ドイツ民法典の立法過程にまで遡り、かつ、その後の豊富な 判例の詳細な紹介に基づくドイツ従物理論の検討は、それ自体としても十分な存在意義を 持つものとなっている。

  以 上 か ら 、 審 査 委 員 会 は 、 本 論 文 が 博 士 ( 法 学 ) に 値 す る も の と 判 断 し た 。

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