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ヒト赤白血病細胞株(

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 小 川 貴 史

学 位 論 文 題 名

ヒト赤白血病細胞株(K562 )の赤芽球系分化誘導過程に おける鉄関連蛋白の動態に関する研究

学位論文内容の要旨

    緒 言     一

  鉄 は 細 胞 の 増 殖 、 分 化 に 必須 の 要 素 で あ る が 、 過 剰 の鉄は 致死 的 細胞 障 害 を も た ら す こ と も 事実 で あ る 。 そ の た め に 細 胞内鉄 濃度 は 鉄貯 蔵 蛋 白 で あ る フ ェ リチ ン(Ft)と鉄 搬送蛋 白で ある トラン スフ ェ リ ン と に よ っ て 厳 格 に 規 定 さ れ て い る 。 さ ら に 、 近 年 に な っ てFt mRNAの5.untranslated region(UTR)、 ト ラ ン ス フ ェ リ ン 受 容 体   (TfR) mRNAの3.UTRにIron Responsive Elements(IRE)と 呼 ば れ る ス テ ム ル ー プ 構 造 の 存 在 が 明 ら かと な り 、 こ のIREに 細 胞 質 内 蛋白 で あ るIRE‑binding protein(IREーBP) が 結 合 ま たは解 離す る こ と に よ っ て 両mRNAの 翻 訳 が 調 節 さ れ 、 細 胞 内 鉄 濃 度 が 一 定 に 保 たれ て い る こ と が 解 明 さ れ てい る 。 し か し 、 こ のIRE/IRE‑BP相互 作 用の 細 胞 分 化 に お け る 役 割 につ い て は 、 現 在 の と こ ろ 、明ら かで は ない 。 そ こ で 本 研 究 に お い ては ヒ ト 赤 自 血 病 細 胞 株 で あるK562の 赤 芽 球 系 分 化 誘 導 過 程 に お け るFt、TfR、IRE‑BPのmRNAの 発 現 量 お よ びIRE‑BPのIREに 対 す る 結 合 親 和 性 の 経 時 的 変 化 を 比 較 検 討 し た。 さ ら に 培 養 液 中 に 過 剰 の鉄 、 あ る い は 鉄 キ レ ー ト 剤を加 えた 状 態で 同 様 の 解 析 を 行 っ て 検 討し た 。

    方 法

1) 細 胞 培 養 お よ び 分 化 誘 導

  K562を10%FBS含 有RPMI16 40培 地 中 で 培 養 し 、 対 数 増 殖 期 に 酪   酸 ナ ト リ ウ ム を 終 濃 度ImMに な る よ う に 加 え て 、 さ ら に4日 間 培   養 し た 。 分 化 誘 導 の 判 定 の た め にB en zidine染 色 と 、Oxyhemo‑

  glo bin法 に よ る 細 胞 内 ヘ モ グ ロ ビ ン 濃 度 の 測 定 を 行 っ た 。 2) 細 胞 表 面 抗 原 の 解 析

  酪 酸 ナ ト リ ウ ム 添 加 後 のK562を 経 時 的 に 回 収 し 、Flow cytometry   法 に よ っ て 細 胞 表 面 のGlycophorinA抗 原 、TfR抗 原 の 陽 性 率 の 変   動 を 解 析 し た 。

3)mRNAの 発 現 量 の 解 析

  酪 酸 ナ ト リ ウ ム 添 加 後 、 経 時 的 に 細 胞 を 回 収 し 、RT‑PCR法 を 用     い てTfR、Ft、IRE―BPのmRNAの 発 現 量 を 半 定 量 的 に比較 検討 し

(2)

    た 。 同 時 に p ‑ Ac tinを 増 幅 し 、 内 部 標 準 と し た 。 4)Gel  Retardation AsS ay

  IRE‑BPのIREに対 する結合親和 性を検討するた めにGel Retarda‑

  tion Ass ayを行った。すなわち、32Pで標識したIRE  tr anscriptを   合成し、経時的に回収したK562から抽出したcytoplas mic  Iys ate   と混合して室温で30分間反応させた後、4% polyacrylamide gelに   て 電 気 泳 動 を 行 い 、 オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ イ ー で 解 析 し た 。 5)鉄または鉄キレート剤の添加

  培 養液中の鉄濃 度の影響を検討するために酪酸ナトリウム添加と   同 時に鉄としてHolo Transferrin(Tf)を終濃度lOOyg/mlになるよ   う に添加した細 胞と鉄キレート剤であるメシル酸デフェロキサミ   ン(DF X)を終濃度60pl,Mになるように添加した細胞について同様の   解析を行った。

    結果および考案

  本 研究ではK562に酪酸 ナトリウムを添加することによりヘモグ口 ビン合成の亢進 と増殖抑制が おこることを確認した。Flow cytome‑

tryに よる検討では 細胞表面GlycophorinA抗原陽性率の 増加が認め られ、K562の赤芽球へ の分化を示唆 する結果であ った。一方、TfR 抗原陽性率の変 動は認められ なかった。この点については、K562は 強い増殖能を有しており、最初からTfR抗原陽性率が高く、そのため に分化を誘導し てもFlow cytometryによる測定上、その陽性率に変 動が認められ難かったと考えられた。

  RT‑ PCR法での 検討ではTfR mRNAの発現量 は初期にいっ たん低下 し、再度上昇を 認めるものの 酪酸ナトリウム添加前の発現量に比較 して 亢進 は 認め ら れな か った 。TfR mRNAの発現が 亢進しなかっ た 理由として、K562は増 殖能が強いために当初より鉄要求性が高く、

本実験における条件下ではTfRの生合成を高める必要がなかったので はないかと推測された。Gel retardation  as sayでは12時間後をピーク と し たIRE‑BPの 結 合 親 和 性 増 強 が 認 め ら れ た 。 こ の 増 強 はTfR mRNAの 安 定 性 を 高 め る こ と に よ り 、24時 間 以 降 の 細 胞 でTfR mRNAの発現を回復させたものと考えられた。

  次に、酪酸ナトリウムと同時に.Tfを添加したK562で検討を行った。

分化 に関 し ては 酪 酸ナ ト リウ ムを単 独で添加した 細胞と同程度の Benzidine陽性率が認められたが増殖については鉄自体の細胞毒性に 基づ く と考 え られ る 、よ り強 い 抑制 が 認め ら れた 。RT―PCRで は TfRmRNAの 発現 が3〜48時間 の 細胞で抑 制されているこ とが認めら れた。この細胞 では多量の鉄 の供給が得られており、同時に増殖抑 制がより強くか かっているた めに鉄の要求性が、さらに低くなって この抑制が生じたと推測された。一方、IRE−BPの結合親和性は48〜 96時 間後 に 著明 な 増強 を 認め た。 こ の増 強 は96時間 後 のTfRmRNA の 発 現 の 回 復 に 関 与 し た 変 化 で あ る と 考 え ら れ た 。

(3)

  さ ら に 酪 酸 ナ ト リ ウ ム と 同 時 にDFXを 添 加 し たK562で 検 討 し た が 、DFXの 添 加 に よ っ て 鉄 の 供 給 が 低 下 し た た め にK562の 増 殖、 分 化 は と も に 抑 制 さ れ た 。RT‑PCRで はTfR mRNAの 発 現 は12〜48時 間 後 の 細 胞 で 著 明に 亢 進し て いる こ と が認 め られ た 。こ の 場合 は 供 給 さ れ る 鉄 量 が 不足 し てい る ため に 細 胞の 鉄 要求 性 が高 ま り、 こ の 亢 進 が 生 じ た も のと 考 えら れ た。 一 方 、IRE‑BPの結 合 親和 性 は12時 間後 よ り弱 い 増強 を 示し、48時間 後に|ま強 いピークを もって増強 す る こ と が 示 さ れ た 。 す な わ ち 、 結 合 親 和 性 もTfR mRNAの 発 現 と 同 様 に12〜48時 間 の 細 胞で 増 強し て おり 、 特に48時間 後 の細 胞 では 結 合 親 和 性 もmRNAの 発 現 も 著 し く 亢 進 し て い た 。 し か し 、12〜24時 間 の 細 胞 に お け るTfR mRNAの 発 現 の 亢 進 に 対 し て は 結 合 親 和 性 の 増強 は 弱く 、 この 発 現の 亢 進を 生 理的 なIRE/IRE‑ BP相互作用に よる 調 節 機 構 だ け で 説明 す るこ と は困 難 で ある と 考え ら れた 。 この 様 な d ys reg ulationが生 じてきた機序や、IRE‑BPの結合親和性の増強の意 義 に つ い て 今 回 の実 験 結果 か らは 明 ら かに し 得な か った が 、K562の 赤 芽 球 系 分 化 誘 導に 関 連し た 変化 で あ る可 能 性やK562の腫 瘍 細 胞と し て の 特 性 に よ る も の で あ る 可 能 性 が 考 え ら れ た 。   さ ら に 、IRE‑BP mRNAの 発 現 は0〜12時 間 で 軽 度 増 強 し24時 間 以 後 に 減 弱 す る 傾 向 を 示 し た が 、Tfあ る い はDFXを 添 加 した こ と によ る影響は顕 著ではなか った。

Ft mRNAの 発 現の 変 動は 、 ほとんど認められなかった。

  結語

  K562の赤 芽 球系 分 化誘 導 過程 に おけ る 鉄関 連 蛋 白の 動 態を 解 析し た 結果 、IRE/IRE‑ BP相互 作 用が 生 理的 な鉄濃度の 調節におい て重要 な 機 能を 果 たし て いる と 考え ら れた 。 さ らに 、 その 作 用以 外 にも 何 ら か の 役 割 を 果 た し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ヒト赤白血病細胞株 (K562 )の赤芽球系分化誘導過程に おける鉄関連蛋白の動態に関する研究

    I. 目 的

  細 胞 内 鉄 濃 度 は フ ェ リ チ ン ・ (Ft) と ト ラ ン ス フ ェ リン と によ っ て 厳格 に 規 定 さ れ て い る こ と が 知 ら れ て い る が 、 近 年 に な っ てFt mRNA5t末 端 、 ト ラ ン ス フ ェ リ ン 受 容 体 ( TfR mRNA 3. 末 端 に Iron Responsive Elements (IRE) と 呼 ば れ る 構 造 の 存 在 が 明 ら か と な り 、 こ のIREに 細 胞 質 内 蛋 白 で あ るIRE‑binding proteinIRE‑BP) が 作 用 す る こ と に よ っ て mRNAの 翻 訳 が 調 節 さ れ 、 細 胞 内 鉄 濃 度 が 一 定 に 保 た れ て い る 機 構 が 解 明 さ れ て き た 。 し か し 丶l乞 のIRE/IRE ‑BP相 互 作 用 の 細 胞 分 化 に お け る 役 割 に つ い て は 現 在 と こ ろ 明 ら か で は な い 。 そ こ で 本 研 究 に お い て は ヒ ト 赤 自 血 病 細 胞 株K562の 赤 芽 球 系 分 化 誘 導 過 程 に お け る / 、 鉄 関 連 蛋 白 の 動 態 に つ い て 検 討 し た 。

    II.方 法

1. 細 胞 培 養 お よ び 分 化 誘 導

  K56210ワ 。FBS含 有RPMI16 40培 地 中 で 培 養 し 、 対 数 増 殖 期 に 酪 酸 ナ ト リ ウ ム ImMを 加 え て 、 さ ら に4日 間 培 養 し た 。 分 化 誘 導 の 判 定 は べ ン チ ジ ン 染 色 と オ キ シ ヘ モ グ ロ ビ ン 法 に よ る 細 胞 内 ヘ モ グ ロ ビ ン 濃 度 の 測 定 に よ っ て 行 っ た 。

2. 細 胞 表 面 抗 原 の 解 析

  酪 酸 ナ ト リ ウ ム 添 加 後 のK562を 経 時 的 に 回 収 し 、Flow cytometry法 に よ っ て 細 胞 表 面 のGlycophorinA抗 原 、TfR抗 原 の 陽 性 率 の 変 動 を 解 析 し た 。 3.mRNAの 発 現 量 の 解 析

  酪 酸 ナ ト リ ウ ム 添 加 後 、 経 時 的 に 細 胞 を 回 収 し 、 RT‑PCR法 を 用 い て TfRFtIRE‑BP mRNAの 発 現 量 を 半 定 量 的 に 比 較 検 討 し た 。 同 時 に p Actinを 増 幅 し 内 部 標 準 と し た 。

4Gel Retardation Assay

  IRE‑BPIREに 対 す る 結 合 親 和 性 (IRE BP活 性 ) を 検 討 す る た め にGel Retard ationAss ayを 行 っ たo

5. 鉄 ま た は 鉄 キ レ ー ト 剤 の 添 加

  培 養 液 中 の 鉄 濃 度 の 影 響 を 検 討 す る た め に 酪 酸 ナ ト リ ウ ム 添 加 と 同 時 に

          西

(5)

鉄としてHolo Transferrin(Tf)lOOptg/mlを添加した細胞と鉄キレート剤で あるメシル′酸デフェロキサミン(DFX)60yMを添加した細胞について同様 の解析を行った。

III.結果および考案

  K562は酪酸 ナトリウム添 加後、ベンチ ジン陽性率、 細胞内ヘモグロ ビ ン 値が著増して おり、酪酸ナト リウム添加に よるK562の赤芽球系 細胞へ の分化を確認した。

  Flow cytometry法による解析では細胞表面Gly cop ho rin抗原陽性率は増 加して おり赤芽球系 分化を支持す る結果であった。TfR抗原陽性率は添加 前 より高率であ り、添加後も明 らかな変動を 認めなかった 。これはK562 の増殖 カが強いため に当初よりTfR抗原 陽性率が高く、Flow cytometry法 で の 解 析 で は 変 動 が 認 め ら れ 難 か っ た た め と 考 え ら れ た 。   RT‑ PCR法 によ る 解析 ではTfR mRNAの発 現量はぃったん 低下し再度上 昇してくるが亢進は認められなかった。Gel Retardation Assay法によって IRE‑BP活性を 検討したとこ ろ酪酸ナトリ ウム添加12時間後 にIRE‑BP活性 の 上昇 が 認め ら れた 。 この 活性 の 上昇はTfRmRNAの安 定性を高めると 考 え ら れ 、TfR mRNAの 発 現 の 回 復 と 矛 盾 し な い 結 果 と 考 え ら れ た 。   次に 酪酸 ナ トリ ウ ムと 同 時にTfま たはDFXを添加し たK562で検討を行 った。  Tf添 加細 胞 にお いて はTfRmRNAの 発現は長時 間にわたり抑 制されてお り 、IRE‑BP活 性 は48時 間 後 に 増 強 が 認 め ら れ た 。 こ の 活 性 の 上 昇 も TfRmRNAの 安 定 性 を 高 め る も の と 考え ら れ、TfR mRNAの96時間 後 から の発現の回復と矛盾しな.い結果であった。

  DFX添 加細 胞 ではTfRmRNAの 発 現は12〜48時 間 後に は 発現 が 亢進 して お り、IRE‑BP活性は48時間後 に増強していた 。この活性の 上昇は48時間 後 のTfRmRNAの発 現 の亢 進 と矛 盾 しない 結果ではあっ たが、12〜24時間 におけ るTfR mRNAの 発現の亢進に 対する活性は弱く、生理的なIRE/IRE‐ BP相互 作用による調 節機構だけで 説明すること は困難であると 考えられ た 。この理由に ついてはK562の赤芽球 系分化誘導に 関連した変化 である 可 能性やK562の腫瘍細 胞としての特性 によるもので ある可能性が 考えら れた。  また 、IRE‑BP mRNAの発 現 は分 化 誘導早期に軽度 の上昇を認め たが鉄 濃度の変化による影響は明らかではなかった。

  これら の検討結果か らK562の赤芽球系への分化過程においてIRE/IRE. BP相互作用は生理的な鉄濃度の調節において重要な機能を呆たしていると 考えら れた。しかし、その作用以外にも分化誘導あるいは腫瘍細胞の特性 に基づ くと考えられる何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。

  以上より本研究は博士(医学)の学位論文として妥当なものと判断され る。

参照

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