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ヒト骨髄間質細胞株BM01がヒト白血病細胞株K562の増殖に及ぼす影響 : 接着分子を介する作用

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Academic year: 2021

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全文

(1)

ヒト骨髄間質細胞株BM01がヒト白血病細胞株K562の

増殖に及ぼす影響 : 接着分子を介する作用

著者

井上 徹也

発行年

1995-03-23

(2)

氏 名・(本籍)

学位の種類

学位記番号

学位授与の要件 学位授与年月日 学位論文題目 井 上 徹 也(京都府) 博士(医学) 博士第182号 学位規則第4粂第1項該当 平成7年3月23日 ヒト骨髄間質細胞株BMOlがヒト白血病細胞株K562の増殖に及ぼす影響 ∼接着分子を介する作用∼ 審 査 委 員  主査 教授  服 部 隆 則 副査 教授  瀬 戸   昭 副査 教授  馬 場 忠 雄

論 文 内 容 要 旨

[目 的] 骨髄微小環境の中での骨髄間質細胞による造血の支持に、サイトカイン産生のみでなく、造血幹細胞 との細胞一細胞間接着あるいは細胞一細胞外基質間接着が重要な因子となっていることが明らかにされ ている。我々は、樹立ヒト骨髄間質細胞株BMOlと多分化能を有するヒト慢性骨髄性白血病由来細胞株 K562との共培養系を用い、骨髄微小環境における細胞一細胞間、細胞一細胞外基質間相互作用、さら に、そこに関与する接着分子についての検討を行った。 [方 法] K562細胞コロニー形成はメチルセルロース法で行いBMOl細胞層との共培養、BMOl培養上清添加で のコロニー形成能を検討した。さらに、液体培養で、K562単独、BMOl細胞層上での共培養、BMOl細 胞層とCyclopore膜で分離培養した後のコロニー形成能を検討した。次に、フローサイトメトリーにて、 BMOl細胞およびK562細胞の接着分子の発現を検討した。細胞接着阻害として、インテグリン抗β1鎖、 抗VLA−4a抗体、抗VLA−5a抗体、合成ペプチドRGDSを用い、51Cr binding assayにてK562細 胞のBMOl細胞層への接着能を、インテグリン抗β1鎖、抗VLA−4α抗体、抗VLA−5α抗体、合成 ペプチドRGDSで処理したBMOl細胞層上でメチルセルロース法によるK562コロニー形成能を検討した。 さらにK562細胞液体培養でも、K562単独、BMOl上での共培養、BMOlとCyclopore膜で分離培養し細 胞数の変化および形態の変化について検討した。 [成 績] K562細胞は、メチルセルロース法でクローナルな増殖を示し、この増殖は、BMOl細胞層との共培養 で抑制され、BMOl培養上清添加では、抑制は認められなかった。液体培養後のK562コロニー形成は、 接触共培養した群でのみ、抑制効果が認められ、分離培養した群では、抑制効果は認められなかった。 また、液体培養では、各群の細胞数の増加に差はなく、形態上の変化も認められなかった。フローサイ トメトリーによる検討で、K562細胞はインテグリンβ1鎖、VhA−5αを発現しており、BMOl細胞 は、インテグリンβ1鎖、VLA−4a、VLA−5aを発現していた。51Crbindingassayでは、抗β1 鎖抗体は、10〟g/ml以上で有意に接着阻害を認めたが、抗VLA−4α抗体も有意に接着阻害を認める ものの、抗β1鎖抗体よりも効果は弱く、抗VLA−5α抗体では有意な接着阻害は認められなかった。 −78−

(3)

RGDS添加群では、濃度に比例して接着阻害を認めた。コロニー形成では、抗β1鎖、、抗VLA−4a 抗体、抗VLA−5a抗体およびRGDSですべてにコロニー形成抑制の解除が認められた。 [考 案] K562細胞は、メチルセルロース法でクローナルな増殖を示し(K562−CFC)、このK562−CFCは、 BMOl細胞層の存在下では増殖抑制を受けた。現在、多くの液性造血調整因子が同定されているが、今 回の検討では、BMOl細胞単独培養上清中にはK562−CFCの抑制作用は認めなかった。また、液体培養 でBMOl細胞と接触共培養したK562細胞のコロニー形成は抑制されるものの、直接接触を阻害した後の K562−CFCは抑制されなかった。これらのことより、間質細胞株BMOlによる、K562細胞のクローナ ルな増殖抑制は液性因子産生によるものではなく、細胞一細胞間相互作用によるものと考えられた。今 までにも、細胞一細胞接着による増殖抑制の報告があるが、その抑制桟序についての詳細は未だ明らか にされていない。骨髄微小環境モデルにおいて、細胞一細胞間、細胞一細胞外基質間相互作用をっかさ どる、多くの接着分子が同定されている。なかでも、インテグリンは造血への関与が考えられている。 我々の検討では、インテグリンβ1鎖とVLA−5(I鎖はK562細胞、BMOl細胞ともに発現していた。 一方、VLA−4a鎖はBMOl細胞にのみ発現していた。51Crbinding assayでは、抗β1鎖抗体は有意 に接着阻害を認めたが、抗VLA−4α抗体では接着阻害を認めるものの、抗β1鎖抗体よりも効果は弱 く、抗VLA−5a抗体では有意な接着阻害は認めなかった。メチルセルロース法によるK562−CFCの 検討では、抗β1鎖抗体は濃度依存性にBMOl細胞によるK562−CFCの抑制を解除した。一方、抗VL A−4α抗体、VLA−5α抗体でも抑制解除効果を認めたが、その効果は抗β1鎖抗体よりも弱かった。 このことより、K562−CFCの抑制はK562細胞とBMOl細胞層間のβ1鎖を介する接着が、VLA−4a 鎖、5α鎖を介する接着よりも重要な要素となっていることが示唆される。実際、β1鎖のリガンドで あるフイプロネクチンのRGDドメインに結合する合成ペプチドRGDSを用いることにより、K562細胞 のBMOl細胞層への接着は強く阻害され、K562TCFCの抑制は解除された。今回、我々は、β1インテ グリンK562細胞のBMOl細胞への接着に関与することを示した。さらに、β1インテグリンを介する骨 髄間質細胞への接着がK562−CFCを抑制することを初めて明らかにした。しかし、その抑制シグナル 伝達が、接着分子により直接行われるのか、あるいは接着分子が、単に何らかの抑制因子との接着の補 助として働いているのかは明らかではなく、今後の検討が必要である。 [結 論] K562細胞のクローナルな増殖はBMOl細胞との共培養により抑制を受ける。この抑制効果はBMOl細 胞とK562細胞との直接接着によるものと考昇られ、BMOl細胞培養上清中の液性因子の関与は少ないと 考えられる。K562細胞のBMOl細胞への接着には、β1インテグリンが関与し、さらに、β1インテグ リンを介する骨髄間質細胞への接着がK562−CFCを抑制すると考えられる。

学位論文審査の結果の要旨

骨髄微小環垣のなかで、骨髄間質細胞による造血の支持に、サイトカインだけでなく、造血幹細胞と 間質細胞との細胞間接着、あるいは細胞外基質との接着が重要な因子であることが明らかにされている。 本研究は、正常ヒト骨髄間質細胞株であるBMOlとヒト慢性骨髄性白血病由来細胞株であるK562を用い、 両者を共培養することで、K562細胞の増殖に対するBMOl細胞の影響を、細胞間接着、細胞外基質との 接着と接着分子の観点から検討をおこなったものである。その結果、 ー79−

(4)

1)K562細胞はclonalに増殖しコロニーを形成するが、このコロニー形成はBMOl細胞と共培養するこ とで抑制された。 2)この増殖抑制は、BMOl細胞の単独培養の培養上清を添加することでは観察されず、また、両細胞 をCyclopore膜で隔離培養し非接触性にすることでもおこらなかった。したがって、この増殖抑制は 細胞の直接接着によるものであり液性因子の関与は少ないとされた。 3)K562細胞とBMOl細胞はインテグリンなどの接着分子を発現していることがflow cytometryによ る実験で示された。 4)BMOl細胞によるK562細胞の増殖抑制はインテグリンβ1鎖に対する抗体投与で有意に解除された。 以上より、造血幹細胞の増殖討節にはインテグリンによる細胞接着が重要な役割を果たしていると考 えられた。 本研究は、骨髄微小環境での造血細胸の増殖が、間質細胞と直接接着することで調節されることを実 験的に証明し、造血支持組織機構の解明についての手がかりを与えるものであり、博士(医学)の学位 論文として価値あるものと認められる。 ー80−

参照

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