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―鎮痛作用と発痛作用について一 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 ) 窪 田 一 史 学 位 論 文 題 名

実験動物の侵害受容反応に対するジメチルスルホキシド     DMSO) の作用に関する研究

―鎮痛作用と発痛作用について一 学位論文内容の要旨

  本研究は成熟ラット、マウスおよび新生ラットの侵害受容行動に対するDMSOの末梢 および中枢での作用について検討した。成熟ラットおよびマウスにおいて、様々な鎮痛 試験法が存在するが、本実験では足蹠皮下への発痛物質投与による鎮痛試験法を用いて DMSOの作用を調べた。一方、新生ラットで同様の方法を試みたが侵害受容行動を正確 に判別できなかったので、より判別しやすい侵害受容行動が生じ、正確にその行動を定 量化できる方法を考案した。これまでに新生ラットの侵害受容行動の性質を薬理学的に 詳細に解析した報告はない。そこで本研究では、新生ラットの侵害受容行動が各種薬物 でどのような影響を受けるのかについて、薬理学的解析を行った上でDMSOの作用を調 べた。さらに新生ラット摘出脊髄標本を用いて、電気生理学的手法により中枢神経系に おけるDMSOの作用について検討した。

1.ホルマリンをラットの後肢足蹠皮下に投与すると、侵害受容行動が生じた。DMSO   をホルマリンと同時に足蹠皮下に投与すると侵害受容行動が抑制された。このこと   は 、 DMSOは 末 梢 性 に 鎮 痛 作 用 を 起 こ す こ と を 示 し て い る 。

2.ホルマリンを新生ラットの後肢足蹠皮下に投与し、侵害受容行動を観察したがその   行動を正確に判別できなかった。それ故、発痛物質であるカプサイシンまたはホル   マリンを新生ラットの背部皮下に投与することで生じるもがき行動および引っ掻き   行動からなる体動を侵害受容行動として定量化する方法を開発し、まず各種薬物で   ど の よ う な 影 響 を 受 け る の か に つ い て 、 薬 理 学 的 解 析 を 行 っ た 。

3.カプサイシン誘発体動は〃オピオイド性の中枢性鎮痛薬により抑制された。しかし、

    ′

  非ステロイド性抗炎症薬および鎮静薬では抑制されなかった。ホルマリン誘発体動   は〃オピオイド性の中枢性鎮痛薬および鎮静薬により抑制されたが、非ステロイド   性抗炎症薬では抑制されなかった。局所麻酔薬をカプサイシンまたはホルマリン投

(2)

与部位に処置すると、どちらの体動も抑制された。

4. DMSOを背部 皮下 もし くは 腹腔 内に 投与 した とこ ろ、 カプ サイ シンま たは ホル マリ     ンに よる 体動 が抑 制さ れた 。こ れらの 結果 は、DMSOは局所麻酔作用もしくは、

  オ ピオ イド 受容 体ア ゴニ スト に匹 敵する 中枢 性鎮 痛作用を有している可能性を示し   て いる 。

5.ホ´レマリンを成熟マウスの後肢足蹠皮下に投与すると、成熟ラットと同様に侵害受   容 行 動 が 生 じ た 。DMSOを 脊 髄 クモ膜 下腔 内に 投与 する と、 ホル マリ ン誘 発侵 害受   容 行 動 は ま っ た く 影 響 を 受 け なかっ たが 、DMSOそ れ自 身で 侵害 受容 行動 を引 き起     こ した 。し たが って 、DMSOは 脊髄を 介し て鎮 痛作 用を引き起こさないこと、DMSO   は脊 髄に おい て鎮 痛物 質と して よりは むし ろ侵 害物 質として作用することが示され   た 。 お そ ら く 、DMSOは 脊 髄 よ り上位 の中 枢痛 覚伝 達経 路内 およ び末 梢神 経で その   鎮痛 作用 を発 揮す るも のと 推察 される 。

6.新 生ラ ッ ト 摘 出 脊 髄 標 本 に お い て、DMSOは 侵害 受容 反射 放電 であ る遅 い前 根電 位   を 増強 させた が、 痛み とは 関係 のな い反 射放 電で ある 単シナプス反射放電および多     シナ プス反 射放 電に は影 響を 与え なか った 。テ トロ ドトキシン存在下で、DMSOは   アセ チルコ リン 誘発 脱分 極を 増強 させ たが 、サ プス タン スP誘 発脱 分極 には 影響 を   与 えな かった 。

7. コ リン エス テラ ーゼ 阻害 薬の エドロ ホニ ウム もDMSOと 同程 度の 遅い 前根 電位 の増   強 作用 を示 した 。ア トロ ピン およ びへキ サメ トニ ウム 存在下で、エドロホニウムに   よ る 遅 い 前 根 電 位の 増 強 作 用 は ほぼ 完全 に消 失し たの に対 し、DMSOの作 用は 完全   に は消失 せず 、約500/0残 存し た。以 上の 結果 から 、脊 髄に おけ るDMSOに よる 遅い   前 根電 位の 増強 作用 の機 序に コリ ンエス テラ ーゼ 阻害 作用および侵害情報伝達経路   で の 伝 達 物 質 放 出 の 増 大 作 用 が 一 部 関 与 し て い る こ と が 考 え ら れ た 。

  本 研究 結果 は、DMSOが鎮 痛作 用を 発現 する ため の作用 部位 は脊 髄に はなく、脊髄よ り上 位の 中枢 痛覚伝達経路内および末梢神経にその場があることを示唆している。さら に、DMSOは脊 髄レベルでは鎮痛物質としてよりはむしろ侵害物質として作用すること、

その 作用 機序 にはコリンエステラーゼ阻害作用および伝達物質放出の増大作用が一部関 与し てい るこ とが 示唆 され た。DMSOをあ えて 鎮痛 薬とし て使 うの であ れば、末梢に限 定し て適 用す べき であ ると 結論 され る。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

中 里 幸 和 藤 永    徹 葉 原 芳 昭 伊 藤 茂 男

学 位 論 文 題 名

実験動物の侵害受容反応に対するジメチルスルホキシド (Drviso) の作 用に 関す る研究

―鎮痛作用と発痛作用について―

  本 研 究 で は 疎 水 性 物 質 の 溶 媒 、DMSOの 末 梢 と 中 枢 神 経 に 対 す る 作 用 を 、 成 熟 ラ ッ ト 、 マ ウ ス お よ び 新 生 ラ ッ ト の 侵 害 受 容 行 動 と 、 新 生 ラ ッ ト 摘 出 脊 髄 標 本 を 用 い た 電 気 生 理 学 的 手 法 に よ り 検 討 し た 。

1. ラ ッ ト 後 肢 足 蹠 皮 下 へ の ホ ル マ リ ン 投 与 は 、 侵 害 受 容 行 動 を 生 じ た が 、DMSO 同 時 投 与 に よ っ て 抑 制 さ れ た 。

2. 新 生 ラ ッ ト で は ホ ル マ リ ン の 後 肢 足 蹠 皮 下 投 与 は 、 明 確 な 侵 害 受 容 行 動 を 生 じ な か っ た の で 、 カ プ サ イ シ ン ま た は ホ ル マ リ ン の 背 部 皮 下 投 与 で 誘 発 さ れ る 体 動 を 侵 害 受 容 行 動 と し て 定 量 化 し 、 薬 理 学 的 解 析 を 行 っ た 。 即 ち 、 カ プ サ イ シ ン 体 動 は ル オ ピ オ イ ド 性 の 中 枢 性 鎮 痛 薬 で 抑 制 さ れ 、 非 ス テ ロ イ ド 性 抗 炎 症 薬 お よ び 鎮 静 薬 で は 抑 制 さ れ な か っ た 。 ホ ル マ リ ン 体 動 は ル オ ピ オ イ ド 性 の 中 枢 性 鎮 痛 薬 お よ び 鎮 静 薬 に よ り 抑 制 さ れ た が 、 非 ス テ ロ イ ド 性 抗 炎 症 薬 で は 抑 制 さ れ な か づ た 。 局 所 麻 酔 薬 の 局 所 投 与 と 、 DMSOの 背 部 皮 下 も し く は 腹 腔 内 投 与 は | 両 体 動 を 抑 制 し た 。 3. 成 熟 マ ウ ス の 後 肢 足 蹠 皮 下 へ の ホ ル マ リ ン 投 与 は 、 侵 害 受 容 行 動 を 引 き 起 し た 。 DMSOの 脊 髄 ク モ 膜 下 腔 内 投 与 は こ れ に 影 響 を 与 え ず 、 逆 に 侵 害 受 容 行 動 を 起 し た 。 4. 新 生 ラ ッ ト 摘 出 脊 髄 標 本 で 、DMSOは 侵 害 受 容 反 射 放 電 の 遅 い 前 根 電 位(slow VRP)を 増 強 さ せ 、 運 動 系 の 単 お よ び 多 シ ナ プ ス 反 射 放 電 に は 影 響 を 与 え な か っ た 。 テ ト ロ ド ト キ シ ン 存 在 下 で 、DMSOは ア セ チ ル コ リ ン 誘 発 脱 分 極 を 増 強 さ せ た が 、 サ ブ ス タ ン スP誘 発 脱 分 極 に は 影 響 を 与 え な か っ た 。

5. コ リ ン ェ ス テ ラ ー ゼ 阻 害 薬 の エ ド 口 ホ ニ ウ ム も DMSOと 同 程 度 のslow VRP増 強 作 用 を 示 し た 。 ア ト ロ ピ ン と ヘ キ サ メ ト ニ ウ ム 存 在 下 で 、 エ ド 口 ホ ニ ウ ム の 作 用 は ほ ぽ 完 全 に 消 失 し た が 、DMSOの 効 果 は 約50% 残 存 し た 。

(4)

  本研究結果は、DMSOが鎮痛作用を発現するための作用部位は脊髄にはなく、末梢 神経と脊髄より上位の中枢痛覚伝達経路内にその場があることを示唆している。これ らの成果は、DMSOの鎮痛作用に新知見を提供するものである。よって、審査員一同 は 、 窪 田 一史 氏 が 博 士 ( 獣 医 学 )の学 位を 受け る資格 が十 分あ ると 認めた 。

参照

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