論文内容要旨
CIA マウスの滑膜線維芽細胞における炎症性サイトカインに対する Triptolideの影響
薬理と治療 第43巻・第9号・1275~1281頁・2015年
生理系生理学生体制御学分野専攻 髙島将
関節リウマチ(RA)は多発性の関節炎を主徴とする全身症状を伴う自己 免疫性疾患である。病期が進行すると関節が変形し日常生活動作に大きな 障害を起こす。そのため早期診断と治療が重要である。現在,薬物治療と してメトトレキサートに代表される従来型抗リウマチ薬に加え生物学的 製剤(bDMARD)が用いられている。しかしながら bDMARDは患者の遺伝 子塩基型(SNP)により十分な効果が得られないことが問題となる。そのた めに治療薬物の選択肢を広げる観点から新たな薬剤の検討とエビデンス の構築が必要とされている。
中国ではRAを含む自己免疫性疾患に対し雷公藤が使われている。近年,
雷公藤からの抽出物であるtriptolideに抗炎症作用,免疫抑制作用がある ことが報告された。しかしながらその薬理作用についての検討は十分とは いえない。そこで本研究では RA の関節炎モデルである CIA マウスの滑 膜線維芽細胞を用い,炎症性サイトカインに対するtriptolideの影響を検 討した。
7週齢の雄性BALB/cマウスに関節炎惹起用モノクローナル抗体カクテ ルを投与し,3 日後に LPS を追加免疫し関節炎を惹起した。実験開始か ら 10 日目に両膝関節の関節軟骨から滑膜線維芽細胞を採取し,その 4-9 継代細胞を用いた。当該細胞を triptolide と LPS を含む培地で培養し,
炎症性サイトカインと転写因子の測定を行った。
線維芽細胞のtriptolideに対する感受性を把握する目的で,異なる濃度 の triptolide 溶液で細胞生存率を測定したところ trptolide0.5nM で有意 な細胞生存率の低下が認められた。よって 0.5nM が細胞毒性の発生する 臨界閾値と想定し,以降の検討を行った。
CIA マウス由来の線維芽細胞は健常マウスの線維芽細胞と比較して炎 症性サイトカインであるTNF-α,IL-1β,IL-6の分泌増加を認めた。こ れによりCIAマウス線維芽細胞が関節内に炎症性サイトカインを分泌し,
関節炎の進行を誘導,関節を破壊することが示唆された。また CIA マウ
ス線維芽細胞に triptolide を添加したところ LPS 誘発性サイトカイン分 泌は triptolide 濃度依存性に抑制され,triptolide が RA の関節滑膜線維 芽細胞に直接作用し,炎症性サイトカインの分泌を抑制することが示唆さ れた。さらに炎症応答や免疫制御において中枢的な役割を果たす転写因子 の NF-κB とリン酸化 IκB を検討した結果,triptolide 濃度依存性に発 現が減少した。NF-κB とリン酸化 IκB,TNF-αと IL-1βは正の autocrine loopを形成するが,いずれもtriptolideにより抑制されている
ことからNF-κBおよび非リン酸化IκBとの複合体からのリン酸化によ
るカスケードをtriptolideが阻害した可能性が示唆された。
本研究の結果,triptolide がCIAマウス線維芽細胞に直接作用して,炎 症性サイトカインのparacrineを抑制し,抗炎症性作用を示すこと判明し,
RAによる関節破壊を防ぐbDMARDとして有効である可能性が示唆され た。