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好塩 基球性自 血病細胞株

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 阿 部 朗 人

学 位 論 文 題 名

好塩 基球性自 血病細胞株 KU812 における チアゾリジンジオン化合物の作用

学位論文内容の要旨

  thiazolidinedione derivatives (TZDs)はインスルン非依存型糖尿病患者においてイン スリン抵抗性を改善する作用を有しており、血中グルコースを減少させると同時に血中トリ グリセ1」ドや遊離脂肪酸を減少させ、HDL「コレステロールを増加させる。現在、TZDsの ーつであるpioglitazone (PGZ)は糖尿病治療薬として用いられている。TZDsは核内ホル モン受容体スーパーファミ1丿ーのーつであるperoxisome proliferator‑activated receptor (PPAR)のァサプタイプに結合して活性化し、標的遺伝子の発現を調節する。PPARアの 標的遺伝子の多くは糖代謝および脂肪合成に関与しており、TZDsの抗糖尿病作用はPPAR アの活性化を介していると考えられている。PPAR丁は主に脂肪細胞に発現しており、先に 述べたように糖代謝や脂肪合成や脂肪細胞分化において非常に重要な役割を果たしている。

ところが、最近、PPARアは脂肪細胞以外の組織にも発現しており、PPARアの活性化は多 様な作用を示すことが報告された。そのため、′rZDsは糖尿病だけではなくアテ口ーム性動 脈硬化症やりウマチ性関節炎などの炎症性疾患や悪性腫瘍などの様々な疾患において新しい 治療薬となることが期待される。

  好塩基球やマスト細胞は花粉症などのアレルギー性疾患に関与していると考えられてお り、これらの細胞におけるTZDsの作用を検討することは非常に興味深く、意義のあること と思われる。しかし、好塩基球やマスト細胞に対するTZDsの作用についての報告は非常に 少なく不明な点が多い。筆者はTZDsは好塩基球やマスト細胞によるI型アレルギー反応も 抑制するという仮説をたて、TZDsのーつであるtroglitazone (TGZ)を用いて好塩基球性 自 血 病 細 胞 株KU812に 対 す る 作 用 を検 討 し たと こ ろ 、以 下 の 知見 が 得 ら れた 。 1.細胞増殖に対するTGZの作用

  KU812細 胞 の 細胞 増 殖 に対 す るtroglitazone (TGZ)、PGZおよ びrosigiltazone (RGZ)の3種 類の′rZDsの作用に っいて検 討した 。今回用 いた全 てのTZDsはKU812細 胞の増殖を濃度依存的に抑制した。細胞増殖抑制作用の強さはTGZ冫PGZ冫RGZの順とな り、TGZが最も強い細胞増殖抑制作用を示した。FACS解析の結果から、TGZは細胞周期 の進行をGl期で停止させることが分かった。細胞周期のGl期からS期への移行に重要な 役割を 果たし ているRb、cyclin Dl、cyclinEお よび転写 因子E2Fに対するTGZの作用 を検討した。ウェスターンブロット法によって検討したところ、TGZはりン酸化型Rbを 減少させ、濃度依存的にcyclinEを減少させた。一方、cyclin DlはTGZ処理により増加 した。E2Fの既知の標的遺伝子であるproliferating cell nuclear antigen  (PCNA)と B―MybのmRNA発現 をRT―PCR法で測 定する ことによ って、 間接的にE2Fの転 写活性 に対す るTGZの作用を 検討し たところ、TGZはE2F転写活性を抑制することが示唆され た。以上の結果から、TGZによる細胞増殖抑制機構として、cyclinEおよびりン酸化型Rb の減少によってE2F転写活性が低下した結果、細胞周期がGl期で停止し、細胞増殖が抑

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制されることが示された。

2. 好塩基 球分化に 対するTGZの作 用

  KU812細 胞 の 好塩 基 球 へ の分 化 に 対 するTGZの 作 用に つ い て 検討 し た 。 好塩 基 球分 化 の 指 標 と し て 高 親 和 性IgE受 容 体(FcE RI)の 発 現 、histamineお よ びcytokineの産 生 を 測 定 した 。RT―PCR法 、 ウ ェス タ ー ン プロ ッ ト 法 およ びFACS解 析 の 結果 か ら 、TGZは KU812細胞 内 部 で のFc£ RIaの 発現 を 増 加 させ る が 、 細胞 表面上 の発現 には全 く影響 を 与 え な いこ と が 分 かっ た 。 ま た、KU812細胞 に お い てFCE Rlaは 分 泌 型 とし て 存 在して い る 可 能性 が 示 さ れた 。 分 泌 型FC£ RIは血 液 中 で 遊離 のIgEと結合 して、 血中IgE濃 度 を 低下させ 、IgEに 対する 反応を抑 制する と考え られて いる。 ′rく氾 はKU 812細胞による histamine産 生 を 抑 制 す る こと を 見 い だし た が 、 この 機 構 と してHDC mRNA発 現 レ ベ ル で の 抑 制が 起 こ る ため と 推 定 された 。TGZはphorbol 12―myristate 13―acetate (PMA) とA23187と の 同 時 刺 激 に よ っ て 誘 導 さ れ たcytokine産生 を 転 写 レベ ル で 抑 制し た 。 cytokine産生抑制 作用の 強さはTGZ冫RGZ冫PGZの順で あった 。

  以 上の 結 果 を 考え あ わ せ ると 、TGZはKU812細 胞 の好 塩 基 球 への 分 化 を 負に 調 節す る こ とが推定 され、TZDsの抗 アレル ギー葉と しての 可能性 が示さ れたも のといえるだろう。

3.TGZの 作 用機 構 の 検 討

  TGZの 作 用 機 構 を 解 明 す る た め 、KU812細 胞 に お け るPPARの 発 現 、TGZの 作 用 と vitaminE骨 格 と の 関 連 、NF KBお よ びNFATの 活 性 化 に 対 す るTGZの 作 用 に つ い て 検 討 し た 。RT−PCR法 に よ っ て 、KU812細 胞 に お け るPPARの 発 現 を 検 討 し た と こ ろ 、 KU812細 胞 で はPPARア の発 現 が 検 出さ れ な か った 。 し た がっ て 、TGZはHt゜ ぷ ァ非 依 存 的 に 作用 し て レ ゝる こ と が 推察 さ れ た 。一 方 、PPARaやPPARロ の 発 現がTGZに よ って 抑 制 さ れ た こ と か ら 、TGZの 作 用 にPPARaやPPARロ が 関 与 し て い る 可 能性 が 示 さ れた 。 TGZはvitaminE骨 格 を 有 し て お り 、TGZの 作 用 にvitaminE骨 格 の 関 与 が 考 え ら れ る 。 そ こで 、tocopher01とTGZの 細 胞 増 殖抑 制 作 用 およ びcytokine産生 抑制作 用の強 さ を 比 較 検討 し た と ころ 、TGZの 作用 にvitaminE骨 格 は 直接 的 に は 関与し ていな いこと が 示 唆 され た 。 ′rく 泡 のc舛oklne産 生抑 制 機 構 をEMSA法に よ っ て 検討 し た 結 果、TGZは P116瓜 ア 非 依 存 的 に 、NF托BやNFATを介 し た 情 報伝 達 を 阻 害し て い る こと を 見 い だし た 。

  以 上 の 研 究はKU812細胞 に 対 す るTGZの 作 用 とそ の 作 用 機構 の 一 部 を明 ら か に したも のであ る。ま た、TZDsの 抗アレ ルギー 葉とし ての可 能性も 示され たとい えるだろう。今回 用 い た3種 類 のTZDsは 全 て 細 胞 増 殖 を 抑 制 し た が 、NF KBやNFATの 活 性 化 抑 制 はTGZ で の み 観 察 さ れ た こ と か ら 、KU812細 胞 に は ′rZDs共 通 の 作 用 部 位 とNFEBやNFAT活 性 化抑 制 の 原 因と な るTGZ特異 的 な 作 用部 位 が 存 在す る と 考えら れる。TZDsの作用 機構 の 全 貌 は ま だ 明 ら か に な っ て お ら ず 、 今 後 の 研 究 を 待 た な け れ ぱ な ら な い 。

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

原島 五十嵐 紙谷 井/口

学 位 論 文 題 名

秀吉 靖之 浩之 仁一

好 塩 基 球 性 自 血 病 細胞 株 KU812 に お け る チア ゾリジンジオン化合物の作用

  thiazolidinedione derivatives (TZDs)はイ ンス リン 非依 存型 糖尿病 患者において イ ン ス リ ン 抵 抗 性 を 改 善 す る 作 用 を 有 し て お り 、TZDsの ー つ で あ るpioglitazone (PGZ)は 糖 尿病 治療 薬と して 用 いら れて いる 。核 内ホ ルモ ン受 容体 スー パー フん ミリ ーの ーつ であ るperoxisome proliferator―activated receptor (PPAR)のァサブタイ プ はTZDsと 結 合 す る こ と に よ っ て 活 性 化さ れ、 標的 遺伝 子の 発現 を調 節す る。PPAR 7の 活 性 化 は多 様な 作用 を示 す こと が報 告さ れて おり 、TZDsは 糖尿 病だ けで はな くア テロ ーム 性動 脈硬 化症やりウマチ性関節炎などの炎症性疾患や悪性腫瘍な どの様々な疾 患に おい て新 しい 治 療薬 とな るこ とが 期待 され てい る。

  好 塩基 球や マス ト細胞は花粉症などのアレルギー性疾患に関与`してい ると考えられ てお り、 これ らの 細 胞に おけ るTZDsの 作用 を検 討す るこ とは 非常 に興味 深く、意義の あ る こ と と 思わ れる 。筆 者はTZDsは好 塩基 球や マス ト細 胞 によ るI型ア レル ギー 反応 も 抑 制 す る と い う 仮 説 を た て 、TZDsの ーつ であ るtroglitazone (TGZ)を用 いて 好塩 基 球 性 自 血 病細 胞株KU812に 対 する 作用 を検 討し たと ころ 、以 下の 知見 が得 られ た。

細 胞 増 殖 に 対 す るTGZの 作 用

    KU812細 胞 の 細 胞 増 殖 に 対 す るTGZ、PGZお よ びrosigiltazone (RGZ)の3種 類 のTZDsの 作 用 に つ い て 検 討 し た 。 今 回 用 い た 全 て のTZDsはKU812細 胞 の 増 殖 を 濃 度 依 存 的 に 抑 制 し た 。 細 胞 増 殖 抑 制 作 用 の 強 さ はTGZ>PGZ冫RGZの順 であ った 。 FACS解析 の結 果か ら、TGZは細 胞 周期 の進 行をGl期 で停 止さ せる こと が分 かっ た。 。 TGZは 細 胞 周 期 のG1期 か らS期 へ の 移 行 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い るcycliriE、 リ ン 酸 化 型Rbお よ びE2F転 写 活 性 を 減 少 さ せ た 。

好 塩 基 球 分 化 に 対 す るTGZの 作 用

  KU812細 胞 の 好 塩 基 球 へ の 分 化に 対 するTGZの作 用に つい て検 討 した 。好 塩基 球分

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化 の指 標と して 高親 和性IgE受 容体(Fc£ RDの発 現、histamineおよびcytokineの産生 を 測 定 し た 。TGZはKU812細 胞 内 部で のFc£ RIのa鎖 の発 現を 増加 させ るが 、細 胞表 面 上の 発現 には 全く 影響 を与 えな いことが分かっ た。TGZはKU812細胞によるhistamine 産生を抑制した。

    こ の機 構と してhistamine合成 酵素 であ るhistidine decarboxylaseの転 写レベル での抑制が起こる ためと推定された。′I、GZはphorb0112―myriState13−aCetate(PMA) とA23187と の 同 時 刺 激 に よ っ て 誘導 き れたc舛okine産生 を転 写レ ベル で抑 制し た。

c舛okine産 生 抑 制 作 用 の 強 さ はTGZ冫RGZ冫PGZの 順 で あ っ た 。 以 上 の 結 果 を 考 え あ わ せ る と 、TGZはKU812細 胞 の 好 塩 基 球 へ の 分 化 を 負 に 調 節 す る こ と が 推 定 さ れ た 。こ れはTZDsの抗 アレ ルギ ー薬 と して の可 能性 が示 して いるものといえる だろう。

TGZの 作 用 機 構 の 検 討

  TGZの 作 用 機 構 を 解 明 す る た め 、KU812細 胞 に お け るPPARの 発 現 、TGZの 作 用 とvitaminE骨 格 と の 関 連 、NFにBお よ びNFATの 活 性 化 に 対 す るTGZの 作 用 に つ い て 検 討 し た 。KU812細 胞 で はPPARア の 発 現 が 検 出 さ れ な か っ た こ と か ら 、TGZは PPARア 非 依 存 的 に 作 用 し て い る こ と が 推 察 さ れ た 。 一 方 、TGZの 作 用 にPPARaや PPARBが 関 与 し て い る 可 能 性 が 示 さ れ た 。TGZはvitaminE骨 格 を 有し てい るが 、TGZ の 作 用 にvitaminE骨格 は直 接的 には 関 与し てい ない こと が示 唆さ れた 。′rGZはPPAR ア 非 依 存 的 に 、NF KBやNFATを 介 し た 情 報 伝 達 を 阻 害 し て い る こ とを 見い だし た。

    以 上 の 研 究 はKU812細 胞 に 対 す るTGZの 作用 とそ の作 用機 構の 一部 を明 らか にし たも ので ある 。また、 ′rZDsの抗アレルギー葉としての可能性も示されたとい えるだろ う 。 今 回 用 い た3種 類 の ′rZDsは 全 て 細 胞 増 殖 を 抑 制 し た が 、NF KBやNFATの 活 性 化 抑 制 はTGZで の み 観 察 さ れ た こ と か ら 丶KU812細 胞 に はTZDs共 通 の 作 用 部 位 とNF KBやNFAT活 性 化 抑 制 の 原 因 と な るTGZ特 異 的 な 作 用 部 位 が 存 在 す ると 考え られ る。

TZDsの作 用機 構の 全貌 はま だ 明ら かに なっ てお らず 、今 後の 研究 を待たなけ ればなら ない 。

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参照

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