博 士 ( 環 境 科学 ) 三浦 裕 紀
学 位 論 文 題 名
ケギン型ヘテロポリタングステン酸アルカ
1J金属塩の
特異な吸着.収着特性と触媒作用
(Specific adsorption‑absorption properties and catalysis of alkaline metal salts of Keggin‑type heteropoly tungstates)
学位論文内容の要旨
基質 分子を高 選択的 に識別す る固体 材料は, 資源やエ ネルギ ー消費の 少ない 化学プロ セス を構築す るため の吸着剤 や触媒と して欠 かせない ,これ らが高い 選択陸 を発現す る には ,滑眦点 (吸着 点)構造 が精密に 制御さ れている ことが 必要であ る.あ る特定の 機 能を発 揮する単 一構造 の活性部 位のみで構成された固体材料を創製することができれば,
それ らを吸着 剤とし て用いれ ば特定の 分子を 高選択的 に吸着 分離でき ,また 触媒とし て 用い れば,副 反応の 抑制や高 難度反応 を促進 する優れ た触媒 となる. そのよ うな,分 子 構造が 厳密に既 定され た規則´ 陸集合 体の合成 に,
Keggm型ヘテロポリアニオンを構成成 分としたイオン結晶は非常に有用と考えた,
本研 究の目的 は,Kbggin 型 ヘテロ ポリアニ オンを構 成成分 とし,基 質分子 を高選択 的 に識 別する, 吸着剤 や高機能 な固体触 媒とし て機能す るイオ ン結晶材 料を, 合理的に 設 計・合 成するこ とであ る.分子 構造や,結晶構造,細孔構造などの物性を系統的に調べ,
吸着俶着特陸や触媒作用との関連性を議論した.
第
2章では,アニオン電荷がィ価の,12 ‐タングストケイ酸Cs 酸陸塩(C 蚶i 似[
SiW120∞])
がマ イクロ多 孔体で あること を見出し ,それ らの結晶 構造お よび細孔 構造の
Cs置換量依 存陸を 調べた.Cs 置換量が2 .0 以上のとき,C 虹i 似[SiW120d はマイクロ孔のみを有する,
外表面 積の小さ いマイ クロ多孔 体が生成した.Cs 置換量が3 .O で,最も表面積が大きくな っ た.
C蚶 もJSiW120 ∞] の 結 晶構 造 は ,Cs 置 換 量に よ らず
BC構 造であ った.
3価Ke 鵠m 型ヘテ 口ポリタ ングス テン酸Cs 塩 に毘.
1塙
19PW120d)マイク ロ多孔体のマイクロ孔は,
結晶 子―結晶 子間の 結晶学的 なミスマ ッチに よって生 成した 隙間であ るのに 対し,
Cs『
Hh[SiW120 瑚 &≧2 .O )のマイ クロ孔 は,その 結晶自 身に存在 し,結晶 中のへ テロポリ アニ オンが部 分的に 欠損した 部位に形 成され ると推定 した. 最大表面 積を有 し,かつ 外 表面積 の小さぃ
Cs掛[SiW12 ()d が,そのマイクロ孔特陸に由来した,形状選択的な酸触 媒作用を示すことを実証した.
第
3章では,第2 章で得られた知見をもとに,ヒドロキシル基,門‐ブチル基,門−オクチ ル基で修飾した4 価Keggm 型ヘテロポリタングステン酸Cs 中´陛塩(Cs3 .6Ko .4PWl1039Sn ‐
−858 ‑
OH],CS4[PW1103gSriBu] ,Cs4PW‖039Snoc] ) を 合 成 し , そ れ ら の 構 造 と 分 子 吸 着 特 陸 を 詳 細 に 調 べ た . 置 換 基 導 入 の 有 無 お よ び そ の 種 類 に よ ら ず ,Cs塩 は マ イ ク ロ 多 孔 体 で あ っ た .Cs3.6恥4PWll039Sn( ) 聞 ,Cs4PWll039SnBu] ,CS4PWtI039Snoc] は い ず れ もBCC構 造 で あ り ,14価 の へ テ ロ ポ リ ア ニ オ ン で あ る こ と か ら ,Cs4[SiW120∞ ] と 同 様 , こ れ ら の Cs塩 も へ テ ロ ポ リ ア ニ オ ン の 欠 損 に よ っ て マ イ ク ロ 孔 が 形 成 さ れ た と 推 測 し た .Cs3.6‐ 恥4PWll039Sn0聞 ,CS4PWll039S心u] の 固 体 表 面 に 存 庄 す る 置 換 基 の 量 は ,23% ,21% で あ り , 結 晶 構 造 と も 矛 盾 し な か っ た . 分 子 吸 着 特 性 は 置 換 基 に よ っ て 大 き く 変 化 し , Cs4PW‖039SnBu] は 導 入 し た 門 ‐ ブ チ ル 基 の 効 果 に よ り , 疎 水 的 な 分 子 吸 着 挙 動 を 示 し た . 第4章 で は , 一 欠 損Keg曲1型 タ ン グ ス ト リ ン 酸Cs・K塩 に 蚶 く ねPWll039] ) が ,H20や メ タ ノ ー ル の よ う な 極 陸 の 高 い 小 分 子 の み を 高 選 択 的 に 結 晶 内 部 に 収 着 す る こ と を 見 出 し た .Cs6.l恥 .9PW‖0朔 のH20収 着 特 陸 お よ ぴH20収 着 に 伴 う 結 晶 構 造 の 変 化 は , 可 逆 的 で あ っ た .Cs6.1恥 ,9PWn039] は , エ タ ノ ー ル ノ 水 混 合 蒸 気 中 の 水 分 を 選 択 的 に 除 去 し た . そ の 脱 水 陸 能 は , 一 般 的 な 脱 水 剤 の 無 水 硫 酸 ナ 卜 リ ウ ム よ り も 高 く , ま た , モ レ キ ュ ラ ー シ ー ブ ス3Aよ り も 高 選 択 的 で あ っ た .C鞦1恥19[Wll( )39] の 脱 水 性 能 は , 水 分 選 択 除 去 を 繰 り 返 し 行 っ て も 低 下 し な か っ た .C蚶 く ねPWll( )39] の 分 子 収 着 特 陸 は ,Cs爪 細 成 比 に よ っ て 変 化 し , xが 大 き く な る ほ ど .Cs7PW11039] の 分 子 収 着 特 陸 に 近 づ ぃ た . 第5章 で は ,12‐ タ ン グ ス ト リ ン 酸Cs中 ´ 陸 塩 にs3PW120脚 ) が , ア ル コ ー ル のH202酸 化 に 有 効 な 触 媒 で あ る こ と を 見 出 し た . 例 え ば , ベ ン ジ ル ア ル コ ー ル 酉 芟 イ 断 乏 応 に 対 し て , 高 選 択 的 に ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド を 与 え る こ と が で き た .CS3PW12(h) ] 触 媒 は 再 利 用 が 可 能 で あ り , 反 応 中 に 触 媒 は 溶 出 せ ず , ま た 反 応 後 のCs3PW12(k] の 分 子 構 造 及 び 結 晶 構 造 に も 変 化 は な か っ た . 種 々 の 有 機 溶 媒 を 用 い て 溶 媒 効 果 を 調 べ た 結 果 , 極 陸 の 塩 基 陸 溶 媒 で あ る ア セ ト ニ ト リ ル が 最 適 な 溶 媒 で あ る こ と が 分 か っ た .Cs3PW120dを 触 媒 に 用 い 反 応 ス ケ ー ル を 大 き く し て も , ベ ン ジ ル ア ル コ ー ル 酸 化 反 応 は 順 調 に 進 行 し , 触 媒 回 転 数 は 約50,000に 達 し た .CS3PW120繃 は ベ ン ジ ル ア ル コ ー ル 以 外 に も ,1‐ フ ェ ニ ル エ タ ノ ー ル , シ ク ロ ペ ン タ ノ ー ル , シ ク ロ ヘ キ サ ノ ー ル ,1― ブ タ ノ ー ル のH202酸 化 を , 高 選 択 的 に 促 進 し た .Cs3PW120dは ,H202と の 反 応 に よ っ て 酸 化 活 性 種 で あ る ぺ ル オ キ ソ タ ン グ ス テ ー ト 種 ( {P04[W02) ]4) っ を 生 成 し 易 い こ と , か つ 中 ´ 陸 塩 で あ る た め に 酸 点 上 で のH202の 分 解 が 進 行 し な い こ と が ,Cs3PW12( )d触 媒 が 高 活 性 を 示 し た 要 因 で あ る と 考 え ら れ る .
以 上 ,Ke画n型 ヘ テ ロ ポ リ タ ン グ ス テ ン 酸 ア ル カ リ 金 属 塩 の 分 子 吸 着 / 収 着 特 陸 は , ヘ テ ロ ポ リ ア ニ オ ン の 分 子 構 造 お よ び 対 カ チ オ ン の ア ル カ リ 金 属 イ オ ン の 種 類 に よ っ て 大 き く 変 化 し , そ れ ら を 適 切 に 制 御 す る こ と で 高 選 択 的 な 分 子 吸 着 / 収 着 特 陸 を 示 す こ と を 見 出 し た . 本 博 士 論 文 で 得 ら れ た 知 見 は , 特 定 機 能 を 発 揮 す る よ う に 原 子 団 を 導 入 し た K 饗m型 ヘ テ ロ ポ リ ア ニ オ ン を 基 本 ユ ニ ッ ト と し て , 規 則 的 に 集 積 化 さ せ る こ と に よ り , 特 異 な 吸 着 / 収 着 特 性 と 触 媒 作 用 を 示 す 固 体 材 料 を 合 理 的 に 設 計 ・ 合 成 す る た め の 重 要 な 指 針 を 与 え た と 結 論 す る .
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学位論文審査の要旨 主査 副査
副査 副査 副査
准教授 教授 教授 教授 准教授
神谷 中村 太田 小西 野呂
学 位 論 文 題 名
裕一
博 信廣 克明 真一郎
ケギン型ヘテロポ1J 夕ングステン酸 アルカ1J 金属塩の
特異な吸着・収着特性と触媒作 用
(Specific adsorption‑absorption properties and catalysis of alkaline metal salts of Keggin‑type heteropoly tungstates)
特 定 の 機 能 を 示 す 活 性 点 の み で 構 成 さ れ た 固 体 材 料 を 合 成 で き れ ば , そ れ ら は 分 子 を 高 選 択 的 に 分 別 す る 吸 着 剤 や , 高 難 度 反 応 を 選 択 的 に 促 進 す る 優 れ た 触 媒 と な り う る . 本 学 位 論 文 申 請 者 は , そ の よ う な 分 子 構 造 が 厳 密 に 既 定 さ れ た 規 則 性 集 合 体 の 創 製 に , 分 子 性 酸 化 物 ク ラ ス タ ー の へ テ 口 ポ リ ア ニ オ ン を 構 成 成 分 と し た イ オ ン 結 晶 が 非 常 に 有 用 で あ る と 考 え た . 本 博 士 論 文 で は , ケ ギ ン 型 ヘ テ 口 ポ リ タ ン グ ス テ ー ト ア ニ オ ン を 構 成 成 分 と し て 規 則 性 集 合 体 ( イ オ ン 結 晶 ) を 系 統 的 に 合 成 し , そ の 構 造 と 吸 着
/収 着 特 性 お よ び 触 媒 特 性 を 詳 細 に調べた.
4
価 ケ ギ ン 型 ヘ テ 口 ポ リ タ ン グ ス テ ー ト ア ニ オ ン の セ シ ウ ム 酸 性 塩
CsxH4̲x[
SiW12040]や , 種 々 の 官 能 基 を 導 入 し た
Cs3. 6KO. [PW11039SnOH],
Cs4 [PW11039SnBu],Cs4 [PW1103gSnOc] では ,アニオンの一部が結晶格子から欠損し,
そ こ に マ イ ク 口 孔 が 形 成 さ れ る こ と を 明 ら か に し た , そ れ ら 分 子 構 造 が 規 定 さ れ た 規 則 性 集 合 体 の 分 子 吸 着 特 性 は , ヘ テ 口 ポ リ タ ン グ ス テ ー 卜 ア ニ オ ン に 導 入 さ れ た 置 換 基 に よ っ て 大 き く 変 化 し , 特 に ヶ ブ チ ル 基 の 効 果 に よ っ て
Cs4 [PW11039SnBu]は , 特 異 的 に 高 い 疎 水 性 を 発 現 す る こ と を 見 い だ し た .
12個 の タ ン グ ス テ ン の う ち
1っ が 欠 損 し た 欠 損 型 ヘ テ 口 ポ リ タ ン グ ス テ ー ト ア ニ オ ン の セ シ ウ ム 一 カ リ ウ ム 塩 は ,
H20や メ タ ノ ー ル の み を 結 晶 内 部 に 収 着 す る 特 異 な 挙 動 を 示 す こ と を 見 い だ し た . こ の 塩 は , エ タ ノ ー ル と 水 蒸 気 の 混 合 気 体 中 の 水 蒸 気 の み を 選 択 的 に 気 相 か ら 収 着 除 去 し , か つ 繰 り 返 レ 使 用 し
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ても除去性能が低下しないことを実証した・
ケギン型ヘテ口ポリタングステートアニオン[PW12040]3 −が規則的に集積し たCs3 [PW12040] は,工業的に重要なアルコールのH202 酸化反応に有効な触媒であ ることを見出した. Cs3 [PW12040] は反応中に溶出せず,再利用も可能な優れた酸 化触媒であった,
以 上, ケギ ン型 ヘテ 口ポ リタ ング ステートアニオンを基本ユニットとしそ の 分子 設計 とイ オン 結晶 とし て規 則的 に集積化させる材料合成法は,ある特定 の 機能 を発 揮す る単 一構 造の 活性 部位 のみで構成された固体材料を開発するた めの優れた方法論であると結諭された.
本 研究 で得 られ た成 果は ,高 性能 な吸着剤および触媒を合目的に開発する た めの 重要 な指 針を 与え るも ので あり ,環境保全ならびに環境改善に対して今 後 ,大 いに 貢献 する もの と期 待さ れる .審査委員一同は、これらの成果を高く 評 価し 、ま た研 究者 とし て誠 実か つ熱 心であり、大学院博士課程における研鑽 や 修得 単位 など もあ わせ 、申 請者 が博 士(環境科学)の学位を受けるのに充分 な資格を有するものと判定した。
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