変貌す る社会 と林業
菅 井 清 美
ForestryinChangingSociety/
KiyomiSugai
1
.はじめに
太 さに比べて十分 な長 さを持 ち、細 くてたわ みやすい繊維 は被服の主要材料であるが、天然 素材のみか らでは十分 な繊維量 を得 ることはで きない。天然 に存在す る高分子物質である多糖 類や タンパ ク質 を一度潜解 し、再び繊維状 にす る再生繊維のなかで も、 レー ヨンは吸湿性、染 色性が よく、裏地や カーテ ン、寝具などに多用 されて きたが、近年、色彩豊かなファッシ ョン 繊維材料 として見直 され、市場 を席巻 している
。この レー ヨンは木材か ら不純物 を除去 したパル プを原料 としてお り、木材や林業は繊維や被服 材料 を扱 って きた私 たちには大変身近な存在で
あった。
教育 ・研究の基礎知識 として、 また、‑社会 人 として自分の住 む地域のことをよく知 ること は重要である。そこで 自然科学系の内容 を幅広
く盛 り込 んだ一般教養科 目 「 新 潟県 の生活環 境
」を創設 し、 さらに地域の最近の技術 を数多 く関係者 に寄稿いただ く形で、平成
18年 に 「く らしのなかの科学技術 一新潟県の新技術 ‑」
を上梓 した
1)。社会の変化、社会の要求 にいつ も関心 を持 ち、今、何が起 こっているか、 また、
豊かで安心 して暮 らせ る街 にす るために豊富な 資源 ( 物質資源、人的資源) をどの よう・ に使 っ てい くか、生活や仕事 を通 して どの ような分野 で どの ように地域 とかかわってい くかなどを考 えるための手がか りの資料 に して欲 しい と願 っ たのである
。林業 も地域の重要な産業、資源で
あ り、 この本 に取 り上げた。平成
19年
4月に新 潟県林業改良協会 にて 「 変貌す る社会 と林業」
とい うテーマで話 をする機会 を得、 きのこ王国 である新潟の きの この現況 などについて も関心 を持 った。本研究 はこれ らをまとめた ものであ る。
2.
新潟は森林資源が豊富
新潟県 は表
1に示す ように県土総面積 の
68.6%が森野面積で、北海道、岩手県、長野県、福 島県、岐阜県 に次 ぐ、全 国
6番 目の森林面積 を もっている
2) 。その うち
66.1%が民有林で、全 国平均 に比べ天然林の占める面積が広い。森林 は図
1に示す ように私たちの生活 と深 く結 び付 き、生活 ・環境及び経済の安定 に欠 くことので きない ものである。森林の二酸化炭素吸収 ・貯 蔵機能は、地球温暖化防止の国際枠組みである 京都議定拝で も盃変性が認撒 されている
.また、
近年、台風等の自然災害が相次いでお り、森林 の山地災雷防止や洪水積和 といった機能発揮 に 対する期待 は高い。生物多様性保全や保健 ・レ クリエーシ ョン機能等 を含め、森林は多田的機 能 を持 っている。
産業面か らみた新潟県の林業の概況 を、全回 平均 と比較 して
衣2に示す
3)。林業産出郡 は木 材 と栽培 きのこ籾の生産か らほぼな り、全国平 均 ではこれ らで全産出柄 をほぼ二分 している。
一方、新潟県では栽培 きのこ規の生産郡が全国
2
位 を示すほ ど多 く、林業全生産郡の
96%を占
生活科学科 生活科学専攻
表
1森林 ・林業の主要指標
項 目 新 潟 県 全 国
総面積 ( km
2)総人口( 千人) 林野面積
(ha)林野率 ( %) 国有林
(ha)民有林
(ha)人工林
(ha)天然林
(ha)12,583 377,923 2,418 127,770 863.427 25.121.000 68.6 66.5 292.969 7,838.000 570,458 17,283,000 164,005 10,361,000 561,506 13,349,000
図
1森林の もつ多面的機能
表
2林産業産出額 に占める特用林産物 の割合
項 目 全国 新潟県 順位
林業産出額 ( 千万円)
45,025 3,285木 材
23,325 218薪 炭
755 7栽培 きのこ類
20,665 3,059林野副産物採取
2790
#RJ E& ( = J =) =
1.018.744 31.206 10素材生産量 ( 千
m3) 15,171 157 29製材工場数 ( 工場)
9,920 445め、木材生産額 はわずかに
4%である
。森林面 積 は全国
6番 目、林家戸数 は全国
10番 目である にも関わ らず、木材生産額 は全 国
29位である。
産業‑ の貢献 だけでな く、林業の多面的機能 の発揮 のためには相応の林業就業者がいなけれ ばな らない。総務省 「 国勢調査
」による年齢階
層別 にみた林業就業者 の推移 を図
2に示す
4)。1965
年の就業者数が一番多 く
、25歳か ら
44歳の 最 も体力のある年齢層が仝従業者の半数以上 を
占めていた。次第 に従業者が減少 し
、2005年 に は
1965年の
2割以下 となっている。因み に
2007年度の新潟県森林組合員数 は
56,430人、全 国で
は
1,618,386人で、総数の
3.5%である。若年労
働者の就業が非常 に少 な くなったために林業従
業者 は高齢化 しているが、次節 に示す ように林
産業の内容 は拡大 して きてお り、資源が多い こ
とは活用次第で今後の大 きな発展素地があるこ
とを示 している。
変貌する社会 と林業
250 200 150 100 50
0
1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
(年 度 )
軸 15‑24
歳
rTm 25‑34歳
T… 35‑44歳
■況 5三三的三七一45‑54歳
I=‥1 65
歳 以
上 † 65歳 以 上 雫 (林 業)
÷ 24歳 以 下 率 (林 業 )
一一〇・・・一一J)^烏も1)JT 恋 「合 戸套茎 1
図
2年齢層別 にみた林業就業者の推移
3.
林業資源を活かす新技術
新潟県は上述 したように森林面積が多 く、そ れゆえ資源の有効活用が望 まれることはい うま で もない。平成
20年度の県の林業基本方針は県 産材の利活用 による林業の持続的かつ健全 な発 展 ときのこ等の生産振興が掲げ られ、主要事業 として越後杉で家づ くり総合対策事業、越後杉 で家づ くり促進事業、越後のふるさと木づかい 事業、「 越後の木」普及促進事業、森林整備地 域活動支援、ふるさとの森林再生推進モデル事 業、未整備森林緊急公的整備導入モデル事業、
美 しい森づ くりアシス ト事業、治山事業が採 り 上げられている
5) 。県農林水産部では研究成果
としてエノキタケ 「 雪ほうし2 号
」の栽培管理 方法、エノキタケ 「 雪ほうし2 号」 における乾 燥 オカラの添加 について、砂丘上丘陵地アカマ ツ林 にお ける
AO層 除去 の菌根性 きの こシモ コシへの有効性などの普及 ・活用技術が報告 さ れている
6) 。 また、これ らの参考技術 として、
スギの未利用資源のか さ密度、合成 フェロモ ン のカシノナガキクイムシ誘引効果、スギ精英樹 クローンの材質特性、ナメコ新品種 「 新潟森林
Pn1号
」の栽培管理技術が挙げられている
。先 に述べた 「くらしのなかの科学技術」本の なかでは、執筆当時の最新技術 として、松 くい
虫被害の防除技術や純 白系エノキタケの品種開 発 に加 えて、里山広葉樹林の育成技術の継続的 研究の必要性がこれか ら学校 を巣立ち、社会に 参加 してい く若者に対 して分か り易 く述べ られ ている
。ここでは再び関心が高 まっている地場 産木材の利用や、林地残材 ・端材 ・間伐材など の有効利用、 きのこ生産の現状 と有効成分の新 規活用 について述べ る
。3.1
地場産木材の利用促進
これまで住宅の床や壁、家具などに使われる 合板 は間伐材のような細い丸太か らつ くること がで きず、外国産の太い丸太 を使 っていた。 し か しなが ら、近年、外国産は森林保護のために 輸出制限が設けられるようにな り、また中国な ど新興国の消費拡大で木材の価格が上昇 した。
また、国産材 に対する消費者のこだわ りや技術 の進歩で間伐材の利用技術が向上 し、国産材の 自給率が高 まっている。
林野の持続的かつ健全 な発展のために、新潟
県産材の利用促進、県産材の安定供給体制の整
備が急がれる
。図
3に示 した平成
6年か ら
15年
までのデータによると、木材供給量が約半減す
るなかで、県産材使用率は平成1
4年頃か ら上昇
している。バブル経済崩壊後、 ようや く経済の
供 給 量 (千
n†) 県 産 材 率 (% )‑ ^ t+ +
24
22
20
18
16
14
12
10 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 (年 度 )
4‑ 外 書寸 ⊂==コ川1県 手,T ⊂:::::::コ 自 県 ヰ寸 ー 自 県 手寸三三
図 3 県産材供給量お よび割合 の推移
回復がみ られるようにな り、 また、地震後の住 宅再建 も重 なった時期であった。新潟県の住宅 の新設着工戸数 は平成
8年 の
27409戸 を境 に平 成
16年 まで減少 し続 けているが、平成
17・18年 と再 び上昇 した。森林 ・林業の活性化や循環型 社会の構築のため に県産材 の活用が促進 され、
越後杉 ブラン ド生産量 は
2002年の
749m3 が
、2005年 には一挙 に
9178m3
、2006年 には
10924m3とな った。公共施設等 を新築 ・増築 ・改築す る場合 はまず木造 ・木質化 を検討 し、県産材活用 を奨 励 している
。しか しなが ら平成
5年 に
80%もあ った新築住宅 における木造率 は、平成
18年 には
67%
にまで減少 してお り活用の難 しさを示 して いる
。3.2
林地残材、おが粉、端材、間伐材 な どの 建材夕捕り 用
太 くて実直 ぐ延 びた住宅用建材 を得 るために は、た くさんの間伐材、林地残材、おが粉、端 材 な どが生 じ、 これ らは長年、厄介者 とみ られ て きた ものの、近年、バ イオマス素材 としてい ろいろな利用が考 え られている
。バ イオマス と は木材や農作物 な どの生物資源、再生可能な形 で利用で きる有機物の ことであ り、森林バ イオ マスの有効利用 は地球温暖化 の防止、循環型社 会の構築、森林 ・林業の活性化 に繋が る もので ある。バ イオマス をエネルギー源 として利用す る方法 としては、有効成分 を抽 出 した り形態 を
変 えて付加価値 を高めた ものにす る場合 と、そ の まま燃や してエネルギー源 とす る場合がある
。(1) バイオエタノールを創る
サ トウキ ビや トウモ ロコシ といった植物資源 を発酵 させ、蒸留 して作 るエ タノールの ことを バ イオエ タノール とい う。化石エネルギー と異 な り再生可能 なエ タノールであ り、ガソリンの 代替燃料 として使用で き、二酸化炭素排 出量の 削減
(CO2ニ ュー トラル)、大気汚染 防止、エ ネルギー自給率の向上 な どが期待 されている
。日本 で も、 フランスで小麦か ら作 ったエ タノー ルを輸入 し
、2007年
4月か ら
5%混合 のバ イオ ガソリンとして販売 している
。バ イオエ タノー ルの製造 は基本的には酒類 の製造方法 と同 じで あるが、最後の蒸留工程で不純物 を除去 し
、95%以上の高濃度エ タノール にす る必要がある7 ) 0 図
4に示す ように主 として糖質原料 ( サ トウキ
ビ、テ ンサ イな ど) と澱粉質原料 (トウモ ロコ シ、小麦 な ど)か ら造 られているが、糖質原料 の場合 は糖化工程が不要のため、澱粉質原料 に 比べ てエネルギー投入量が小 さ くなる
。原料作 物 の耕地面積
1ha当た りのエ タノール収量 は 農産物 として生産性 の高いサ トウキ ビが首位 と な り、続いてテ ンサ イ、 ジャガイモであるが、
テ ンサイや ジャガイモは重量当た りの収量 は 仇
い 。
トウモロコシや小麦 な どを原料 に したバ イオ
変貌する社会 と林業
エ タノールの生産 は食料 としての生産 とのすみ わけが価格 によって左右 され、大 きな問題 とも なって きた
。2008年
2月 には ココナツを原料 と す るバ イオ燃料 で英 ヴァージ ン ・ア トランテ ィ ック航空が試験飛行 には じめて成功 したが、食 料 を使 ったバ イオ燃料 は、食物価格 の高沸 を招 くことが懸念 され、世界 の航空業界 は第二世代 バ イオ燃料 の技術 開発 を加速 し
、12月 にはニュ ージー ラン ド航空が食用 に適 さない作物が原料 の 「 第二世代 バ イオ燃料
」による世界初 の試験 飛行 に成功 した
8)。 この燃料 は従 来 の ジェ ッ ト 燃料 と、 アフリカ東部 な どで栽培 された広葉樹
「ジ ヤ トロ 7
7」 ( ナ ン ヨウアブ ラギ リ) の種 子 を原料 とす る油脂 を
50%ずつ ブ レン ドした も のである。バ イオ燃料 に替 えることによって、
温室効果 ガスの二酸化炭素 の排 出削減効果 を行 ってい こうとす る ものであ る
。食用 に資 しない素材 として、木材等 のセル ロ ース系バ イオマスか らのエ タノール化 もその ひ とつである
。国内のセルロース系バ イオマス試 験 の賦存量 とエ タノール生産可能量 を表
3に示 す 7) 。約
1200万
klのエ タノー ル を生 産 で きる セル ロース系バ イオマス資源が存在す るこ とを 示 してい る
。国 内の ガ ソ リン年 間使 用 量 、約
6000
万
klの
20%を代 替 で きる量 で あ る。 ご く 近 い将来 の原料 としてはコÅ ト面か ら建築廃材 が最 も有望 とされているが、セル ロース系バ イ オマスか らのエ タノール生産技術 はまだ十分 に 確 立 されていない。木 くずや雑草 に含 まれる繊 維 の全成分 を短時間でエ タノールに変換す るた め に、前処理、糖化 、エ タノール発酵技術 の高 効 率化 の方法 な どが さまざま検討 されてい る。
広大 な農林業地か らのセルロースバ イオマス資 源 の産 出が多い新潟 としては、それ らの成果が 非常 に待 たれ る ところである。
稲ワラ 木くず.雑草 ( セル ロースなど)
小麦.タピオカ トウモロコシなど く デンプン)
サトウキビ テンサ イ, 廃 ワ インなど( 樵)
享 ≡ 三 ̲ ̲ !
発酵
‑ ‑ ‑ぺ
易
発酵
≡ 童 司
易
発 酵
⊂= = === ==>
易
エ
タノ
ール
図
4セル ロース系バ イオマスのエ タノール 変換技術
表
3セルロース系バ イオマスか らのエ タノール生産可能量 バイオマス種 発生率 利用可能量 エタノール生産 ( )内は水分 〔 万
t/年〕 〔 万
t/年〕 〔 可能量, 万
kl /年〕
林地残材
(15%)間伐材
(15%)未利用樹
(15%)製材残材
(15%)建築廃材
(15%)ササ
タケ
古紙
(10%)稲 ワラ
(30%)籾殻 (30%)
214 323 1,230 465 477
>607 330 306 1.015 219
196 187 1,230 193 296 607
<330 280 678 61
54 52 341 54 82 169 92 140 188 17
合
計 5,186 4,058 1,189(2)ペレットで地域エネルギーを
石炭や石油などの化石資源エネルギーは第一 次 ・第二次 オイルシ ョック時などの価格高沸 に より安定供給が難 しくな り、その都度、木質バ イオマスが導入 されたが、その後の原油価格安 定 により競争力 を失 って しまうということが繰 り返 されて きた
。2001年の新エネルギー法の改 正 により木質バイオマス もエネルギー としての 位置付 けを得、林地残材、おが粉、端材、木 っ 端などの副産物か らペ レット ( 煙草のフィルタ ーほどの大 きさに圧縮 した もの) を生産するこ とによって、地域型エネルギー として工場や家 庭での活用が推進 された
9) 。木材か らのペ レッ
トは高温の熟で圧縮 し、 リグニンによる接着の ため、
100%天然物であ り、合成接着剤 な どの 有機化合物 を燃焼する時に発生するダイオキシ ンの心配がな く、燃や して発生する灰 も天然資 源なので地球 に還元で きる
。ペ レッ トの特徴 は 取扱いが楽で、自動供給で きるなどいろいろあ るが、一番の特徴は品質性能表示が数値化で き、
コン トロール可能な燃料 とい うことである。例 えばスギの皮 などの針葉樹皮 を使 った場合、 1 k g あた り 4
,500kcal、広葉樹 の場 合 は 4
,300kcalと明確 に表示で きる
。他成分 を含む建築現場か ら出る廃材なども有用 な木質バイオマスではあ るが、性能表示 ・品質表示 をすることによって 住み分 けが可能であろう
。図
5にペ レッ トの生 産工程 を示す。 よりよいペ レッ トの生産 と安定 的供給のために、山での伐採方法の検討、専用 のチ ップボイラーやス トーブの検討、ペ レッ ト
ペレットボイラー
ペレットストーブ
図
5ペ レッ トの生産工程
の品質性能評価 とその表示法などのさらなる検 討が求め られている
。林地残材か ら枝か ら葉 っぱまで、薪 も含めた ペ レッ ト生産は木材産業が元気であってこそ成 り立つ。木材資源の総合利用で どこに重点 を置 くかは地域の様々な環境 にかかわってお り、図
1の どこに重点をおいて もよく、重点活用が特 色ある地域 をつ くるといえる
。3.3
きのことその菌床の新 しい用途
2005
年度栽培 きのこ類の産出額 は、長野県、
新潟県、群馬県、北海道、福 岡県の服 に多 く、
新潟県では林業産出額の 9 6% を栽培 きのこ類で 占めている
。ここ数年でぶな しめ じ、エ リンギ の生産量が伸び
、2006年の県林政課の特用林産 物需給動態調査 によると、生 まいたけ、ぶな し め じ、えの きたけ、エ リンギ、なめこ、生 しい たけの順 に生産量が多い。
きのこは納豆、チーズなどと同様 に菌性食品 として欠かす ことので きない食品であるが、 き のこ成分 には表
4に示す ように、抗がん作用や 抗酸化作用、老化防止などを示す成分やメラニ ン色素抑制、発光、重金属吸収などの作用 をも つ成分 を含むものがあ り、食料だけでな く医療、
化粧品、工業材科、装飾などにも応用が期待で きる1 0 ) 。注 目する成分 を分離することがで きれ ば付加価値の高い製品の開発 に繋がる。宮内民 らは酵母などに利用 されている次亜塩素酸ナ ト リウム処理 と
DMSOの組み合 わせ による酸化 処理 を行い、その後アルカリ処理 によりマイタ ケか らグルカンを分柾するのに成功 した1 1 ) 。 ま た、亜臨界水 による処理 ( 臨界点 よ り低 い
200℃付近での熱水 による処理)で様々なきのこを 抽出するとグルカンが抽出されることも確認 し ている
。成分が抽出で きれば粉末で もフイルム で も様 々な形態に加工が可能 とな り、いろいろ な食品、化粧品、医薬品にも添加で きて注 目す る成分の効能 を付与 した高機能製品 とすること がで きる
。一方、多量の安定 した きのこの栽培過程 にお
いて問題点 も出てきている。多 くの きのこはお
がこ栽培方法 と原木栽培方法で作 られるが、 き
のこの汚染がない、一定品質の きのこを得 るこ
とが出来る、周年栽培が可能であるなどの理由
変貌する社会と林業
で、現在、おが こ栽培が きの この生産方法 とし て主流 となっている
。おが こ栽培 はおが こを主 体 とした培地で菌糸 を培養 し、栽培す る方法で ある
。主体 となる栽培床 には広葉樹 お よび針葉 樹 のおが屑 を基材 と した栽培 床 とコー ンコブ (トウモ ロコシの茎) を基材 とした栽培床があ る。菌糸成長のための栄養分 として、栽培床 に は糖類やおか らな どが加 えられている
。きの こ 栽培 は菌床 をぴんや袋 に入れ、 これに菌 を植 え こみ、調整 された温度湿度条件で一定期 間栽培、
きの こを採取す るが、 この工程 は高度 に機械化 され、品種 によっては完全 自動化 にまで達 して いる
。しか しなが ら、大量生産で きるようにな った一方で、不要 になった栽培床 いわゆる廃菌 床がた くさん残 って焼却処分 された り野積みの ままとなってお り、環境面や経済的面か ら極 め
て大 きな問題 となってお りその処理が急務 とな っている。当初、 これ らの廃菌床 はたい肥化が 検討 されたが、 コー ンコブだけを用いた菌床 は たい肥化利用で きるが、おが屑が多 く含 まれる とそのなか に含 まれるリグニ ン成分が クレゾー ル的作用 を持 ち、消毒 ・殺菌作用で地中の微生 物 を殺 して作物生産 に悪影響 を及ぼす ことがわ か った。大量 に排 出される廃菌床 の利用拡大が 求め られてい る
。きの この廃菌床 を家畜 の糞尿 と混ぜ た り、微生物 を使 ってたい肥化 を進め、
農業用や道路法面資材 としての活用 も検討 され ている
。安価 で、安定的 に、 きの この有効成分 が大量 に抽 出で きる方法が確立 されるようにな れば、廃菌床 か らも付加価値の高い成分が取 り 出せ るであろ う。
表
4きのこの用途 と期待 される市場
用途 種類 生産性
特徴注目する成分 発生地など その他
医療用 シイタケ カワラタケ マイタケ マンネンタケ ヒメマツタケ メシマコブ カバノアナタケ ハナビラタケ アミタケ ロクショウクサレ キン色素 カラスタケ ヤマブシタケ
B
抗癌作用
.C抗癌作用
B抗癌作用
C抗癌作用
C抗癌作用
C抗癌作用
D抗癌作用
C〜D 食感E
抗酸化作用
D抗癌作用
E抗酸化作用
C老化作用
多糖
多糖
(β ‑グルカン) 多糖
(β ‑グルカン) 多糖
(β ‑グルカン) 多糖
(p‑グルカン)
リグニン成分 多糖
(β ‑グルカン) バリーガテックアシット ザイリンデイン テレホル酸
腐生菌 腐生菌 腐生菌 腐生菌 腐生菌 腐生菌 カンパ頬 腐生菌 トウヒ・カラマツなど 腐生菌
マツ 菌根生菌
各種枯れ幹、枝 腐生菌 菌根生菌 ブナなど 腐生菌 化粧品用 二ンギョウタケ
Eメラニン色素抑制 クリフオリンなど マツ 菌根生菌
シロキクラゲ
Cメラニン色素抑制 クリフオリンなど 腐生菌
農業資材 フクロタケなど
B〜C畑地 腐生菌
装飾用 マンネンタケ
C長期保存用 広葉樹の枯れ幹 腐生菌
マゴジャクシ
C長期保存用 針葉樹の枯れ幹 腐生菌
工業材料 ハナビラダケ
B多孔菌類
D〜Eヤコウダケ
D発光 ツキヨタケ
D〜E発光
多糖類
フイルム、繊維 腐生菌 各種倒木など 腐生菌 腐生菌
イルージン
S有毒 腐生菌
環境対策
キツネタケ
D〜E 重金属吸収菌根〜腐生?
4.
森林のもつ多面的機能を活か して
日本 の森 は木材 に対す る期待感が薄れ、長い 低迷時代 の悪循環が続いて きた。山村 の過疎化 や高齢化、木材価格の低迷 な どにより林家や森 林技術員の人数 は減少傾 向にある
。こうしたな かで
2006年、 ようや く世界の木材市場で価格が 上昇 に転 じた。中国の建設 ラッシュ、イン ドや 中東 な どアジアの経済発展 による ものである
。2007
年 には 日本 の木材 に もチ ャンスが到来 し、
製材工場での生産が追いつかない状況 になった。
こうした動 きに呼応 した ものであるのか、新潟 県の
2006年度の間伐面積 はそれ まで
3年間減少 傾向 にあった ものが急激 な上昇 に転 じ、間伐材 の利用量推移 も
2006年度 は
2005年の約
2倍 にも 増加 した。 しか し
、2008年のアメリカでの住宅 問題 に端 を発 した世界経済の低迷で社会状況 は また、一変 して しまった。世界 同時 に、 これ ま で以上 に大 きな変化が訪れるようにな り、 こう した社会の変化 を予期 した対策の検討 も求め ら れている。
新 潟県 の造林 面積 は
1965年 には
4719haで あ ったが
1998年 には
511haにまで減少 し
、2005、
2006年 には
200haにまで減 って しまった。県産 材や間伐材 の利用量増加が具体 的 に表れるよう にはなったが、造林面積 の増加 を示す まで には 至 っていない。 しか しなが ら図
1に示 した よう に森林 は経済資源 としての物質生産活動 だけで な く、保全活動 として地球環境保全、土砂災害 防止の土壌保全、水源酒養、快適環境形成 な ど、
また、文化 ・保健 ・レクリエーシ ョンな どの場 として、今 日、あ らたな見直 しが進 んでいる。
戸別管理の森林 は個人だけでは管理で きな くな り、山全体での保全活動 をどの ように取 り組 ん でい くか、長期計画が必要である。 また、身近 な森林 に対 して多 くの人が関心 を持 ち、積極的 に参加 しなければ、森林 の多面的機能の発揮 に まで至 らないであろう
。まず は森林 の持つ多面 的機能や森林資源の循環利用 について 自ら考 え る機会 を求め、積極 的に森林や木材 に触 れ、森 林 ボランテ ィアの活動支援や直接参加 を して、
身近 な里 山林 を活用 ・発展 させてい く必要があ る
。文 献
(1)菅井清美, くらしのなかの科学技術 一新潟県 の新技術 一,考古堂
(2006)(2 )林野庁,森林 ・ 、 林業 自書
(3
)新潟県の森林 ・林業 ( 賓料編)
(2008)(4 )総務省,国勢調査
(5
)新潟県農林水産部 ・新潟県農地部,農林水産業 施策の概要
(2008)(6
)新潟県農林水産部,平成
20年度新潟県農林水産 業研究成果集
(2008)(7)大聖泰弘ほか,バイオエ タノール最前線,工業 調査会
(2004)(8
)読売新聞
,2009年
1月4日(9)NPO法人SDG
ほか編,森林バ イオマス,川辺 書林
(2003)(10)
宮内信之助, きのこ産業技術集,新潟雪書房
(2005)(ll)